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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1382316
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-21 
確定日 2022-02-22 
事件の表示 特願2016−203282号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月26日出願公開、特開2018− 64616号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月17日の出願であって、令和1年10月16日に手続補正書が提出され、令和2年10月13日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月11日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和3年4月19日付け(送達日:同年同月27日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年7月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明は、令和2年12月11日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載の事項によりそれぞれ特定されるものと認められるところ、本願の請求項1、2に係る発明(以下、本願の請求項1、2に係る発明をそれぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、以下のとおりのものである(A〜Iは、本願発明を分説するために当審で付した。)。

「【請求項1】
A 遊技球の入球し易さが変化しない第1入球口、及び、遊技球の入球し易さが変化可能な第2入球口と、
B 前記第1入球口への入球に基づいて第1図柄の変動表示を実行し、前記第2入球口への入球に基づいて第2図柄の変動表示を実行する図柄表示手段と、
C 前記第2図柄が特定の停止態様で停止表示されると、特別入賞口を開放する小当たり遊技を実行する小当たり遊技実行手段と、
D 前記特別入賞口に入賞した遊技球が特定領域を通過したことに基づいて、遊技者に有利な大当たり遊技を実行する大当たり遊技実行手段と、
E 通常遊技状態よりも前記第2入球口に遊技球が入球し易い特典遊技状態に制御可能な遊技状態制御手段と、を備え、
F 前記特典遊技状態における前記第2図柄の変動表示の実行回数が所定の上限実行回数に至ると、前記特典遊技状態を終了させる遊技機であって、
前記特典遊技状態において前記上限実行回数が第1の値に設定されるときと、前記第1の値よりも大きい第2の値に設定されるときとがあり、
G 前記特典遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合よりも、前記通常遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合の方が、前記上限実行回数が前記第2の値に設定され易い
H ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
I 請求項1に記載の遊技機であって、
前記通常遊技状態中の前記第2図柄の変動表示に伴って、前記特典遊技状態中の前記第2図柄の変動表示に伴う演出とは異なる演出が実行されることを特徴とする遊技機。」

第3 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
進歩性)この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1
・引用文献等 1

・請求項 2
・引用文献等 1〜2

引用文献等一覧
1.特開2011−235017号公報
2.特開2016−131844号公報

第4 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1であって、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011−235017号公報(公開日:平成23年11月24日)には、遊技機に関し、次の事項が図面とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために当審で付した。)

1 記載事項
(1)「【0012】
図2に示す遊技盤1における遊技領域1aの周囲には、外レールR1及び内レールR2が設けられている。これら外レールR1及び内レールR2は、図1に示した発射ハンドル211を操作したときに発射装置から発射された遊技球を遊技領域1aに案内する。
遊技盤1のほぼ中央には、画像表示器6が配置されている。画像表示器6は、例えば、液晶表示装置等の液晶表示パネルにより構成され、特別図柄に応じた演出用の図柄画像、例えば数字図柄、アルファベット図柄、キャラクター図柄等が表示される。また、所謂リーチ状態や特別遊技状態のときは、それぞれの遊技状態を示す演出画像等が表示される。リーチ状態は、例えば演出用の図柄画像として3つの図柄画像を表示する場合は、3つの図柄画像のうち2つの図柄画像が揃った状態であり、特別遊技状態(リーチ状態)は、3つの図柄画像が揃った状態を指す。
画像表示器6の下方中央には、第1始動口21が配置されている。第1始動口21は、遊技球が入賞したときに、第1特別図柄表示器10の第1特別図柄を変動表示させる権利を発生させる。このため、第1始動口21の内部には、遊技球の入球を検出する第1始動口スイッチ(SW)が設けられている。
【0013】
また遊技盤1の右側領域であって、画像表示器6の右側下方には、第2始動口として機能する第1の変動入賞装置(以下、「電チュー」と表記する)22が配置されている。
電チュー22は、左右一対の開閉爪(可動片)を有し、遊技球が入賞したときに、第2特別図柄表示器11の第2特別図柄を変動表示させる権利を発生させる。このため、電チュー22の内部には、遊技球の入球を検出する第2始動口スイッチ(SW)が設けられている。
電チュー22は、普通図柄表示器12の普通図柄が所定態様で停止したときに所定時間、遊技球の入賞し難い閉状態から入賞し易い開状態になる。つまり、閉成状態から開成状態に変化するように構成されている。
・・・
【0016】
更に、遊技盤1の遊技領域1aには、一般入賞口17が配置されていると共に、風車や図示しない多数の遊技釘が突設されている。遊技釘は、遊技球の落下速度を遅くすると共に、落下方向を複雑に変化させて遊技進行上の興趣を高めている。
遊技盤1の遊技領域1aの最下部には、遊技球を排出するアウト口18が設けられている。」

(2)「【0021】
図4は、本実施形態に係るパチンコ遊技機全体の遊技制御を行う遊技制御装置の構成を示したブロック図である。
図4に示す遊技制御装置には、主(メイン)制御基板として、遊技の進行を制御する遊技制御基板111が設けられている。また副(サブ)制御基板として、演出制御基板121、画像制御基板131、ランプ制御基板141、払出制御基板151等が設けられている。
遊技制御基板111は、CPU112、ROM113、RAM114を有し、当該パチンコ遊技機200の主たる制御を行う。
遊技制御基板111には、第1始動口21に設けられた第1始動口SW21a、電チュー22内に設けられた第2始動口SW22a、電チュー22を開閉動作させるための電チューソレノイド(SOL)22b、ゲート23内に設けられたゲートSW23a、特別電動役物装置2に入賞した遊技球を検出する入賞検知SW2a、特別電動役物装置2に入賞した遊技球が外部に排出されたことを検出する排出検知SW2b、大入賞装置16に入賞した遊技球を検出する入賞検知SW16aが接続されている。
【0022】
また、遊技制御基板111には、特別電動役物装置2の可動片3を開閉動作させるための可動片ソレノイド(SOL)2c、大入賞装置の大入賞口16扉を開閉動作させるための大入賞口ソレノイド(SOL)16b、特定領域(Vゾーン)4を通過した遊技球を検知する特定領域SW4a、一般入賞口17に設けられた一般入賞口SW17aが接続されている。
更に、第1特別図柄表示器10、第2特別図柄表示器11、普通図柄表示器12、第1特別図柄保留ランプ13、第2特別図柄保留ランプ14、普通図柄保留ランプ15、Vゾーン4内の進退部材33を進退動作させるためのVソレノイド(SOL)33a等が接続されている。
更にまた、遊技制御基板111には、演出制御基板121、払出制御基板151、及び盤用外部情報端子基板160等が接続されている。
・・・
【0026】
上記のように構成される本実施形態のパチンコ遊技機200では、第1始動口21又は第2始動口である電チュー22に遊技球が入球したときに、遊技制御基板111において、大当たり乱数、図柄乱数等からなる第1遊技データ又は第2遊技データを取得する。
第1遊技データを取得したときは、取得した第1遊技データに基づいて、第1特別図柄表示器10に表示する第1特別図柄の変動と停止を制御する。そして、第1特別図柄表示器10の第1特別図柄が所定の大当たり図柄で停止表示されたときは、大入賞装置の大入賞口16を利用した大当たり遊技を実行する。
大当たり遊技終了後は、時短遊技を付与するか否かの判定を行うようにしている。そして、本実施形態のパチンコ遊技機200では、大当たり当選時の遊技状態が通常遊技状態のときは、必ず所定回数(例えば100回)の時短遊技を付与するようにしている。
これに対して、大当たり当選時の遊技状態が時短遊技状態のときは、時短遊技を付与した大当たりの連続当選回数に基づいて時短遊技を付与するか否かを決定するようにしている。例えば、大当たりの連続当選回数Nを3回に設定した場合は、2回目の大当たり遊技までは大当たり遊技終了後に時短遊技を付与する。そして3回目の大当たり遊技後は時短遊技を付与しないようにしている。
【0027】
時短遊技中は、普通図柄が当たり図柄で停止したときに電チュー22の開放時間が通常遊技状態のときにより長くなるように構成されている。従って、時短遊技中は、ゲート23及び電チュー22が配置されている遊技盤1の右側領域を狙って遊技球を発射することで、結果として電チュー22への遊技球の入賞率が高くなる。
電チュー22に遊技球が入賞した場合は、その入賞によって取得した第2遊技データに基づいて、第2特別図柄を所定時間変動させて停止させる制御を行う。このとき、第2特別図柄は、399/400の割合で、小当たり図柄で停止して表示されることになる。
第2特別図柄が小当たり図柄で停止した場合、小当たり動作として、特別電動役物装置2の可動片3を1回又は複数回、開閉する開閉動作を行う。そして、この開閉動作において遊技球が特別電動役物装置2内に入賞し、入賞した遊技球がVゾーン4を通過すると、2種大当たりが発生し、大入賞装置の大入賞口16を利用した大当たり遊技が実行する。
【0028】
このように本実施形態のパチンコ遊技機200は、大当たりの連続当選回数が予め設定した設定回数に到達するまでは時短遊技が付与されるので、遊技者は大当たり遊技後も右打ち遊技を継続して行うことで、時短遊技中に2種大当たりに当選し易い構成となっている。そして、大当たりの連続当選回数をカウントしたカウント値が所定のカウント値に到達した時にリミッタ機能が作動して大当たり遊技後の遊技状態を通常遊技状態に設定するようにしている。これにより、遊技者は、一回、1種大当たりに当選すれば、その後、2回の2種大当たりに連続して当選するので1回の大当たりで大量の出球を獲得することが可能になる。
【0029】
また本実施形態のパチンコ遊技機200は、第2特別図柄が変動中に電チュー22に遊技球が入賞した場合は、例えば4個を上限として第2特別図柄を変動表示する権利を保留可能な構成される。この場合、リミッタ機能が作動して大当たり遊技後の遊技状態が時短遊技状態から通常遊技状態に移行した時点において、第2特別図柄を変動表示する権利の保留がある場合、遊技者は、通常遊技状態に移行した後も、第2特別図柄の保留が全て消化されるまでの右打ち遊技を継続して行うようにする。この場合、特別電動役物装置2は、第2特別図柄の保留個数分だけ小当たり動作を行う可能性が高いので、遊技者が右打ちを継続して行うことで、特別電動役物装置2に遊技球が入賞する割合が高くなる。そして、特別電動役物装置2に入賞した遊技球がVゾーン4を通過すれば、再度、大当たり遊技を獲得することができる。つまり、大当たり終了後に通常遊技状態に移行した場合でも、大当たり終了後にさらに第2特別図柄の保留個数分だけ2種大当たりに当選する機会を遊技者に与えることができるようになる。これにより、遊技者は、短時間でより一層の出球を獲得することが期待できる。
なお、本実施形態では、大当たり連続当選回数を3回に設定する場合を例に挙げて説明したが、これはあくまでも一例であり、設定回数は任意に設定可能である。
・・・
【0035】
そこで、本実施形態では、大当たり直後の遊技状態が通常遊技状態のときは、図7(b)に示すように、大当たり直後に変動を開始する第2特別図柄の1回目の変動時間を時短遊技時より長くして、Vゾーン4を遊技球が通過し難い態様である第2の進退動作を行っている期間T2に第2特別図柄の変動停止タイミングを合わせるようにした。
このように構成すれば、大当たり直後の遊技状態が通常遊技状態のときは、遊技者が大当たり直後から右打ち遊技を継続して行ったとしてしても、図7(b)に示すように、進退部材33が第2の進退動作を行っている期間T2において、第2特別図柄が小当たり図柄で停止し、これに伴って特別電動役物装置2の可動片3が動作するので、遊技球が特別電動役物装置2内に入賞したとしても大当たりに当選する当選確率を約1/20とすることができる。」

(3)「【図2】



2 認定事項
(1)記載事項(1)の【0016】の「遊技盤1の遊技領域1aには、・・・多数の遊技釘が突設されている。」との記載及び記載事項(3)の【図2】の記載からみて、第1始動口21の上部には、遊技釘が突設されており、第1始動口への遊技球の入球し易さは変わらないと認められる。
してみると、引用文献1において、パチンコ遊技機200が「遊技球の入球し易さが変わらない第1始動口21」を備えることを認定できる。

(2)記載事項(2)の【0021】の「遊技制御基板111は、・・・パチンコ遊技機200の主たる制御を行う。」との記載、記載事項(2)の【0026】の「大当たりの連続当選回数Nを3回に設定した場合は、2回目の大当たり遊技までは大当たり遊技終了後に時短遊技を付与する。そして3回目の大当たり遊技後は時短遊技を付与しないようにしている。」との記載、【0028】の「大当たりの連続当選回数をカウントしたカウント値が所定のカウント値に到達した時にリミッタ機能が作動して大当たり遊技後の遊技状態を通常遊技状態に設定するようにしている。」との記載、記載事項(2)の【0029】の「リミッタ機能が作動して大当たり遊技後の遊技状態が時短遊技状態から通常遊技状態に移行した時点において、第2特別図柄を変動表示する権利の保留がある場合、遊技者は、通常遊技状態に移行した後も、第2特別図柄の保留が全て消化されるまでの右打ち遊技を継続して行うようにする。」との記載からみて、引用文献1において、パチンコ遊技機200は、リミッタ機能を作動させることによって、大当たりの連続当選回数Nを3回に設定した場合では、2回目の大当たり遊技までは大当たり遊技終了後に時短遊技を付与し、3回目の大当たり遊技後は時短遊技を付与しないようにすると認められる。
してみると、引用文献1において、パチンコ遊技機200の「遊技制御基板111は、リミッタ機能を作動させ、大当たりの連続当選回数Nを3回に設定した場合は、2回目の大当たり遊技までは大当たり遊技終了後に時短遊技を付与し、3回目の大当たり遊技後は時短遊技を付与しないようにする」ことを認定できる。

(3)記載事項(2)の【0021】の「パチンコ遊技機200」との記載、記載事項(2)の【0026】の「大当たり当選時の遊技状態が通常遊技状態のときは、必ず所定回数(例えば100回)の時短遊技を付与するようにしている。これに対して、大当たり当選時の遊技状態が時短遊技状態のときは、時短遊技を付与した大当たりの連続当選回数に基づいて時短遊技を付与するか否かを決定するようにしている。例えば、大当たりの連続当選回数Nを3回に設定した場合は、2回目の大当たり遊技までは大当たり遊技終了後に時短遊技を付与する。そして3回目の大当たり遊技後は時短遊技を付与しないようにしている。」との記載、記載事項(2)の【0027】の「時短遊技中は、ゲート23及び電チュー22が配置されている遊技盤1の右側領域を狙って遊技球を発射することで、結果として電チュー22への遊技球の入賞率が高くなる。電チュー22に遊技球が入賞した場合は、その入賞によって取得した第2遊技データに基づいて、第2特別図柄を所定時間変動させて停止させる制御を行う。」との記載からみて、パチンコ遊技機200は、大当たり遊技終了後に時短遊技を付与するときと付与しないときとがあり、時短遊技状態として、第2特別図柄を変動させる時短遊技が100回付与され、100回の時短遊技後は、時短遊技状態が終了すると認められる。
してみると、引用文献1において、「時短遊技状態における第2特別図柄の変動が100回になると、時短遊技状態が終了するパチンコ遊技機200であって、時短遊技状態として、100回の時短遊技を付与するときがある」ことを認定できる。

(4)記載事項(2)の【0026】の「大当たりの連続当選回数Nを3回に設定した場合は、2回目の大当たり遊技までは大当たり遊技終了後に時短遊技を付与する。」との記載、記載事項(2)の【0027】の「時短遊技中・・・第2特別図柄が小当たり図柄で停止した場合、小当たり動作として、特別電動役物装置2の可動片3を1回又は複数回、開閉する開閉動作を行う。そして、この開閉動作において遊技球が特別電動役物装置2内に入賞し、入賞した遊技球がVゾーン4を通過すると、2種大当たりが発生し、大入賞装置の大入賞口16を利用した大当たり遊技が実行する。」との記載、記載事項(2)の【0028】の「遊技者は、一回、1種大当たりに当選すれば、その後、2回の2種大当たりに連続して当選するので1回の大当たりで大量の出球を獲得することが可能になる。」との記載より、引用文献1において、1回目の大当たり遊技終了後に時短遊技を付与し、その時短遊技中に第2特別図柄が小当たり図柄で停止した場合に行う小当たり動作において、遊技球が特別電動役物装置2内に入賞し、入賞した遊技球がVゾーン4を通過すると、大当たり遊技を実行し、当該大当たり遊技終了後に時短遊技を付与すると認められる。
してみると、引用文献1において、「時短遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」があることを認定できる。

(5)記載事項(2)の【0026】の「大当たり当選時の遊技状態が通常遊技状態のときは、必ず所定回数(例えば100回)の時短遊技を付与するようにしている。」との記載、記載事項(2)の【0029】の「リミッタ機能が作動して大当たり遊技後の遊技状態が時短遊技状態から通常遊技状態に移行した時点において、第2特別図柄を変動表示する権利の保留がある場合、遊技者は、通常遊技状態に移行した後も、第2特別図柄の保留が全て消化されるまでの右打ち遊技を継続して行うようにする。」との記載及び記載事項(2)の【0035】の「大当たり直後の遊技状態が通常遊技状態のときは、遊技者が大当たり直後から右打ち遊技を継続して行ったとしてしても、図7(b)に示すように、進退部材33が第2の進退動作を行っている期間T2において、第2特別図柄が小当たり図柄で停止し、これに伴って特別電動役物装置2の可動片3が動作するので、遊技球が特別電動役物装置2内に入賞したとしても大当たりに当選する当選確率を約1/20とすることができる。」との記載から、大当たり遊技後の遊技状態が時短遊技状態から通常遊技状態に移行しても、第2特別図柄を変動表示する権利の保留がある場合に、第2特別図柄が小当たり図柄で停止して、遊技球が特別電動役物装置2内に入賞すると、約1/20で大当たりに当選し、当該大当たり遊技終了後に時短遊技を付与すると認められる。
してみると、引用文献1において、「通常遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」があることを認定できる。

したがって、上記記載事項(1)〜(3)及び認定事項(1)〜(5)を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(分説a〜hは、本願発明1の分説A〜Hに概ね対応させて付与した。)。

「a 遊技球の入球し易さが変わらない第1始動口21、遊技球の入賞し難い閉状態から入賞し易い開状態になる第2始動口と(【0013】、認定事項(1))、
b 第1始動口21に遊技球が入賞したときに、第1特別図柄を変動表示させる第1特別図柄表示器10、第2始動口に遊技球が入賞したときに、第2特別図柄を変動表示させる第2特別図柄表示器11と(【0012】、【0013】)、を備え、
c、d 遊技制御基板111は、
第2特別図柄が小当たり図柄で停止した場合、特別電動役物装置2の可動片3を1回又は複数回、開閉する開閉動作を行う小当たりを行い(【0022】、【0027】)、
特別電動役物装置2内に入賞した遊技球がVゾーン4を通過すると、大入賞装置の大入賞口16を利用した大当たり遊技を実行し(【0027】)、
e さらに、遊技制御基板111は、普通図柄が当たり図柄で停止したときに第2始動口である電チュー22の開放時間が通常遊技状態のときにより長くなる時短遊技を付与するものであり(【0021】、【0026】、【0027】)、
f 遊技制御基板111は、リミッタ機能を作動させ、大当たりの連続当選回数Nを3回に設定した場合は、2回目の大当たり遊技までは大当たり遊技終了後に時短遊技を付与し、3回目の大当たり遊技後は時短遊技を付与しないようにし(認定事項(2))、時短遊技状態における第2特別図柄の変動が100回になると、時短遊技状態が終了するパチンコ遊技機200であって(認定事項(3))、
時短遊技状態として、100回の時短遊技を付与するときがあり(認定事項(3))、
g 時短遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合と(認定事項(4))、通常遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合とがある(認定事項(5))
h パチンコ遊技機200(【0021】)。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 引用発明の構成aの「遊技球の入球し易さが変わらない第1始動口21」、「遊技球の入賞し難い閉状態から入賞し易い開状態になる第2始動口」は、それぞれ本願発明1の構成Aの「遊技球の入球し易さが変化しない第1入球口」、「遊技球の入球し易さが変化可能な第2入球口」に相当する。
よって、引用発明の構成aは、本願発明1の構成Aに相当する構成を備える。

イ 引用発明の構成bの「第1始動口21に遊技球が入賞したときに」、「第1特別図柄」、「第2始動口に遊技球が入賞したときに」及び「第2特別図柄」は、それぞれ本願発明1の構成Bの「前記第1入球口への入球に基づいて」、「第1図柄」、「前記第2入球口への入球に基づいて」及び「第2図柄」に相当する。
また、引用発明の構成bの「第1特別図柄表示器10」及び「第2特別図柄表示器11」は、本願発明1の構成Bの「図柄表示手段」に相当する。
よって、引用発明の構成bは、本願発明1の構成Bに相当する構成を備える。

ウ 引用発明の構成c、dの「第2特別図柄が小当たり図柄で停止」することは、本願発明1の構成Cの「前記第2図柄が特定の停止態様で停止表示」することに相当する。
また、引用発明の構成c、dの「特別電動役物装置2」は、本願発明1の構成Cの「特別入賞口」に相当する。
したがって、引用発明の構成c、dの「特別電動役物装置2の可動片3を1回又は複数回、開閉する開閉動作を行う小当たり」は、本願発明1の構成Cの「特別入賞口を開放する小当たり遊技」に相当する。
ゆえに、引用発明の構成c、dの「第2特別図柄が小当たり図柄で停止した場合、特別電動役物装置2の可動片3を1回又は複数回、開閉する開閉動作を行う小当たりを行」う「遊技制御基板111」は、本願発明1の構成Cの「前記第2図柄が特定の停止態様で停止表示されると、特別入賞口を開放する小当たり遊技を実行する小当たり遊技実行手段」に相当する。
よって、引用発明の構成c、dは、本願発明1の構成Cに相当する構成を備える。

エ 引用発明の構成c、dの「Vゾーン4」は、本願発明1の構成Dの「特定領域」に相当する。
また、引用発明の構成c、dの「特別電動役物装置2内に入賞した遊技球がVゾーン4を通過する」こと、「大入賞装置の大入賞口16を利用した大当たり遊技」は、それぞれ本願発明1の構成Dの「前記特別入賞口に入賞した遊技球が特定領域を通過したことに基づ」くこと、「遊技者に有利な大当たり遊技」に相当する。
したがって、引用発明の構成c、dの「特別電動役物装置2内に入賞した遊技球がVゾーン4を通過すると、大入賞装置の大入賞口16を利用した大当たり遊技を実行」する「遊技制御基板111」は、本願発明1の構成Dの「前記特別入賞口に入賞した遊技球が特定領域を通過したことに基づいて、遊技者に有利な大当たり遊技を実行する大当たり遊技実行手段」に相当する。
よって、引用発明の構成c、dは、本願発明1の構成Dに相当する構成を備える。

オ 引用発明の構成eにおいて、「第2始動口である電チュー22の開放時間が通常遊技状態のときにより長くな」れば、遊技球が第2始動口に入球し易くなることは明らかであるから、引用発明の構成eの「普通図柄が当たり図柄で停止したときに第2始動口である電チュー22の開放時間が通常遊技状態のときにより長くなる時短遊技」は、本願発明1の構成Eの「通常遊技状態よりも前記第2入球口に遊技球が入球し易い特典遊技状態」に相当する。
したがって、引用発明の構成eの「普通図柄が当たり図柄で停止したときに第2始動口である電チュー22の開放時間が通常遊技状態のときにより長くなる時短遊技を付与する」「遊技制御基板111」は、本願発明1の構成Eの「通常遊技状態よりも前記第2入球口に遊技球が入球し易い特典遊技状態に制御可能な遊技状態制御手段」に相当する。
よって、引用発明の構成eは、本願発明1の構成Eに相当する構成を備える。

カ 引用発明の構成fの「第2特別図柄の変動が100回になる」こと、「100回」は、それぞれ本願発明1の構成Fの「前記第2図柄の変動表示の実行回数が所定の上限実行回数に至る」こと、「第2の値」に相当する。
また、引用発明の構成fの「パチンコ遊技機200」は、本願発明1の構成Fの「遊技機」に相当する。
よって、引用発明の構成fの「時短遊技状態として、100回の時短遊技を付与するときがあ」ることは、本願発明1の構成Fの「前記特典遊技状態において前記上限実行回数が」「第2の値に設定されるとき」「があ」ることに相当する。
以上のことから、引用発明の構成fの「時短遊技状態における第2特別図柄の変動が100回になると、時短遊技状態が終了するパチンコ遊技機200であって、時短遊技状態として、100回の時短遊技を付与するときがあ」ることは、本願発明1の構成Fと「前記特典遊技状態における前記第2図柄の変動表示の実行回数が所定の上限実行回数に至ると、前記特典遊技状態を終了させる遊技機であって、前記特典遊技状態において前記上限実行回数が」「第2の値に設定されるとき」「があ」る点で共通する。

キ 引用発明の構成gの「時短遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」は、本願発明1の構成Gの「前記特典遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合」に相当する。
また、引用発明の構成gの「通常遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」は、本願発明1の構成Gの「前記通常遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合」に相当する。
よって、引用発明の構成gの「時短遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合と、通常遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合とがある」ことは、本願発明1の構成Gと「前記特典遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合」と「前記通常遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合」を備える点で共通する。

ク 引用発明の構成hの「パチンコ遊技機200」は、本願発明1の構成Hの「遊技機」に相当する。

ケ 上記ア〜クを踏まえると、本願発明1と引用発明とは、
「A 遊技球の入球し易さが変化しない第1入球口、及び、遊技球の入球し易さが変化可能な第2入球口と、
B 前記第1入球口への入球に基づいて第1図柄の変動表示を実行し、前記第2入球口への入球に基づいて第2図柄の変動表示を実行する図柄表示手段と、
C 前記第2図柄が特定の停止態様で停止表示されると、特別入賞口を開放する小当たり遊技を実行する小当たり遊技実行手段と、
D 前記特別入賞口に入賞した遊技球が特定領域を通過したことに基づいて、遊技者に有利な大当たり遊技を実行する大当たり遊技実行手段と、
E 通常遊技状態よりも前記第2入球口に遊技球が入球し易い特典遊技状態に制御可能な遊技状態制御手段と、を備え、
F’前記特典遊技状態における前記第2図柄の変動表示の実行回数が所定の上限実行回数に至ると、前記特典遊技状態を終了させる遊技機であって、
前記特典遊技状態において前記上限実行回数が第2の値に設定されるときがあり、
G’前記特典遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合と、前記通常遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合を備える
H 遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(構成F)
本願発明1は、「前記特典遊技状態において前記上限実行回数が」「第2の値に設定されるとき」に加え、「第2の値」よりも小さい「第1の値」に設定されるときがあるのに対して、引用発明は、「時短遊技状態として、100回の時短遊技を付与するときがあ」るものの、時短遊技の回数として、「第2の値」である「100回」よりも小さい「第1の値」に設定されるときがあるとの構成を備えていない点。

・相違点2(構成G)
本願発明1は、「前記特典遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合よりも、前記通常遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合の方が、前記上限実行回数が前記第2の値に設定され易い」のに対して、引用発明は、「時短遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」と「通常遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」があるものの、「時短遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」よりも「通常遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」の方が、時短遊技の回数が、「第2の値」である「100回」に設定され易い構成を備えていない点。

(2)判断
ア 相違点1について
引用発明の「パチンコ遊技機200」は、「リミッタ機能を作動させ、大当たりの連続当選回数Nを3回に設定した場合は、2回目の大当たり遊技までは大当たり遊技終了後に時短遊技を付与し、3回目の大当たり遊技後は時短遊技を付与しないように」するものであり、「時短遊技状態」となる場合には、「100回の時短遊技」が「付与」されるものの、「時短遊技状態」とならない場合、すなわち、「通常遊技状態」となる場合には、時短遊技が付与されないものである。
そして、「時短遊技状態」とならない場合、すなわち、「通常遊技状態」となる場合には、時短遊技が付与されないのであるから、設定される時短回数は「0回」であり、「100回」よりも小さい値である。そうすると、時短回数の「0回」は、本願発明の構成Fの「第1の値」に対応すると認められるものの、時短回数が「0回」であれば、そもそも「時短遊技状態」に制御されることはないのであるから、本願発明1の構成Fの「前記特典遊技状態において前記上限実行回数が第1の値に設定されるとき」との構成において、「前記特典遊技状態において」との条件を満たし得ない。
そうすると、引用発明は、「前記特典遊技状態において前記上限実行回数が」「第2の値」である「100回」よりも小さい「第1の値」に「設定されるとき」があるとの構成を備えているとはいえず、また、そのような構成を備えることが、当業者であっても引用発明に基づいて容易になし得たものとはいえない。
よって、上記相違点1に係る本願発明1の構成Fは、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

イ 相違点2について
引用発明は、「時短遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」と「通常遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」があるものである。
しかしながら、引用発明は、両者のいずれの場合においても、「時短遊技が付与される場合」は、「100回の時短遊技」が「付与」されるものであって、上記アで説示したとおり、「第2の値」である「100回」よりも小さい「第1の値」に「設定されるとき」があるとの構成を備えるものではないから、「時短遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」よりも、「通常遊技状態のときに第2特別図柄が小当たり図柄で停止して時短遊技が付与される場合」の方が、「100回の時短遊技」が「付与」され易いとの構成を備えているとはいえない。また、そのような構成を備えることが、当業者であっても引用発明に基づいて容易になし得たものとはいえない。
よって、上記相違点2に係る本願発明1の構成Gは、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)効果について
また、本願発明1は、「前記特典遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合よりも、前記通常遊技状態中に前記第2図柄が前記特定の停止態様で停止表示されて前記特典遊技状態に制御された場合の方が、前記上限実行回数が前記第2の値に設定され易い」との構成を備えることで、時短状態が終了して通常遊技状態に戻ったときに、1つだけ残っている特図2の保留に基づいて小当たりに当選する場合の特別感を出すことができるという、引用発明が有さない効果を奏する。

2 本願発明2について
本願発明1が、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのであるから、本願発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した本願発明2も同様に、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1 理由2(特許法第29条第2項)について
本願発明1及び本願発明2は、上記「第5 対比・判断」の「1 本願発明1について」及び「2 本願発明2について」で示したとおり、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-02-01 
出願番号 P2016-203282
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 ▲高▼木 尚哉
澤田 真治
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人コスモス国際特許商標事務所  

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