• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H04M
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H04M
管理番号 1382378
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-26 
確定日 2021-11-05 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6746456号発明「掲示板管理システム、掲示板サーバ、および、集合住宅管理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6746456号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり〔1−8〕について訂正することを認める。 特許第6746456号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6746456号の請求項1に係る特許についての出願は、平成28年9月30日に出願され、令和2年8月7日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月26日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年2月26日に特許異議申立人 西林博(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年5月11日に取消し理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和3年7月9日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人に期間を指定して意見を求めたところ、特許異議申立人による意見の提出はなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。

請求項1に係る「前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置または前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」を「前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」に訂正する。(以下、この訂正を「訂正事項」という。)

本件訂正請求は、一群の請求項〔1−8〕に対して請求されたものである。

2 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の適否について
(1)訂正の目的の適否
本件訂正請求は、請求項1ないし8に係る「前記戸別端末装置」を「前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置」に限定するものであるから、「前記戸別端末装置」を「前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置」に限定するものである。
よって、訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の有無
明細書の発明の詳細な説明には、「住宅情報盤41(戸別端末装置)」(段落0021)、「例えば、要求受信部20は、住宅情報盤41から掲示板データの使用を開始するためのセキュリティコード(使用開始用コード)の発行要求を受信する。」(段落0057)、「このように、セキュリティコードは、掲示板サーバ1から直接住宅情報盤41に送信されず、集合住宅管理装置31を介して住宅情報盤41に提供される。集合住宅管理装置31が受信したセキュリティコードは、戸毎の住宅情報盤41に専用線によって送信される。」(段落0059)、「一方、集合住宅管理装置31は、生成されたセキュリティコードを掲示板サーバ1から取得する。コード提供部71は、専用線を介して、このセキュリティコードを要求元の住宅情報盤41に提供する。」(段落0083)と記載されていることから、「前記戸別端末装置」を、「前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置」とすることは、明細書の記載に基づいて導き出されるものである。
よって、訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

(3)特許請求の範囲の拡張、変更の存否
訂正事項は、訂正後の請求項1に係る発明の技術的事項を狭めるものにとどまり、それらのカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(4)独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項1については特許異議の申立てがされているので、訂正事項に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。

3 小括
上記のとおり、訂正事項に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−8〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「集合住宅に関する情報を、該集合住宅を構成する戸ごとに関連付けられた複数の端末装置で共有する掲示板を管理する掲示板管理システムであって、
前記掲示板管理システムは、以下を含む;
掲示板サーバ、および、
前記集合住宅を管理する集合住宅管理装置、
前記掲示板サーバは、以下を含む;
前記集合住宅を構成する戸ごとに前記掲示板の掲示板データを記憶する記憶部、および、
戸ごとに配備される端末装置である、少なくとも1つの戸別端末装置を、前記掲示板データに関連付ける関連付け部、
前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が令和3年5月11日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)請求項1に係る発明は、甲1号証及び甲3号証に記載された発明であるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項に規定に違反してされたものである。
(2)請求項1に係る発明は、甲1号証ないし甲3号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲1号証:特開2002−57805号公報
甲2号証:特開2009−194800号公報
甲3号証:特開2001−211261号公報

2 甲号証の記載
(1)甲1号証について
ア 甲1号証(特開2002−57806号公報)には、以下の記載がある。

「【0020】図1は、本発明の一実施例による集合住宅用インターホンシステムの全体構成図であり、集合住宅のエントランスに設置される集合玄関機1と、管理室等の共用部(以下、管理室と称す)に設置される管理室親機2と、管理室内に設置されるとともに書架カメラ4、スキャナ5が接続され回覧情報を作成し送信するためのPC(パーソナルコンピュータ)等からなる回覧情報作成装置3と、住戸(101号室、102号室、・・・)毎に設置される居室機(以下、複数の居室機と称す)6a、6b、・・・と、幹線L5を介して回覧情報作成装置3が接続されるサーバ7と、幹線L1、L2、L3、L4をそれぞれ介して集合玄関機1、管理室親機2、複数の居室機6a、6b、・・・、サーバ7が接続され当該システムを制御するための制御機8とを備えている。」

「【0047】次に、図1の全体構成図において、集合住宅の管理室内に居る管理人が、書架カメラ4、スキャナ5からのデータをもとに回覧情報作成装置3にて作成した回覧情報、例えば行事や予定表の内容を含む情報を、全住戸内の居住者に対して送信するために、当該回覧情報作成装置の図示しない全住戸選択操作部を適宜に操作すると、全居室の居室番号情報からなる複数の選局アドレスと回覧情報の内容とを含む回覧情報信号S31が、幹線L5、図3のブロック図に示すサーバ7の幹線接続端子P2b、通信I/F53を介してサーバCPU50に伝送される。
【0048】図3のブロック図に示すサーバ7のサーバCPU50は、回覧情報作成装置3からの回覧情報信号S31を、幹線接続端子P2a、幹線L4、図1の全体構成図に示す制御機8、幹線L3、図2のブロック図に示す複数の居室機6a、6b、・・・の幹線接続端子P1、通信I/F40を介して居室機CPU35にそれぞれ送信するとともに、回覧情報信号S31なす回路情報の内容を、記憶回路51の所定のエリアに選局アドレスに割当てて記憶する。
【0049】図2のブロック図に示す複数の居室機6a、6b、・・・の居室機CPU35は、回覧情報作成装置3からの回覧情報信号S31をなす選局アドレスと自居室機に予め割当てられているアドレスとを照合し、一致した場合のみ新着情報確認LED33を点灯するとともに、スピーカ34にて新着の案内音声を鳴動させるために音声合成回路38を制御する。ここでは、全住戸内に設置された各居室機6a、6b、・・・の居室機CPU35にてそれぞれ当該アドレスが一致し、新着情報確認LED33が点灯されるとともに、音声合成回路38から案内音声信号S32が出力される。また、音声合成回路38からの案内音声信号S32は、スピーカ用アンプ39を介して増幅され、スピーカ34にて自居室機宛てに回覧情報の新着があることを報知する案内音声を鳴動させる。
【0050】ここで、例えば、101号室内に在室中または外出等から帰宅した居住者が、図1の全体構成図および図2のブロック図に示す居室機6aの点灯されている新着情報確認LED33(在室中にはスピーカ34にて鳴動される案内音声を含む)を確認しタッチパネル32を画面起動操作すると、この操作を検出した居室機CPU35の制御により図4(d)の画面構成図に示す来訪者画像選択ボタン31a、伝言録音選択ボタン31b、伝言メモ選択ボタン31c、回覧情報選択ボタン31d、および回覧着信情報が表示されたスクロール表示エリア31eからなる着信表示画面がモニタ31に出画される。また、居室機6aのモニタ31に出画された図4(d)の画面構成図に示す着信表示画面をなすスクロール表示エリア31eに表示されている回覧着信情報をもとに、管理室内に居る管理人により回覧情報作成装置3にて作成された回覧情報があることを確認した居住者が、回覧情報選択ボタン31dをタッチパネル32を介してタッチ操作すると、この操作を検出した居室機CPU35は、サーバ7に予め割当てられている選局アドレスと当該サーバの記憶回路51に記憶されている回覧情報の内容を読出すための制御情報とを含む読出制御信号S33を、上述の読出制御信号S3、S13、S23と同様な経路を介して図3のブロック図に示すサーバ7のサーバCPU50に送信する。
【0051】図3のブロック図に示すサーバ7のサーバCPU50は、居室機6aからの読出制御信号S33をなす制御情報をもとに、記憶回路51に記憶されている回覧情報作成装置3にて作成された回覧情報の内容を読出し、この回覧情報の内容と101号室の居室番号情報からなる選局アドレスとを含む回覧情報送信信号S34を、上述の来訪者画像送信信号S4、伝言録音送信信号S14、伝言メモ送信信号S24と同様な経路を介して図2のブロック図に示す複数の居室機6a、6b、・・・の居室機CPU35にそれぞれ送信する。
【0052】図2のブロック図に示す複数の居室機6a、6b、・・・の居室機CPU35は、サーバ7からの回覧情報送信信号S34をなす選局アドレスと自居室機に予め割当てられているアドレスとを照合し、一致した場合のみ有効と検出した回覧情報の内容をモニタ31に個別出画する。ここでは、101号室内に設置された居室機6aの居室機CPU35のみ当該アドレスが一致し、管理室内に居る管理人により回覧情報作成装置3にて作成された回覧情報の内容(行事や予定表の内容)がモニタ31に個別出画される(図4(d)の画面構成図を参照)。これにより、101号室内に在室中または外出等から帰宅した居住者は、管理室内に居る管理人から配信された回覧情報の内容を示す行事や予定表を確認できる。」

イ 上記記載から、甲1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。なお、段落【0048】の「回覧情報信号S31なす回路情報」は、「回覧情報信号S31をなす回覧情報」の誤記であると認められる。

「集合住宅用インターホンシステムであって、
管理室等の共用部(以下、管理室と称す)に設置される管理室親機2と、
住戸(101号室、102号室、・・・)毎に設置される居室機(以下、複数の居室機と称す)6a、6b、・・・と、
サーバ7と、
を備え、
集合住宅の管理室内に居る管理人が、書架カメラ4、スキャナ5からのデータをもとに回覧情報作成装置3にて作成した回覧情報(例えば行事や予定表の内容を含む情報)を、全住戸内の居住者に対して送信するために、全居室の居室番号情報からなる複数の選局アドレスと回覧情報の内容とを含む回覧情報信号S31が、サーバCPU50に伝送され、
サーバ7のサーバCPU50は、回覧情報信号S31をなす回覧情報の内容を、記憶回路51の所定のエリアに選局アドレスに割当てて記憶し、
居住者が、回覧情報選択ボタン31dをタッチパネル32を介してタッチ操作すると、この操作を検出した居室機CPU35は、サーバ7に予め割当てられている選局アドレスと当該サーバの記憶回路51に記憶されている回覧情報の内容を読出すための制御情報とを含む読出制御信号S33を、サーバ7のサーバCPU50に送信し、
サーバ7のサーバCPU50は、居室機6aからの読出制御信号S33をなす制御情報をもとに、記憶回路51に記憶されている回覧情報作成装置3にて作成された回覧情報の内容を読出し、この回覧情報の内容と居室番号情報からなる選局アドレスとを含む回覧情報送信信号S34を、複数の居室機6a、6b、・・・の居室機CPU35にそれぞれ送信し、
複数の居室機6a、6b、・・・の居室機CPU35は、サーバ7からの回覧情報送信信号S34をなす選局アドレスと自居室機に予め割当てられているアドレスとを照合し、一致した場合のみ有効と検出した回覧情報の内容をモニタ31に個別出画する、
集合住宅用インターホンシステム。」

(2)甲2号証について
ア 甲2号証(特開2009−194800号公報)には、以下の記載がある。

「【0007】
本発明の課題は、集合住宅等に設置されるインターホンシステムであって、来訪者によるカメラ付きロビーインターホンからの呼び出しを受けるインターホン子機に対して、予め用意されている或いは取り込んだ文字および図形等の報知情報を来訪者撮像画像に付加して該インターホン子機の表示装置に表示する機能を備えたインターホンシステムを提供することである。」

「【0014】
本発明に係る表示装置付きインターホンシステムによれば、本システムが設置された集合住宅における各住戸の居住者に対して、表示装置付きインターホンシステムを使用する都度、管理室親機内の情報記憶装置に予め蓄積されかつ随時更新される広告その他の報知情報が、インターホンシステム本来の表示内容、例えば訪問者の容姿を表示する画像を阻害しない範囲で割り込み伝送・表示されるため、住戸居住者はインターホン子機の表示部における表示内容を目視確認することができる。
【0015】
この場合の報知情報は、国、地方公共団体、警察、税務、気象、管理組合等からの公的色彩の強い報知情報や、私的企業、団体等からの宣伝・広告等の私的色彩の強い報知情報、対象建造物に関連するもの等の有用情報、等とすることができる。なお、通常のインターホンによる通話を阻害しないような音量でBGMその他の音響情報を含めることも可能である。また、広告情報としての例えば、自動車の走行、ゴルフプレイ等の情景を訪問者の容姿の背景画像とすることも可能である。」

「【0017】
以下、添付図を参照しつつ本発明に係る表示装置付きインターホンシステムの実施の形態について開示する。図1は集合住宅における管理室1、ロビー(玄関)2および選ばれた住戸3(1)(2)(3)・・・(n)のそれぞれに設置された表示装置付きインターホンシステムの主要部を示すものである。集合住宅全体のインターホンシステムを総合的に管理・制御する管理室親機10は、集合住宅の管理室1またはその近傍に設置される。この管理室親機10には、本発明において必要となる文字および/または画像からなる報知情報を記憶しておく情報記憶装置12、インターホン14が付属している。なお、報知情報を記憶しておく情報記憶装置は、管理室親機でなくインターホン子機18、22に付属させるように構成することもできる。」

「【0019】
なお、各住戸3に設置されるインターホン子機18は、壁面に取り付けられた壁掛け式(固定型)とすることができることはもとより、回線に接続された無線送受端末20との間で交信可能である送受機能を備えた可搬式インターホン子機22とすることもできる。さらに、両者を設置しておき、使用時の状況に応じて選択的に使用するような構成は、居住者の利便性を向上させることができるため好ましい。」

「【0021】
図2は、各住戸に設置される表示装置付きインターホン子機18、または可搬式インターホン子機22のパネル面の構成例を示すものであり、パネル面には呼び出しを受けた際に操作して応答する応答スイッチ18S、呼び出し信号の送信者である来訪者を確認するための表示部18D、音声応答するための送受話部18M&S(マイク&スピーカ)が設けられている。そして、表示部18Dの適宜部位、例えば図2での表示部下段には、情報記憶装置12に予め蓄積されていて、インターホン作動の都度、選択して伝送され、画面合成の上割込み伝送される広告その他の報知情報を表示するための広告等報知情報の表示領域18Cを備えている。」

「【0023】
以下、本発明に係るインターホンシステムにおける表示様式について開示する。管理室親機10に付属する情報記憶装置12には、システムを管理する担当者の操作に応じて、インターホン子機18、22の表示装置18Dに対して表示すべき広告その他の報知情報を、記憶しておく。報知情報は所定情報量単位毎に編集された画像情報および/または文字情報を所要数記憶しておく。この場合の情報量は、インターホン表示部18D内に予定されている報知情報表示領域18Cによって上限が定められる。」

「【0027】
図3は、上述のように情報記憶装置12から所定順序で抽出された広告その他の報知情報Xと、インターホン(カメラ付き玄関機)14の撮像カメラによる画像情報Yと、を情報混合・画面編集手段24において合成・編集し、インターホン玄関機14において選択された住戸のインターホン子機18、22に表示する際の信号処理を模式表示したものである。
【0028】
報知情報Xは、情報記憶装置12に予め記憶されている広告その他の報知情報の中から所定プログラムに従って選択された報知情報である。撮像情報Yは、インターホン玄関機14のカメラによって撮影された画像情報である。情報混合・画面編集手段24は、報知情報Xと撮影された画像情報Yとを組合せ、インターホン子機18、22の表示装置の画面に適合する情報を合成する。報知情報信号Xと撮像信号Yとは信号形式が統一されていることが望ましい。仮に、一方がアナログ信号で他方がデジタル信号のように異なる場合はいずれか一方に対してA/D変換またはD/A変換等を行う回路を付加し信号形式を同化させればよい。
【0029】
このように、本発明に係る表示装置付きインターホンシステムによれば、本システムが設置された集合住宅における各住戸の居住者に対して、表示装置付きインターホンシステムを使用する度に、管理室親機に付属する情報記憶装置に予め蓄積されかつ随時更新される広告その他報知情報が表示される。当然、インターホンシステム本来の機能、例えば来訪者の容姿を表示する画像により、家族・知人・予約された来客等不審者でないことを確認の上解錠操作を行って入場を認めることになる。
【0030】
このようなインターホン子機の表示装置18Dには、撮像カメラによる来訪者の容姿の画像に加えて、インターホンシステム内に蓄積されている広告その他を内容とする文字情報および/または画像情報を含む可視画像が、割り込み表示される。この場合の広告その他情報の可視画像は、システム管理者によって予め選択された日常生活にとって有用と解される公的情報ないし私的情報としての広告、広報、スローガン、キャッチフレーズ、交通標語等を含むものである。したがって、各住戸居住者はこのような可視情報をインターホン子機の表示部における表示内容を、インターホン使用の都度目視確認することができる。」

イ 上記記載から、甲2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。

「管理組合等からの報知情報を、各住戸に設置される表示装置付きインターホン子機18及び可搬式インターホン子機22に表示するインターホンシステムであって、
管理室親機10、および、管理室親機10に付属する情報記憶装置12を備え、
管理室親機10は、集合住宅全体のインターホンシステムを総合的に管理・制御するであって、
情報記憶装置12は、報知情報を記憶しており、
本システムが設置された集合住宅における各住戸の居住者に対して、表示装置付きインターホンシステムを使用する度に、管理室親機10に付属する情報記憶装置12に予め蓄積された報知情報を、所定プログラムに従って選択し、インターホン子機18、22に表示する、
インターホンシステム。」

(3)甲3号証について
ア 甲3号証(特開2001−211261号公報)には、以下の記載がある。

「【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施形態のインターフォンシステムを含む集合住宅の全体システムを示している。」

「【0012】一方、インターフォンシステムは、集合住宅1内の共同の出入口に設けられた出入口装置31、ドアロック装置36、各戸内に設置された戸別装置40(1)〜40(N)、管理用サーバー70およびセンタ装置80を含んでいる。」

「【0026】一方、管理用サーバー70は、図5に示すように、各戸別装置40との間のデータ通信およびセンタ装置80との間のデータ通信を行うための通信回路71、72と、ハードディスク等の外部記憶装置73、監視装置22、出入口装置31からの信号を受信するためのインタフェース74、これら各回路を制御するマイクロコンピュータ構成の制御装置75によって構成されている。
【0027】この管理用サーバー70は、センタ装置80から送られてくる情報を外部記憶装置73に記憶し、戸別装置40から要求された情報を外部記憶装置73から読み出して要求元の戸別装置40へ送るという情報の仲介機能のほかに、出入口装置31の画像センサ35が検出する訪問者の画像をその訪問者が呼び出した戸別装置40へ出力する機能および監視装置22からの警報情報を全戸別装置40へ出力する機能を有している。
【0028】管理用サーバー70内の外部記憶装置73は、システムの管理に必要な情報を記憶するための管理情報領域と、戸別装置40へ提供する情報を記憶するための提供情報領域とを有しており、この提供情報領域には、各戸に共通の情報を提供するための共通領域と、各戸毎にそれぞれ割り当てられた戸別領域とがある。
【0029】また、各戸別装置40からは、管理用サーバー70の提供情報領域に対してのみアクセスが可能であるが、管理情報領域にアクセスすることはできない。
【0030】センタ装置80は、通信回路、モニタ、マイクロコンピュータ等から構成され、この集合住宅1のインターフォンシステム全体の管理を行う管理会社内に設置されており、管理用サーバー70に対して例えば専用線接続され、また、既存の通信網2(電話回線網、インターネット等)に接続され、この通信網2に接続された端末機(電話機やコンピュータ)からアクセスできるようになっている。
【0031】管理会社は、このセンタ装置80から集合住宅1の居住者に対して各種の情報を管理用サーバー70を介して提供する。
【0032】例えば、集合住宅1のメインテナンス等に関する管理情報や、地域の公共機関からの情報、イベント情報、商店の広告情報等の地域情報をセンタ装置80から管理用サーバー70の外部記憶装置73へ記憶させ、各戸別装置40(1)〜40(N)から自由に閲覧できるようにする。」

「【0037】ここで、例えば居住者が戸別装置40(n)に表示されているお知らせキー55cや地域情報キー55d(情報指定操作部)を操作すると、その戸別装置40(n)の制御装置54は、通信回路53を介して管理用サーバー70にお知らせ情報や地域情報を要求し(情報要求手段)、この要求に対して管理用サーバー70が外部記憶装置73内の共通領域から要求されたお知らせ情報や地域情報を読み出して要求元の戸別装置40(n)へ出力する。」

「【0064】なお、前記説明では、センタ装置80側から各戸別装置40への直接的なアクセスは、プライバシーの保護等の理由から規制しているが、居住者が外出先から戸別装置40のモードを切り換えたり、留守中に記録された訪問者の画像をみたり音声を聞いたり、あるいは伝言を聞くことができるようにすることも可能である。
【0065】この場合、予め各戸別装置40毎に固有の識別コード(暗証コード)を付与しておき、通信網2に接続された端末機によって居住者が識別コードと戸別装置40のモードを指定したり、情報を要求するためのコマンド情報をセンタ装置80へ送る。
【0066】センタ装置80は、識別コードを判定し、正規の識別コードであれば、その識別情報とコマンド情報とを管理用サーバー70へ出力し、管理用サーバー70においても、この識別コードを確認して、それに続くコマンド情報をその識別コードに対応する戸別装置40へ出力する。
【0067】このコマンド情報を受けた戸別装置40は、コマンド情報にしたがって、内部のモードを例えば留守モードにしたり、あるいは留守中の訪問者の画像や音声を読み出して端末機へ送信する。
【0068】なお、前記実施形態のインターフォンシステムの各戸別装置40に画像センサを設けるとともに、出入口装置31にも画像表示が可能な表示装置を設けて、互いに相手の画像を見ながら通話を行うようにしてもよく、また、伝言モード時に、伝言者の画像を音声とともに記憶して、再生するようにしてもよい。」

イ 上記記載から、甲3号証には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。

「インターフォンシステムであって、
各戸内に設置された戸別装置40(1)〜40(N)、管理用サーバー70およびセンタ装置80を含み、
管理用サーバー70は、ハードディスク等の外部記憶装置73を有し、
管理用サーバー70内の外部記憶装置73は、戸別装置40へ提供する情報を記憶するための提供情報領域とを有し、この提供情報領域には、各戸に共通の情報を提供するための共通領域と、各戸毎にそれぞれ割り当てられた戸別領域とがあり、
センタ装置80は、この集合住宅1のインターフォンシステム全体の管理を行う管理会社内に設置されており、センタ装置80から集合住宅1の居住者に対して、集合住宅1のメインテナンス等に関する管理情報等を管理用サーバー70を介して提供しており、
戸別装置40(n)の制御装置54は、管理用サーバー70にお知らせ情報や地域情報を要求し(情報要求手段)、この要求に対して管理用サーバー70が外部記憶装置73内の共通領域から要求されたお知らせ情報を読み出して要求元の戸別装置40(n)へ出力する、
インターフォンシステム。」

3 当審の判断
(1)甲1発明について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、以下のことがいえる。
(ア)甲1発明の「集合住宅の管理室内に居る管理人が、書架カメラ4、スキャナ5からのデータをもとに回覧情報作成装置3にて作成した回覧情報(例えば行事や予定表の内容を含む情報)」は、本件発明1の「集合住宅に関する情報」に相当する。

(イ)甲1発明の「住戸(101号室、102号室、・・・)毎に設置される居室機(以下、複数の居室機と称す)6a、6b、・・・」は、本件発明1の「該集合住宅を構成する戸ごとに関連付けられた複数の端末装置」に相当する。

(ウ)甲1発明の「管理室親機2」及び「サーバ7」は、本件発明1の「掲示板サーバ、および、前記集合住宅を管理する集合住宅管理装置」に相当する。

(エ)甲1発明の「サーバ7」は、「回覧情報」の内容を、「記憶回路51」の所定のエリアに「居室番号情報からなる選局アドレス」に割当てて記憶しており、「居室番号情報からなる選局アドレス」は、住戸毎に異なるものであることを考慮すると、甲1発明のこの記憶は、本件発明1の「前記集合住宅を構成する戸ごとに前記掲示板の掲示板データを記憶する」ことに相当する。
そうすると、甲1発明の「記憶回路51」は、本件発明1の「前記集合住宅を構成する戸ごとに前記掲示板の掲示板データを記憶する記憶部」に相当する。

(オ)甲1発明の「サーバ7」が、「回覧情報」の内容を、「記憶回路51」の所定のエリアに「居室番号情報からなる選局アドレス」に割当てて記憶することは、「回覧情報」を各住戸に関連づけて記憶することであり、また、「居室機」は住戸毎に設置されるものであるから、この記憶により、少なくとも1つの「居室機」と「回覧情報」は関連づけられているといえる。
そうすると、甲1発明は、本件発明1の「戸ごとに配備される端末装置である、少なくとも1つの戸別端末装置を、前記掲示板データに関連付ける」に相当する動作を行っていると認められ、また、本件発明1の「戸ごとに配備される端末装置である、少なくとも1つの戸別端末装置を、前記掲示板データに関連付ける関連付け部」に相当する構成を備えていると認められる。

(カ)甲1発明の「居室機CPU35は、サーバ7に予め割当てられている選局アドレスと当該サーバの記憶回路51に記憶されている回覧情報の内容を読出すための制御情報とを含む読出制御信号S33を、サーバ7のサーバCPU50に送信」することにおける「読出制御信号S33」と、本件発明1の「前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求」とは、「前記戸別端末装置からの戸ごとの要求」である点で一致する。
そして、甲1発明の「サーバ7」は、「居室機6aからの読出制御信号S33をなす制御情報をもとに、記憶回路51に記憶されている回覧情報作成装置3にて作成された回覧情報の内容を読出し」ているから、この読み出しと、本件発明1の「前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」こととは、「前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」点で一致する。

(キ)してみると本件発明1と甲1発明との一致点および相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「集合住宅に関する情報を、該集合住宅を構成する戸ごとに関連付けられた複数の端末装置で共有する掲示板を管理する掲示板管理システムであって、
前記掲示板管理システムは、以下を含む;
掲示板サーバ、および、
前記集合住宅を管理する集合住宅管理装置、
前記掲示板サーバは、以下を含む;
前記集合住宅を構成する戸ごとに前記掲示板の掲示板データを記憶する記憶部、および、
戸ごとに配備される端末装置である、少なくとも1つの戸別端末装置を、前記掲示板データに関連付ける関連付け部、
前記掲示板サーバは、前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する。」

[相違点1]
本件発明1は「前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」のに対して、甲1発明は、「管理室親機2」の要求に応じて、「回覧情報」を処理しておらず、また、「客室機6a」の要求に応じて「回覧情報」を処理しているものの、「客室機6a」は、本件発明1の「前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証」することと同様の認証を行っていない点。

イ 当審の判断
上記相違点1について判断すると、「前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」ことは、甲2号証および甲3号証には記載されておらず、また、この掲示板サーバの掲示板データの処理が、本件特許の出願前に周知であったともいえない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、また、甲1発明並びに甲2号証および甲3号証に記載された事項から、当業者が容易に想到し得るものではない。

(2)甲2発明について
ア 対比
本件発明1と甲2発明を対比すると、以下のことがいえる。
(ア)甲2発明の「管理組合からの報知情報」、「各住戸に設置される表示装置付きインターホン子機18及び可搬式インターホン子機22」、「管理室親機10」は、それぞれ本件発明1の「集合住宅に関する情報」、「該集合住宅を構成する戸ごとに関連付けられた複数の端末装置」、「掲示板サーバ、および、前記集合住宅を管理する集合住宅管理装置」に相当する。

(イ)甲2発明の「管理室親機10に付属する情報記憶装置12に予め蓄積された報知情報を、所定プログラムに従って選択し、インターホン子機18、22に表示する」際には、表示を行うために「報知情報」と「インターホン子機18、22」を関連付けていると認められるから、甲2発明も、本件発明1の「戸ごとに配備される端末装置である、少なくとも1つの戸別端末装置を、前記掲示板データに関連付ける」ことと同様の動作を行っていると認められる。
そうすると、甲2発明も本件発明1の「戸ごとに配備される端末装置である、少なくとも1つの戸別端末装置を、前記掲示板データに関連付ける関連付け部」に相当する構成を備えていると認められる。

(ウ)甲2発明の「表示装置付きインターホンシステムを使用する度に」「管理室親機10」に記憶された「報知情報」を表示することと、本件発明1の「前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」こととは、「前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」点で一致する。

(エ)甲2発明の「インターホンシステム」は、本件発明1の「掲示板管理システム」に対応する。

(オ)したがって、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致し、また相違する。

[一致点]
「集合住宅に関する情報を、該集合住宅を構成する戸ごとに関連付けられた複数の端末装置で共有する掲示板を管理する掲示板管理システムであって、
前記掲示板管理システムは、以下を含む;
掲示板サーバ、および、
前記集合住宅を管理する集合住宅管理装置、
前記掲示板サーバは、以下を含む;
前記集合住宅を構成する戸ごとに前記掲示板の掲示板データを記憶する記憶部、および、
戸ごとに配備される端末装置である、少なくとも1つの戸別端末装置を、前記掲示板データに関連付ける関連付け部、
前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する。」

[相違点2]
本件発明1の「記憶部」は、「前記集合住宅を構成する戸ごとに前記掲示板の掲示板データを記憶」しているのに対して、甲2発明の「情報記憶装置12」は、蓄積された「報知情報」を戸ごとに記憶していない点。

[相違点3]
本件発明1は、「前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」のに対して、甲2発明は、「管理室親機10」の要求に応じて、「報知情報」を処理しておらず、また、「表示装置付きインターホンシステム」の使用に応じて、「報知情報」を、所定プログラムに従って選択し、「インターホン子機18、22」に表示するものの、「インターホン子機18、22」は、本件発明1の「前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証」することと同様の認証を行っていない点。

イ 判断
事案に鑑み、上記相違点3について先に判断すると、「前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」ことは、甲1号証および甲3号証には記載されておらず、また、この掲示板サーバの掲示板データの処理が、本件特許の出願前に周知であったともいえない。
そうすると、本件発明1は、甲2発明並びに甲1号証および甲3号証に記載された事項から、当業者が容易に想到し得るものではない。

(3)甲3発明について
ア 対比
本件発明1と甲3発明を対比すると、以下のことがいえる。
(ア)甲3発明の「集合住宅1のメインテナンス等に関する管理情報等」は、本件発明1の「集合住宅に関する情報」に相当する。

(イ)甲3発明の「管理用サーバー70」及び「この集合住宅1のインターフォンシステム全体の管理を行う管理会社内に設置さ」れた「センタ装置80」は、本件発明1の「掲示板サーバ、および、前記集合住宅を管理する集合住宅管理装置」に相当する。

(ウ)甲3発明の「各戸内に設置された戸別装置40(1)〜40(N)」は、本件発明1の「該集合住宅を構成する戸ごとに関連付けられた複数の端末装置」に相当する。

(エ)甲3発明の「ハードディスク等の外部記憶装置73」は、「戸別装置40へ提供する情報を記憶するための提供情報領域とを有し、この提供情報領域には、各戸に共通の情報を提供するための共通領域と、各戸毎にそれぞれ割り当てられた戸別領域とがあ」るのであるから、この「戸別領域」は、本件発明1の「前記集合住宅を構成する戸ごとに前記掲示板の掲示板データを記憶する記憶部」に相当する。

(オ)甲3発明の「戸別装置40(n)の制御装置54は、管理用サーバー70にお知らせ情報や地域情報を要求し(情報要求手段)、この要求に対して管理用サーバー70が外部記憶装置73内の共通領域から要求されたお知らせ情報を読み出して要求元の戸別装置40(n)へ出力する」際には、「要求元の戸別装置40(n)」と読み出された「お知らせ情報」は関連づけられると認められるから、このことは、本件発明1の「戸ごとに配備される端末装置である、少なくとも1つの戸別端末装置を、前記掲示板データに関連付ける」ことに相当する。
そうすると、甲3発明は、本件発明1の「関連付け部」に相当する構成を備えていると認められる。

(カ)甲3発明の「戸別装置40(n)の制御装置54は、管理用サーバー70にお知らせ情報や地域情報を要求し(情報要求手段)、この要求に対して管理用サーバー70が外部記憶装置73内の共通領域から要求されたお知らせ情報を読み出して要求元の戸別装置40(n)へ出力する」ことと、本件発明1の「前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」こととは、「前記掲示板サーバは、前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」点で一致する。

(キ)甲3発明の「インターフォンシステム」は、本件発明1の「掲示板管理システム」に対応する。

(ク)したがって、本件発明1と甲3発明とは、以下の点で一致し、また相違する。

[一致点]
「集合住宅に関する情報を、該集合住宅を構成する戸ごとに関連付けられた複数の端末装置で共有する掲示板を管理する掲示板管理システムであって、
前記掲示板管理システムは、以下を含む;
掲示板サーバ、および、
前記集合住宅を管理する集合住宅管理装置、
前記掲示板サーバは、以下を含む;
前記集合住宅を構成する戸ごとに前記掲示板の掲示板データを記憶する記憶部、および、
戸ごとに配備される端末装置である、少なくとも1つの戸別端末装置を、前記掲示板データに関連付ける関連付け部、
前記掲示板サーバは、前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する。」

[相違点4]
本件発明1は、「前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」のに対して、甲3発明は、「管理用サーバー70」の要求に応じて、「集合住宅1のメインテナンス等に関する管理情報等」を処理しておらず、また、「戸別装置40(n)の制御装置54は、管理用サーバー70にお知らせ情報や地域情報を要求し(情報要求手段)、この要求に対して管理用サーバー70が外部記憶装置73内の共通領域から要求されたお知らせ情報を読み出して要求元の戸別装置40(n)へ出力する」ものの、「戸別装置40(n)」は、本件発明1の「前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証」することと同様の認証を行っていない点。

イ 判断
上記相違点4について先に判断すると、「前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」ことは、甲1号証および甲2号証には記載されておらず、また、この掲示板サーバの掲示板データの処理が、本件特許の出願前に周知であったともいえない。
なお、甲3号証には、「予め各戸別装置40毎に固有の識別コード(暗証コード)を付与」することが記載されている(甲3号証段落0065)ものの、この「識別コード」の付与は、通信網2に接続された端末機によって居住者が識別コードと戸別装置40のモードを指定したり、情報を要求するためのコマンド情報をセンタ装置80へ送り、センタ装置80は、識別コードを判定し、正規の識別コードであれば、その識別情報とコマンド情報とを管理用サーバー70へ出力し、管理用サーバー70において、この識別コードを確認して、それに続くコマンド情報をその識別コードに対応する戸別装置40へ出力し、このコマンド情報を受けた戸別装置40は、コマンド情報にしたがって、内部のモードを例えば留守モードにしたり、あるいは留守中の訪問者の画像や音声を読み出して端末機へ送信するためのものであり(甲3号証段落0065ないし0067)、本件発明1の「前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コード」には対応しない。
そうすると、本件発明1は、甲3発明であるとはいえず、また、甲3発明並びに甲1号証および甲2号証に記載された事項から、当業者が容易に想到し得るものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明について、甲2号証に記載された発明と同一であると主張する。
しかしながら、上記第4の3(2)で検討したように、本件発明1は、相違点3に係る「前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する」ことを行っており、このことは、甲2号証に記載されておらず、本件特許の出願前に周知であったともいえないので、本件発明1は甲2発明であるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由および特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅に関する情報を、該集合住宅を構成する戸ごとに関連付けられた複数の端末装置で共有する掲示板を管理する掲示板管理システムであって、
前記掲示板管理システムは、以下を含む;
掲示板サーバ、および、
前記集合住宅を管理する集合住宅管理装置、
前記掲示板サーバは、以下を含む;
前記集合住宅を構成する戸ごとに前記掲示板の掲示板データを記憶する記憶部、および、
戸ごとに配備される端末装置である、少なくとも1つの戸別端末装置を、前記掲示板データに関連付ける関連付け部、
前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置、または前記集合住宅管理装置から前記戸別端末装置に提供された、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードにより認証済みの前記戸別端末装置からの戸ごとの要求に応じて、各戸の掲示板データを処理する。
【請求項2】
請求項1に記載の掲示板管理システムにおいて、
前記掲示板サーバは、以下を含む;
前記掲示板サーバが、前記戸別端末装置から、前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードの発行要求を受信した場合に、前記戸別端末装置の使用開始用コードを生成するコード生成部、
前記関連付け部は、さらに、生成された前記使用開始用コードを要求元の前記戸別端末装置に関連付ける、
前記集合住宅管理装置は、以下を含む;
前記掲示板サーバから取得した前記使用開始用コードを、専用線を介して、要求元の前記戸別端末装置に提供するコード提供部、
前記掲示板サーバは、以下をさらに含む;
前記戸別端末装置から受信した使用開始用コードと、該戸別端末装置に関連付けられている使用開始用コードとが一致した場合に、該戸別端末装置に関連付けられている掲示板データを使用可能な端末装置として、該戸別端末装置を承認する照合部。
【請求項3】
請求項2に記載の掲示板管理システムにおいて、
前記コード生成部は、さらに、前記掲示板サーバが、承認された前記戸別端末装置から、他の端末装置を前記掲示板データに招待するための招待用コードの発行要求を受信した場合に、前記掲示板データの招待用コードを生成する、
前記関連付け部は、さらに、生成された前記招待用コードを、要求元の戸別端末装置に関連付けられている掲示板データに関連付ける、
前記掲示板サーバは、以下をさらに含む;
生成された招待用コードを承認された前記戸別端末装置に送信する送信部、
前記招待用コードは、前記他の端末装置を前記戸別端末装置の所定の距離に近づけることにより、該他の端末装置によって取得されることが可能であり、
前記照合部は、前記他の端末装置から受信した招待用コードと一致する招待用コードが関連付けられた掲示板データが前記記憶部に記憶されている場合に、前記招待用コードを送信した前記他の端末装置を、該掲示板データを使用可能な端末装置として承認する。
【請求項4】
請求項3に記載の掲示板管理システムにおいて、
前記招待用コードは、前記戸別端末装置の表示部に表示される画像であり、前記他の端末装置が自装置が備えるカメラで前記画像を撮影することにより、該他の端末装置によって前記招待用コードが取得され得る。
【請求項5】
請求項3または4に記載の掲示板管理システムにおいて、
前記関連付け部は、前記掲示板サーバが、承認された前記戸別端末装置から、承認済みの端末装置の承認を取り消す要求を受信した場合、要求元の前記戸別端末装置に関連付けられた掲示板データに関連付けられている承認済みの端末装置のうち、指定された端末装置の関連付けを削除する。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の掲示板管理システムにおいて、
前記集合住宅管理装置は、以下を含む;
各戸において発生するイベントを検出する戸別イベント検出装置から、イベントが発生した戸の識別情報および発生したイベントの情報を取得する情報取得部、
取得した情報に基づいて、前記掲示板に投稿するための投稿データを生成するデータ生成部、および、
生成された前記投稿データに、前記イベントが発生した戸に配備されている戸別端末装置を紐付けて、該投稿データを前記掲示板サーバに送信するデータ送信部、
前記掲示板サーバは、以下をさらに含む;
前記投稿データに紐付けられている戸別端末装置に関連付けられている掲示板データに、該投稿データを追加するデータ更新部。
【請求項7】
請求項6に記載の掲示板管理システムにおいて、
前記戸別端末装置は、各戸に配備された住宅情報盤であり、前記戸別イベント検出装置は、前記集合住宅管理装置が管理する集合住宅の集合玄関機と該集合住宅における各戸の住宅情報盤とを制御するインターホン制御装置であって、
前記情報取得部は、前記インターホン制御装置が前記集合玄関機から戸が呼び出されたことを検出した場合に、呼び出された戸の識別情報および来客の情報を前記インターホン制御装置から取得し、
前記データ生成部は、前記来客の情報を含む投稿データを生成し、
前記データ送信部は、前記呼び出された戸の識別情報を紐付けて、前記投稿データを 前記掲示板サーバに送信する。
【請求項8】
請求項6または7に記載の掲示板管理システムにおいて、
前記戸別端末装置は、各戸に配備された住宅情報盤であり、前記戸別イベント検出装置は、前記集合住宅管理装置が管理する集合住宅の宅配ボックスと該集合住宅における各戸 の住宅情報盤とを制御するインターホン制御装置であって、
前記情報取得部は、前記インターホン制御装置が入庫または出庫のために前記宅配ボックスに戸の識別情報が入力されたことを検出した場合に、入力された戸の識別情報および入庫または出庫を示す入出庫種別を前記インターホン制御装置から取得し、
前記データ生成部は、前記入出庫種別に対応する内容を含む投稿データを生成し、
前記データ送信部は、前記入力された戸の識別情報を紐付けて、前記投稿データを前記掲示板サーバに送信する。
【請求項9】
集合住宅に関する情報を、該集合住宅を構成する戸ごとに関連付けられた複数の端末装置で共有する掲示板を管理する掲示板サーバであって、
前記掲示板サーバは、以下を含む;
前記集合住宅を構成する戸ごとに前記掲示板の掲示板データを記憶する記憶部、
戸ごとに配備される端末装置である、少なくとも1つの戸別端末装置を、前記掲示板データに関連付ける関連付け部、および、
前記掲示板サーバが、前記戸別端末装置から前記掲示板の使用を可能にするための使用開始用コードの発行要求を受信した場合に、前記戸別端末装置の使用開始用コードを生成するコード生成部、
前記関連付け部は、さらに、生成された前記使用開始用コードを要求元の前記戸別端末装置に関連付ける、
前記掲示板サーバは、以下をさらに含む;
前記戸別端末装置から受信した使用開始用コードと、該戸別端末装置に関連付けられている使用開始用コードとが一致した場合に、該戸別端末装置に関連付けられている掲示板データを使用可能な端末装置として、該戸別端末装置を承認する照合部。
【請求項10】
掲示板サーバと通信する集合住宅管理装置であって、前記掲示板サーバは、前記集合住宅管理装置が管理する集合住宅に関する情報を、該集合住宅を構成する戸ごとに関連付けられた複数の端末装置で共有する掲示板を管理するものであり、
前記集合住宅管理装置は、以下を含む;
前記集合住宅を構成する戸ごとに発生するイベントを検出する戸別イベント検出装置から、イベントが発生した戸の識別情報および発生したイベントの情報を取得する情報取得部、
取得した情報に基づいて、前記掲示板に投稿するための投稿データを生成するデータ生成部、および、
生成された前記投稿データに、前記イベントが発生した戸に配備されている戸別端末装置を紐付けて、該投稿データを前記掲示板サーバに送信するデータ送信部。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-10-26 
出願番号 P2016-194556
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (H04M)
P 1 652・ 113- YAA (H04M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 小田 浩
富澤 哲生
登録日 2020-08-07 
登録番号 6746456
権利者 シャープ株式会社
発明の名称 掲示板管理システム、掲示板サーバ、および、集合住宅管理装置  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ