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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1381971
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-16 
確定日 2022-02-14 
事件の表示 特願2019− 25860「充電回路及び移動端末」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月13日出願公開、特開2019− 92382〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)6月1日を国際出願日とする特願2017−513190号の一部を、平成31年2月15日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年 1月 6日付け:拒絶理由通知
令和 2年 3月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月30日付け:拒絶査定
令和 2年 7月16日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 1月27日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 3年 5月20日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明は、令和3年5月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「直列に接続された第一回路と、磁気結合素子と、第二回路と、を含む充電回路であって、
前記第一回路は、充電インタフェースから第一電流を受け、前記第一電流を変化した大きさ及び/又は方向を有する第二電流に転換するように構成され、前記第一電流は直流電流であり、
前記磁気結合素子は、第一コイルと、第二コイルとを含み、
前記磁気結合素子は、第三電流を生成するために、変化した大きさ及び/又は方向を有する前記第二電流を利用することにより、電磁誘導の仕方で前記第一コイルから前記第二コイルまでエネルギーを転換するように構成されるとともに、前記第一回路が故障時に、前記第一回路と前記第二回路とを分離するように構成され、それにより前記第一電流は前記第二回路に出力されず、
前記第二回路は、前記第三電流を直流電流に調整するように構成され、
前記磁気結合素子は、前記第一コイルと前記第二コイルとを物理的に閉じられた回路の中に備え、
前記第一回路は、フルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路を制御する制御回路と、を含み、
前記フルブリッジ回路は、第一スイッチトランジスタと、第二スイッチトランジスタと、第三スイッチトランジスタと、第四スイッチトランジスタと、を含み、
前記第一スイッチトランジスタは、前記充電インタフェースに接続されるように構成される第一端と、前記第一コイルの第二端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有し、
前記第二スイッチトランジスタは、前記第一スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、接地されるように構成される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、
を有し、
前記第三スイッチトランジスタは、前記充電インタフェースに接続されるように構成される第一端と、前記第一コイルの第一端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有し、
前記第四スイッチトランジスタは、前記第三スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、接地されるように構成される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、
を有する、移動端末の充電回路。」

第3 令和3年1月27日付け拒絶理由通知の概要
本願の請求項6に対して令和3年1月27日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、次のとおりのものである。なお、当該拒絶理由に対して、令和3年5月20日に手続補正書が提出され、補正前の請求項4を引用する補正前の請求項8が、本願の請求項6に対応する。

本件出願の請求項8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2014−3753号公報
2.特開2012−110211号公報

第4 引用文献の記載および引用発明
1 引用文献1
(1)当審拒絶理由に引用された引用文献1(特開2014−3753号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

「【0001】
本発明は、蓄電装置(例えば、バッテリ)を充電すると共に、当該蓄電装置に蓄えられた電力を利用可能にするための充放電システムに関するものである。
(中略)
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る充放電システムを示す回路図である。図1に示す充放電システム1は、例えば、電気自動車やプラグインハイブリッド車両などの電動車両に搭載され、車載バッテリの充放電を行うものであり、第1のシステム入出力端子対T1,T2が車両の充電口であり、第2のシステム入出力端子対T3,T4がバッテリ2に接続される。なお、バッテリ充電の際には、車両外部の電源(例えば、自宅や共用施設などに設けられた電源コンセント)が、充電ケーブル等を介して第1のシステム入出力端子対T1,T2に接続され、バッテリ放電の際には、第1のシステム入出力端子対T1,T2に交流電力が生成されることとなる。
【0019】
この充放電システム1は、ノイズフィルタ10と、AC/DC変換部(第3の電力変換部)20と、コンデンサ25と、DC/AC変換部(第1の電力変換部)30と、トランス40と、AC/DC変換部(第2の電力変換部)50と、コンデンサ55と、制御部60と、AC/DC変換部20用の絶縁電源71,72,73と、DC/AC変換部30及びAC/DC変換部50用の絶縁電源74,75,76と、切換部81,82,83とを備えている。なお、絶縁電源74,75,76が特許請求の範囲に記載の第1〜第3の絶縁電源に相当し、これらの絶縁電源74,75,76を含む絶縁電源70が特許請求の範囲に記載の絶縁電源に相当する。また、切換部81,82,83が特許請求の範囲に記載の第1〜第3の切換部に相当し、これらの切換部81,82,83を含む切換部80が特許請求の範囲に記載の切換部に相当する。
【0020】
ノイズフィルタ10は、第1のシステム入出力端子対T1,T2に供給される商用交流電力のノイズを除去するためのものである。ノイズが除去された交流電力は、AC/DC変換部20の第1の入出力端子対20T1,20T2へ供給される。
【0021】
AC/DC変換部20は、バッテリ充電時にはPFC機能を有する整流回路として機能し、バッテリ放電時にはインバータ回路として機能する。AC/DC変換部20は、コンデンサ21と、インダクタ22a,22bと、第1〜第4のn型トランジスタ(スイッチング素子)23a〜23d及び第1〜第4のダイオード(整流素子)24a〜24dを含むフルブリッジ回路とによって構成されている。なお、第1〜第4のトランジスタ23a〜23dとしては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-SemiconductorField Effect Transistor)等の大電力用トランジスタを用いることができる。本実施形態では、第1〜第4のトランジスタ23a〜23dとしてIGBTを用いた場合を例示する。
(中略)
【0025】
このAC/DC変換部20の第2の入出力端子対20T3,20T4間には、コンデンサ25が電気的に接続されている。また、AC/DC変換部20の第2の入出力端子対20T3,20T4は、それぞれDC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1,30T2に接続されている。
【0026】
AC/DC変換部30は、バッテリ充電時にはインバータ回路として機能し、バッテリ放電時には整流回路として機能する。AC/DC変換部30は、第1〜第4のn型トランジスタ(スイッチング素子)31a〜31dと、第1〜第4のダイオード(整流素子)32a〜32dとを含むフルブリッジ回路によって構成されている。なお、第1〜第4のトランジスタ31a〜31dとしては、IGBTやMOSFET等の大電力用トランジスタを用いることができる。本実施形態では、第1〜第4のトランジスタ31a〜31dとしてIGBTを用いた場合を例示する。
【0027】
第1のトランジスタ31aのコレクタは第1の入出力端子対の一方30T1に接続されており、第1のトランジスタ31aのエミッタは第2のトランジスタ31bのコレクタに接続されている。第2のトランジスタ31bのエミッタは第1の入出力端子対の他方30T2に接続されている。同様に、第3のトランジスタ31cのコレクタは第1の入出力端子対の一方30T1に接続されており、第3のトランジスタ31cのエミッタは第4のトランジスタ31dのコレクタに接続されている。第4のトランジスタ31dのエミッタは第1の入出力端子対の他方30T2に接続されている。
【0028】
第1のトランジスタ31aのエミッタ及び第2のトランジスタ31bのコレクタはトランス40の1次側コイルの一方の端子に接続されており、第3のトランジスタ31cのエミッタ及び第4のトランジスタ31dのコレクタはトランス40の1次側コイルの他方の端子に接続されている。
(中略)
【0030】
ここで、車両に搭載される電気機器の接地電位はフローティング電位であり、車両外部の電源と車載バッテリ2とを絶縁する必要がある。トランス40は、車両外部の電源と車載バッテリ2とを絶縁するためのものである。トランス40の二次側コイルは、AC/DC変換部50の第1の入出力端子対50T1,50T2に接続されている。
【0031】
AC/DC変換部50は、バッテリ充電時には整流回路として機能し、バッテリ放電時にはインバータ回路として機能する。AC/DC変換部50は、第1〜第4のn型トランジスタ(スイッチング素子)51a〜51d及び第1〜第4のダイオード(整流素子)52a〜52dを含むフルブリッジ回路によって構成されている。なお、第1〜第4のトランジスタ51a〜51dとしては、IGBTやMOSFET等の大電力用トランジスタを用いることができる。本実施形態では、第1〜第4のトランジスタ51a〜51dとしてIGBTを用いた場合を例示する。
(中略)
【0035】
このAC/DC変換部50の第2の入出力端子対50T3,50T4間には、コンデンサ55が電気的に接続されている。また、AC/DC変換部50の第2の入出力端子対50T3,50T4は、それぞれ第2のシステム入出力端子対T3,T4に接続されている。
【0036】
また、AC/DC変換部20の第1〜第4のトランジスタ23a〜23d、DC/AC変換部30の第1〜第4のトランジスタ31a〜31d、及び、AC/DC変換部50の第1〜第4のトランジスタ51a〜51d各々のゲートは、制御部60に接続されている。制御部60は、これらのトランジスタにおけるコレクタ−エミッタ間の導通状態を制御する制御電圧(又は制御電流)を生成する。これらの制御電圧は、絶縁電源71〜76に供給される。
(中略)
【0054】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、AC/DC変換部(第3の電力変換部)20、DC/AC変換部(第1の電力変換部)30、及び、AC/DC変換部(第2の電力変換部)を備え、AC/DC変換を行う充放電システムを例示したが、本発明の特徴は、AC/DC変換部(第3の電力変換部)20を備えず、DC/DC変換を行う充放電システムにも適用可能である。この種のDC/DC変換型の充放電システムは、例えば急速充電を行う場合(充電)や、系統電源(商用電源)との連携を行うPCSに車載バッテリを接続する場合(放電)に適用されることが検討されている。
(中略)
【0056】
また、本実施形態では、車載バッテリ等の充放電を行う大電力系の充放電システムを例示したが、携帯端末等のバッテリの充放電を行う小電力系の充放電システムにも適用可能である。」
(当審注:段落【0026】の「AC/DC変換部30」は「DC/AC変換部30」の誤記と認める。)


「図1



(2)上記記載並びに当業者の技術常識を考慮すると、以下のことがいえる。
ア 段落【0001】によれば、引用文献1には、「充放電システム」が記載されている。

イ 段落【0018】によれば、充放電システム1は、第1のシステム入出力端子対T1,T2が充電口であり、第2のシステム入出力端子対T3,T4がバッテリ2に接続される。

ウ 段落【0019】によれば、充放電システム1は、ノイズフィルタ10と、AC/DC変換部20と、コンデンサ25と、DC/AC変換部30と、トランス40と、AC/DC変換部50と、制御部60とを備えている。

エ 図1によれば、第1のシステム入出力端子対T1,T2と第2のシステム入出力端子対T3,T4との間に、ノイズフィルタ10、AC/DC変換部20、コンデンサ25、DC/AC変換部30、トランス40、及びAC/DC変換部50が、この順に接続されることが見て取れる。

オ 段落【0020】によれば、ノイズフィルタ10は、第1のシステム入出力端子対T1,T2に供給される商用交流電力のノイズを除去するためのものであり、ノイズが除去された交流電力は、AC/DC変換部20へ供給される。
また、上記段落【0021】、【0025】によれば、AC/DC変換部20は、整流回路として機能し、コンデンサ25及びDC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1,30T2に接続されている。
そして、一般に整流回路の後段のコンデンサは整流回路で変換された信号を平滑化するものであるから、前記コンデンサ25は整流回路として機能する前記AC/DC変換部20で整流された信号を平滑化するものといえる。
してみると、引用文献1に記載されたDC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1,30T2には、充電口(第1のシステム入出力端子対T1、T2)から入力されノイズフィルタ10でノイズが除去された交流電流をAC/DC変換部20で整流しコンデンサ25で平滑化した直流電流が入力されるといえる。

カ 段落【0026】によれば、DC/AC変換部30は、インバータ回路として機能し、第1ないし第4のn型トランジスタ31aないし31dを含むフルブリッジ回路によって構成されている。
また、上記段落【0036】によれば、DC/AC変換部30の第1〜第4のトランジスタ31a〜31dのゲートが制御部60に接続され、制御部60はこれらのトランジスタを制御するから、フルブリッジ回路は制御部60により制御されるといえる。

キ 段落【0028】によれば、第1ないし第4のトランジスタ31aないし31dは、トランス40の1次側コイルに接続されているから、第1ないし第4のトランジスタ31aないし31dを含むフルブリッジ回路によって構成されるDC/AC変換部30はトランス40の1次側コイルに接続されているといえる。

ク 段落【0030】によれば、トランス40は、外部の電源とバッテリ2とを絶縁するためのものであり、トランス40の二次側コイル(以下、「2次側コイル」という。)は、AC/DC変換部50に接続されている。

ケ 段落【0028】、【0030】によれば、トランス40は、1次側コイルと2次側コイルを含むといえる。

コ 段落【0031】、【0035】によれば、AC/DC変換部50は、整流回路として機能し、第2のシステム入出力端子対T3,T4に接続されている。

サ 段落【0027】、【0028】、【0036】によれば、第1のトランジスタ31aは、コレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に、エミッタがトランス40の1次側コイルの一方の端子に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続されている。

シ 段落【0027】、【0036】によれば、第2のトランジスタ31bは、コレクタが第1のトランジスタ31aのエミッタに、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続されている。

ス 段落【0027】、【0028】、【0036】によれば、第3のトランジスタ31cは、コレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に、エミッタがトランス40の1次側コイルの他方の端子に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続されている。

セ 段落【0027】、【0036】によれば、第4のトランジスタ31dは、コレクタが第3のトランジスタ31cのエミッタに、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続されている。

ソ 段落【0054】によれば、充放電システム1は、AC/DC変換部20を備えず、DC/DC変換を行う充放電システムに適用可能である。

タ 段落【0056】によれば、充放電システム1は、携帯端末等のバッテリの充放電を行う小電力系の充放電システムにも適用可能であるから、携帯端末のバッテリの充放電を行う充放電システム1といえる。

(3)上記アないしタによれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「第1のシステム入出力端子対T1,T2が充電口であり、第2のシステム入出力端子対T3,T4がバッテリ2に接続され、
ノイズフィルタ10と、AC/DC変換部20と、コンデンサ25と、DC/AC変換部30と、トランス40と、AC/DC変換部50と、制御部60とを備え、
第1のシステム入出力端子対T1,T2と第2のシステム入出力端子対T3,T4との間に、ノイズフィルタ10、AC/DC変換部20、コンデンサ25、DC/AC変換部30、トランス40、及びAC/DC変換部50の順に接続され、
DC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1,30T2には、充電口から入力されノイズフィルタ10でノイズが除去された交流電流をAC/DC変換部20で整流しコンデンサ25で平滑化した直流電流が入力され、
DC/AC変換部30は、インバータ回路として機能し、第1ないし第4のn型トランジスタ31aないし31dを含むフルブリッジ回路によって構成され、フルブリッジ回路は制御部60により制御され、
トランス40は、1次側コイルと2次側コイルを含み、
DC/AC変換部30はトランス40の1次側コイルに接続され、
トランス40は、外部の電源とバッテリ2とを絶縁するためのものであり、
トランス40の2次側コイルは、AC/DC変換部50に接続され、
AC/DC変換部50は、整流回路として機能し、第2のシステム入出力端子対T3,T4に接続され、
第1のトランジスタ31aは、コレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に、エミッタがトランス40の1次側コイルの一方の端子に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続され、
第2のトランジスタ31bは、コレクタが第1のトランジスタ31aのエミッタに、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続され、
第3のトランジスタ31cは、コレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に、エミッタがトランス40の1次側コイルの他方の端子に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続されており、
第4のトランジスタ31dは、コレクタが第3のトランジスタ31cのエミッタに、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続され、
AC/DC変換部20を備えず、DC/DC変換を行う充放電システムに適用可能な、
携帯端末のバッテリの充放電を行う充放電システム1。」

2 引用文献2
(1)当審拒絶理由に引用された引用文献2(特開2012−110211号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

「【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る電力伝送システムを車両充電設備に適用した例を示す図である。本発明の電力伝送システムは、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両への充電のためのシステムに用いるのに好適である。そこで、図1に示すような車両充電設備への適用例を用いて以下説明する。なお、本発明の電力伝送システムは、車両充電設備以外の電力伝送にももちろん用いることが可能である。
(中略)
【0059】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。先の実施形態においてはスイッチング素子を2つ用いたハーフブリッジ方式のインバーター回路によって矩形波を生成していたが、他の実施形態においては、スイッチング素子を4つ用いたフルブリッジ方式のインバーター回路によって矩形波を生成する。
【0060】
図7は本発明の他の実施形態に係る電力伝送システムにおける電力伝送部を説明する図であり、図8は本発明の他の実施形態に係る電力伝送システムにおけるスイッチング素子のオンオフ制御を示す図である。
【0061】
本実施形態においては、直列接続されたスイッチング素子SW1とスイッチング素子SW4との間の接続部T1と、直列接続されたスイッチング素子SW2とスイッチング素子SW3との間の接続部T2とが、電力伝送路CAを介して、送電側磁気共鳴アンテナ部120に接続される構成となっており、図8に示すように、スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW4がオンのとき、スイッチング素子SW2とスイッチング素子SW3がオフとされ、スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW4がオフのとき、スイッチング素子SW2とスイッチング素子SW3がオンとされることで、接続部T1と接続部T2との間に矩形波の交流電圧を発生させる。」

図7




(2)上記記載並びに当業者の技術常識を考慮すると、以下のことがいえる。
ア 上記段落【0020】によれば、上記引用文献2には、充電のためのシステムが記載されている。

イ 上記段落【0059】、【0061】によれば、スイッチング素子を4つ用いたフルブリッジ方式のインバータ回路によって矩形波の交流電圧が生成され、図7によれば、該交流電圧をコイルに供給することが読み取れる。

ウ 図7によれば、フルブリッジ方式のインバータ回路のスイッチング素子SW3及びSW4の低電位側が接地されていることが見て取れる。

(3)以上によれば、引用文献2には次の技術が記載されている。
「スイッチング素子を4つ用いたフルブリッジ方式のインバータ回路によって生成された交流電圧をコイルに供給する充電のためのシステムにおいて、前記インバータ回路の2つのスイッチング素子の低電位側を接地すること。」

第5 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「DC/AC変換部30」は、「インバータ回路」として機能するものであるから、入力された直流電流を交流電流に変換することは明らかである。よって、引用発明の「DC/AC変換部30」は、本願発明の「第一の電流を受け、前記第一電流を変化した大きさ及び/又は方向を有する第二電流に転換するように構成され、前記第一電流は直流電流であ」る「第一回路」に相当する。
また、引用発明の「トランス40」は、「1次側コイルと2次側コイルを含」むものであり、「トランス40」の「1次側コイル」と「2次側コイル」が磁気的に結合されていることは明らかであるから、本願発明の「磁気結合素子」に相当する。
そして、引用発明の「AC/DC変換部50」は「トランス40の2次側コイル」「に接続され」、「整流回路として機能」するから、本願発明の「磁気結合素子」が「第二電流を利用」し「生成」した「第三電流を直流電流に調整するように構成され」た「第二回路」に相当する。
さらに、引用発明では、「DC/AC変換部30、トランス40、及びAC/DC変換部50の順に接続され」るから、DC/AC変換部30、トランス40、及びAC/DC変換部50が電気的に直列に接続されることは明らかであり、また、「充放電システム1」は、バッテリの充電を行うものであるから、充電回路といえる。
したがって、引用発明の「DC/AC変換部30、トランス40、及びAC/DC変換部50の順に接続され」る「充放電システム1」は、本願発明の「直列に接続された第一回路と、磁気結合素子と、第二回路と、を含む充電回路」に相当する。

イ 引用発明の「充放電システム1」の「充電口」は、本願発明の「充電インタフェース」に相当する。
また、引用発明において、「直流電流が入力され」、「インバータ回路として機能」する「DC/AC変換部30」は、入力された直流電流を交流電流に変換することは明らかであるから、引用発明と本願発明とは、「第一回路」が「第一電流を受け、前記第一電流を変化した大きさ及び/又は方向を有する第二電流に転換するように構成され、前記第一電流は直流電流であ」る点で共通する。
ただし、本願発明の「第一回路」は「充電インタフェースから第一電流を受け」るのに対し、引用発明の「DC/AC変換部30」は「充電口から入力されノイズフィルタ10でノイズが除去された交流電流をAC/DC変換部20で整流しコンデンサ25で平滑化した直流電流が入力され」る点で相違する。

ウ 引用発明の「トランス40は、1次側コイルと2次側コイルを含む」ことは、本願発明の「磁気結合素子は、第一コイルと、第二コイルとを含」むことに相当する。

エ 引用発明の「トランス40」は「1次側コイルと2次側コイルを含」むから、「1次側コイル」に「インバータ回路として機能」する「DC/AC変換部30」から電流が流れると、トランスの動作として、電磁誘導により「2次側コイル」に電流が誘導されることは明らかである。そして、引用発明の「トランス40」が「2次側コイル」に電流を誘導することは、本願発明の「磁気結合素子」が「第三電流を生成するために、変化した大きさ及び/又は方向を有する前記第二電流を利用することにより、電磁誘導の仕方で前記第一コイルから前記第二コイルまでエネルギーを転換するように構成される」ことに相当する。

オ また、本願発明の「前記第一回路が故障時に、前記第一回路と前記第二回路とは前記磁気結合素子によって分離され」ることは、本願明細書の段落【0030】の「本発明の実施形態において、容易に破壊するスイッチトランジスタ(MOSトランジスタのような)は第一回路内に配置される。スイッチトランジスタの破壊が生じる場合、第一回路はスイッチトランジスタを介してDCをACに転換することができない。これにより、充電インタフェースにおけるDC入力は充電インタフェースの後続のコンポーネント又はバッテリーに直接に与えられる。しかし、第一回路と第二回路の間に配置された磁気結合素子により、充電回路のDC電流路を切断することができる。すなわち、第一回路におけるスイッチトランジスタは破壊され、又は故障された場合であっても充電インタフェースにおけるDC入力を第二回路に流すことができず」との記載からすれば、第一回路内に配置されたスイッチトランジスタが破壊された場合、直流電流が入力されても、磁気結合素子によって直流電流路が切断されることを意味する。
そして、引用発明において、「トランス40の1次側コイル」は「DC/AC変換部30」に接続され、「トランス40の2次側コイル」は「AC/DC変換部50」に接続され、「1次側コイルと2次側コイルを含」む「トランス40」は「外部の電源とバッテリ2とを絶縁するためのものであ」るから、「DC/AC変換部30」を構成する「第1ないし第4のn型のトランジスタ31aないし31d」が破壊され、直流電流が「トランス40」の「1次側コイル」に入力された場合でも、「トランス40」は「DC/AC変換部30」と「AC/DC変換部50」との間を直流的に分離、即ち、直流電流の電流路を切断することは明らかである。
よって、引用発明において、「DC/AC変換部30」を構成する「第1ないし第4のn型のトランジスタ31aないし31d」が破壊され、直流電流が入力された場合でも、「トランス40」は「DC/AC変換部30」と「AC/DC変換部50」との間を直流的に分離することは、本願発明の「前記第一回路が故障時に、前記第一回路と前記第二回路とは前記磁気結合素子によって分離され、それにより前記第一電流は前記第二回路に出力されず」に相当する構成を備える。

カ 引用発明の「AC/DC変換部50は、整流回路として機能」することは、本願発明の「第二回路」が「前記第三電流を直流電流に調整するように構成され」ることに相当する。

キ 引用発明の「1次側コイル」と「2次側コイル」を含む「トランス40」が、「携帯端末のバッテリの充放電を行う充放電システム1」に備えられるものであることは、本願発明の「磁気結合素子」が「前記第一コイルと前記第二コイルとを物理的に閉じられた回路の中に備えている」ことに相当する。

ク 引用発明の「フルブリッジ回路」は、本願発明の「フルブリッジ回路」」に相当する。また、引用発明の「制御部60」は、「フルブリッジ回路」を制御するから、本願発明の「フルブリッジ回路を制御する制御回路」に相当する。
よって、引用発明の「フルブリッジ回路によって構成され」る「DC/AC変換部30」と「フルブリッジ回路」を制御する「制御部60」とを併せた構成は、本願発明の「フルブリッジ回路」と「前記フルブリッジ回路を制御する制御回路」とを含む「第一回路」に相当する。

ケ 引用発明の「フルブリッジ回路」が「第1ないし第4のn型トランジスタ31aないし31dを含む」ことは、本願発明の「前記フルブリッジ回路は、第一スイッチトランジスタと、第二スイッチトランジスタと、第三スイッチトランジスタと、第四スイッチトランジスタと、を含」むことに相当する。

コ 引用発明の「第1ないし第4のトランジスタ31aないし31d」の「コレクタ」、「エミッタ」及び「ゲート」は、本願発明の第一ないし第四スイッチトランジスタの「第一端」、「第二端」及び「制御端」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「1次側コイルの一方の端子」及び「1次側コイルの他方の端子」は、本願発明の「第一コイルの第一端」及び「第一コイルの第二端」に相当する。

サ 上記コを踏まえれば、引用発明の「第3のトランジスタ31c」は、「コレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に、エミッタがトランス40の1次側コイルの他方の端子に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続されて」いるから、本願発明の「第一スイッチトランジスタ」に相当するとともに、「第一端と、前記第一コイルの第二端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有」する点で共通する。
ただし、本願発明の「第一スイッチトランジスタ」の「第一端」は「前記充電インタフェースに接続されるように構成される」のに対して、引用発明の「第3のトランジスタ31c」の「コレクタ」は「第1の入出力端子対の一方30T1」に接続されている点で相違する。

シ 引用発明の「第4のトランジスタ31d」は、「コレクタが第3のトランジスタ31cのエミッタに、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続されている」から、本願発明の「第二スイッチトランジスタ」に相当するとともに、「前記第一スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有」する点で共通する。
ただし、本願発明の「第二スイッチトランジスタ」の「第二端」は「接地されるように構成される」のに対して、引用発明の「第4のトランジスタ31d」の「エミッタ」は「第1の入出力端子対の他方30T2」に接続されている点で相違する。

ス 引用発明の「第1のトランジスタ31a」は、「コレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に、エミッタがトランス40の1次側コイルの一方の端子に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続されて」いるから、本願発明の「第三スイッチトランジスタ」に相当するとともに、「第一端と、前記第一コイルの第一端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有」する点で共通する。
ただし、本願発明の「第三スイッチトランジスタ」の「第一端」は「充電インタフェースに接続されるように構成される」のに対して、引用発明の「第1のトランジスタ31a」の「コレクタ」は「第1の入出力端子対の一方30T1」に接続されている点で相違する。

セ 引用発明の「第2のトランジスタ31b」は、「コレクタが第1のトランジスタ31aのエミッタに、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に、ゲートが制御部60にそれぞれ接続されて」いるから、本願発明の「第四スイッチトランジスタ」に相当するとともに、「前記第三スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有する」点で共通する。
ただし、本願発明の「第四スイッチトランジスタ」の「第二端」は「接地されるように構成される」のに対して、引用発明の「第2のトランジスタ31b」の「エミッタ」は「第1の入出力端子対の他方30T2」に接続されている点で相違する。

ソ 引用発明の「携帯端末のバッテリの充放電を行う充放電システム1」は、携帯端末のバッテリの充電を行うから、本願発明の「移動端末の充電回路」に相当する。

(2)アないしソによれば、本願発明と引用発明との一致点、及び、相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「直列に接続された第一回路と、磁気結合素子と、第二回路と、を含む充電回路であって、
前記第一回路は、第一電流を受け、前記第一電流を変化した大きさ及び/又は方向を有する第二電流に転換するように構成され、前記第一電流は直流電流であり、
前記磁気結合素子は、第一コイルと、第二コイルとを含み、
前記磁気結合素子は、第三電流を生成するために、変化した大きさ及び/又は方向を有する前記第二電流を利用することにより、電磁誘導の仕方で前記第一コイルから前記第二コイルまでエネルギーを転換するように構成されるとともに、前記第一回路が故障時に、前記第一回路と前記第二回路とを分離するように構成され、それにより前記第一電流は前記第二回路に出力されず、
前記第二回路は、前記第三電流を直流電流に調整するように構成され、
前記磁気結合素子は、前記第一コイルと前記第二コイルとを物理的に閉じられた回路の中に備え、
前記第一回路は、フルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路を制御する制御回路と、を含み、
前記フルブリッジ回路は、第一スイッチトランジスタと、第二スイッチトランジスタと、第三スイッチトランジスタと、第四スイッチトランジスタと、を含み、
前記第一スイッチトランジスタは、第一端と、前記第一コイルの第二端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有し、
前記第二スイッチトランジスタは、前記第一スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、
を有し、
前記第三スイッチトランジスタは、第一端と、前記第一コイルの第一端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有し、
前記第四スイッチトランジスタは、前記第三スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、
を有する、移動端末の充電回路。」

(相違点1)
本願発明の「第一回路」は「充電インタフェースから第一電流を受け」るのに対し、引用発明の「DC/AC変換部30」は「充電口から入力され、ノイズフィルタ10でノイズが除去された交流電流をAC/DC変換部20で整流しコンデンサ25で平滑化した直流電流が入力され」る点。

(相違点2)
本願発明の「第三スイッチトランジスタ」及び「第一スイッチトランジスタ」の「第一端」は「前記充電インタフェースに接続されるように構成される」のに対して、引用発明の「第1のトランジスタ31a」及び「第3のトランジスタ31c」の「コレクタ」は「第1の入出力端子対の一方30T1」に接続されている点。

(相違点3)
本願発明の「第四スイッチトランジスタ」及び「第二スイッチトランジスタ」の「第二端」は「接地されるように構成される」のに対して、引用発明の「第2のトランジスタ31b」及び「第4のトランジスタ31d」の「エミッタ」は「第1の入出力端子対の他方30T2」に接続されている点。

2 相違点に対する判断
(1)相違点3について
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。
引用文献2には、スイッチング素子を4つ用いたフルブリッジ方式のインバータ回路によって生成された交流電圧をコイルに供給する充電のためのシステムにおいて、前記インバータ回路の2つのスイッチング素子の低電位側を接地する技術が記載されている。(上記「第4 2」を参照。)
そして、回路の低電位側を接地することは例示するまでもなく周知の技術であるから、引用発明のフルブリッジ回路において、引用文献2に記載された技術のように、引用発明のフルブリッジ回路の低電位側である第2のトランジスタ31b及び第4のトランジスタ31dのエミッタを接地することにより、相違点3に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(2)相違点1及び2について
引用発明は、「AC/DC変換部20を備えず、DC/DC変換を行う充放電システムにも適用可能」であり、引用文献1の段落【0020】によれば、ノイズフィルタ10は、第1のシステム入出力端子対T1,T2に供給される商用交流電力のノイズを除去するためのものであることからすれば、引用発明の「充電口」に直接「DC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1、30T2」を接続し、該「充電口」から直流電流を入力することは当業者が適宜なし得たことである。
そして、引用発明において、「充電口」に直接「DC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1、30T2」を接続することにより、「第1のトランジスタ31a」及び「第3のトランジスタ31c」の「コレクタ」が「充電口」に電気的に接続されることは明らかである。
よって、引用発明に基づいて、相違点1及び相違点2に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が適宜なし得たことである。

(3)小括
以上から、相違点1ないし相違点3に係る構成は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 審判請求人の主張について
(1)請求人は、令和3年5月20日提出の意見書において、
ア「引用文献1には、車載バッテリー等の大電力系の充放電システムの具体的な特徴は記載されているが、携帯端末等のバッテリーの充放電を行う小電力系の充放電システムに適用した場合における具体的な構成については記載されていない。」、
イ「引用文献1に記載された発明は、電動車両に搭載された蓄電装置の充放電システムであり、引用文献2に記載された発明は、ワイヤレスで電力を伝送する電力伝送システムに関するものであり、それぞれの技術分野が本願発明における移動端末の充電方法又は装置という技術分野とは全く相違している。そして、引用文献1に記載された発明は、電動車両の蓄電装置の充放電システムの小型化を目的としており、引用文献2に記載された発明は、電力伝送システムにおけるスイッチングロスを低減し、電力伝送効率の悪化を抑制することを目的としており、本願発明における、移動端末の充電回路の信頼性を向上させるという目的とは相違している。よって、当業者がこのような引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された発明とを組み合わせることを動機付ける記載は、引用文献1、2のいずれにおいても存在しない。」、
と主張する。
(2)しかしながら、引用文献1の段落【0056】には、「本実施形態では、車載バッテリ等の充放電を行う大電力系の充放電システムを例示したが、携帯端末等のバッテリの充放電を行う小電力系の充放電システムにも適用可能である。」と記載されていることから、引用文献1において、「携帯端末のバッテリの充放電を行う充放電システム1」である引用発明が記載されているといえる。
また、引用発明と引用文献2に記載された技術とは、インバータ回路から交流をコイルに供給するという共通の機能を有していることから、引用発明と引用文献2に記載された技術とを組み合わせる動機付けが存在することは明らかであって、引用発明に対する引用文献2に記載されたインバータ回路のスイッチング素子の低電位側を接地する技術の組み合わせは引用発明の小型化という目的の妨げにならない。
よって、請求人の主張アおよび主張イは採用できない。

第8 むすび
以上のとおり、本願の請求項6に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 山田 正文
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-09-08 
結審通知日 2021-09-10 
審決日 2021-09-28 
出願番号 P2019-025860
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山田 正文
特許庁審判官 永井 啓司
畑中 博幸
発明の名称 充電回路及び移動端末  
代理人 中村 行孝  
代理人 吉元 弘  
代理人 関根 毅  
代理人 朝倉 悟  

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