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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  D04H
審判 全部申し立て 2項進歩性  D04H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D04H
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D04H
管理番号 1382353
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-11 
確定日 2021-11-12 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6669940号発明「電磁波シールド材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6669940号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕について訂正することを認める。 特許第6669940号の請求項2〜4に係る特許を維持する。 特許第6669940号の請求項1及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6669940号の請求項1〜5に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)9月11日(優先権主張 平成30年9月19日、平成31年3月27日及び同年3月28日 日本国)を国際出願日とする特許出願であって、令和2年3月2日に特許権の設定登録がされ、同年3月18日に特許掲載公報が発行された。
これに対して、令和2年9月11日と同年9月18日に特許異議の申立てがされ、いずれも全ての請求項に係る特許について特許異議の理由を申し立てるものである。
2件の特許異議の申立ては、特許法第120条の3第1項の規定により併合して審理されるものであるが、この併合された事件(以下「本件」という)の手続きの経緯は、次のとおりである。

令和2年9月11日 : 特許異議申立人丸林敬子(以下「申立人A」という)による特許異議の申立て
同年9月18日 : 特許異議申立人村上清子(以下「申立人B」という)による特許異議の申立て
令和3年1月15日 : 取消理由の通知
(令和3年1月12日付け取消理由通知書)
同年3月11日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年4月27日 : 申立人Aによる意見書の提出
同年4月30日 : 申立人Bによる意見書の提出

第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
令和3年3月11日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6669940号の特許請求の範囲、明細書、図面を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲、訂正明細書、訂正図面のとおり、訂正後の請求項1〜5、訂正後の明細書、訂正後の図面について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という)の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に「請求項1に記載の電磁波シールド材用不織布に、金属皮膜処理が施されていることを特徴とする電磁波シールド材。」と記載されているのを、「湿式不織布である電磁波シールド材用不織布において、湿式不織布が、繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有し、
前記延伸ポリエステル系短繊維と前記未延伸ポリエステル系短繊維との質量含有比率が20:80〜80:20である電磁波シールド材用不織布に、金属皮膜処理が施されていることを特徴とする電磁波シールド材。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3及び4も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0012】〜【0013】、【0016】〜【0017】、【0021】、【0023】〜【0025】、【0035】〜【0048】、【0091】〜【0138】を削除する。
(5)訂正事項5
明細書の段落【0018】の「<4>上記 <1>〜<3>のいずれかに記載の」を「<4>上記<1>に記載の」と訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0050】の「本発明の電磁波シールド材用不織布<3>において、未延伸ポリエステル系短繊維の融点は、220℃以上250℃以下である。」との記載を削除する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0057】の「なお、本発明の電磁波シールド材用不織布<3>において、電磁波シールド材用不織布の剥離強度を高めるためには、延伸ポリエステル系短繊維と融点が220℃以上250℃以下の未延伸ポリエステル系短繊維を含有する湿式不織布を、温度が200℃以上215℃以下である熱ロールを用いて熱カレンダー処理することが好ましい。より好ましい熱ロールの温度は、203℃以上210℃以下である。」との記載を削除する。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0065】の「なお、実施例11〜28は参考例であり、」との記載を、「なお、実施例4は参考例であり、」と訂正する。
(9)訂正事項9
図面の図1を削除する。
(10)訂正事項10
明細書の発明の名称を「電磁波シールド材用不織布及び電磁波シールド材」とあるのを「電磁波シールド材」と訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0085】の「同軸管法7」との記載を「同軸管法GPC7」と訂正する。

2 本件訂正前の請求項1〜5は、請求項2が請求項1の記載を直接的に引用し、請求項3〜5が請求項2を引用する関係にあるから、本件訂正前の請求項1〜5に対応する訂正後の請求項1〜5は、一群の請求項を構成する。
また、訂正事項4〜11に係る明細書及び図面に係る訂正は、一群の請求項1〜5に関係する訂正である。

3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、(ア)本件訂正前の請求項2の記載が請求項1の記載を引用していたのを、請求項間の引用関係を解消して請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めること、(イ)延伸ポリエステル系短繊維と未延伸ポリエステル系短繊維の質量含有比率を特定すること、を内容とするものである。
上記(ア)は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。また、上記(イ)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許明細書の段落【0030】には「本発明の電磁波シールド材用不織布<1>において、延伸ポリエステル系短繊維と未延伸ポリエステル系短繊維の質量含有比率は、10:90〜90:10であることが好ましく、20:80〜80:20であることがより好ましく、30:70〜70:30であることがさらに好ましい。」と記載されている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 申立人の主張について
申立人Bは、意見書において、訂正事項1の(イ)が本件訂正前の発明特定事項とまったく異なる技術的意義を有するものであること、訂正事項1の(イ)が発明の技術的意義を不明確とするものであることから、訂正事項1が特許請求の範囲の減縮を目的とするものには当たらない旨主張する。
前段の主張は、本件訂正前の技術的意義が搬送性及び電磁波シールド性に係るものであるのに対し、本件訂正後の技術的意義が強度及び均一性にある(本件特許明細書【0030】)というものである。
しかし、強度及び均一性は、湿式不織布を構成する繊維全体との関係で説明されるものであり、訂正事項1の(イ)が異なる技術的意義のものとはいえない。また、訂正事項1の(イ)が加わることにより、本件訂正前の発明特定事項に備わっていた搬送性及び電磁波シールド性に係る技術的意義が滅却されるものではなく、質量含有比率を特定するという付加技術を特定したとみるべきである。
そうすると、訂正事項1の(イ)の目的としては、特許請求の範囲の減縮とみるのが妥当である。
同様に、後段の主張についても、付加技術の特定によって、技術的意義が不明確になるとはいえない。
以上から、申立人Bの主張は採用できず、上記のとおり判断する。
(2)訂正事項2、3について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1を削除するものであり、訂正事項3は、本件訂正前の請求項5を削除するものであるから、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2、3は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2、3は、いずれも、発明のカテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項4〜7について
ア 訂正の目的
訂正事項4〜7は、いずれも、特許請求の範囲の記載と整合しない明細書の記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4〜7は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項4〜7は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項8について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正に伴って、実施例4は、発明の範囲から除外されることとなった。
訂正事項8は、訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るためのものである。
したがって、訂正事項8は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、明細書の段落【0065】において、実施例4は参考例であることを示したものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項8は、発明のカテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項9について
ア 訂正の目的
訂正事項9は、図1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項9は、発明のカテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項10について
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正に伴い、「電磁波シールド材用不織布」は、発明の範囲から除外されることとなった。
訂正事項10は、訂正事項2に係る訂正に伴い発明の名称を「電磁波シールド材」とするもので特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項10は、発明のカテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項11について
ア 訂正の目的
訂正事項11は、「同軸管法7」との記載を「同軸管法GPC7」とするものである。「同軸管法7」との記載が誤りであることは明らかであり、訂正事項11は、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に最初に添付した明細書には、次の記載がある。
「【0085】
[電磁波シールド性(電界)]
同軸管法による電磁波シールド性(電界)に基づき測定した。周波数40MHz〜3GHzの範囲では同軸管法39Dによって測定し、周波数500MHz〜18GHzの範囲では、同軸管法GPC7によって測定した。周波数500MHz〜3GHzは、同軸管法39Dと同軸管法7の両方で測定するが、低い数値を採用した。」
当該段落には、「同軸管法GPC7」についての記載が存在し、また文脈からみて、「同軸管法7」との記載が「同軸管法GPC7」の誤記であると認められる。
したがって、訂正事項11は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項11は、発明のカテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1〜5〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正を認めることができるので、本件特許の請求項1〜5に係る発明(以下「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】削除
【請求項2】
湿式不織布である電磁波シールド材用不織布において、湿式不織布が、繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有し、
前記延伸ポリエステル系短繊維と前記未延伸ポリエステル系短繊維との質量含有比率が20:80〜80:20である電磁波シールド材用不織布に、金属皮膜処理が施されていることを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項3】
金属皮膜処理が、無電解金属めっき処理、電気めっき処理、金属蒸着処理及びスパッタリング処理からなる群から選択される1種以上の処理であることを特徴とする請求項2記載の電磁波シールド材。
【請求項4】
金属皮膜処理が、スパッタリングによってニッケル被覆を形成させる処理、電気めっきによって銅被覆を形成させる処理及び電気めっきによってニッケル被覆を形成させる処理をこの順に含むことを特徴とする請求項2記載の電磁波シールド材。
【請求項5】削除

第4 当審の判断
1 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対して通知した取消理由(令和3年1月12日付け取消理由通知書)の概要は、以下のとおりである。
1)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2)本件特許の請求項1に係る発明は、その出願の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
3)本件特許の請求項1〜5に係る発明は、その出願の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (以下、甲各号証を「甲1」等という。)

1.特開2014−186857号公報(申立人A提出の甲1)
2.特開2014−75485号公報(申立人A提出の甲2、申立人B提出の甲1)
3.特開2017−183514号公報(申立人B提出の甲2)
4.特開2013−53229号公報(申立人B提出の甲3)
5.特開2013−171706号公報(申立人B提出の甲4)
6.特開2001−200376号公報(申立人A提出の甲3)

2 令和3年1月15日に通知した取消理由についての判断
(1)サポート要件について
ア 本件請求項5は、本件訂正により削除されたので、当該請求項に係る特許のみについての取消理由はなくなった。
イ 本件発明が解決せんとする課題は、搬送性に優れ、優れた電磁波シールド性を発現できる電磁波シールド材用不織布及びそれを使用した電磁波シールド材を提供することにある(段落【0011】)。
ウ 「搬送性」とは、背景技術の問題点を指摘した段落【0006】の記載によれば、不織布の搬送時に“皺”が生じないことを念頭に置いた概念であると理解できる。
段落【0083】【0084】には、実施例の評価の仕方の説明があるが、それから、搬送性とは、不織布を一定のテンションで搬送した際の“皺”の有無で判断したことは明らかである。
ここで、そのような“皺”が生じるか否かがテンションの大きさはもちろんのこと種々の測定条件や判断基準に応じて変わる性格のものであることは明らかである。
しかし、本件の明細書が開示する実施例、比較例での測定結果は、同じ条件・判断基準で行われた測定に基づくものと考えられる。そして、そのような測定が搬送性を評価する上でおよそ技術的に不適当なものであったなどという証左もない。
そうすると、そのような測定に基づいて、本件発明で搬送性についての課題が解決できたとすることが格別不合理であるとはいえない。
なお、申立人Bは、伸び易さとの関係に言及しつつ坪量、厚みの観点からサポート要件を欠如する旨指摘するが、そうしたことを考慮に入れても、本件発明で搬送性についての課題が解決できたとすることに格別不合理な点があったということはできない。
エ 「電磁波シールド性」については、測定数値がいくつ以上であれば“優れた”ものと判断できるのかといった数値的な基準が示されているものではない。
これについても、上記ウと同様に、本件の明細書が開示する実施例、比較例での測定によって本件発明で電磁波シールド性についての課題が解決できたとすることが格別不合理であるということはできない。
オ そうすると、当業者は本件発明により所与の課題が解決できると考えるのが妥当である。
なお、本件発明以外の構成でも課題が解決できるかどうかということは、サポート要件が充足されるかどうかとは別の事情に当たる。
カ 申立人Bは、意見書において、訂正事項1で「前記延伸ポリエステル系短繊維と前記未延伸ポリエステル系短繊維との質量含有比率が20:80〜80:20である」なる事項が請求項2に付加されることによるサポート要件の欠如を指摘するので、これについての合議体の見解を付しておく。
既に「第2 3 (1)イ及びエ」で述べたように、当該事項は明細書に記載されていたといえるものであって、また、発明として当該事項が付加されることによって所与の課題が解決できなくなるとはいえない。また、本件発明の特定繊維長の延伸ポリエステル短繊維及び未延伸ポリエステル短繊維が1%に過ぎず、かつ、他の繊維長の延伸ポリエステル短繊維及び未延伸ポリエステル短繊維が99%に至るような態様も包摂されるように理解され得るが、当業者は、当然、そうした質量含有比率を、課題が解決できる範囲で選定するものであるから、このことによりサポート要件が充足されないとはいえない。
キ したがって、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

(2)新規性について
本件訂正により当該請求項1が削除されたため、新規性に係る取消理由はない。

(3)進歩性について
(3−1)引用発明1に基づくもの
ア 引用発明1
(ア)引用文献1(特開2014−186857号公報:申立人Aの甲1には、図面とともに以下の記載がある。
a.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布基材からなるリチウムイオン二次電池用セパレータ基材において、該不織布基材を構成する繊維がポリエステル系短繊維であり、該不織布基材を構成する主体繊維の平均繊維径が5.7〜7.1μmであるリチウムイオン二次電池用セパレータ基材。」
b.「【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用セパレータ基材及びリチウムイオン二次電池用セパレータに関する。
・・・・・・
【発明の効果】
【0014】
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータ基材は、フィラー粒子、樹脂等を含有する塗工用スラリー塗工する処理を施してリチウムイオン二次電池用セパレータとなるためのリチウムイオン二次電池用セパレータ基材であり、該不織布基材を構成する繊維がポリエステル系短繊維で、該不織布基材を構成する主体繊維の平均繊維径が5.7〜7.1μmであることによって、不織布基材表面の空隙の大きさ、深さ及び分布が、塗工用スラリーの付着、吸収に適しているため、塗工時における基材の破損等の基材欠陥、塗工筋等の塗工欠陥が発生し難く、また塗工用スラリーのカバーリング性に優れるという効果が達成できる。」
c.「【0021】
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータ基材において、主体繊維の平均繊維径は5.7〜7.1μmである。より好ましくは、6.0〜6.9μmである。・・・・・
・・・・・
【0023】
本発明において、バインダー繊維として機能する熱融着性合成樹脂短繊維を使用することが好ましい。バインダー短繊維としては、芯鞘型、偏芯型、分割型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型の複合繊維、あるいは単一成分からなる繊維(単繊維)等が挙げられる。特に、未延伸ポリエステル系短繊維や芯部に非熱接着成分、鞘部に熱接着成分を配した芯鞘型熱融着性合成樹脂短繊維を含有することが好ましい。」
d.「【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。表1に、本発明の実施例及び比較例で使用した繊維配合を示した。なお、実施例中における部や百分率は断りのない限り、すべて質量によるものである。
・・・・・
【0048】
実施例1
繊度0.3dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30%、繊度0.6dtex、繊維長5mmの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30%、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40%を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを傾斜型抄紙機にて坪量11g/m2に湿式抄造した後乾燥し、次に、熱カレンダー処理を行い、厚みが17μmのリチウムイオン二次電池用セパレータ基材を得た。」
(イ)引用文献1には、特にその実施例1に着目すると、次の発明が記載されていると認める(以下「引用発明1」という)。
「繊度0.3dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30%、繊度0.6dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30%、繊度0.2dtexの未延伸PET系短繊維40%を一緒に混合し湿式抄造によって得られた不織布基材からなるリチウムイオン二次電池用セパレータ基材。」

イ 本件発明2について
(ア)本件発明2を引用発明1と対比する。
引用発明1の「湿式抄造によって得られた不織布基材」は、本件発明2の「湿式不織布」に相当する。本件発明2の「電磁波シールド材用不織布」は、それのみでは電磁波シールドの機能を発揮するものではないから、引用発明1の「不織布基材」はまた、本件発明2の「電磁波シールド材用不織布」に相当する。
引用発明1の「配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維」、「未延伸PET系短繊維」は、それぞれ、本件発明2の「延伸ポリエステル系短繊維」、「未延伸ポリエステル系短繊維」に相当する。
引用発明1の「繊度0.3dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維」の「繊度0.3dtex」を繊維径(μm)に換算すると、本件特許の明細書段落【0067】にも記載されているように「繊維径5.3μm」となるから、引用発明1の「繊度0.3dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維」は、本件発明2の「繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維」の範囲内である。
引用発明1の「繊度0.6dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維」の「繊度0.6dtex」を繊維径(μm)に換算すると、本件特許の明細書段落【0067】にも記載されているように「繊維径7.4μm」となるから、引用発明1の「繊度0.6dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維」は、本件発明2の「繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維」の範囲内である。
よって、引用発明1の「繊度0.3dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30%、繊度0.6dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30%」は、本件発明2の「繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維」に相当する。
引用発明1の「繊度0.2dtexの未延伸PET系短繊維」の「繊度0.2dtex」を繊維径(μm)に換算すると、本件特許の明細書段落【0067】にも記載されているように「繊維径4.3μm」となるから、引用発明1の「繊度0.2dtexの未延伸PET系短繊維」は、本件発明2の「繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維」の範囲内である。
そうすると、引用発明1の「繊度0.3dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30%、繊度0.6dtexの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30%、繊度0.2dtexの未延伸PET系短繊維40%を一緒に混合し湿式抄造によって得られた不織布基材」は、本件発明2の「湿式不織布が、繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有すること」に相当する。
引用発明1の“2種”の「配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維」の合計含有量は“60%”であり、「未延伸PET系短繊維」の含有量は“40%”である。この量は、質量を指すものと考えられるから(【0046】)、引用発明2における「配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維」と「未延伸PET系短繊維」の質量含有比率は、“40:60”である。そうすると、引用発明2におけるこの質量含有比率は、本件発明2の「前記延伸ポリエステル系短繊維と前記未延伸ポリエステル系短繊維との質量含有比率が20:80〜80:20である」に含まれていることになる。
以上を踏まえると、一致点、相違点は、次のとおりである。
[一致点]
湿式不織布である電磁波シールド材用不織布において、湿式不織布が、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有し、
前記延伸ポリエステル系短繊維と前記未延伸ポリエステル系短繊維との質量含有比率が20:80〜80:20である電磁波シールド材用不織布。」
[相違点1]
本件発明2は、「電磁波シールド材」に係るものであって、不織布が電磁波シールド材用とされていてそれに金属皮膜処理が施されているのに対して、引用発明1は、電磁波シールドとの関係が不明である点。
[相違点2]
繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維について、本件発明2では「繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される」ものとされているのに対して、引用発明1では「繊度0.3dtex」のものと「繊度0.6dtex」のものである点。
(イ)まず、相違点1について検討する。
引用発明1は、特定の不織布基材を含むものの、その不織布基材自体ではなくそれを用いたリチウムイオン二次電池用セパレータ基材に係るものであって、その不織布基材に金属皮膜処理を行って電磁シールド材とすることが想定されるものではない。
また、取消理由で示した他の証拠や、特許異議申立書に記載された他の証拠を考慮しても、引用発明1の不織布基材に金属皮膜処理を行って電磁シールド材とするようなことが教示されるものではない。
(ウ)そうすると、相違点2について検討するまでもなく、本件発明2は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

ウ 本件発明3,4について
本件発明3,4は、いずれも、本件発明2の発明特定事項をすべて含み、他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明2と同様に、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(3−2)引用発明2に基づくもの
ア 引用発明2
(ア)引用文献2(特開2014−75485号公報:申立人Aの甲2、申立人Bの甲1)には、以下の記載がある。
a.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式不織布に金属皮膜処理を施してなる電磁波シールド材であって、単繊維繊度が1.1dtex以下のポリエステル繊維を含み、かつ厚さが10〜30μmの範囲内であることを特徴とする電磁波シールド材。
・・・・・・
【請求項3】
電磁波シールド材にさらにバインダー成分が含まれる、請求項1または請求項2に記載の電磁波シールド材。
【請求項4】
前記バインダー成分が単繊維繊度1.8dtex以下の未延伸型バインダー繊維である、請求項3に記載の電磁波シールド材。
【請求項5】
前記ポリエステル繊維とバインダー成分との重量比率が(前者:後者)20:80〜80:20の範囲である、請求項3又は請求項4に記載の電磁波シールド材。」
b.「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、通信機器、電化製品などに用いることができ、電磁波シールド性を損うことなく、薄くかつ強度に優れた電磁波シールド材に関する。
・・・・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電磁波シールド性を損うことなく、薄くかつ強度に優れた電磁波シールド材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討した結果、湿式不織布に金属皮膜処理を施してなる電磁波シールド材において、湿式不織布を構成する繊維として細繊度のポリエステル繊維を用いることにより、薄くかつ強度に優れた電磁波シールド材が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「湿式不織布に金属皮膜処理を施してなる電磁波シールド材であって、単繊維繊度が1.1dtex以下のポリエステル繊維を含み、かつ厚さが10〜30μmの範囲内であることを特徴とする電磁波シールド材。」が提供される。
その際、電磁波シールド材の引張り強度が15mm巾で5N以上であることが好ましい。また、電磁波シールド材にさらにバインダー成分が含まれることが好ましい。その際、前記バインダー成分が単繊維繊度1.8dtex以下の未延伸型バインダー繊維であることが好ましい。また、前記ポリエステル繊維とバインダー成分との重量比率が(前者:後者)20:80〜80:20の範囲内であることが好ましい。」
c.「【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電磁波シールド材は、湿式不織布に金属メッキを施してなる電磁波シールド材であって、単繊維繊度が1.1dtex以下(より好ましくは0.0001〜0.8dtex、特に好ましくは0.001〜0.15dtex)のポリエステル繊維が含まれる。かかるポリエステル繊維は、特許第4473867号公報に記載されたような超極細繊維であってもよい。
【0010】
前記ポリエステル繊維の単繊維繊度が1.1dtexよりも大きい場合、電磁波シールド材の厚さが厚くなるおそれがあり好ましくない。
前記ポリエステル繊維の繊径(直径)としては10μm以下(より好ましくは5μm以下)であることが好ましい。なお、該繊径(直径)は、単繊維断面形状が丸断面以外の場合は外接円の直径を測定するものとする。
・・・・・・
【0012】
前記ポリエステル繊維は前記のポリエステルを常法により紡糸・延伸した繊維でよい。 ・・・・・
・・・・・
【0014】
また、前記ポリエステル繊維において、繊維の形態は長繊維でもよいが、繊維の分散性をあげることによりバインダー成分の流動性を向上させバインダー成分による固着点が形成されやすくする上で短繊維が好ましい。その際、繊維長としては1〜25mm(より好ましくは2〜10mm)の範囲内であることが好ましい。該繊維長が1mmよりも小さいと、湿式不織布の強度が低下するおそれがある。逆に、該繊維長が25mmよりも大きいと、水分散が極めて難しく、均一な地合いを有する湿式不織布が得られないおそれがある。
・・・・・・
【0016】
本発明の電磁波シールド材を構成する湿式不織布には、前記のポリエステル繊維だけでなくバインダー成分も含まれていることが好ましい。
かかるバインダー成分としては、バインダー繊維でもよいし、非繊維系樹脂バインダー(例えば、粉末状のケミカルバインダー)でもよい。なかでも強固な固着点を得て湿式不織布の強度および曲げ剛性を高める上で、バインダー繊維が好ましい。
その際、バインダー繊維において、単繊維繊度が1.8dtex以下(より好ましくは0.0001〜1.3dtex、特に好ましくは0.001〜0.3dtex)であることが好ましい。該単繊維繊度が1.8dtexよりも大きいと、電磁波シールド材の厚さが厚くなるおそれがある。
【0017】
また、前記バインダー繊維の繊維長としては、1〜25mm(好ましくは2〜10mm)の範囲内であることが好ましい。該繊維長が1mmよりも小さいと、湿式不織布の強度や曲げ剛性が低下するおそれがある。逆に、該繊維長が25mmよりも大きいと、水分散が極めて難しく、均一な地合いを有する湿式不織布が得られないおそれがある。
【0018】
かかるバインダー繊維としては、湿式不織布の強度を大きくする上でポリエステルからなる未延伸繊維が好ましい。 ・・・・・・
・・・・・・
【0029】
次いで、前記湿式不織布に金属皮膜処理を施す。処理方法としては、公知の方法が用いられ、無電界金属メッキ、電気メッキ、金属蒸着、スパッタリング加工などいずれでもよく、なかでも無電界金属メッキによる方法が好ましい。前記金属皮膜は1層でもよいし2層以上の多層であってもよい。
その際、金属の種類としては、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、スズ、またはこれらの合金などがあげられ、なかでも導電性と製造コストとを考慮して銅の無電界金属メッキが好ましい。」
d.「【0036】
[実施例1]
常法によって製造された、ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル繊維(帝人株式会社製、登録商標:テピルス、銘柄:TA04N SD0.6dtex(繊径7.4μm)×繊維長5mm)と未延伸型バインダー繊維(帝人株式会社製、銘柄:TA07N SD1.2dtex(繊径10.7μm)×繊維長5mm)とを(ポリエステル繊維/未延伸型バインダー繊維)60/40の重量比で原料を準備し、円網抄紙機を用いて、目付け15g/m2を得た後、金属/弾性ローラーからなる熱圧カレンダー設備を用いて(温度190℃×線圧50kg/cm)を施した。
その後、無電解メッキ法により銅、ニッケルのメッキを実施した後、電磁波シールド材を得た。その物性を表1に示す。
次いで、かかる電磁波シールド材を電子機器用として用いたところ、薄くかつ強度に優れるものであった。
・・・・・・
【0038】
[実施例3]
実施例1で用いたポリエステル繊維を極細ポリエチレンテレフタレート繊維(帝人株式会社製、銘柄:TA04PN SD0.1dtex(繊径3μm)×繊維長3mm)に変更し、かつ未延伸型バインダー繊維を極細ポリエチレンテレフタレート未延伸型バインダー繊維(帝人株式会社製、銘柄:TK08PN SD0.2dtex×繊維長3mm)に変更し、ポリエステル繊維/バインダー繊維の比率を50/50とする以外は同様の方法で電磁波シールドを得た。その物性を表1に示す。」
(イ)引用文献2には、特にその請求項5に着目すると、次の発明が記載されていると認める(以下「引用発明2」という)。
「湿式不織布に金属皮膜処理を施してなる電磁波シールド材であって、
湿式不織布は、単繊維繊度が1.1dtex以下のポリエステル繊維を含み、該ポリエステル繊維は、常法により紡糸・延伸した繊維であって、繊維の形態は短繊維であり、
さらに単繊維繊度1.8dtex以下の未延伸型バインダー繊維が含まれ、該未延伸型バインダー繊維は、繊維長が2〜10mmの範囲内で、ポリエステルからなるものであり、
前記ポリエステル繊維と前記未延伸型バインダー繊維との重量比率が(前者:後者)20:80〜80:20の範囲である、
電磁波シールド材。」

イ 本件発明2について
(ア)本件発明2を引用発明2と対比する。
引用発明2の「湿式不織布」、「金属皮膜処理」は、それぞれ、本件発明2の「湿式不織布」、「金属皮膜処理」にそれぞれ相当する。また、引用発明2の「湿式不織布」は、「電磁波シールド材」に用いられるものであるから、本件発明2の「電磁波シールド材用不織布」にも相当する。
引用発明2の「ポリエステル繊維」は、「常法により紡糸・延伸した繊維であって、繊維の形態は短繊維であ」ることから、本件発明2の「延伸ポリエステル系短繊維」に相当する。
引用発明2の「未延伸型バインダー繊維」は、「繊維長が2〜10mmの範囲内」であり、「ポリエステルからなる」ことから、本件発明2の「未延伸ポリエステル系短繊維」に相当する
引用発明2の「前記ポリエステル繊維と前記未延伸型バインダー繊維との重量比率が(前者:後者)20:80〜80:20の範囲である」は、本件発明2の「前記延伸ポリエステル系短繊維と前記未延伸ポリエステル系短繊維との質量含有比率が20:80〜80:20である」に相当する。
以上を踏まえると、一致点、相違点は、次のとおりである。
[一致点]
湿式不織布である電磁波シールド材用不織布において、湿式不織布が、延伸ポリエステル系短繊維と、未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有し、前記延伸ポリエステル系短繊維と前記未延伸ポリエステル系短繊維との質量含有比率が20:80〜80:20である電磁波シールド材用不織布に、金属皮膜処理が施されている電磁波シールド材。
[相違点3]
延伸ポリエステル系短繊維が、本件発明2では「繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上」のものであるのに対して、引用発明2では「単繊維繊度が1.1dtex以下」である点。
[相違点4]
未延伸ポリエステル系短繊維が、本件発明2では「繊維径が3μm以上5μm以下」のものであるのに対して、引用発明2では「単繊維繊度1.8dtex以下」である点。
(イ)相違点3について検討する。
a.引用発明2の延伸ポリエステル繊維は、単繊維繊度1.1dtex以下であるものの、その範囲内の1種類を用いることが想定されている。
これに対し、引用文献1、3、4及び5には、ポリエステル系繊維を用いた不織布として、繊維径の異なる複数種類のポリエステル系繊維を組み合わせて用いることが記載されているが、各引用文献の技術分野及び課題については、次のとおりである。
(a)引用文献1(特開2014−186857号公報)
「本発明の課題は・・・フィラー粒子、樹脂等を含有する塗工用スラリー塗工する処理等を施してリチウムイオン二次電池用セパレータとなるためのリチウムイオン二次電池用セパレータ基材において、塗工時に塗工筋等の塗工欠陥が発生し難く、また、塗工用スラリーのカバーリング性が良好である等、塗工適性に優れたリチウム二次電池用セパレータ基材を提供することである。」(【0011】)
(b)引用文献3(特開2017−183514号公報:申立人Bの甲2)
「本発明の課題は・・・熱放散シートにおける高効率の熱放散性と薄型化という要望に対応できる熱放散シート基材を提供することにある。」(【0008】)
(c)引用文献4(特開2013−53229号公報:申立人Bの甲3)
「本発明は・・・被貼着面の形状に対する追従性に優れ、かつ粘着剤等の裏抜けを防止することができる粘着テープ用基材を提供することを目的とする。」(【0006】)
(d)引用文献5(特開2013−171706号公報:申立人Bの甲4)
「本発明は・・・従来、作業性が悪く、生産速度を落として生産していた湿式抄造法で製造された不織布を効率良く熱カレンダー作業し、機械強度が強く、且つ内部短絡不良率が低いリチウムイオン二次電池用セパレータを得ることができるリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法と、該製造方法によって製造されるリチウムイオン二次電池用セパレータ及び該リチウムイオン二次電池用セパレータを具備してなるリチウムイオン二次電池を提供することにある。」(【0009】)
以上から、引用文献1、3〜5はいずれも引用発明2とは技術分野及び技術課題が異なるものであるから、引用発明2において、単繊維繊度1.1dtex以下の延伸ポリエステル繊維を1種類用いていたものを、繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径の異なる2種以上のものへと変更する動機付けはない。
b.したがって、相違点3に係る本件発明2の発明特定事項は、引用発明2及び引用文献1、3〜5に記載される技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
以上から相違点4について検討するまでもなく、引用発明2は、取消理由で示された他の証拠や、特許異議申立書に記載されている他の証拠を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 本件発明3,4について
本件発明3,4は、いずれも、本件発明2の発明特定事項をすべて含み、他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明2と同様に、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(3−3)小括
本件発明は、引用発明1に基づいても、引用発明2及び引用文献1、3〜5に記載される技術的事項に基づいても、当業者が容易に発明し得たものではないから、それらに係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2項に該当するものではない。

3 取消理由の通知において採用しなかった特許異議申立理由について
実施可能要件について
申立人Bは、本件発明の課題に「搬送性に優れ」た電磁波シールド材の提供が含まれるところ、「搬送性に優れ」た電磁波シールド材の意味内容が不明であるから、明細書に本件発明1〜5の電磁波シールド材について当業者が実施できる程度に記載されていないと指摘する(令和2年9月18日付け特許異議申立書43頁)。
この「搬送性」については、既に「2(1)ウ」で述べたように、背景技術の問題点を指摘した段落【0006】の記載によれば、「搬送性」とは不織布の搬送時に“皺”が生じないことを念頭に置いた概念であると理解できる。
この“皺”が生じるかどうかは、テンションの大きさなどの条件により変わりうることが想起されるものの、明細書には実施例が示されており、これらを参考にすれば、当業者が本件発明に係る電磁波シールド材を得ることができると認められる。
したがって、この申立人Bの指摘にしたがって取消理由があるとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本件請求項2〜4に係る特許は、通知された取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、本件請求項1及び請求項5は、本件訂正により削除され、請求項1及び請求項5に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】電磁波シールド材
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブの搬送性に優れ、且つ優れた電磁波シールド性を発現できる電磁波シールド材用不織布及び電磁波シールド材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は電磁波を発生している。そして、電磁波を電子機器の外部に漏らさないようにするために、また、電磁波により電子機器が誤作動を起こさないようにするために、電磁波シールド材が使用されている。電磁波シールド材としては、板金、金属を含む塗料、金属メッシュ、発泡金属等が挙げられる。また、ポリエステル系短繊維から形成される不織布に金属めっき処理を施してなる電磁波シールド材が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1には、非導電性繊維の織物、編物又は不織布の繊維の外周及び交叉部分の全周に連続した金属導電層を湿式めっき法により付着させた電磁波シールド材が開示されている。化学繊維として、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維が、基材自体の引張強伸度特性が優れており、しかも、めっき前処理工程における特性劣化を防止することができるので、好ましいことが記載されている。
【0004】
特許文献2には、湿式不織布に金属皮膜処理を施してなる電磁波シールド材であって、単繊維繊度が1.1dtex以下のポリエステル繊維を含み、かつ厚さが10〜30μmの範囲内であることを特徴とする電磁波シールド材が開示されている。
【0005】
近年の電子機器の小型化、高周波数化及び高性能化に伴い、より薄く、高電磁波シールド性の電磁波シールド材が求められている。具体的には、厚さが15μm以下であること、且つ100MHz〜10GHzの広い周波数範囲に優れた電磁波シールド性を示す電磁波シールド材が求められている。
【0006】
特許文献1及び2のように、不織布に金属めっき処理等の金属皮膜処理を施す場合、生産性の良いロール トゥ ロール(Roll to Roll)で加工を行うが、搬送時の不織布に皺が生じ、搬送性に優れない問題があった。
【0007】
また、特許文献2の実施例では、単繊維繊度が0.1dtexのポリエステル延伸繊維と単繊維繊度が0.2dtexである未延伸バインダー繊維を含み、湿式不織布の原紙目付が8g/m2であり、電磁波シールド材の目付が19g/m2であり、厚さが12μmである電磁波シールド材が開示されている。しかし、薄い電磁波シールド材が求められるにつれ、特許文献2の電磁波シールド材では、電磁波シールド性が十分に確保できない問題があった。また、金属皮膜が剥がれる問題が生じる場合があった。
【0008】
また、不織布に金属めっき処理を施した電磁波シールド材においては、ポリエステル系短繊維と金属めっき処理によって形成される金属皮膜とが密着していることが要求され、そのためにめっき前処理工程として、ポリエステル系短繊維にアルカリ処理を施すことが知られている。
【0009】
特許文献1には、ポリエステル繊維は、めっき前処理工程における特性劣化を防止することができると記載されている。しかし、通常、不織布のアルカリ処理は湿式処理であり、繊維が水槽内に脱落し、著しく操業性を低下させる場合があった。また、脱落した繊維が不織布に再付着することによって、金属めっき処理で欠陥が発生するという問題が発生する場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭48−40800号公報
【特許文献2】特開2014−75485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の課題は、搬送性に優れ、且つ優れた電磁波シールド性を発現できる電磁波シールド材用不織布、及び該電磁波シールド材用不織布を使用した電磁波シールド材を提供することにある。
【0012】削除
【0013】削除
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記発明を見出した。
【0015】
<1>湿式不織布である電磁波シールド材用不織布において、湿式不織布が、繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有することを特徴とする電磁波シールド材用不織布。
【0016】削除
【0017】削除
【0018】
<4>上記<1>に記載の電磁波シールド材用不織布に、金属皮膜処理が施されていることを特徴とする電磁波シールド材。
【0019】
<5>金属皮膜処理が、無電解金属めっき処理、電気めっき処理、金属蒸着処理及びスパッタリング処理からなる群から選択される1種以上の処理であることを特徴とする上記<4>記載の電磁波シールド材。
【0020】
<6>金属皮膜処理が、スパッタリングによってニッケル被覆を形成させる処理、電気めっきによって銅被覆を形成させる処理及び電気めっきによってニッケル被覆を形成させる処理をこの順に含むことを特徴とする上記<4>記載の電磁波シールド材。
【0021】削除
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の効果は、搬送性に優れ、且つ優れた電磁波シールド性を発現できる電磁波シールド材用不織布、及び該電磁波シールド材用不織布を使用した電磁波シールド材を提供できることである。
【0023】削除
【0024】削除
【図面の簡単な説明】
【0025】削除
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の電磁波シールド材用不織布及び電磁波シールド材について詳説する。
【0027】
−電磁波シールド材用不織布<1>−
本発明の電磁波シールド材用不織布<1>は、繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有する湿式不織布であることを特徴とする。
【0028】
一般的に、ロール トゥ ロール加工における搬送時の不織布には、MD(Machine Direction)方向にテンションがかかるため、不織布が伸びてしまい、それが原因で皺が生じてしまう。本発明の電磁波シールド材用不織布<1>は、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有するため、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される繊維径が同一の1種の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有する不織布と比べて、伸びにくく、そのため搬送時に皺になりにくい。また、延伸ポリエステル系短繊維の繊維径が12μm以上と大きい不織布を使用した場合、薄い電磁波シールド材が得られ難い。本発明の電磁波シールド材用不織布<1>は、繊維径が12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維と繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを含むことによって、薄く、且つ搬送性に優れるという効果を達成できる。
【0029】
一般的に電磁波シールド性は、電磁波の吸収反射損失、反射損失、多重反射損失により達成される。本発明の電磁波シールド材用不織布<1>において、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維を用いることにより、電磁波シールド材内に浸入した電磁波が電磁波シールド材内で反射を繰り返し易くなり、多重反射損失の向上による優れた電磁波シールド性が得られる。
【0030】
本発明の電磁波シールド材用不織布<1>において、延伸ポリエステル系短繊維と未延伸ポリエステル系短繊維の質量含有比率は、10:90〜90:10であることが好ましく、20:80〜80:20であることがより好ましく、30:70〜70:30であることがさらに好ましい。未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が湿式不織布を構成する繊維全体の10質量%未満であると、電磁波シールド材用不織布として必要な強度が発現しなくなることがある。一方、未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が90質量%を超えると、均一性を損なう場合がある。
【0031】
本発明の電磁波シールド材用不織布<1>において、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維以外の延伸ポリエステル系短繊維を使用しても良い。また、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維以外の未延伸ポリエステル系短繊維を使用しても良い。すなわち、繊維径が3μm未満の延伸ポリエステル系短繊維、繊維径が12μm以上の延伸ポリエステル系短繊維、繊維径が3μm未満の未延伸ポリエステル系短繊維、繊維径が5μm超の未延伸ポリエステル系短繊維を使用しても良い。これらは、単独で使用しても良いし、2種類以上の繊維径の繊維を併用しても良い。
【0032】
本発明の電磁波シールド材用不織布<1>において、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維については、その質量含有率は、含有する全延伸ポリエステル系短繊維中、1〜100質量%であることが好ましく、3〜100質量%であることがより好ましい。繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維の含有率が全延伸ポリエステル系短繊維中1質量%未満である場合、薄く、且つ搬送性の優れた電磁波シールド材が得られない場合がある。
【0033】
また、本発明の電磁波シールド材用不織布<1>において、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維については、その質量含有率は、含有する全未延伸ポリエステル系短繊維中、1〜100質量%が好ましく、2〜100質量%がより好ましい。繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が1質量%未満である場合、併用する繊維径によっては比表面積が小さくなり、優れた電磁波シールド性が発現し難くなる場合がある。また、湿式不織布の強度が発現し難くなる場合がある。
【0034】
本発明の電磁波シールド材用不織布<1>の厚さは、電子機器で使用する目的から、7〜30μmであることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。目付(坪量)は5〜30g/m2であることが好ましく、15g/m2以下であることがより好ましい。目付が5g/m2未満であると、均一性を得ることが難しくなり、電磁波シールド性の効果にバラつきが発生しやすくなる。
【0035】削除
【0036】削除
【0037】削除
【0038】削除
【0039】削除
【0040】削除
【0041】削除
【0042】削除
【0043】削除
【0044】削除
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【0047】削除
【0048】削除
【0049】
−ポリエステル系短繊維−
本発明において、延伸ポリエステル系短繊維は、熱カレンダー処理によっても、溶融又は軟化しにくく、湿式不織布の骨格を形成する主体繊維である。
【0050】
本発明において、未延伸ポリエステル系短繊維は、熱カレンダー処理によって、溶融又は軟化し、湿式不織布の強度を高めるバインダー繊維として機能する。未延伸ポリエステル系短繊維の融点は、220℃〜250℃が好ましい。未延伸ポリエステル系短繊維の融点が220℃未満の場合、熱カレンダー処理時の熱ロールに湿式不織布が貼り付いてしまい、シートにならない場合がある。250℃を超える場合、繊維が接着せずに湿式不織布の強度が発現しない場合がある。未延伸ポリエステル系短繊維の融点は、より好ましくは225℃以上250℃以下である。
【0051】
未延伸ポリエステル系短繊維の融点は、示差走査熱量測定装置にて窒素雰囲気で昇温速度10℃/min、25℃から300℃まで昇温した時のピーク温度である。
【0052】
なお、本発明の実施例において、ポリエステル系短繊維の繊維径は、不織布製造前の繊維径を記載している。ポリエステル系短繊維の繊維径は、顕微鏡で3000倍の湿式不織布又は電磁波シールド材断面の拡大写真を撮り、ポリエステル系短繊維の断面積を測定し、繊維の断面形状が真円として算出した直径として測定することができ、その場合、断面積が略同一である10本以上の繊維の算術平均値を求めることが好ましい。
【0053】
ポリエステル系短繊維の繊維長は、好ましくは1〜20mmであり、より好ましくは1〜10mmであり、さらに好ましくは2〜8mmである。ポリエステル系短繊維の繊維長が1mm未満である場合、湿式不織布として必要な強度が発現し難くなる場合がある。ポリエステル系短繊維の繊維長が20mm超の場合、均一性を損なう場合がある。
【0054】
本発明において、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。ポリエステル系短繊維は、電磁波シールドの厚さを薄くするために繊維径を小さくできること、抄紙のしやすさ、めっき処理における湿式でのアルカリ処理時の寸法安定性から好ましい。ポリエステル系短繊維は、単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0055】
−湿式不織布−
繊維をシート状に形成せしめる方法としては、スパンボンド法、メルトブロー法、静電紡糸法、湿式法等の各種製造方法が挙げられるが、本発明の電磁波シールド材用不織布は湿式法(抄紙法)によってシート状に形成された湿式不織布であり、強度に優れ、均一性の高い不織布である。また、繊維間を接合する方法としては、ケミカルボンド法、熱融着法等の各種方法が挙げられる。これらの中でも、耐久性や強度に優れ、不織布表面が平滑であることから、熱融着法が好ましい。
【0056】
湿式法における熱融着法としては、抄紙法で得られたシートを、多筒式ドライヤー、ヤンキードライヤー、エアースルードライヤー等の抄紙後に使用される乾燥機で熱乾燥する際に熱融着する方法を用いることができる。また、金属製熱ロール/金属製熱ロール、金属製熱ロール/弾性ロール、金属製熱ロール/コットンロールなどのロール組み合わせを有する熱カレンダー装置による熱カレンダー処理によって熱融着する方法も用いることができる。熱乾燥又は熱カレンダー処理により、バインダー成分が熱溶融し、熱融着が生じる。
【0057】
また、熱カレンダーの条件は以下に例示することができるが、これらに限定されるものではない。熱カレンダー処理における熱ロールの温度は、200℃以上215℃以下が好ましい。熱ロールの温度が200℃未満の場合、繊維同士が接着せずに強度が発現しないという問題が発生する場合がある。また、逆に、熱ロールの温度が215℃超である場合、熱ロールに湿式不織布が貼り付いてしまい、シートにならないという問題が発生する場合がある。熱ロールの温度は、より好ましくは203℃以上210℃以下であり、さらに好ましくは205℃以上である。
【0058】
強度を発現するために、熱カレンダー処理における圧力(線圧)は、好ましくは50〜250kN/mであり、さらに好ましくは80〜150kN/mである。圧力が50kN/m未満である場合、表面の平滑性を損なう可能性があり、また、速度を低下させないと、厚さが薄くならない可能性がある。圧力が250kN/m超の場合、シートが圧力に耐えられずに破断する可能性がある。熱カレンダーの処理速度は1〜300m/minが好ましい。処理速度が1m/min以上であることで、作業効率が良好となる。処理速度が300m/min以下とすることで、湿式不織布に熱を伝導させ、熱融着の実効を得やすくなる。熱カレンダーのニップ回数は湿式不織布に熱を伝導することができれば特に限定するものではないが、金属製熱ロール/弾性ロールの組み合わせでは、湿式不織布の表裏から熱を伝導させるために2回以上ニップしても良い。
【0059】
−電磁波シールド材−
本発明の電磁波シールド材は、本発明の電磁波シールド材用不織布に金属皮膜処理が施されていることを特徴とする。すなわち、本発明の電磁波シールド材は、本発明の電磁波シールド材用不織布及び金属皮膜を含むことを特徴とする。
【0060】
本発明において、金属皮膜処理としては、無電解金属めっき処理、電気めっき処理、金属蒸着処理、スパッタリング処理などが挙げられる。これらの処理の中から選択される1以上の処理を施すことができる。中でも、薄くでき、表面抵抗値が低くなりやすく、金属皮膜が剥がれ難くなることから、スパッタリング処理してから電気めっき処理を行うことが好ましい。前記金属皮膜は1層でもよいし、2層以上の多層であってもよい。
【0061】
金属皮膜処理に用いられる金属の種類としては、金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、スズ、又はこれらの合金などが挙げられる。中でも、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル及びスズからなる群より選択される1種以上の金属が好ましく、導電性と製造コストとを考慮して、銅、ニッケルがより好ましい。
【0062】
本発明では、金属皮膜処理が、スパッタリングによってニッケル被覆を形成させる処理、電気めっきによって銅被覆を形成させる処理及び電気めっきによってニッケル被覆を形成させる処理をこの順に含むことがより好ましい。まず、湿式不織布にスパッタリング処理で金属皮膜を形成する。スパッタリング処理における金属は、ニッケルが好ましい。スパッタリング処理後、電気めっきで金属皮膜を積層させる。電気めっきの金属は、銅が好ましい。さらに、防錆のため、ニッケル等の防錆性の良好な金属をその外層に積層してもよい。その積層方法は電気めっきによる方法が好ましい。
【0063】
本発明の電磁波シールド材の厚さは、15μm以下であることが好ましく、13μm以下であることがより好ましく、12μm以下であることがさらに好ましい。電磁波シールド材の厚さが15μmよりも大きいと、電子機器、通信機器、電化製品などに使えない場合がある。また、電磁波シールド材の厚さは、7μm以上であることが好ましい。なお、厚さは、JIS P8118:2014に記載されている方法で測定した。
【0064】
また、本発明の電磁波シールド材の表面抵抗値が0.03Ω/□以下であることが好ましく、0.01Ω/□以下であることがより好ましい。また、40MHz〜18GHzでの電磁波シールド性が50dB以上であることが好ましい。さらに、40MHz〜10GHzでの電磁波シールド性が60dB以上であることが好ましい。さらに、40MHz〜1GHzでの電磁波シールド性が70dB以上であることが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例4は参考例であり、実施例において、%及び部は、断りの無い限り、全て質量基準である。
【0066】
≪本発明の電磁波シールド材用不織布<1>に関する実施例≫
【0067】
[実施例1]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とをパルパーにより水中に分散し、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを、通気度275cm3/cm2/sec、組織[上網:平織、下網:畝織]の抄造ワイヤーを設置した傾斜型抄紙機にて、湿式法で抄き上げ、135℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系短繊維を熱融着させて強度を発現させ、目付10g/m2の湿式不織布とした。さらに、この湿式不織布を、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダー装置を使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度30m/分の条件で熱カレンダー処理し、厚さ15μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0068】
[実施例2]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維50質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ17μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0069】
[実施例3]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維50質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0070】
[実施例4]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維45質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維45質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維10質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0071】
[実施例5]
繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0072】
[実施例6]
繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0073】
[実施例7]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度1.7dtex(繊維径12.0μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0074】
[実施例8]
繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0075】
[実施例9]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部と、繊度1.2dtex(繊維径10.5μm)、繊維長5mmの未延伸PET系短繊維10質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0076】
[実施例10]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維15質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維15質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維70質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0077】
[比較例1]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度1.2dtex(繊維径10.5μm)、繊維長5mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ17μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0078】
[比較例2]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ15μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0079】
[比較例3]
繊度1.7dtex(繊維径12.0μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度3.3dtex(繊維径17.5μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ21μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0080】
[比較例4]
繊度1.7dtex(繊維径12.0μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ18μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0081】
[比較例5]
繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ15μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0082】
実施例及び比較例で作製した電磁波シールド材用不織布に対して無電解めっき法によってニッケル皮膜で覆い、次に、電気めっき法によって銅皮膜とニッケル皮膜を順に積層して、電磁波シールド材を作製した。
【0083】
<評価>
[搬送性]
電磁波シールド材用不織布を一定のテンションで搬送し、その時の皺の発生状況を下記基準で評価した。
【0084】
「○」皺が入らずに、搬送性が非常に良い。
「△」電磁波シールド材用不織布の一部に皺が入るが、搬送性に問題は無い。
「×」加工ができない程に、電磁波シールド材用不織布の全体に皺が入り、搬送性が劣る。
【0085】
[電磁波シールド性(電界)]
同軸管法による電磁波シールド性(電界)に基づき測定した。周波数40MHz〜3GHzの範囲では同軸管法39Dによって測定し、周波数500MHz〜18GHzの範囲では、同軸管法GPC7によって測定した。周波数500MHz〜3GHzは、同軸管法39Dと同軸管法GPC7の両方で測定するが、低い数値を採用した。
【0086】
電磁波シールド性に記載の数値が高い程、電磁波シールド性が優れていることを示す。
【0087】
【表1】

【0088】
実施例1〜10の電磁波シールド材用不織布は、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有する湿式不織布であることから、搬送性に優れかつ優れた電磁波シールド性がある。実施例4の電磁波シールド材用不織布は、少し強度が低下したが、搬送性に問題は無く、電磁波シールド性も優れていた。
【0089】
これに対し、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有していない比較例1、2、3及び4の電磁波シールド材用不織布は、電磁波シールド性に劣るものであった。すなわち、未延伸ポリエステル系短繊維の繊維径が5μm超である比較例1の電磁波シールド材用不織布、繊維径が12μm以上の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種の延伸ポリエステル系短繊維を含有している比較例3の電磁波シールド材用不織布、延伸ポリエステル系短繊維の繊維径が12μmである比較例4の電磁波シールド材用不織布、及び、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維を含有しているものの繊維径が同一の1種の延伸ポリエステル系短繊維のみ(繊維径5.3μm)を含有している比較例2の電磁波シールド材用不織布は、多重反射損失が低下したと考えられる。
【0090】
また、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維を含有しているものの繊維径が同一の1種の延伸ポリエステル系短繊維のみ(繊維径3.0μm)を含有している比較例5の電磁波シールド材用不織布は、ウェブの搬送時に皺が入り、搬送性に劣る。小さい繊維径の延伸ポリエステル系短繊維のみを含むことによってウェブがしなやかになり、伸び易くなり、皺が入りやすくなったと考えられる。
【0091】削除
【0092】削除
【0093】削除
【0094】削除
【0095】削除
【0096】削除
【0097】削除
【0098】削除
【0099】削除
【0100】削除
【0101】削除
【0102】削除
【0103】削除
【0104】削除
【0105】削除
【0106】削除
【0107】削除
【0108】削除
【0109】削除
【0110】削除
【0111】削除
【0112】削除
【0113】削除
【0114】削除
【0115】削除
【0116】削除
【0117】削除
【0118】削除
【0119】削除
【0120】削除
【0121】削除
【0122】削除
【0123】削除
【0124】削除
【0125】削除
【0126】削除
【0127】削除
【0128】削除
【0129】削除
【0130】削除
【0131】削除
【0132】削除
【0133】削除
【0134】削除
【0135】削除
【0136】削除
【0137】削除
【0138】削除
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の電磁波シールド材用不織布及び電磁波シールド材は、電子機器用、通信機器用、電化製品用などとして好適に使用される。これらの機器や製品には、携帯電話、スマートフォン、モバイルフォン、パーソナルコンピューター、モバイルなどの機器やこれらを収納するケース、テレビジョンや洗濯機などの電化製品が含まれる。特に、本発明の電磁波シールド材は、プラスチックハウジング、フレキシブルプリント基板、電線ケーブル、コネクターケーブル等に、接着、圧着、融着、巻きつけ等により固定することにより好適に使用される。
【図面】
【図1】削除
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】削除
【請求項2】
湿式不織布である電磁波シールド材用不織布において、湿式不織布が、繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有し、
前記延伸ポリエステル系短繊維と前記未延伸ポリエステル系短繊維との質量含有比率が20:80〜80:20である電磁波シールド材用不織布に、金属皮膜処理が施されていることを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項3】
金属皮膜処理が、無電解金属めっき処理、電気めっき処理、金属蒸着処理及びスパッタリング処理からなる群から選択される1種以上の処理であることを特徴とする請求項2記載の電磁波シールド材。
【請求項4】
金属皮膜処理が、スパッタリングによってニッケル被覆を形成させる処理、電気めっきによって銅被覆を形成させる処理及び電気めっきによってニッケル被覆を形成させる処理をこの順に含むことを特徴とする請求項2記載の電磁波シールド材。
【請求項5】削除
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-10-29 
出願番号 P2019-569514
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (D04H)
P 1 651・ 121- YAA (D04H)
P 1 651・ 113- YAA (D04H)
P 1 651・ 536- YAA (D04H)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 石井 孝明
特許庁審判官 藤原 直欣
藤井 眞吾
登録日 2020-03-02 
登録番号 6669940
権利者 三菱製紙株式会社
発明の名称 電磁波シールド材用不織布及び電磁波シールド材  
代理人 白石 泰三  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 白石 泰三  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 鹿角 剛二  
代理人 小野 尚純  
代理人 大島 正孝  
代理人 鹿角 剛二  
代理人 大島 正孝  
代理人 小野 尚純  
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