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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1382138
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-26 
確定日 2022-02-17 
事件の表示 特願2019−218160「AI技術を用いたマニュアル自動生成システム、マニュアル自動生成プログラム及びマニュアル自動生成方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月18日出願公開、特開2020− 95714、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)12月2日(優先権主張:平成30年11月30日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 8月24日:拒絶理由通知書(起案日)
令和2年10月24日:意見書、手続補正書の提出
令和2年12月 9日:拒絶査定(起案日)
令和2年12月26日:審判請求書、手続補正書の提出
令和3年 1月21日:前置報告書
令和3年12月 2日:拒絶理由通知書(起案日)
令和3年12月 6日:意見書、手続補正書の提出
令和3年12月15日:手続補正書の提出

第2 原査定の拒絶の理由の概要
理由2(新規性)この出願の請求項9〜11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3(進歩性)この出願の請求項9〜11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:韓国登録特許第10−0786187号公報

第3 前置報告書の概要
・根拠条文 第36条第6項第2号
・請求項 1〜9
・特許査定できない理由
本願の請求項1,9には、「電話対象を具体的に特定できないが電話対象の特性を表す属性情報」という記載がある。
しかし、発明の詳細な説明では、同様の記載があるのみで、具体的にどのような情報が電話対象を具体的に特定できるものに該当し、どのような情報が電話対象を具体的に特定できないものに該当するのか、明かではなく、発明の範囲が不明確である。
本願の請求項1に従属する請求項2〜8についても同様である。

第4 当審において通知した令和3年12月2日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要
明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
・請求項1〜9について
(1)請求項1は、「AI技術を用いたマニュアル自動生成システム」の発明であるが、「AI技術」とは、定義が曖昧であり、記載が明確でない。
(2)請求項1の「マニュアル自動生成システム」の「マニュアル自動生成」とは、何を意味するのか明確でない。
請求項9は、請求項1の「AI技術を用いたマニュアル自動生成システム」を「AI技術を用いたマニュアル自動生成プログラム」として記載したものであるから、上記(1)、(2)と同様の理由により明確でない。
また、請求項1を引用して記載した請求項2〜8についても明確でない。

第5 本願発明
本願の請求項1〜9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明9」という。)は、令和3年12月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
過去に電話を掛けた過去電話対象及び該過去電話対象に対して過去に提案された過去商品の属性を表す過去属性情報と、前記過去電話対象に対して過去に電話を掛けたときの契約の成立の可否である過去成約情報及び使用されたマニュアル情報が対応付けて登録された過去データベースを記憶する記憶部と、
電話を掛ける予定の予定電話対象及び該予定電話対象に対して提案する予定契約の属性を表す予定属性情報とを入力する入力部と、
前記予定属性情報及び前記過去データベースに基づいて前記予定電話対象に対するマニュアルを選択するマニュアル選択部と、
前記選択されたマニュアルに基づいて、マニュアル画像データを生成するマニュアル生成部と、
前記マニュアル画像データを表示する表示部と、
を備え、
前記過去データベースは、
複数の契約提供会社から提供された過去属性情報及び過去成約情報が登録されており、
前記過去属性情報は、
電話対象を具体的に特定できないが電話対象の特性を表す属性情報と、商品情報のうち商品の特性を表す属性情報である
ことを特徴とするマニュアル自動生成システム。
【請求項2】
前記予定電話対象は、
商品提供会社から提供された顧客リストに基づいており、
前記マニュアル選択部は、前記過去データベースに登録された前記過去属性情報のうち、前記予定属性情報に類似する前記過去成約情報に基づいて前記予定電話対象に対するマニュアルを選択する
ことを特徴とする請求項1に記載のマニュアル自動生成システム。
【請求項3】
前記マニュアル選択部は、
前記過去データベースに登録された前記過去属性情報のうち、前記予定属性情報に類似する前記過去成約情報を用いて前記予定電話対象に対して予測される成約率である予定成約率を算出し、該予定成約率に基づいて前記予定電話対象に対するマニュアルを選択する
ことを特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかに記載のマニュアル自動生成システム。
【請求項4】
前記マニュアル選択部は、
前記マニュアルを識別するマニュアル識別子と前記予定属性情報とが対応付けて登録されているマニュアル対応表によって電話対象に対するマニュアルを選択し、
前記マニュアル対応表は、
前記過去データベースに基づいて生成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のマニュアル自動生成システム。
【請求項5】
前記予定電話対象に対して電話を掛けたときの予定契約属性及び前記契約の成立の可否を前記過去データベースに記憶する登録部を有する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のマニュアル自動生成システム。
【請求項6】
前記マニュアル選択部は、
準備された3以上のマニュアルのうち、2のマニュアルをランダムに選択して、前記選択されたマニュアルとして表示し、所定の表示数だけ表示された後、
前記2のマニュアルのうち、成約率の高い方のマニュアルと、残りのマニュアルから選択された一のマニュアルを該2のマニュアルとする
ことを特徴とする請求項1に記載のマニュアル自動生成システム。
【請求項7】
電話対象の音声のトーンを解析する音声解析部を有し、
前記マニュアル選択部は、
前記音声の解析結果が否定的であった場合には、
音声解析が否定用のマニュアルを選択して使用する
ことを特徴とする請求項1に記載のマニュアル自動生成システム。
【請求項8】
オペレータの操作入力に応じて前記予定電話対象の通信端末に対してダイヤルする自動ダイヤル部と、
前記予定電話対象の通信端末とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のマニュアル自動生成システム。
【請求項9】
コンピュータに対し、
電話を掛ける予定の予定電話対象及び該予定電話対象に対して提案する予定契約の属性を表す予定属性情報とを入力する入力ステップと、
過去に電話を掛けた過去電話対象及び該過去電話対象に対して過去に提案された過去商品の属性を表す過去属性情報と、前記過去電話対象に対して過去に電話を掛けたときの契約の成立の可否である過去成約情報及び使用されたマニュアル情報が対応付けて登録された過去データベース及び前記予定属性情報に基づいて前記予定電話対象に対するマニュアルを選択するマニュアル選択ステップと、
前記選択されたマニュアルに基づいて、マニュアル画像データを生成するマニュアル生成ステップと、
前記マニュアル画像データを表示する表示ステップと、
を実行させ、
前記過去データベースは、
複数の契約提供会社から提供された過去属性情報及び過去成約情報が登録されており、
前記過去属性情報は、
電話対象を具体的に特定できないが電話対象の特性を表す属性情報と、商品情報のうち商品の特性を表す属性情報である
ことを特徴とするマニュアル自動生成プログラム。」

第6 引用文献、引用発明
1 引用文献1、引用発明
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下のとおりの記載がある。当審訳中の下線は、注目個所に当審において付したものである。







(当審訳)
「技術分野
[15]本発明は、テレマーケティング(tele-marketing)または電話相談システムでカウンセラーが相談用シナリオで使用する相談用スクリプト(script)を自動で生成する方法に関する。コンピュータを活用するテレマーケティング/電話相談(以下“電話相談”と称する)システムでスクリプトの登録及び登録されたスクリプトを商品及び顧客の特性に合わせてカウンセラーが使用するスクリプトを生成する方法に関することとして顧客カスタム型スクリプト及び動的スクリプト生成システム及び方法に関する。
[16]スクリプト(script)は、データシート、質問と応答、コンピュータシステムと機器、電話相談システムの4つの要素のうちの一つとして、テレマーケティング対話を導くシナリオ、すなわち、顧客またはマーケティング状況によって弾力的に活用される相談マニュアルといえる。
[17]既存の電話相談業務でカウンセラーを管理する管理者は販売製品または相談業務の特性を分析して普遍妥当な相談スクリプトを作成してカウンセラーに配布して、カウンセラーは顧客との相談の時に、これを参考にして相談を行っていた。コンピュータを活用する相談でも一度定められた相談スクリプトは管理者が新しい相談スクリプトを配布するまでは変わらず、管理者が登録した相談スクリプトを単純に画面に表示して参考する程度にのみ活用された。
[18]このように、管理者の作成したスクリプトは、一般的な相談状況に合わせて作成されたスクリプトなので、販売しようとする商品の特性と顧客の特性を正確に反映することができず、スクリプトと顧客情報をすべて画面に表示する構造なので、顧客の詳細情報までカウンセラーに露出されるという問題があった。また相談中に顧客から発せられる質問に対して適切な対処策がないため、カウンセラーの業務知識または業務経験によってそれぞれ異なる回答をすることで、すべての顧客に一貫した相談サービスを提供することができないという問題があった。

発明が解決しようとする課題
[19]本発明は、このような問題点を解決するために、カウンセラーに顧客カスタム型相談スクリプトを提供して、カウンセラーの画面に顧客の情報全体を露出させないで、相談プロセスで必要な部分のみ動的に生成させることで、顧客の個人情報を保護することと併せて、カウンセラーの業務経験または知識と関係なく、すべての顧客に一貫した相談サービスを提供することができる顧客カスタム型スクリプト及び動的スクリプト生成システム及び方法を提供することである。

課題を解決するための手段
[20]本発明は、このような目的を果たすために、コンピュータベースの電話相談業務システムと接続され、カウンセラーがモニター上に表示されるスクリプトを参考にして、顧客と相談を進めるための相談進行部と、カウンセラーが顧客と実際相談を進める時カウンセラーの画面に表示されるスクリプト用コメントを作成するための詳細構造コメント作成部と、商品の特性及び相談の主題または相談顧客の特性を反映して最適の顧客カスタム型相談スクリプトを生成するためのカスタム型スクリプト生成部と、相談中に顧客の選択肢によってスクリプトが動的に生成されるようにするための動的スクリプト生成部と、カスタム型スクリプト生成及び動的スクリプト生成のための基本データ登録簿と、スクリプト情報と顧客情報及び商品または相談に必要な情報を保存するデータベースを具備してなった顧客カスタム型スクリプト及び動的スクリプト生成システム及び方法を提供することである。
[21]これにより、本発明は顧客の情報の保護と、質の高い相談内容を提供することができるものであり、初級カウンセラーの教育及び業務効率の上昇と、すべてのカウンセラーが一貫して正確な回答ができるようにすることにより、顧客に信頼感と満足感を与え、商品の販売量の増加と共に売上げを大きく高めることができるなどの効果がある。」

「[25]図2は、カスタムスクリプトの作成と動的なスクリプト作成のための基本データ登録簿(102)における既定のデータを登録するプロセスを図式化したものである。これで分かるように、
[26]ステップ201は、カスタマイズされた動的なスクリプトを作成するための基本データを登録するプロセスを開始するステップである。
[27]ステップ202は特定の期間、特定の顧客を対象に特定の商品を販売するための営業戦略として販売商品を分析して商品情報を入力するキャンペーン登録ステップである。これは販売対象の商品、販売期間、販売対象の顧客などのキャンペーン自体情報と商品の特徴、長所、競争製品との差別化など商品販売のための情報と主要消費層の性別、年齢などの商品需要者関連情報を、連続番号を自動的に付与して商品(相談)情報DB(208)に登録する。」

「[40]ステップ305は、登録したタイトルの相談内容を適用する対象顧客を選択するステップである。対象顧客の情報は性別、年齢帯、職業など上記の図2のステップ202で登録された情報の中から選択する。この時、対象顧客を選択しなければ対象顧客情報と関係なくすべての顧客を対象顧客にする。
[41]ステップ306は、実際に、カウンセラーが相談に使用するコメントを入力するコメント作成ステップである。例えば、上記のステップ304でタイトルを朝の挨拶にしたら、“こんにちは?新鮮な空気が活気に満ちるようにする朝です。”などの朝の挨拶で使用するコメントを作成する。この時、顧客の名前を入れてコメントを作成しようとすれば、顧客情報DB(311)に登録されたフィールド名を選択して入力する。実施例は、“こんにちは?私は○○○カードのカウンセラーです。会員様ですか?”の形態で入力すると顧客情報DBのフィールドに該当する情報に対置されて“こんにちは?私は○○○カードのソンチュンヒャン・カウンセラーです。ホン・ギルドン会員様ですか?”の形態で画面に表示される。
[42]ステップ307は、コメントの状態を登録するステップであり、コメントの状態は作成中、使用可能、使用禁止などに分けられる。この情報を利用してコメントを使用するか否かを決める。
[43]ステップ308は、作成完了した詳細構造コメントをスクリプト情報DB(310)に保存するステップである。
[44]図4は、商品の特性または相談の主題及び相談顧客の特性を反映して、最適の顧客カスタム型相談スクリプトを生成するためのカスタム型相談スクリプト生成部(101)のプロセスを図式化したものである。この時、販売しようとする商品、商品の販売期間、商品の特性または相談の主題などのキャンペーン情報とそれによる選択肢などのオファー情報は、カウンセラーを支援する管理者が、前記図2の登録プロセスを通じて予め登録したものである。
[45]ステップ401は、顧客カスタム型相談スクリプトを生成するためにシステムを開始するステップである。
[46]ステップ402では、システムは、カウンセラーに割り当てられた電話相談業務に該当する商品情報または相談主題に対するキャンペーン情報を、商品(相談)情報と、業務日によって登録されたキャンペーン情報またはカウンセラーに割り当てられたキャンペーン情報及びそれによるオファー情報を、商品(相談)情報DB(410)から読み込む。この時、読み込む情報はキャンペーン期間、キャンペーン順番、キャンペーン分類及び商品種類、主な対象顧客の特性などのキャンペーン詳細情報を含んで読み込む商品情報取得ステップである。
[47]ステップ403は、システムは、顧客情報DB(411)から、該当のカウンセラーに割り当てられた相談を進める顧客1人を選定して顧客情報を読み込む。この時、読み込む顧客情報は、相談と関わる顧客の個人情報として性別、年齢、居住地、婚姻の有無など顧客相談と関わるすべての情報を読み込む顧客情報取得ステップである。
[48]ステップ404は、スクリプト情報DB(412)から、図2で登録した相談スクリプトの詳細構造を読み込むスクリプト構造情報取得ステップである。スクリプト構造情報はステップタイトル、大分類、小分類の構造になっており、相談スクリプト構造情報の詳しい内容については、図2で説明したとおりである。
[49]ステップ405は、上記のステップ402で読み込んだ商品情報と、上記のステップ403で読み込んだ顧客情報と、上記のステップ404で読み込んだスクリプト情報と一致するスクリプト内容をスクリプト情報DB(412)から読み込むコメント及びオファー対象抽出ステップである。スクリプト内容はコメントとオファーで構成されており、相談コメントは特定キャンペーンに登録した相談スクリプトと連結する必要があり、この時、キャンペーン番号と相談スクリプトのマッピングはオファータイプでマッピングされる。すなわち、オファータイプが同じ種類のキャンペーンは、該当のオファータイプを有しているスクリプトを新規登録しなくても連結して相談スクリプトを再使用することができる。この時、コメントとオファーを使用できるか否かを判断するために使用可能に登録されたコメントとオファーのみを読み込む。
[50]ステップ406では、上記のステップ404において読み込んだスクリプト構造に合わせて、上記のステップ405において読み込んだスクリプトコメントを配置するステップである。この時、詳細構造で使用することができるスクリプト内容がいくつか抽出された場合、抽出されたスクリプトの中で最も相談成功率が高かったスクリプト内容を選択する。この時、最も成功率の高いスクリプトはカウンセラーが顧客と通話を完了した後、相談または販売成功件に登録された相談で使われたスクリプトの累積値である。スクリプト内容の中で、上記のステップ403において、読み込んだキャンペーンのオファーと一致するオファー情報は画面上からボタンに生成されてカウンセラーが顧客との相談中に選択するように表現される。この時、各オファーはオファー登録の時に付与された連続番号により区別される。」

「[58]ステップ504は、システムが、前記ステップ502で読み込んだキャンペーン及びオファー情報の商品情報と顧客の性別、年齢、居住地、職業などの顧客情報を利用してスクリプト情報DB(515)で読み込んだスクリプト構造情報に合わせて最適の顧客カスタム型相談スクリプトを生成する顧客カスタム型相談スクリプト生成ステップである。顧客カスタム型相談スクリプト作成のための詳細プロセスは、図4において説明したとおりである。
[59]ステップ505は、PDS(Prospect Dialing System)など自動ダイヤル装置が対象顧客に電話をかける電話発呼ステップである。
[60]ステップ506は、顧客が受信可能か否かを検出して、顧客と電話が接続されると(通話が始まると)次のステップ507に、電話が接続されなければ上記のステップ503に進み、次の顧客に対する相談準備をする電話接続ステップである。この時、通話に失敗した顧客の詳細情報はカウンセラーの画面に表示されないから、顧客の個人情報を保護する効果を有する。
[61]ステップ507は、電話接続に成功した顧客に対して、前記図4のカスタム型相談スクリプト作成プロセスで作成され、一時領域に保存された顧客カスタム型相談スクリプトを、カウンセラーの画面に出力する相談スクリプト画面出力ステップである。
[62]ステップ508は、カウンセラーが、カウンセラーの端末画面に表示された顧客カスタム型スクリプトに基づいて相談を進める相談ステップである。
[63]ステップ509で、カウンセラーは顧客との相談中に顧客の選択肢や顧客の質問に合わせて画面に表示された分岐ボタンをクリックするようにされたオファー及びスクリプト選択ステップである。この時、画面に表示された分岐ボタンは顧客カスタム型スクリプトで生成されたキャンペーン別オファーまたは顧客の予想質問に応じて、スクリプトで自動的に生成されて表示される。
[64]ステップ510は、顧客と相談中に分岐ボタンを選択することによる、相談中に顧客の選択肢によってスクリプトが動的に生成されるプロセスによって、スクリプト内容を画面に動的に生成して出力する、選択された状況によるスクリプトの動的生成ステップである。この時、動的に生成されたスクリプトが出力される位置は、カウンセラーがボタンを押した位置に引き継いで出力される。相談の進行に応じて、上記のステップ507〜ステップ510を繰り返す。
[65]ステップ511は、カウンセラーに提供された顧客カスタム型相談スクリプト及び動的スクリプトによって、すべての相談ステップを進めて相談が終わると、カウンセラーは相談終了ボタンを押して、相談が終わったことをシステムに知らせることにより通話を終了する通話終了ステップである。
[66]ステップ512は、契約状況の整理、相談が成功したか失敗したかの登録、顧客満足度評価登録、通話履歴登録などの相談後処理業務をする相談後処理ステップである。
[67]ステップ516は、すべての相談プロセスを終了するステップである。」

「[73]ステップ604は、抽出されたスクリプト中で最も相談成功率が高かったスクリプトを選択する最適スクリプト選択ステップである。この時、最も成功率の高いスクリプトは、図5のステップ511で成功件に登録された相談で使われたスクリプトの累積ポイント値である。この時、同じ成功率であった場合には、スクリプトの選択条件の中で最も多くの条件が一致したスクリプトを選択する。」

(2)引用発明
ア 引用文献1の[15][20]の記載によると、引用文献1には、「コンピュータベースの電話相談業務システムと接続され、カウンセラーがモニター上に表示されるスクリプトを参考にして、顧客と相談を進める」ためのシステムが記載され、当該システムは、「電話相談システムでカウンセラーが相談用シナリオで使用する相談用スクリプトを自動で生成する」ものである。
このようなコンピュータベースの電話相談業務システムが、「コンピュータに対し、電話相談システムでカウンセラーが相談用シナリオで使用する相談用スクリプトを自動で生成するプログラム」を実行させることにより動作することは明らかである。
イ 引用文献1の[27][44]の記載によると、引用文献1の上記アのプログラムは、コンピュータに対し、「特定の顧客を対象に特定の商品を販売するための営業戦略として販売商品を分析して商品情報を入力するステップであって、販売対象の商品、販売期間、販売対象の顧客などのキャンペーン自体情報と商品の特徴、長所、競争製品との差別化など商品販売のための情報と主要消費層の性別、年齢などの商品需要者関連情報を、商品(相談)情報DBに登録するキャンペーン登録ステップ」を実行させるものである。
ウ 引用文献1の[40][46][47]の記載によると、引用文献1の上記アのプログラムは、コンピュータに対し、「キャンペーン登録ステップにおいて登録された性別、年齢帯、職業に基づいて、顧客情報DBから相談内容を適用する対象顧客を選択するステップ」を実行させるものである。
エ 引用文献1の[46][47][49][50][58]の記載によると、引用文献1の上記アのプログラムは、コンピュータに対し、「商品(相談)情報DBから商品情報を読み込み、顧客情報DBから顧客情報を読み込み、読み込んだ商品情報と顧客情報とに一致するスクリプト内容をスクリプト情報DBから読み込み、最適の顧客カスタム型相談スクリプトを生成する顧客カスタム型相談スクリプト生成ステップ」を実行させるものである。
オ 引用文献1の[61][62][63]の記載によると、引用文献1の上記アのプログラムは、コンピュータに対し、「生成された顧客カスタム型相談スクリプトを、カウンセラーの端末画面に表示するステップ」を実行させるものであり、これにより、カウンセラーは、カウンセラーの端末画面に表示された顧客カスタム型スクリプトに基づいて相談を進めるものである。
カ 引用文献1の[66]の記載によると、引用文献1の上記プログラムは、コンピュータに対し、「カウンセラーに、顧客との相談終了後に、相談が成功したか失敗したかの登録をさせる相談後処理ステップ」を実行させるものである。
キ 引用文献1の[50][73]の記載によると、引用文献1の上記アのプログラムは、コンピュータに対し、「顧客カスタム型相談スクリプト生成ステップにおいて、相談後処理ステップで成功と登録された相談で使われたスクリプトの中で累積ポイント値が高いものを最も相談成功率が高かったスクリプト内容として選択し、同じ成功率であった場合には、スクリプトの選択条件の中で最も多くの条件が一致したスクリプトを選択する」ものである。
ク 以上ア〜キによると、引用文献1には、
「コンピュータに対し、
特定の顧客を対象に特定の商品を販売するための営業戦略として販売商品を分析して商品情報を入力するステップであって、販売対象の商品、販売期間、販売対象の顧客などのキャンペーン自体情報と商品の特徴、長所、競争製品との差別化など商品販売のための情報と主要消費層の性別、年齢などの商品需要者関連情報を、商品(相談)情報DBに登録するキャンペーン登録ステップと、
キャンペーン登録ステップにおいて登録された性別、年齢帯、職業に基づいて、顧客情報DBから相談内容を適用する対象顧客を選択するステップと、
商品(相談)情報DBから商品情報を読み込み、顧客情報DBから顧客情報を読み込み、読み込んだ商品情報と顧客情報とに一致するスクリプト内容をスクリプト情報DBから読み込み、最適の顧客カスタム型相談スクリプトを生成する顧客カスタム型相談スクリプト生成ステップと、
生成された顧客カスタム型相談スクリプトを、カウンセラーの端末画面に表示するステップと、
カウンセラーに、顧客との相談終了後に、相談が成功したか失敗したかの登録をさせる相談後処理ステップと、
を実行させ、
カウンセラーは、カウンセラーの端末画面に表示された顧客カスタム型スクリプトに基づいて相談を進め、
顧客カスタム型相談スクリプト生成ステップにおいて、相談後処理ステップで成功と登録された相談で使われたスクリプトの中で累積ポイント値が高いものを最も相談成功率が高かったスクリプト内容として選択し、同じ成功率であった場合には、スクリプトの選択条件の中で最も多くの条件が一致したスクリプトを選択する
電話相談システムでカウンセラーが相談用シナリオで使用する相談用スクリプトを自動で生成するプログラム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

第7 新規性進歩性について
1 本願発明9について
(1)対比
本願発明9と引用発明とを対比する。
ア 引用発明において、生成された相談用スクリプトは、カウンセラーの端末に表示され、カウンセラーは、当該端末に表示された内容に基づいて顧客との相談を進めるから、生成された「相談用スクリプト」は、カウンセラーが顧客との相談を進める際に参考にするマニュアルともいえるものである。
よって、引用発明において、「相談用スクリプト」を生成することは、本願発明9の「マニュアル」を生成することに相当し、引用発明の「相談用スクリプトを自動で生成するプログラム」は、本願発明9と同様の「マニュアル自動生成プログラム」であるといえる。
イ 引用発明の「商品(相談)情報DB」に登録された「販売対象の商品、販売期間、販売対象の顧客などのキャンペーン自体情報と商品の特徴、長所、競争製品との差別化など商品販売のための情報と主要消費層の性別、年齢などの商品需要者関連情報」は、「顧客情報DB」から電話を掛ける対象顧客を選択することに使われるから、「顧客情報DB」から選択された「対象顧客」は、本願発明9の「電話を掛ける予定の予定電話対象」に相当し、対象顧客を選択する際に使われる「主要消費層の性別、年齢などの商品需要者関連情報」は、本願発明9の「予定属性情報」に相当する。
そして、引用発明において、商品(相談)情報DBは、キャンペーンとして登録されるものであり、顧客情報DBは予め作成されるものであるから、引用発明の「対象顧客」を選定する「顧客情報DB」を作成すること、「商品(相談)情報DB」に「販売対象の商品」の「主要消費層の性別、年齢などの商品需要者関連情報」を登録することは、本願発明9の「電話を掛ける予定の予定電話対象及び該予定電話対象に対して提案する予定契約の属性を表す予定属性情報とを入力する入力ステップ」に相当する。
ウ 引用発明の「商品(相談)情報DBから商品情報を読み込み、顧客情報DBから顧客情報を読み込み、読み込んだ商品情報と顧客情報とに一致するスクリプト内容をスクリプト情報DBから読み込み、最適の顧客カスタム型相談スクリプトを生成する顧客カスタム型相談スクリプト生成ステップ」において、「相談後処理ステップで成功と登録された相談で使われたスクリプトの中で累積ポイント値が高いものを最も相談成功率が高かったスクリプト内容として選択し、同じ成功率であった場合には、スクリプトの選択条件の中で最も多くの条件が一致したスクリプトを選択する」ことと、本願発明9の「過去に電話を掛けた過去電話対象及び該過去電話対象に対して過去に提案された過去商品の属性を表す過去属性情報と、前記過去電話対象に対して過去に電話を掛けたときの契約の成立の可否である過去成約情報及び使用されたマニュアル情報が対応付けて登録された過去データベース及び前記予定属性情報に基づいて前記予定電話対象に対するマニュアルを選択するマニュアル選択ステップ」とは、いずれも、「過去に電話を掛けた過去電話対象に対して過去に電話を掛けたときの契約の成立の可否である過去成約情報及び使用されたマニュアル情報、前記予定属性情報に基づいて前記予定電話対象に対するマニュアルを選択するマニュアル選択ステップ」である点で共通する。
エ 引用発明の「生成された顧客カスタム型相談スクリプトを、カウンセラーの端末画面に表示するステップ」において、スクリプトから画像データを生成して、生成された画像データが端末画面に表示されることは明らかであるから、引用発明の「生成された顧客カスタム型相談スクリプトを、カウンセラーの端末画面に表示するステップ」は、本願発明9の「前記選択されたマニュアルに基づいて、マニュアル画像データを生成するマニュアル生成ステップ」及び「前記マニュアル画像データを表示する表示ステップ」に相当する。
オ 引用発明の「相談後処理ステップ」において、「顧客との相談終了後に、相談が成功したか失敗したか」を登録することと、本願発明9の「前記過去データベースは、複数の契約提供会社から提供された過去属性情報及び過去成約情報が登録されており、前記過去属性情報は、電話対象を具体的に特定できないが電話対象の特性を表す属性情報と、商品情報のうち商品の特性を表す属性情報である」こととは、「過去データとして、過去成約情報が登録されて」いる点で共通する。
(2)一致点、相違点
上記(1)によると、本願発明9と引用発明とは次の一致点、相違点を有する。
[一致点]
コンピュータに対し、
電話を掛ける予定の予定電話対象及び該予定電話対象に対して提案する予定契約の属性を表す予定属性情報とを入力する入力ステップと、
過去に電話を掛けた過去電話対象に対して過去に電話を掛けたときの契約の成立の可否である過去成約情報及び使用されたマニュアル情報、前記予定属性情報に基づいて前記予定電話対象に対するマニュアルを選択するマニュアル選択ステップと、
前記選択されたマニュアルに基づいて、マニュアル画像データを生成するマニュアル生成ステップと、
前記マニュアル画像データを表示する表示ステップと、
を実行させ、
過去データとして、過去成約情報が登録されている、
ことを特徴とするマニュアル自動生成プログラム。
[相違点1]
「過去に電話を掛けた過去電話対象に対して過去に電話を掛けたときの契約の成立の可否である過去成約情報及び使用されたマニュアル情報」が、本願発明9では、「過去データベース」に「過去に電話を掛けた過去電話対象及び該過去電話対象に対して過去に提案された過去商品の属性を表す過去属性情報と、前記過去電話対象に対して過去に電話を掛けたときの契約の成立の可否である過去成約情報及び使用されたマニュアル情報が対応付けて登録され」ているのに対し、引用発明では、過去成約情報及び使用されたマニュアル情報が登録されているものの、「過去に電話を掛けた過去電話対象及び該過去電話対象に対して過去に提案された過去商品の属性を表す過去属性情報」は登録されておらず、また、過去成約情報及び使用されたマニュアル情報がデータベース形式で登録されているのか特定されていない点。
[相違点2]
本願発明9では、「過去データベース」に登録された「過去属性情報及び過去成約情報」が複数の契約提供会社から提供されたものであり、「過去属性情報」が「電話対象を具体的に特定できないが電話対象の特性を表す属性情報と、商品情報のうち商品の特性を表す属性情報」であるのに対し、引用発明ではそのような特定のない点。
(3)新規性について
本願発明9と引用発明とは、[相違点1]、[相違点2]で相違するから、本願発明9は引用発明ではない。
(4)相違点の判断
[相違点1]、[相違点2]について、まとめて検討する。
引用発明では、過去成約情報及び使用されたマニュアル情報が登録されているものの、「過去に電話を掛けた過去電話対象及び該過去電話対象に対して過去に提案された過去商品の属性を表す過去属性情報」は登録されていない。また、このような「過去属性情報」を登録することが本願優先日における周知技術であったともいえない。
よって、引用発明に基づいて、「過去属性情報」を「過去データベース」に「過去電話対象」と「過去成約情報」と「使用されたマニュアル情報」に対応付けて登録し、これらに基づいてマニュアルを選択することが、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
このため、当業者が、引用発明に基づいて、[相違点1]及び[相違点2]に係る構成を容易に想到し得たとはいえない。
[作用効果]について
本願発明9は、上記[相違点1]及び[相違点2]に係る構成により、明細書段落【0081】に記載された「集計の結果、成約率が高い方のマニュアル文133Aと未表示のマニュアル文133Dとからランダムに選択され、いずれか一方が表示される。この成約率の集計は、表示対象及び属性グループごとに行われる。この結果、予め準備された5種類のマニュアル文のうち、各属性グループに対応する各一のマニュアル文133,136,138が属性対応マニュアル文として選択される。この結果、所属グループに対応する最適なマニュアル文をマニュアル画面130に表示することが可能となる。」という作用効果を奏するものである。
[小括]
以上のとおり、本願発明9は、引用発明ではないし、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明1〜8について
原査定において、本願発明1〜8については、新規性進歩性の拒絶の理由を発見しないとされている。
また、当審において、新規性進歩性に係る拒絶理由を通知しておらず、新規性進歩性に係る拒絶の理由を発見しない。

第8 明確性(特許法第36条第6項第2号)について
1 当審拒絶理由について
当審拒絶理由で通知した明確性(特許法第36条第6項第2号)の拒絶理由は、令和3年12月15日に提出された手続補正書による補正により解消した。
2 前置報告について
本願明細書には、「顧客リストには、電話対象の氏名や電話番号の他に電話対象の性別や年齢など顧客に関する特性である属性情報が含まれる。」(段落【0013】)と記載されている。
そうすると、当業者であれば、上記の属性情報のうち、氏名、電話番号など顧客を一意に特定できる情報が「電話対象を具体的に特定できる属性情報」であり、請求項1及び請求項9に記載された「電話対象を具体的に特定できないが電話対象の特性を表す属性情報」とは、上記の「電話対象を具体的に特定できる属性情報」を除いた、性別や年齢などの顧客の特性を表す属性情報であるということが理解できるから、本願の特許請求の範囲の請求項1〜9の記載は明確である。

第9 原査定について
本願発明1〜8については、原査定の理由の対象とはされておらず、請求項10、11は、審判請求時の補正により削除された。
本願発明9は、上記第7のとおり、引用発明ではないし、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、原査定を維持することはできない。

第10 むすび
以上のとおり、本願発明1〜9は、引用発明ではないし、当業者が引用発明に基づいて、容易に発明をすることができたものでもない。
また、本願請求項1〜9の記載は明確である。
したがって、原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-02-01 
出願番号 P2019-218160
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q)
P 1 8・ 113- WY (G06Q)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 高瀬 勤
松田 直也
発明の名称 AI技術を用いたマニュアル自動生成システム、マニュアル自動生成プログラム及びマニュアル自動生成方法  
代理人 吉田 みさ子  

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