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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61C
管理番号 1381922
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-20 
確定日 2022-03-04 
事件の表示 特願2017−567326号「個人衛生システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月5日国際公開、WO2017/002067、平成30年9月20日国内公表、特表2018−527045号、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)6月30日を国際出願日とする出願であって、平成31年1月28日付けで拒絶理由が通知され、令和1年5月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月15日付けで拒絶理由が通知され、同年11月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年2月13日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、同年5月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、当審において、令和3年3月25日付けで拒絶理由が通知(以下「当審拒絶理由通知1」という。)され、同年7月26日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月30日付けで拒絶理由が通知(以下「当審拒絶理由通知2」という。)され、同年11月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 当審拒絶理由について
当審では、当審拒絶理由通知1で、請求項1の「第2条件」に係る記載、「前記受信機ユニット」の「前記」という記載、及び、「第2信号」と「第3信号」とを関連付ける記載が明確でない旨、当審拒絶理由通知2で、「前記第1条件」という記載が明確でない旨、いずれも、特許請求の範囲の記載が明確でなく、この出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨の拒絶の理由を通知したが、令和3年11月16日付けの手続補正により、明確になった。

第3 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
[理由1]
特許請求の範囲の請求項1の「前記別個の制御ユニット」は明確でなく、請求項1及び請求項1を引用する請求項2〜12に係る発明は明確でないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

[理由2]
この出願の以下の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明ないし周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1〜5、7
・刊行物等 1

・請求項 6、8〜10
・刊行物等 1、2

・請求項 11、12
・刊行物等 1〜3

1.特表2006−510408号公報
2.特表2009−520555号公報(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2014/016718号(周知技術を示す文献)
以下、刊行物等1〜3をそれぞれ引用文献1〜3という。


第4 本願発明
本願の請求項1〜12に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」〜「本願発明12」という。)は、令和3年11月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。
「 【請求項1】
個人衛生システムであって、
受信機ユニット、制御ユニット及び機能ユニットを有する個人衛生装置と、
受信機ユニット及び送信機ユニットを有する別個の制御装置と、を備え、 前記制御ユニットは、少なくとも第1機能モード及び前記第1機能モードとは異なる第2機能モードで前記機能ユニットを駆動するように構成され、且つ、前記制御ユニットは、前記制御ユニットがデフォルト状態にある間、前記第2機能モードの提供を禁止するように更に構成され、
前記別個の制御装置の前記送信機ユニットは、前記別個の制御装置がデフォルト制御モードから第1制御モードに切り替えられたときに前記個人衛生装置の前記受信機ユニットに少なくとも第1信号を送信するように構成され、
前記制御ユニットは、前記第1信号が前記受信機ユニットによって受信されたときに前記デフォルト状態から第1状態に切り替えられるように構成され、前記第1状態では、前記制御ユニットは少なくとも第1許容期間中前記第2機能モードの提供を許可するように構成され、
前記個人衛生装置は、第2条件が満たされたときに前記別個の制御装置の前記受信機ユニットに少なくとも第3信号を送信するように構成された送信機ユニットを有し、前記第2条件は前記個人衛生装置がスイッチオンされたときに満たされ、前記別個の制御装置は、前記第3信号が受信されたときに第1条件が満たされたとみなすように構成され、 前記別個の制御装置の前記送信機ユニットは、前記別個の制御装置が前記第1制御モードにあり、前記第1条件が満たされたときに、前記個人衛生装置の前記受信機ユニットに少なくとも第2信号を送信するように構成され、前記制御ユニットは、前記第2信号に応じて、前記機能ユニットを前記少なくとも第1及び第2機能モードのうちの1つに、変更不可能に、駆動するように、構成され、
前記個人衛生装置は、前記個人衛生装置が移動されていることを感知する動きセンサを備え、前記第2条件は前記個人衛生装置が移動されるときにも満たされ、
前記別個の制御装置は少なくとも第1信号シーケンスを記憶するための記憶ユニットを備え、前記別個の制御装置の前記送信機ユニットは、前記第1条件が満たされたときに、前記第1信号シーケンスを前記個人衛生装置に送信するように構成され、
前記第1信号シーケンスは、特定の標的に対して最適化された一連の個人衛生処置操作を自動的に提供するために、使用される機能モードに関する情報を含む、個人衛生システム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記制御ユニットが前記第1状態にある間、前記第1機能モードの前記提供を禁止するように構成される、請求項1に記載の個人衛生システム。
【請求項3】
前記別個の制御装置は、少なくとも第1命令コマンドを受信するための外部インタフェースユニットを備え、前記別個の制御装置は、前記第1命令コマンドが少なくとも1つの所定の命令コマンドと一致する場合に、前記第1制御モードに切り替えられるように構成される、請求項1又は2に記載の個人衛生システム。
【請求項4】
前記外部インタフェースユニットは、
別個の命令要素から前記第1命令コマンドの少なくとも一部を読み取るように構成されたリーダユニット、
ネットワークサーバなどの遠隔のネットワークユニットから前記第1命令コマンドの少なくとも一部を受信するためのネットワーク接続ユニット、又は、
ユーザ入力を受信し、少なくとも前記第1命令コマンドの一部として前記ユーザ入力を使用するように構成されたユーザインタフェースユニット、のうちの少なくとも1つを備える、請求項3に記載の個人衛生システム。
【請求項5】
前記別個の制御装置は、ユーザ入力を受信し、前記外部インタフェースユニットによる受信動作をトリガするように構成された入力要素を備える、請求項3又は4に記載の個人衛生システム。
【請求項6】
少なくとも前記第2機能モードの利用可能性を示すインジケータ要素を更に備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の個人衛生システム。
【請求項7】
前記別個の制御装置は、前記制御ユニットが前記機能ユニットを前記第2機能モードに駆動することを可能にする前記第2機能モードに関する情報を送信するように構成され、前記第1信号はこの情報を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の個人衛生システム。
【請求項8】
前記第2信号は、所定の時間長に広がり、前記所定の時間長は、前記機能ユニットが前記制御ユニットによって駆動される処置期間と一致する、請求項1に記載の個人衛生システム。
【請求項9】
前記第2信号は、前記機能ユニットを前記第2機能モードに駆動するための駆動情報を含み、前記制御ユニットは、前記駆動情報を直接使用するように構成される、請求項8に記載の個人衛生システム。
【請求項10】
前記別個の制御装置及び/又は前記個人衛生装置は、少なくとも前記第1信号に応じて、任意選択で前記第2信号又は前記第1信号シーケンスに応じて、情報を表示するように構成されたディスプレイを備える、請求項1に記載の個人衛生システム。
【請求項11】
前記別個の制御装置又は前記制御ユニットは、前記個人衛生装置の使用情報に応じて、少なくとも前記第2機能モードの少なくとも1つのパラメータを設定するように構成される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の個人衛生システム。
【請求項12】
前記個人衛生システムは、処置期間の少なくとも一部の間に少なくとも第1使用パラメータを監視するための少なくとも第1センサユニットを備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の個人衛生システム。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。
(1a)
「【0006】
従って本発明は、1つの面では、予め選択された追加の使用に対して期間限定試用の製品を有効にするシステムである。かかるシステムは、期間限定試用に適合されている電動器具と、かかる追加の使用に対して器具を有効にするよう承認後にユーザに与えられた許可機器とを有する。
・・・
【0016】
第2の基本的な実施例は、製品及び製品の構成要素と、製造会社又は他の認可された第三者との間に、電話、携帯電話のリンク、又は他の通信ラインを介する通信を有する。図3中のこの配置では、歯ブラシ22の充電器部21又は他のパーソナルケア器具(ひげそり器等)、又は他の製品における「スマート」通信要素20は、電話線又は他の通信リンク24にプラグで接続される。通信ラインは、例えば、インターネットのアクセスラインであり得る。恒久的な作動用の支払いが済まされたとき、製造会社又は他の認可された第三者26は、ユーザに所有されている試用製品を、認可された通信プロトコルを試用して通信要素20を介してラインをわたって作動させる。通信要素20は、マイクロプロセッサ23、又は器具内の類似した回路と通信することによって器具を作動させる。かかる実施例では、実際の要素の代わりに通信プロトコルが、通信リンクをわたってユーザに与えられる。
・・・
【0019】
図5は、第1及び第2の実施例を含む、簡略化されたフローチャートを示す。図中、電動歯ブラシ等の特定の製品は、ブロック30に示される通り試用モードで販売される。試用期間中又は試用期間後、ブロック32で、ユーザは製品の「恒久」版の購買を決定する。短期間使用又は(機器の全機能の代わりに)特定の機能を含めた、他の版も購買され得る。ブロック34では、支払いと共に、製品を使用可能にするよう製造会社又は他の認められた関係者と接触がなされる。ブロック36では、要素又は機器は、製品の望ましい作動状態への転換が可能なようユーザに与えられるか、又は、製品若しくは充電ユニット等のアクセサリは、製造者又は他の認められた関係者へのブロック38の通信リンクを介して接続されるかのいずれかである。この時点で製品は、恒久的(長期間)な使用が可能であり、即ち、ブロック40に示す通り、通常の商業経路、若しくは他の所望の使用又は構成を通じて購買された試用期間の無い商品と、作動において基本的に同一である。これらの実施例のいずれもにおいて、試用機器の廃棄は解消される。
・・・
【0024】
しかしながら、これら全ての実施例は、初期に短期間試用のために設定されていた電動歯ブラシ又は同様の製品を、例えば通常の使用のための恒久的な作動機器に転換する。「許可された」製品は、初期に全額を支払って購入された製品と、作動、機能、及び外見に同一である。他の例では、許可は、追加の使用期間(しかし恒久的ではない)又は特定の機能のみに対するものであり得る。」
(1b)
図3、図5は、以下のとおりである。


(2)引用文献1に記載された発明

【0006】の「製品」、【0016】の「歯ブラシ22」、【0019】の「電動歯ブラシ」は、いずれも、「電動歯ブラシ22」として特定できる。

上記アを踏まえると、【0016】の「ユーザに所有されている試用製品」は、「ユーザに所有されている試用製品である電動歯ブラシ22」として特定できる。

【0019】の「電動歯ブラシ等の特定の製品は、ブロック30に示される通り試用モードで販売される。試用期間中又は試用期間後、」「恒久的(長期間)な使用が可能であり、」という記載を参照すると、【0016】の「恒久的な作動用の支払いが済まされたとき、」「作動させる。」は「恒久的な作動用の支払いが済まされたとき、」「恒久的な使用が可能なモードで作動させる。」として特定できる。

上記ア〜ウ、及び、図3、図5を総合すると、【0016】の「恒久的な作動用の支払いが済まされたとき、製造会社又は他の認可された第三者26は、ユーザに所有されている試用製品を、認可された通信プロトコルを試用して通信要素20を介してラインをわたって作動させる。通信要素20は、マイクロプロセッサ23、又は器具内の類似した回路と通信することによって器具を作動させる。」ことは、「恒久的な作動用の支払いが済まされたとき、製造会社又は他の認可された第三者26は、ユーザに所有されている試用製品である電動歯ブラシ22を、認可された通信プロトコルを試用して通信リンク24と通信要素20を介してラインをわたって作動させる。通信要素20は、電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23、又は器具内の類似した回路と通信することによって器具を恒久的な使用が可能なモードで作動させる。」こととして特定できる。

上記ア〜エ、摘記(1a)及び図3、図5(摘記(1b)参照)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「電動歯ブラシ22は、試用モードで販売され、電動歯ブラシ22の充電器部21における通信要素20は、通信リンク24にプラグで接続され、試用期間中又は試用期間後、恒久的な作動用の支払いが済まされたとき、製造会社又は他の認可された第三者26は、通信リンク24と通信要素20を介して、電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23と通信することによって、ユーザに所有されている試用製品である電動歯ブラシ22を、恒久的な使用が可能なモードで作動させる、
期限限定使用の電動歯ブラシ22を有効にするシステム。」

2 引用文献2について
引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a)
「【0005】
故に本発明は、インターフェイス装置を有する、ことが望ましい。該インターフェイス装置によってユーザは、所望の動作モードを選択することができる一方、歯ブラシを動作させることなく、所望のモードの選択を確認するよう視覚フィードバックを受ける。
・・・
【0015】
これより特に図2を参照すると、歯ブラシの動作モード状態の視覚的表示は、ユーザインターフェイス40に対して与えられる。やはり、歯ブラシは、3つの個別のモードを有し得、各モードは、LEDランプを有して表示される。オン/オフスイッチ42及びモードスイッチ44はまた、LEDを有して点灯され得る。3つのモード設定は、参照符号46で図示される標準モード、参照符号44で図示されるより小さな振幅及びおそらく異なる周波数によって特徴付けられる柔らかいモード、及び、参照符号50で図示される組織刺激に対して効果的であるマッサージタイプ振動モードである。ルーチンとも称される2つの多モード機能は、参照符号52及び54において図示される。例えば一例として、ルーチン1は、2分間の全歯磨き行為時間にわたって、60秒間のモード1の作用と60秒間のモード2の作用とを有し得る一方、第2のルーチンは、60秒間のモード2の作用と60秒間のモード3の作用とを有し得る。各ルーチンは、駆動システム16を制御するマイクロプロセッサ22へとプログラムされる。しかしながら、上述されたルーチンは単なる例であり、製造者によって所望される通り他のルーチンがプログラムされてもよい、ことは理解されるべきである。」

3 引用文献3について
引用文献3には、次の事項が記載されている(訳は当審が作成した。)。
(3a)
「The data communicated from the toothbrush controller 201 to the external device 115 includes toothbrush usage data.」(11ページ9〜10行)
(訳)
{歯ブラシコントローラ201から外部デバイス115へのデータは、歯ブラシの使用データを含んでいる。}
(3b)
「The communication link to the external device 115 is in the system of Fig. 1 a bidirectional communication link. The external device 115 may accordingly transmit data back to the toothbrush 101 which the toothbrush 101 may use to adapt its operation.
As an example, the external device 115 may transmit data indicative of the result of the analysis performed by the external device 115. For example, the external device 115 may perform an analysis and as a result determine a preferred parameter. Specifically, based on the result, it may determine a desired duration for the brushing of each section of teeth. The external device 115 may then communicate the suggested usage data (in the specific example the suggested duration) back to the toothbrush 101.」(15ページ17〜25行)
(訳)
{外部装置115への通信リンクは、双方向通信リンクを図1のシステムである。外部デバイス115は、これにより、歯ブラシ101は、その動作を適応させるために使用することができる歯ブラシ101にデータを送信することができる。
一例を挙げると、外部装置115は、外部装置115が行った解析結果を示すデータを送信してもよい。例えば、外部装置115は、解析を実行し、結果として好適なパラメータを決定することができる。結果に基づいて、歯の各部のブラッシングのための所望の時間を決定することができる。外部装置115は、推奨使用データ(具体例で提案されている時間)を通信する歯ブラシ101に戻すことができる。}
(3c)
「In some embodiments the approach may e.g. be used to determine when it is time to change the brush head in order to keep toothbrush working efficiently. The tag may then be used to record the moment the brush head was changed. Also, the level of brush head wear can be calculated more accurately from the data extracted from the toothbrush that include measured parameters: e.g. age, total brushing time, brushing intensity, brushing frequency and brush pressure. A replacement head could be ordered directly using the smartphone.」(20ページ28〜34行)
(訳)
{幾つか実施形態の手法は、例えば歯ブラシを効率的に作動状態に維持するために、ブラシヘッドを変更する時間であると決定することができる。タグは、ブラシヘッドを変化させた時点を記録するために使用することができる。また、ブラシヘッド磨耗量レベルは、測定されたパラメータを含む歯ブラシから抽出されたデータからより正確に算出することができ、例えば年齢、総ブラッシング時間、ブラシ研磨、ブラッシング周波数とブラシ圧。交換ヘッドは、スマートフォンを直接使用して順序付けすることができる。}

第6 原査定について
1 理由1について
令和3年11月16日付けの手続補正により特許請求の範囲は明確になったから、理由1は解消した。

2 理由2について
2−1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「期限限定使用の電動歯ブラシ22を有効にするシステム」は、本願発明1の「個人衛生システム」に相当する。
引用発明の「電動歯ブラシ22」は、本願発明1の「個人衛生装置」に相当する。
引用発明では、「製造会社又は他の認可された第三者26は、通信リンク24と通信要素20を介して、電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23と通信すること」から、「電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23」は、受信機能を備えていることが明らかであり、本願発明1の「受信機ユニット」に相当する。
引用発明の「試用モード」及び「恒久的な使用が可能なモード」は、それぞれ、本願発明1の「第1機能モード」及び「前記第1機能モードとは異なる第2機能モード」に相当する。
引用発明の「電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23」は、「試用モード」及び「恒久的な使用が可能なモード」で「動作させる」ように機能することが明らかであるから、本願発明1の「制御ユニット及び機能ユニット」にも相当する。

引用発明の「電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23」が「試用モードで販売され」た状態にある間、すなわち、「恒久的な作動用の支払いが済まされ」ていない状態の間は、本願発明1の「制御ユニットがデフォルト状態にある間」に相当する。
引用発明「電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23」が「試用モードで販売され」た状態にある間、すなわち、「恒久的な作動用の支払いが済まされ」ていない状態の間は、「電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23」は、「恒久的な使用が可能なモードで作動させる」ことは、できない、すなわち禁止されている。

上記ア、イを踏まえると、引用発明の「電動歯ブラシ22は、試用モードで販売され、」「試用期間中又は試用期間後、恒久的な作動用の支払いが済まされたとき、製造会社又は他の認可された第三者26は、通信リンク24と通信要素20を介して、電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23と通信することによって、ユーザに所有されている試用製品である電動歯ブラシ22を、恒久的な使用が可能なモードで作動させる」ことは、本願発明1の「前記制御ユニットは、少なくとも第1機能モード及び前記第1機能モードとは異なる第2機能モードで前記機能ユニットを駆動するように構成され、且つ、前記制御ユニットは、前記制御ユニットがデフォルト状態にある間、前記第2機能モードの提供を禁止するように更に構成される」ことに相当する。

以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「個人衛生システムであって、
受信機ユニット、制御ユニット及び機能ユニットを有する個人衛生装置を備え、
前記制御ユニットは、少なくとも第1機能モード及び前記第1機能モードとは異なる第2機能モードで前記機能ユニットを駆動するように構成され、且つ、前記制御ユニットは、前記制御ユニットがデフォルト状態にある間、前記第2機能モードの提供を禁止するように更に構成される、
個人衛生システム。」
<相違点>
本願発明1は、
「受信機ユニット及び送信機ユニットを有する別個の制御装置」を備え、
「前記別個の制御装置の前記送信機ユニットは、前記別個の制御装置がデフォルト制御モードから第1制御モードに切り替えられたときに前記個人衛生装置の前記受信機ユニットに少なくとも第1信号を送信するように構成され、
前記制御ユニットは、前記第1信号が前記受信機ユニットによって受信されたときに前記デフォルト状態から第1状態に切り替えられるように構成され、前記第1状態では、前記制御ユニットは少なくとも第1許容期間中前記第2機能モードの提供を許可するように構成され、
前記個人衛生装置は、第2条件が満たされたときに前記別個の制御装置の前記受信機ユニットに少なくとも第3信号を送信するように構成された送信機ユニットを有し、前記第2条件は前記個人衛生装置がスイッチオンされたときに満たされ、前記別個の制御装置は、前記第3信号が受信されたときに第1条件が満たされたとみなすように構成され、 前記別個の制御装置の前記送信機ユニットは、前記別個の制御装置が前記第1制御モードにあり、前記第1条件が満たされたときに、前記個人衛生装置の前記受信機ユニットに少なくとも第2信号を送信するように構成され、前記制御ユニットは、前記第2信号に応じて、前記機能ユニットを前記少なくとも第1及び第2機能モードのうちの1つに、変更不可能に、駆動するように、構成され、
前記個人衛生装置は、前記個人衛生装置が移動されていることを感知する動きセンサを備え、前記第2条件は前記個人衛生装置が移動されるときにも満たされ、
前記別個の制御装置は少なくとも第1信号シーケンスを記憶するための記憶ユニットを備え、前記別個の制御装置の前記送信機ユニットは、前記第1条件が満たされたときに、前記第1信号シーケンスを前記個人衛生装置に送信するように構成され、
前記第1信号シーケンスは、特定の標的に対して最適化された一連の個人衛生処置操作を自動的に提供するために、使用される機能モードに関する情報を含む」のに対して、
引用発明は、「電動歯ブラシ22の充電器部21における通信要素20は、通信リンク24にプラグで接続され、」「恒久的な作動用の支払いが済まされたとき、製造会社又は他の認可された第三者26は、通信リンク24と通信要素20を介して、電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23と通信することによって、ユーザに所有されている試用製品である電動歯ブラシ22を、恒久的な使用が可能なモードで作動させる」点。

(2)判断
相違点について以下検討する。

引用発明の「電動歯ブラシ22の充電器部21における通信要素20」は、具体的な構造が不明であるが、「通信リンク24にプラグで接続され、」「製造会社又は他の認可された第三者26は、通信リンク24と通信要素20を介して、電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23と通信する」から、一つの装置から受信して別の装置に送信する通信の中継機能を備えている装置ということはできる。
しかしながら、引用発明の「電動歯ブラシ22の充電器部21における通信要素20」は、何かを制御する制御装置とはいえず、本願発明1の「受信機ユニット及び送信機ユニットを有する別個の制御装置」になり得るものではない。
また、引用発明の「製造会社又は他の認可された第三者26」は、「通信リンク24と通信要素20を介して、電動歯ブラシ22のマイクロプロセッサ23と通信する」が、具体的にどのような手段で通信するのか不明であり、引用文献1には、「製造会社又は他の認可された第三者26」が、受信機ユニットを有する別個の制御装置で通信することは、記載も示唆もされていない。

引用文献2には、「歯ブラシは、3つの個別のモードを有し得、各モードは、LEDランプを有して表示される」(摘記(2a))ことが記載され、引用文献3には、「歯ブラシコントローラ201から外部デバイス115へのデータは、歯ブラシの使用データを含んでいる」(摘記(3a))こと、「外部デバイス115は、」「歯ブラシ101にデータを送信することができ」、「外部装置115は、外部装置115が行った解析結果を示すデータを送信してもよい」(摘記(3b))ことが記載されているが、引用文献2ないし引用文献3には、上記相違点に係る本願発明1の構成(特に、「前記別個の制御装置の前記送信機ユニットは、前記別個の制御装置がデフォルト制御モードから第1制御モードに切り替えられたときに前記個人衛生装置の前記受信機ユニットに少なくとも第1信号を送信するように構成され」及び「前記個人衛生装置は、前記個人衛生装置が移動されていることを感知する動きセンサを備え、前記第2条件は前記個人衛生装置が移動されるときにも満たされ」という構成)は、記載も示唆もされていない。

したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2−2 本願発明2〜12について
本願発明2〜12は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項2〜16の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記2−1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 まとめ
上記1、2のとおりであるから、本願発明1〜12は、明確であり、本願発明1〜12は、引用発明及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-02-17 
出願番号 P2017-567326
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61C)
P 1 8・ 121- WY (A61C)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 出口 昌哉
一ノ瀬 覚
発明の名称 個人衛生システム  
代理人 小島 一真  
代理人 出口 智也  
代理人 朝倉 悟  
代理人 村田 卓久  
代理人 中村 行孝  

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