• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1382230
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-01 
確定日 2022-01-27 
事件の表示 特願2016−202862号「波形データの急進箇所抽出処理方法及び急進箇所抽出処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年4月19日出願公開、特開2018−63225号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月14日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和 2年 8月 6日付け:拒絶理由通知書
同年 9月18日 :意見書及び手続補正書の提出
同年12月18日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 3年 1月 5日 :原査定の謄本の送達
同年 4月 1日 :審判請求書及び手続補正書の提出

第2 令和3年4月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年4月1日にされた補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和3年4月1日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
所定の軌道検測区間を測定して得られた少なくとも高低変位・左、高低変位・右、通り変位・左、通り変位・右、軌間変位、水準変位、平面性変位及び列車動揺の加速度データ並びにレール凹凸を含む鉄道に関連する波形データにおける取得時期又は取得時間の異なる少なくとも2つの波形データから、後に取得された波形データの急進箇所を抽出処理する急進箇所抽出処理方法であって、
前記波形データのうち取得時期又は取得時間の古い波形データである基準データと、前記波形データのうち取得時期又は取得時間の新しい波形データである修正対象データ間の位置補正を行う位置補正工程と、
位置補正が行われた前記修正対象データと前記基準データ間の波形レベルの差分データを求めることで特徴変化箇所を抽出する差分データ演算工程と、
前記差分データ演算工程で特徴変化箇所が抽出された場合に、急進又は異常か否かの判別を行う急進箇所抽出工程を備え、
前記位置補正工程は、前記基準データ及び前記修正対象データの相互相関係数を用いたパターンマッチングによる位置補正を行う詳細位置補正工程を備えることを特徴とする急進箇所抽出処理方法。」

(2) 本件補正後
「【請求項1】
所定の軌道検測区間を測定して得られた少なくとも高低変位・左、高低変位・右、通り変位・左、通り変位・右、軌間変位、水準変位、平面性変位の軌道検測データ及び列車動揺の加速度データ並びにレール凹凸データを含む鉄道に関連する波形データにおける取得時期又は取得時間の異なる少なくとも2つの波形データから、後に取得された波形データの急進箇所を抽出処理する急進箇所抽出処理方法であって、
前記波形データのうち取得時期又は取得時間の古い波形データである基準データと、前記波形データのうち取得時期又は取得時間の新しい波形データである修正対象データ間の位置補正を行う位置補正工程と、
位置補正が行われた前記修正対象データと前記基準データ間の波形レベルの差分データを求めることで特徴変化箇所を抽出する差分データ演算工程と、
前記差分データ演算工程で特徴変化箇所が抽出された場合に、急進又は異常か否かの判別を行う急進箇所抽出工程を備え、
前記位置補正工程は、前記基準データ及び前記修正対象データの相互相関係数を用いたパターンマッチングによる位置補正を行う詳細位置補正工程を備え、
前記相互相関係数は、両波形データ間の相互相関関数を算出する区間の前記基準データと前記修正対象データの標準偏差の積で除し、正規化した値(−1,1)の範囲を取り得る値であり、
前記位置補正は、前記基準データに対して、前記修正対象データの位置ずれ量を変化させながら、総当たりで前記相互相関係数が最大となる位置ずれ量を算出することを特徴とする急進箇所抽出処理方法。」

2 本件補正についての当審の判断
本件補正は、請求項1において、本件補正前の「高低変位・左、高低変位・右、通り変位・左、通り変位・右、軌間変位、水準変位、平面性変位」が「軌道検測データ」であることを限定したものである。
また、本件補正は、請求項1において、本件補正前の「レール凹凸」が、「レール凹凸データ」であることを限定したものである。
さらに、本件補正は、請求項1において、本件補正前の「詳細位置補正工程」で用いられる「前記基準データ及び前記修正対象データの相互相関係数」が、「両波形データ間の相互相関関数を算出する区間の前記基準データと前記修正対象データの標準偏差の積で除し、正規化した値(−1,1)の範囲を取り得る値」であり、本件補正前の「詳細位置補正工程」で行われる「位置補正」が、「前記基準データに対して、前記修正対象データの位置ずれ量を変化させながら、総当たりで前記相互相関係数が最大となる位置ずれ量を算出すること」であることを限定したものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、以下では、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、について検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)において特定されるとおりのものである。

(2) 引用文献等
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由において引用された特開2015−51674号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「【背景技術】
【0002】
鉄道車両が走行する軌道の状態を管理する指標として軌道変位が知られている。この軌道変位には、軌間変位、水準変位、高低変位、通り変位、及び平面性変位の5種類がある。これらの軌道変位が大きくなると、走行する鉄道車両の揺れが大きくなり乗り心地が悪くなる。さらに、軌道変位が大きくなると、鉄道車両の走行安全性に支障が生じ、脱線事故につながるおそれもある。従って、定期的に軌道変位を測定し、適切な時期に軌道を補修する必要がある。
なお、平面性変位は、軌道の平面に対するねじれの状態を表すものであり、軌道の長手方向に一定間隔を隔てた2点間の水準変位の差を意味する。また、水準変位は、軌道を構成する左右のレールの高さの差を意味する。
【0003】
従来、軌道変位は、専用の軌道検測車によって測定されている(例えば、特許文献1参照)。軌道検測車は、非営業車両であり、台数も少ないため、頻繁には軌道変位を測定できず、深夜などの運行スケジュールの合間に測定する必要がある。従い、軌道検測車を用いる代わりに、営業車両によって日常的に軌道変位を測定可能にすることが望まれている。
【0004】
一方、輪重と横圧とを測定可能な台車(PQモニタリング台車)を営業車両に用いることにより、鉄道車両の走行安全性を示す指標である脱線係数を日常的に測定可能とすることが提案されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。
なお、輪重とは、鉄道車両の車輪と軌道を構成するレールとの間に作用する垂直方向の力である。横圧とは、車輪とレールとの間に作用する水平方向(車軸に沿った方向)の力である。脱線係数とは、輪重をP、横圧をQとしたときに、Q/Pで表される指標である。
【0005】
上記のPQモニタリング台車を用いれば、脱線係数については、営業車両での日常的な測定が可能である。しかしながら、PQモニタリング台車で、軌道変位、特に平面性変位を測定することについては、何ら提案されていない。」
「【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る軌道の状態を測定可能な営業車両を説明する図である。図1(a)は営業車両が備える台車の概略構成及び軌道状態測定方法を説明する図であり、図1(b)は1次ばねの変位算出方法を説明する図である。
図1に示すように、本実施形態に係る営業車両100は、前後左右に4つの車輪1を有し、各車輪1の輪重を測定可能な台車10と、台車10によって測定した各輪重測定値に基づき、軌道Rの状態を測定する演算部20とを備える。台車10は、各車輪1を支持する1次ばね2を備える。
【0027】
まず、演算部20は、測定した各輪重測定値に基づき、各車輪1をそれぞれ支持する4つの1次ばね2の変位を算出する。
具体的には、演算部20には、1次ばね2に加わる荷重と変位との相関データが予め記憶されている。そして、演算部20は、測定した各輪重測定値Pと、予め記憶された前記相関データとに基づき、1次ばね2の変位(自然長からの変位)zを算出する。なお、前記相関データから求められる1次ばね2のばね定数kは、例えば、500〜2000kN/mの値とされる。
【0028】
ここで、台車10の走行方向の前方左側に位置する車輪1を支持する1次ばね2の変位の座標点をP1outとし、変位をz1outとする。台車10の走行方向の前方右側に位置する車輪1を支持する1次ばね2の変位の座標点をP1inとし、変位をz1inとする。台車10の走行方向の後方左側に位置する車輪1を支持する1次ばね2の変位の座標点をP2outとし、変位をz2outとする。台車10の走行方向の後方右側に位置する車輪1を支持する1次ばね2の変位の座標点をP2inとし、変位をz2inとする。
台車10の走行方向の後方左側に位置する車輪1を支持する1次ばね2の変位の座標点を平面座標(xy座標)の原点とし、前後の車軸間距離を2a、左右の車輪間距離を2b0とすれば、各1次ばね2の変位の座標点は、それぞれ、P1out(0,2a,z1out)、P1in(2b0,2a,z1in)、P2out(0,0,z2out)、P2in(2b0,0,z2in)で表わされる。
演算部20は、算出した4つの1次ばね2の変位z1out、z1in、z2out、z2inから上記各1次ばね2の変位の座標点を算出する。
【0029】
次に、演算部20は、算出した4つの1次ばね2の変位の座標点のうち、いずれか3つの1次ばね2の変位の座標点を通る平面を算出する。
本実施形態では、台車10が走行する軌道Rの情報が演算部20に入力されており、演算部20は、現在台車10が軌道Rのどの地点を走行しているかを把握できる。従い、演算部20は、4つの車輪1が現在外軌側又は内軌側のいずれに位置するかを把握可能である。そして、本実施形態では、演算部20は、4つの1次ばね2のうち、台車10の前方の外軌側に位置する車輪1を支持する1次ばね2を除く3つの1次ばね2の変位の座標点を通る平面を算出する。
台車10の前方の外軌側に位置する車輪1を支持する1次ばね2の変位の座標点をP1out(0,2a,z1out)とすれば、演算部20は、3つの座標点P1in(2b0,2a,z1in)、P2out(0,0,z2out)、P2in(2b0,0,z2in)を通る平面PLを算出する。
具体的には、上記平面PLを以下の式(1)で表わし、この平面PLが3つの座標点P1in、P2out、P2inを通ることから、式(1)の係数C1〜C4を決定する。
C1x+C2y+C3z+C4=0 ・・・(1)
【0030】
最後に、演算部20は、算出した上記の式(1)で表わされる平面PLと、残りの1次ばねの変位の座標点P1out(0,2a,z1out)との距離に基づき、軌道の平面性変位hを算出する。
具体的には、以下の式(2)のx、y、zに座標点P1out(0,2a,z1out)のxyz座標を入力し、平面性変位hを算出する。なお、以下の式(2)で表わされる平面性変位hの絶対値が、式(1)で表わされる平面PLと、残りの1次ばねの変位の座標点P1out(0,2a,z1out)との距離に相当する。
【数1】(省略)」
【0032】
図2は、本実施形態に係る営業車両100によって同一の曲線区間における平面性変位及び輪重(台車10の前方の外軌側に位置する車輪1の輪重)を繰り返し測定した結果の一例を示すグラフである。図2(a)は平面性変位の測定例を、図2(b)は輪重の測定例を示す。具体的には、図2は、曲線半径が一定の円曲線部と、入口側及び出口側の直線部と円曲線部とを繋ぎ直線部から円曲線部にかけて曲線半径が徐々に小さくなる緩和曲線部と、出口側の直線部とで、それぞれ平面性変位及び輪重を測定した結果を示している。より具体的には、2011年1月、2012年1月及び2012年2月において、それぞれ10回ずつ平面性変位及び輪重を測定している。
図2からわかるように、輪重のバラツキに比べて平面性変位のバラツキは小さい。従って、本実施形態で算出した平面性変位は、輪重に比べて、軌道Rの異常を検出するのに有用であると考えられる。」
「【0036】
以上に説明した本実施形態に係る営業車両100及び軌道状態測定方法によれば、精度良く平面性変位を算出することが可能である。具体的には、前述した図2や図3に示すように、同一の軌道Rについて算出した平面性変位のバラツキは比較的小さくなる。このため、好ましい構成として、平面性変位のバラツキが小さいことを利用し、営業車両100の走行距離の測定誤差を補正することが考えられる。以下、具体的に説明する。
【0037】
本実施形態の演算部20は、好ましい構成として、車輪1の回転数に基づき所定の起点からの営業車両100(台車10)の走行距離を算出し、該算出した走行距離が第1軸に表わされ、算出した軌道Rの平面性変位が第1軸に直交する第2軸に表わされた、軌道Rの平面性変位分布を算出する。演算部20には車輪1の回転数を検出するパルスジェネレータの出力信号が入力されると共に、使用開始時の車輪1の外径が入力されており、これにより演算部20は、所定の起点からの営業車両100の走行距離を算出可能である。算出した平面性変位分布における走行距離は、車輪1の回転数に基づき算出されたものであるため、車輪1の摩耗等により測定誤差を生じる。
【0038】
次に、演算部20は、所定の起点からの距離が既知である軌道Rの位置と、当該位置において車輪1の回転数に基づき算出した営業車両100の走行距離との対応関係を取得し、記憶する。
前記対応関係を取得するには、例えば、精密な測量が行われることにより所定の起点からの距離がそれぞれ既知である軌道Rの2箇所の位置の脇に反射板を設置する。一方、例えば、営業車両100に投受光型の光電センサを設置し、この光電センサから反射板に向かってレーザ光を投光し、反射板で反射されたレーザ光を光電センサで受光したタイミングにおいて、営業車両100が軌道Rの2箇所の位置に到達したことが認識されると共に、このときの車輪1の回転数に基づき算出した営業車両100の走行距離も認識されることになる。演算部20には光電センサの出力信号(反射されたレーザ光の検出信号)が入力されると共に、軌道Rの前記2箇所の位置の所定の起点からの距離が予め入力されている。これにより演算部20は、前述のように、所定の起点からの距離が既知である軌道Rの位置(2箇所)と、当該位置において車輪1の回転数に基づき算出した営業車両100の走行距離との対応関係が取得される。例えば、軌道Rの2箇所の位置が所定の起点からX1キロポスト、Y1キロポストの距離にあり、それぞれの位置において車輪1の回転数に基づき算出した営業車両100の走行距離がX2キロポスト、Y2キロポストであったとすると、X1キロポストにはX2キロポストが対応し、Y1キロポストにはY2キロポストが対応するという関係が取得され、演算部20に記憶される。
【0039】
演算部20は、前述のようにして記憶した対応関係に基づき、第1軸に営業車両100の真の走行距離が表わされるように、算出した軌道Rの一の平面性変位分布を補正する。具体的には、演算部20は、軌道Rの一の平面性変位分布における走行距離(車輪1の回転数に基づき算出した走行距離)がX2キロポストの位置は実際にはX1キロポストであり、軌道Rの一の平面性変位分布における走行距離(車輪1の回転数に基づき算出した走行距離)がY2キロポストの位置は実際にはY1キロポストであるため、それぞれ実際の値となるように(第1軸に営業車両100の真の走行距離が表わされるように)、軌道Rの一の平面性変位分布を第1軸について平行移動及び/又は伸縮する(補正する)。そして、補正後の平面性変位分布を基準平面性変位分布として記憶する。
【0040】
次に、図5に示すように、演算部20は、算出した軌道Rの他の平面性変位分布(同一の軌道Rについて、前記一の平面性変位分布とは別のタイミングで算出した平面性変位分布)と、記憶した基準平面性変位分布とがマッチングするように、軌道Rの他の平面性変位分布を第1軸について補正し、その補正量を算出する。具体的には、図5(a)の模式図に示すように、演算部20は、例えばシンプレックス法などを用いたマッチング手法により、軌道Rの他の平面性変位分布が基準平面性変位分布とマッチングするように、軌道Rの他の平面性変位分布を第1軸について平行移動及び/又は伸縮する(補正する)。すなわち、平行移動量a及び/又は伸縮倍率bを決定する。図5(b)は、軌道Rの他の平面性変位分布が基準平面性変位分布とマッチングするように、軌道Rの他の平面性変位分布を第1軸について実際に補正した結果の一例を示す。これは、前述のように同一の軌道Rについて算出した平面性変位のバラツキは比較的小さいため、走行距離について測定誤差を含み得る他の平面性変位分布を第1軸について補正しさえすれば、基準平面性変位分布とマッチングさせることができるという考えに基づくものである。以上のようにして補正した後の他の平面性変位分布の第1軸に表わされた走行距離は、真の走行距離に近似したものになるといえる。そして、演算部20は、上記補正の補正量(平行移動量a及び/又は伸縮倍率b)を記憶する。
【0041】
次に、演算部20は、車輪1の回転数に基づき算出した所定の起点からの営業車両100の走行距離が第1軸に表わされ、軌道Rの他の平面性変位分布を算出するのに用いた車輪1の輪重測定値に関わるパラメータ(輪重そのものや脱線係数など)が第2軸に表わされた、軌道Rにおける車輪1の輪重測定値に関わるパラメータの分布(以下、適宜、輪重パラメータ分布)を算出する。この算出した輪重パラメータ分布における走行距離は、車輪の回転数に基づき算出されたものであるため、車輪の摩耗等により測定誤差を生じる。
【0042】
最後に、演算部20は、算出した車輪1の輪重測定値に関わるパラメータの分布を前記算出した補正量に基づき補正する。具体的には、演算部20は、輪重パラメータ分布を第1軸について前記補正量(平行移動量a及び/又は伸縮倍率b)と同じ量だけ補正する。これは、軌道Rの他の平面性変位分布を算出するタイミングと、軌道Rにおける輪重パラメータ分布を算出するタイミングとが同一であり、各分布の第1軸に表わされた走行距離(車輪1の回転数に基づき算出された営業車両の走行距離)は互いに同じ測定誤差を含んでいるため、輪重パラメータ分布の第1軸に営業車両100の真の走行距離が表わされるようにするには、同じ補正を行えば良いという考えに基づくものである。以上のようにして補正した後の輪重パラメータ分布の第1軸に表わされた走行距離は、真の走行距離に近似したものになるといえる。
【0043】
以上のように、上記の好ましい構成によれば、輪重パラメータ分布の第1軸に表わされた走行距離(車輪1の回転数に基づき算出された営業車両の走行距離)が真の走行距離に近似したものに補正されるため、輪重測定値に関わるパラメータ(脱線係数等)が異常値を示した軌道Rの位置を精度良く特定でき、軌道Rの補修などの処置を適切な位置に施すことが可能である。
また、所定の起点からの距離が既知である軌道Rの位置と、当該位置において車輪1の回転数に基づき算出した営業車両100の走行距離との対応関係は、基準平面性変位分布を算出する際にのみ取得すればよい。例えば、深夜などの運行スケジュールの合間に対応関係を取得すればよく、日中に頻繁に光電センサと反射板との間でレーザ光を投受光する必要がない。基準平面性変位分布を算出した後は、専らこの基準平面性変位分布を用いて輪重パラメータ分布を補正すればよい。このため、上記の好ましい構成によれば、輪重パラメータ分布の第1軸に表わされた走行距離を真の走行距離に近似したものに補正する上で、手間が掛からない上、安全である。」
「【図1】


「【図2】


「【図5】



引用発明の認定
上記アの記載内容を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「同一の曲線区間における平面性変位及び輪重を繰り返し測定する営業車両を用いた軌道状態測定方法であって、(【0026】、【0032】)
営業車両100は、前後左右に4つの車輪1を有し、各車輪1の輪重を測定可能な台車10と、台車10によって測定した各輪重測定値に基づき、軌道Rの状態を測定する演算部20とを備え、台車10は、各車輪1を支持する1次ばね2を備えており、(【0026】)
演算部20は、測定した各輪重測定値に基づき、各車輪1をそれぞれ支持する4つの1次ばね2の変位を算出し、算出した4つの1次ばね2の変位から上記各1次ばね2の変位の座標点を算出し、算出した4つの1次ばね2の変位の座標点のうち、いずれか3つの1次ばね2の変位の座標点を通る平面を算出し、算出した上記平面と、残りの1次ばねの変位の座標点との距離に基づき、軌道の平面性変位hを算出するものであり、
(【0027】〜【0030】)
演算部20は、車輪1の回転数に基づき所定の起点からの営業車両100(台車10)の走行距離を算出し、該算出した走行距離が第1軸に表わされ、算出した軌道Rの平面性変位が第1軸に直交する第2軸に表わされた、軌道Rの平面性変位分布を算出し、(【0037】)
演算部20は、所定の起点からの距離が既知である軌道Rの位置と、当該位置において車輪1の回転数に基づき算出した営業車両100の走行距離との対応関係を取得して記憶し、記憶した対応関係に基づき、第1軸に営業車両100の真の走行距離が表わされるように、算出した軌道Rの一の平面性変位分布を補正し、補正後の平面性変位分布を基準平面性変位分布として記憶し、(【0038】〜【0039】)
演算部20は、算出した軌道Rの他の平面性変位分布(同一の軌道Rについて、前記一の平面性変位分布とは別のタイミングで算出した平面性変位分布)と、記憶した基準平面性変位分布とがマッチングするように、軌道Rの他の平面性変位分布を第1軸について補正し、例えばシンプレックス法などを用いたマッチング手法により、軌道Rの他の平面性変位分布が基準平面性変位分布とマッチングするように、軌道Rの他の平面性変位分布を第1軸について平行移動及び/又は伸縮して、平行移動量a及び/又は伸縮倍率bを決定し、その補正量(平行移動量a及び/又は伸縮倍率b)を記憶し、
(【0040】)
演算部20は、車輪1の回転数に基づき算出した所定の起点からの営業車両100の走行距離が第1軸に表わされ、軌道Rの他の平面性変位分布を算出するのに用いた車輪1の輪重測定値に関わるパラメータ(輪重そのものや脱線係数など)が第2軸に表わされた、軌道Rにおける車輪1の輪重測定値に関わるパラメータの分布(輪重パラメータ分布)を算出し、算出した車輪1の輪重測定値に関わるパラメータの分布を前記算出した補正量に基づき補正し、補正した後の輪重パラメータ分布の第1軸に表わされた走行距離は、真の走行距離に近似したものになり、営業車両100の走行距離の測定誤差を補正するものであり、(【0036】、【0041】〜【0042】)
輪重パラメータ分布の第1軸に表わされた走行距離(車輪1の回転数に基づき算出された営業車両の走行距離)が真の走行距離に近似したものに補正されるため、輪重測定値に関わるパラメータ(脱線係数等)が異常値を示した軌道Rの位置を精度良く特定でき、軌道Rの補修などの処置を適切な位置に施すことが可能である、(【0043】)
軌道状態測定方法。」

ウ 技術常識を示す文献
(ア)佐野弘典、三和雅史、山口剛志、吉田尚史、矢坂健太、坂口和弘
「高頻度軌道検測データの軌道状態診断および保守計画策定への活用方法」鉄道総研報告、2015年8月、Vol.29、No.8、47〜52頁

当審が新たに引用する上記文献には、次の記載がある。下線は当審が付与した。
「1.はじめに
営業車両に搭載した軌道検測装置を用いて軌道変位等を毎日、或いは数日に1回程度の高頻度で測定し、軌道状態の予測、診断を高精度で行うためには、膨大な量の検測データの処理法や活用法を確立する必要がある。そこで、高頻度検測データに適した軌道変位進みの算定法や処理方法を検討した。」(47頁左欄)
「(3)軌道変位の急進箇所の選定法
高頻度検測の利点として、軌道変位の急進等、急激な変化を把握できることが挙げられる。よって、急進管理のための検測データ処理方法について検討する。」(50頁左欄)

(イ)木村寛淳、田中博文、下野勇希「偏心矢を用いたバラスト軌道における高低変位急進箇所の効率的な検出手法」土木学会第65回年次学術講演会講演概要集、平成22年9月、IV−212、423〜424頁

当審が新たに引用する上記文献には、次の記載がある。下線は当審が付与した。
「3.高低変位急進箇所の検出手法
高低変位進み量やその変化パターンは、場所により様々であるため、本研究では1検測間に10m弦高低変位が3mm以上進行し、落ち込みが7mmを超過した箇所を急進箇所とし、分析を行った。
図2に、高低変位急進前後の、10m弦高低変位、5m弦高低変位、復元波形および高低検測差の波形例を示す。同図より、5m弦高低変位は急進以前から局所的に落ち込んでおり、その振幅も大きい。また復元波形から、落ち込みの範囲は徐々に広がっていることがわかる。高低検測差については、急進前から局所的に大きな値であり、道床バラストの劣化等で浮きまくらぎ等の軌道状態になっていた可能性が考えられる。」(423頁右欄〜424頁左欄)




エ 技術常識の認定
(ア)技術常識1
前記ウ(ア)に摘記した事項により、次の技術常識(以下「技術常識1」という。)が認定できる。
[技術常識1]
「営業車両に搭載した軌道検測装置を用いて軌道変位等を毎日、或いは数日に1回程度の高頻度で測定し、軌道状態の予測、診断を行う高頻度検測では、軌道変位の急進等、急激な変化を把握できること。」

(イ)技術常識2
前記ウ(イ)に摘記した事項により、次の技術常識(以下「技術常識2」という。)が認定できる。
[技術常識2]
「急進箇所の検出の際、軌道変位を示す波形に着目し、軌道変位の進み量やその変化パターンを分析して、例えば、1検測間に軌道変位が所定値以上進行し、落ち込みが所定レベルを超過した箇所を急進箇所とすること。」

(ウ)技術常識3
前記アの【0002】に摘記した事項により、次の技術常識(以下「技術常識3」という。)が認定できる。
[技術常識3]
「鉄道車両が走行する軌道の状態を管理する指標として軌道変位が知られており、この軌道変位には、軌間変位、水準変位、高低変位、通り変位、及び平面性変位の5種類があること。」

オ 周知技術を示す文献
(ア)引用文献3
原査定の拒絶の理由において引用された特開2008−148466号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「【0027】
図1において、営業車両1はレール2上を走行し、該営業車両1には、各種計測装置が搭載されている。即ちGPS(GlobalPositioning Satellite)衛星からGPS信号(自車位置座標)を受信するGPS受信機4、車輪3に取り付けられ車輪3の回転数を計測し回転数の積算値から自車位置を算出する車輪回転センサ5、あるいはレール2に沿って適宜間隔で複数配置された地点検知センサ(地上子)6の信号を受けて自車位置を計測する地点検知センサ(車上子)7等が取り付けられる。これら3種の計測装置は、状況によって使い分けられ、少なくとも1種の計測装置を装備すればよい。
【0028】
また走行中の営業車両内の振動の加速度を計測する加速度センサ8や、走行中の車輪3の振動の加速度を計測する加速度センサ9や、車両内の騒音を計測する騒音センサ10が装備される。加速度センサ8は、営業車両の内部に配置されるため、車輪3の振動は、車輪3と車体との間に介装された緩衝装置を介して伝達される。従って車輪3の振動成分のうち微振動成分を正確に計測できないという問題がある。
【0029】
一方加速度センサ9は、車輪2に直接装着されるため、車輪3の振動を微振動成分を含めて直接計測できる長所がある。しかし一方車輪3には駆動モータが発生する電流が流れており、該電流によるノイズが加速度センサ9に伝わるという問題がある。
そのため加速度センサ8及び9の両方を設け、両加速度センサによる計測データを併せることにより、正確な加速度データを得ることができる。
【0030】
前記自車位置データ及び計測データは、車両1内に搭載されたデータベース11に蓄積される。このような各種計測装置を搭載した営業車両(以下「プローブ車両」という)1は、計測装置が搭載されない営業車両とともに日々走行し、該計測装置により計測した計測データをデータベース11に蓄積していく。
【0031】
図2において、車載データベース11に蓄積された計測データは、フィルタ装置12で移動平均処理、フィルタ処理等によってノイズを除去される。次に第1演算装置13で、該計測データを時間データ及び自車位置データとリンクさせ、レール2の所定区間ごとに最大値を求める。次に第2演算装置14で、該最大値の該所定区間ごとの度数分布図を作成し、また時間軸を横軸とし該最大値から最小二乗法により求めた近似線を作成し、また特定最大値の過去の最大値履歴に対する差分を求める。
【0032】
次に軌道異常判定装置15で、第2演算装置14で求めた度数分布図、近似線及び差分から軌道の所定区間ごとの異常有無を診断する。
次に図3のフローチャートにより本実施形態による異常診断方法の手順を説明する。図3において、まずプローブ車両1の走行を開始し、プローブ車両1に搭載された各種計測装置により計測した計測データを車載データベース11に取り込む。
【0033】
次にステージ1でのデータ処理を行う。即ち図2のフィルタ装置12で、従来公知の移動平均処理等のフィルタ処理を行って計測データからノイズを除去する。次に自車位置データの補正を行なう。即ち自車位置は、GPS受信機4、車輪回転センサ5又は地点検知センサ6,7で計測した自車位置データにより確認するが、車輪回転センサ5で計測した回転数の積算値から演算した位置データは、予め定めたある特定地点をターゲットにしたGPS受信機4の位置情報で補正することにより、正確な自車位置データを得ることができる。
【0034】
次にプローブ車両1の車体内外に配置された加速度センサ8及び9で計測した振動の加速度データ、及び騒音センサ10で計測した騒音データの最大値を、区間ごとに(例えば50m/100m/500m区間ごとに)求める。レールの波状磨耗、例えば長さ5〜10cmの波状の傷(凹凸)は、該加速度センサ8,9又は騒音センサ10で車輪又は車両に加わる振動波形又は騒音波形として計測すると、100Hz以上の高周波波形となる。またレール継ぎ目における段差は、10〜20Hz程度の単発振動波形となって計測される。また異常な軌道変位(例えばレール間間隔の異常等)は、1〜10Hzの長波長振動となって計測される。本実施形態では振動波形又は騒音波形と一義的な相関関係を有する振動の加速度又は騒音の音圧を計測することによって、軌道設備の異常有無を診断する。
【0035】
なお計測した波形データが100Hz以上の高周波波形を呈する場合は、最大値の識別が困難であるので、フーリエ変換を行なって著大値を見つけるようにする。この著大値から求めた区間ごとの最大値をプロットした図の一例を図4に示す。
【0036】
振動波形又は騒音波形の最大値を求める理由を以下説明する。即ち該最大値がレールの摩耗やレール継ぎ目の段差の発生等は、該最大値と相関関係が高いという知見に基づいたものである。即ち該最大値が高いほど、これらの異常が発生している可能性が高いといえる。そのため該最大値に着目し、該最大値を分析することにより、軌道状態の異常を正確に診断できるようになる。
【0037】
次にステージ2でのデータ仕分けを行なう。ステージ2において、振動の加速度データ及び騒音の音圧データの最大値を大きい順にソートする。この場合、例えばプローブ車両1が異常軌道を1周回するごとに行なう。一例として加速度データの最大値を大きさ順にソートして示した図を図5に示す。また該最大値が大きい区間を懸念箇所としてピックアップしたり、あるいは区間ごとのデータとして積算する。特定区間ごとの加速度データとして積算した場合の表を一例として図6の(a)及び(b)として示す。
【0038】
次にステージ3でデータ分析を行なう。ここでは、例えば前記最大値が大きい等の理由により異常が懸念される箇所をピックアップし、その箇所の度数分布図を作成し、その度数分布の状態を標準偏差と比較する(統計処理)。この場合の度数分布図の一例を図7に示す。例えばある特定区間の度数分布状態が標準偏差に比べて差が大きい場合は、その区間で異常が発生している可能性があることを示している。
【0039】
また現走行データをこれまでの走行データ履歴と比較し、その差分を求める。この場合の一例を図8に示す。該差分が大きい場合は異常が発生している可能性があることを示す。さらにある区間のデータを積算し、積算したデータから最小二乗法により近似線を求め、該近似線の傾向(傾き)をみるとともに、該近似線と現走行データとの差分をみる。この一例を図9に示す。該近似線が図9のように漸増している場合は、該区間で異常が発生しつつあることを示す。また現走行データと近似線との差分が大きい場合は、該区間で異常が発生している可能性があることを示す。
【0040】
次にステージ4でステージ3までの分析結果から軌道設備の異常有無を診断する。即ちステージ3で行なった統計処理、差分及び近似線の結果から、評価点を付ける。即ち各計測データの最大値に対して異常の可能性が高い順に高い評価点を付ける。そして評価点積算値による評価(この場合前回積算値等の履歴を照合する。)や、評価点順にソートしたり、評価情報のデータ仕分けを行なう。これらの評価方法から、軌道設備に異常があるかないかの判定を行なう。この一例を図10に示す。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】


「【図8】



(イ)特開2015−169452号公報
当審が新たに引用する特開2015−169452号公報には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「【0022】
図3は、位置ずれ検出部200を説明する図の例である。
【0023】
位置ずれ検出部200は、バッファ205、演算部207、ピーク値探索部208を有する。
【0024】
位置ずれ検出部200は、入力された画像データ12と、バッファ205に格納されているマッチング用画像データ206を用い、演算部207にて特徴量を計算し、相関値マップ210を用い、ピーク値探索部208でピーク値を探索し、特徴量14として画像データ切出し部17に出力する。
【0025】
カウンタ203は、入力された画像データ12の量を増分値としてカウントし、情報合成部204にカウント結果の値を送る。
【0026】
情報合成部204は、特徴量14とカウンタ203のカウント結果を合成し、ウェハ座標表22に計算特徴量15として送る。
【0027】
演算部207は、計算する特徴量14として、本実施例による半導体外観検査装置99では、入力された画像データ12と、それに対応する隣接チップで位置ずれ量を算出し、次にユニット52とそれに対応する隣接チップのチップで位置ずれ量を算出する、といったように入力される画像データ12に対して順次チップ単位で位置ずれ量を算出した結果の値を出力する。
【0028】
演算部207は、位置ずれ量の算出には画像間の正規化相互相関、画像間の濃淡差の総和、画像間の濃淡差の二乗和などを用いる各種手法があり、そのいずれかを用いる。
【0029】
演算部207の例として、ここでは、正規化相互相関演算を行う例について示す。正規化相互相関係数Rは、入力する画像データ12の平均値をfavg、マッチング用画像データ206の平均値をgavg、とすると、
【0030】
【数1】


【0031】
となる。この正規化相互相関係数Rは、画像の平均値成分を合わせ、平均値からの分散を正規化している。正規化相互相関係数Rは、2つのパターンの相関が高ければ1.0に近づき、低ければ−1.0に近づく。
【0032】
図4は、本実施例による位置ずれ検出部200における位置ずれ量算出の処理の一例を説明するフローチャートである。
【0033】
位置ずれ検出部200における位置ずれ検出処理が開始される(400)と、位置ずれ検出部200へ、画像データ12が入力される(401)。入力された画像データ12のうち、チップ領域分データをバッファ205に格納する(402)。
【0034】
次に、画像データ12とバッファ205出力のマッチング用画像206が、正規化相関演算部207に入力される(403)。正規化相関演算部207は、正規化相互相関演算処理を実施(404)し、相関値マップ210を出力する(405)。
【0035】
ピーク値探索部208は、出力された相関値マップ210のピーク値を探索(406)し、探索が完了した相関値マップ210のピーク値R(x,y)を特徴量14として出力する(407)。
【0036】
以上で、位置ずれ検出部200における位置ずれ検出処理の完了が完了する(408)。
【0037】
図5は、図4で示すフローチャートを、模式図の一例を示した図である。図5を用いて、それぞれの処理を詳細に説明する。
【0038】
検査対象となるウェハ上のチップ領域の画像を画像データ12とし、その直前の対応するウェハ上のチップ領域画像を、マッチング用画像206とする。画像データ21と、バッファでチップ領域分遅延されたマッチング用画像206は、位置ずれ検出のための正規化相互相関演算部207に入力される。
【0039】
正規化相互相関演算部207では、2枚の画像間を相対的にx方向に−m〜+m画素、y方向にーn〜+n画素ずらした時の相関値を[数1]を用いて算出し、相関値マップ(類似度マップ)210を得る。
【0040】
相関値マップ(類似度マップ)210の相関値最大位置を画像間での位置ずれ量として検出し、最大位置(ピーク値)R(x,y)を特徴量14として出力する。」
「【図3】


「【図4】


「【図5】



カ 周知技術の認定
(ア)周知技術1
前記オ(ア)に摘記した事項(【0027】、【0028】、【0034】を参照。)により、次の技術事項は、当業者にとって周知であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。
[周知技術1]
「各種計測装置が搭載された営業車両において、レールの波状磨耗、例えば長さ5〜10cmの波状の傷(凹凸)、レール継ぎ目における段差、異常な軌道変位(例えばレール間間隔の異常等)を、装備された加速度センサ又は騒音センサで車輪又は車両に加わる振動波形又は騒音波形として計測すること。」

(イ)周知技術2
前記オ(ア)に摘記した事項(【0039】、【0040】を参照。)により、次の技術事項は、当業者にとって周知であったと認められる(以下「周知技術2」という。)。
[周知技術2]
「軌道設備の異常の有無を診断するために、現走行データをこれまでの走行データ履歴と比較して、その差分を求め、該差分が大きい場合は異常が発生している可能性があると分析すること。」

(ウ)周知技術3
前記オ(イ)に摘記した事項(【0029】〜【0031】、【0039】〜【0040】を参照。)により、次の技術事項は、当業者にとって周知であったと認められる(以下「周知技術3」という。)。
[周知技術3]
「入力データとマッチング用データの正規化相互相関係数を用いたパターンマッチングにより位置ずれ量を検出する方法において、
正規化相互相関係数は、両データ間の相互相関関数を算出する区間のそれぞれの標準偏差の積で除したものであり、2つのパターンの相関が高ければ1.0に近づき、低ければ−1.0に近づくものであり、
マッチング用データに対して、入力データの位置ずれを変化させたときの正規化相互相関係数の値を相関値として算出し、位置ずれを変化させることのできる範囲のすべてについて位置をずらしたときの相関値マップを得て、相関値マップの相関値が最大である位置を位置ずれ量として検出すること。」

(3) 対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「同一の曲線区間」は、本件補正発明の「所定の軌道検測区間」に相当する。
また、引用発明では「繰り返し測定する」から、この繰り返し測定で得られる各データは、取得時期又は取得時間の異なるデータであるといえる。

(イ)引用発明の「平面性変位」は、本件補正発明の「平面性変位」に相当するところ、鉄道車両が走行する軌道の状態を管理する指標として軌道変位が知られており、この軌道変位には、軌間変位、水準変位、高低変位、通り変位、及び平面性変位の5種類があることは技術常識であるから(前記(2)エ(ウ)技術常識3を参照。)、引用発明の「繰り返し測定」される「平面性変位」は、本件補正発明の「軌道検測データ」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「平面性変位の軌道検測データ」を得ている点で一致する。

(ウ)引用発明の「軌道Rの平面性変位分布」は、「車輪1の回転数に基づき所定の起点からの営業車両100(台車10)の走行距離を算出し、該算出した走行距離が第1軸に表わされ、算出した軌道Rの平面性変位が第1軸に直交する第2軸に表わされた」ものであるところ、平面性変位の波形データを2次元のグラフとして表示したものであるといえるから(【図2】(a)のグラフを参照。)、引用発明の「軌道Rの平面性変位分布」は、本件補正発明の「平面性変位の軌道検測データ」「を含む鉄道に関連する波形データ」に相当する。

(エ)営業車両に搭載した軌道検測装置を用いて軌道変位等を毎日、或いは数日に1回程度の高頻度で測定し、軌道状態の予測、診断を行う高頻度検測では、軌道変位の急進等、急激な変化を把握できることは、技術常識であるところ(前記(2)エ(ア)技術常識1を参照。)、かかる技術常識に照らせば、引用発明の「同一の曲線区間における平面性変位及び輪重を繰り返し測定する営業車両を用いた軌道状態測定方法」においても、「営業車両」を用いて「繰り返し測定する」ものであるから、高頻度検測を前提としており、軌道状態の急進(急激な変化)を測定できることは明らかである。
そして、引用発明は、「輪重測定値に関わるパラメータ(脱線係数等)が異常値を示した軌道Rの位置を精度良く特定でき」るとしているから、「異常値を示した軌道Rの位置」を急進箇所として抽出しているといえる。

(オ)急進箇所の検出の際、軌道変位を示す波形に着目し、軌道変位の進み量やその変化パターンを分析して、例えば、1検測間に軌道変位が所定値以上進行し、落ち込みが所定レベルを超過した箇所を急進箇所とすることは、技術常識であるところ(前記(2)エ(イ)技術常識2を参照。)、かかる技術常識に照らせば、引用発明の「異常値を示した軌道Rの位置」を急進箇所として抽出する際、取得時期又は取得時間の異なる少なくとも2つの波形データから、後に取得された波形データの急進箇所を抽出する処理を行っているといえる。

(カ)上記(ア)〜(オ)の検討内容を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「所定の軌道検測区間を測定して得られた平面性変位の軌道検測データを含む鉄道に関連する波形データにおける取得時期又は取得時間の異なる少なくとも2つの波形データから、後に取得された波形データの急進箇所を抽出処理する急進箇所抽出処理方法」である点で共通する。

(キ)引用発明では、「算出した軌道Rの他の平面性変位分布(同一の軌道Rについて、前記一の平面性変位分布とは別のタイミングで算出した平面性変位分布)と、記憶した基準平面性変位分布とがマッチングするように、軌道Rの他の平面性変位分布を第1軸について補正」している。
ここで、引用発明の「基準平面性変位分布」と「他の平面性変位分布」は、「同一の軌道Rについて」「別のタイミングで算出した」ものであるから、両者の取得時期又は取得時間は異なり、通常は、「基準平面性変位分布」の方が取得時期又は取得時間の古い波形データであり、「他の平面性変位分布」は取得時期又は取得時間の新しい波形データであるといえる。
よって、引用発明の「基準平面性変位分布」及び「他の平面性変位分布」は、それぞれ本件補正発明の「取得時期又は取得時間の古い波形データである基準データ」及び「取得時期又は取得時間の新しい波形データである修正対象データ」に相当する。
また、引用発明では、「軌道Rの他の平面性変位分布を第1軸について補正」するものであるところ、「第1軸」には「車輪1の回転数に基づき算出した所定の起点からの営業車両100の走行距離」が表されているから、引用発明の「第1軸について補正」することは、位置補正を行うものであるといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記波形データのうち取得時期又は取得時間の古い波形データである基準データと、取得時期又は取得時間の新しい波形データである修正対象データ間の位置補正を行う位置補正工程」を備えており、「前記位置補正工程は、前記基準データ及び前記修正対象データのマッチングによる位置補正を行う」ものである点で一致する。

(ク)引用発明では、「軌道Rの他の平面性変位分布が基準平面性変位分布とマッチングするように、軌道Rの他の平面性変位分布を第1軸について平行移動及び/又は伸縮して、平行移動量a及び/又は伸縮倍率bを決定し、その補正量(平行移動量a及び/又は伸縮倍率b)を記憶」しており、「第1軸について平行移動」する「平行移動量a」を「決定」することは、本件補正発明の「位置ずれ量を算出すること」に相当する。

上記(ア)〜(ク)の対比内容をまとめると、本件補正発明と引用発明は、以下の一致点において一致し、以下の相違点1〜3において相違する。
[一致点]
「所定の軌道検測区間を測定して得られた平面性変位の軌道検測データを含む鉄道に関連する波形データにおける取得時期又は取得時間の異なる少なくとも2つの波形データから、後に取得された波形データの急進箇所を抽出処理する急進箇所抽出処理方法であって、
前記波形データのうち取得時期又は取得時間の古い波形データである基準データと、取得時期又は取得時間の新しい波形データである修正対象データ間の位置補正を行う位置補正工程を備え、
前記位置補正工程は、前記基準データ及び前記修正対象データのマッチングによる位置補正を行うものであり、
前記位置補正は、位置ずれ量を算出するものである、
急進箇所抽出処理方法。」

[相違点1]
「鉄道に関連する波形データ」が、本件補正発明では、「少なくとも高低変位・左、高低変位・右、通り変位・左、通り変位・右、軌間変位、水準変位、平面性変位の軌道検測データ及び列車動揺の加速度データ並びにレール凹凸データを含む」としているのに対して、引用発明では、「平面性変位分布」に係る波形データを取り扱っている点。

[相違点2]
本件補正発明は、「位置補正が行われた前記修正対象データと前記基準データ間の波形レベルの差分データを求めることで特徴変化箇所を抽出する差分データ演算工程」と、「前記差分データ演算工程で特徴変化箇所が抽出された場合に、急進又は異常か否かの判別を行う急進箇所抽出工程」を備えているのに対して、引用発明は、このような工程を備えているか明らかではない点。

[相違点3]
本件補正発明では、「前記基準データ及び前記修正対象データの相互相関係数を用いたパターンマッチングによる位置補正を行う」ものであり、「前記相互相関係数は、両波形データ間の相互相関関数を算出する区間の前記基準データと前記修正対象データの標準偏差の積で除し、正規化した値(−1,1)の範囲を取り得る値であり、前記位置補正は、前記基準データに対して、前記修正対象データの位置ずれ量を変化させながら、総当たりで前記相互相関係数が最大となる位置ずれ量を算出する」ものであるのに対して、引用発明では、マッチング手法により位置補正を行っているものの、正規化相互相関係数を用いたパターンマッチングによるものであるか明らかではない点。

イ 判断
(ア)相違点1について
各種計測装置が搭載された営業車両において、レールの波状磨耗、例えば長さ5〜10cmの波状の傷(凹凸)、レール継ぎ目における段差、異常な軌道変位(例えばレール間間隔の異常等)を、装備された加速度センサ又は騒音センサで車輪又は車両に加わる振動波形又は騒音波形として計測することは、周知の技術であり(前記(2)カ(ア)周知技術1を参照。)、軌道変位には、軌間変位、水準変位、高低変位、通り変位、及び平面性変位の5種類があることは、技術常識であるから(前記(2)エ(ウ)技術常識3を参照。)、「鉄道に関連する波形データ」として、「少なくとも高低変位・左、高低変位・右、通り変位・左、通り変位・右、軌間変位、水準変位、平面性変位の軌道検測データ及び列車動揺の加速度データ並びにレール凹凸データを含む」ものを採用することは、当業者にとって適宜選択し得た設計事項にすぎない。
したがって、引用発明、周知技術1及び技術常識3に基づいて、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
軌道設備の異常の有無を診断するために、現走行データをこれまでの走行データ履歴と比較して、その差分を求め、該差分が大きい場合は異常が発生している可能性があると分析することは、周知の技術であるから(前記(2)カ(イ)周知技術2を参照)、引用発明の「異常値を示した軌道Rの位置」を急進箇所として抽出する際、上記周知技術2を適用することにより、取得時期又は取得時間の古い基準データと、取得時期又は取得時間の新しいデータ間の波形レベルの差分データを求めることで特徴変化箇所を抽出し、急進又は異常か否かの判別を行うようにして、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(ウ)相違点3について
入力データとマッチング用データの正規化相互相関係数を用いたパターンマッチングにより位置ずれ量を検出する方法において、正規化相互相関係数は、両データ間の相互相関関数を算出する区間のそれぞれの標準偏差の積で除したものであり、2つのパターンの相関が高ければ1.0に近づき、低ければ−1.0に近づくものであり、マッチング用データに対して、入力データの位置ずれを変化させたときの正規化相互相関係数の値を相関値として算出し、位置ずれを変化させることのできる範囲のすべてについて位置をずらしたときの相関値マップを得て、相関値マップの相関値が最大である位置を位置ずれ量として検出することは、周知の技術である(前記(2)カ(ウ)周知技術3を参照)。
ここで、上記周知技術3は、位置ずれ量を検出するための一般的手法として、様々な分野に広く適用可能なものであるから、引用発明のマッチング手法による位置補正において、上記周知技術3を適用することにより、波形データ間の正規化相互相関係数を用いたパターンマッチングによる位置補正を行って、前記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(エ)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果は、引用発明、周知技術1〜3及び技術常識1〜3から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1〜3及び技術常識1〜3に基づいて当業者が容易になし得たものである。

(4) 請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書において次の主張をしている(下線は当審が付与した。以下同様である。)。
「4 本願発明と引用例に記載の発明との対比
(1) 引用文献1、3及び4に記載された発明を検討すると、引用文献1、3及び4に記載された発明はシンプレックス法を用いるマッチング手法を用いているに対し、本願発明は、位置ずれ量の判定では、相互相関係数の探索を総当たりで最大となる位相を探索している点で相違している。
また、位置ずれ量の判定において、相互相関係数の探索を総当たりで行う点は、引用文献1,3及び4に記載も示唆もされていない。
さらに、引用文献2に記載された発明も上述した引用文献1と同様に、本願請求項1に係る発明の特徴部分について記載も示唆もされていない。」

イ しかしながら、前記(3)イ(ウ)において説示したとおり、入力データとマッチング用データの正規化相互相関係数を用いたパターンマッチングにより位置ずれ量を検出する方法において、位置ずれを変化させることのできる範囲のすべてについて位置をずらしたときの相関値マップを得て、相関値マップの相関値が最大である位置を位置ずれ量として検出することは、周知の技術であるから(周知技術3参照)、位置ずれ量の判定において、相互相関係数の探索を総当たりで最大となる位相を探索する点は、格別のものではない。
よって、請求人の上記主張により当審の判断が左右されることはない。

(5) 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1〜8に係る発明は、令和2年9月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)において特定されるとおりである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。
理由2(進歩性
本願発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開2015−51674号公報
引用文献3:特開2008−148466号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2001−267216号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、[引用発明]において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる(第2の2(2)イを参照。)。
また、技術常識及び周知技術についても、[技術常識1]、[技術常識2]、[技術常識3]、[周知技術1]、[周知技術2]、[周知技術3]において認定したとおりである(第2の2(2)エ、カを参照。)。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「高低変位・左、高低変位・右、通り変位・左、通り変位・右、軌間変位、水準変位、平面性変位」が、「軌道検測データ」であるという限定を省き、本件補正発明の「レール凹凸」が「レール凹凸データ」であるという限定を省き、本件補正発明の「詳細位置補正工程」で用いられる「前記基準データ及び前記修正対象データの相互相関係数」が、「両波形データ間の相互相関関数を算出する区間の前記基準データと前記修正対象データの標準偏差の積で除し、正規化した値(−1,1)の範囲を取り得る値」であるという限定を省き、本件補正前の「詳細位置補正工程」で行われる「位置補正」が、「前記基準データに対して、前記修正対象データの位置ずれ量を変化させながら、総当たりで前記相互相関係数が最大となる位置ずれ量を算出すること」であるという限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2において説示したとおり、引用発明、周知技術1〜3及び技術常識1〜3に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用発明、周知技術1〜3及び技術常識1〜3に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-11-29 
結審通知日 2021-11-30 
審決日 2021-12-13 
出願番号 P2016-202862
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
P 1 8・ 575- Z (G01B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 濱野 隆
濱本 禎広
発明の名称 波形データの急進箇所抽出処理方法及び急進箇所抽出処理システム  
代理人 特許業務法人 インテクト国際特許事務所  
代理人 石橋 良規  
代理人 特許業務法人 インテクト国際特許事務所  
代理人 石橋 良規  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ