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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G16H |
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管理番号 | 1382232 |
総通号数 | 3 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-04-02 |
確定日 | 2022-02-28 |
事件の表示 | 特願2019− 15916「情報処理システム、その制御方法、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月30日出願公開、特開2019− 83054、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成26年8月1日に出願した特願2014−158226号の一部を平成31年1月31日に新たな特許出願としたものであって,平成31年2月26日に手続補正書が提出され,令和2年5月27日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年7月27日に意見書・手続補正書が提出され,令和2年12月25日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和3年4月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年12月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.(進歩性)本願請求項1〜9(令和2年7月27日提出の手続補正書で補正された請求項1〜9)に係る発明は,以下の引用文献1〜3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2004−305387号公報 2.特開2006−61387号公報(周知技術を示す文献) 3.国際公開第2012/124265号(周知技術を示す文献;新たに引用された文献) 第3 本願発明 本願請求項1〜8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」〜「本願発明8」という。)は,令和3年4月2日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 受け付けた読影の依頼に関する依頼情報を管理する情報処理システムであって, 前記依頼情報の受付担当であるユーザが操作する情報処理装置に,読影医に未割り当ての依頼情報の総数に関する情報と,依頼情報が割り当てられた読影医による読影の進捗状況と,を表示させる表示制御手段を備えることを特徴とする情報処理システム。 【請求項2】 前記進捗状況は,読影待ち,読影中のうち少なくとも1つのステータスを含み, 前記表示制御手段は,依頼情報が割り当てられた読影医ごとに,該読影医に割り当てられた前記ステータスごとの依頼情報の数に関する情報を前記情報処理装置に表示させることを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。 【請求項3】 前記進捗状況は,読影待ち,読影中のうち少なくとも1つのステータスを含み, 前記表示制御手段は,複数の読影医に割り当てた依頼情報において,前記ステータスごとの依頼情報の総数に関する情報を前記情報処理装置に表示させることを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理システム。 【請求項4】 前記表示制御手段は,数直線とグラフとを用いて,読影医に未割り当ての依頼情報の総数に関する情報と,依頼情報が割り当てられた読影医による読影の進捗状況と,を前記情報処理装置に表示させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理システム。 【請求項5】 前記依頼情報の数に応じて前記数直線の値を決定する決定手段をさらに備え, 前記表示制御手段は,前記決定手段で決定した前記値を用いて前記数直線を前記情報処理装置に表示させることを特徴とする請求項4に記載の情報処理システム。 【請求項6】 前記表示制御手段は前記情報処理装置に,読影医に未割り当ての依頼情報の総数に関する情報と,依頼情報が割り当てられた読影医による読影の進捗状況と,を同一画面で表示させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理システム。 【請求項7】 受け付けた読影の依頼に関する依頼情報を管理する情報処理システムの制御方法であって, 前記依頼情報の受付担当であるユーザが操作する情報処理装置に,読影医に未割り当ての依頼情報の総数に関する情報と,依頼情報が割り当てられた読影医による読影の進捗状況と,を表示させる表示制御工程を含むことを特徴とする情報処理システムの制御方法。 【請求項8】 コンピュータを,請求項1乃至6のいずれか1項に記載の情報処理システムとして機能させるためのプログラム。」 第4 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献に記載されている事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。なお,下線は,当審が付与した。 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら,従来のシステムにおける画像検索方法(例えば,特許文献1)においては,自分の部署の画像ワークステーションに届いた医用画像について表示を行い,その中から所望の医用画像の検索して読影を行っていたため,自分の処理すべき医用画像を的確に把握することができなかった。つまり,到着画像リストには,他者が読影を行うべきリストも含まれているため,自分が読影・処理すべき医用画像の総数を的確に把握することができず,正確な業務計画を立てることができなかった。また,リストから自分が読影を行うべき医用画像を見落としてしまう場合もあった。或いは,到着画像リストには,識別番号,患者名,撮影装置等の付帯情報が表示されるのみで,医用画像に対する関連画像の有無等の詳細な情報は表示されないため,全体的な到着画像リストと詳細な情報を同時に把握することができなかった。 【0008】 本発明の課題は,自己の処理すべき医用画像を的確に把握させるとともに,読影を行っている医用画像に関する詳細な情報を容易に取得可能な表示方法及び医用画像表示装置を提供することである。」 「【0019】 まず,本実施の形態の構成を説明する。 図1は,本発明に係る医用画像表示システム100のシステム構成を示す概念図である。図1に示すように,医用画像表示システム100は,医用画像を表示して画像処理を行う医用画像表示装置1と,患者に放射線を照射して医用画像の撮影を行う医用画像撮影装置2(例えば,X線撮影装置,CR装置),放射線エネルギーを蓄積した輝尽性蛍光体から医用画像を読み取る医用画像読取装置3,取得された医用画像を撮影オーダ情報とともに管理する医用画像データベース(DB)4等から構成されている。 【0020】 この医用装置管理システム100は,複数台の医用画像表示装置1と,医用画像撮影装置2と,医用画像読取装置3と,医用画像DB4と,がネットワークNを経由してデータの送受信及び入出力が可能となるように接続され,診療に利用する医用画像の取得,蓄積,利用,管理を行うシステムである。なお,各装置の設置台数は図示した例に限定されず,任意に設置可能である。 【0021】 ネットワークNは,病院等の建物内,又は病院間に構築されたLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の情報通信網である。具体的には,USB(Universal Serial Bus),RS−232,SS(Single Star)無線,PHS回線等により構成されている。ここで,回線形態は,環形として図示したが線形としても良く,回線形態は任意である。また,各装置間の接続は有線,無線を問わない。ただし,情報管理の信頼性の観点から,特定の利用者のみがアクセス可能なセキュリティが確保されているネットワークであることが望ましい。 【0022】 次に,本発明の主要な構成要素である医用画像表示装置1について説明する。 図2は,本実施の形態における医用画像表示装置1の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように,医用画像表示装置1は,CPU11,入力部12,表示部13,通信制御部14,RAM15,記憶装置16等を備えて構成され,各部はバス17により接続されている。」 「【0031】 また,撮影オーダ情報には,読影を行うべき読影医を指定する読影医IDが付帯されている。この読影医IDは,撮影を特定するために一義的に割り当てられる識別情報であり,例えば,「yamada1234」等である。つまり,医用画像の管理者により,予めその日読影すべき医用画像の撮影オーダ情報に読影医IDが付帯され,この読影医IDに基づいて,各読影医にその日読影すべき医用画像がノルマとして振り分けられ,医用画像DB4から対応する医用画像及び撮影オーダ情報が医用画像表示装置1に送信される。 【0032】 次に,本実施の形態の動作を説明する。 なお,後述するフローチャートに記述されている各機能を実現するためのプログラムはコンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形態で医用画像表示装置1の記憶装置16に格納されており,医用画像表示装置1のCPU11は,当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。 【0033】 図3は,医用画像表示装置1のCPU11により実行される医用画像表示処理を示すフローチャートである。図3に示すように,CPU11は,入力部12を介して,読影医から読影リストの表示指示が入力されると(ステップS1),読影医を識別するための読影医IDを入力させる(ステップS2)。次いで,CPU11は,入力された読影医IDを医用画像DBに送信し(ステップS3),該当する読影医IDに割り当てられた医用画像及び撮影オーダ情報を医用画像DB4から受信する(ステップS4)。 【0034】 続いて,CPU11は,受信した医用画像及び撮影オーダ情報を記憶装置16に記憶させる(ステップS5)。また,CPU11は,撮影オーダ情報を取得して,撮影オーダ情報に基づいて読影リストを作成する(ステップS6)。ここで,読影リストは,入力された読影医IDに割り当てられたその日読影すべき医用画像を患者情報に基づいて一覧表示するためのリストである。CPU11は,作成した読影リストを医用画像の読影すべき順番に応じて表示部13に表示させるとともに,先頭に表示される患者情報については,患者情報に対応する医用画像の関連情報を表示させる(ステップS7)。」 (2)引用文献1に記載された発明 上記(1)の記載から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。 医用画像を表示して画像処理を行う医用画像表示装置1と,取得された医用画像を撮影オーダ情報とともに管理する医用画像データベース(DB)4等から構成される医用画像表示システム100であって(【0019】), 複数台の医用画像表示装置1と,医用画像DB4とがネットワークNを経由してデータの送受信及び入出力が可能となるように接続され(【0020】),ネットワークNは,病院等の建物内,又は病院間に構築されたLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の情報通信網であり(【0021】), 医用画像表示装置1は,CPU11,表示部13等を備えて構成され(【0022】), 医用画像表示装置1のCPU11によって実行される医用画像表示処理によって, 読影医から読影リストの表示指示が入力されると,読影医を識別するための読影医IDを入力させ,次いで,入力された読影医IDを医用画像DBに送信し,該当する読影医IDに割り当てられた医用画像,及び,読影を行うべき読影医を指定する読影医IDが付帯されている撮影オーダ情報を医用画像DB4から受信し(【0031】【0033】), 撮影オーダ情報を取得して,撮影オーダ情報に基づいて読影リストを作成し,作成した読影リストを医用画像の読影すべき順番に応じて表示部13に表示させる(【0034】), 医用画像表示システム100。 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところで,緊急の読影依頼は,上記システム等を利用すれば,直ちに医師に通知され,読影診断が行われるようになっているが,通常の読影依頼に対する診断は,担当する医師が依頼の件数や依頼された日時を把握して処理する必要がある。 【0005】 読影診断は,画像の微妙な濃淡で示される病変を見分けて診断するものであるため,大量の件数の読影を続けて行うと,目の疲れ等が生じ,診断効率や診断精度の低下につながってしまう。そのため,読影診断は,診断精度が維持できるペースで行われることが望ましい。 【0006】 しかしながら,医師は,読影診断のみならず,診察を始めとする他の業務を担当している場合が多い。そのため,読影依頼の状況を把握できず,処理しきれないほどの大量の読影件数が知らないうちにたまってしまったり,読影依頼から長時間経過してしまったりすることがあった。 【0007】 例えば,上記特許文献1の通知システム等を用いて読影依頼が入る度に通知を行えば医師は読影依頼の状況を把握できるが,緊急でない読影依頼に対しても通知を行うと,緊急時との区別がつかず,また,他の優先すべき業務の妨げとなり,1日の業務を効率的に行うことができないという問題が生じる。 【0008】 本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり,医師が医用画像の読影診断及び他の業務を効率的に行うことができるようにすることを目的とする。」 「【0046】 読影医情報ファイル251は,読影医IDと,その読影医IDで特定される読影医に対応する記憶部25のデータ格納領域を示す情報(例えば,ディレクトリ名,フォルダ名等)と,その読影医IDで特定される読影医が所持する携帯端末4を識別するための端末番号とを対応付けて記憶する。 基準値設定ファイル252は,読影医毎に設定された未読影の画像データ数の基準値,即ち,基準データ数の値を,その読影医を識別するための読影医IDと対応付けて記憶する。 通知項目設定ファイル253は,読影医毎に設定された携帯端末4における通知項目を読影医IDと対応付けて記憶する。携帯端末4における通知項目とは,後述する通知情報送信処理において,未読影の画像データ数が上述した基準値設定ファイル252で設定された基準データ数を超えた場合に,読影医情報ファイル251において読影医IDに対応付けられた端末番号の携帯端末4に表示部43の表示画面上に表示する項目である。通知項目としては,例えば,読影依頼がたまっている旨,読影依頼数,主な検査種別,最も古い読影依頼の日時,依頼者等が挙げられる。」 「【0052】 次に,本実施の形態の動作について説明する。 図3は,管理サーバ2のCPU21により実行される読影依頼受付処理を示すフローチャートである。CPU21は,記憶部25に記憶された読影依頼受付処理プログラムとの協働によるソフトウエア処理により,当該処理を実行する。 【0053】 第1の通信制御部26を介して,モダリティ1から送信された読影依頼としての医用画像の画像データ及びその付帯情報が受信されると(ステップS1),受信された画像データ及び付帯情報に受信日時の情報及び未読影であることを示すステータス情報が対応付けられ,画像DB2aの,受信された付帯情報に含まれる読影医IDに対応するデータ格納領域に,画像データ,付帯情報,受信日時情報及びステータス情報が対応付けて記憶される(ステップS2)。 【0054】 上記処理により,読影医別に読影依頼が受け付けられる。画像データに対応付けられた受信日時の情報は,その画像データが読影依頼された日時を示す情報である。 【0055】 また,管理サーバ2のCPU21は,図4に示す通知情報送信処理を実行する。CPU21は,記憶部25に記憶された通知情報送信処理プログラムとの協働によるソフトウエア処理により,所定時間毎に当該処理を実行し,通知情報送信手段を実現する。 【0056】 まず,画像DB2aの読影医別のデータ格納領域が1つ1つ順次検索され(ステップS11),検索されたデータ格納領域に記憶されている画像データの中から,ステータス情報が「未読影」の画像データ数がカウントされる(ステップS12)。次いで,基準値設定ファイル252から当該データ格納領域に対応する読影医IDに応じた基準データ数が読み出され,カウントされた未読影の画像データ数が予め設定された基準データ数を超えているか否かが判断される(ステップS13)。未読影の画像データ数が予め設定された基準データ数を超える場合は(ステップS13;YES),読影を促す通知情報として,通知項目設定ファイル253で設定されている通知項目の情報が取得され(ステップS14),読影医情報ファイル251において当該データ格納領域に対応する読影医IDに対応している端末番号の携帯端末4に送信される(ステップS15)。画像DB2aに形成されている読影医別のデータ格納領域の全ての領域について上述のステップS11〜S15の処理が実行され,全ての読影医の領域について終了すると(ステップS16;YES),本処理は終了する。 【0057】 携帯端末4のCPU41は,通知情報受信手段としての通信制御部46により管理サーバ2から送信された通知項目の情報が受信されると,受信された情報を表示部43の表示画面上に表示する。 【0058】 上記通知情報送信処理により,読影医別にカウントされる未読影の画像データ数が予め設定された基準データ数を超えた場合は,その読影医が所持する携帯端末4に,設定された通知項目の情報が読影を促す通知情報として送信され,携帯端末4の表示部43を介して読影医に通知される。」 3 引用文献3ついて 原査定において周知文献として引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。 「[0001] 本発明は,スケジュール提示装置に関し,特に,検査等の医療行為が行われる設備のスケジュールを管理するための装置に関する。」 「[0020] はじめに,本実施例の概要を説明する。 本実施例にかかるスケジュール提示装置は,各検査について,検査の実施時間や検査を実施する検査室を定めた検査スケジュールを,直感的に把握しやすい形式で画面に表示し,検査管理担当者などのユーザに提示する。なお,本明細書において,「検査実施時間」とは,検査開始時刻,検査の開始時刻および検査の所要時間,または,検査開始時刻および検査終了時刻をいう。 本実施例にかかるスケジュール提示装置は,さらに,検査当日に連絡を受けた検査のキャンセルや,検査の進行状況,検査を受ける被検者の来院状況などを,検査スケジュール画面に随時反映させる。また,緊急に入った検査オーダなど,検査室や時間が割り当てられていない未割り当て検査にも,同じ画面中に表示させる。 [0021] 検査スケジュール担当者等のユーザは,本スケジュール提示装置が表示させる検査スケジュール画面を確認し,未割り当ての検査を,空いている検査室に割り当てるなど,最新の状況を考慮して,スケジュールを随時変更する。 この際,本実施例にかかるスケジュール提示装置は,未割り当ての検査について,割り当て可能な検査室や時間帯を強調表示するなど,ユーザのスケジュール変更を支援するための情報を提示し,また,ユーザが簡単な操作でスケジュール変更を行うことを可能とする。 [0022] また,本実施例にかかるスケジュール提示装置は,ユーザが指定した条件にしたがって,一件または複数の未割り当ての検査を自動で空いている検査室および時間帯に割り当てることもできる。」 「[0040] 図3は,画面生成部130が生成し,表示装置50に表示される検査スケジュール画面200の例を示す。検査スケジュール画面200は,スケジュール表示領域202と,未割当検査表示領域204とを含む。図3のスケジュール表示領域202においては,各検査室を表す矩形がマトリクス状に並べられ,それぞれの検査室を表す矩形の中に,検査室に割り当てられている検査を表示する予定検査表示枠が三つ設けられ,その検査室で実施する予定の検査,または,実施中の検査のうち,最先の三件の検査情報がそれぞれ示されている。 そして,各検査室について,検査中の検査を含めて,その検査室に割り当てられている検査数を,「残8」「残2」などの表示により示している。」 「[0045] 検査情報は,マークを用いて表示させてもよい。例えば,図3の例では,「被検者到着」「被検者未到着」「検査中」「検査終了」などのステータス情報を,それぞれ「到」,「未」,「検査」,「済」などの漢字一文字を円で囲ったマークで表示している。 また,検査情報を,各検査を示す各図形の色で表してもよく,検査を示す各図形の色とマークやテキスト表示の組み合わせにより,表示してもよい。 これにより,画面の限られたスペース内により多くの情報を,直感的にわかりやすい形で提示することができる。 [0046] 未割当検査表示領域204には,時間や検査を実施する検査室が割り当てられていない検査の検査情報が表示される。」 図3 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)本願発明1と引用発明との対比 ア 引用発明の「撮影オーダ情報」は,読影リストを作成するために用いられる情報であって,読影のオーダとして受け付けられていることは明らかであり,さらに,ネットワークNは,病院間に構築されたLANを含むことから,他の病院からの読影のオーダを受け付けることも含まれていることは明らかであるから,本願発明1の「受け付けた読影の依頼に関する読影依頼情報」に相当する。そして,引用発明の「医用画像表示システム100」は,取得された医用画像を撮影オーダ情報とともに管理する医用画像データベース(DB)4を構成に含む点で,後述する相違点は別にして,本願発明1の「受け付けた読影の依頼に関する依頼情報を管理する情報処理システム」に相当する。 イ 引用発明の撮影オーダ情報は,読影を行うべき読影医を指定する読影医IDが付帯されていることから,引用発明の「読影医」と,本願発明1の「前記依頼情報の受付担当であるユーザ」とは,「前記依頼情報の担当医療従者」である点で共通する。引用発明の読影医が読影医IDを入力する「医療画像表示装置1」は,本願発明1の「前記依頼情報の受付担当であるユーザが操作する情報処理装置」と,「前記依頼情報の担当医療従者が操作する情報処理装置」である点で共通する。 ウ 引用発明の「読影リスト」と,本願発明1の「読影医に未割り当ての依頼情報の総数に関する情報と,依頼情報が割り当てられた読影医による読影の進捗状況」は,「読影に関する情報」である点で共通する。 エ 引用発明の,医用画像表示装置1の「CPU11」によって実現される,作成した読影リストを医用画像の読影すべき順番に応じて医用画像表示装置1の表示部13に表示させる機能は,本願発明1の「表示制御手段」が「前記依頼情報の受付担当であるユーザが操作する情報処理装置に,読影医に未割り当ての依頼情報の総数に関する情報と,依頼情報が割り当てられた読影医による読影の進捗状況と,を表示させる」機能と,「情報処理装置が,読影に関する情報を表示する」機能を有する点で共通する。 オ 以上より,本願発明1と引用発明との一点及び相違点は,次のとおりである。 <一致点> 受け付けた読影の依頼に関する依頼情報を管理する情報処理システムであって, 前記依頼情報の担当医療従者が操作する情報処理装置が,読影に関する情報を表示する, 情報処理システム。 <相違点> (相違点1) 依頼情報の担当医療従者が,本願発明1は,「受付担当」であるのに対し,引用発明は,「読影医」である点。 (相違点2) 情報処理装置に表示される読影に関する情報が,本願発明1は,「読影医に未割り当ての依頼情報の総数に関する情報と,依頼情報が割り当てられた読影医による読影の進捗状況」であるのに対し,引用発明は,医用画像の読影すべき順番に応じて表示部13に表示させる「読影リスト」である点。 (相違点3) 読影に関する情報を表示することは,本願発明1では,情報処理システムの「表示制御手段」によって,「情報処理装置」に対して実現されるのに対し,引用発明では,医用画像表示装置1の「CPU11」によって,医用画像表示装置1の「表示部13」に対して実現される点。 (2)相違点の判断 事案にかんがみ,相違点2から検討をする。 引用文献2には,影医別に格納されている画像データの中からステータス情報が未読影の画像データ数がカウントするとの技術的事項が記載されており,上位概念的に進捗管理であるといえるものの,「読影医に未割り当ての依頼情報の総数に関する情報と,依頼情報が割り当てられた読影医による読影の進捗状況」を端末装置に表示するものではなく,情報処理装置にこのような情報を表示させることは,記載も示唆もされていない。 引用文献3には,検査室ごとに割り当てられた検査の進捗状況と,検査室が割り当てられていない検査の検査情報を表示する技術的事項が記載されている。しかしながら,引用文献3には,「読影医に未割り当ての依頼情報の総数に関する情報と,依頼情報が割り当てられた読影医による読影の進捗状況」を表示することは記載も示唆もされていない。 このため,引用発明に,引用文献2及び3に記載された技術的事項を適用したとしても,上記相違点2の構成には至らない。 したがって,上記相違点1及び3について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2及び3に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 そして,相違点2の構成とすることで,読影の依頼件数に関する情報を,該情報を閲覧するユーザの属性に応じた適切な表示形態で提示することができる(本願明細書【0008】)という,格別顕著な効果を奏するものである。 (3)小括 以上より,本願発明1は,引用発明,引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2〜6について 本願発明2〜6も,本願発明1の上記相違点2と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2及び3に記載された技術的事項に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本願発明7,8について 本願発明7は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1の相違点2に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2及び3に記載された技術的事項に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 本願発明8は,本願発明1〜6いずれかに1つの発明に対応するプログラムの発明であり,本願発明1の相違点2に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2及び3に記載された技術的事項に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 原査定について 本願発明1〜8は「情報処理装置に,読影医に未割り当ての依頼情報の総数に関する情報と,依頼情報が割り当てられた読影医による読影の進捗状況と,を表示させる」という事項を有するものであり,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1〜3に基づいて,容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって,原査定の理由(特許法29条2項)を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-02-09 |
出願番号 | P2019-015916 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G16H)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
相崎 裕恒 松田 直也 |
発明の名称 | 情報処理システム、その制御方法、およびプログラム |
代理人 | 特許業務法人大塚国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人大塚国際特許事務所 |