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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16H |
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管理番号 | 1382286 |
総通号数 | 3 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-06-01 |
確定日 | 2022-02-22 |
事件の表示 | 特願2018−169335「レンジ切替装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月19日出願公開、特開2020− 41601、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件に係る出願は、平成30年9月11日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年6月15日付け:拒絶理由通知書 令和2年8月20日 :意見書、手続補正書の提出 令和3年2月26日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。) 令和3年6月 1日 :審判請求書の提出 第2 原査定の概要 原査定の概要は以下のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1〜4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2005−7993号公報 第3 本願発明 本願の請求項1〜4に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明4」という。)は、令和2年8月20日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 ホームポジション判定領域と前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域との間の移動経路上にニュートラルポジション判定領域が配置されているシフトゲート上を移動可能にされ、非操作時に自動的にホームポジション判定領域に戻るモーメンタリ式のセレクトレバーと、 前記セレクトレバーの位置を検出する位置検出手段と、 前記位置検出手段により検出されたセレクトレバーの位置の時間変化に応じて、前記セレクトレバーの移動速度を求める移動速度取得手段と、 前記移動速度取得手段により求められたセレクトレバーの移動速度に基づいて、前記セレクトレバーが前進走行ポジション判定領域又は後進走行ポジション判定領域からニュートラルポジション判定領域側に移動する際に、該ニュートラルポジション判定領域を通過するために要すると予想される予想通過時間を求める通過時間取得手段と、 前記通過時間取得手段により求められた予想通過時間に応じて、ニュートラルポジションが選択されているか否かを判定するニュートラル判定時間を設定する判定時間設定手段と、 前記セレクトレバーがニュートラルポジション判定領域内に位置している時間を計時する計時手段と、 前記計時手段により計時された計時時間が、前記ニュートラル判定時間以上となった場合に、ニュートラルポジションが選択されていると判定する判定手段と、を備えることを特徴とするレンジ切替装置。 【請求項2】 前記位置検出手段は、前記セレクトレバーの車幅方向の位置を検出する第1位置検出手段と、前記セレクトレバーの車両前後方向の位置を検出する第2位置検出手段と、を有し、前記セレクトレバーの車幅方向の位置及び車両前後方向の位置から前記セレクトレバーの2次元上の位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のレンジ切替装置。 【請求項3】 前記移動速度取得手段は、前記セレクトレバーが前進走行ポジション判定領域又は後進走行ポジション判定領域を出てから、ニュートラルポジション判定領域に入るまでに要した時間と、前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域とニュートラルポジション判定領域との間の距離とに基づいて、前記セレクトレバーの移動速度を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンジ切替装置。 【請求項4】 前記判定時間設定手段は、雰囲気温度を考慮して、前記ニュートラル判定時間を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンジ切替装置。」 第4 引用文献に記載された事項及び引用発明 1.引用文献1に記載された事項及び引用発明について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審において付与した。以下同様。)。 (1)「【0041】 図2〜図5を参照して、図1に示すシフト切替装置1100について説明する。本実施の形態に係るシフト操作システム100のシフト切替装置1100は、モーメンタリ方式のシフトレバーを有するものである。 【0042】 図2に示すように、シフト切替装置1100は、シフトレバー1102と、シフトレバー1102が摺動される第1の溝1104と、シフトレバー1102が摺動される第2の溝1106と、シフトレバー1102が摺動される第3の溝1108と、シフトレバー1102が摺動される第4の溝1110とから構成される。」 (2)「【0044】 第2の溝1106に沿ってシフトレバー1102がその終端(右端)まで到達して、予め定められた時間以上、シフトレバー1102が運転者により保持されることによりニュートラルポジションに設定される。このとき、シフトレバー1102は、矢印1120で示すように移動される。 【0045】 第2の溝1106に沿ってシフトレバー1102がその終端(右端)まで到達して、さらに第3の溝1108に沿ってシフトレバー1102がその終端(上端)まで到達して、予め定められた時間以上、シフトレバー1102が運転者により保持されることにより後進走行ポジションに設定される。このとき、シフトレバー1102は、矢印1122で示すように移動される。 【0046】 第2の溝1106に沿ってシフトレバー1102がその終端(右端)まで到達して、さらに第4の溝1110に沿ってシフトレバー1102がその終端(下端)まで到達して、予め定められた時間以上、シフトレバー1102が運転者により保持されることにより前進走行ポジションに設定される。このとき、シフトレバー1102は、矢印1124で示すように移動される。」 (3)「【0049】 図3に、中立位置からのニュートラルポジション位置を経由する場合の3つのパターンについて説明する。図3に示すように、中立位置から前進走行ポジション位置、ニュートラルポジション位置および後進走行ポジション位置に移動する場合には、いずれの場合もニュートラルポジション位置を経由する。 【0050】 図4に示すように、前進走行ポジション位置から中立位置に戻る場合(運転者が前進走行ポジションへのシフト操作を終えた後シフトレバー1102から手を離した場合)、矢印1125で示すように、前進走行ポジション位置からニュートラルポジション位置を経由して中立位置にシフトレバー1102が戻る。 【0051】 図5に示すように、後進走行ポジション位置から中立位置に戻る場合(運転者が後進走行ポジションへのシフト操作を終えた後シフトレバー1102から手を離した場合)、矢印1123で示すように、後進走行ポジション位置からニュートラルポジション位置を経由して中立位置にシフトレバー1102が戻る。 【0052】 図2〜図5に示したように、シフトレバー1102はモーメンタリ方式のシフトレバーであって、運転者がシフトレバー1102から手を離した状態では、常に中立位置に存在する。たとえば運転者がニュートラルポジションの状態から前進走行ポジションの状態にシフトしたい場合には、図2の矢印1124に示すようにシフトレバー1102をニュートラルポジション位置を経由して第2の溝1106および第4の溝1110を経由してシフトレバー1102を第4の溝1110の下端に予め定められた時間以上、保持してからシフトレバー1102を離す。 【0053】 予め定められた時間以上、前進走行ポジション位置にシフトレバー1102が保持されていることにより運転者の前進走行ポジションへのシフト要求が認識される。その後、運転者がシフトレバー1102から手を離すと図4の矢印1125に示すように、シフトレバー1102は、前進走行ポジション位置からニュートラルポジション位置を経由して中立位置に戻る。」 (4)「【0056】 図7に、シフト操作システムにおけるニュートラルポジション位置経由前の状態とニュートラルポジション認識時間との関係を表わすマップを示す。図7に示すように、ニュートラルポジション経由前のシフトレバーの位置またはポジション位置により、ニュートラルポジションの認識時間が異なる。 【0057】 ニュートラルポジション位置経由前にシフトレバー1102が中立位置にあった場合のニュートラルポジション認識時間がTN(1)と、ニュートラルポジション位置経由前のシフトレバー1102の位置が前進走行ポジション位置や後進走行ポジション位置の場合のニュートラルポジション認識時間TN(2)とがそれぞれ別々に設定される。 【0058】 なお、ニュートラルポジション認識時間TN(1)は、ニュートラルポジション認識時間TN(2)よりも小さく設定されている。これは、中立位置からニュートラルポジション位置にシフトレバー1102が運転者により移動されたときは、ニュートラルポジションであることをすぐに認識したいことに対して、前進走行ポジション位置や後進走行ポジション位置からニュートラルポジション位置を経由して中立位置にシフトレバー1102が自動的に戻るときにはニュートラルポジションであることを認識するようにさせたくないためである。そのため、前進走行ポジション位置や後進走行ポジション位置から中立位置への戻りの場合には、ニュートラルポジション認識時間が長く設定されている。 【0059】 図8を参照して、第1の実施の形態に係るシフト操作システムのシフトコントロールECU1000で実行されるプログラムの制御構造について説明する。 【0060】 ステップ(以下、ステップをSと略す。)1000にて、シフトコントロールECU1000は、シフトレバー1102の位置を検知する。S1002にて、シフトコントロールECU1000は、シフトレバー1102の位置を記憶する。S1004にて、シフトコントロールECU1000は、シフトレバー1102がニュートラルポジション位置にあるか否かを判断する。シフトレバー1102がニュートラルポジション位置にある場合には(S1004にてYES)、処理はS1006へ移される。もしそうでないと(S1004にてNO)、処理はS1008へ移される。 【0061】 S1006にて、シフトコントロールECU1000は、加算タイマをスタートさせる。S1008にて、シフトコントロールECU1000は、ニュートラルポジション以外のポジションを認識する。その後、処理はS1024へ移される。 【0062】 S1010にて、シフトコントロールECU1000は、記憶されたシフトレバー1102の位置が中立位置であるか否かを判断する。記憶されたシフトレバー1102の位置が中立位置であると(S1010にてYES)、処理はS1012へ移される。もしそうでないと(S1010にてNO)、処理はS1020へ移される。 【0063】 S1012にて、シフトコントロールECU1000は、加算タイマ値がTN(1)であるか否かを判断する。加算タイマ値がTN(1)であると(S1012にてYES)、処理はS1014へ移される。もしそうでないと(S1012にてNO)、処理はS1016へ移される。 【0064】 S1016にて、シフトコントロールECU1000は、シフトレバー1102がニュートラルポジション位置にあるか否かを判断する。シフトレバー1102がニュートラルポジション位置にあると(S1016にてYES)、処理はS1012へ移される。シフトレバー1102がニュートラルポジション位置にないと(S1016にてNO)、処理はS1018に移される。 【0065】 S1018にて、シフトコントロールECU1000は、ニュートラルポジション以外のポジションを認識する。その後、処理はS1024へ移される。 【0066】 S1020にて、シフトコントロールECU1000は、加算タイマ値がTN(2)であるか否かを判断する。加算タイマ値がTN(2)であると(S1020にてYES)、処理はS1014へ移される。もしそうでないと(S1020にてNO)、処理はS1022へ移される。 【0067】 S1022にて、シフトコントロールECU1000は、シフトレバー1102がニュートラルポジション位置であるか否かを判断する。シフトレバー1102がニュートラルポジション位置であると(S1022にてYES)、処理はS1020へ移される。もしそうでないと(S1022にてNO)、処理はS1008へ移される。 【0068】 S1024にて、シフトコントロールECU1000は、ECT_ECU2000に変速指令を出力する。また、シフト表示装置1200にポジションを表示するよう出力する。」 (5)「【0071】 シフトレバー1102の位置が検知される(S1000)と、シフトレバーの位置が記憶される(S1002)。このとき、シフトレバー1102の位置は中立位置として記憶される。シフトレバーが図2および図3に示す矢印1120に従ってニュートラルポジション位置まで移動されると(S1004にてYES)、加算タイマがスタートされる(S1006)。記憶されたシフトレバー1102の位置が中立位置であるため(S1010にてYES)、加算タイマ値がTN(1)になると(S1012にてYES)、ニュートラルポジションであると認識される(S1014)。」 (6)「【0084】 <第3の実施の形態> 以下、本発明の第3の実施の形態に係るシフト操作システムについて説明する。本実施の形態に係るシフト操作システムは、前述の第1の実施の形態に係るシフト操作システムおよび第2の実施の形態に係るシフト操作システムとは異なり、シフト切替装置の温度によって、ニュートラルポジション認識時間を変更する。」 (7)「【0087】 シフト切替装置1100は図2〜図5に示すように複数の溝を有し、その溝部をシフトレバー1102が摺動するため作動油が充填されている。この作動油は通常の作動油と同様に温度が高いと粘性が低く、温度が低いと粘性が高く、温度が低い場合にそのシフトレバー1102の移動が遅くなる。 【0088】 この状態を図11に示す。図11に示すように、横軸にシフト切替装置1100の雰囲気温度として、縦軸に前進走行ポジション位置または後進走行ポジション位置から中立位置に移動する場合のニュートラルポジション位置の経由時間を示す。シフト切替装置1100の雰囲気温度が低いほどシフト切替装置1100内に充填された作動油の温度が低く粘性が高いため、ニュートラルポジション位置を経由する時間が長くなる。 【0089】 そのため、図12に示すように、シフト切替装置1100の雰囲気温度が低いほどニュートラルポジション認識時間TN(2)を長く、シフト切替装置1100の雰囲気温度が高いほどニュートラルポジション認識時間TN(2)を短く設定する。 【0090】 このようにして、シフト切替装置1100の雰囲気温度に基づいてニュートラルポジション認識時間TN(2)を設定することにより、シフトレバーが前進走行ポジション位置や後進走行ポジション位置から中立位置へ移動された場合は中立位置に戻るための単なる通過としてニュートラルポジション位置が認識される。このときに、シフト切替装置1100の作動油の油温が低いとそのニュートラルポジション位置の経由時間が長くなるためニュートラルポジション認識時間TN(2)を長くしておくことにより、たとえ油温が低く作動油の粘性が高いためシフトレバーの移動速度が遅い場合、すなわち前進走行ポジション位置や後進走行ポジション位置からニュートラルポジション位置を経由して中立位置に戻る速度が遅い場合であっても、ニュートラルポジション位置は単なる通過として認識し、ニュートラルポジションへの変速が認識されることはない。」 (8)「【図2】 」 (9)上記(3)に摘記した段落【0049】の「中立位置から前進走行ポジション位置、ニュートラルポジション位置および後進走行ポジション位置に移動する場合には、いずれの場合もニュートラルポジション位置を経由する。」という記載、及び、上記(8)に摘記した【図2】から、第1の溝1104、第2の溝1106、第3の溝1108、第4の溝1110は、中立位置と前進走行ポジション位置及び後進走行ポジション位置との間の経路上にニュートラルポジション位置が配置されるように構成されているものと認められる。 (10)上記(4)に摘記したとおり、シフトコントロールECU1000は、シフトレバー1102の位置を検知するから、シフトコントロールECU1000には、シフトレバー1102の位置を検知する検知手段が備えられていると認められる。 (11)上記(4)に摘記したとおり、シフトコントロールECU1000は、S1004、S1016、S1022にて、シフトレバー1102がニュートラルポジション位置にあるか否かを判断し、S1008にて、ニュートラルポジション以外のポジションを認識するものであるから、第1の溝1104、第2の溝1106、第3の溝1108、第4の溝1110には、シフトレバー1102がニュートラルポジション位置、中立位置、前進走行ポジション位置及び後方走行ポジション位置のいずれかにあるかを判定するための領域が配置されているものと認められる。 摘記事項(1)〜(8)及び認定事項(9)〜(11)から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「シフトレバー1102がニュートラルポジション位置、中立位置、前進走行ポジション位置及び後方走行ポジション位置のいずれかにあるかを判定するための領域が配置され、中立位置と前進走行ポジション位置及び後進走行ポジション位置との間の経路上にニュートラルポジション位置が配置されるように構成された、第1の溝1104、第2の溝1106、第3の溝1108、第4の溝1110と、第1の溝1104、第2の溝1106、第3の溝1108、第4の溝1110に摺動し、運転者が手を離すと中立位置に自動的に戻るモーメンタリ方式のシフトレバー1102と、 シフトレバー1102の位置を検知する検知手段と、 ニュートラルポジション位置経由前にシフトレバー1102が中立位置にあった場合のニュートラルポジション認識時間TN(1)と、ニュートラルポジション位置経由前のシフトレバー1102の位置が前進走行ポジション位置や後進走行ポジション位置の場合のニュートラルポジション認識時間TN(2)とをそれぞれ別々に設定し、ニュートラルポジション認識時間TN(1)は、ニュートラルポジション認識時間TN(2)よりも小さく設定され、シフト切替装置1100の雰囲気温度が低いほどニュートラルポジション認識時間TN(2)を長く、シフト切替装置1100の雰囲気温度が高いほどニュートラルポジション認識時間TN(2)を短く設定する手段と、 シフトレバー1102がニュートラルポジション位置にある場合にスタートされる加算タイマと、 加算タイマ値がニュートラルポジション認識時間であるか否かを判断し、加算タイマ値がニュートラルポジション認識時間であると、ニュートラルポジションであると認識する手段と、を備えるシフト切替装置1100。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「中立位置」、「前進走行ポジション位置」、「後進走行ポジション位置」、「ニュートラルポジション位置」は、それぞれ、本願発明1の「ホームポジション」、「前進走行ポジション」、「後進走行ポジション」、「ニュートラルポジション」に相当する。 引用発明の「シフトレバー1102がニュートラルポジション位置、中立位置、前進走行ポジション位置及び後方走行ポジション位置のいずれかにあるかを判定するための領域」は、本願発明1の「ホームポジション判定領域」、「前進走行ポジション判定領域」、「後進走行ポジション判定領域」に相当し、引用発明の「中立位置と前進走行ポジション位置及び後進走行ポジション位置との間の経路上にニュートラルポジション位置が配置されるように構成された、第1の溝1104、第2の溝1106、第3の溝1108、第4の溝1110」は、本願発明1の「ホームポジション判定領域と前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域との間の移動経路上にニュートラルポジション判定領域が配置されているシフトゲート」に相当する。 引用発明の「シフトレバー1102」は、本願発明1の「セレクトレバー」に相当し、引用発明の「シフトレバー1102」が「第1の溝1104、第2の溝1106、第3の溝1108、第4の溝1110に摺動」することは、「シフトレバー1102」が「第1の溝1104、第2の溝1106、第3の溝1108、第4の溝1110」に沿って移動可能であることを意味するから、本願発明1の「セレクトレバー」が「シフトゲート上を移動可能にされ」ていることに相当する。また、引用発明の「運転者が手を離す」ことは、本願発明1の「非操作時」に相当し、引用発明の「シフトレバー1102」が「中立位置に自動的に戻る」ことは、本願発明1の「セレクトレバー」が「自動的にホームポジション判定領域に戻る」ことに相当する。 引用発明の「シフトレバー1102の位置を検知する検知手段」は、本願発明1の「前記セレクトレバーの位置を検出する位置検出手段」に相当する。 引用発明の「ニュートラルポジション認識時間」は、本願発明1の「ニュートラル判定時間」に相当し、引用発明の「ニュートラルポジション位置経由前にシフトレバー1102が中立位置にあった場合のニュートラルポジション認識時間TN(1)と、ニュートラルポジション位置経由前のシフトレバー1102の位置が前進走行ポジション位置や後進走行ポジション位置の場合のニュートラルポジション認識時間TN(2)とをそれぞれ別々に設定し、ニュートラルポジション認識時間TN(1)は、ニュートラルポジション認識時間TN(2)よりも小さく設定され、シフト切替装置1100の雰囲気温度が低いほどニュートラルポジション認識時間TN(2)を長く、シフト切替装置1100の雰囲気温度が高いほどニュートラルポジション認識時間TN(2)を短く設定する手段」は、「ニュートラルポジションが選択されているか否かを判定するニュートラル判定時間を設定する判定時間設定手段」という限りにおいて、本願発明1の「前記通過時間取得手段により求められた予想通過時間に応じて、ニュートラルポジションが選択されているか否かを判定するニュートラル判定時間を設定する判定時間設定手段」と一致する。 引用発明の「シフトレバー1102がニュートラルポジション位置にある場合にスタートされる加算タイマ」は、本願発明1の「前記セレクトレバーがニュートラルポジション判定領域内に位置している時間を計時する計時手段」に相当する。 引用発明の「加算タイマ値」は、本願発明1の「前記計時手段により計時された計時時間」に相当し、引用発明の「加算タイマ値がニュートラルポジション認識時間であるか否かを判断し、加算タイマ値がニュートラルポジション認識時間であると、ニュートラルポジションであると認識する手段」は、本願発明1の「前記計時手段により計時された計時時間が、前記ニュートラル判定時間以上となった場合に、ニュートラルポジションが選択されていると判定する判定手段」に相当する。 引用発明の「シフト切替装置1100」は、本願発明1の「レンジ切替装置」に相当する。 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「ホームポジション判定領域と前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域との間の移動経路上にニュートラルポジション判定領域が配置されているシフトゲート上を移動可能にされ、非操作時に自動的にホームポジション判定領域に戻るモーメンタリ式のセレクトレバーと、 前記セレクトレバーの位置を検出する位置検出手段と、 ニュートラルポジションが選択されているか否かを判定するニュートラル判定時間を設定する判定時間設定手段と、 前記セレクトレバーがニュートラルポジション判定領域内に位置している時間を計時する計時手段と、 前記計時手段により計時された計時時間が、前記ニュートラル判定時間以上となった場合に、ニュートラルポジションが選択されていると判定する判定手段と、を備えるレンジ切替装置。」 【相違点】 本願発明1では、「前記位置検出手段により検出されたセレクトレバーの位置の時間変化に応じて、前記セレクトレバーの移動速度を求める移動速度取得手段と、前記移動速度取得手段により求められたセレクトレバーの移動速度に基づいて、前記セレクトレバーが前進走行ポジション判定領域又は後進走行ポジション判定領域からニュートラルポジション判定領域側に移動する際に、該ニュートラルポジション判定領域を通過するために要すると予想される予想通過時間を求める通過時間取得手段」を備え、「判定時間設定手段」が、「前記通過時間取得手段により求められた予想通過時間に応じて、ニュートラルポジションが選択されているか否かを判定するニュートラル判定時間を設定する」のに対し、引用発明では、かかる構成を有していない点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 引用文献1には、引用発明が、ニュートラルポジション経由前のシフトレバー1102の位置、及び、シフト切替装置1100の雰囲気温度によって「ニュートラルポジション認識時間」を異ならせるものであることは記載されているものの、シフトレバー1102の移動速度を求め、求められた移動速度に基づいて、シフトレバー1102がニュートラルポジション位置を判定するための領域を通過するために要すると予想される時間を求め、求められた時間に応じて、「ニュートラルポジション認識時間」を設定することは、記載も示唆もされていない。 また、引用発明が、ニュートラルポジション経由前のシフトレバー1102の位置、及び、シフト切替装置1100の雰囲気温度を特定する際に、シフトレバー1102の移動速度を求めることを必要とするものではないことを鑑みれば、引用発明において、上記相違点に係る構成のようにすることが、当業者が適宜なし得る設計変更であるともいえない。 してみれば、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 したがって、本願発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2.本願発明2〜4について 本願発明2〜4は、本願発明1を減縮するものであって、本願発明1の「前記位置検出手段により検出されたセレクトレバーの位置の時間変化に応じて、前記セレクトレバーの移動速度を求める移動速度取得手段と、前記移動速度取得手段により求められたセレクトレバーの移動速度に基づいて、前記セレクトレバーが前進走行ポジション判定領域又は後進走行ポジション判定領域からニュートラルポジション判定領域側に移動する際に、該ニュートラルポジション判定領域を通過するために要すると予想される予想通過時間を求める通過時間取得手段」を備え、「判定時間設定手段」が、「前記通過時間取得手段により求められた予想通過時間に応じて、ニュートラルポジションが選択されているか否かを判定するニュートラル判定時間を設定する」点と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-02-07 |
出願番号 | P2018-169335 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F16H)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
間中 耕治 |
特許庁審判官 |
中村 大輔 平田 信勝 |
発明の名称 | レンジ切替装置 |
代理人 | 上田 和弘 |