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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C07K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07K
管理番号 1382046
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-02 
確定日 2022-02-16 
事件の表示 特願2018−188424「ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチドに結合することによりポリペプチドの流体力学的体積を増加させる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日出願公開、特開2019− 38812〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年11月20日(パリ条約による優先権主張 2012年11月20日 米国)を国際出願日とする特願2015−542413号の一部を新たな特許出願として平成30年10月3日に出願されたものであって、手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成30年10月 3日 上申書・手続補正書の提出
令和 1年 8月 2日付け 拒絶理由通知書
令和 2年 2月 6日 意見書・手続補正書の提出
令和 2年 5月26日付け 拒絶査定
令和 2年10月 2日 審判請求書・手続補正書の提出

第2 令和2年10月2日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
令和2年10月2日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(令和2年2月6日付け手続補正により補正されたもの)と、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は、それぞれ次のとおりのものである。
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「目的の組換え体ポリペプチドの流体力学的サイズまたは流体力学的体積を増加させる方法であって、
前記目的の組換え体ポリペプチドは、ヒト成長ホルモン(hGH)であり、前記方法は、
(a)前記hGHのアミノ末端(N末端)に1個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させ、前記(hGH)のカルボキシ末端(C末端)に2個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させるステップと、
(b)宿主細胞において前記目的の組換え体ポリペプチドであるCTP改変ポリペプチドを発現させるステップであって、前記CTP単位をグリコシル化するステップを含む、該ステップとを含み、
前記CTP改変ポリペプチドは、選択に応じて、前記CTP改変ポリペプチドのアミノ末端に結合されたシグナルペプチドを含み、
前記CTP単位がグリコシル化された前記CTP改変ポリペプチドは、グリコシル化CTP単位が1個結合されるごとに、前記CTP改変ポリペプチドの流体力学的サイズが約28〜53kDa大きくなることを特徴とする方法。」

本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願補正発明」という。)
「目的の組換え体ポリペプチドの流体力学的サイズまたは流体力学的体積を増加させる方法であって、
前記目的の組換え体ポリペプチドは、ヒト成長ホルモン(hGH)であり、前記方法は、
(a)前記hGHのアミノ末端(N末端)に1個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させ、前記(hGH)のカルボキシ末端(C末端)に2個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させるステップと、
(b)宿主細胞において前記目的の組換え体ポリペプチドであるCTP改変ポリペプチドを発現させるステップであって、前記CTP単位をグリコシル化するステップを含む、該ステップとを含み、
前記CTP改変ポリペプチドは、選択に応じて、前記CTP改変ポリペプチドのアミノ末端に結合されたシグナルペプチドを含み、
前記CTP単位がグリコシル化された前記CTP改変ポリペプチドは、グリコシル化CTP単位が1個結合されるごとに、前記CTP改変ポリペプチドの流体力学的サイズが約28〜30kDa大きくなることを特徴とする方法。」

2 補正の適否
本件補正は、請求項1の「目的の組換え体ポリペプチドの流体力学的サイズまたは流体力学的体積を増加させる方法」において、グリコシル化CTP単位が1個結合されるごとの、CTP改変ポリペプチドの流体力学的サイズの増加量を、「約28〜53kDa大きくなる」から、「約28〜30kDa大きくなる」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。

(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用され、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったEndocrinology,2010年 9月,Vol.151, No.9,p.4410-4417(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。なお、原文が英語のため、当審による翻訳文を示す。

ア 「GHは、2個のジスルフィド結合および4個のαヘリックスを有する191個のアミノ酸を含む22kDaの蛋白質である(4,5)。」(4410ページ、左欄8〜9行)

イ 「キメラ遺伝子および発現ベクターの構築
hCGβのCTPを含むカセット遺伝子を、ヒトGHのコード配列に直列に融合して、4つのキメラ遺伝子を構築し、ここで、1、2または3個のCTPを、hGHコード配列のN末端またはC末端に連結した。調製された変異体は、GH−野生型(WT;DG44細胞において産生される組換えGH)、GH−CTP(CTPはC末端に連結された)、CTP−GH(CTPはN末端に連結された)、CTP−GH−CTP、およびCTP−GH−CTP−CTP(GH−LA)である(図1)。hGHcDNA−WTおよびhGHcDNA−CTPsの配列を含むDNA断片は、GeneArt(Regensburg,Germany)によって合成された。DNA断片は、制限酵素XbaI(N末端)およびNotI(C末端)の認識部位を含む。異なる変異体のhGHおよびCTP配列を含む断片を完全に配列決定して、合成中にエラーが導入されていないことを確認し、真核生物発現ベクターpCI−DHFRのクローニング部位のXbaI−NotI部位に連結した。」(4411ページ、右欄7〜25行)

ウ 「結果
トランスフェクトされた細胞からのhGH変異体の分泌
hGH cDNA、WT、およびキメラを、真核生物発現ベクターであるpCI−DHFRプラスミドに挿入し、チャイニーズハムスター卵巣−DG44細胞にトランスフェクトした。hGH変異体を分泌した安定なクローンを選択した。条件培地中のhGH変異体の濃度を、GH ELISAキットを用いて測定した。
ウエスタンブロット分析および変性SDS−PAGE後のhGH抗血清を用いることにより、培地へのGH変異体の分泌を検出することができた。hGH−WTおよび市販のhGHであるBiotropinは、hGH−CTPsよりも速く移動し、約22kDaの分子量を示した(図2)。1、2または3個のCTPを含むGH変異体は、それぞれ30、39、および47.5kDaのより高い分子量を示した。hGH−CTPsの分子量の増加は、28個のアミノ酸(約2800Daの分子量)の付加によるものと、おそらく、CTPに結合されたO結合オリゴ糖鎖によるものである。これらのデータは、CTPのO結合グリコシル化認識部位が、その配列が異なるタンパク質に融合されても保存されることを示し得る。」(4412ページ、右欄37行〜4413ページ、左欄5行)

エ 「

」(4413ページ、図2)

(2)参考文献の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用され、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったCurr. Opin. Biotechnol.,2011年12月,Vol.22, No.6,p.868-876(以下、「参考文献」という。)には、次の事項が記載されている。なお、原文が英語のため、当審による翻訳文を示す。

ア 「図1

半減期延長戦略には、第1に、流体力学的体積を増加させる戦略、第2に、さらにFcRn媒介性リサイクルを利用する戦略、および第3に、選別エンドソームにおけるタンパク質-受容体複合体の安定性の調節を目的とする戦略が含まれる。」(869ページ、図1)

イ 「炭水化物のグリコシル化および結合
・・・
別のアプローチは、タンパク質治療薬へのO−グリコシル化部位の導入を利用する。このようなO−グリコシル化部位は、例えば、ヒト絨毛性ゴナドトロピンβーサブユニットのC末端ペプチド(CTP)に存在する。EPOまたはhGHへのCTPの1つまたはいくつかのコピーの融合はそれぞれ、改善されたインビボ効力および半減期を有するO−グリコシル化誘導体をもたらすことが示された(24,25)。」(871ページ、左欄17行〜右欄10行)

(3)引用例に記載された発明
上記(1)ウには、hGHにCTPを付加することで、実際にSDS−PAGEによって測定される分子量も増加すること、及び、hGH−CTPsの分子量の増加は、28個のアミノ酸(約2800Daの分子量)の付加によるものと、おそらく、CTPに結合されたO結合オリゴ糖鎖によるものであることが記載されている。また、上記(1)イでは、hGH変異体として、hGHにCTPが1個付加したGH−CTP(CTPはC末端に連結された)又はCTP−GH(CTPはN末端に連結された)、2個付加したCTP−GH−CTP、3個付加したCTP−GH−CTP−CTPが作製されており、これはそれぞれ上記(1)ウの、1、2または3個のCTPを含むGH変異体にそれぞれ相当する。
そうすると、引用例には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「hGHの分子量を増加させる方法であって、hCGβのCTPを含むカセット遺伝子を、hGHのコード配列に直列に融合してCTP−hGH−CTP−CTPを調整し、チャイニーズハムスター卵巣−DG44細胞にトランスフェクトして、CTPにO結合オリゴ糖鎖を含むCTP−hGH−CTP−CTPを分泌させることを含む方法。」(以下、「引用発明」という。)

(4)本願補正発明と引用発明との対比
引用発明の「hGH」、「CTP−hGH−CTP−CTP」、「hCGβのCTP」、「チャイニーズハムスター卵巣−DG44細胞」はそれぞれ、本願補正発明の「目的の組換え体ポリペプチド」、「CTP改変ポリペプチド」、「絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)」、「宿主細胞」に相当する。
また、本願補正発明の「hGHのアミノ末端(N末端)に1個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させ、前記(hGH)のカルボキシ末端(C末端)に2個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させるステップ」は、本願明細書【0064】段落の「CTPはポリペプチドまたはその断片に組換えによって融合される。」との記載や、【0311】段落の「CTPペプチドを、表2に詳細に示されるように、単一コピーでまたは直列に、N末端および/またはC末端に融合した。改変プラスミドを、タンパク質の流体力学的体積を増加させる際に決定的な役割を果たすO−グリカンの適切な構造化が可能なCHO細胞株に形質移入し、発現させた(表5参照)。」との記載から、遺伝子組換えによりCTPとhGHの遺伝子を所定の順番で結合させることを意味すると認められる。したがって、引用発明の「hCGβのCTPを含むカセット遺伝子を、hGHのコード配列に直列に融合してCTP−hGH−CTP−CTPを調整」は、本願補正発明の「hGHのアミノ末端(N末端)に1個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させ、前記(hGH)のカルボキシ末端(C末端)に2個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させるステップ」に相当する。
さらに、引用発明の「チャイニーズハムスター卵巣−DG44細胞にトランスフェクトして、CTPにO結合オリゴ糖鎖を含むCTP−hGH−CTP−CTPを分泌させる」は、CTPにO結合オリゴ糖鎖が結合することは、CTPのグリコシル化であるから、本願補正発明の「宿主細胞において前記目的の組換え体ポリペプチドであるCTP改変ポリペプチドを発現させるステップであって、前記CTP単位をグリコシル化するステップ」に相当する。
そして、本願補正発明が増加させる「流体力学的サイズまたは流体力学的体積」と、引用発明が増加させる「分子量」は、いずれも分子の大きさに関するものである。
したがって、本願補正発明と、引用発明とを対比すると、両者は、
「目的の組換え体ポリペプチドの大きさを増加させる方法であって、
目的の組換え体ポリペプチドは、ヒト成長ホルモン(hGH)であり、前記方法は、
(a)前記hGHのアミノ末端(N末端)に1個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させ、前記(hGH)のカルボキシ末端(C末端)に2個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させるステップと、
(b)宿主細胞において前記目的の組換え体ポリペプチドであるCTP改変ポリペプチドを発現させるステップであって、前記CTP単位をグリコシル化するステップを含む、該ステップとを含む、
方法。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願補正発明は、「流体力学的サイズまたは流体力学的体積を増加させる方法」であるのに対し、引用発明では、「分子量を増加させる方法」である点。

(相違点2)
本願補正発明は、「CTP改変ポリペプチドは、グリコシル化CTP単位が1個結合させるごとに、前記CTP改変ポリペプチドの流体力学的サイズが28〜30kDa大きくなること」を特定しているのに対し、引用発明ではそのような特定がされていない点。

(5)判断
ア 相違点1について
本願明細書には、用語「流体力学的サイズ」及び「流体力学的体積」は同義であって、水溶液中への分子の拡散に基づく分子の見掛けのサイズを指すと定義されており、タンパク質の流体力学的サイズは、質量および形(高次構造)の両方に依存する旨も記載されている(【0018】段落)。
この点から、引用例の記載を検討すると、引用例には、hGH及びCTPは、それぞれ191アミノ酸(分子量22kDa)及び28アミノ酸(分子量2800Da)からなること(上記(1)ア、ウ)、及び、引用発明のようにチャイニーズハムスター卵巣−DG44細胞で産生されたCTP−hGH−CTP−CTPのCTPは、O結合オリゴ糖鎖を有していること(上記(1)ウ)が記載されている。これによれば、引用発明のCTP−hGH−CTP−CTPは、191アミノ酸からなるhGHに、28アミノ酸及びO結合オリゴ糖鎖を含むCTPが3つ結合することにより、hGHと比べて、アミノ酸部分のみでも分子量が1.5倍近く増大し、さらに嵩の大きなO結合オリゴ糖鎖も付加された、相当大きなものであることが理解される。たとえ、本願明細書の上記記載のとおり、タンパク質の流体力学的サイズは質量すなわち分子量だけでなく、形(高次構造)にも依存するとしても、上記(2)アの図に示されるように、あるタンパク質に、ポリマーや炭水化物、遺伝子組換えタンパク質(上記(2)イには、CTPも例示されている。)などを結合させることで、分子量が増大すれば、嵩が増し、流体力学的体積も増大することは技術常識であり、CTP−hGH−CTP−CTPは、上述のとおり、hGHよりも相当嵩張る形状をしていると解されるのだから、流体力学的体積も増大していると考えるのが自然である。
したがって、引用発明は、分子量を増大させるだけでなく、流体力学的サイズまたは流体力学的体積も増加させていると認められるから、相違点1は実質的な相違点ではないか、当業者にとって自明な事項にすぎない。

イ 相違点2について
本願補正発明の「流体力学的サイズが約28〜30kDa大きくなる」ことについて、本願請求項1では、その測定方法は特定されていない。そこで、本願明細書を参照すると、本願補正発明の数値は、実施例(特に【0327】段落)に記載されるように、TSKgel G2000SW SECカラム」(SECはサイズ排除クロマトグラフィーと認める。)を用いたHPLC(Dionex UltiMate 3000)(HPLCは、高速液体クロマトグラフィーと認める。)で測定した結果に基づくと解される。
一方、引用例には、当該HPLCを用いた測定結果が示されていないので、当該数値について直接の比較ができないため、引用例と本願明細書に共通して記載されたSDS−PAGEの結果を検討する。
引用発明のCTP−hGH−CTP−CTPは、上記(1)ウで摘記したように、本願実施例のCTP改変ポリペプチドを発現させたのと同様のCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞株に形質転換し発現させたものであり、CTPがグリコシル化されたものである。そして、SDS−PAGEの解析結果では、CTP−hGH−CTP−CTPが、47.5kDaで、CTPを有しないBiotropinおよびhGH−WTが約22kDaである(上記(1)ウ、エ)。
本願について、本願図1から、1.CTP−hGH−CTP−CTP(MOD−4023)、2.Biotropin(rhGH)(本願明細書【0010】段落)のSDS−PAGE解析結果は、CTP−hGH−CTP−CTPが37kDaと50kDaのサイズマーカーの間で50kDa付近に泳動されており、Biotropin(hGH)が20kDaのサイズマーカー付近まで泳動されている。このように、CTP−hGH−CTP−CTPとhGHについての、引用例と本願のSDS−PAGE解析結果はよく一致している。
そうすると、引用発明のCTP−hGH−CTP−CTPは本願のCTP改変ポリペプチドと同様の形状である蓋然性が極めて高く、引用発明のCTP−hGH−CTP−CTPは、本願補正発明で特定されている「CTP改変ポリペプチドは、グリコシル化CTP単位が1個結合させるごとに、前記CTP改変ポリペプチドの流体力学的サイズが28〜30kDa大きくなること」を満たすものと認められる。よって、この点は相違点とならない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないし、また、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり特許法第29条第2項に該当し特許を受けることができないものでもある。

(6)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
令和2年10月2日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年2月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「目的の組換え体ポリペプチドの流体力学的サイズまたは流体力学的体積を増加させる方法であって、
前記目的の組換え体ポリペプチドは、ヒト成長ホルモン(hGH)であり、前記方法は、
(a)前記hGHのアミノ末端(N末端)に1個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させ、前記(hGH)のカルボキシ末端(C末端)に2個の絨毛性ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチド(CTP)単位を組換えにより結合させるステップと、
(b)宿主細胞において前記目的の組換え体ポリペプチドであるCTP改変ポリペプチドを発現させるステップであって、前記CTP単位をグリコシル化するステップを含む、該ステップとを含み、
前記CTP改変ポリペプチドは、選択に応じて、前記CTP改変ポリペプチドのアミノ末端に結合されたシグナルペプチドを含み、
前記CTP単位がグリコシル化された前記CTP改変ポリペプチドは、グリコシル化CTP単位が1個結合されるごとに、前記CTP改変ポリペプチドの流体力学的サイズが約28〜53kDa大きくなることを特徴とする方法。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったEndocrinology,2010年 9月,Vol.151, No.9,p.4410-4417(上記第2の2(1)の「引用例」である。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。また、同文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

3 引用文献およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例およびその記載事項は、上記第2の2(1)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、CTP改変ポリペプチドの流体力学的サイズの増加割合について、本願補正発明の「約28〜30kDa大きく」に対し、「約28〜53kDa大きく」することを特定するものである。そして、本願発明の一部に包含される本願補正発明は、上記第2の2(1)〜(5)のとおり、引用例に記載された発明であるか、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明についても同様に、引用例に記載された発明であり、また、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 長井 啓子
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-09-02 
結審通知日 2021-09-07 
審決日 2021-09-29 
出願番号 P2018-188424
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C07K)
P 1 8・ 121- Z (C07K)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 長井 啓子
特許庁審判官 高堀 栄二
松岡 徹
発明の名称 ゴナドトロピンカルボキシ末端ペプチドに結合することによりポリペプチドの流体力学的体積を増加させる方法  
代理人 特許業務法人 大島特許事務所  

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