• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1382191
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-19 
確定日 2022-02-10 
事件の表示 特願2016−240923「カラーフィルタ用着色組成物、およびカラーフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月21日出願公開、特開2018− 97128〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2016−240923号(以下「本件出願」という。)は、2016年(平成28年)12月13日の出願であって、その手続等の経緯の概要、以下のとおりである。
令和元年 7月12日提出:手続補正書
令和2年 8月 3日付け:拒絶理由通知書
令和2年 9月30日提出:意見書・手続補正書
令和2年11月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年 2月19日付け:審判請求書
令和3年 2月19日提出:手続補正書

2 本願発明
本件出願の請求項1〜請求項7に係る発明は、令和3年2月19日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1〜請求項7に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 着色剤(A)、樹脂型分散剤(B)、バインダー樹脂(C)、光重合性単量体(D)、および光重合開始剤(E)を含有するカラーフィルタ用着色組成物であって、
着色剤(A)の含有量が着色組成物の全固形分中20〜30重量%であり、光重合性単量体(D)がウレタン系光重合性単量体(酸基を有する光重合性単量体を除く)(D1)、酸基を有する光重合性単量体(D2)、およびエチレン性不飽和結合を1〜3個有する(メタ)アクリル単量体(ウレタン系光重合性単量体、または酸基を有する光重合性単量体を除く)(D3)を含有し、
光重合性単量体(D)全量100重量%中、ウレタン系重合性単量体(D1)を30〜70重量%、および酸基を有する光重合性単量体(D2)を20〜40重量%含有することを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。」

3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、本件出願の請求項1〜請求項8に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2012−98345号公報
引用文献2:特開2010−2569号公報
引用文献3:特開2012−211975号公報
引用文献4:特開2016−122174号公報
(当合議体注:主引用例は、引用文献1である。また、引用文献3は、副引用例であり、引用文献2及び4は周知技術を示す文献である。)

第2 当合議体の判断
1 引用文献1の記載及び引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2012−98345号公報)は、本件出願時に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。
なお、下線部は、当合議体が引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタおよび液晶表示装置に関するものであり、特にレーザー露光を用いて製造されるカラーフィルタ、および該カラーフィルタを具備する液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置はコンピュータ端末表示装置、テレビ画像表示装置を中心に急速に普及が進んでいる。このカラー液晶表示装置は、図1に示すように、アレイ基板2と、このアレイ基板に所定の隙間を保持して対向配置された対向基板1と、これら2つの基板間に狭持された液晶層4と、から構成される液晶表示素子を備えており、アレイ基板2および対向基板1の一方の基板には、カラー化のために通常、赤色、緑色、青色の3色の着色層からなるカラーフィルタが設けられている。
【0003】
近年、この液晶表示装置は、高コントラスト化、高視野角化、低消費電力等の様々な要求があり、液晶表示装置のカラー表示化には必要不可欠なカラーフィルタにおいても同様の要求を達成する必要がある。通常、カラーフィルタは対向基板に設けられていたが、最近ではこのカラーフィルタをアレイ基板側に形成する試みもなされている。(例えば、特許文献1、2)
・・・中略・・・
【0008】
また、レーザー光を光源とする露光方式としては、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)のような光変調手段を用い、パターン情報に応じて変調しながら照射し、マスクを用いることなく直接基板上にパターンを形成する提案もなされている(例えば下記特許文献4参照)。本方式はレーザー光の特徴の一つである集光性の高さに着目したものであるが、上記小型マスク方式同様に高出力レーザー使用による生産性向上検討が進められている。
【0009】
上記のように、レーザー光を露光光源として使用することが出来れば、マスクコストの抜本的な低減が可能となる。しかしながら、一般に高出力のレーザー光を露光光源に用いた場合、カラーフィルタの着色画素形成に用いる着色感光性樹脂組成物の塗膜表面が塗膜内部に比べて著しく硬化し易くなるため、塗膜内での硬化度合いに大きな差が生じ、塗膜表面シワ(着色塗膜現像後の焼成時、熱により塗膜が収縮するが、前記の硬化度合いの差により、塗膜表面に波状のシワが発生する現象)が顕著になるという問題がある。
【0010】
特に、青色着色組成物は、近紫外光に対する吸光度が非常に高いため、上記問題を解決することが困難であり、レーザー光を光源とする露光方式の実用化に向けての懸案となっていた。更には、カラーフィルタをアレイ基板側に形成する場合、着色感光性樹脂組成物による配線への電気的影響を考慮して着色層は厚膜化されるため、塗膜表面シワは大きな問題となっていた。
【0011】
このような問題解決のため、例えば特許文献5のように背面露光により塗膜の硬化性を均一化する方法があるが、工程及び設備の増加による製造コストの増加が問題となっていた。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は係る状況に鑑みてなされたものであり、レーザー光を露光光源に用いた際における着色層のシワ発生を抑制できる感光性樹脂組成物を提供し、カラーフィルタの製造におけるコストの抜本的な低減を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、レーザー光を露光光源に用いた際の着色層のシワ発生には、感光性樹脂組成物中における多官能重合性モノマーおよびオリゴマーの特性が大きな影響を及ぼしていることを見出した。そこで、種々の多官能重合性モノマーおよびオリゴマーを用いた検証を行い、トリアジン骨格を含む多官能重合性モノマーおよびオリゴマーを用いることによりシワを抑制できることを見出した。
・・・中略・・・
【発明の効果】
【0020】
第1の発明は、着色剤と、光重合開始剤と、多官能重合性モノマーおよびオリゴマーと、透明樹脂とを含む感光性樹脂組成物であって、トリアジン骨格を含有するウレタンアクリレートが、多官能重合性モノマーおよびオリゴマーの総量に対する重量比率で10乃至40%含むことを特徴とするもので、トリアジン骨格を含有するウレタンアクリレートを適量用いることによって、着色塗膜を熱硬化させる焼成工程においてシワの発生をなくすることができるという長所を有するものである。
・・・中略・・・
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】液晶表示装置の一例における断面の模式図
【図2】アレイ基板側にカラーフィルタを具備する液晶表示装置の一例における断面の模式図」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明による液晶表示装置を、その実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明に用いられる液晶表示装置は少なくとも画素電極および薄膜トランジスタを具備するアレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間を保持して対向配置された複数色の着色画素を備えた対向基板と、前記一対の基板間に充填される液晶材料を備えており、当該複数色の画素は少なくとも3色以上の着色層から構成されている。複数色には赤、緑、青(RGB)の組み合わせやそれらにイエロー、マゼンダ、シアンを追加した組み合わせが挙げられるが、本発明のカラーフィルタはRGB系に対して特に好ましく適用できる。
【0027】
本発明の方法に用いられる透明基板は可視光に対してある程度の透過率を有するものが好ましく、より好ましくは80%以上の透過率を有するものを用いることができる。一般に液晶表示装置に用いられているものでよく、PETなどのプラスチック基板やガラスが挙げられるが、通常はガラス基板を用いるとよい。
【0028】
本発明のアレイ基板に用いられる薄膜トランジスタ層は、ゲート電極31、ゲート絶縁膜32、絶縁膜33、半導体層34、ソース電極35、ドレイン電極36からなる。ゲート電極31は、ソース−ドレイン間の電流を制御するために形成され、モリブデン(Mo)、タングステン(W)のような金属やクロム−モリブデン(Cr−Mo)のような合金が用いられる。ゲート絶縁膜31は、ゲート電極と共に半導体層に電界を与えるために形成し、窒化ケイ素(SiNX)や酸化ケイ素(SiO)等が用いられる。絶縁層33は、後工程や湿気によるトランジスタの劣化を防ぐために形成され、ゲート絶縁膜同様に窒化ケイ素や酸化ケイ素等が用いられる。半導体層34は、非晶質シリコンで、500〜2000Å程度の厚さで形成される。ソース電極及びドレイン電極との接触部には、オーミックコンタクト用にリン(P)をドープしたN(+)型非晶質シリコンが設けられている。ソース電極及びドレイン電極について、極性が駆動中に反転するため、ソース電極及びドレイン電極も駆動中に入れ替わるが、便宜上一方をソース電極、他方をドレイン電極として固定して表現する。ソース電極及びドレイン電極はチタン−アルミニウム(Ti−Al)合金やクロム−モリブデン(Cr−Mo)により形成される。
【0029】
本発明に用いられる着色層の形成方法は、公知のインクジェット法、印刷法、フォトリソグラフィ法、エッチング法など何れの方法で作製できるが、高精細、分光特性の制御性及び再現性等を考慮すれば、透明な樹脂中に顔料を、光開始剤、重合性モノマーと共に適当な溶剤に分散させた着色樹脂組成物をアレイ基板上に塗布膜を形成し、塗布膜にパターン露光、現像することで一色の着色層を形成する工程を色毎に繰り返し行って着色層を形成するフォトリソグラフィ法が好ましい。
【0030】
本発明の液晶表示装置に用いるカラーフィルタを構成する着色層およびブラックマトリクスは、着色樹脂組成物を調製してフォトリソグラフィ法により形成する場合は例えば以下の方法に従う。着色剤となる顔料を透明な樹脂中に光開始剤、重合性モノマーと共に適当な溶剤に分散させる。分散させる方法はミルベース、3本ロール、ジェットミル等様々な方法があり特に限定されるものではない。
【0031】
本発明の液晶表示装置に用いる対向基板側に備える画素を構成する着色層形成に用いて好適な、着色樹脂組成物に用いることのできる着色顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0032】
赤色画素を形成するための赤色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Red 7、9、14・・・中略・・・等の赤色顔料を用いることができる。赤色着色組成物には、黄色顔料、橙色顔料を併用することができる。
【0033】
黄色顔料としてはC.I. Pigment Yellow 1、2・・・中略・・・等が挙げられる。
【0034】
橙色顔料としてはC.I.Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等が挙げられる。
【0035】
緑色画素を形成するための緑色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Green 7、10、36、37、58等の緑色顔料、を用いることができる。緑色着色組成物には赤色着色組成物と同様の黄色顔料を併用することができる。
【0036】
青色画素を形成するための青色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80等の青色顔料、好ましくはC.I.Pigment Blue 15:6を用いることができる。
・・・中略・・・
【0037】
また、上記有機顔料と組み合わせて、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、無機顔料を組み合わせて用いることも可能である。無機顔料としては、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉等が挙げられる。さらに、調色のため、耐熱性を低下させない範囲内で染料を含有させることができる。
・・・中略・・・
【0039】
本発明の液晶表示装置に用いる画素を構成する着色層、ブラックマトリクスの形成に用いて好適な、着色樹脂組成物に用いることのできる透明樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上である樹脂である。透明樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂が含まれる。透明樹脂には、必要に応じて、その前駆体である、放射線照射により硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0040】
このような樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、スチレンーマレイン酸共重合体、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、およびこれらを変性したもの等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂と不飽和基含有カルボン酸またはその無水物の反応物にさらに多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させて得られた光重合性不飽和基含有樹脂、あるいはノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂等のフェノール性水酸基を有する樹脂またはこれらの変性樹脂が、現像性、パターニング特性、コスト等の点から特に好ましい。
【0041】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0042】
感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該線状高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン-無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
【0043】
用いることのできる多官能重合性モノマーおよびオリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート・・・中略・・・ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、・・・中略・・・、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート・・・中略・・・等が挙げられる。
【0044】
トリアジン骨格を有するウレタンアクリレートに関して、水酸基を有する(メタ)アクリレートにトリアジン骨格を持つ多官能イソシアネートを反応させて得ることができる。なお、水酸基を有する(メタ)アクリレートとトリアジン骨格を持つ多官能イソシアネートとの組み合わせは任意であり、特に限定されるものではない。また、1種の多官能ウレタンアクリレートを単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらは、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。
【0045】
着色層、ブラックマトリクスを形成する樹脂組成物には、該組成物を紫外線照射により硬化する場合には、光重合開始剤等が添加される。
・・・中略・・・
【0050】
また、樹脂組成物には、基板との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。
・・・中略・・・
【0051】
着色樹脂組成物は、必要に応じて有機溶剤を含有することができる。
・・・中略・・・
【0052】
以下に、基板上に着色層、ブラックマトリクスを形成する方法の説明を行う。
【0053】
(A)塗布工程
基板上に着色樹脂組成物を塗布し、プリベークを行う。塗布する手段はスピンコート、ディップコート、ダイコートなどが通常用いられるが、基板上に均一な膜厚で塗布可能な方法ならばこれらに限定されるものではない。プリベークは50〜120℃で1〜20分ほどすることが好ましい。
【0054】
(B)露光工程
感光性樹脂組成物を塗布し着色層を形成した基板にパターンマスクを介してレーザー露光を行う。光源に用いるレーザーとして、半導体レーザー、YAGレーザー及び気体レーザー(アルゴンレーザー、エキシマレーザー、炭酸ガスレーザー、ヘリウムレーザー)等の公知のレーザーを用いることが出来る。
・・・中略・・・
【0059】
(C)現像工程
露光に続いて現像を行う。現像液にはアルカリ性水溶液を用いる。アルカリ性水溶液の例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、もしくは水酸化カリウム水溶液が好んで用いられるが、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、または両者の混合水溶液、もしくはそれらに適当な界面活性剤などを加えたものを用いても良い。
・・・中略・・・
【0060】
(D)焼成工程
得られた画素及びブラックマトリクスに熱処理を行うことによって、後工程における耐性を向上させる。熱処理方法としては、コンベクションオーブン、ホットプレート、IRオーブン、ハロゲンヒータによる加熱が利用できる。
・・・中略・・・
【0062】
対向基板に形成する画素の膜厚としては、一般的に1.0乃至3.5μm程度であり、更に好ましくは1.5乃至2.5μmである。これより膜厚が薄いと十分な色再現性を満たすことができなくなる。また、これより膜厚が厚いと十分な塗布安定性が得られなくなる。一方、着色画素をアレイ基板側に形成する時の膜厚としては、2.0乃至3.5μm程度であり、対向基板に形成するよりも厚膜化する必要がある。これより膜厚が薄くなると着色画素上に形成する画素電極と配線の距離が近くなることによるRC遅延やクロストーク等の表示不良が懸念されるために、画素電極の十分な開口が得られなくなる。一方、これより膜厚が厚いと、塗布安定性の他、着色画素上に形成するコンタクトホールの開口が困難となる。」

ウ 「【実施例】
【0063】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においてこれに限定されるものではない。
【0064】
[樹脂溶液(R)の合成]
反応容器にシクロヘキサノン800部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら加熱して、下記モノマーおよび熱重合開始剤の混合物を滴下して重合反応を行った。
スチレン 60部
メタクリル酸 60部
メチルメタクリレート 65部
ブチルメタクリレート 65部
熱重合開始剤 10部
連鎖移動剤 3部
滴下後十分に加熱した後、熱重合開始剤2.0部をシクロヘキサノン50部で溶解させたものを添加し、さらに反応を続けてアクリル樹脂の溶液を得た。
この樹脂溶液に固形分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液を調製し、樹脂溶液(R)とした。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、約12000であった。
【0065】
<青色感光性樹脂組成物1>
下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して青色顔料の分散体を作製した。
青色顔料:C.I.Pigment Blue 15:6
(BASF製「ヘリオゲンブルーL−6700F」) 17部
紫色顔料:C.I.Pigment Violet 23
(BASF社製「パリオゲンバイオレット 5890」) 5部
分散剤(ゼネカ社製「ソルスバーズ20000」) 5部
樹脂溶液(R) 125部
その後、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルターで濾過して青色着色組成物を得た。
上記分散体 152部
樹脂溶液(R) 100部
多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート) 10部
(新中村化学工業(株)製「NKオリゴ U−6HA」)
多官能重合性モノマー 21部
(東亞合成(株)製「アロニックスM−402」)
光開始剤(チバ スペシャルティケミカルズ)社製「イルガキュアー369」) 14部
増感剤(保土ヶ谷化学工業(株)製「EAB-F」) 3部
シクロヘキサノン 300部
この時、多官能重合性モノマー中のトリアジン骨格含有ウレタンアクリレートの重量比は32.3%であった。
・・・中略・・・
【0067】
<青色感光性樹脂組成物3>
下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して青色顔料の分散体を作製した。
青色顔料:C.I.Pigment Blue 15:6
(BASF製「ヘリオゲンブルーL−6700F」) 17部
紫色顔料:C.I.Pigment Violet 23
(BASF社製「パリオゲンバイオレット5890」) 5部
分散剤(ゼネカ社製「ソルスバーズ20000」) 5部
樹脂溶液(R) 125部
その後、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルターで濾過して青色着色組成物を得た。
上記分散体 152部
樹脂溶液(R) 100部
多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート) 12部
(新中村化学工業(株)製「NKオリゴ U-6HA」)
多官能重合性モノマー 19部
(東亞合成(株)製「アロニックスM−402」)
光開始剤(チバ スペシャルティケミカルズ)社製「イルガキュアー369」) 14部
増感剤(保土ヶ谷化学工業(株)製「EAB-F」) 3部
シクロヘキサノン 300部
この時、多官能重合性モノマー中のトリアジン骨格含有ウレタンアクリレートの重量比は38.7%であった。
【0068】
<青色感光性樹脂組成物4>
下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して青色顔料の分散体を作製した。
青色顔料:C.I.Pigment Blue 15:6
(BASF製「ヘリオゲンブルーL−6700F」) 17部
紫色顔料:C.I.Pigment Violet 23
(BASF社製「パリオゲンバイオレット 5890」) 5部
分散剤(ゼネカ社製「ソルスバーズ20000」) 5部
樹脂溶液(R) 125部
その後、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルターで濾過して青色着色組成物を得た。
上記分散体 152部
樹脂溶液(R) 100部
多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート) 8部
(新中村化学工業(株)製「NKオリゴ UA-33H」)
多官能重合性モノマー 23部
(日本化薬(株)社製「KAYARAD DPCA−30」)
光開始剤(チバ スペシャルティケミカルズ)社製「イルガキュアー369」) 14部
増感剤(保土ヶ谷化学工業(株)製「EAB-F」) 3部
シクロヘキサノン 300部
この時、多官能重合性モノマー中のトリアジン骨格含有ウレタンアクリレートの重量比は38.7%であった。
・・・中略・・・
【0075】
(実施例1)
青色感光性樹脂組成物1を用いて、板厚0.7mmの無アルカリガラス(日本電気硝子社製「OA10」)基板上に最終的な膜厚が3.0μmになるようスピンコートした。次いで、感光性樹脂組成物の塗膜から150μmの間隔を介し、線幅100μmのストライプ状のフォトマスクをセットし、波長355nmのYAGレーザーを照射した。レーザー露光装置は、株式会社ブイテクノロジー社製の「RIGEL」を使用し、1パルス当たりのエネルギー密度1mJ/cm2、パルス幅7nsec、周波数50Hz、露光量50mJ/cm2で照射した。露光量はOPHIR社製の「PE10B-V2」を用いて測定した。さらに、0.2%の炭酸ナトリウム水溶液からなる現像液によりスプレー現像して未露光部分を取り除いた後、イオン交換水で洗浄し、基板上に青色のストライプ状パターンを形成した。パターン形成した基板を230℃、30分間焼成し、着色層基板を作製した。
・・・中略・・・
【0077】
(実施例3)
青色感光性樹脂組成物3を用いること以外は、実施例1と同様にして、着色層基板を作製した。
・・・中略・・・
【0086】
〈外観評価方法〉
実施例および比較例で得られた着色層基板について、外観評価として、表面シワおよび表面荒れの有無を目視にて観察を行った。異常のなかったものを○、表面シワおよび表面荒れが認められたものを×とした。各青色感光性樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
トリアジン骨格を含有するウレタンアクリレートを、感光性樹脂組成物中に含まれる多官能重合性モノマーおよびオリゴマー総量に対する重量比率で10乃至40%含む実施例1乃至4に示される、本発明の青色感光性樹脂組成物において、膜厚3μmにおいても表面シワおよび表面荒れが発生せず、良好な着色層が得られた。また、実施例4から、カラーフィルタをアレイ基板側に形成する場合においても適用可能である。一方、トリアジン骨格を含有するウレタンアクリレートが、感光性樹脂組成物中に含まれる多官能重合性モノマー総量に対する重量比率で10%以下である比較例1乃至4においては表面シワが発生している。比較例3のようなトリアジン骨格のアクリレートおよび比較例4のようなトリアジン骨格を含まないウレタンアクリレートにおいて、表面シワが改善しないことを確認した。
【0089】
この結果より、可とう性の高いウレタンアクリレートが、含有するトリアジン骨格により3次元的に配置して熱硬化収縮を緩和し、表面シワの発生を抑制していると考えられる。また、トリアジン骨格を含有するウレタンアクリレートが、感光性樹脂組成物中に含まれる多官能重合性モノマー総量に対する重量比率で40%以上である比較例5および6については、表面シワの発生は抑制できたが表面荒れが発生した。これは、感光性樹脂組成物中に含まれるトリアジン骨格を含有するウレタンアクリレートが増加することにより、相溶性が低下して表面荒れが発生したものと考えられる。
【0090】
本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、カラーフィルタの製造時にレーザー光を露光光源に用いた際におけるシワ発生を抑制できる感光性樹脂組成物を提供し、カラーフィルタの製造におけるコスト低減を可能にする。
【符号の説明】
【0091】
1 対向基板 11 ガラス基板
・・・中略・・・
25 コンタクトホール
26 突起・・・中略・・・
4 液晶層」

エ 「



(2)引用文献1に記載された発明
上記「(1)ウ」によれば、引用文献1の【0065】、【0075】及び【0087】【表1】には、実施例1の「着色層基板」の作製に用いられるものであって、「青色顔料の分散体」、「樹脂溶液(R)」、「多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート)」、「多官能重合性モノマー」、「光開始剤」、「増感剤」及び「シクロヘキサノン」の混合物を攪拌混合して得た、「青色感光性樹脂組成物1」が記載されている。
ここで、上記「青色顔料の分散体」は、同文献の【0065】に記載されているとおり、「青色顔料」、「紫色顔料」、「分散剤」及び上記「樹脂溶液(R)」から作製したものであるところ、前記「樹脂溶液(R)」は、引用文献1の【0064】に記載された組成及び方法にて合成されたものとである。
さらに、引用文献1の【0010】及び【0013】〜【0014】の記載からみて、上記「青色感光性樹脂組成物1」は、カラーフィルタをアレイ基板側に形成する場合における着色層のシワ発生を、トリアジン骨格を含む多官能重合性モノマーおよびオリゴマーを用いることにより抑制するものと理解される。
以上総合すれば、引用文献1には、次の「青色感光性樹脂組成物」の発明(以下「引用発明」といい、便宜上、「青色感光性樹脂組成物1」の「1」は省略する。)が記載されていると認められる。

「[A]下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、分散した後、濾過して青色顔料の分散体を作製し、
青色顔料:C.I.Pigment Blue 15:6
(BASF製「ヘリオゲンブルーL−6700F」) 17部
紫色顔料:C.I.Pigment Violet 23
(BASF社製「パリオゲンバイオレット 5890」) 5部
分散剤(ゼネカ社製「ソルスバーズ20000」) 5部
樹脂溶液(R) 125部
[B]その後、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、濾過して得た、カラーフィルタをアレイ基板側に形成する場合における着色層のシワ発生を、トリアジン骨格を含む多官能重合性モノマーおよびオリゴマーを用いることにより抑制するものである、青色感光性樹脂組成物。
上記分散体 152部
樹脂溶液(R) 100部
多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート) 10部
(新中村化学工業(株)製「NKオリゴ U−6HA」)
多官能重合性モノマー 21部
(東亞合成(株)製「アロニックスM−402」)
光開始剤(チバ スペシャルティケミカルズ)社製「イルガキュアー369」) 14部
増感剤(保土ヶ谷化学工業(株)製「EAB-F」) 3部
シクロヘキサノン 300部
[C]ここで、上記樹脂溶液(R)は、反応容器にシクロヘキサノン800部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら加熱して、下記モノマーおよび熱重合開始剤の混合物を滴下して重合反応を行い、
スチレン 60部
メタクリル酸 60部
メチルメタクリレート 65部
ブチルメタクリレート 65部
熱重合開始剤 10部
連鎖移動剤 3部
滴下後十分に加熱した後、熱重合開始剤2.0部をシクロヘキサノン50部で溶解させたものを添加し、さらに反応を続けてアクリル樹脂の溶液を得、この樹脂溶液に固形分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液を調製したものである。」

以下では、便宜のため、上記[A]の「下記組成」を「組成A」、上記[B]の「下記組成」を「組成B」、上記[C]の「下記モノマーおよび熱重合開始剤の混合物」の組成を「組成C」ということがある。

2 引用文献3の記載
(1)「【請求項1】
着色剤(A)と、樹脂(B)と、多官能モノマー(C)と、光重合開始剤(D)と、溶剤(E)と、酸化防止剤(J)とを含有するカラーフィルタ用着色組成物であって、
樹脂(B)が、少なくともアルカリ可溶性感光性樹脂(B1)及び/またはアルカリ可溶性非感光性樹脂(B2)を含み、
多官能モノマー(C)が、少なくとも酸性基を有する多官能モノマー(C1)を含み、
アルカリ可溶性感光性樹脂(B1)と酸性基を有する多官能モノマー(C1)が、樹脂(B)と多官能モノマー(C)の合計100重量%中、20〜70重量%であり、
かつ、酸化防止剤(J)が、カラーフィルタ用着色組成物の不揮発分100重量%中、0.1〜5重量%であることを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置、カラー撮像管素子等に用いられるカラーフィルタの製造に使用されるカラーフィルタ用着色組成物及びこれを用いて形成されるカラーフィルタに関する。
【背景技術】
・・・中略・・・
【0005】
近年、カラーフィルタに関しては、より一層の高透過性、かつ高濃度が要求されてきている。高濃度のカラーフィルタの製造のためには、使用する着色組成物中の着色剤濃度を上げる必要があるが、着色組成物の着色剤濃度を上げることによって露光感度及び現像時の溶解性など、画像画線形成性に寄与する特性が相対的に低下してしまう。結果として現像時の非画線部の溶解性が悪化し、現像時に非画線部の着色組成物が溶解せずに残留したり、あるいはレジストが未溶解のまま剥離片として基板上に残存したりし、色ずれなどの原因となる可能性がある。その結果、カラーフィルタの品質低下及び生産時の歩留まり低下の原因となる。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、・・・中略・・・未溶解物の残存(現像残渣)や未溶解剥離片の付着の問題は回避されても、溶解性が高すぎることに起因する、画線部のパターン剥れや欠けが生じる問題を同時に解決できず、現像マージンの狭い、すなわち、カラーフィルタ製造の効率が悪いものであった。また、上記開示の方法では、ポストベークなどの焼成工程や、カラーフィルタの後加工工程における焼成工程での加熱によって着色し、カラーフィルタの透過性が低下してしまう材料を用いているため、これらの現像性や画線部のパターン欠けの問題と、高い透過性を両立することはできなかった。
・・・中略・・・
【0011】
本発明は、現像後の基板上の非画線部への着色組成物の残留(現像残渣)や画線部のパターン剥れや欠けがないなどの画像画線形成性に係る現像性が良好で有りながら、透過性と生産性も良好で、さらに加熱後も透明性の低下を抑制できる、着色剤濃度の高いカラーフィルタ着色組成物及びそれを用いたカラーフィルタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、着色剤(A)と、樹脂(B)と、多官能モノマー(C)と、光重合開始剤(D)と、溶剤(E)と、酸化防止剤(J)とを含有するカラーフィルタ用着色組成物であって、
樹脂(B)が、少なくともアルカリ可溶性感光性樹脂(B1)及び/またはアルカリ可溶性非感光性樹脂(B2)を含み、多官能モノマー(C)が、少なくとも酸性基を有する多官能モノマー(C1)を含み、アルカリ可溶性感光性樹脂(B1)と酸性基を有する多官能モノマー(C1)が、樹脂(B)と多官能モノマー(C)の合計100重量%中、20〜70重量%であり、
かつ、酸化防止剤(J)が、カラーフィルタ用着色組成物の不揮発分100重量%中、0.1〜5重量%であることを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物である。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の本発明によれば、アルカリ可溶性の樹脂と酸性基を有する多官能モノマー(C1)の使用量を最適化することで、露光時の感度および光硬化性と、透明性を両立し、さらに酸化防止剤(J)を適量使用することで透明性の低下を抑制でき、さらに着色剤の高濃度化が可能になった。
【0014】
上記のように得られた着色剤濃度の高いカラーフィルタ用着色組成物によって、生産性が良好で、画像画線形成性に代表される現像性が良好でありながら透明性も良好なカラーフィルタが提供できた。」

(3)「【発明を実施するための形態】
・・・中略・・・
【0025】
着色組成物中の該エチレン性不飽和二重結合重量モル濃度が2.00 × 1 0 -3 mol/gより小さい場合には、露光時の感度が不足し硬化が不十分になることに起因する、画線部のパターン剥れや欠けの問題が生じる。また、着色組成物中のエチレン性不飽和二重結合重量モル濃度が2.75 × 1 0-3mol/gよりも大きい場合には、露光時の感度が高すぎて良好なパターン形状が得られない問題や、分散安定性が低下して均一な着色塗膜が得られなくなる問題が生じる。さらに、樹脂(B)と多官能モノマー(C)の不揮発分酸価の合計が、8.0mgKOH/gより小さい場合には、現像性が低下することに起因する、現像残渣の発生や、現像時間が長くなり生産性が低下する問題が生じる。また、樹脂(B)と多官能モノマー(C)の不揮発分酸価の合計が、40.0mgKOH/gより大きい場合には、溶解性が高すぎることに起因する画線部のパターン剥れや欠けの問題が生じる。
【0026】
画線部の硬化度は、着色組成物中のエチレン性不飽和二重結合重量モル濃度に依存し、樹脂(B)に占めるアルカリ可溶性感光性樹脂(B1)の含有量は、着色組成物中のエチレン性不飽和二重結合重量モル濃度が前記範囲となるように配合される。同時に、アルカリ現像性は、樹脂(B)と多官能モノマー(C)の不揮発分酸価の合計に依存し、多官能モノマー(C)に占める酸性基を有する多官能モノマー(C1)の含有量は、樹脂(B)と多官能モノマー(C)の不揮発分酸価の合計が前記範囲となるように配合される。このように、アルカリ可溶性感光性樹脂(B1)と多官能モノマー(C1)の含有量は互いに影響を及ぼし合っており、その含有量は、着色剤濃度や求められるアルカリ現像性、画線部のパターンサイズにより前記範囲内で適宜調整される。」

(4)「【実施例】
【0144】
・・・中略・・・
【0148】
<アルカリ可溶性感光性樹脂(B1)溶液の製造方法>
(樹脂溶液(B1−1)の調製)
・・・中略・・・
【0151】
<アルカリ可溶性感光性樹脂(B3)溶液の製造方法>
(樹脂溶液(B3−1)の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら120℃に加熱して、同温度で滴下管よりスチレン5.2部、グリシジルメタクリレート35.5部、ジシクロペンタニルメタクリレート41.0部、アゾビスイソブチロニトリル1.0部の混合物を2.5時間かけて滴下し重合反応を行った。
【0152】
次にフラスコ内を空気置換し、アクリル酸17.0部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.3部、及びハイドロキノン0.3部を投入し、120℃で5時間反応を続けアクリル樹脂溶液を得た。
【0153】
さらにテトラヒドロ無水フタル酸30.4部、トリエチルアミン0.5部を加え120℃で4時間反応させ、室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が40%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加して樹脂溶液(B3−1)を調製した。不揮発分酸価は58.6mgKOH/g、重量平均分子量は12000であった。
・・・中略・・・
【0158】
<アルカリ可溶性非感光性樹脂(B4)の製造方法>
(樹脂溶液(B4−1)の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりベンジルメタクリレート67.2部、メタクリル酸18.4部、ジシクロペンタニルメタクリレート14.4部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下し重合反応を行った。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、不揮発分30重量%のアクリル樹脂溶液を得た。
【0159】
室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加して樹脂溶液(B4−1)を調製した。不揮発分酸価は62.2mgKOH/g、重量平均分子量は26000であった。
得られた樹脂溶液の二重結合当量を表1に示す。
・・・中略・・・
【0161】
PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0162】
<カルボキシル基含有多官能モノマー(C1)の作製>
(カルボキシル基含有多官能モノマー(C1−1)の作製)
1L容の四つ口フラスコ内に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート578g、メルカプト酢酸20g、N,N−ジメチルベンジルアミン0.5g、及び4−メトキシフェノール0.6gを仕込み、50〜60℃の温度で6時間反応を行い、カルボキシル基含有多官能単量体を含む多官能モノマー(C1−1)を得た。この酸価は20であり、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにより、カルボキシル基含有多官能モノマーの含有量は、面積換算で25%であった。またカルボキシル基含有多官能モノマーの二重結合当量は128であった。
【0163】
・・・中略・・・
カルボキシル基含有多官能モノマー(C1−1):上記合成(酸価20、二重結合当量128)
・・・中略・・・
多官能モノマー(CN1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(東亞合成社製「アロニックス M−402」、二重結合当量119)
・・・中略・・・
光重合開始剤(D1):2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン
(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)
・・・中略・・・
増感剤(F1):2,4−ジエチルチオキサントン
(日本化薬社製「カヤキュアDETX−S」)
・・・中略・・・
酸化防止剤(J1):ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(BASF社製IRGANOX1010)
・・・中略・・・
有機溶剤(E1):シクロヘキサノン
【0164】
<顔料分散体の製造方法>
[赤色顔料分散体の調製]
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過し赤色顔料分散体P−Rを作製した。
ジケトピロロピロール系顔料(C.I.Pigment Red 254)
3.5部
(チバ・ジャパン社製「イルガフォーレッドB−CF」)
アントラキノン系顔料(C.I. Pigment Red 177) 1.0部
(チバ・ジャパン社製「クロモフタールレッドA2B」)
ニッケルアゾ錯体系顔料(C.I. Pigment Yellow 150)
0.5部
(ランクセス社製「E4GN」)
樹脂型着色剤分散剤
(日本ルーブリゾール社製「ソルスパース20000」) 1.0部
ジケトピロロピロール系顔料誘導体(化学式(13)) 0.5部
化学式(13)
【0165】

【0166】
アルカリ可溶性非感光性樹脂溶液(B4−1) 5.0部
シクロヘキサノン 26.0部
・・・中略・・・
【0169】
(実施例1〜28、比較例1〜9)
表2、3に示した、材料の種類・量のものをそれぞれ混合し、着色組成物(R−1〜37)を作成し、以下の評価を行った。結果を表4,5に示す。
【0170】
【表2】

(当合議体注:表2は、便宜上、実施例1該当箇所のみを縦横比を変更して摘記した。)

3 対比及び判断
(1)対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 着色剤(A)
引用発明の「青色顔料の分散体」に含まれる、「青色顔料:C.I.Pigment Blue 15:6(BASF製「ヘリオゲンブルーL−6700F」)」及び「紫色顔料:C.I.Pigment Violet 23(BASF社製「パリオゲンバイオレット 5890」)」は、技術的にみて、本願発明の「着色剤(A)」に相当する。

イ 樹脂型分散剤(B)
引用発明の「青色顔料の分散体」は、「分散剤(ゼネカ社製「ソルスバーズ20000」)」を含む。ここで、「分散剤(ゼネカ社製「ソルスバーズ20000」)」は、引用文献3の【0164】の記載によれば、樹脂型着色剤分散剤であって、その用語の意味するとおり、着色剤を分散媒中に分散させる機能を有するものである。
そうしてみると、引用発明の「分散剤(ゼネカ社製「ソルスバーズ20000」)」は、本願発明の「樹脂型分散剤(B)」に相当する。

ウ バインダー樹脂(C)、光重合開始剤(E)
引用発明の「青色感光性樹脂組成物」は、「青色顔料の分散体」、「樹脂溶液(R)100部、多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート) (新中村化学工業(株)製「NKオリゴ U−6HA」)10部、多官能重合性モノマー(東亞合成(株)製「アロニックスM−402」)21部、光開始剤(チバ スペシャルティケミカルズ社製「イルガキュアー369」)14部、増感剤(保土ヶ谷化学工業(株)製「EAB-F」)3部、シクロヘキサノン300部」からなる。
ここで、「樹脂溶液(R)は、」「熱重合開始剤の混合物を滴下して重合反応を行い、スチレン60部、メタクリル酸60部、メチルメタクリレート65部、ブチルメタクリレート65部」からなる「モノマーモノマーおよび熱重合開始剤の混合物を滴下して重合反応を行い」「調整したものである。」
上記組成からみて、引用発明の「光開始剤(チバ スペシャルティケミカルズ)社製「イルガキュアー369」)」及び「樹脂溶液(R)」の固形分が、それぞれ本願発明の「バインダー樹脂(C)」に相当することは明らかである。

エ 光重合性単量体(D)
引用発明の「多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート) (新中村化学工業(株)製「NKオリゴ U−6HA」)」及び「多官能重合性モノマー(東亞合成(株)製「アロニックスM−402」)」は、いずれも技術的にみて、「光開始剤(チバ スペシャルティケミカルズ)社製「イルガキュアー369」)」の働きにより光により重合する単量体(モノマー)である。
また、上記「多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート) (新中村化学工業(株)製「NKオリゴ U−6HA」)」は、ウレタン系の光重合性単量体(モノマー)に該当するが、酸基を有する光重合性単量体には該当しないものである。(当合議体注:酸基を有する光重合単量体に該当しないことは、例えば、特開2001−215697号公報(【0041】)の記載から確認できる事項である。)
さらに、上記「多官能重合性モノマー(東亞合成(株)製「アロニックスM−402」)」は、その化学構造から、エチレン性不飽和結合を5個〜6個有するアクリル単量体であって、分子内にウレタン結合及び酸基を有しないものである。(当合議体注:「アロニックスM−402」は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物である。)
そうしてみると、引用発明の「多官能重合性モノマー(東亞合成(株)製「アロニックスM−402」)」と、本願発明の「エチレン性不飽和結合を1〜3個有する(メタ)アクリル単量体(ウレタン系光重合性単量体、または酸基を有する光重合性単量体を除く)(D3)」とは、「エチレン性不飽和結合を」「有する(メタ)アクリル単量体(ウレタン系光重合性単量体、または酸基を有する光重合性単量体を除く)」という点において共通する。

以上総合すると、引用発明の「多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート) (新中村化学工業(株)製「NKオリゴ U−6HA」)」は、本願発明の「ウレタン系光重合性単量体(酸基を有する光重合性単量体を除く)(D1)」に相当し、引用発明の「多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート) (新中村化学工業(株)製「NKオリゴ U−6HA」)」及び「多官能重合性モノマー(東亞合成(株)製「アロニックスM−402」)」が、本願発明の「光重合性単量体(D)」に相当する。

オ カラーフィルタ用着色組成物
引用発明の「青色感光性樹脂組成物」は、「カラーフィルタをアレイ基板側に形成する場合における着色層のシワ発生を、トリアジン骨格を含む多官能重合性モノマーおよびオリゴマーを用いることにより抑制するものである」。
上記用途からみて、引用発明の「青色感光性樹脂組成物」は、本願発明の「カラーフィルタ用着色組成物」に相当する。

カ ウレタン系重合性単量体(D1)の含有量
引用発明の組成Bによれば、引用発明の「多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート) 」(新中村化学工業(株)製「NKオリゴ U−6HA」)の含有量が「10部」であり、「多官能重合性モノマー(トリアジン骨格含有ウレタンアクリレート) (新中村化学工業(株)製「NKオリゴ U−6HA」)」及び「多官能重合性モノマー(東亞合成(株)製「アロニックスM−402」)」の合計の含有量が「31部」である。
上記組成比と上記オの対比結果から、引用発明の「青色感光性樹脂組成物」は、本願発明の「カラーフィルタ用着色組成物」における、「光重合性単量体(D)全量100重量%中、ウレタン系重合性単量体(D1)を30〜70重量%」「含有する」との要件を満たす。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
上記(1)によれば、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。
「着色剤(A)、樹脂型分散剤(B)、バインダー樹脂(C)、光重合性単量体(D)、および光重合開始剤(E)を含有するカラーフィルタ用着色組成物であって、
光重合性単量体(D)がウレタン系光重合性単量体(酸基を有する光重合性単量体を除く)(D1)、およびエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル単量体(ウレタン系光重合性単量体、または酸基を有する光重合性単量体を除く)を含有し、光重合性単量体(D)全量100重量%中、ウレタン系重合性単量体(D1)を30〜70重量%含有するカラーフィルタ用着色組成物。」

イ 相違点
本願発明と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点1)
「着色剤(A)の含有量」が、本願発明では、「着色組成物の全固形分中20〜30重量%であ」るのに対して、引用発明では、18.3重量%である点。
(当合議体注:「18.3重量%」は、引用発明の「青色感光性樹脂組成物」の全固形分の組成(部)が120部であり、引用発明の「青色顔料」及び「紫色顔料」の組成(部)がそれぞれ17部及び5部であることから計算される。)

(相違点2)
「光重合性単量体(D)」が、本願発明では、「酸基を有する光重合性単量体(D2)を20〜40重量%含有する」のに対して、引用発明では、前記「D2」を含有しない点。

(相違点3)
「エチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリレート単量体(ウレタン系光重合性単量体、または酸基を有する光重合性単量体を除く)」が、本願発明では、「エチレン性不飽和結合を1〜3個有する」ものであるのに対して、引用発明では、エチレン性不飽和結合を5個〜6個有するものである点。

(3)判断
ア 相違点1について
カラーフィルタ用着色組成物の技術分野においては、本件出願時の技術水準に照らせば、着色剤の含有量が20〜30重量%程度のものは周知技術といえる。(必要ならば、例えば、特開2010−2569号公報(原査定の引用文献2)の実施例3及び特開2010−250117号の実施例1等参照。)
そうしてみると、より色純度の高いカラーフィルタが好ましいことは自明の技術課題であるから、引用発明において、着色剤の濃度を組成物の現像性を損ねない範囲で若干高く調整して、相違点1に係る本願発明の構成に到ることは、上記周知技術を心得た当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2及び3について
(ア)カラーフィルタ用途の感光性樹脂組成物の技術分野では、未露光部分の現像性(溶解性等)と露光部分の硬化性とを、感光性樹脂組成物の組成(含有量も含む。)を調整することによって設計することは常套手段であるところ、「D2」(相違点2)が現像性に、「D3」(相違点3)が硬化性に特に関係することは技術常識である。
上記に鑑み、以下では、相違点2及び3をまとめて検討する。

(イ)引用発明の課題
引用文献1の【0037】及び【0039】〜【0040】の記載によれば、引用発明の「青色感光性樹脂組成物」は、主たる課題である「カラーフィルタをアレイ基板側に形成する場合における着色層のシワ発生を」「抑制する」ことのみならず、感光性樹脂組成物としての一般的な課題である「現像性」及び「パターニング特性」等を向上させることも解決すべき課題の1つと認められる。

(ウ)エチレン性不飽和結合の個数が異なる光重合性単量体の併用
例えば、特開2010−117615号公報(特に、【0002】、【0016】及び【0067】等)、特開2010−191119号公報(特に、【0038】〜【0042】等)及び韓国公開特許第10−2010−0089589号公報(特に、請求項1、[0012]、[0050]-[0052]、[0057]-[0058]、[0090][表1]及び[0121][表2]-[0123]等)に記載されているように、カラーフィルタ用着色組成物の光重合性単量体として、エチレン性不飽和結合を4個以上有する(メタ)アクリル単量体(以下「多官能単量体」という。)と、エチレン性不飽和結合を1〜3個有する(メタ)アクリル単量体(以下「低官能単量体」という。)との特性の違いを利用して、両者を必要に応じて(例えば、粘度の調整、残渣の抑制及びパターン形状の向上のため)併用し、感光性樹脂組成物としての一般的な課題に対してバランスを調整することは、先の出願時の技術常識であった認められる。
そうしてみると、引用文献1の「用いることのできる多官能重合性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート・・・中略・・・、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート・・・中略・・・ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、・・・中略・・・ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート・・・中略・・・等が挙げられる。」(下線は当合議体で付与した。)との記載(【0043】)に接した、上記技術常識を心得た当業者であれば、引用発明の「アロニックスM−402」(エチレン性不飽和結合が5個〜6個の多官能重合性モノマー)は、必要に応じて多官能単量体及び低官能単量体とを併用したものに置き換えてもよいことを理解する。

(エ)酸基を有する光重合性単量体
引用文献3の【0013】〜【0014】及び【0025】〜【0026】(上記「2(2)〜(3)」参照。)の記載によれば、引用文献3には、カラーフィルタ用着色組成物において、酸性基を有する多官能モノマーをモノマー成分に含有させることで酸価を調整し、現像残渣の発生等の現像性や画像部のパターン剥離や欠け(パターニング特性ともいえる。)を改善する技術が記載されていると認められ、その具体例として、例えば、引用文献3の【0170】【表2】等には、多官能モノマー全体を100重量%に対して、25.5重量%の「酸性基を有する多官能モノマー(C1)」を含有する、「着色組成物R−1」(実施例1)が記載されている。

(オ)判断
引用発明の「青色感光性樹脂組成物」は、光重合性単量体として、「NKオリゴ U−6HA」を10部及び「アロニックスM−402」を21部含有するところ、前者が、上記(イ)の主たる課題(シワの発生の抑制)の解決手段に相当することは、引用文献1の【0087】【表1】に記載された「外観評価(表面シワ)」の結果から、当業者が当然に認識し得る事項(事情)である。
したがって、上記事情を認識した当業者は、引用発明において、上記(イ)で述べた現像性(特に、現像残渣の抑制等)及びパターニング性のさらなる改善のためには、「重合性モノマー」のうち、「NKオリゴ U−6HA」10部ではなく、「アロニックスM−402」21部を調整の対象と考えるのが自然な選択といえる。
ところで、上記当業者は、上記(ア)及び(ウ)の技術常識並びに上記(エ)の下線部の技術を熟知する者でもある。そうしてみると、そのような当業者が、引用発明の「青色感光性樹脂組成物」において、現像性及びパターニング特性を改善するために、「アロニックスM−402」21部のうち、[A]一部を「酸基を有する光重合性単量体」に変更し、[B]さらに他の少なくとも一部を低官能単量体(本願発明の「エチレン性不飽和結合を1〜3個有する(メタ)アクリル単量体(ウレタン系光重合性単量体、または酸基を有する光重合性単量体を除く)(D3)」に相当。)に変更するような調整を行うことは容易になし得ることである。
さらに、相違点2は「(D2)」の含有量を含むから、上記[A]の調整に際し、どの程度の分量を変更するも問題となる。しかしながら、引用文献3に接した当業者であれば、上記(エ)で示した実施例1(酸性基を有する多官能モノマーの含有量が、多官能モノマー全体100重量%中、25.5重量%である例)を一応の目安にすると考えられる。この場合、上記21部のうち約7.9部を酸性基を有する多官能モノマーに置き換えることになる。

あるいは、次のように考えることもできる。
以下に詳述するとおり、本件明細書を参酌しても、本願発明における「(D2)」成分の含有量(「20〜40重量%」)及び「(D3)」の「エチレン性不飽和結合」の個数(1〜3個)の数値範囲内外に格別な技術的意義は見出せないから、これらはいずれも当業者の創意工夫の範囲内の事項ともいえる。すなわち、本件出願の明細書の【0176】の【表6】からは、「(D2)」の上記数値範囲内外における評価の差は確認できない。また、「(D3)」の有無によるレジスト安定性評価の影響は確認できても(実施例17と実施例18を参照。)、「(D3)」のエチレン不飽和結合の個数が1〜3個である場合と、4個以上である場合における評価の差は確認できない。
以上によれば、上記技術常識及び上記(エ)の技術に基づいて、当業者が、相違点2及び3に係る本願発明の構成に到ることは容易である。

(4)発明の効果について
本件出願の明細書の【0018】によれば、本願発明の効果は、「カラーフィルタの製造工程における露光や200℃以上の熱処理を行なった場合にも、シワやスルーホール残渣の発生、および膜縮率が変化しない高解像度のフィルタセグメントが形成できる。そのため、このカラーフィルタを用いて低消費電力かつ高品質なカラー液晶表示装置を作製できる。」というものである。
しかしながら、シワの発生防止効果は、引用発明が具備する効果であるし、スルーホール残渣抑制効果は、上記(3)イ及びウで述べたとおり、「酸性基を有する多官能モノマー」及び「エチレン性不飽和結合を1〜3個有する(メタ)アクリル単量体」への置き換えによって想到し得る構成が奏する効果として、当業者が予測可能な範囲のものであって、その程度が顕著であるとはいえない。

あるいは、次のように考えることもできる。
カラーフィルタ用着色組成物の光重合性単量体として、低官能単量体と多官能単量体とを併用した場合に、スルーホール残渣が改善することは、感度の低下により未露光部における意図しない硬化が抑制されることから、当業者が予想可能な範囲内のものである。また、そのことは、例えば、韓国公開特許第10−2010−0089589号公報(特に、[0090][表1]及び[0121][表2]-[0123]等)の実施例1及び比較例1の評価結果からも確認できる事項でもある。

(5)請求人の主張について
請求人は、令和3年2月19日付けの審判請求書において、以下の点を主張している。
ア 「COA方式のような厚膜でもスルーホール残渣を抑制するためには、光重合性単量体(D)が単量体(D3)を含むことが重要です。本願の実施例3の表3によると単量体(D3)を含む実施例は、スルーホール残渣評価で、残渣がない結果に対し、参考例(旧実施例17)は50μm2未満の残渣が残留する結果であるように、単量体(D3)の使用がスルーホール残渣抑制に効果を奏します。」(請求書4頁下から3行〜5頁3行)

イ 「引用文献3は、残渣等現像性の課題が挙げられていますがスルーホール残渣抑制の記載はなく、単量体(D3)の使用により残渣等現像性が向上する記載もありません。・・・そうすると、スルーホール残渣を抑制するため引用文献1のカラーフィルタ用着色組成物に単量体(D3)を適用する動機付けがありません。」(請求書5頁8行〜5頁12行)

上記主張について検討する。

上記アについて
上記(4)で検討したとおりである。
したがって、上記主張アは理由がない。

上記イについて
上記「(3)イ」で述べたとおり、引用発明において、残渣を抑制することは課題のうちの1つである。そして、引用発明の「青色感光性樹脂組成物」は、「カラーフィルタをアレイ基板側に形成する場合における着色層」を形成する際に用いられるものであって、例えば、引用文献1の図2に記載されているように(上記「(1)ウ」参照。)、COA方式の着色層(23R、23G、23B)に「スルーホール25」を設けることは普通に行われていることであるから、上記「残渣を抑制する」課題が、スルーホール残渣も含むことは当業者に自明である。
したがって、上記主張イは理由がない。
以上によれば、上記主張はいずれも採用の限りでない。

(6)小括
本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献3に記載された発明及び 先の出願時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-11-26 
結審通知日 2021-11-30 
審決日 2021-12-22 
出願番号 P2016-240923
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 里村 利光
関根 洋之
発明の名称 カラーフィルタ用着色組成物、およびカラーフィルタ  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ