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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 F16G 審判 全部申し立て 2項進歩性 F16G 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 F16G 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 F16G 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 F16G |
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管理番号 | 1382374 |
総通号数 | 3 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-03-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-02-08 |
確定日 | 2021-11-01 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6741889号発明「ベルト及びベルトの状態情報取得システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6741889号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜12〕及び〔13、14〕について訂正することを認める。 特許第6741889号の請求項1〜8及び10〜14に係る特許を維持する。 特許第6741889号の請求項9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6741889号の請求項1〜14に係る特許についての出願は、令和2年1月20日(優先権主張 平成31年1月28日)に出願され、令和2年7月29日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月19日に特許掲載公報が発行された。その後その特許について、令和3年2月5日に特許異議申立人佐藤雅彦(以下、「異議申立人A」という。)により、また、令和3年2月19日に特許異議申立人中谷浩美(以下、「異議申立人B」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年4月16日付けの取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和3年6月18日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。 なお、特許権者による訂正の請求に対して、異議申立人A及びBから意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和3年6月18日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所である。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の 「背面側に配置される背面層と、芯体を有する芯体層と、を含む積層体を備えたベルトであって、 前記積層体に設けられ、当該ベルトの状態を検知するセンサと、 同じく前記積層体に設けられ、ICチップ及びアンテナを有しており、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFIDと、を備える、ベルト。」との記載を、 「背面側に配置される背面層と、芯体を有する芯体層と、を含む積層体を備えたベルトであって、 前記積層体に設けられ、当該ベルトの状態を検知するセンサと、 同じく前記積層体に設けられ、ICチップ及びアンテナを有しており、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFIDと、を備え 前記アンテナは、表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなる、ベルト。」と訂正する(請求項1を引用する請求項2〜8、10〜12も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7の 「前記RFIDは、前記ICチップと前記アンテナとを接続する接続導電線をさらに備え、 前記ICチップと前記アンテナとは、所定方向に沿って配列されており、 前記アンテナは、1本の導電性線状物質からなり、前記アンテナの前記接続導電線に接続された接続部から前記所定方向と直交する直交方向の一方側と他方側とに延びるダイポールアンテナである、請求項1〜6の何れか一項に記載のベルト。」との記載を、 「前記RFIDは、前記ICチップと前記アンテナとを接続する接続導電線をさらに備え、 前記ICチップと前記アンテナの前記接続導電線に接続された接続部とは、所定方向に沿って配列されており、 前記アンテナは、1本の導電性線状物質からなり、前記接続部から前記所定方向と直交する直交方向の一方側と他方側とに延びるダイポールアンテナである、請求項1〜6の何れか一項に記載のベルト。」と訂正する(請求項7を引用する請求項11及び12も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (4)訂正事項4 ・訂正事項4−1 特許請求の範囲の請求項11の「前記RFIDは、前記センサを備えたセンサ一体型のRFIDである、請求項1〜10の何れか一項に記載のベルト。」との記載を、 「前記RFIDは、前記センサを備えたセンサ一体型のRFIDである、請求項1〜8、10の何れか一項に記載のベルト。」と訂正する(請求項11を引用する請求項12も同様に訂正する。)。 ・訂正事項4−2 特許請求の範囲の請求項12の「前記ベルトは、複数の前記センサ及び複数の前記RFIDを有し、 該複数の前記センサは、それぞれが、少なくともいずれかの前記RFIDに接続されている、請求項1〜11の何れか一項に記載のベルト。」との記載を、 「前記ベルトは、複数の前記センサ及び複数の前記RFIDを有し、 該複数の前記センサは、それぞれが、少なくともいずれかの前記RFIDに接続されている、請求項1〜8、10〜11の何れか一項に記載のベルト。」と訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項13の 「背面側に配置される背面層と芯体を有する芯体層とを含む積層体、 前記積層体に設けられたベルトの状態を検知するセンサ、 及び、同じく前記積層体に設けられた、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFID、を備えたベルトと、 前記RFIDからの信号を受信するリーダ、を有し、 前記RFIDは、前記リーダから送信された電磁波によって作動し、ベルトの状態情報を前記リーダに送る、ベルトの状態情報取得システム。」との記載を、 「背面側に配置される背面層と芯体を有する芯体層とを含む積層体、 前記積層体に設けられたベルトの状態を検知するセンサ、 及び、同じく前記積層体に設けられた、ICチップ及び表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなるアンテナを有しており、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFID、を備えたベルトと、 前記RFIDからの信号を受信するリーダ、を有し、 前記RFIDは、前記リーダから送信された電磁波によって作動し、ベルトの状態情報を前記リーダに送る、ベルトの状態情報取得システム。」と訂正する(請求項13を引用する請求項14も同様に訂正する。)。 (6)一群の請求項について 訂正前の請求項1〜12について、請求項2〜12は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、訂正事項1〜4は一群の請求項〔1〜12〕について請求されたものである。 訂正前の請求項13及び14について、請求項14は、請求項13を引用するものであるから、訂正事項5は一群の請求項〔13、14〕について請求されたものである。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「アンテナ」について、訂正前の請求項9に記載の要件を付加し限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「アンテナ」について、訂正前の請求項9に記載の要件を付加し限定するものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項7の「前記ICチップと前記アンテナとは、所定方向に沿って配列されており」との記載と、同じく請求項7の「前記アンテナは、・・・前記所定方向と直交する直交方向の一方側と他方側とに延びるダイポールアンテナである」との記載が整合しているとはいえず、不明瞭であったものを明瞭にする訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。 訂正事項2よって規定された、「前記ICチップと前記アンテナの前記接続導電線に接続された接続部とは、所定方向に沿って配列されて」いる点、及び、「前記アンテナは、・・・前記接続部から前記所定方向と直交する直交方向の一方側と他方側とに延びるダイポールアンテナである」点は、本件特許明細書の段落【0082】及び【図9】に記載されているといえるから、訂正事項2は、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項9を削除するというものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4(訂正事項4−1及び4−2)は、訂正後の請求項11及び12において、請求項9を引用しない記載とすることによって、訂正事項3により削除された請求項9との関係を明瞭化するための訂正であり、不明瞭な記載の釈明を目的とするものであるといえ、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項13に係る発明の「パッシブ型のRFID」について、ICチップを有していること、及び訂正前の請求項9に記載の要件を付加し限定するものであるから、特許の範囲の減縮を目的とするものである。 また、パッシブ型のRFIDがICチップを有している点は、本件特許の明細書の段落【0010】や【0075】に記載されているから新規事項を追加するものではなく、また、パッシブ型のRFIDに訂正前の請求項9に記載の要件を付加することも、新規事項を追加するものではない。そして、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜12〕及び〔13、14〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1〜14に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明14」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 背面側に配置される背面層と、芯体を有する芯体層と、を含む積層体を備えたベルトであって、 前記積層体に設けられ、当該ベルトの状態を検知するセンサと、 同じく前記積層体に設けられ、ICチップ及びアンテナを有しており、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFIDと、を備え 前記アンテナは、表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなる、ベルト。 【請求項2】 前記芯体は心線であって、 前記積層体は、前記背面層と、内面側に配置される内面層と、前記背面層と前記内面層との間に埋設される前記心線を有する心線層と、を含み、 前記ベルトは、伝動ベルトである、請求項1に記載のベルト。 【請求項3】 前記RFIDは、前記積層体の前記芯体よりも背面側に配置されている、請求項1又は2に記載のベルト。 【請求項4】 前記RFIDは、前記積層体に埋設されている、請求項1〜3の何れか一項に記載のベルト。 【請求項5】 前記センサと前記RFIDは、前記積層体の同一層に配置されている、請求項1〜4の何れか一項に記載のベルト。 【請求項6】 前記アンテナはメアンダライン形状の導電性線状物質からなる、請求項1〜5の何れか一項に記載のベルト。 【請求項7】 前記RFIDは、前記ICチップと前記アンテナとを接続する接続導電線をさらに備え、 前記ICチップと前記アンテナの前記接続導電線に接続された接続部とは、所定方向に沿って配列されており、 前記アンテナは、1本の導電性線状物質からなり、前記接続部から前記所定方向と直交する直交方向の一方側と他方側とに延びるダイポールアンテナである、請求項1〜6の何れか一項に記載のベルト。 【請求項8】 前記ICチップと前記アンテナとは、電磁結合によって無線接続されている、請求項1〜6の何れか一項に記載のベルト。 【請求項9】 削除 【請求項10】 前記RFIDは、ベースをさらに有し、 前記ICチップは前記ベースに設けられており、 前記RFIDは前記積層体の前記背面層又は前記内面層に設けられ、 前記ベースの材質が、前記積層体の前記RFIDが設けられる層の材質と同一である、請求項2に記載のベルト。 【請求項11】 前記RFIDは、前記センサを備えたセンサ一体型のRFIDである、請求項1〜8、10の何れか一項に記載のベルト。 【請求項12】 前記ベルトは、複数の前記センサ及び複数の前記RFIDを有し、 該複数の前記センサは、それぞれが、少なくともいずれかの前記RFIDに接続されている、請求項1〜8、10〜11の何れか一項に記載のベルト。 【請求項13】 背面側に配置される背面層と芯体を有する芯体層とを含む積層体、 前記積層体に設けられたベルトの状態を検知するセンサ、 及び、同じく前記積層体に設けられた、ICチップ及び表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなるアンテナを有しており、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFID、を備えたベルトと、 前記RFIDからの信号を受信するリーダ、を有し、 前記RFIDは、前記リーダから送信された電磁波によって作動し、ベルトの状態情報を前記リーダに送る、ベルトの状態情報取得システム。 【請求項14】 前記芯体は、心線であり、 前記積層体は、前記背面層と、内面側に配置される内面層と、前記背面層と前記内面層との間に埋設される前記心線を有する心線層と、を含み、 前記ベルトは、伝動ベルトである、請求項13に記載のベルトの状態情報取得システム。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1〜14に係る特許に対して当審が令和3年4月16日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。 1)本件特許の請求項1、4、10、11及び13に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の甲第2号証に記載された発明であり、また、請求項1、2、4及び13に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の甲第7号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 2)本件特許の請求項1〜8、10〜14に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証〜甲第11号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 3)本件の請求項7、9、11及び12に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 記 ○理由1)及び2)について 引用文献 甲第1号証:中国実用新案第202704466号明細書 甲第2号証:米国特許第8829929号明細書 甲第3号証:特開2002−195349号公報 甲第4号証:台湾実用新案第M541059号明細書 甲第5号証:特開2013−171428号公報 甲第6号証:国際公開第2017/135331号 甲第7号証:米国特許出願公開第2012/0323371号明細書 甲第8号証:特許第5727145号公報 甲第9号証:特表2009−535699号公報 甲第10号証:特許第6406302号公報 甲第11号証:特許第5149681号公報 甲第1号証〜甲第6号証は、それぞれ、異議申立人Aの提出した甲第1号証〜甲第6号証である。また、甲第7号証〜甲第11号証は、それぞれ、異議申立人Bの提出した甲第1号証〜甲第5号証である。 ○理由3)について 請求項7の記載は技術的に矛盾があり不明確である。 2 甲各号証の記載の事項等 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証には次の記載がある(訳は、異議申立人の提出した訳を基に当審で訳したものである。甲第2号証、甲第4号証及び甲第7号証においても同様。)。 (ア)「 」(第2頁第1行〜第12行) (当審訳) 「実用新案登録請求の範囲 1.導電性ゴム、パッシブRFIDタグ、ベルト変位測定検知システム、偏向および滑り防止検知システム、主制御システムおよびホストコンピュータシステムを含み、前記導電性ゴムの2つのストリップを組み合わせてコンベヤベルトに予め敷設され、前記パッシブRFIDタグは、純Sn電気メッキまたはニッケル−パラジウム−金の事前メッキが施されたパッシブRFIDタグリードフレームを使用して電気メッキプロセスによってパッケージ化されていることを特徴とする新しいコンベヤベルト耐引裂監視システムであって、前記コンベヤベルトに敷設された2つの前記導電性ゴムに接続された前記パッシブRFIDタグを備え、前記パッシブRFIDタグは前記コンベヤベルトに予め敷設されている。 2.前記パッシブRFIDタグの内部に、前後のタグのアドレス情報及び変位情報が書き込まれていることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト耐引裂監視システム。 3.RFIDリーダは、前記主制御システム内で提供されていることを特徴とする請求項2に記載のコンベヤベルトの耐引裂監視システム。 4.前記RFIDリーダがコマンドを発行するための変調方式が振幅変調であり、前記パッシブRFIDタグが前記RFIDリーダにデータを送信するための変調方式がダブルサブキャリア変調の2段変調であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンベヤベルトの引裂き防止監視システム。」 (イ)「 」 (当審訳) 「[0001] この実用新案は、材料搬送技術の分野に属し、具体的には、新しいコンベヤベルト耐引裂監視システムに関する。」 (ウ)「 」 「[0006] 主制御システムにはRFIDリーダが搭載されていて、RFIDリーダはアンテナを介して特定の周波数の無線周波数信号を送信し、パッシブRFIDタグの誘導電流を生成し、リーダの作業領域に入るパッシブRFIDタグにエネルギーを提供する。パッシブRFIDタグはエネルギーを得てアクティブになる。 このパッシブRFIDタグは、内部に格納されているアドレス情報と、外部の導電性ゴムで生成された状態情報を、内蔵アンテナを介してRFIDリーダに送出する。」 (エ)「 」 (当審訳) 「[0015] 図1及び図2に示すように、本実用新案は、導電性ゴム5、パッシブRFIDタグ4、ベルト変位測定検知システム、偏向及び滑り防止検知システム、主制御システム及びホストコンピュータシステムを含んでいる。導電性ゴム5は予めコンベヤベルトに敷設され、コンベヤベルトはリターンコンベヤベルト6及びプロセスコンベヤベルト7を含んでいる。パッシブRFIDタグ4は、純Sn電気メッキまたはニッケル−パラジウム−金の事前メッキが施されたパッシブRFIDタグリードフレームを使用して電気メッキプロセスによってパッケージ化されている。コンベヤベルトに敷設されたパッシブRFIDタグ4と2つの導電性ゴム5は接続されている。パッシブRFIDタグ4はコンベヤベルトに予め敷設されている。 パッシブRFIDタグ4には、前後のタグのアドレス情報と変位情報が書き込まれている。主制御システムには、RFIDリーダ3が設置されている。RFIDリーダ3は、アンテナを介して特定の周波数の無線周波数信号を送信し、パッシブRFIDタグ4の誘導電流を生成し、リーダの作業領域に入るパッシブRFIDタグ4にエネルギーを提供し、パッシブRFIDタグ4はエネルギーを得てアクティブになって、パッシブRFIDタグ4は、内部にすでに格納されているアドレスコード情報と外部の導電性ゴム5で生成された状態情報とを、内蔵アンテナを介してRFIDリーダ3に送出する。 [0016] また、RFIDリーダ3がコマンドを発行するための変調方式は振幅変調であり、パッシブRFIDタグ4がリーダにデータを送信するための変調方式は、ダブルサブキャリア変調の2段変調である。 [0017] 作動原理は次のとおりである。カプセル化されたパッシブRFIDタグ4と導電性ゴム5は、コンベヤベルトに前もって埋められ、RFIDのリーダ3は調節可能なアダプターのアームを介して支持フレーム1で固定され、ベルトはモーターによって運転される。3本の鎖状のガイドローラー2によって各横断面は直線運動のためのベルトを保持し、同時に運ばれた材料の重力に耐えることができる。コンベヤベルトが動いて、ベルトに埋め込まれたパッシブRFIDタグ4がRFIDリーダ3の有効範囲に入ると、RFIDリーダ3はパッシブRFIDタグ4から信号を受信する。パッシブRFIDタグ4にはアドレス情報、導電性ゴム5のオンとオフの状態情報と上下のパッシブRFIDタグ4の距離情報が含まれている。異物がローラーに飛び散ってベルトに引っ掻き傷が付くと、必然的に導電性ゴム5が破損する。この状態情報は、リアルタイムでパッシブRFIDタグ4のストレージビットに反映され、状態情報としてRFIDリーダ3によって読み取られ、RFIDリーダ3独自のRS485通信インタフェースを介して主制御システムに送信される。プロセッサは、ユーザによって予め定義された処理メカニズムに応じて引き裂き情報を処理した後、ロスを最小限に抑えるために、ベルトの動作を制御する処理指示を出す。 [0018] リターンコンベヤベルト6には、RFIDリーダ3が設置されている。搬送ベルトの受け口に大量の落下物があることによる振動により、ベルトが上下に跳ね上がり、RFIDリーダ3が正常に読み取れなくなるおそれかおる。材料はプロセスコンベヤベルトで搬送され、リターンコンベヤベルト6には材料がないので、材料の重力や落下する材料の衝撃力の影響を最も受け難い。 パッシブRFIDタグ4はベルトの外縁に予め埋設されており、導電性ゴム5は横方向の検出範囲を最大にするためにベルトにまたがっている。 RFIDリーダ3はパッシブRFIDタグ4と垂直に設置されており、RFIDリーダ3が送信する磁界の強度を高め、両者の間で信号の強度が最大になるようにしている。 [0019] また、パッケージを完成した後、パッシブRFIDタグ4は、高温耐性と耐疲労変形性を有し、導電性ゴム5と接続するため2本のピンが外に残されていて、パッケージを完成したパッシブRFIDタグ4は、導電性ゴム5と共にコンベヤベルトに予め埋設されている。RFIDリーダ3がコマンドを送信する際、RF層内で使用される変調方式は振幅変調方式である。この変調方式では、コマンドを送信しながら、電磁エネルギーの一部を、パッシブRFIDタグ4のための電気エネルギーに変換することができる。パッシブRFIDタグ4からRFIDリーダ3への変調方式は、デュアルサブキャリア変調の2段階変調である。タグデータのエンコーディングは、マンチェスターのコーディングを採用している。 このコーディング形式は、正確なクロック情報を含んでいるので、簡単にデータ交換の時間を見ることができる。各RFIDタグには、前後のタグのアドレスと変位情報が書き込まれていて、各タグの位置情報を正確に把握することができる。コンベヤベルトに埋設されたパッシブRFIDタグ4の間隔は、コンベヤベルトの長さやユーザの客観的な現場条件の評価によって決定される。」 イ 甲第1号証の記載から、甲第1号証には次の技術的事項が記載されているといえる。 1A:材料を運搬するリターンコンベヤベルト6及びプロセスコンベヤベルト7とからなるコンベヤベルト(段落[0015])。 1B:コンベヤベルトの引き裂きの有無を検知する2本の導電性ゴム5がコンベヤベルトに敷設、埋設されている(段落[0015]、[0017]〜[0019])。 1C:コンベヤベルトには、パッシブRFIDタグ4が予め敷設、埋設されている。このパッシブRFIDタグ4は、内部に格納されているアドレス情報と、外部の導電性ゴム5で生成された状態情報を、RFIDリーダ3に送出する内蔵アンテナを有している(段落[0015]、[0017]〜[0019])。 1D:パッシブRFIDタグ4は、外部のRFIDリーダ3からの無線周波数信号によって作動して、導電性ゴム5が検知した状態情報(コンベヤベルトでの引き裂きの有無)をRFIDリーダ3に送信する(段落[0015]、[0017]〜[0019])。 ウ 甲第1号証に記載の技術的事項より、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 [甲1発明] 「材料を運搬するリターンコンベヤベルト6及びプロセスコンベヤベルト7とからなるコンベヤベルトであって、 コンベヤベルトの引き裂きの有無を検知する2本の導電性ゴム5がコンベヤベルトに敷設、埋設されており、 コンベヤベルトには、パッシブRFIDタグ4が予め敷設、埋設されており、 このパッシブRFIDタグ4は、内部に格納されているアドレス情報と、外部の導電性ゴム5で生成された状態情報を、RFIDリーダ3に送出する内蔵アンテナを有しており、 パッシブRFIDタグ4は、外部のRFIDリーダ3からの無線周波数信号によって作動して、導電性ゴム5が検知した状態情報(コンベヤベルトでの引き裂きの有無)をRFIDリーダ3に送信するものである、コンベヤベルト。」 (2)甲第2号証 ア 甲第2号証には次の記載がある。 (ア)「 」 (第1欄第16行〜第21行) (当審訳) 「発明の分野 本発明は、一体型の劣化センサを有するポリマー製品、より詳細には、導電性複合劣化センサを有する成形品および押出成形品の工業用ゴム製品に関する。」 (イ)「 」 (第1欄第44行〜第2欄第35行) (当審訳) 「発明の目的および概要 従って、本発明の目的は、成形されたゴム製品および押出成形されたゴム製品の状態を監視するための環境劣化センサおよび方法を提供することである。 本発明の別の目的は、製品の外面に取り付けられ、簡単で低コストの接触読取装置によって読み取ることができるゴム製品のための劣化センサを提供することである。 本発明のさらに別の目的は、製品の故障前に高サイクル疲労を検出する劣化センサを提供することである。 本発明のさらに別の目的は、完全な製品識別および製品の状態を提供するゴム製品のためのスマートRFIDラベルまたはタグを提供することである。 本開示の目的のために、一体型の劣化センサを有するポリマー成形品は、成形品に埋め込まれた、または成形品に取り付けられた導電性複合劣化センサを有するポリマー成分(複数可)からなる任意の成形品を含む。成形品のポリマー成分(複数可)は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を含み、様々な成形、押出、浸漬、噴霧または他のプロセスによって製造される。このような成形品は、天然ゴム、合成ゴム、または他のエラストマーで作られたタイヤ、ホース、ベルト、シール、ガスケットおよび絶縁マウントを含む、消費者用、商業用および工業用のゴム製品および自動車製品を含む。このような製品には、保護コーティングからなる構造物、エンジニアリングプラスチックや複合材料からなる構造物も含まれる。 ゴム製品の環境劣化センサは、ゴム製品の少なくとも1つのポリマー成分、導電性充填剤、および劣化制御剤からなるマトリックスを有する導電性複合材料から構成されている。センサはゴム製品に取り付けられ、電気的接触を介して、またはRFID装置を使用してリーダと通信する。 センサは、別個に製造され、接着剤、接着剤、製品との成形、または機械的な留め具によってゴム製品に取り付けられていてもよい。あるいは、センサは、製品の製造中に共成形または共押出しされてもよい。 別の実施形態では、センサは、ゴム製品から分離して形成され、パッシブRFID装置に電気的に取り付けられる。装置は、ゴム製品に埋め込まれていてもよいし、接着剤、結合剤、または機械的ファスナーによって製品の内面に取り付けられていてもよい。 接触センサのためのリーダは、残りの寿命または使用された寿命のパーセンテージで校正されたオームメータのような単純な抵抗測定装置であってもよい。 あるいは、リーダは、製品の不満足な状態を示す事前に選択された抵抗の閾値に応答する閾値リーダであってもよい。 センサ抵抗と製品の劣化との相関は、センサと製品材料の加速エージングを行い、破断伸びやセンサ抵抗などの劣化特性を測定することで行われる。複数の温度で測定することで、特性劣化とセンサ抵抗の測定の両方で活性化エネルギーを決定することができる。アレニウス分析などの分析により、寿命の予測を可能にする。 (ウ)「 」 (第4欄第22行〜第45行) (当審訳) 「図1は、外側トレッド103、製品部分またはサイドウォール105、および内側リム部分107を有するタイヤ101のような工業用ゴム成形品の側面図である。劣化センサ102は、より好ましくは図1Aに示されているように、サイドウォール105上などのタイヤの外側表面に配置された導電性複合体である。タイヤ101は、代表的な製品としてのみ示されている。ゴムまたはプラスチックホース、シール、ガスケット、アイソレーションマウントなどの他の成形品が、図1Aおよび図2−図2Bで表される。 図2は、センサ102および側壁105の一部を図1の線2−2に沿って撮影した断面図である。好ましい実施形態では、センサ102は、導電性複合化合物からなるディスクなどの導電性複合要素である。好ましい実施形態では、導電性複合化合物は、タイヤ101の高分子成分と導電性充填剤のうちの少なくとも1つを利用する。後述するように、酸化防止剤などの制御剤を添加してもよい。センサ素子102は、結合剤201によってサイドウォール105に接着される。結合剤201は、接着剤、ホットメルトコンパウンド、粘着テープ、または当技術分野で知られている他の結合剤であってもよい。使用され得る接着剤は、溶媒ベースの接着剤、ポリウレタンベースの接着剤、シリコーンベースの接着剤、エポキシ、シアノアクリレート接着剤、または当技術分野で知られている他の接着剤を含む。 (エ)「 」 (第7欄第34行〜第8欄第20行) (当審訳) 「図13は、劣化センサ1302を組み込んだVベルト1301などの駆動ベルトの斜視図である。センサ1302は、図13の線13A−13Aに沿って取られた断面図13Aに示されている。センサ1302は、ベルト1301の上部外表面1301A上に配置されてもよいし、または代替的に、図13のセンサ1302Bによって示されるように、内側表面1301B上に配置されてもよい。図13Aでより良く見られるように、センサ1302は、接着剤1305または先に論じたような他の結合方法によって表面1301Aに取り付けられた別個に形成された導電性複合センサディスクであってもよい。ベルト1301は、補強布1307を組み込んでいる。 図13Bは、図2Aに示されているような金型を利用してベルト材料1301Cに接着されたセンサ1302Bを有する代替的な実施形態を示している。図13Cは、センサ1302Cが、ベルト1301Dの上面として形成された導電性複合材料の連続層である、さらに別の実施形態を示す。センサ層1302Cは、加硫中に別個に形成されてベルトにモールド接着されてもよく、または加硫後に別個に形成されてベルト1301Dに接着されてもよい。 図14Aは、駆動用途で蛇行ベルトとして利用されることが多い多溝平面ベルト1401の斜視図である。センサ1402Aは、別個に形成されたセンサディスク1402A1であってもよく、接着剤1405によって溝1403の上面に接着されていてもよいし、あるいは以前に記載された他の方法によって形成されて取り付けられていてもよい。 図14Bは、連続ストリップ劣化センサ1402Bを有するベルト1401Aの別の実施形態を示す。センサストリップ1402Bは、接着剤、モールドボンディング、または他の方法で溝1403上面に個別に形成して接着してもよい。 図15は、セグメント化された溝を有する平ベルト1501のさらに別の実施形態である。図15Aはベルトの底面または内面の図であり、図15Bは部分断面図であり、劣化センサ1502は、図15A、15Bに示すように、溝セグメント間のベルトの内面に取り付けられている。センサ1502は、以前に議論された方法のいずれかによって取り付けられてもよい。 開示された全てのセンサ用途において、劣化センサは、ポリマーマトリックスと導電性フィラーとからなる。好ましい実施形態では、ポリマーマトリックスは、監視される製品の少なくとも1つのポリマー成分からなる。これにより、製品に影響を与える劣化メカニズムが、同様の方法でセンサにも影響を与えることが保証される。あるいは、センサ用のポリマーマトリックスは、複数の温度でエージングし、先行する参照された出願に開示されているようなアレニウス評価を受けたときに、製品のポリマーと同様の活性化エネルギーおよび/または時定数を有するようなものを選択してもよい。センサ抵抗と製品状態との間の相関は、複数の温度(または他の環境応力条件)でセンサおよび製品材料を加速エージングし、測定された劣化パラメータ(破断伸び、引張強度または疲労寿命など)とセンサ抵抗とを相関させることによって、数値的手法によって決定されてもよい。」 (オ)「 」 (第8欄第56行〜第65行) (当審訳) 「開示された劣化センサおよびリーダは、熱酸化的劣化による硬化または伸びの損失を検知するのに有効である。駆動ベルト、タイヤ、および高サイクルひずみおよび疲労を伴う他の用途のようないくつかの用途では、材料がまだ適度な弾性を保持している場合であっても、高サイクルひずみの結果として高分子ベルト材料の割れが生じる場合には、早期故障を検出することが有利である揚合がある。これは、特に空気の入っていないタイヤや、高デューティサイクルまたは高負荷の駆動ベルトの場合に当てはまる。」 (カ)「 」 (第9欄第51行〜第10欄第11行) (当審訳) 「図19は、パッシブRFIDチップ1903、アンテナ1905、導電性複合センサ1902、および回路基板1907からなるパッシブRFIDタグまたはスマートラペル1901を示す。好ましい実施形態では、RFIDチップ1903は、センサのデータ入力時にデータコードのインバージョンを提供するマイクロチップ社製のセンサ入力(MCRF−202)などである。好ましい実施形態では、RFIDタグ1901は、以前に議論されたように、および先行する参照された出願に開示されたように、センサ1901の予め選択された閾値抵抗に基づいてインバージョンを提供する。好ましい実施形態では、RFIDタグ1901は、製品内での取り扱いおよび設置の間の機械的保護のためのカプセル化されたRFIDタグを形成するために、絶縁性コーティングまたは成形されたカバー1909内にカプセル化される。 図20は、タイヤ2001のような工業用ゴム製品に配置されたRFID夕グ1901の側面図である。好ましい実施形態では、タグは、図20Aにおける封止タグ1901Aおよび成形タグ1901で最もよく見られるように、サイドウォール上のタイヤ201の内面201Aに取り付けられている。タグ1901Aは、接着剤2007または当技術分野で知られている他の結合方法によって結合されてもよい。 RFIDタグ1901の使用は、センサ1902とリーダの電気的接触を排除し、タイヤ2001の識別データおよびタイヤの劣化状態を図20のリーダ2003と無線で通信することを可能にする。好ましい実施形態では、センサ1902はタイヤ2001の高分子成分からなり、より好ましい実施形態では、センサ1902は、センサのマトリックス成分としてタイヤ2001の限界寿命高分子成分からなる。」 (キ)「 」 (第10欄第55行〜第12欄第29行) (当審訳) 「特許請求の範囲 1.環境劣化センサを内蔵したゴム製品であって、前記センサは以下のもので構成されている。 前記ゴム製品の少なくとも1つのポリマー成分に類似した劣化の活性化エネルギーからなるポリマーマトリックス 導電性フィラー;および センサ抵抗をリーダに通信する手段前記センサ抵抗は、前記ゴム製品の環境ストレスの結果として時間とともに変化する。 2.前記劣化センサが、前記センサの劣化速度を調整するための制御剤からなる請求項1に記載のゴム製品。 3.前記制御剤が酸化防止剤である請求項2に記載のゴム製品。 4.前記酸化防止剤が、前記ゴム製品の前記少なくとも1つのポリマー成分よりも少ないレベルに調整され、前記劣化センサが前記製品よりも早く劣化するようになっている請求項3に記載のゴム製品。 5.前記ポリマーマトリックスが前記製品のポリマー成分である請求項1に記載のゴム製品。 6.前記通信手段は、前記ゴム製品の外面に配置された前記センサの表面であり、接触電極からなる接触抵抗読取装置で前記センサの抵抗値を読み取ることができる請求項1に記載のゴム製品。 7.前記センサが、前記ゴム製品に接着剤で取り付けられた円板である請求項6に記載のゴム製品。 8.前記センサが、前記製品に成形された円板である請求項6に記載のゴム製品。 9.前記センサがホットメルトコンパウンドとして製品に塗布されている請求項6に記載のゴム製品。 10.前記センサが機械的なファスナーで前記製品に取り付けられている請求項1に記載のゴム製品。 11.前記センサが前記機械的なファスナーに取り付けられている請求項10に記載のゴム製品。 12.前記機械的なファスナーがタイラップである請求項10に記載のゴム製品。 13.前記通信手段は、前記センサが電気的に前記製品上に配置されたパッシブRFID装置に取り付けられている請求項1に記載のゴム製品。 14.前記製品がタイヤである請求項1に記載のゴム製品。 15.前記センサが、前記タイヤに配置されたパッシブRFID装置に電気的に取り付けられている請求項14に記載のゴム製品。 16.前記製品がホースである請求項1に記載のゴム製品。 17.前記製品がベルトである請求項1に記載のゴム製品。 18.前記環境ストレスが温度である請求項1に記載のゴム製品。 19.分解性ゴム製品に使用するための劣化センサアセンブリであって、以下から構成されている。 前記ゴム製品に取り付け可能な機械的ファスナー、 前記機械的ファスナーに取り付けられた劣化センサであって、前記センサは、前記ゴム製品の少なくとも1つのポリマー成分の劣化の活性化エネルギーに類似した劣化の活性化エネルギーを有するポリマーマトリックスと、導電性フィラーと、から構成されている劣化センサ、センサ抵抗を読み取り機に通信するための通信手段、 前記センサ抵抗が、前記ゴム製品の環境ストレス下で時間とともに変化し、前記抵抗が、以前に環境的に劣化したゴム製品の抵抗と相関可能である。 20.前記機械的締結具が、ストリップ部分とストリップ部分の開口部からなるヘッド部分からなるタイラップであり、前記劣化センサが前記ヘッド部分に取り付けられている請求項19に記載の劣化センサアセンブリ。」 イ 甲第2号証の記載から、甲第2号証には次の技術的事項が記載されているといえる。 2A:Vベルト1301などの駆動ベルトであり、Vベルト1301には補強布1307が組み込まれている(第7欄第34行〜第8欄第20行)。 2B:Vベルト1301の劣化を検知する劣化センサ1302が、Vベルト1301の上部外表面1301A、内側表面1301Bなどに設置されている(第7欄第34行〜第8欄第20行)。 2C:センサとして導電性複合センサ1902が使用され、パッシブRFIDタグ1901は、このセンサ1902とパッシブRFIDチップ1903とアンテナ1905と回路基板1907とを備えている。このパッシブRFIDタグ1901は、ゴム製品であるタイヤ2001に配置される(第9欄第51行〜第10欄第11行)。 2D:ゴム製品はVベルトであってもよい(第1欄第44行〜第2欄第35行及び請求項17)。 2E:パッシブRFIDタグ1901は、リーダ2003からの電磁波によって作動して、Vベルトの識別データや劣化状態を無線通信によってリーダ2003に送信する(第9欄第51行〜第10欄第11行)。 ウ 甲第2号証に記載の技術的事項より、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 [甲2発明] 「補強布1307が組み込まれているVベルト1301であって、 Vベルト1301の劣化を検知する導電性複合センサ1902が、Vベルト1301の上部外表面1301A、内側表面1301Bなどに設置されており、 パッシRFIDタグ1901は、この導電性複合センサ1902とパッシブRFIDチップ1903とアンテナ1905と回路基板1907とを備え、 パッシブRFIDタグ1901は、リーダ2003からの電磁波によって作動して、Vベルトの識別データや劣化状態を無線通信によってリーダ2003に送信するものである、Vベルト1301。」 (3)甲第3号証 甲第3号証には次の記載がある。 (ア) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は伝動ベルトに係り、詳しくはVリブドベルト、カットエッジタイプのVベルト等の摩擦伝動タイプを含む伝動用ベルトであり、高温雰囲気下及び低温雰囲気下でのベルト走行寿命が向上し、更にはベルトゴム素材のリサイクル率を向上させた伝動ベルトに関する。」 (イ) 「【0015】 【発明の実施の形態】図1に示すVリブドベルト1は、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維を素材とする高強度で低伸度のコードよりなる心線2を接着ゴム層3中に埋設し、その下側に弾性体層である圧縮ゴム層4を有している。この圧縮ゴム層4にはベルト長手方向にのびる断面略三角形の複数のリブ部7が設けられ、またベルト表面には付着したカバー帆布5が設けられている。そして、上記圧縮ゴム層4は材質の異なる2層の積層体からなっている。 【0016】他のベルトとしてカットエッジタイプのVベルト21にも使用される。このベルト21は、図2に示すように心線23を埋設した接着ゴム層24と圧縮ゴム層26とから構成され、更に上記接着ゴム層24及び圧縮ゴム層26の各表面層にカバー帆布22を積層している。本ベルト21も同様に、圧縮ゴム層4は材質の異なる2層の積層体からなっている。」 (ウ) 「【0019】図3に示すVベルト21では、上記圧縮ゴム層26の接着ゴム層24から離れた圧縮ゴム層11では、熱可塑性エラストマーを用いた組成物とエチレン−アルファ−オレフィンエラストマーの加硫物とが交互に複数層(図では各2層)形成している。」 (4)甲第4号証 甲第4号証には次の記載がある。 (ア)「 」 (当審訳) 「【0018】図1は、本創作の実施形態のRFIDタグの構造を説明するための獏式図である。本実施形態のRIDタグ1は、基板10を含み、基板10は、RFIDチップ101、アンテナ103、アンテナ105、および複数の開口構造107を含んでいる。RFIDチップ101は、アンテナ103およびアンテナ105と相互接続されている。アンテナ103は、ジグザグ形状のアンテナ線セグメント1030を含み、アンテナ105は、ジグザグ形状のアンテナ線セグメント1050を含み、複数の開口構造107は基板10を通過し、RFIDタグ1はRFIDチップ101とアンテナ103及びアンテナ105を介して信号を送信する。ここで、基板10の表面が接着剤と接触して圧力を受けると、接着剤は基板10の別の表面に達するように複数の開口構造107を通過する。接着剤と複数の開口構造107との間の作用については、図面を参照して後述の明細書で詳細に説明する。」 (5)甲第5号証 甲第5号証には次の記載がある。 (ア) 「【請求項1】 タグ基材と、 このタグ基材に装備するとともにICチップおよびRFIDアンテナを有して無線によるデータ通信が可能なRFIDインレットと、を有するRFIDタグであって、 前記RFIDアンテナは、 前記ICチップに接続した共振アンテナ部と、 この共振アンテナ部に電磁結合可能であるとともに前記ICチップから離反した位置に設けたブースターアンテナ部と、 からこれを構成したことを特徴とするRFIDタグ。」 (イ) 「【0032】 本発明は、ICチップから離反した位置に設けたブースターアンテナ部は、ICチップに接続した共振アンテナ部に電磁結合可能であるので、ブースターアンテナ部と共振アンテナ部とが分離状態にあってもデータ通信機能を維持可能であり、ねじれその他の外力がかかりやすい布材や皮革材などの柔軟素材製品に取り付けても耐久性があり、必要なデータ管理を行うことができるRFIDタグを実現した。」 (ウ) 「【0036】 RFIDアンテナ12は、共振アンテナ部14と、ブースターアンテナ部15と、からこれを構成する。 共振アンテナ部14は、図示の例では、これを円形の金属箔ないしは金属膜から構成するとともに、ICチップ4に直接接続している。 ブースターアンテナ部15は、この共振アンテナ部14に電磁結合(電波結合)可能であるとともにICチップ4から離反した位置にこれを設けている。とくにブースターアンテナ部15は、共振アンテナ部14を覆う保護材13の外周部からわずかな間隙Gだけ離間し、分離している。 この間隙Gとしては、共振アンテナ部14およびブースターアンテナ部15が互いに電磁結合可能であるとともに、RFIDタグ10全体にかかる外力による歪みに対して、保護材13とブースターアンテナ部15との間で機械的な干渉を起こさない範囲のものが望ましい。」 (6)甲第6号証 甲第6号証には次の記載がある。 (ア) 「[0022] 図1には、第1の実施形態に係るRFIDタグ1の構成を示す。図1に示されるように、RFIDタグ1は、ベース布3と、ベース布3に導電性繊維を縫い付けて形成したブーストアンテナ2と、ベース布3に取り付けられたチップモジュール4とを備える。」 (イ) 「[0027] また、第1の実施形態では、ブーストアンテナ2を、波状のパターンとして構成することとするが、これに限られず、矩形、円形、直線、曲線等の多様なパターンとして構成してもよい。」 (7)甲第7号証 ア 甲第7号証には次の記載がある。 (ア)「 」 (当審訳) 「[0001] 本発明は、弾性材料のベルト本体と、ベルト長さ方向に延在し該長さ方向において前記ベルトの強度を向上させるためにベルト本体によって少なくとも部分的に囲まれているカーカスとを備え、データを蓄積するためのデータメモリがベルト本体に配置されている動力伝達ベルトに関する。」 (イ)「 」 (当審訳) 「[0022] 本発明の好ましい実施形態では、データメモリは、非反復モード又は反復モードで読み取られることとなる。特にデータメモリの反復読み出しの場合、通常の動作中及び駆動動作が既知の速度のときに、期待される信号が非表示の場合にベルト及び/又は読み取りユニットに欠陥があると結論付けてもよい。さらに、反復的なデータメモリ読み出しの場合。ベルト識別情報に加えて、データメモリに一時的に格納されたベルト及び/又はデバイスの少なくとも動作パラメータ等を検出することが可能である。そのような動作パラメータは、ベルトの内部及び/又は外部に配置され且つ温度、伸び、及び圧力等の条件に関連するセンサによって、検出することができる。これらは、ベルトの起こり得る故障を早期に認識し、又は、ベルトによって運ばれる荷物の動作に関する状態を取得するために使用され得る。」 (ウ)「 」 (当審訳) 「[0032] 図1a及び図1bに係る歯付きタイプのベルト1は、加硫弾性材料で作成されたベルト本体2と、ベルト長手方向Rにおいてベルト本体2に沿って延在し複数の個別のコードからなるカーカス3と、RFIDトランスポンダ4とを中心的な構成要素として備えている。このタイプのベルト1は、例えば、駆動運動を出力シャフトに伝達するベルト駆動に用いられる。 [0033] ベルト本体2は、ベルト長手方向Rに並んで配置された歯6を備える係合部5と、係合部5に隣接する背部7とを有している。カーカス3は、背部7においてベルト長手方向Rにおいて延在している。カーカス3は、ベルト長手方向Rにおいて、ベルトの強度又は安定性を高めるのに役立つ。 [0034] RFIDトランスポンダ4は、ベルト1における、カーカス3及びニュートラルな繊維Fの領域においてベルト本体2に埋め込まれている。ニュートラルな繊維Fは、ベルト長手方向Rに交差するように延びる曲げ軸Bの周りでベルト1が曲げられたときに、張力又は圧力を受けないこととなる。従って、データメモリ9は、わずかな曲げ荷重にさらされるだけである。さらに、RFIDトランスポンダ4は、歯6の大きな均質なゴム領域によって形成される局所的材料蓄積領域12に配置される。ベルト1を構築するとき、カーカス3の領域、ニュートラルな繊維Fの領域、及び歯6によって形成される局所的材料蓄積領域12におけるRFIDトランスポンダ4の配置は、トランスポンダ4を加硫されるゴムマトリックスに挿入し、次にトランスポンダ4存在下で加硫することを可能にする。予想に反して、RFIDトランスポンダ4を取り囲む保護シース11と協調して定義された配置は、加硫プロセス中に伴う最大180℃の高温及び最大15barの高圧においてRFIDトランスポンダ4に損傷を与えないという結果が見出された。 [0035] 図2a及び図2bの本発明の別の実施形態では、ベルト1は、ベルト長手方向Rに延びるリブ13を備えたリブ付きベルトである。 RFIDトランスポンダ4は、この場合にも、カーカス3に隣接するニュートラルな繊維Fの領域、及び、3つのリブ13のうちの中央のリブ13によって形成された局所的材料蓄積領域12に配置されている。この実施形態のRFIDトランスポンダ4も保護シース11を備えており、加硫する前にベルト本体2を形成するゴムマトリックスに埋め込むことができ、その後、トランスポンダ4を損傷させることなく同時に加硫することができる。」 (エ)「 」 (当審訳) 「[0038] 図3及び図4のベルト1を駆動する装置は、駆動ユニット14と、駆動ユニット14によって駆動しシャフト15を介して駆動ユニット14に接続する駆動輪16と、ベルト1を介して駆動輪16によって作動する従動輪17と、ベルト1の内部に配置されたRFIDトランスポンダ4のデータメモリ9を読み出す読み取りユニット18と、読み取りユニット18及び駆動ユニット14と協動する制御ユニット19とを備える。ベルトタイプ、ベルト1の製造日等、バッチ番号、製造業者データ、ベルト1の長さなどの幾何学的情報、及び/又は引張強度又は速度等の、ベルト1を識別する情報機能情報は、RFIDトランスポンダ4のデータメモリに格納されている。データメモリ9に格納されたベルト識別情報は、読取りユニット9によって非接触モードで読み取られ得る。」 (オ)「 」 (当審訳) 「[0040] ベルト1の駆動運動を有効化し及び/又は無効化する手順は以下の通りである:装置の保守、特にベルト1の交換に続いて、ベルト始動操作の場合と同様に、駆動運動をベルト1に伝達する。データメモリ9が読み取りユニット19の読み取り範囲20に入るのは、該駆動運動による。読み取りユニット18は、アンテナ10によってピックアップされ、データメモリ9に格納されたベルト識別情報の機能としてIC8によって変調され、且つ、読み取りユニット18にリターンするキャリア信号を送信する。ここで、読み取りユニット18によって送受信される前記信号は、データメモリ9に格納されたベルト識別情報を受信された信号から分離するために変調される。次に、制御ユニット19は、ベルト識別情報を、格納された参照データと比較する。ベルト1の駆動動作は、ベルト1が装置での使用を許可されている場合、すなわち、データメモリ9から読み取られたベルト識別情報と前記参照データとの比較の結果が正である場合に有効化される。適切な駆動信号は、この目的のために、制御ユニット19から駆動ユニット14に送信される。駆動動作は、参照データ及びベルト識別情報が適合していないときはいつでも無効化される。」 (カ)「 」 (当審訳) 「[0043] 特に、データメモリ9の繰り返し読み出しの場合、ベルト識別情報に追加のさらなるデータを、読み取りユニット19によってデータメモリ9から読み出し、制御ユニット19によって処理することができる。従って、データがセンサ(不図示)によって収集され、データメモリ9に記憶され得る。これらのセンサは、RFIDトランスポンダ4自体について説明したように、ベルト1の本体2に組み合わせることができる。ベルト1の外部又は外側からでもセンサをベルト1に適用することも可能である。前記センサによって収集され、データメモリ9に格納されるデータは、例えば、伸び、ベルト内部に作用する力、又は湿度情報に関する情報を含み得る。これらの追加パラメータの読み出しに続いて、制御ユニット19は、例えば、ベルト1の摩耗状態を監視するために、それらを評価することができる。」 イ 甲第7号証の記載から、甲第7号証には次の技術的事項が記載されているといえる。 7A:係合部5と、係合部5に隣接する背部7とを有するベルト本体2と、背部7におけるベルト長手方向Rにおいてベルト長手方向R方向に延在している個別のコードからなるカーカス3とからなるゴムベルト1(段落[0032]、[0033])。 7B:ベルト本体2に統合され、ベルトの伸び、ベルトに作用する力、又は温度に関する情報を収集するセンサ(段落[0022]、[0043])。 7C:ゴムベルト1における、カーカス3及びニュートラルな繊維Fの領域においてベルト本体に埋め込まれているRFIDトランスポンダ4(段落[0034]、[0035])。 7D:RFIDトランスポンダ4は、データメモリ9を備えたIC8とアンテナ10を有しており、保護シース11に取り囲まれている(段落[0034]、[0035]、[0040])。 7E:読み出しユニット18は、RFIDトランスポンダ4からリターンされたキャリア信号を受信する(段落[0040])。 7F:RFIDトランスポンダ4のIC8は、読み出しユニット18から送信されたキャリア信号をデータメモリ9に格納されたベルト識別情報、センサによって収集されたベルトの伸び、ベルトに作用する力、又は温度に関する情報に変調し、送信する(段落[0038]、[0040]、[0043])。 ウ 甲第7号証に記載の技術的事項より、甲第7号証には次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されているといえる。 [甲7発明] 「係合部5と、係合部5に隣接する背部7とを有するベルト本体2と、背部7におけるベルト長手方向Rにおいてベルト長手方向R方向に延在している個別のコードからなるカーカス3とからなるゴムベルト1であって、 ベルト本体2に統合され、ベルトの伸び、ベルトに作用する力、又は温度に関する情報を収集するセンサと、 ゴムベルト1における、カーカス3及びニュートラルな繊維Fの領域においてベルト本体に埋め込まれており、データメモリ9を備えたIC8とアンテナ10を有し、保護シース11に取り囲まれているRFIDトランスポンダ4と、を備え、 RFIDトランスポンダ4のIC8は、読み出しユニット18から送信されたキャリア信号をデータメモリ9に格納されたベルト識別情報、センサによって収集されたベルトの伸び、ベルト1に作用する力、又は温度に関する情報に変調し、送信する、ゴムベルト1。」 (8)甲第8号証 甲第8号証には次の記載がある (ア) 「【0007】 上記目的を達成するため、この発明に係るコンベヤベルトは、金属部材からなるベルト芯体を内包し搬送面を形成するカバーゴムと、前記カバーゴムの前記搬送面を形成するベルト表面側に、受信面を前記搬送面に向けた埋設状態で配置され、ベルト表面側の磨耗が進み前記カバーゴムの厚みが磨耗限界に近づいたとき、前記搬送面に対向して位置するRFID(Radio Frequency IDentification)タグ読み取り手段との間の交信が可能になり検知される、RFIDタグと、前記ベルト芯体と前記RFIDタグの間に配置され、前記RFIDタグ読み取り手段からの送信電波を受信した前記RFIDタグが発生させる磁界と前記ベルト芯体が干渉するのを阻止する阻止手段とを有している。」 (イ) 「【0010】 この発明に係るコンベヤベルトによれば、金属部材からなるベルト芯体を内包し搬送面を形成するカバーゴムの搬送面を形成するベルト表面側に、ベルト表面側の磨耗が進みカバーゴムの厚みが磨耗限界に近づいたときに、搬送面に対向して位置するRFIDタグ読み取り手段との交信が可能になり検知されるRFIDタグが、受信面を搬送面に向けた埋設状態で配置され、ベルト芯体との間には、RFIDタグ読み取り手段からの送信電波を受信したRFIDタグが発生させる磁界とベルト芯体が干渉するのを阻止する阻止手段が配置されているので、カバーゴムにより形成された搬送面の摩耗量を、作業ロスの発生や検知コストの上昇を招くことなく確実に検知することができる。」 (ウ) 「【0030】 この発明によれば、金属部材からなるベルト芯体を内包し搬送面を形成するカバーゴムの搬送面を形成するベルト表面側に、ベルト表面側の磨耗が進みカバーゴムの厚みが磨耗限界に近づいたときに、搬送面に対向して位置するRFIDタグ読み取り手段との交信が可能になり検知されるRFIDタグが、受信面を搬送面に向けた埋設状態で配置され、ベルト芯体との間には、RFIDタグ読み取り手段からの送信電波を受信したRFIDタグが発生させる磁界とベルト芯体が干渉するのを阻止する阻止手段が配置されており、カバーゴムにより形成された搬送面の摩耗量を、作業ロスの発生や検知コストの上昇を招くことなく確実に検知することができるので、例えば、石炭等の搬送物を載置する搬送面の磨耗を検出することができるコンベヤベルトとして最適である。また、ベルトコンベヤ搬送システムを運用・管理している管理者に、コンベヤベルトの使用寿命が近づいたことを知らせることができるので、ベルトコンベヤ搬送システムとして最適である。」 (9)甲第9号証 甲第9号証には次の記載がある。 (ア) 「【0002】 本発明の例示的実施形態は、一体型のセンサシステムを有するエラストマー物品に関する。本発明の例示的実施形態は、内蔵センサを有するエラストマー物品の物理的なおよび工学的性質をモニタすることともに特定の用途を見出し、特に、車両タイヤに関して記載されている。しかしながら、本発明の例示的実施形態は、仕事を実行可能なエラストマー物品のような他のエラストマー物品のためのパラメータをモニタすることを含む他の類似した用途に変形可能であると認められたい。」 (イ) 「【0005】 従って、タイヤおよびタイヤコンポーネントが受けるパラメータ(例えば、応力および歪を含む力、温度、振動、タイヤおよびそのコンポーネントの状態に関する有用な情報を与える他の条件)を検出することが望ましい。」 (ウ) 「【0013】 本願明細書に記載されている実施例は空気入り自動車タイヤに関するものであるが、エアレスタイヤおよびソリッドタイヤのような他のタイヤ、空気ばね、コンベヤーベルト、屋根材、スポーツ用品等を含む他のエラストマー物品もまた、類似の構造および実施形態のセンシングシステムを使用してモニタできるということを認識されたい。」 (エ) 「【0018】 センサ104は、LCDセンサ、導電性ポリマーセンサまたはバイオポリマーセンサのような、非シリコン系とすることができる。センサ104は、データを低周波数で供給するという利点を有するポリマーダイオードとすることもできる。低周波数では、センサ出力がより厚い媒質を通って伝播することができるので、このタイプのセンサは、タイヤ材料のより広範囲にわたって、例えば、タイヤ内のより深くに埋設しても、遠隔で検出できる有用なデータを供給することができる。ワイヤレスセンサ104は、検出データを1つ以上の適切な収集装置に供給する高周波識別(RFID)装置とすることもできる。このようなRFID装置は、十分小さいサイズで製作されるので、大多数のRFID装置をタイヤ102に組み込むことができる。こうして、多数のRFID装置を、タイヤ本体に組み込むことにより、タイヤの広い領域からフィードバックを提供できる。」 (オ) 「【0020】 ワイヤレスセンサ104は、RFIDタグで一般に知られているような、センサ104の「識別」または「確認応答」以上の機能を含むことができる。ワイヤレスセンサ104は、また、パラメータ(例えば、特に、温度、圧力、空気圧、応力、歪、振動、化学)を抽出および/または測定することができる。データ収集装置106およびデータプロセッサ110がこのデータを用いて、タイヤ本体に関する情報を生成することができる。データをリアルタイムに取得さするとき、生成された情報を、車両のサスペンション用制御装置のフィードバックループの一部として用いることができる。図1Aは、アクティブ・サスペンションを有する車両を表す。サスペンション・コントロールは、情報またはデータをリーダ106またはプロセッサ110から受信し、この情報を、サスペンション用の制御計算の一部として用いる。このデータおよび情報を長期間にわたって格納し、タイヤ履歴を形成することができる。タイヤ履歴情報を用いて、将来のタイヤの設計を修正することができる。 【0021】 ワイヤレスセンサ104は、電源および能動的なトランスミッタを含まないパッシブセンサとすることができる。パッシブセンサ104を、データ収集装置に誘導結合することができる。センサ104は、収集装置アンテナ108から放射される電磁波を受信する1つ以上のアンテナを形成している1つ以上の導体素子114を含む。この放射線は、センサを形成する電子デバイスに給電できる電気に変換され、センサは必要なデータを検出し、収集装置106に返信することができる。 【0022】 パッシブセンサ140を、センサから反射され自由空間に放射される電力を用いる後方散乱結合によって、データ収集装置106に結合することもできる。この電力のごく一部を、センサ104から「後方の方向」に移動している収集装置のアンテナ108によって取得し、方向性カップラを使用して分離し、データ収集装置の受信入力部分へ転送することができる。」 (10)甲第10号証 甲第10号証には次の記載がある。 (ア) 「【0006】 前記目的を達成するために、本発明に係る温度センサ付き無線通信デバイスは、 コイルアンテナと、 前記コイルアンテナに接続され、当該コイルアンテナを介して外部機器と無線通信を行う無線通信回路と、 対象物の温度を検知する温度センサと、 前記無線通信回路及び前記温度センサに接続され、前記温度センサの駆動を制御する制御回路と、 前記コイルアンテナ、前記無線通信回路、前記制御回路、及び前記温度センサが一方の主面に実装される可撓性基材シートと、 を備え、 前記可撓性基材シートの前記一方の主面には、接着層が設けられ、 前記可撓性基材シートは、前記接着層を介して前記対象物に取り付けられるものであり、 前記可撓性基材シートの厚さが前記接着層の厚さよりも薄く、前記可撓性基材シートの厚さ方向において、前記温度センサが前記接着層の表面よりも前記可撓性基材シートから離れる側に突出するように設けられている。」 (イ) 「【0017】 また、前記コイルアンテナが前記外部機器と磁界結合することによって生じた電力により、前記無線通信回路、前記制御回路、及び前記温度センサが駆動され、前記温度センサが検知した温度情報が前記コイルアンテナを介して前記外部機器に送信されるように構成されることが好ましい。」 (ウ) 「【0031】 図2〜図4に示すように、無線通信デバイス1は、コイルアンテナ11と、無線通信回路12と、制御回路13と、温度センサ14とを備えている。コイルアンテナ11、無線通信回路12、制御回路13、及び温度センサ14は、図3及び図4に示すように、可撓性基材シート15の一方の主面15a上に実装されている。」 (エ) 「【0036】 無線通信回路12は、例えば、I2C(アイスクエアシー)インターフェース付きのRFICチップである。無線通信回路12は、信号処理回路やメモリ回路等を有し、コイルアンテナ11が外部機器2と磁界結合することによって生じた電力により駆動するとともに、当該電力を制御回路13に供給する。無線通信回路12は、バッテリーを有さない、いわゆるパッシブ型のタグである。」 (11)甲第11号証 甲第11号証には次の記載がある。 (ア) 「【0067】 RFIDタグ用のアンテナは、整合回路との関係または長さの関係で屈曲することが多い。そのため、個々のアンテナ分岐も直線状のもの、若干屈曲したもの、および、何度の蛇行したものがある。本願では、180度以上の屈曲が1度以下(小数点以下切捨て)のものを直線状のものを含めて「準直線型アンテナ」と呼ぶ。また、180度前後の屈曲を2度以上繰り返すものを「蛇行アンテナ」と呼ぶ。」 (イ) 「【0073】 まず、本願の一実施形態の汎用カードサイズ広帯域RFID用インレットの平面構造を説明する。図1に示すように、ポリエチレン・テレフタレート等の樹脂シート1(基体シート)の第1の主面上にアルミニウム箔等のメタル薄膜をパターニングしたメタル薄膜パターン2(線状パターン)が接着されている。この線状パターンの太さは、たとえば太いところで2ミリメートル程度、細いところで1ミリメートル程度である。樹脂シート1の第1の長辺31および第2の長辺32の寸法L1は、たとえば83ミリメートル程度である。また、その第1の短辺41および第2の短辺42の寸法T1は、たとえば53ミリメートル程度である。最終形態としてのRFIDタグ、すなわち、カード3(樹脂シート1の第1及び第2の主面に貼り付ける保護シート)の外縁を一点破線で示す。メタル薄膜パターン2は、ほぼ中央部にあるチップ・ボンディング部4(ストラップ部)、それを取り巻く整合回路部6、整合回路部6の複数の点に接続されたダイポール・アンテナ部7,8(一方の極および他方の極)等からなる。チップ・ボンディング部4には、RFIDタグ・チップ5が取り付けられている。) 【0074】 ダイポール・アンテナ部7は、一方の極に属するアンテナ分岐7a(第1の蛇行アンテナ分岐)およびアンテナ分岐7b(第2の蛇行アンテナ分岐)を有する。同様にダイポール・アンテナ部8は、他方の極に属する複数のアンテナ分岐8a(第3の蛇行アンテナ分岐)およびアンテナ分岐8b(第4の蛇行アンテナ分岐)を有する。」 (12)その他の甲号証 異議申立人Bの提出した、特開2009−225199号公報(異議申立人の提出した甲第6号証)には、次の記載がある。 (ア) 「【0002】 たとえば、病院等の医療現場において、体温あるいは心拍などの生体情報を計測して、その結果を携帯端末などの無線装置によりコードレスにて収集するボディエリアネットワークが注目されている。一方、各種物件に貼付または添付あるいは内蔵されて、その物を無線信号により識別するRFID(無線識別)タグが実用に供されている。そこで、無線識別タグと生体情報を計測するセンサを組み合わせて、より小型な無線装置によってボディエリアネットワークを構築することが考えられる。」 (イ) 「【0011】 また、上記アンテナ構造において、アンテナ素子が、半波長ダイポールアンテナであるとよい。」 (ウ) 「【0013】 また、上記アンテナ構造において、アンテナ素子が、矩形状に複数回折り曲げられて形成されたメアンダ曲線状のアンテナ(100)であってもよい。」 3 当審の判断 (1)特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項について ア 甲1発明を主引用発明として (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「コンベヤベルト」、「導電性ゴム5」、「パッシブRFIDタグ4」、及び「パッシブRFIDタグ4の内蔵アンテナ」は、その機能、構成から見て、それぞれ、本件発明1における「ベルト」、「ベルトの状態を検知するセンサ」、「パッシブ型のRFID」、及び「アンテナ」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点1] 「ベルトであって、 当該ベルトの状態を検知するセンサと、 アンテナを有しており、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFIDと、を備える、ベルト。」 [相違点1] 本件発明1の「ベルト」が、「背面側に配置される背面層と、芯体を有する芯体層と、を含む積層体を備えた」ものであり、「センサ」と「パッシブ型のRFID」が積層体に設けられているのに対し、甲1発明の「コンベヤベルト」はこのような特定がされていない点。 [相違点2] 本件発明1の「パッシブ型RFID」が、「ICチップ」「を有して」いるのに対し、甲1発明の「パッシブRFIDタグ14」がICチップを有しているとの特定がされていない点。 [相違点3] 本件発明1の「アンテナ」が、「表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなる」のに対し、甲1発明の「内蔵アンテナ」はこのような特定がされていない点。 b 判断 事案に鑑み相違点3について検討する。 甲第2号証〜甲第11号証のいずれの文献にも、パッシブ型RFIDのアンテナの表面にテフロン粉末を担持させるという技術的事項は記載も示唆もされていないし、斯かる技術的事項が当業者における技術常識であるとの証拠もない。 したがって、相違点3は実質的な相違点であるといえるから、本件発明1は、甲1発明とはいえない。 そして、本件発明1は、斯かる相違点3の構成を具備することにより、アンテナとベルトを構成する物質との相互作用を弱めることができ、アンテナがベルトの圧縮伸張による応力を受けたとしても、アンテナが破損しにくくなるという本件特許の明細書の段落【0030】に記載の格別な作用効果を奏するものといえる。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明2〜本件発明8、本件発明10〜本件発明12について 本件発明2〜本件発明8、本件発明10〜本件発明12は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。 そうだとすれば、本件発明2〜本件発明8、本件発明10〜本件発明12と甲1発明との間には、少なくとも上記相違点3が存在するから、上記(ア)bと同様の理由により本件発明2〜本件発明8、本件発明10〜本件発明12は、甲1発明及び甲第2号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件発明13について a 対比 本件発明13と甲1発明とを対比する。 上記(ア)aの対比での相当関係に加えて、甲1発明の「RFIDリーダ3」は、本件発明13の「リーダ」に相当する。 また、甲1発明は、「導電性ゴム5が検知した状態情報(コンベヤベルトでの引き裂きの有無)をRFIDリーダ3に送信する」構成を備えることによって、コンベヤベルトの状態情報を取得するシステムを構成しているといえる。 したがって、本件発明13と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点2] 「ベルトの状態を検知するセンサ、 及び、アンテナを有しており、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFID、を備えたベルトと、 前記RFIDからの信号を受信するリーダ、を有し、 前記RFIDは、前記リーダから送信された電磁波によって作動し、ベルトの状態情報を前記リーダに送る、ベルトの状態情報取得システム。」 [相違点1’] 本件発明13の「ベルト」が、「背面側に配置される背面層と芯体を有する芯体層とを含む積層体」を備えたものであり、「センサ」と「パッシブ型のRFID」が積層体に設けられているのに対し、甲1発明の「コンベヤベルト」はこのような特定がされていない点。 [相違点2’] 本件発明13の「パッシブ型のRFID」が「ICチップ」「を有している」のに対し、甲1発明の「パッシブRFIDタグ」がICチップを有しているとの特定がされていない点。 [相違点3’] 本件発明13の「パッシブ型のRFID」の「アンテナ」が「表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなる」のに対し、甲1発明の「内蔵アンテナ」はこのような特定がされていない点。 イ 判断 事案に鑑み相違点3’について検討する。 相違点3’は、相違点3と実質的に同じである。 したがって、上記(ア)bに説示と同様の理由により、本件発明13は甲1発明及び甲第2号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ)本件発明14について 本件発明14は、本件発明13の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。 そうだとすれば、本件発明13と甲1発明との間には、少なくとも上記相違点3’が存在するから、上記(ア)bと同様の理由により、本件発明14は甲1発明及び甲第2号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 甲2発明を主引用発明として (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明における「Vベルト1301」、「導電性複合センサ1902」、「パッシブRFIDタグ1901」、「パッシブRFIDチップ1903」、及び、「アンテナ1905」は、その機能、構成から見て、それぞれ、本件発明1における「ベルト」、「ベルトの状態を検知するセンサ」、「パッシブ型のRFID」、「ICチップ」、及び、「アンテナ」に相当する。 甲2発明の「補強布1307」は、その配置、機能からみて、Vベルト1301における芯体といえ、Vベルト1301は、芯体である補強布1307を挟んで背面側に配置される背面を有しているといえる。 したがって、甲2発明の「補強布1307が組み込まれているVベルト1301」は、本件発明1の「背面側に配置される背面層と、芯体を有する芯体層と、を含む積層体を備えたベルト」との対比において、「背面側に配置される背面と、芯体を備えたベルト」との限度で一致する。よって、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。 [一致点3] 「背面側に配置される背面と、芯体を備えたベルトであって、 当該ベルトの状態を検知するセンサと、 ICチップ及びアンテナを有しており、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFIDと、を備える、ベルト。」 [相違点4] 本件発明1の「ベルト」が、「背面側に配置される背面層と、芯体を有する芯体層と、を含む積層体を備えた」ものであり、「センサ」と「パッシブ型のRFID」が積層体に設けられているのに対し、甲2発明の「Vベルト1301」は「補強布1307が組み込まれているVベルト1301」であり、補強布1307とその背面側に配置された構成を持つものの、それらが積層体として構成されているとは特定されてない点。 [相違点5] 本件発明1の「アンテナ」が、「表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなる」のに対し、甲2発明の「アンテナ1905」はこのような特定がされていない点。 b 判断 事案に鑑み相違点5について検討する。 甲第1号証及び甲第3号証〜甲第11号証のいずれの文献にも、パッシブ型RFIDのアンテナの表面にテフロン粉末を担持させるという技術的事項は記載も示唆もされていないし、斯かる技術的事項が当業者における技術常識であるとの証拠もない。 したがって、相違点5は実質的な相違点であるといえるから、本件発明1は甲2発明とはいえない。 そして、本件発明1は、斯かる相違点5の構成を具備することにより、アンテナとベルトを構成する物質との相互作用を弱めることができ、アンテナがベルトの圧縮伸張による応力を受けたとしても、アンテナが破損しにくくなるという本件特許の明細書の段落【0030】に記載の格別な作用効果を奏するものといえる。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明とはいえないし、甲2発明及び甲第1号証及び甲第3号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明2〜本件発明8、本件発明10〜本件発明12について 本件発明2〜本件発明8、本件発明10〜本件発明12は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。 そうだとすれば、本件発明2〜本件発明8、本件発明10〜本件発明12と甲2発明との間には、少なくとも上記相違点5が存在するから、上記(ア)bと同様の理由により、本件発明4、本件発明10及び本件発明11は甲2発明とはいえないし、本件発明2〜本件発明8、本件発明10〜本件発明12は、甲2発明、甲第1号証及び甲第3号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件発明13について a 対比 本件発明13と甲2発明とを対比する。 上記(ア)aの対比での相当関係に加えて、甲2発明の「リーダ2003」は、本件発明13の「リーダ」に相当する。 また、甲2発明は、「Vベルトの識別データや劣化状態を無線通信によってリーダ2003に送信する」構成を備えることによって、コンベヤベルトの状態情報を取得するシステムを構成しているといえる。 したがって、本件発明13と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点4] 「背面側に配置される背面と、芯体、 ベルトの状態を検知するセンサ、 及び、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ 型のRFID、を備えたベルトと、 前記RFIDからの信号を受信するリーダ、を有し、 前記RFIDは、前記リーダから送信された電磁波によって作動し、ベルトの状態情報を前記リーダに送る、ベルトの状態情報取得システム。」 [相違点4’] 本件発明13の「ベルト」が、「背面側に配置される背面層と、芯体を有する芯体層と、を含む積層体を備えた」ものであり、「センサ」と「パッシブ型のRFID」が積層体に設けられているのに対し、甲2発明の「Vベルト1301」は「補強布1307が組み込まれているVベルト1301」であり、補強布1307とその背面側に配置された構成を持つものの、それらが積層体として構成されているとは特定されてない点。 [相違点5’] 本件発明13の「パッシブ型のRFID」の「アンテナ」が「表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなる」のに対し、甲2発明の「アンテナ1905」はこのような特定がされていない点。 b 判断 相違点5’は、相違点5と実質的に同じである。 したがって、上記(ア)bに説示と同様の理由により、本件発明13は甲2発明とはいえないし、甲2発明及び甲第1号証及び甲第3号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ)本件発明14について 本件発明14は、本件発明13の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。 そうだとすれば、本件発明13と甲2発明との間には、少なくとも上記相違点5’が存在するから、上記(ア)bと同様の理由により、本件発明14は甲2発明とはいえないし、甲2発明、甲第1号証及び甲第3号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 甲7発明を主引用発明として (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲7発明とを対比する。 甲7発明における「ゴムベルト1」、「カーカス3」、「ベルトの伸び、ベルトに作用する力、又は温度に関する情報」、「収集」、「センサ」、「IC8」、「アンテナ10」及び「RFIDトランスポンダ4」は、その機能、構成から見て、それぞれ、本件発明1における「ベルト」、「芯体」、「ベルトの状態」(あるいは「ベルトの状態情報」)、「検知」、「センサ」、「ICチップ」、「アンテナ」、及び「RFID」に相当する。 甲7発明における「背部7」は、ベルトの背面側であるので、本件発明1の「背面側に配置される背面層」との比較において、「背面側の背面」であるという限度で一致する。 甲7発明の「RFIDトランスポンダ4のIC8は、読み出しユニット18から送信されたキャリア信号をデータメモリ9に格納されたベルト識別情報、センサによって収集されたベルトの伸び、ベルトに作用する力、又は温度に関する情報に変調し、送信する」ことは、本件発明1の「前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信する」ことに相当し、甲7発明の「RFIDトランスポンダ4」は、パッシブ型のRFIDであるといえる。 したがって、本件発明1と甲7発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点5] 「背面側の背面と、芯体を有するベルトであって、 当該ベルトの状態を検知するセンサと、 ICチップ及びアンテナを有しており、前記センサが検知した当該ベルトの状態を外部に送信するパッシブ型のRFIDとを、備えるベルト。」 [相違点6] 本件発明1の「ベルト」が、背面層と芯体層とを含む積層体を備えたものであり、本件発明1の「センサ」及び「RFID」が、「前記積層体に設けられ」ているのに対し、甲7発明の「ゴムベルト1」は、背部7とカーカス3を有するものの、それぞれが背面層、芯体層とからなる積層体を備えたものとはされておらず、「センサ」及び「RFIDトランスポンダ4」が、前者は、「ベルト本体に統合され」ており、後者が「ゴムベルト1における、カーカス3及びニュートラルな繊維Fの領域においてベルト本体に埋め込まれて」いるものである点。 [相違点7] 本件発明1の「アンテナ」が、「表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなる」のに対し、甲7発明の「アンテナ10」はこのような特定がされていない点。 b 判断 事案に鑑み相違点7について検討する。 甲第1号証〜甲第6号証及び甲第7号証〜甲第11号証のいずれの文献にも、パッシブ型RFIDのアンテナの表面にテフロン粉末を担持させるという技術的事項は記載も示唆もされていないし、斯かる技術的事項が当業者における技術常識であるとの証拠もない。 したがって、相違点7は実質的な相違点であるといえるから、本件発明1は甲7発明とはいえない。 そして、本件発明1は、斯かる相違点7の構成を具備することにより、アンテナとベルトを構成する物質との相互作用を弱めることができ、アンテナがベルトの圧縮伸張による応力を受けたとしても、アンテナが破損しにくくなるという本件特許の明細書の段落【0030】に記載の格別な作用効果を奏するものといえる。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲7発明とはいえないし、甲7発明並びに甲第1号証〜甲第6号証及び甲第7号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明2〜本件発明8、本件発明10〜本件発明12について 本件発明2〜本件発明8、本件発明10〜本件発明12は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。 そうだとすれば、本件発明2〜本件発明8、本件発明10〜本件発明12と甲2発明との間には、少なくとも上記相違点7が存在するから、上記(ア)bと同様の理由により、本件発明2及び本件発明4は甲7発明とはいえないし、甲7発明並びに甲第1号証〜甲第6号証及び甲第7号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件発明13について a 対比 本件発明13と甲7発明とを対比する。 上記(1)アの対比での相当関係に加えて、甲7発明の「読み出しユニット1」及び「キャリア信号」は、本件発明13の「リーダ」及び「電磁波」に相当する。 また、甲7発明は、「RFIDトランスポンダ4のIC8は、読み出しユニット18から送信されたキャリア信号をデータメモリ9に格納されたベルト識別情、センサによって収集されたベルトの伸び、ベルト1に作用する力、又は温度に関する情報に変調し、送信する」構成を備えることによって、読み出しユニット18から送信されたキャリア信号によって作動するベルト1の状態情報を取得るシステムを構成しているといえる。 したがって、本件発明13と甲7発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点6] 「背面側に配置される背面と芯体を有し、 ベルトの状態を検知するセンサ、 及び、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFID、を備えたベルトと、 前記RFIDからの信号を受信するリーダ、を有し、 前記RFIDは、前記リーダから送信された電磁波によって作動し、ベルトの状態情報を前記リーダに送る、ベルトの状態情報取得システム。」 [相違点6’] 本件発明13の「ベルト」が、背面層と芯体層とを含む積層体を備えたものであり、本件発明13の「センサ」及び「RFID」が、「前記積層体に設けられ」ているのに対し、甲7発明の「ゴムベルト1」は、背部7とカーカス3を有するものの、それぞれが背面層、芯体層とからなる積層体を備えたものとはされておらず、「センサ」及び「RFIDトランスポンダ4」が、前者は、「ベルト本体に統合され」ており、後者が「ゴムベルト1における、カーカス3及びニュートラルな繊維Fの領域においてベルト本体に埋め込まれて」いるものである点。 [相違点7’] 本件発明1の「アンテナ」が、「表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなる」のに対し、甲7発明の「RFIDトランスポンダ4」の「アンテナ10」はこのような特定がされていない点。 b 判断 事案に鑑み相違点7’について検討する。 相違点7’は、相違点7と実質的に同じである。 したがって、上記(ア)bに説示と同様の理由により、本件発明13は甲7発明とはいえないし、甲7発明並びに甲第1号証〜甲第6号証及び甲第7号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ)本件発明14について 本件発明14は、本件発明13の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。 そうだとすれば、本件発明13と甲7発明との間には、少なくとも上記相違点7’が存在するから、上記(ア)bと同様の理由により、本件発明14は、甲7発明並びに甲第1号証〜甲第6号証及び甲第7号証〜甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)特許法第36条第6項第2号について 本件訂正によって、訂正後の請求項7において、「前記ICチップと前記アンテナの前記接続導電線に接続された接続部とは、所定方向に沿って配列されており」という記載と、「前記アンテナは、・・・前記接続部から前記所定方向と直交する直交方向の一方側と他方側とに延びるダイポールアンテナである」との記載は整合しているものとなった。 したがって、請求項7及び請求項7を直接又は間接的に引用する請求項11及び12に係る発明は明確であり、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たすといえる。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 異議申立人Aは、請求項1、13の「背面側に配置される背面層」との記載の「背面側」が何に対して背面側であるのか不明であり、また、請求項2、14の「内面側に配置される内面層」との記載の「内面側」が何に対しての内面側であるのか不明であるから、本件発明1〜13は不明確である旨主張する。 しかしながら、ベルトとは、対象物に巻回するもの、または、対象物を拘束する帯状の構造物であり、巻回した又は拘束したベルトの対象物側を内面側、その反対側を背面側ということは、当業者であれば明確に理解しうるといえる。 したがって、請求項1〜13の「ベルト」における「背面側」又は「内面側」は明確であり、本件発明1〜13は明確であるといえる。 よって、本件の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものといえ、異議申立人Aの斯かる主張は採用することができない。 2 異議申立人Bは、発明の詳細な説明には、具体例としてベルトの状態を検知するセンサとして圧力センサについて記載されているのみであり、出願時の技術常識に照らしても、請求項1及び13(請求項1及び13を引用する請求項2〜11、14)に係る発明の範囲の「ベルトの状態を検知するセンサ」との記載まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨主張する。 しかしながら、本件発明1〜13の目的は、「ベルト状態を検出するセンサとその検出結果を外部に送信するRFIDを装備したベルトにおいて、電池不要のシステムを構築すること」とされており(本件特許の明細書の段落【0008】を参照。)、少なくとも、本件発明1及び13における「ベルトの状態を検知するセンサ」及び「前記センサが検知した当該ベルトの状態を外部に送信するパッシブ型のRFID」とを備えれば斯かる目的を達成できることは、当業者が出願時の技術常識に照らしてみれば十分理解できるといえるから、本件においては、本件発明1及び13における「センサ」として「ベルトの状態を検知するセンサ」との特定で十分であるといえる。 したがって、本件の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものといえ、異議申立人Bの斯かる主張は採用することができない。 3 異議申立人Bは、請求項10の「前記ベースの材質が、前記積層体の前記RFIDが設けられる層の材質と同一である」との発明特定事項では、一部の材料のみが共通することを意味するのか、全ての材料が含有割合を含めて共通していることを意味するのかが明確でなく、本件発明10及び本件発明11、12は明確でない旨も主張する。 しかしながら、本件発明10には、材料が同一と規定されているのではなく、材質が同一であると規定されており、RFIDとベルトを構成するゴムとの接着性との観点から(本件特許の明細書の段落【0076】を参照。)、材料の質、すなわち材質が同一であれば良いことが当業者には明確に理解できるといえる。 したがって、請求項10の「前記ベースの材質が、前記積層体の前記RFIDが設けられる層の材質と同一である」との記載は発明特定事項として明確であり、本件の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものといえ、異議申立人Bの斯かる主張も採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1〜8及び10〜14に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に、請求項1〜8及び10〜14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項9に係る特許は、上記のとおり訂正により削除された。これにより、異議申立人A及びBによる特許異議の申立てについて、請求項9に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 背面側に配置される背面層と、芯体を有する芯体層と、を含む積層体を備えたベルトであって、 前記積層体に設けられ、当該ベルトの状態を検知するセンサと、 同じく前記積層体に設けられ、ICチップ及びアンテナを有しており、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFIDと、を備え 前記アンテナは、表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなる、ベルト。 【請求項2】 前記芯体は心線であって、 前記積層体は、前記背面層と、内面側に配置される内面層と、前記背面層と前記内面層との間に埋設される前記心線を有する心線層と、を含み、 前記ベルトは、伝動ベルトである、請求項1に記載のベルト。 【請求項3】 前記RFIDは、前記積層体の前記芯体よりも背面側に配置されている、請求項1又は2に記載のベルト。 【請求項4】 前記RFIDは、前記積層体に埋設されている、請求項1〜3の何れか一項に記載のベルト。 【請求項5】 前記センサと前記RFIDは、前記積層休の同一層に配置されている、請求項1〜4の何れか一項に記載のベルト。 【請求項6】 前記アンテナはメアンダライン形状の導電性線状物質からなる、請求項1〜5の何れか一項に記載のベルト。 【請求項7】 前記RFIDは、前記ICチップと前記アンテナとを接続する接続導電線をさらに備え、 前記ICチップと前記アンテナの前記接続導電線に接続された接続部とは、所定方向に沿って配列されており、 前記アンテナは、1本の導電性線状物質からなり、前記接続部から前記所定方向と直交する直交方向の一方側と他方側とに延びるダイポールアンテナである、請求項1〜6の何れか一項に記載のベルト。 【請求項8】 前記ICチップと前記アンテナとは、電磁結合によって無線接続されている、請求項1〜6の何れか一項に記載のベルト。 【請求項9】(削除) 【請求項10】 前記RFIDは、ベースをさらに有し、 前記ICチップは前記ベースに設けられており、 前記RFIDは前記積層体の前記背面層又は前記内面層に設けられ、 前記ベースの材質が、前記積層体の前記RFIDが設けられる層の材質と同一である、請求項2に記載のベルト。 【請求項11】 前記RFIDは、前記センサを備えたセンサー体型のRFIDである、請求項1〜8、10の何れか一項に記載のベルト。 【請求項12】 前記ベルトは、複数の前記センサ及び複数の前記RFIDを有し、 該複数の前記センサは、それぞれが、少なくともいずれかの前記RFIDに接続されている、請求項1〜8、10〜11の何れか一項に記載のベルト。 【請求項13】 背面側に配置される背面層と芯体を有する芯体層とを含む積層体、 前記積層体に設けられたベルトの状態を検知するセンサ、 及び、同じく前記積層体に設けられた、ICチップ及び表面にテフロン粉末を担持させた導電性線状物質からなるアンテナを有しており、前記センサが検知した当該ベルトの状態情報を外部に送信するパッシブ型のRFID、を備えたベルトと、 前記RFIDからの信号を受信するリーダ、を有し、 前記RFIDは、前記リーダから送信された電磁波によって作動し、ベルトの状態情報を前記リーダに送る、ベルトの状態情報取得システム。 【請求項14】 前記芯体は、心線であり、 前記積層体は、前記背面層と、内面側に配置される内面層と、前記背面層と前記内面層との間に埋設される前記心線を有する心線層と、を含み、 前記ベルトは、伝動ベルトである、請求項13に記載のベルトの状態情報取得システム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照 |
異議決定日 | 2021-10-20 |
出願番号 | P2020-006930 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(F16G)
P 1 651・ 853- YAA (F16G) P 1 651・ 851- YAA (F16G) P 1 651・ 537- YAA (F16G) P 1 651・ 121- YAA (F16G) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 杉山 健一 |
登録日 | 2020-07-29 |
登録番号 | 6741889 |
権利者 | 三ツ星ベルト株式会社 |
発明の名称 | ベルト及びベルトの状態情報取得システム |
代理人 | 特許業務法人梶・須原特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人梶・須原特許事務所 |