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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1382197 |
総通号数 | 3 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-02-26 |
確定日 | 2022-03-08 |
事件の表示 | 特願2016−184006「表示制御装置、表示制御システム及び表示制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月29日出願公開、特開2018− 49432、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年9月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 元年 8月 6日 :手続補正書の提出 令和 2年 3月30日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 6月 8日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年11月20日付け:拒絶査定 令和 3年 2月26日 :拒絶査定不服審判の請求 令和 3年10月29日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書 令和 3年12月28日 :意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和2年11月20日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。 この出願の請求項1〜11に係る発明は、以下の引用文献A〜Eに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献A:特開2012−252398号公報 引用文献B:特開2015−130187号公報 引用文献C:国際公開第2008/149991号 引用文献D:特開2007−41713号公報 引用文献E:特開平7−219710号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審が令和3年10月29日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1,2,6,8,10に係る発明(請求項6に係る発明については、請求項1又は2を引用する場合である。)は、以下の引用文献1,2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2014−203128号公報 引用文献2:国際公開第2015/151380号 第4 本願発明 本願請求項1〜10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明10」という。)は、令和3年12月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定される発明であり、それらのうちの本願発明1,3,7〜10は、それぞれ次のとおりの発明である。 「【請求項1】 表示部の表示面に操作対象のオブジェクトを表示させ、タッチパッドの操作面に対するユーザの操作を受け付けて前記オブジェクトの表示を制御する表示制御装置であって、 前記表示部に前記オブジェクトを表示させる表示制御部と、 前記操作面に対する前記ユーザのタッチ部位による接触を検出する前記タッチパッドの検出結果に基づいて、前記表示面上の前記オブジェクトに対する操作を受け付ける操作受付部と、 前記操作受付部で受け付けた操作が、前記表示面上に定められた所定範囲の外側から当該所定範囲の内側へのスライド操作の場合に、前記操作面を振動させる振動部を制御し、前記スライド操作が前記所定範囲の内側に達した時に前記操作面を所定の振動状態で振動させる振動制御部と、を備え、 前記所定範囲を複数有し、前記所定範囲毎に異なる振動状態が設定され、 前記スライド操作が、前記オブジェクトとしてのカーソルを移動させる操作の場合、前記スライド操作によって前記カーソルが前記表示面上のアイコンの周囲に定められた前記所定範囲の内側に達した時に、前記振動制御部が前記操作面を前記所定範囲毎に設定された前記所定の振動状態で振動させて前記操作面と前記ユーザの操作部位との摩擦を小さくすると共に、前記表示制御部が前記カーソルを前記アイコン上に移動させる表示制御装置。」 「【請求項3】 表示部の表示面に操作対象のオブジェクトを表示させ、前記表示面と対応付けた操作面に対するユーザの操作を受け付ける表示制御装置であって、 前記表示部に前記オブジェクトを表示させる表示制御部と、 前記操作面に対する前記ユーザのタッチ部位による接触を検出する検出部の検出結果に基づいて、前記表示面上の前記オブジェクトに対する操作を受け付ける操作受付部と、 前記操作受付部で受け付けた操作が、前記表示面上に定められた所定範囲の内側から当該所定範囲の外側へのスライド操作の場合に、前記操作面を振動させる振動部を制御し、前記スライド操作が前記所定範囲の外側に達した時に前記操作面を所定の振動状態で振動させる振動制御部と、を備え、 前記スライド操作が、前記オブジェクトとしてのカーソルを移動させる操作の場合、前記振動制御部が前記操作面を前記所定の振動状態で振動させて前記操作面と前記ユーザの操作部位との摩擦を小さくすると共に、表示制御部が前記振動の開始後、所定時間内に前記操作面に対して行われた操作によるカーソルの移動を無効にする表示制御装置。」 「【請求項7】 操作対象のオブジェクトを表示する表示部と、 前記表示部に前記オブジェクトを表示させる表示制御部と、 操作面に対するユーザのタッチ部位による接触を検出するタッチパッドと、 前記タッチパッドの検出結果に基づいて、前記表示面上の前記オブジェクトに対する操作を受け付ける操作受付部と、 前記操作面を振動させる振動部と、 前記操作受付部で受け付けた操作が、前記表示面上に定められた所定範囲の外側から当該所定範囲の内側へのスライド操作の場合、前記振動部を制御して、前記スライド操作が前記所定範囲の内側に達した時に前記操作面を所定の振動状態で振動させる振動制御部と、を備え、 前記所定範囲を複数有し、前記所定範囲毎に異なる振動状態が設定され、 前記スライド操作が、前記オブジェクトとしてのカーソルを移動させる操作の場合、前記スライド操作によって前記カーソルが前記表示面上のアイコンの周囲に定められた前記所定範囲の内側に達した時に、前記振動制御部が前記操作面を前記所定範囲毎に設定された前記所定の振動状態で振動させて前記操作面と前記ユーザの操作部位との摩擦を小さくすると共に、前記表示制御部が前記カーソルを前記アイコン上に移動させる表示制御システム。 【請求項8】 操作対象のオブジェクトを表示する表示部と、 前記表示部に前記オブジェクトを表示させる表示制御部と、 前記操作面に対するユーザのタッチ部位による接触を検出する検出部と、 前記検出部の検出結果に基づいて、前記表示面上の前記オブジェクトに対する操作を受け付ける操作受付部と、 前記操作面を振動させる振動部と、 前記操作受付部で受け付けた操作が、前記表示面上に定められた所定範囲の内側から当該所定範囲の外側へのスライド操作の場合、前記振動部を制御して、前記スライド操作が前記所定範囲の外側に達した時に前記操作面を所定の振動状態で振動させる振動制御部と、を備え、 前記スライド操作が、前記オブジェクトとしてのカーソルを移動させる操作の場合、前記振動制御部が前記操作面を前記所定の振動状態で振動させて前記操作面と前記ユーザの操作部位との摩擦を小さくすると共に、表示制御部が前記振動の開始後、所定時間内に前記操作面に対して行われた操作によるカーソルの移動を無効にする表示制御システム。 【請求項9】 表示部の表示面に操作対象のオブジェクトを表示させ、タッチパッドの操作面に対するユーザの操作を受け付けて前記オブジェクトの表示を制御するコンピュータが、 前記表示部に前記オブジェクトを表示させる表示制御ステップと、 前記操作面に対する前記ユーザのタッチ部位による接触を検出する前記タッチパッドの検出結果に基づいて、前記表示面上の前記オブジェクトに対する操作を受け付ける操作受付ステップと、 前記操作受付ステップで受け付けた操作が、前記表示面上に定められた複数の所定範囲の外側から当該所定範囲の内側へのスライド操作の場合に、前記操作面を振動させる振動部を制御し、前記カーソルが前記所定範囲の内側に達した時に前記操作面を前記所定範囲毎に異ならせて設定された所定の振動状態で振動させて前記操作面と前記ユーザの操作部位との摩擦を小さくすると共に、前記オブジェクトとしてのカーソルを前記所定範囲内のアイコン上に移動させる制御ステップと、を実行する表示制御方法。 【請求項10】 表示部の表示面に操作対象のオブジェクトを表示させ、前記表示面と対応付けた操作面に対するユーザの操作を受け付ける機器を制御するコンピュータが、 前記表示部に前記オブジェクトを表示させる表示制御ステップと、 前記操作面に対する前記ユーザのタッチ部位による接触を検出する検出部の検出結果に基づいて、前記表示面上の前記オブジェクトに対する操作を受け付ける操作受付ステップと、 前記操作受付ステップで受け付けた操作が、前記表示面上に定められた所定範囲の内側から当該所定範囲の外側へのスライド操作の場合に、前記操作面を振動させる振動部を制御し、前記スライド操作が前記所定範囲の外側に達した時に前記操作面を所定の振動状態で振動させて前記操作面と前記ユーザのタッチ部位との摩擦を小さくすると共に、前記振動を開始させた後、所定時間内に前記操作面に対して行われた操作によるカーソルの移動を無効にする制御ステップと、を実行する表示制御方法。」 なお、本願発明2は本願発明1を、本願発明4は本願発明3を、本願発明5は本願発明1〜4のいずれかを、本願発明6は本願発明3又は4を、それぞれ減縮した発明である。 第5 引用文献の記載、引用発明等 1 引用文献1、引用発明 (1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1(特開2014−203128号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。 「【0122】 図18は、第2実施形態に係る車両用装置60としての画像表示装置64および車両用入力装置66の制御構成を示すブロック図である。 【0123】 (画像表示装置について) 第2実施形態の画像表示装置64は、第1実施形態と同様に、選択肢画像A〜Cが表示された操作画像68を表示する。但し、第2実施形態の画像表示装置64は、各選択肢画像A〜Cの周囲に引込領域Sが設定される点で、第1実施形態の画像表示装置64と相違している。図19の破線で示すように、この引込領域Sは、その外形が選択肢画像A〜Cの外形(図19では楕円形)と相似形であって、選択肢画像A〜Cを囲うように設定される環状の領域である。 【0124】 引込領域Sは、操作画像68中のカーソル24が引込領域Sに進入すると、画像表示装置64の画像制御部70(引込領域設定手段)は、当該引込領域Sが囲う選択肢画像A〜Cの中心に向けてカーソル24が移動するように表示させる。例えば、図19に示すように、選択肢画像Aを囲う引込領域Sにカーソル24が重なると、カーソル24が自動的に選択肢画像Aに向けて移動する。図19では、引き込まれるカーソル24が破線で示してある。これにより、ドライバがカーソル24を選択肢画像A〜Cまで正確に合わせる必要がなく、選択肢画像A〜Cを選択するドライバの操作が支援される。 【0125】 ここで、引込領域Sの面積(大きさ)は、面積パラメータ(操作パラメータ)により規定される。すなわち、画像制御部70は、面積パラメータに従って、表示する引込領域Sの大きさを決定している。そして、引込領域Sは、ドライバの操作を支援するものであるため、引込領域Sの面積は、画像表示装置64の操作性に影響を与えることになる。従って、引込領域Sの面積を規定する面積パラメータを制御することで、画像表示装置64の操作性を制御することが可能となる。 【0126】 (車両用入力装置について) 図20は、第2実施形態の車両用入力装置66を示す縦断面図であって、車両用入力装置66は、第1実施形態と同様に、いわゆるハプティックデバイスで構成されている。車両用入力装置66は、コンソールボックス18(図1参照)に設置された箱状のベース部材30と、該ベース部材30に対し移動自在に設けられた操作ノブ32とを備えている。ベース部材30には、操作画像68において選択肢画像A〜Cを選択する決定ボタン36が設けられている。車両用入力装置66の作動は、操作制御部72により制御される。」 「【0186】 2.第2実施形態では、いわゆるハプティックデバイスを車両用入力装置66として採用した。しかしながら、タッチパネルディスプレイやタッチパッドデバイス等を車両用入力装置66として採用することができる。なお、タッチパネルディスプレイやタッチパッドデバイスを車両用入力装置66として採用した場合には、操作ノブ32のような反力を作用させる対象がない。この場合、制御部86は、面積パラメータのみを制御対象とすることになる。」 「【図18】 」 「【図19】 」 (2)上記(1)において、段落【0122】〜【0126】は、「第2実施形態」に関する記載(段落【0121】〜【0182】)の一部であるが、段落【0186】の「第2実施形態では、いわゆるハプティックデバイスを車両用入力装置66として採用した。しかしながら、タッチパネルディスプレイやタッチパッドデバイス等を車両用入力装置66として採用することができる。」との記載によれば、「第2実施形態」の「車両用入力装置66」としての「ハプティックデバイス」は、「タッチパッドデバイス」で置換され得るものである。 そこで、そのような置換を行うことを想定すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「選択肢画像A〜Cが表示された操作画像68を表示し、各選択肢画像A〜Cの周囲に引込領域Sが設定される、画像表示装置64であって、 操作画像68中のカーソル24が引込領域Sに進入すると、画像表示装置64の画像制御部70は、当該引込領域Sが囲う選択肢画像A〜Cの中心に向けてカーソル24が移動するように表示させ、 タッチパッドデバイスを車両用入力装置66として採用する、 画像表示装置64。」 2 引用文献2、引用発明2 当審拒絶理由にて引用された引用文献2(国際公開第2015/151380号)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「[0025] 1)触覚提示装置の構成 1−1)全体構成 図1Aは、第1の実施形態に係る触覚提示装置100の例を示す斜視図である。 [0026] この触覚提示装置100は、例えば可動体としてのタッチパネル(タッチセンサ)10と、このタッチパネル10に接続されたアクチュエータ部30とを備える。タッチパネル10は、例えば表示パネルと一体として構成されていてもよい。なお、タッチパネル10と表示パネルとが一体となったパネルを、以下ではパネルユニットという場合がある。また、触覚提示装置100は、後述するようにアクチュエータ部30に駆動信号を供給する信号発生部(信号発生装置)60を備える。なお、アクチュエータ部30は、筐体やフレーム等の支持体20に支持されている。 [0027] 触覚提示装置100として、携帯電話機やタブレット等、携帯型デバイスが典型例として挙げられる。」 「[0034] 1−3)信号発生部 図3は、上述した信号発生部60を含む、主に触覚提示装置100の電気的構成を示すブロック図である。 [0035] 触覚提示装置100は、制御部50、信号発生部60を有する。制御部50は、例えばタッチパネル10から入力されたユーザの操作情報に基づき、信号発生部60に制御信号を送るように構成される。制御部50は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のハードウェアを備え、ROMに必要なソフトウェアを格納する。制御部50は、CPUの代わりにPLD(Programmable Logic Device)を有していてもよい。 [0036] 信号発生部60は、Xドライバ60XおよびYドライバ60Yを有する。Xドライバ60Xは、各Xアクチュエータ35Xを同期して駆動する(振動させる)ための駆動信号を、Xアクチュエータ35Xに供給する。Yドライバ60Yは、Yアクチュエータ35Yを同期して駆動する(振動させる)ための駆動信号を、Yアクチュエータ35Yに供給する。このような信号発生部60の構成により、制御部50からの制御信号に応じて駆動信号をアクチュエータ部30に供給し、X−Y平面内の任意の方向にタッチパネル10を振動させることができる。」 「[0039] 2)振動波形 2−1)触覚受容器の検知閾値 図4は、例えば振動に対する人の複数タイプの触覚受容器の検知閾値を示すグラフである。横軸が周波数(Hz)、縦軸(μm)が振幅である。人の触覚受容器として、例えばSA I、FA I、FA II等の複数のタイプがある。すなわち、触覚受容器のタイプごとに、人が検知できる、または検知できない振幅域および周波数域が存在することが一般的に知られている。 [0040] これらの各タイプの閾値の包絡線a(破線で示す)を、ここでは検知閾値とする。この包絡線以上の領域が、人が検知可能な領域、つまり触覚領域である。また、包絡線aに満たない領域(包絡線aより下の領域)が、人が検知できない領域、つまり不覚領域である。本技術は、例えばこのような触覚受容器の検知閾値を応用することにより、多彩な触覚をユーザに提示することができる。 [0041] 具体的には、この触覚提示装置100は、主たる形態として、不覚〜触覚の振幅域または不覚〜触覚の周波数域を振動の一周期内に共存させる特殊な振動波形を生成し、タッチパネル10と指との間の摩擦力を発生するものである。」 「[0047] 2−2−1)[例1]に係る振動波形を用いる形態 図6A、Bは、上記例1に対応する振動波形を示す。縦軸(振幅)および横軸(時間)の値はノーマライズされている。図6Aは、波形2について周波数f [0049] 図6A、Bの振動波形の説明に戻る。波形1について、また、波形2について、実線部分と破線部分とを分離する基準として、例えば1軸方向の振動の往路と復路を基準としている。すなわち波形1の実線部分が往路(グラフが正方向へ大きくなる方向)、波形2の実線部分が復路(グラフが負方向へ大きくなる方向)として設定される。 [0050] 図6A、Bの各合成波形において、摩擦力の大小は、タッチパネル10上の指の動きの方向に応じて異なる。ここでは、ユーザは上述のように往路方向の振動振幅を感じるため、往路方向とは逆方向(すなわち復路方向)にユーザが指を動かすときに、それが(比較的大きい)摩擦力として現れる。逆に往路方向にユーザが指を動かす場合、摩擦力は小となる。このときの摩擦力や指先の力覚の発生方向等を図8Aに模式的に示した。白矢印は力覚の方向、すなわち摩擦力の方向性が提示される。ユーザは、摩擦力大の感覚として、仮想的に、ザラザラ感を感じ、摩擦力小の感覚として、ツルツル感を感じる。また、振動波形によっては、摩擦力を大きくまたは小さくして、仮想の上りスロープ感や下りスロープ感の提示も可能である。」 「[図8] 」 これらの記載から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「可動体としてのタッチパネル(タッチセンサ)10と、このタッチパネル10に接続されたアクチュエータ部30とを備える触覚提示装置100において、 駆動信号をアクチュエータ部30に供給し、X−Y平面内の任意の方向にタッチパネル10を振動させることができ、 特殊な振動波形を生成し、タッチパネル10と指との間の摩擦力を発生し、 摩擦力の大小は、タッチパネル10上の指の動きの方向に応じて異なり、往路方向にユーザが指を動かす場合、摩擦力は小となり、仮想の下りスロープ感の提示も可能である、 触覚提示装置100。」 3 引用文献A 原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献A(特開2012−252398号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0006】 以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、ユーザに直感的な操作感を提示することができるポインティングシステム、ポインティングデバイス及びポインティング制御方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本技術の一形態に係るポインティングシステムは、ポインティングデバイスと、制御装置とを具備する。 上記ポインティングデバイスは、筐体と、触覚提示部と、センサ部とを有する。上記触覚提示部は、上記筐体に触覚を提示することが可能に構成される。上記センサ部は、上記筐体に対する操作を検出し画面上のポインタの移動を制御するための操作信号を出力する。 上記制御装置は、領域設定部と、信号生成部とを有する。 上記領域設定部は、上記画面上のオブジェクトの表示領域内に属する第1の領域と、上記オブジェクトの表示領域外に属する第2の領域と、上記第1の領域と上記第2の領域との境界部に属する第3の領域とをそれぞれ設定する。 上記信号生成部は、上記操作信号に基づいて上記画面上のポインタの位置を算出し、上記ポインタが第1の領域に位置するときは上記触覚提示部を第1の駆動モードで駆動する第1の制御信号を生成する。上記信号生成部は、上記ポインタが上記第3の領域に位置するときは上記触覚提示部を上記第1の駆動モードとは異なる第2の駆動モードで駆動する第2の制御信号を生成する。 【0008】 上記ポインティングシステムによれば、オブジェクトへのポインティング操作時に筐体を通じてユーザへ触覚フィードバックを提示するようにしているため、ユーザの視覚認識による依存度を低減し、より直感的なポインティング操作感を提供することができる。また、ポインタがオブジェクトの表示領域内と表示領域外との境界部に位置するとき、ポインタが表示領域内に位置するときとは異なる触覚を提示するようにしているため、オブジェクトへの適正なポインティング操作を誘導でき、操作感の向上を図ることができる。」 「【0011】 ポインティングデバイスの種類は特に限定されず、空間操作型の入力装置でもよいし、平面操作型の入力装置でもよい。平面操作型の入力装置には、典型的には、卓上で操作するマウスが挙げられる。また、タッチパネルやタッチパッド等のようなユーザの手指の移動を検出することでポインティング操作を可能とする各種入力装置も適用可能である。」 「【0055】 例えばユーザUがアイコンV3を選択するために、ポインタP1を図6(A)に鎖線で示す位置から実線で示すアイコンV3上の位置に向かって直線的に移動させる場合を考える。アイコンV3の周囲に設定された第3の領域C3にポインタP1が進入すると、制御装置2は第2の駆動モードで触覚提示部11を駆動させるための制御信号S3(S32)を生成し、入力装置1へ送信する。これにより入力装置1は、制御信号S3(S32)に対応する駆動信号S2を生成し、第2の駆動モードによる触覚を触覚提示部11にて発生させる。これによりユーザUは、ポインタP1がアイコンV2に近づいたことを認識することができる。 【0056】 次に、アイコンV3の表示領域内に設定された第1の領域C1にポインタP1が進入すると、制御装置2は第1の駆動モードで触覚提示部11を駆動させるための制御信号S3(S31)を生成し、入力装置1へ送信する。これにより入力装置1は、制御信号S3(S31)に対応する駆動信号S2を生成し、第1の駆動モードによる触覚(例えば第2の駆動モードによる触覚よりも強い触覚)を触覚提示部11にて発生させる。第1の駆動モードは第2の駆動モードとは異なる振動パターンで触覚提示部11を駆動するため、ユーザUは、ポインタP1がアイコンV3上に到達したことを確実に認識することができ、アイコンV2の実行操作を適正に行うことが可能となる。 【0057】 このように本実施形態によれば、アイコンV3へのポインティング操作時に筐体10を通じてユーザUへ触覚フィードバックを提示するようにしているため、ユーザUの視覚認識による依存度を低減し、より直感的なポインティング操作感を提供することができる。また、ポインタP1がアイコンV3の周囲の領域(第3の領域C3)に位置するとき、アイコンV3の表示領域内(第1の領域C1)に位置するときとは異なる触覚を提示するようにしているため、アイコンV3への適正なポインティング操作を誘導でき、操作感の向上を図ることができる。」 「【図6】 」 第6 当審拒絶理由について(引用発明1との対比・判断) 1 本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)引用発明1では、「画像表示装置64」が、「操作画像68を表示し」、また、「画像表示装置64の画像制御部70」が、「カーソル24が移動するように表示させ」るから、「画像表示装置64」、具体的には、その「画像制御部70」が、「操作画像68」に「カーソル24」を表示させるものである。 一方、引用発明1は、上記第5の1(2)のとおり、引用文献1に記載されている「第2実施形態」において、「ハプティックデバイス」を「タッチパッドデバイス」で置換することを想定したものであって、「タッチパッドデバイスを車両用入力装置66として採用する」ものであるが、引用文献1には、「第2実施形態」に関する記載として、「ハプティックデバイス」が「操作ノブ32」を備えること(段落【0126】)や、「画像制御部70は、操作ノブ32の位置情報に合わせて、操作画像68中のカーソル24が移動するよう表示させる」こと(段落【0146】)が記載されている。そうすると、引用発明1の「画像表示装置64」は、「タッチパッドデバイス」に対して、「ハプティックデバイス」の「操作ノブ32」と同様にユーザの操作がなされ、これを受け付けることで、操作対象として表示させた「カーソル24」の表示を制御するものであることが理解できる。 また、タッチパッドが、操作面に対するスライド操作等のユーザの操作がなされ、操作面に対するユーザのタッチ部位を検出して、検出結果を出力するデバイスであることは技術常識であるから、引用発明1の「タッチパッドデバイス」は、その操作面に対する操作がなされるものであり、引用発明1の「画像表示装置64」は、「タッチパッドデバイス」の検出結果に基づいて、「カーソル24」に対する操作を受け付ける手段を当然に備えている。 そして、当該手段は本願発明1の「操作受付部」に相当し、また、引用発明1の「操作画像68」、「カーソル24」、「タッチパッドデバイス」、「画像制御部70」は、それぞれ、本願発明1の「表示部の表示面」、「オブジェクトとしてのカーソル」、「タッチパッド」、「表示制御部」に相当し、引用発明1の「カーソル24」は、本願発明1の「オブジェクト」に含まれる。 以上のことから、引用発明1の「画像表示装置64」は、本願発明1の 「表示部の表示面に操作対象のオブジェクトを表示させ、タッチパッドの操作面に対するユーザの操作を受け付けて前記オブジェクトの表示を制御する」 ことに相当する動作を実行するものであり、また、本願発明1の 「前記表示部に前記オブジェクトを表示させる表示制御部と、 前記操作面に対する前記ユーザのタッチ部位による接触を検出する前記タッチパッドの検出結果に基づいて、前記表示面上の前記オブジェクトに対する操作を受け付ける操作受付部」 に相当する構成を備えている。 (イ)引用発明1は、「操作画像68中のカーソル24が引込領域Sに進入すると、画像表示装置64の画像制御部70は、当該引込領域Sが囲う選択肢画像A〜Cの中心に向けてカーソル24が移動するように表示させ」るものである。 ここで、上記(ア)で述べた技術常識からすると、「操作画像68中のカーソル24が引込領域Sに進入する」ことは、「引込領域S」の外側から当該「引込領域S」の内側へのスライド操作が、「カーソル24」を移動させる操作の場合に生じることが明らかであって、例えば「選択肢画像A」を「囲う」「引込領域S」に「進入」した時点は、「選択肢画像A」の周囲における「引込領域S」の内側に達した時であるといえる。 また、「画像表示装置64の画像制御部70」が、「当該引込領域Sが囲う選択肢画像A〜Cの中心に向けてカーソル24が移動するように表示させ」ることで、「カーソル24」が例えば「選択肢画像A」の上に「移動する」といえる。 そして、引用発明1の「選択肢画像A」は、本願発明1の「アイコン」に相当し、引用発明1の「引込領域S」は、「操作画像68」上に定められたものであるといえ、本願発明1の「所定範囲」に相当する。 以上の点について、上記(ア)で検討した点も踏まえると、本願発明1の 「前記スライド操作が、前記オブジェクトとしてのカーソルを移動させる操作の場合、前記スライド操作によって前記カーソルが前記表示面上のアイコンの周囲に定められた前記所定範囲の内側に達した時に、前記振動制御部が前記操作面を前記所定範囲毎に設定された前記所定の振動状態で振動させて前記操作面と前記ユーザの操作部位との摩擦を小さくすると共に、前記表示制御部が前記カーソルを前記アイコン上に移動させる」 ことに関して、本願発明1の「表示制御装置」と引用発明1の「画像表示装置64」とは、 「前記表示面上に定められた所定範囲の外側から当該所定範囲の内側へのスライド操作が、前記オブジェクトとしてのカーソルを移動させる操作の場合、前記スライド操作によって前記カーソルが前記表示面上のアイコンの周囲に定められた前記所定範囲の内側に達した時に、前記表示制御部が前記カーソルを前記アイコン上に移動させる」 との動作を行う点で共通している。 なお、ここで、本願発明1の「前記スライド操作」が、「前記表示面上に定められた所定範囲の外側から当該所定範囲の内側へのスライド操作」を指していると解されることを考慮している。 (ウ)引用発明1の「画像表示装置64」は、後述する相違点は別として、本願発明1の「表示制御装置」に相当する。 イ 上記アから、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。 「表示部の表示面に操作対象のオブジェクトを表示させ、タッチパッドの操作面に対するユーザの操作を受け付けて前記オブジェクトの表示を制御する表示制御装置であって、 前記表示部に前記オブジェクトを表示させる表示制御部と、 前記操作面に対する前記ユーザのタッチ部位による接触を検出する前記タッチパッドの検出結果に基づいて、前記表示面上の前記オブジェクトに対する操作を受け付ける操作受付部と、 を備え、 前記表示面上に定められた所定範囲の外側から当該所定範囲の内側へのスライド操作が、前記オブジェクトとしてのカーソルを移動させる操作の場合、前記スライド操作によって前記カーソルが前記表示面上のアイコンの周囲に定められた前記所定範囲の内側に達した時に、前記表示制御部が前記カーソルを前記アイコン上に移動させる 表示制御装置。」 ウ また、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。 (相違点) 本願発明1では、「表示制御装置」が、 「前記操作受付部で受け付けた操作が、前記表示面上に定められた所定範囲の外側から当該所定範囲の内側へのスライド操作の場合に、前記操作面を振動させる振動部を制御し、前記スライド操作が前記所定範囲の内側に達した時に前記操作面を所定の振動状態で振動させる振動制御部」 を備えるものであり、ここで、「所定範囲」について、「前記所定範囲を複数有し、前記所定範囲毎に異なる振動状態が設定され」るものと特定されるのに対し、引用発明1では、「画像表示装置64」が「操作画像68中のカーソル24が引込領域Sに進入すると、画像表示装置64の画像制御部70は、当該引込領域Sが囲う選択肢画像A〜Cの中心に向けてカーソル24が移動するように表示させ」ることから、「前記操作受付部で受け付けた操作が、前記表示面上に定められた所定範囲の外側から当該所定範囲の内側へのスライド操作の場合」や「前記スライド操作が前記所定範囲の内側に達した時」は存在するものの、それらの条件下で「前記操作面を振動させる振動部を制御し」、「前記操作面を所定の振動状態で振動させる」、「振動制御部」を備えるものではなく、また、それに伴い、本願発明1では、「表示制御装置」が「前記スライド操作によって前記カーソルが前記表示面上のアイコンの周囲に定められた前記所定範囲の内側に達した時に」実行する動作として、「前記振動制御部が前記操作面を前記所定範囲毎に設定された前記所定の振動状態で振動させて前記操作面と前記ユーザの操作部位との摩擦を小さくする」ことを含むのに対して、引用発明1では、「画像表示装置64」が「操作画像68中のカーソル24が引込領域Sに進入する」時に実行する動作が、そのようなことを含むものではない点。 (2)判断 そこで、上記相違点について検討する。 タッチパネル等の操作面において、前記操作面上に定められた所定範囲の外側から前記所定範囲の内側への指のスライド操作がなされる場合に、前記所定範囲を複数に分割し、前記スライド操作において、前記操作面を前記所定範囲毎に設定された所定の振動状態で振動させることは、引用文献1,2のいずれにも記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であったともいえない。 よって、本願発明1は、当業者であっても引用文献1,2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2,5について 本願発明2は、本願発明1を減縮した発明であり、請求項1〜4の何れかを引用する請求項5に係る本願発明5は、請求項1又は2を引用する場合について、本願発明1を減縮した発明であるから、それぞれ、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1,2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本願発明7,9について 本願発明7,9は、それぞれ、本願発明1に対応する「表示制御システム」、「表示制御方法」の発明であって、いずれも、上記相違点に対応する発明特定事項を含む。そうすると、本願発明7,9も、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1,2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 小括 以上のとおりであるから、当審拒絶理由は解消した。 なお、本願発明3,4,6,8,10は、当審拒絶理由の対象とはされなかった請求項4,5,7,9,11が、それぞれ、令和3年12月28日に提出された手続補正書により新たな請求項3,4,6,8,10とされたものである。 第7 原査定についての判断 1 本願発明1,2,7,9について 令和3年12月28日に提出された手続補正書により補正された請求項1は、「前記操作受付部で受け付けた操作が、前記表示面上に定められた所定範囲の外側から当該所定範囲の内側へのスライド操作の場合に、前記操作面を振動させる振動部を制御し、前記スライド操作が前記所定範囲の内側に達した時に前記操作面を所定の振動状態で振動させる振動制御部」における「所定範囲」について、「前記所定範囲を複数有し、前記所定範囲毎に異なる振動状態が設定され」るという技術的事項を有するものとなった。この点は、同じく補正された請求項7及び9、並びに、請求項1を引用する請求項2についても同様である。 そして、当該技術的事項は、原査定における引用文献A〜Eには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1,2,7,9は、当業者であっても、原査定における引用文献A〜Eに基づいて容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明3,4,6,8,10について 本願発明3は、 「前記操作受付部で受け付けた操作が、前記表示面上に定められた所定範囲の内側から当該所定範囲の外側へのスライド操作の場合に、前記操作面を振動させる振動部を制御し、前記スライド操作が前記所定範囲の外側に達した時に前記操作面を所定の振動状態で振動させる」 及び 「前記スライド操作が、前記オブジェクトとしてのカーソルを移動させる操作の場合、前記振動制御部が前記操作面を前記所定の振動状態で振動させて前記操作面と前記ユーザの操作部位との摩擦を小さくすると共に、表示制御部が前記振動の開始後、所定時間内に前記操作面に対して行われた操作によるカーソルの移動を無効にする」 との技術的事項を有するものである。この点は、本願発明3を減縮した発明である本願発明4及び6、並びに、それぞれ本願発明3に対応する「表示制御システム」、「表示制御方法」の発明である本願発明8及び10についても同様である。 しかしながら、引用文献Aには、上記第5の3において摘記した記載はあるものの、タッチパネル等の操作面において、前記操作面上に定められた所定範囲の内側から前記所定範囲の外側への指のスライド操作がなされる場合に、前記操作面を所定の振動状態で振動させるとともに、前記振動の開始後、所定時間内に前記操作面に対して行われた操作によるカーソルの移動を無効にするとの事項については、記載されておらず、引用文献B〜Eにも、当該事項については記載されていない。また、当該事項が、本願の出願日前において周知技術であったともいえない。 したがって、本願発明3,4,6,8,10は、当業者であっても、原査定における引用文献A〜Eに基づいて容易に発明をすることができたものではない。 3 本願発明5について 請求項1〜4のいずれかを引用する請求項5に係る本願発明5は、請求項1又は2を引用する場合について、上記1と同様であり、請求項3又は4を引用する場合について、上記2と同様である。 4 小括 以上のとおりであるから、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-02-15 |
出願番号 | P2016-184006 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
野崎 大進 富澤 哲生 |
発明の名称 | 表示制御装置、表示制御システム及び表示制御方法 |
代理人 | 特許業務法人秀和特許事務所 |