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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E06B
審判 一部申し立て 2項進歩性  E06B
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  E06B
管理番号 1382388
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-24 
確定日 2022-02-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第6799944号発明「遮蔽装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6799944号の請求項1、2、4、9〜13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6799944号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、平成28年5月19日に出願され、令和2年11月26日にその特許権の設定登録がされ、同年12月16日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。

令和3年 5月24日 特許異議申立人加藤浩志(以下「申立人 」という。)による請求項1、2、4、 9ないし13に係る発明の特許に対する 特許異議の申立て
同年 8月30日付け 取消理由通知
同年10月20日 意見書の提出
同年11月22日付け 審尋
申立人に対して審尋を送付し、期間を指定して特許権者が提出した意見書に対して意見を述べる機会を与えたが、何らの応答もなかった。

第2 本件発明
本件特許の請求項1、2、4、9ないし13に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2、4、9ないし13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
引張コードを引くことにより遮蔽材を昇降可能に構成される遮蔽装置であって、
ケースを有するダンパであって、前記遮蔽材の自重下降に伴って従動する前記引張コードによって加えられる入力に抵抗を発生させ且つその反作用で前記引張コードに前記抵抗を加えるダンパと、
内部の底面又は側面を設置面として前記ケースが設置されるヘッドボックスと、
前記ヘッドボックスとは別体の当接手段と
を備え、
前記当接手段は、前記ケースと当接することで、前記設置面から離れる方向への前記ダンパの変位を阻止するように構成される、
遮蔽装置。

【請求項2】
前記ケースの内部には、前記引張コードの移動を入力として回転を伝達する回転伝達機構と、前記伝達された回転によってウェイトが外径方向に遠心力が加えられ且つこれが前記ケースの内壁と接触して前記抵抗を発生させる遠心ガバナとが設けられる、請求項1に記載の遮蔽装置。

【請求項4】
前記回転伝達機構と前記遠心ガバナとが並列に構成される、請求項2に記載の遮蔽装置。

【請求項9】
前記遮蔽材は横型ブラインドのスラットであり、
前記当接手段は、前記スラットの角度調節軸である請求項1〜請求項8の何れか1つに記載の遮蔽装置。

【請求項10】
前記当接手段は、前記ヘッドボックスに設けられた固定部材であり、前記ダンパの変位であって前記設置面から離れる方向の変位及び前記設置面方向の変位を阻止する、請求項2〜請求項8の何れか1つに記載の遮蔽装置。

【請求項11】
前記固定部材は、前記遠心ガバナ以外の部分において前記ダンパと常時当接している、請求項10に記載の遮蔽装置。

【請求項12】
前記ケースには突起が設けられ、前記ヘッドボックスには前記突起が挿入される挿通孔が設けられる、請求項1〜請求項11の何れか1つに記載の遮蔽装置。

【請求項13】
前記ダンパは、前記引張コードを挟着するコードキャッチを備え、前記コードキャッチは、前記ヘッドボックスの短手方向の位置が前記突起の位置と略一致している、請求項12に記載の遮蔽装置。」

第3 特許異議申立理由、取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す各証拠を提出している。
(1)進歩性(特許法第29条第2項
本件発明1、2、4、9ないし13は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

(2)新規事項追加(特許法第17条の2第3項
本件発明1、2、4、9ないし13について、令和2年7月20日付けでした補正は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、本件発明1、2、4、9ないし13に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願にしてされたものであるから、取り消されるべきものである。

(3)明確性要件違反(特許法第36条第6項第2号
本件発明1、本件発明10及び本件発明11の記載が不明確であり、本件発明1や本件発明11を引用して記載する発明がいかなる構成を意味しているのかが不明確であり、本件発明1、2、4、9ないし13は不明確であるから、その特許は取り消されるべきものである。

(4)サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号
本件発明1、2、4、9ないし13は、発明の詳細な説明によってサポートされておらず、サポート要件を満たしていないから、その特許は取り消されるべきものである。

(5)実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号
本件発明1、2、4、9ないし13は、発明の詳細な説明に、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、実施可能要件に違反しているから、その特許は取り消されるべきものである。

<証拠>
甲第1号証:実願昭54-153158号(実開昭56-70094号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特許第2803983号公報
甲第3号証:特許第3064243号公報
甲第4号証:特開2005−30084号公報

2 取消理由の概要
当審が令和3年8月30日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
明確性)本件特許の明細書及び図面に記載された実施形態には、当接手段に、ヘッドボックスと一体となっているものが含まれており、上記記載と、請求項1に記載の「ヘッドボックスとは別体の当接手段」とは整合しないことから、請求項1に係る発明は不明確である。
また、請求項1を引用して記載する請求項2、4、9ないし13に係る発明も同様に不明確である。

第4 当審の判断
1 取消理由について
申立人は、請求項1の「ヘッドボックスとは別体の当接手段」との記載における「別体」は、一体成形でないことを意味するのか、ヘッドボックスと離隔した部材を意味するのか技術的意味が不明確である旨主張する(申立書22頁6〜8行)。

明確性要件については、特許請求の範囲の記載だけでなく、明細書の記載及び図面を考慮し、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

「別体」は「一体」の対概念と認められるところ、一般に「一体」は、「一つのからだ。」や「一つになって分けられない関係にあること。」(広辞苑第六版)ことを意味するから、「別体」とは、「一つの」ものではなく、「一つになって分けられない関係にある」ものでもないことを意味すると解される。
これを本件明細書の記載に照らしてみると、申立人が「別体」に該当するのか説明がないと主張する本件明細書に記載された「第3実施形態」は、「ダンパ5」を「スナップフィット機構9a、9b」を用いて「ヘッドボックス1」に保持するものであるところ、「スナップフィット機構9a、9b」は「ヘッドボックス1」とは別部材であるとしても一つになって分けられないものであるから、ヘッドボックスと一体である当接手段と評価できる。
そうすると、先の取消理由で指摘した第3実施形態のような「スナップフィット機構9a、9b」は、「ヘッドボックスとは別体の当接手段」ではないと判断できるので、請求項1の上記記載は第三者に不測の不利益を及ぼすほどは不明確であるとはいえない。

2 取消理由に採用しなかった異議申立理由について
(1)進歩性について
ア 各号証について
(ア)第1号証
a 甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は決定で付した。以下同様。)
(a)「本考案は、ブラインドの翼板定速降下装置に関するものである。」
(明細書第1頁第14−15行)

(b)「一般に、手で昇降コードを引くことによつてブラインドの翼板を昇降する型式のブラインドにおいては、ブラインド降下時に、昇降コードをおさえている。
ストツパーをはずすと、ブラインドの翼板は自重で降下する。この場合、ブラインドの下板は比較的重い重量を有しているので、昇降コードを手で抑さえていないと、ブラインドは相当勢よく下降し、危険である。
本考案は、このような危険を防止するために、ブラインド降下時に手をはなしても、定速でブラインドが降下するようにした定速降下装置を提供しようとするものである。
以下、図面に示す実施態様について説明する。図中、1はブラインドのヘツドボツクス、2は翼板、3は翼板支持コード、4は昇降コードを示す。本考案による翼板定速降下装置は、ブラインドの昇降コード4を巻回したドラム5によつて回転されるシヤフト6上に、このシヤフトが翼板降下方向に回転する時に係合状態となる一方向クラツチ7を介してロータ8を設置し、このロータ8の外周に遠心力により外方に突出する摩擦制動子9を配置し、且つこのロータ8の周りに小間隔を隔てて配置された外枠10を設けたものである。」
(明細書第1頁第16行−第2頁第20行)

(c)「図示の態様では、ドラムに歯車11が設けられ、シヤフト6にこれと噛合う歯車12が設けられて、ドラムの回転は減速してシヤフト6に伝達される。一方向クラツチ7は、ロータの溝13内に係合するクラツチ止子14を有し、翼板下降方向の回転時に、シヤフト6とロータ8とを一体に係合する。摩擦制動子9はゴム等の摩擦材でつくられ、ロータ内から遠心力によつて突出する押圧部材15によつて外枠10の内面に押しつけられるようになつている。
本考案装置によれば、ブラインド翼板の下降時に、昇降コード4によつて回転されるドラム5の回転がシヤフト6に伝達され、一方向クラツチ7を介してロータ8が回転される。ロータ8の回転に応じて押圧部材15に押されて摩擦制動子9が外方に突出し外枠10に押しつけられて、ロータの制動作用を生ずる。ロータの回転が早くなると、これに応じて摩擦制動子9は外枠10の内面に強く押しつけられて、大なる制動力を生ずる。かくして、ロータ8は実質的に定速で回転するように制動されて、翼板を定速で降下させる。」(明細書第3頁第1行−第4頁第3行)

(d)第1図






(e)第2図




上記第2図から、以下の点が看取できる。
・ヘツドボツクス1が底板と、底板の幅方向両端から立ち上がる側板からなり、ヘツドボツクス1の底板に沿って設けられた平面状の部材と、ヘツドボツクス1の前記側板に沿って立設された2つの部材とからなるコ字状の部材が設置されている点。
・前記コ字状部材のうちの立設された部材の上方に、ヘツドボツクス1の上端に形成された湾曲部が位置している点。

(f)第3図





上記第3図から、外枠10の内側に、シヤフト6、一方向クラッチ7及びロータ8が配置されている点が看取できる。

(g)第4図




上記第4図から、2つの立設された部材の内側に、ドラム5と、シヤフト6と、ロータ8及び外枠10が配置されている点が看取できる。

(h)上記(b)、(e)ないし(g)から、以下のことがいえる。
・コ字状の部材の内側に、翼板定速降下装置が設けられていること。

b 甲第1号証に記載された発明
上記aから、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「手で昇降コードを引くことによつてブラインドの翼板を昇降する型式のブラインドであり、
ヘツドボツクス1、翼板2、翼板支持コード3、昇降コード4を備え、
ブラインドの昇降コード4を巻回したドラム5によつて回転されるシヤフト6上に、このシヤフトが翼板降下方向に回転する時に係合状態となる一方向クラツチ7を介してロータ8を設置し、このロータ8の外周に遠心力により外方に突出する摩擦制動子9を配置し、且つこのロータ8の周りに小間隔を隔てて配置された外枠10を設けた翼板定速降下装置を備え、
ヘツドボツクス1が底板と、底板の幅方向両端から立ち上がる側板からなり、ヘツドボツクス1の底板に沿って設けられた平面状の部材と、ヘツドボツクス1の前記側板に沿って立設された2つの部材とからなるコ字状の部材が設置され、前記コ字状部材のうちの立設された部材の上方に、ヘツドボツクス1の上端に形成された湾曲部が位置し、前記コ字状の部材の内側に、翼板定速降下装置が設けられており、
ドラム5に歯車11が設けられ、シヤフト6にこれと噛合う歯車12が設けられて、ドラム5の回転は減速してシヤフト6に伝達され、一方向クラッチ7は、ロータの溝13内に係合するクラツチ止子14を有し、翼板下降方向の回転時に、シヤフト6とロータ8とを一体に係合し、摩擦制動子9はゴム等の摩擦材でつくられ、ロータ内から遠心力によつて突出する押圧部材15によつて外枠10の内面に押しつけられるようになつており、
翼板2の下降時に、昇降コード4によつて回転されるドラム5の回転がシヤフト6に伝達され、一方向クラツチ7を介してロータ8が回転され、ロータ8の回転に応じて押圧部材15に押されて摩擦制動子9が外方に突出し外枠10に押しつけられて、ロータの制動作用を生じ、ロータ8の回転が早くなると、これに応じて摩擦制動子9は外枠10の内面に強く押しつけられて、大なる制動力を生じ、ロータ8は実質的に定速で回転するように制動されて、翼板2を定速で降下させる、
ブラインド。」

(イ)甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
a 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ブラインドに関するものである。」

b 「【0005】
【作用】回転ドラム、ストッパ及びチルタは、これらをヘッドボックス内に固定するスぺーサをヘッドボックスの屈曲部にはめ合わせることによって、ブラケットの掛止片に接触しないようにヘッドボックスに固定されている。これにより、ブラケットは、ヘッドボックスの回転ドラム、ストッパ及びチルタが設置されているところにも、これの掛止片を挿入して側縁部を支持することができる。
【0006】
【実施例】図1に本発明を実施したブラインドの全体図を示す。所定間隔で上下方向に複数のスラット10が配列されており、このスラット10列の上端側にヘッドボックス12が配置され、下端側にボトムレール14が配置されている。ヘッドボックス12とボトムレール14との間にはラダーコード16が設けられており、これによって各スラット10が支持されている。昇降コード18は一端がボトムレール14に連結されており、他端がスラット10に設けられている挿通孔30を挿通してヘッドボックス12内に導入されるとともに、これを通ってヘッドボックス12の一端付近から導出され、コード止め20に固定されている。コード止め20には補助コード22の一端も固定されており、これによって昇降コード18及び補助コード22は連結されている。補助コード22の他端はボトムレール14に固定されている。昇降コード18に隣接して回転操作棒24が設けられている。ヘッドボックス12内には、回転ドラム28、ストッパ32及びチルタ34が設けられている。回転ドラム28には、ラダーコード16の一端が巻取り及び巻解き可能に連結されている。ストッパ32には、昇降コード18が挿通しており、昇降コード18の移動可能な状態と移動不可能な状態とを切換え可能である。チルタ34には、回転操作棒24の一端が取り付けられており、回転操作棒24の回転を回転軸41(図2参照)を介して回転ドラム28に伝達し、スラット10の角度を調節可能である。ヘッドボックス12は、屈曲部37を形成して両側縁部36が互いに内向きに曲げられた形状をしており、両側縁部36が、ブラケット40の下端の前後に形成されている外方向に突出する掛止片38に引っ掛けられることにより、ブラケット40に取り付けられる。
【0007】図2にヘッドボックス12に取り付けられた回転ドラム28の状態を示す。回転ドラム28をヘッドボックス12に固定可能なドラム受42は、これの下面をヘッドボックス12の下面に接触させて配置されている。ドラム受42の上端はスぺーサ44に連結されている。スぺーサ44は、これの両側端部がヘッドボックス12の両側壁に沿って上方に延びている。スぺーサ44の上端は、側縁部36よりも上方に位置しており、屈曲部37の内形状に沿った形状に形成されて、屈曲部37にはめ合わされている。スぺーサ44の屈曲部37にはめ合わされている部分は、ブラケット40の掛止片38に接触しない程度の厚みに形成されている。これにより、ブラケット40は、ヘッドボックス12のスぺーサ44が設けられている部分にでも掛止片38を挿入して側縁部36を引っ掛けることが可能である。
【0008】図3にヘッドボックス12に取り付けられたストッパ32の状態を示す。ストッパ32は、ヘッドボックス12の前側の下部に配置されており、ヘッドボックス12の前側壁及び前方の底面に接触している。ストッパ32の後側に位置する側壁32aの上端は、スペーサ46の上下方向所定位置から前方に突出している連結部48に連結されており、移動が拘束されている。スペーサ46は、ヘッドボックス12の後方に配置されており、ヘッドボックス12の後側壁及び後側の底面に接触している。スペーサ46の上端は、側縁部36よりも上方に位置しており、屈曲部37の内形状に沿った形状に形成されて、屈曲部37にはめ合わされている。スペーサ46の屈曲部37内にはめ合わされている部分は、ブラケット40の掛止片38に接触しない程度の厚みに形成されている。これにより、ブラケット40は、ヘッドボックス12のスペーサ46が設けられている部分にでも掛止片38を挿入して側縁部36を引っ掛けることが可能である。」

c「【0010】
【発明の効果】本発明によれば、回転ドラム、ストッパ及びチルタをヘッドボックス内に固定するスぺーサは、ブラケットの掛止片に接触しないように、ヘッドボックスの屈曲部にはめ合わされて固定されている。これにより、ブラケットは、ヘッドボックスの回転ドラム、ストッパ及びチルタが設置されている部分にも、これの掛止片を挿入して側縁部を支持することができる。したがって、窓枠などにあらかじめブラケットを取り付ける際に、スぺーサの位置を考えなくてもよいため、ブラケットの取付け位置が限定されることがなく、施工性が向上する。また、ヘッドボックスの側縁部は互いに内向きに屈曲されているため、外観も良い。」

d 図面
(a) 図2



(b)図3




(ウ)甲第3号証
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、横型ブラインドのスラットを昇降及び角度調節するための操作装置に関するものである。」

b 「【0053】すると、図6に示すように、滑車28とストッパカム30の歯面32aとによる昇降コード10の挟着が解除され、昇降コード10がヘッドボックス1内に引き込まれる。そして、ボトムレール4が下降されることによりスラット3が下降される。
【0054】このとき、滑車28からブレーキ装置42の可動滑車45に向かって移動する昇降コード10の速度が早くなるほど、可動滑車45が固定滑車44に近づく。そして、可動滑車45が固定滑車44に近づくほど、可動滑車45と固定滑車44との間で昇降コード10が鋭角に屈曲されるため、昇降コード10と固定滑車44及び可動滑車45との摩擦が増大して、昇降コード10の移動速度が抑制される。
【0055】従って、ブレーキ装置42により昇降コード10の移動速度が一定値以下に抑制されるため、ボトムレール4の下降速度を一定値以下に抑制することができる。この結果、ボトムレール4の急激な落下が防止されて、スラット下降操作時のボトムレール4と他の物体との衝突による騒音を防止することができる。また、ブレーキ装置42を簡易な構成で実現することができる。
【0056】図7〜図9は、ブレーキ装置の別例を示す。このブレーキ装置は、ヘッドボックス1に固定されたケース47に支軸48が回転可能に支持され、その支軸48の一端は制動輪49の中心部に嵌合されている。
【0057】前記制動輪49は合成樹脂で羽根車状に形成され、各羽根49aの先端部を同方向へ屈曲させた状態でケース47内に収容されている。従って、制動輪49は矢印A方向へ回転するとき、その回転が早くなってもケース47の内周面との摩擦が大きくならず、矢印B方向へ回転しようとするとき、その遠心力により羽根49aとケース47の内周面との摩擦が大きくなる。
【0058】前記支軸の他端には、滑車50が嵌着され、その滑車50に前記昇降コード10が掛装されている。従って、昇降コード10が移動すると、滑車50が回転され、その滑車50が回転されると、制動輪49が回転される。
【0059】そして、ヘッドボックス1から昇降コード10を引き出すとき、制動輪49が矢印A方向へ回転され、ボトムレール4及びスラット3の自重により昇降コード10をヘッドボックス1内へ引き込ませるとき、制動輪49が矢印B方向へ回転されるように設定される。
【0060】このような構成により、スラット3を下降させるとき、昇降コード10の移動速度が早くなると、制動輪49とケース47との摩擦が増大するため、昇降コード10の移動速度を一定値以下に抑制することができる。従って、前記ブレーキ装置42と同様な作用効果を得ることができる。」

c 図面
(a)図7



(b)図9




(エ)甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
a 「【0001】
本発明は、ヘッドボックスに支持された遮蔽材の昇降を行うブラインドの昇降装置に関し、特に、遮蔽材の下降時の衝撃を緩和することができるブラインドの昇降装置に関する。」

b 「【0012】
ヘッドボックス12内には、回転可能に軸支された回転軸30が配設されており、回転軸30に、該回転軸30の回転により前記ラダーコード16の上端がスラット18を傾動させることができるように連結されている。回転軸30の一端は、ヘッドボックス12の一端部に配設されたチルタ32に連結される。ヘッドボックス12の一端部に設けられた開口12aからは、前記チルタ32に連結される中空のチルタ入力軸34が垂下され、さらにチルタ入力軸34にユニバーサルジョイント36を介して中空の回転操作棒38が連結されている。
【0013】
本発明のブラインドの昇降装置は、ヘッドボックス12から垂下する複数の昇降コード14と、ストッパー装置20と、ブレーキ装置22とを備える。各昇降コード14の一端は、ボトムレール19に連結され、他端側は各スラット18の昇降コード挿通孔を挿通して、ヘッドボックス12に導入された後、ヘッドボックス12の長手方向に沿って配されて、前記チルタ32を通り、ヘッドボックス12の開口12aから導出されて、前記中空のチルタ入力軸34、中空の回転操作棒38、及び操作棒38の下方に配設されたグリップ40内をそれぞれ挿通しており、昇降コード14の他端はグリップ40の下方に配設されたつまみ42に連結されている。
【0014】
ストッパー装置20は、ヘッドボックス12内に配設されて、昇降コード14のスラット18の下降に対応する移動を拘束して、スラット18を任意の高さで停止させるためのものである。グリップ40(またはチルタ入力軸34)とストッパー装置20との間は、ストッパー解除コード44によって連結され、ストッパー解除コード44を引っ張ることにより、ストッパー装置20が昇降コード14を解放し、ストッパー解除コード44を解放すると、ストッパー装置20が昇降コード14を拘束する。
【0015】
ブレーキ装置22は、図3及び図4に示したように、昇降コード14を上下で挟みつけて昇降コード14がその外周面に接触する2つの軸50、52と、2つの軸50、52の両側に設けられたブレーキ部54とから構成される。2つの軸50、52は、その表面に好ましくは図示のようなギヤまたは凹凸が形成されているとよく、昇降コード14との間で滑りが発生することなく、昇降コード14の移動が軸50、52の回転に効率良く伝達される程度に、昇降コード14と噛み合うとよい。
【0016】
軸50、52の両側には、一対のブレーキケース56が設けられており、軸50はブレーキケース56に軸支され、軸52は、一方向クラッチ装置を構成する一方向クラッチバネ58(図7参照)を介してブレーキ部54に連結される。この一方向クラッチバネ58は、一端が軸52に固定されており、軸52がスラット18の上昇方向に対応する昇降コード14の移動によって回転したときには、空転するように、また反対に軸52がスラット18の下降方向に対応する昇降コード14の移動によって回転したときには、以下で述べる回転軸62aに締結して、軸52の回転を回転軸62aへと伝達する。
【0017】
ブレーキ部54は、ロータリブレーキである遠心ブレーキで構成され、図5ないし図7に示したように、回転軸62aが設けられた回転板62と、回転板62の両端部に軸着された一対の遠心翼64、64と、遠心翼64、64の外周面に取り付けられた摩擦子66、66と、摩擦子66、66が摺接されるドラム68と、遠心翼64、64を連結するバネ70と、を備える。回転軸62aが回転すると、これに伴って、遠心翼64、64がそれぞれ回転し、遠心翼64、64が広がって摩擦子66、66をドラム68の内面に摺接して、制動力を発生するようになっている。」

c 図面
(a) 図2




(b)図3



(c)図4




イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「昇降コード」、「ブラインドの翼板」及び「ブラインド」は、本件発明1の「引張コード」、「遮蔽材」及び「遮蔽装置」にそれぞれ相当する。
そうすると、甲1発明の「昇降コードを引くことによつてブラインドの翼板を昇降する型式のブラインド」は、本件発明1の「引張コードを引くことにより遮蔽材を昇降可能に構成される遮蔽装置」に相当する。

b 甲1発明は、「翼板定速降下装置」は、「翼板2の下降時に」、その構成要素である「ドラム5」等の働きによって、「翼板2を定速で降下させる」ものであるから、本件発明1の「ダンパ」に相当する。
また、甲1発明の「コ字状の部材」は、本件発明1の「ケース」に相当する。
そうすると、甲1発明の「コ字状の部材」の内側に設けられた「翼板低速降下装置」は、本件発明1の「ケースを有するダンパ」に相当する。

c 甲1発明の「翼板2の下降時」の「昇降コード4」は、本件発明1の「前記遮蔽材の自重下降に伴って従動する前記引張コード」に相当する。
また、甲1発明の「翼板定速降下装置」において、「昇降コード4によつて回転されるドラム5の回転」が「伝達され」て、「ロータ8が回転」し、「ロータ8の回転」に応じて、「摩擦制動子9は外枠10の内面に強く押しつけられて、大なる制動力を生じ、ロータ8は実質的に定速で回転するように制動されて、翼板2を定速で降下させる」ことは、本件発明1の「ダンパ」において、「前記引張コードによって加えられる入力に抵抗を発生させ且つその反作用で前記引張コードに前記抵抗を加える」ことに相当する。

d 甲1発明の「コ字状の部材」は、「ヘツドボツクス1の底板に沿って設けられた平面状の部材」と「ヘツドボツクス1の前記側板に沿って立設された2つの部材」を有することから、「ヘツドボツクス1」の「底板」及び「前記側板」を設置面としていることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「ヘツドボツクス1の底板に沿って設けられた平面状の部材」と「ヘツドボツクス1の前記側板に沿ってに立設された2つの部材」を有する「コ字状の部材」を設けた「ヘツドボツクス1」は、本件発明1の「内部の底面又は側面を設置面として前記ケースが設置されるヘッドボックス」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「引張コードを引くことにより遮蔽材を昇降可能に構成される遮蔽装置であって、
ケースを有するダンパであって、前記遮蔽材の自重下降に伴って従動する前記引張コードによって加えられる入力に抵抗を発生させ且つその反作用で前記引張コードに前記抵抗を加えるダンパと、
内部の底面又は側面を設置面として前記ケースが設置されるヘッドボックスと、
を備えた、
遮蔽装置。」

<相違点1>
本件発明1は、「ヘッドボックスとは別体の当接手段」を備え、「前記当接手段は、前記ケースと当接することで、前記設置面から離れる方向への前記ダンパの変位を阻止するように構成され」ているのに対して、甲1発明は、「コ字状の部材のうちの立設された部材の上方に、ヘッドボックス1の上端に形成された湾曲部が位置」している点。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。
「ヘッドボックスとは別体の当接手段」を備え、「前記当接手段は、前記ケースと当接することで、前記設置面から離れる方向への前記ダンパの変位を阻止するように構成され」ているものは、申立人により提出されたいずれの証拠にも記載されておらず、本件特許出願前において、周知であったと認めることはできない。
よって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2、4、9ないし13について
本件発明2、4、9ないし13は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、2、4、9ないし13は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)新規事項の追加について
申立人は、(1)本件の出願当初明細書等には「ダンパ変位を阻止する」という機能的表現の他に「角度調節軸」「ヘッドボックスに設けられた固定部材」「リブ」等の具体的な態様が記載されているものの、「ヘッドボックスとは別体」という事項は記載されていないから、手続補正(令和2年7月20日付け)により追加された「ヘッドボックスとは別体」は、出願当初明細書等に記載された事項とは異なる概念であり、出願当初明細書等に記載された「角度調節軸」等に限定されない多くの態様を包含するものであって、出願当初明細書等に記載された事項ではない、(2)出願当初明細書には、図9の実施形態における「スナップフィット機構9a,9b」が「ヘッドボックスとは別体」であることは一切記載されていないので、「ヘッドボックスとは別体」とする補正は、本件発明1の第3実施形態である「スナップフィット機構9a,9b」を「ヘッドボックスとは別体」と変更し、出願当初明細書等に記載されていない新たな事項を追加しようとするものである旨主張する。(申立書21頁6〜24行)

しかしながら、本件明細書の段落【0058】には、「角度調節軸7(特許請求の範囲における「当接手段」の一例)」との記載があり、また段落【0126】には、「角度調節軸7以外のシャフトを当接手段として採用してもよい」との記載があることから、本件明細書には、「角度調節軸7」に限定されない様々なものが「ヘッドボックスとは別体の当接手段」として記載されていたということができる。
なお、本件明細書において「スナップフィット9a,9b」が「ヘッドボックスとは別体」の「当接手段」といえないことは上記第4の1で説示したとおりであるが、このことによって、上記手続補正において新規事項を追加したということになるものではない。
よって、「前記ヘッドボックスとは別体の当接手段」は、出願当初明細書等に記載されているといえる。

(3)明確性要件違反、サポート要件違反及び実施可能要件違反について
ア 「ヘッドボックスとは別体」について。
(ア)申立人は、本件発明1の「別体」の意味が、本件明細書には定義されておらず、いずれの態様が「別体」に該当し、また該当しないのかも説明されていないから、本件発明1は、本件特許明細書に記載された発明ではなくサポート要件を満たしていないとともに、本件特許明細書には、本件発明1が、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず実施可能要件に違反しており、また、本件発明2、4、9ないし13も同様である旨主張する。(申立書22頁9〜17行)

しかしながら、「別体」の定義が本件明細書に記載されていなくても、上記第4の1で説示したとおりその意味は明確であるから、本件明細書記載のいずれの態様が「別体」に該当するかは明らかである。また、本件特許明細書には、「ヘッドボックスとは別体」の「当接部材」として「角度調整軸7」等が具体的に記載されているから、サポート要件を満たしているとともに、実施可能要件も満たしていることは明らかである。

(イ)申立人は、本件発明1の「別体」と、本件発明10における「前記当接手段は、前記ヘッドボックスに設けられた固定部材であり」との関係が不明確であり、本件発明1を引用する本件発明10は、いかなる構成を意味しているのか不明確であり、発明の詳細な説明にサポートされておらず、発明の詳細な説明には、当業者が実施し得る程度に明確かつ十分に記載されたものとは認められず、また、本件発明11ないし13も同様である旨主張する。(申立書22頁18行〜23頁3行)

しかしながら、本件発明10は、その記載から、本件発明1の「前記当接手段」が「ヘッドボックスとは別体」であることに加えて、「前記ヘッドボックスに設けられた固定部材」であることが特定されていると理解することができるから、本件発明1の「別体」と、本件発明10における「当該当接手段は、前記ヘッドボックスに設けられた固定部材であり」との関係は明確である。
また、本件明細書の段落【0121】には、「なお、ヘッドボックス固定部材7bは、ストッパ、コードサポート、シャフトサポート、ボックスキャップ、コードゲート等を用いてもよい。」と記載されており、「固定部材」について具体例が挙げられている。よって、本件明細書には、本件発明10における「固定部材」が、具体的に記載されているから、サポート要件を満たしているとともに、実施可能要件も満たしているといえる。

イ 本件発明10について
申立人は、本件発明10は、「当接手段」について「前記設置面から離れる方向の変位及び前記接地面方向の変位を阻止する」と特定しているが、いかなる構成を特定しているか不明確であり、発明の詳細な説明には当該当接手段について説明されておらず、又はいずれの実施態様が本件発明10に相当するのか説明されていないので、発明の詳細な説明によってサポートされておらず、発明の詳細な説明には、当業者が実施し得る程度に明確かつ十分に記載されているとは考えらず、また、本件発明11ないし13も同様である旨主張する。(申立書23頁5〜12行)

しかしながら、本件発明10は、その記載から、当接手段が阻止する内容、すなわちどのような方向の変位を阻止するのかを明らかにしたものと理解することができる。したがって、本件発明10は明確である。
また、本件明細書の段落【0121】には、「別のヘッドボックス固定部材で進行方向および上方向の少なくとも一方に係る移動を阻止してもよい。なお、ヘッドボックス固定部材7bは、ストッパ、コードサポート、シャフトサポート、ボックスキャップ、コードゲート等を用いてもよい。」と記載されており、阻止する方向として、「進行方向」すなわち「接地面方向の変位」と、「上方向」すなわち「接地面から離れる方向の変位」が示されるとともに、変位を阻止する部材が、具体的に記載されている。
よって、本件明細書には、本件発明10における「当接手段」が、具体的に記載されているから、サポート要件を満たしているとともに、実施可能要件も満たしていることは明らかである。

ウ 「遠心ガバナ以外の部分」について
申立人は、本件発明11における「遠心ガバナ以外の部分」は否定的表現である結果、発明特定事項が不明確であり、また、本件発明12及び13も同様である旨主張する。(申立書23頁21〜26行)

しかしながら、請求項11が引用する請求項1には、「ダンパ」が「ケース」を有している点が特定されており、同じく引用する請求項2には、「ケース」の内部に「回転伝達機構」と「遠心ガバナ」とが設けられている点が特定されている。本件発明11は、「前記固定部材は、前記遠心ガバナ以外の部分において前記ダンパと常時当接している」のであるから、「固定部材」が常時当接する箇所として、「ダンパ」の構成要素のうち、「遠心ガバナ」ではないものとしていると理解できる。
なお、本件明細書の段落【0122】には、「抵抗付与部(遠心ダンパ)に係る機構ではない位置・・・であれば、上方移動規制部7bbと制動装置2000とが常に当接するように実施してもよい。」との記載があり、当該記載は、本件発明11についての上記の理解に整合する。
よって、本件発明11の上記記載は明確である。

以上のとおりであるから、申立人のいずれの主張も採用することはできない。

第5 まとめ
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1、2、4、9〜13の特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1、2、4、9〜13の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。




 
異議決定日 2022-02-04 
出願番号 P2016-100039
審決分類 P 1 652・ 121- Y (E06B)
P 1 652・ 537- Y (E06B)
P 1 652・ 536- Y (E06B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 長井 真一
特許庁審判官 西田 秀彦
住田 秀弘
登録日 2020-11-26 
登録番号 6799944
権利者 立川ブラインド工業株式会社
発明の名称 遮蔽装置  
代理人 奥野 彰彦  
代理人 伊藤 寛之  
代理人 SK特許業務法人  
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