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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1382295
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-15 
確定日 2022-03-08 
事件の表示 特願2017− 27351「RFIDタグ保持体およびRFIDタグ保持体用シート」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月23日出願公開、特開2018−133008、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成29年2月16日の出願であって,令和2年10月5日付けで拒絶の理由が通知され,同年11月27日に意見書とともに手続補正書が提出され,令和3年3月18日付けで拒絶査定(謄本送達日同年3月23日)がなされ,これに対して同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年7月27日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(令和3年3月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1−3
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.特開2007−122542号公報


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は,特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって,請求項1において,「前記第1保持パネルと前記第2保持パネルの接着に用いる糊付けパネルのみ」という事項,および,「金属面」に対して「着脱可能に」という事項を追加する補正,並びに,請求項2において,「糊付けパネル」に対して「三角形形状の」という事項および「のみ」との事項を追加するとともに,「金属面」に対して「着脱可能に」という事項を追加する補正は,特許請求の範囲の記載の減縮を目的としたものである。
また当該事項は,出願当初の明細書および図面に記載されている事項の範囲内のものであって,新規事項を追加するものではない。
そして,以下第4〜第6に示すように,補正後の請求項1〜2に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1〜2に係る発明(以下「本願発明1」〜「本願発明2」という。)は,令和3年6月15日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された,次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
RFIDタグを付設したタグパネルと,前記タグパネルと垂設している第1保持パネルと,前記タグパネルおよび前記第1保持パネルと垂設している第2保持パネルと,前記第1保持パネルと前記第2保持パネルの接着に用いる糊付けパネルのみを備え,前記RFIDタグの向きを縦向きまたは横向きいずれかにして着脱可能に金属面に貼り付けることができるように,前記第1保持パネルと前記第2保持パネルの両方にマグネットシートを付設したことを特徴とするRFIDタグ保持体。
【請求項2】
請求項1に記載したRFIDタグ保持体の組み立てに用いるシートであって,前記タグパネル,前記第1保持パネルおよび前記第2保持パネルに加え,前記第1保持パネルと前記第2保持パネルの接着に用いる三角形形状の糊付けパネルのみを備え,前記RFIDタグの向きを縦向きまたは横向きいずれかにして着脱可能に金属面に貼り付けることができるように,前記第1保持パネルと前記第2保持パネルの両方にマグネットシートを付設し,前記糊付けパネルの裏面に粘着層を形成したことを特徴とするRFIDタグ保持体用シート。」


第5 引用例,引用発明等

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2007−122542号公報(平成19年5月17日公開。以下,これを「引用例」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係るRFIDラベルの一単位を示し、RFIDラベル1は、紙、プラスチックフィルム、合成紙、不織布などの単一または複合材料からなる帯状のラベル基材2と、ラベル基材2の裏面に塗布された粘着剤3と、アンテナおよびICチップを有するRFID4と、表面にシリコーンなどの剥離剤がコーティングされた剥離紙5を有する。
【0010】
ラベル基材2は、長手方向の両端に位置し貼付対象物へ貼付する第1の貼付部6aおよび第2の貼付部6bからなる貼付部6と、これら第1および第2の貼付部6a、6bに挟まれる位置に位置し、RFID4を保持するRFID保持部7およびこのRFID保持部7に隣接する貼合せ部8を有している。このRFID保持部7および貼合せ部8により突出部30(図3参照)が形成される。尚、RFID保持部7に隣接する貼付部6を第1の貼付部6a、貼合せ部8に隣接する貼付部6を第2の貼付部6bとする。
また、第2の貼付部6bには、図示しない文字、記号、バーコードなどを印字可能としており、例えばプリンタにより所定の情報が印字され、この印字のためにラベル基材2の上層に感熱発色層を施しても良い。尚、第1の貼付部6aまたは貼合せ部8に所定の情報を印字しても良い。」

B 「【0021】
次に、図3(c)に示すように第1の貼付部6aの一方端をミシン目13に沿って突出する方向(矢印A方向)に谷折りで折り曲げ、突出させる。第1の貼付部6aの一方端を折り曲げた状態で、図3(d)に示すように突出部30の一方端をミシン目13に沿って折り曲げた第1の貼付部6aの方向(矢印B方向)に谷折りで折り曲げ、突出させた第1の貼付部6aの粘着剤3により折り曲げた突出部30の一方端を貼り合せ、突出保持部31を形成する(突出保持部形成工程)。
【0022】
以上のように形成されたRFIDラベル1を貼付対象物35に貼付する貼付方法について図4および図5に基づき説明する。
図4は、金属や水分を含む内容物を入れた梱包箱36にRFIDラベル1を貼付した状態を示す斜視図であり、図5は、血液パック37にRFIDラベル1を貼付した状態を示す斜視図である。
図4において貼付対象物35としての梱包箱36内には例えば缶詰や缶ジュースなどの金属や水分を含む内容物が梱包されており、図3(d)で上述したRFIDラベル1の剥離紙5を除去し、第1の貼付部6aおよび第2の貼付部6bの粘着剤3により貼付する。このとき、図4に示すようにRFID4を含む突出部30が梱包箱36から離間する方向に垂直に突出すると共に、突出保持部31が突出部30の突出状態を保持する(貼付工程)。図4に示す例では梱包箱36の上面にRFIDラベル1を貼付したが、突出部30が貼付対象物から離間するように貼付すれば梱包箱36の側面等に貼付しても良い。」

以上の記載事項AおよびB(特に下線部の記載を参照。)から,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「帯状のラベル基材2と,前記ラベル基材2の裏面に塗布された粘着剤3と,アンテナおよびICチップを有するRFID4と,表面にシリコーンなどの剥離剤がコーティングされた剥離紙5を有し,
前記ラベル基材2は,第1の貼付部6aおよび第2の貼付部6bからなる貼付部6と,これら第1および第2の貼付部6a,6bに挟まれる位置に位置し,前記RFID4を保持するRFID保持部7およびこのRFID保持部7に隣接する貼合せ部8を有し,このRFID保持部7および貼合せ部8により突出部30が形成され,
前記突出部30の一方端をミシン目13に沿って折り曲げた前記第1の貼付部6aの方向に谷折りで折り曲げ,突出させた前記第1の前記貼付部6aの前記粘着剤3により折り曲げた前記突出部30の前記一方端を貼り合せた突出保持部31が形成され,
貼付対象物35としての梱包箱36に,RFIDラベル1の前記剥離紙5を除去し,前記第1の貼付部6aおよび前記第2の貼付部6bの前記粘着剤3により貼付する
RFIDラベル1。」


第6 対比・判断

1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「アンテナおよびICチップを有するRFID4」,「RFID4を保持するRFID保持部7」,「第1の貼付部6aおよび第2の貼付部6bからなる貼付部6」,および「RFIDラベル1」は,本願発明1の「RFIDタグ」,「RFIDタグを付設したタグパネル」,「第2保持パネル」,および「RFIDタグ保持体」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「突出部30」を,「第1の貼付部6aの方向に谷折りで折り曲げ」て,「突出部30」の「一方端を貼り合せた突出保持部31」は,本願発明1の「タグパネルと垂設している第1保持パネル」に相当するものといえる。

ウ 引用発明の「突出保持部31」の形成に用いられる,「第1の貼付部6a」の「粘着剤3」と,本願発明1の「前記第1保持パネルと前記第2保持パネルの接着に用いる糊付けパネル」とは,上記アおよびイの認定を踏まえると,下記相違点1で相違するものの,“前記第1保持パネルと前記第2保持パネルの接着に用いる糊付け部”である点で共通するといえる。

エ 以上,ア〜ウの検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
RFIDタグを付設したタグパネルと,前記タグパネルと垂設している第1保持パネルと,前記タグパネルおよび前記第1保持パネルと垂設している第2保持パネルと,前記第1保持パネルと前記第2保持パネルの接着に用いる糊付け部を備えたことを特徴とするRFIDタグ保持体。

〈相違点1〉
本願発明1が,「糊付けパネル」を備えるのに対し,引用発明は,「突出保持部31」を形成するための,「第1の貼付部6a」の「粘着剤3」を有するものである点。

〈相違点2〉
本願発明1が,「前記RFIDタグの向きを縦向きまたは横向きいずれかにして着脱可能に金属面に貼り付けることができるように,前記第1保持パネルと前記第2保持パネルの両方にマグネットシートを付設し」たものであるのに対し,引用発明は,「貼付対象物35としての梱包箱36に,RFIDラベル1の前記剥離紙5を除去し,前記第1の貼付部6aおよび前記第2の貼付部6bの前記粘着剤3により貼付する」ものである点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,上記相違点2について先に検討する。
本願発明1は,所定の周波数帯の電波を利用して無線通信するRFIDタグは,様々な金属面に貼り付けられて利用され,金属製の金属面(例えば,金属製のキャビネット)にRFIDタグを貼り付けなければならない場合もあるが,金属面にRFIDタグを貼り付けると電波障害が発生し,RFIDタグが無線通信できなくなるため,金属面にRFIDタグを取り付ける際には,RFIDタグに対する金属面の影響を小さくする工夫が必要になることを背景とし(本願明細書段落【0002】),RFIDタグに対する金属面の影響を小さくする発明として,RFIDタグと金属面の間に磁性材料(例えば,アズキャストのアモルファスから成る磁性材料)を配置したり(同【0003】),磁性材料をRFIDタグに備えさせることなく,RFIDタグに対する金属面の影響を小さくするため,RFIDタグを付設したタグ付設部を有する凸形状のRFIDラベルなどが従来から知られていたところ(同【0004】),RFIDタグが金属面から離間する姿勢でタグ付設部を金属面に貼り付けても,金属面に貼り付けたタグ付設部の姿勢を保持できない場合があり,例えば,地面に対して垂直な金属面にRFIDラベルを貼り付ける場合,タグ付設部は地面に対して水平になるため,時間の経過に従い,重力の影響でタグ付設部が水平から斜めになってしまい電波障害が発生し易くなり(同【0006】),RFIDタグが金属面から離間している姿勢を保持した状態で,金属面に貼り付けることのできる保持体が必要になるが,RFIDタグを保持する保持体の貼り付けに粘着材を用いると,この保持体が金属面に固着されてしまい,この保持体を金属面に貼り付けた後,この保持体が保持するRFIDタグの向きやこの保持体の貼り付ける位置を変更できないため,着脱自在にこの保持体を金属面に貼り付けられることを課題とし(同【0007】),RFIDタグを付設した保持体であって,RFIDタグが金属面から離間している姿勢を保持でき,かつ,着脱自在に金属面に貼り付けることができるRFIDタグ保持体を提供することを目的とするものと認められる(同【0008】)。
他方,引用発明は,「ラベル基材2の裏面に塗布された粘着剤3」を有し,「貼付対象物35としての梱包箱36に,RFIDラベル1の前記剥離紙5を除去し,前記第1の貼付部6aおよび前記第2の貼付部6bの前記粘着剤3により貼付する」ものであるから,保持体を金属面に貼り付けた後,この保持体が保持するRFIDタグの向きやこの保持体の貼り付ける位置を変更できないとの本願発明1の課題を解決することは困難であり,また,マグネットシートを用いること自体は周知な手法であったとしても,粘着剤を有する構成をマグネットシートを用いる構成とすることの動機付けは存在せず,引用発明に基づいて,相違点2に係る構成を採用することが当業者にとって容易であったとまではいうことができない。
したがって,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用例に記載された引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1をさらに限定するものであって,本願発明1と同様に,「前記RFIDタグの向きを縦向きまたは横向きいずれかにして着脱可能に金属面に貼り付けることができるように,前記第1保持パネルと前記第2保持パネルの両方にマグネットシートを付設し」た構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

<特許法第29条第2項について>

上記第6で説示したとおり,本願発明1および2は,「前記RFIDタグの向きを縦向きまたは横向きいずれかにして着脱可能に金属面に貼り付けることができるように,前記第1保持パネルと前記第2保持パネルの両方にマグネットシートを付設」するという事項を有することから,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1(上記第5の引用例)に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-02-17 
出願番号 P2017-027351
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山崎 慎一
山澤 宏
発明の名称 RFIDタグ保持体およびRFIDタグ保持体用シート  
代理人 藤枡 裕実  

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