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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1382116
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-14 
確定日 2022-02-14 
事件の表示 特願2019−531163「回転光検出および測距(ライダ)デバイスの電力変調」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月21日国際公開、WO2018/112013、令和 2年 6月11日国内公表、特表2020−516854〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)12月13日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年12月13日、アメリカ合衆国)、その手続の経緯は、次のとおりである。

令和 元年 8月 1日 :翻訳文の提出
令和 元年10月17日付け:拒絶理由通知書(最初)
令和 2年 1月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 2月26日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 2年 5月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 8月 7日付け:補正の却下の決定、拒絶査定(同年8月17日送達、以下「原査定」という。)
令和 2年12月14日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 令和2年12月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年12月14日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和2年12月14日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、以下に示すとおり、本件補正前の請求項1が、本件補正後の請求項1に補正された。

<本件補正前の請求項1>
「 【請求項1】
センサであって、光パルスを放ち、前記センサの指す方向に基づいて前記放たれる光パルスの反射を検出するセンサの前記指す方向を変更することであって、前記放たれる光パルスがそこから反射される環境の領域を前記センサがスキャンするように、前記センサの前記指す方向が変わることと、
前記環境のターゲット領域に関連する前記センサの指す方向の範囲を識別することと、
前記センサの現在の指す方向が前記識別された範囲内であるかどうかを判定することと、
前記現在の指す方向が前記識別された範囲内であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することであって、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することは、第1強度で前記光パルスを放つことを含むことと、
前記現在の指す方向が前記識別された範囲外であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを前記第1の変調方式とは異なる第2の変調方式に従って変調することであって、前記放たれる光パルスを第2の変調方式に従って変調することは、前記第1強度より低い第2強度で前記光パルスを放つことを含むことと
を含む方法。」

<本件補正後の請求項1>
「 【請求項1】
センサであって、光パルスを放ち、前記センサの指す方向に基づいて前記放たれる光パルスの反射を検出するセンサの前記指す方向を変更することであって、前記放たれる光パルスがそこから反射される環境の領域を前記センサがスキャンするように、前記センサの前記指す方向が変わることと、
前記環境のターゲット領域に関連する前記センサの指す方向の範囲を識別することであって、前記ターゲット領域は、前記センサが取り付けられる車両のステアリングの舵角とは独立して設定可能であることと、
前記センサの現在の指す方向が前記識別された範囲内であるかどうかを判定することと、
前記現在の指す方向が前記識別された範囲内であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することであって、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することは、第1強度で前記光パルスを放つことを含むことと、
前記現在の指す方向が前記識別された範囲外であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを前記第1の変調方式とは異なる第2の変調方式に従って変調することであって、前記放たれる光パルスを第2の変調方式に従って変調することは、前記第1強度より低い第2強度で前記光パルスを放つことを含むことと
を含む方法。」
(下線は、補正箇所を示す。)

2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の「前記環境のターゲット領域に関連する前記センサの指す方向の範囲を識別すること」において、「前記ターゲット領域は、前記センサが取り付けられる車両のステアリングの舵角とは独立して設定可能である」との限定を付加するものであり、かつ本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

3 独立特許要件の判断
(1) 本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

(2) 引用文献6に記載された事項と引用発明の認定
ア 引用文献6に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された特開2016−57141号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付したもので、以下同様である。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定装置、移動体装置及び距離測定方法に係り、更に詳しくは、光を出射し、物体からの反射光を受光して前記物体までの距離を測定する距離測定装置、該距離測定装置を備える移動体装置及び前記距離を測定する距離測定方法に関する。」

「【0009】
距離測定装置100は、一例として、移動体としての自動車に搭載され、光を出射し、物体(例えば先行車両、停車車両、障害物、歩行者等)からの反射光を受光して該物体までの距離を測定する。
【0010】
距離測定装置100は、図1に示されるように、光源としてのLD10(レーザダイオード)、LD10を制御するLD制御部12及び照射光学系14を含む光走査系と、受光光学系16、光検出器としてのPD18(フォトディテクタ)及びPD出力検出部20を含む検出系と、測定制御部22(測距系)と、速度取得部23と、舵角取得部25とを備えている。距離測定装置100は、例えば自動車のバッテリ(蓄電池)から電力の供給を受ける。
【0011】
LD10は、半導体レーザの一種であり、端面発光レーザとも呼ばれる。LD10から出射されたレーザ光は、照射光学系14により導光され、物体(対象物)に照射される。
【0012】
詳述すると、照射光学系14は、一例として、LD10からのレーザ光の光路上に配置されたカップリングレンズ26と、該カップリングレンズ26を介したレーザ光の光路上に配置されたポリゴンミラー28(偏向器)とを含む(図2(A)〜図2(C)参照)。ここでは、ポリゴンミラー28は、回転軸に直交する断面の形状が正方形であるが、例えば正六角形等の他の正多角形であっても良い。
【0013】
なお、偏向器として、ポリゴンミラーに代えて、例えばガルバノミラー、MEMSミラー等の他のミラーを用いても良い。
【0014】
そこで、LD10からのレーザ光は、カップリングレンズ26により所定のビームプロファイルのレーザ光に整形され、ポリゴンミラー28で例えば水平面内で偏向され、物体に照射される。すなわち、レーザ光により物体が例えば水平方向に走査される。
【0015】
対象物に照射されたレーザ光(走査光)は物体で反射(散乱)され、その一部の反射光(散乱光)が受光光学系16を介してPD18に導かれる。
【0016】
受光光学系16は、一例として、受光レンズ(例えば集光レンズ)を含み、物体からの反射光のうち入射光(ポリゴンミラー28で偏向され物体に入射するレーザ光の経路とほぼ同じ経路を辿ってくる反射光をPD18に結像させる。
【0017】
PD18は、物体からの反射光を受光したとき、PD出力検出部20に、該反射光の光量に応じた電気信号である受光信号を出力する。
【0018】
PD出力検出部20での動作としては、受光信号の信号増幅及び受光信号のタイミング検出の2つの動作がある。受光信号の信号増幅についてはアンプなどの信号増幅器を用いて増幅し、受光信号のタイミング検出についてはコンパレータなどの比較器を用いて、PD18からの受光信号の一定出力(スレッシュレベル)以上となる立ち上り波形部を検出する。PD出力検出部20は、受光信号(立ち上がり波形部)を検出すると、その検出タイミングを測定制御部22に出力する。
【0019】
速度取得部23は、自動車の速度を取得し、取得結果を測定制御部22に速度信号として出力する。速度取得部23としては、例えばカーナビゲーションシステムに利用される車速信号のパルス数から演算するものや、GPSの情報から演算するものが用いられている。なお、速度取得部23は、自動車に装備されたスピードメータ用の車速検出器から速度を取得しても良い。
【0020】
舵角取得部25は、自動車の舵角(舵角の大きさ、向き)を取得し、取得結果を測定制御部22に舵角信号として出力する。ここでは、舵角取得部25として、例えば自動車のステアリング(操舵装置)の舵角を計測する舵角センサが用いられている。なお、自動車は、ステアリングの舵角に応じた方向(進行方向)に進行する。
【0021】
LD制御部12は、複数(i個)のLD駆動回路D1〜Diを有している。各LD駆動回路の構成部品には、蓄電用のコンデンサ、スイッチング用のトランジスタが含まれる(図3(A)参照)。各LD駆動回路では、トランジスタのスイッチングにより、コンデンサを充放電できるようになっている。なお、図3(A)には、一例として、i=3の場合が示されている。
【0022】
詳述すると、i個のLD駆動回路D1〜DiのコンデンサCND1〜CNDiには、互いに異なる電荷量Q1〜Qiが蓄積されるようになっている。ここでは、コンデンサCND1〜CNDiの容量をC1〜Ci、極板間の電圧をV1〜Viとすると、C1×V1>C2×V2>・・・>C(i―1)×V(i―1)>Ci×Vi、すなわちQ1>Q2>・・・>Q(i―1)>Qiが成立するようになっている。ここで、i個のLD駆動回路D1〜Diのうち一のLD駆動回路Dk(1≦k≦i)のコンデンサ、トランジスタを、それぞれコンデンサCNDk(1≦k≦i)、トランジスタTrk(1≦k≦i)と称する。
【0023】
コンデンサCNDkは、トランジスタTrkを介してLD10に直列に接続されている。コンデンサCNDkとLD10は、トランジスタTrkがONのときに導通状態となり、トランジスタTrkがOFFのときに非導通状態となる。
【0024】
コンデンサCNDkの極板間(両極間)には、電圧Vk(1≦k≦i)が印加され、トランジスタTrkがOFFのときに、コンデンサCNDkに電荷量Qk(=CkVk)が蓄積され、トランジスタTrkがONのときに、コンデンサCNDkからLD10に電荷(電流の時間積分値)が供給される。
【0025】
ここで、測定制御部22からトランジスタ駆動部を介してi個のLD駆動回路のトランジスタのいずれか1つに発光制御信号(矩形パルス信号)が選択的に出力されるようになっている(図3(A)参照)。詳述すると、測定制御部22は、i個のLD駆動回路D1〜Diのうち制御対象のLD駆動回路Dkに対応する発光制御信号Sk(1≦k≦i)をトランジスタ駆動部29に出力する。そこで、トランジスタ駆動部29は、発光制御信号Skを対応するLD駆動回路Dkに出力する。
【0026】
この場合、発光制御信号SkがローレベルからハイレベルになったときにLD駆動回路DkのトランジスタTrkがOFFからONとなり、該トランジスタTrkがONの間、コンデンサCNDk(1≦k≦i)から電荷が放電されLD10に電流(駆動電流)が供給される。そして、発光制御信号SkがハイレベルからローレベルになったときトランジスタTrkがONからOFFとなり、コンデンサCNDkに電荷量Qk(=CkVk)が速やかに蓄積される。
【0027】
すなわち、LD駆動回路Dkでは、トランジスタTrkがOFFのときに、コンデンサCDNkに電荷が充電され、トランジスタTrkがONのときに、コンデンサCDNkから電荷が放電される(LD10に供給される)。
【0028】
ここで、LD10から出射される1つの光パルスの積分光量(光出力の時間積分値)は、該LD10に供給される電荷量にほぼ比例する(図3(B)参照)。そこで、図3(A)及び図3(B)に示される場合(i=3の場合)に、LD10に電荷量Q1が供給されたときに該LD10から出射される光パルス(大パルス)の光出力の最大値をP1max、LD10に電荷量Q2が供給されたときに該LD10から出射される光パルス(中パルス)の光出力の最大値をP2max、LD10に電荷量Q3が供給されたときに該LD10から出射される光パルス(小パルス)の光出力の最大値をP3maxとすると、P1max>P2max>P3maxが成り立つ。各光パルスの半値幅は光出力の最大値が小さいほど短くなる。光パルスの半値幅が短いほど(光出力の最大値が小さいほど)立ち上がり時間が短くなるため、受光信号の検出タイミングを判定する際、ジッタの影響を受け難くなり、ひいては物体までの距離の検出精度を向上できる。なお、LD10から出射されるレーザ光(光パルス)のパルス幅は、例えば数ns〜50nsである。
【0029】
以上の説明から分かるように、測定制御部22によってi個のLD駆動回路D1〜Diから制御対象のLD駆動回路Dkが選択、すなわち発光制御信号Skが選択されることで、LD10に供給される電荷量(電流の時間積分値)が決まる。このようにして、LD10から光出力が異なる複数の光パルスのいずれかを選択的に出射することができる。
【0030】
測定制御部22では、発光制御信号Skの出力タイミングとPD出力検出部20からの受光信号の検出タイミングとの時間差を物体との間の往復距離(物体までの距離の2倍)と推定し、該時間差を距離に換算することで、物体との間の往復距離、ひいては物体までの距離を測定する。
【0031】
詳述すると、測定制御部22は、発光制御信号Skの立ち上がりタイミングで計時を開始し、PD出力検出部20からの受光信号の検出タイミングで計時を終了する時計機能を有する。この時計機能で計測された時間は、距離測定装置100と物体との間をレーザ光が伝播(往復)している時間であり、この時間を距離に換算することで、物体との間の往復距離を求めることができる。
【0032】
測定制御部22での測定結果(距離情報)は、自動車のECU(エンジンコントーロールユニット)に測定信号として出力される。ECUは、測定制御部22に制御信号(発光指令信号)を出力するとともに、測定制御部22での測定結果に基づいて例えば自動車の速度制御等を行う。自動車の速度制御としては、例えば自動ブレーキ(オートブレーキ)が挙げられる。
【0033】
また、測定制御部22は、速度取得部23での取得結果及び舵角取得部25での取得結果の少なくとも一方に基づいて、発光制御信号S1〜Siから1つの発光制御信号Sk(1≦k≦i)を選択し、該発光制御信号SkをLD制御部12に出力する。
【0034】
また、測定制御部22は、ポリゴンミラー28に回転制御信号を出力し、ポリゴンミラー28を所定の回転数(回転速度)で回転させる。また、測定制御部22は、ポリゴンミラー28から該ポリゴンミラー28の回転位置(回転軸周りの位置)を示すタイミング信号を受信し、該タイミング信号に同期して、発光制御信号SkをLD制御部12に出力する。以下では、ポリゴンミラー28の回転軸を単に「回転軸」とも称する。
【0035】
ここで、ポリゴンミラー28を含む光走査系による略水平方向の走査範囲は、一例として、中央(走査角0°)が自動車の直進方向に一致し、中央から一端(例えば左端)及び他端(例えば右端)それぞれにかけての走査角(偏向角)が70°(走査範囲全体で140°)となるように設定されている(図2(A)〜図2(C)参照)。「自動車の直進方向」は、ステアリングの舵角が0°のときの自動車の進行方向を意味する。以下では、光走査系による走査範囲を、単に「走査範囲」とも称する。
【0036】
詳述すると、ポリゴンミラー28の回転中心(例えば回転軸)と走査範囲の中央とを通る方向が自動車の直進方向に平行となっている。なお、走査範囲は、自動車の直進方向を含んでいれば良く、中央が自動車の直進方向からずれていても良い。
【0037】
図2(A)には、LD10からのレーザ光がポリゴンミラー28によって走査範囲の一端(左端)に向けて偏向される状態が示されている。ここでは、回転軸方向から見た偏向反射面への光の入射角θは、35°である。
【0038】
図2(C)には、LD10からのレーザ光がポリゴンミラー28によって走査範囲の他端(右端)に向けて偏向される状態が示されている。ここでは、回転軸方向から見た偏向反射面への光の入射角θは、35°である。
【0039】
図2(B)には、LD10からのレーザ光がポリゴンミラー28によって走査範囲の中央に向けて偏向される状態が示されている。ここでは、回転軸方向から見た偏向反射面への光の入射角は、0°である。
【0040】
結果として、回転軸方向から見た偏向反射面への光の入射角は、走査範囲の一端(上流端)及び他端(下流端)それぞれから中央にかけて徐々に小さくなることが分かる。
【0041】
ところで、回転軸方向から見た偏向反射面への光の入射角が小さいほど光の反射率が大きくなる。ここでは、走査範囲内における偏向反射面での光の反射率は、図5に示されるように、走査範囲の中央に略対称な該中央で1つの極大値(最大値)をとる曲線で表される。なお、図5の縦軸は、反射率の最大値を0%としたときの該最大値からの減少率(%)である。
【0042】
このように、走査範囲内において偏向反射面での光の反射率にばらつきがあるため、このばらつきに応じて、すなわち走査タイミング(光の偏向方向)に応じてLD10の発光光量を調整することで、走査範囲内における走査光の光量の分布を所望の分布に設定できる。
【0043】
また、LD10からのレーザ光は、回転軸に直交する方向(ここでは水平方向)から見て傾斜して入射される(図4参照)。このように、LD10からの光が偏向反射面に斜入射されることで、LD10に光が戻らないようにして走査光により物体を走査することが可能となる。なお、偏向反射面に入射されるレーザ光は、該偏向反射面に対してS偏光成分がP偏光成分よりも多いほど好ましく、S偏光成分が100%であることが最も好ましい。
【0044】
ここで、自動車が高速走行中には、特に、直進方向(自動車の前後方向)を含む小角度範囲(例えば5°〜35°程度)において遠方の物体を検出すること(測定距離の長距離化)が望まれる一方、それ以外の角度範囲においては遠方の物体を検出することはあまり望まれない。すなわち、高速走行中では、略直進方向での測定距離の長距離化が望まれる一方、測定範囲の広範囲化はあまり望まれない。高速走行の場合、ステアリングの舵角が小さくかつ制動距離が長くなるため、直進方向(進行方向)にある物体を早めに検出する必要性が高い一方、直進方向から大きく外れた方向にある物体は早めに検出する必要性が低いからである。なお、「測定範囲」とは、走査範囲内において自動車の制動に十分な測定距離が要求される範囲を意味する。
【0045】
そこで、自動車が高速走行中には、図6(A)下図に示されるように、LD10の発光光量を走査範囲の一端(例えば左端)及び他端(例えば右端)それぞれから中央にかけて段階的に大きくなるように制御することが好ましい。
【0046】
ここでは、走査範囲を、左端から右端にかけて例えば12個の範囲N1〜N12に分割している。そして、左端から数えて1番目、2番目、11番目、12番目の範囲N1、N2、N11、N12に対しては小パルスで走査する。また、左端から数えて3番目、4番目、9番目、10番目の範囲N3、N4、N9、N10に対しては中パルスで走査する。そして、左端から数えて5番目〜8番目の4つの範囲N5〜N8に対しては大パルスで走査する。ここでは、自動車の直進方向は、範囲N5〜N8に含まれる。なお、走査範囲の分割数は、12に限らず、要は、3以上であることが好ましい。
【0047】
以下では、図6(A)下図に示される発光パターンを高速走行用発光パターンHVPと称する。高速走行用発光パターンHVPでは、走査回数Mが設定されている。図6(A)上図のハッチングで示される領域は、測定距離及び自動車の速度に応じた自動車の推定停止範囲を示している。高速走行では、舵角が小さく、かつ制動距離が長くなるため、推定停止範囲は、略直進方向(進行方向)に細長い狭角の扇形になる。また、図6(A)上図には、小パルス、中パルス、大パルスにそれぞれ対応する測定距離(測定可能な最大の距離)が示されている。なお、「推定停止範囲」は、前述した「測定範囲」に対応している。
【0048】
高速走行用発光パターンHVPでLD10を発光させることで、高速走行中、略直進方向(進行方向)の測定距離を長くでき、かつ消費電力の低減を図ることができる。また、上述したように、偏向反射面での光の反射率は、走査範囲の中央で最大となるため、略直進方向での測定距離の長距離化を促進させることができる。
【0049】
一方、自動車が低速走行中には、測定範囲の広範囲化が望まれる一方、測定距離の長距離化はあまり望まれない。低速走行の場合、例えば急操舵等によりステアリングの舵角が大きくなることが想定され、直進方向から大きく外れた物体を検出する必要性が高く、かつ制動距離も短くて済むからである。また、走査範囲の左端や右端に近いほど、運転者の視認性が低下するため、測定距離を長くすることが望まれる。
【0050】
そこで、自動車が低速走行中には、図6(B)に示されるように、LD10の発光光量を走査範囲の中央から左端及び右端それぞれにかけて段階的に大きくなるように制御することが好ましい。
【0051】
ここでは、走査範囲を左端から右端にかけて12個の範囲N1〜N12に分割している。そして、左端から数えて1番目、2番目、11番目、12番目の範囲N1、N2、N11、N12に対しては大パルスで走査する。また、左端から数えて3番目、4番目、9番目、10番目の範囲N3、N4、N9、N10に対しては中パルスで走査する。そして、左端から数えて5番目〜8番目の4つの範囲N5〜N8に対しては小パルスで走査する。ここでは、自動車の直進方向は、範囲N5〜N8に含まれる。なお、走査範囲の分割数は、12に限らず、要は、3以上であることが好ましい。
【0052】
以下では、図6(B)下図に示される発光パターンを低速走行用発光パターンLVPと称する。低速走行用発光パターンLVPでは、走査回数Mが設定されている。図6(B)上図のハッチングで示される領域は、測定距離及び自動車の速度に対する自動車の推定停止範囲を示している。低速走行では、舵角が大きくなることが想定され、かつ制動距離が短くなるため、推定停止範囲は、走査範囲の略全域に及ぶ短径で広角の扇形となる。また、図6(B)上図には、小パルス、中パルス、大パルスにそれぞれ対応する測定距離が示されている。
【0053】
低速走行用発光パターンLVPでLD10を発光させることで、低速走行中、測定範囲を広くでき、かつ消費電力の低減を図ることができる。また、特に、運転者の視認性が低い、測定範囲の左端及び右端の測定距離を長くすることができる。
【0054】
以下に、距離測定装置100を用いた距離測定方法の第1の例について、図7を参照して説明する。図7のフローチャートは、測定制御部22によって実行される処理アルゴリズムに基づいている。なお、距離測定装置100は、自動車のエンジンが始動されたときに起動される。そして、自動車のエンジンが始動されたときに、ECUから測定制御部22に発光指令信号(制御信号)が出力され、図7の一連の処理が開始される。測定制御部22のメモリには、低速走行用発光パターンLVP及び高速走行用発光パターンHVPが予め格納され、いずれかをLD10の発光パターンとして設定可能(読み出し可能)となっている。ここでは、距離測定装置100は、舵角取得部25を有していなくても良い。
【0055】
最初のステップS1では、自動車の速度Vを初期値(0km/h)に設定する。
【0056】
次のステップS2では、自動車の速度V(速度取得部23での取得結果)が閾値Vth1(例えば30km/h)未満であるか否かを判断する。ステップS2での判断が肯定されると、ステップS3に移行する。一方、ステップS2での判断が否定されると、ステップS8に移行する。
【0057】
ステップS3では、LD10の発光パターンとして低速走行用発光パターンLVPを設定する。
【0058】
次のステップS4では、物体までの距離Lを測定し、取得する。具体的には、低速走行用発光パターンLVPでLD10を発光させ、LVPの各発光タイミング毎(走査範囲の各範囲毎)に、物体までの距離Lを測定し、取得する。低速走行用発光パターンLVPでの発光は、走査範囲における範囲N1、N2、N11、N12が走査される際に大パルスに対応する発光制御信号S1を出力し、範囲N3、N4、N9、N10が走査される際に中パルスに対応する発光制御信号S2を出力し、範囲N5〜N8が走査される際に小パルスに対応する発光制御信号S3を出力することで行われる。ここでは、物体が予め設定された走査回数Mだけ走査され、走査毎に各範囲で距離Lが測定され、取得される。
【0059】
次のステップS5では、低速走行用発光パターンLVPの設定を解除する。
【0060】
次のステップS6では、自動車の速度V(速度取得部23での取得結果)を取得する。
【0061】
次のステップS7では、測定を終了するか否かが判断される。ステップS7での判断が肯定されると、フローは、終了する。一方、ステップS7での判断が否定されると、ステップS2に戻る。なお、ステップS7での判断は、自動車のエンジンが停止されたときに肯定される。
【0062】
ステップS8では、LD10の発光パターンとして高速走行用発光パターンHVPを設定する。
【0063】
次のステップS9では、物体までの距離Lを測定し、取得する。具体的には、高速走行用発光パターンHVPでLD10を発光させ、HVPの各発光タイミング毎に(走査範囲の各範囲毎に)、物体までの距離Lを測定し、取得する。高速走行用発光パターンHVPでの発光は、走査範囲における範囲N1、N2、N11、N12が走査される際に小パルスに対応する発光制御信号S3を出力し、範囲N3、N4、N9、N10が走査される際に中パルスに対応する発光制御信号S2を出力し、範囲N5〜N8が走査される際に大パルスに対応する発光制御信号S1を出力することで行われる。ここでは、物体が予め設定された走査回数Mだけ走査され、走査毎に各範囲で距離Lが測定され、取得される。
【0064】
次のステップS10では、高速走行用発光パターンHVPの設定を解除する。
【0065】
次のステップS11では、自動車の速度V(速度取得部23での取得結果)を取得する。
【0066】
次のステップS12では、自動車の速度Vが閾値Vth2(例えば40km/h)以上であるか否かを判断する。ステップS12での判断が否定されると、ステップS2に戻る。一方、ステップS12での判断が肯定されると、ステップS8に戻る。
【0067】
このように、HVPを設定した後の速度Vの閾値をVth1よりも大きい閾値Vth2とすると、V≧Vth2のとき、LVPに移行するための閾値は、Vth2に変わる。V<Vth2のとき、LVPに移行するための閾値は、Vth1のままである。つまり、ここでは、図8に示されるように、発光パターンをHVPとLVPとの間で遷移させる速度Vの閾値を2つ設定することでヒステリシスを持たせている。この結果、閾値近傍の高頻度な切り換えを防ぐとともに、低速走行時及び高速走行時それぞれに合わせた閾値を設定できる。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】



「【図4】



「【図5】



「【図6】



「【図7】



「【図8】



引用発明の認定
上記(ア)の記載事項を総合すると、引用文献6には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「距離測定装置100を用いた距離測定方法であって(【0054】)、
移動体としての自動車に搭載され、光を出射し、物体(例えば先行車両、停車車両、障害物、歩行者等)からの反射光を受光して該物体までの距離を測定するものであり(【0009】)、
舵角取得部25を有しておらず(【0054】)、
光源としてのLD10(レーザダイオード)及び照射光学系14を含む光走査系と、受光光学系16及び光検出器としてのPD18(フォトディテクタ)を含む検出系と、測定制御部22(測距系)と、速度取得部23とを備え(【0010】)、
照射光学系14は、レーザ光の光路上に配置されたポリゴンミラー28(偏向器)を含み(【0012】)、
LD10からのレーザ光は、ポリゴンミラー28で例えば水平面内で偏向され、物体に照射され、すなわち、レーザ光により物体が例えば水平方向に走査され(【0014】)、
対象物に照射されたレーザ光(走査光)は物体で反射(散乱)され、その一部の反射光(散乱光)が受光光学系16を介してPD18に導かれ(【0015】)、
受光光学系16は、物体からの反射光のうち入射光(ポリゴンミラー28で偏向され物体に入射するレーザ光)の経路とほぼ同じ経路を辿ってくる反射光をPD18に結像させ(【0016】)、
PD18は、反射光の光量に応じた電気信号である受光信号を出力するものであり(【0017】)、

自動車の速度V(速度取得部23での取得結果)が閾値Vth1(例えば30km/h)未満であるか否かを判断し、判断が肯定されると、LD10の発光パターンとして低速走行用発光パターンLVPを設定し、判断が否定されると、LD10の発光パターンとして高速走行用発光パターンHVPを設定し(【0056】、【0057】、【0062】)、
当該高速走行用発光パターンHVPは、自動車が高速走行中には、特に、直進方向(自動車の前後方向)を含む小角度範囲(例えば5°〜35°程度)において遠方の物体を検出する(測定距離の長距離化)ために(【0044】)、走査範囲を、左端から右端にかけて例えば12個の範囲N1〜N12に分割し、左端から数えて1番目、2番目、11番目、12番目の範囲N1、N2、N11、N12に対しては小パルスで走査し、左端から数えて3番目、4番目、9番目、10番目の範囲N3、N4、N9、N10に対しては中パルスで走査し、左端から数えて5番目〜8番目の4つの範囲N5〜N8に対しては大パルスで走査するものであって(【0046】、【0047】)、
当該高速走行用発光パターンHVPは、LD10の発光光量を走査範囲の一端(例えば左端)及び他端(例えば右端)それぞれから中央にかけて段階的に大きくなるように制御するものである(【0045】、【0047】)、
距離測定装置100を用いた距離測定方法。」

(3) 対比
ア 本願補正発明と引用発明の対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 「方法」の発明である本願補正発明と「距離測定装置100を用いた距離測定方法」の発明である引用発明は、「方法」の発明である点で一致する。

(イ) 引用発明の「距離測定装置100」は、本願補正発明の「センサ」に相当する。また、引用発明の「距離測定装置100」は、走査する範囲に応じて、小パルス、中パルス、大パルスで走査するものであるから、光パルスを放つものである。
そして、引用発明の「距離測定装置100」は、LD10からのレーザ光が、ポリゴンミラー28で水平面内で偏向されて物体に照射され、すなわち、水平方向に走査され、物体からの反射光のうち入射光(ポリゴンミラー28で偏向され物体に入射するレーザ光)の経路とほぼ同じ経路を辿ってくる反射光をPD18に結像させるものであるから、ポリゴンミラー28の向きを変更することで、レーザ光を照射する方向及び反射光を検出する方向を変更し、水平方向に走査させ、当該走査範囲内の物体の距離を測定するものである。
よって、本願補正発明と「距離測定装置100」であって、ポリゴンミラー28の向きを変更して、水平方向に走査することを含む引用発明は、「センサであって、光パルスを放ち、前記センサの指す方向に基づいて前記放たれる光パルスの反射を検出するセンサの前記指す方向を変更することであって、前記放たれる光パルスがそこから反射される環境の領域を前記センサがスキャンするように、前記センサの前記指す方向が変わること」を含む方法の点で一致する。

(ウ) 本願補正発明の「ターゲット領域」について、本願明細書の段落【0017】には、「次に、車両は、センサのFOVが、歩行者が位置する可能性がある環境のターゲット領域とオーバーラップする、センサの指す方向の範囲を識別することができる。センサが回転する際に、センサの現在の指す方向が識別された範囲内にある時に、車両は、歩行者が位置する場所までのスキャン範囲またはスキャン距離を達成するのに十分な電力を有し、高いスキャン解像度を達成するのに十分なパルス・レートを有する光パルスを放つようにセンサを動作させることができる。」と記載されており、当該記載から、本願補正発明の「ターゲット領域」とは、歩行者が位置する可能性がある等、他の領域よりも、光パルスの強度や解像度を高めて、スキャン距離や検出精度を上げることが望まれる領域を意味するものであると理解される。
そうしてみると、引用発明の「高速走行用発光パターンHVP」における「走査範囲を、左端から右端にかけて例えば12個の範囲N1〜N12に分割し」たときの「左端から数えて5番目〜8番目の4つの範囲N5〜N8」は、「自動車が高速走行中に」「遠方の物体を検出する(測定距離の長距離化)」ために設定した「直進方向(自動車の前後方向)を含む小角度範囲(例えば5°〜35°程度)」であるから、本願補正発明の「ターゲット領域」に相当するものといえる。
また、引用発明の「舵角取得部25」を有しておらず、「自動車の速度V(速度取得部23での取得結果)が閾値Vth1(例えば30km/h)未満であるか否かを判断し」、「判断が否定されると、LD10の発光パターンとして高速走行用発光パターンHVPを設定」する構成は、本願補正発明の「前記ターゲット領域は、前記センサが取り付けられる車両のステアリングの舵角とは独立して設定」されていることに相当する。
そして、引用発明において「左端から数えて5番目〜8番目の4つの範囲N5〜N8に対しては大パルスで走査する」ためには、その前に、ポリゴンミラー28の向きが、「左端から数えて5番目〜8番目の4つの範囲N5〜N8」内にあるかどうかを識別していることは明らかである。
以上をまとめると、本願補正発明と引用発明は、「前記環境のターゲット領域に関連する前記センサの指す方向の範囲を識別することであって、前記ターゲット領域は、前記センサが取り付けられる車両のステアリングの舵角とは独立して設定可能であること」を含む方法の点で一致する。

(エ) 上記(ウ)と同様に、引用発明において「左端から数えて5番目〜8番目の4つの範囲N5〜N8に対しては大パルスで走査する」ためには、その前に、ポリゴンミラー28の向きが、「左端から数えて5番目〜8番目の4つの範囲N5〜N8」内にあるかどうかを判定することが必要である。
この点を踏まえると、本願補正発明と「走査範囲を、左端から右端にかけて例えば12個の範囲N1〜N12に分割し」、「左端から数えて5番目〜8番目の4つの範囲N5〜N8に対しては大パルスで走査する」ことを含む引用発明は、「前記センサの現在の指す方向が前記識別された範囲内であるかどうかを判定することと、前記現在の指す方向が前記識別された範囲内であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することであって、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することは、第1強度で前記光パルスを放つことを含むこと」を含む方法の点で一致する。

(オ) 「前記現在の指す方向が前記識別された範囲外であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを前記第1の変調方式とは異なる第2の変調方式に従って変調することであって、前記放たれる光パルスを第2の変調方式に従って変調することは、前記第1強度より低い第2強度で前記光パルスを放つことを含むこと」を含む本願補正発明と「走査範囲を、左端から右端にかけて例えば12個の範囲N1〜N12に分割し、左端から数えて1番目、2番目、11番目、12番目の範囲N1、N2、N11、N12に対しては小パルスで走査し、左端から数えて3番目、4番目、9番目、10番目の範囲N3、N4、N9、N10に対しては中パルスで走査」することを含む引用発明は、「前記現在の指す方向が前記識別された範囲外であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを前記第1の変調方式とは異なる変調方式に従って変調することであって、前記放たれる光パルスを第1の変調方式とは異なる変調方式に従って変調することは、前記第1強度より低い強度で前記光パルスを放つことを含む」方法である点で一致する。

イ 一致点及び相違点
上記アの検討を総合すると、本願補正発明と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。

<一致点>
センサであって、光パルスを放ち、前記センサの指す方向に基づいて前記放たれる光パルスの反射を検出するセンサの前記指す方向を変更することであって、前記放たれる光パルスがそこから反射される環境の領域を前記センサがスキャンするように、前記センサの前記指す方向が変わることと、
前記環境のターゲット領域に関連する前記センサの指す方向の範囲を識別することであって、前記ターゲット領域は、前記センサが取り付けられる車両のステアリングの舵角とは独立して設定可能であることと、
前記センサの現在の指す方向が前記識別された範囲内であるかどうかを判定することと、
前記現在の指す方向が前記識別された範囲内であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することであって、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することは、第1強度で前記光パルスを放つことを含むことと、
前記現在の指す方向が前記識別された範囲外であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを前記第1の変調方式とは異なる変調方式に従って変調することであって、前記放たれる光パルスを第1の変調方式とは異なる変調方式に従って変調することは、前記第1強度より低い強度で前記光パルスを放つことを含むことと
を含む方法、である点。

<相違点>
「現在の指す方向が前記識別された範囲外である」場合に適用される「前記第1の変調方式とは異なる変調方式」が、本願補正発明では、第1の変調方式における第1強度より低い第2強度で光パルスを放つ「第2の変調方式」の1つのみであるのに対して、引用発明では、左端から数えて5番目〜8番目の4つの範囲N5〜N8ではない場合に適用されるパルスが、左端から数えて1番目、2番目、11番目、12番目の範囲N1、N2、N11、N12に対しては小パルスで、左端から数えて3番目、4番目、9番目、10番目の範囲N3、N4、N9、N10に対しては中パルスであり、異なる強度の2つのパルスである点。

(4) 当審の判断
ア 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用文献6の【0046】には、「なお、走査範囲の分割数は、12に限らず、要は、3以上であることが好ましい。」と記載されているから、当該記載に従って、引用発明の高速走行用パターンの走査範囲を3つに分割するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
その場合、引用発明は、「自動車が高速走行中には、特に、直進方向(自動車の前後方向)を含む小角度範囲(例えば5°〜35°程度)において遠方の物体を検出する(測定距離の長距離化)」ものであるから、3つに分割された範囲のうち中央の範囲のパルスの強度が一番高くなることは明らかであり、また直進方向からみて対称となる左右2つの範囲については、パルスの強度を異ならせる特段の事情は見当たらないから(実際、引用文献6の【図6】に示された12個に分割された走査範囲では、対となる左右の走査範囲(N1とN12、N2とN11、N3とN10、N4とN9)の強度はそれぞれ同じになるように設定されている。)、3つに分割した場合の左右の走査範囲の強度を同じにして、上記相違点に係る構成とすることに、格別困難性があるものではない。

よって、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明によって奏される効果は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

イ 請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由において、次の主張をしている。

(6頁5〜15行)
「令和2年2月26日付け拒絶理由通知書、及び補正の却下の決定における上記指摘のとおり、引用文献6では、『ステアリングの舵角に対応する自動車の進行方向』に基づいて、測定距離の制御が行われているにすぎません。
このように、引用文献6には、本願の請求項1に係る発明における『前記ターゲット領域は、前記センサが取り付けられる車両のステアリングの舵角とは独立して設定可能である』という構成は開示も示唆もされていません。また、引用文献6において、本願の請求項1に係る発明における当該構成を採用する動機もありません。
したがって、少なくともこの点において、本願の請求項1に係る発明は、引用文献に対して進歩性を有するものと思料いたします。本願の他の請求項に係る発明についても同様です。」

しかしながら、前記(3)アの(ウ)において説示したとおり、引用文献6には、「前記ターゲット領域は、前記センサが取り付けられる車両のステアリングの舵角とは独立して設定可能である」構成が開示されているものと認められるから、当該主張は採用できない。

(5) まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明
本件補正は上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年1月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「 【請求項1】
センサであって、光パルスを放ち、前記センサの指す方向に基づいて前記放たれる光パルスの反射を検出するセンサの前記指す方向を変更することであって、前記放たれる光パルスがそこから反射される環境の領域を前記センサがスキャンするように、前記センサの前記指す方向が変わることと、
前記環境のターゲット領域に関連する前記センサの指す方向の範囲を識別することと、
前記センサの現在の指す方向が前記識別された範囲内であるかどうかを判定することと、
前記現在の指す方向が前記識別された範囲内であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することであって、前記放たれる光パルスを第1の変調方式に従って変調することは、第1強度で前記光パルスを放つことを含むことと、
前記現在の指す方向が前記識別された範囲外であるとの判定に応答して、前記放たれる光パルスを前記第1の変調方式とは異なる第2の変調方式に従って変調することであって、前記放たれる光パルスを第2の変調方式に従って変調することは、前記第1強度より低い第2強度で前記光パルスを放つことを含むことと
を含む方法。」


第4 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

本願発明は、下記引用文献6に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献6. 特開2016−57141号公報


第5 引用文献6に記載された発明の認定
引用文献6に記載された発明は、前記第2の3(2)の「イ 引用発明の認定」において、引用発明として示したとおりである。


第6 対比・判断
本願発明は、本願補正発明(前記第2の3の「(1) 本願補正発明」参照。)の「前記環境のターゲット領域に関連する前記センサの指す方向の範囲を識別することであって、前記ターゲット領域は、前記センサが取り付けられる車両のステアリングの舵角とは独立して設定可能であること」において、「前記ターゲット領域は、前記センサが取り付けられる車両のステアリングの舵角とは独立して設定可能である」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに当該発明特定事項の一部を限定したものに相当する本願補正発明が、前記第2の3の「(4) 当審の判断」において説示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。




 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 岡田 吉美
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-09-16 
結審通知日 2021-09-17 
審決日 2021-09-30 
出願番号 P2019-531163
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
P 1 8・ 575- Z (G01S)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱本 禎広
岸 智史
発明の名称 回転光検出および測距(ライダ)デバイスの電力変調  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 佐藤 睦  

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