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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1382640
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-13 
確定日 2022-03-24 
事件の表示 特願2017−532153「5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の結晶形態、同一物を含む医薬製剤、及びこの形態の製造ための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月23日国際公開、WO2016/096143、平成29年12月21日国内公表、特表2017−537958〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2015年12月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年12月18日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とするもので、令和1年8月23日付けで拒絶理由が通知され、同年11月22日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月26日付けで拒絶査定され、令和2年5月13日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明について
1 本願発明の認定
本願請求項1〜16に係る発明は、令和1年11月22日受付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
d値:13.131;7.987;7.186;6.566;6.512;5.372;3.994;3.662;3.406;3.288;3.283;3.222;3.215;3.127;2.889、及び
2シータ値:6.73;11.07;12.31;13.48;13.59;16.49;22.24;24.29;26.14;27.10;27.14;27.67;27.72;28.52;30.93
のX−線粉末図によって決定された結晶学値によって特徴づけられた結晶形態を有する5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩。」

第3 原査定の理由
原査定の理由は、令和1年8月23日付け拒絶理由通知に記載した理由1によるものであり、概略、この出願の請求項1〜16に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>
引用文献1:特表2013−521239号公報
引用文献2:平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,p.17−23,37−40,45−51,57−65
引用文献3:塩路雄作,固形製剤の製造技術,東京:シーエムシー出版,2003年 1月27日,普及版,pp. 9, 12−13,ISBN 4−88231−783−4
引用文献4:国際公開第2014/005098号
引用文献5:芦澤一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,Pharm Tech Japan,2002年,Vol.18, No.10,p.81−96
引用文献6:薬剤学,2004年,Vol.64, No.1,p.50−52

第4 当審の判断
当審は、原査定の理由のとおり、本願発明は、以下の引用文献1に記載された発明およびこの出願の優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。
理由は以下のとおりである。

引用文献1:特表2013−521239号公報(原査定で引用された引用文献等1)
引用文献2:平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,p.17−23,37−40,45−51,57−65(原査定で引用された引用文献等2)
引用文献3:塩路雄作,固形製剤の製造技術,東京:シーエムシー出版,2003年 1月27日,普及版,pp.9,12−13,ISBN4−88231−783−4(原査定で引用された引用文献等3)
引用文献4:国際公開第2014/005098号(原査定で引用された引用文献等4)
引用文献5:芦澤一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,Pharm.Tech.Japan,2002年,Vol.18,No.10,p.81−96(原査定で引用された引用文献等5)
引用文献6:薬剤学,2004年,Vol.64,No.1,p.50−52(原査定で引用された引用文献等6)
引用文献2〜6は、この出願の優先日当時の技術常識を示すために引用するものである。

1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
原査定の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1には、以下の記載がある。
記載(1a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンアルカリ塩の結晶形IおよびIIであって、X線粉末図:
形態Iに対し、
d値:13.5;6.9;5.2;4.6;3.9;3.5;3.4;3.3;3.1;3.0および/または
2−シータ値:6.5;12.7;16.9;19.3;22.8;25.8;26.6;27.2;28.7;30.3
および
形態IIに対し、
d値:12.9;7.9;7.1;6.5;5.3;4.0;3.7;3.6;3.3;3.2および/または
2−シータ値:6.8;11.2;12.5;13.7;16.7;22.4;24.3;24.9;27.2;27.8
によって求められた結晶学値を特徴とする、結晶形IおよびII。」

記載(1b)
「【0001】
本発明は、有利な性質を有する、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の少なくとも2種の新規の結晶形、それを含有する医薬品調製物、およびそれを製造する方法の提供に関する。
【0002】
本発明は、詳細には、医療目的の免疫賦活性および免疫抑制性を有する、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の2種の新規の結晶形の提供に関する。」

記載(1c)
「【0024】
本発明は、上記の先行技術の背景のもとでなされ、本発明の目的は、したがって、主として免疫抑制、または主として免疫賦活の目的のために特異的に使用することができる、特異的な、独立の免疫学的作用を有する5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の新規の形態を提供することである。特に望ましい特性として、これらの新規の形態は、用量から独立して、主として免疫賦活性、または主として免疫抑制性の作用を有することが意図されている。さらに、提供される形態は、製造され、保存され、および/または個々にまたは組み合わせて適用される薬剤について有利である物理化学的性質を有することである。
【0025】
この目的は、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩(無水物形態IおよびII)の2種の新規の無水物の提供によって達成され、これらは、物理化学的および独立の免疫調節の性質における実験データに基づいて、先行技術、すなわち、特に公知の5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩に対して、驚くほどまた確実に対照をなす。本発明による無水物形態I(→結晶形I)は、免疫調節の、特に主として免疫賦活性の性質を有するが、本発明による新規の無水物形態II(→結晶形II)は、免疫調節の、特に主として免疫抑制性の性質を有する。
【0026】
結晶形IおよびIIは、1つのX線粉末回折図(図2および3)それぞれに表わされた面間隔および2−シータ角の10の固有値それぞれによって規定される。
【0027】
本発明者らは、形態IおよびIIが、安定性、保存性、非吸湿性および溶解性を包含する、医薬品加工および適用にポジティブな物理的性質を有することを見出した。これらは、例えば、水含有率が変化し、したがって例えば、錠剤プレス加工、カプセル化または減菌の間に活性成分の重量変化による製剤問題が生じ得る二水和物と比較して、医薬品製造およびさらなる加工に有利である。本発明による形態および先行技術の間には、例えば、溶解性において、物理的性質の違いがある(表6参照)。」

記載(1d)
「【0051】
有利な物理的性質:
本発明による両形態は、走査電子顕微鏡によって識別することができる。形態IIは、主として層で構成される、数マイクロメートル長さの針状微結晶の八面体構造であるが、形態IのSEMにおいては、粉末状に凝集した、丸い端部を有する、主として形態学的に不均一の微結晶が見られる(図1)。それらの結晶形から、本発明による形態を薬学的に加工するのに有利な性質が結果として生じる。形態Iと比較して、形態IIは、その結晶の粒子形態により、より高い流動性およびそれにより改善された濾過性を有するが、形態Iは、特に錠剤プレス加工に対してそのより大きいかさ密度によって、より適切であり、これは、恐らくその層状の下部構造の結合のために、凝集する傾向によってさらに促進される。
【0052】
両結晶形は、室温(25℃)および40℃で少なくとも2か月の時間安定であり、それぞれ335℃±10℃(形態I)または385℃±10℃(形態II)を超えると崩壊のみが起きるが、米国特許第6,489,326B1号による二水和物においては、吸熱的固体相転移が85℃で既に観察することができる(表5)。米国特許第6,489,326B1号による二水和物の固体相転移は、Linseis L81−077を用いる同時の熱重量分析−示差熱分析によって、Netzsch STA 449C熱天秤を用いる質量分光測定と結合し、MSとFTIRとをヘリウム下で30〜300℃で結合して測定した。形態I〜IIの崩壊温度は、合成空気(4N2:1O2)中、30〜500℃で同じ装置を用いて求めた。データは工場設定のソフトウェアProteusを用いて解析した。
表5:形態I〜IIの崩壊温度、および米国特許第6,489,326B1号による二水和物の固体相転移の測定
【0053】
【表5】


【0054】
熱分析データは、両結晶形が安定性および保存性に関して有利な性質を有するという、本発明者らの仮定を確証する。米国特許第6,489,326B1号の二水和物と比較して、これらの性質は、高エネルギー入力、例えば、減菌または粉砕を含むステップに対して鈍感にすることにより、本発明による結晶形IおよびIIの医薬品加工性をさらに促進する。
【0055】
さらに、両結晶形IおよびIIは、水含有率の変化に関して実質的に安定しているので、その結果、さらなる医薬品加工(例えば、錠剤化、カプセル化など)の間の活性成分の重量変化のための製剤問題が軽減される。
【0056】
さらに、飽和溶液中の結晶形の溶解度が求められた。それによると、形態IIは形態Iより可溶性であり、両形態は、米国特許第6,489,326B1号による二水和物より明らかに可溶性である。注射溶液用のより高く良好な最大溶解度がより小さい注射体積を可能にし、低含水率を有するクリームなどの局所調製物に著しくより良好な加工性を提供するので、新規の結晶形は、先行技術と比較して利点を示す。
表6: 米国特許第6,489,326B1号に従って入手可能な二水和物(米国特許第6,489,326B1号)と比較した室温での水中の形態Iおよび形態IIの溶解度の調査
【0057】
【表6】


【0058】
形態IIの比較的より良好な溶解度はまた、初期溶解速度のデータによって支持される。これらのデータは、形態IおよびIIが記録を始めた5分後に添加され、それぞれ15秒間隔の測定でのインサイチューATR−IR測定で得られる。10mL H2O VE中での0.25gの形態Iまたは形態IIの完全溶解は、それぞれ、25℃で撹拌(500rpm)しながら達成された。水溶液に添加した後の初めの数分内の形態IIの溶解速度は、完全平衡濃度に到達するのが遅い形態Iのそれより大きいことがわかった。形態IおよびIIの異なる溶解度および初期溶解速度(図4)は、それらの異なる表面構造(図1)によって引き起こされ得る。形態Iの形態学的に不均一な丸い微結晶は、その形状によって溶媒に、より大きい接触可能表面を提供する形態IIの八面体結晶より、偏向的に緻密な表面構造を表す。形態IおよびIIの間の初期溶解速度の違いは、形態Iに関してより遅い溶解速度が、活性成分の遅れた放出(遅延製剤)が意図される利点を提供するので、経口製剤の製造にとって特に重要である。可能な限り最速および最高の生体利用率が意図される場合、形態IIに関するより迅速な溶解速度は、経口急性薬剤の製剤に有利である。
【0059】
形態IおよびIIの異なる熱的安定性は、ナトリウム陽イオンおよびルミノラート分子の異なる化学量的な配位によって引き起こされる。形態Iにおいて、1個のナトリウム陽イオンは、合計6ルミノラート分子中の分子間水素結合によって三方柱に配位するが、形態IIにおいては、わずか4ルミノラート分子が分子間水素結合によって四面体に配置されている。それにより、形態IIは、形態Iよりも、熱的に偏向的に良好でより安定な配位を結果として生じる。」

記載(1e)
「【0060】
医療用途:
驚いたことに、本発明者らは、実験的なインビトロおよびインビボ調査において、結晶形IおよびIIの間に顕著に異なる免疫学的作用を見出した。
【0061】
さらに、形態IおよびIIは、先行技術より特異的な方式で、それらの異なる免疫調節作用によって使用することができることが見出された。すなわち、形態IIにはある種のサイトカインに対して免疫調節の、主として抑制性の作用があるが、形態Iは、ある種のサイトカインに対して主として免疫賦活性の作用を示す。したがって、形態IIは、過剰の免疫応答を含む症状の下での治療適用に特に適切であるが、形態Iは、免疫不全の素因を含む徴候の下での治療適用に特に適切である。
【0062】
特に慢性疾患(例えば、多発性硬化症、C型肝炎、慢性腸炎および結腸炎)については、患者の免疫状態が常に変化することがあり、その結果、免疫賦活性から免疫抑制性治療の、もしくは免疫抑制性から免疫賦活性の変化、または両手法を組み合わせたもしくは時間をずらした投与は妥当と思われる。(参照:DMSG 2006: Aktuelle Therapieempfehlungen September 2006)。したがって、以下のリストは単に例示であり得るが、過剰の免疫応答を含む症状に対する疾患の帰属は、形態IIを用いるまたは形態Iおよび形態IIの組み合わせを用いるその治療を排除せず、また、免疫不全の素因を含む症状に対する疾患の帰属は、形態Iを用いるまたは形態Iおよび形態IIの組み合わせを用いるその治療を排除しない。
【0063】
過剰の免疫応答を有する症状は、例えば、移植後の拒絶反応、活動性自己免疫疾患(特に、活動性関節リューマチ、再発性多発性硬化症、ルポイド肝炎、結節性多発性動脈炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、皮膚筋炎、ベーチェット病、ブドウ膜炎、血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、多発性筋炎、乾癬、乾癬関節炎、ベヒテレフ病、発作性夜間血色素尿症、強直性脊椎炎、自己免疫甲状腺炎、など)、再生不良性貧血、天疱瘡、類天疱瘡、外因性ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群およびアトピー性皮膚炎、ならびに、特に好ましくは、例えば、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などのグラム陰性またはグラム陽性病原体との細菌感染によって誘発される敗血性の症状、および他(例えば、免疫学的または化学的)の因子によって誘発される全身性炎症反応症候群(SIRS)である。
【0064】
免疫不全の素因を有する症状は、例えば、頻繁なインフルエンザ、再発性気道感染、導出性尿路の再発性感染、疲労、虚弱、原因不明の放心、健康回復、慢性ウイルス感染(特に、HIV、B型肝炎、C型肝炎、脳炎、帯状疱疹、単純疱疹、内耳の感染、水痘、麻疹、巨細胞腫、エプスタイン−バー)、異なる腫瘍疾患(特に、毛様細胞性白血病、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、カポジ肉腫、皮膚T細胞リンパ腫、鼻咽頭癌、類癌腫、腎細胞癌腫、膀胱癌、基底細胞癌腫、転移性癌腫、および特に好ましくは黒色腫)、敗血性肉芽腫症、好中球減少、性器疣贅、角化症、自己免疫疾患(特に、例えば、増悪間での再発性多発性硬化症などの非活動性段階)、放射能による大腸炎、憩室炎、アレルギー(特に、枯草熱、多型光線疹、湿疹、神経皮膚炎)、腸炎、大腸炎であるが、それだけでなく、特に好ましくは化学療法および放射線療法の前、最中および後に付随する。
【0065】
驚いたことに、本発明者らは、好ましくは無水物の、特に好ましくは形態Iおよび形態IIの多形の、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の特定の結晶形の単純な提供によって、異なる作用を示すことができる。これらの異なる作用は、主として免疫賦活の(形態I)、または主として免疫抑制(形態II)の目的に対して、両形態が免疫系で調節する方式で一般に作用する、特異的な免疫調節薬の適用を可能にする。それにより、本発明者らは、インビトロ、およびインビボで、形態Iに対して驚くべき免疫賦活性の作用を証明することができた。
【0066】
形態IIは、対照的に、活性化マクロファージに対して有利な免疫調節性を有する。本発明者らは、特に、LPS刺激したマクロファージを用いるインビトロ試験に基づいた形態IIの主として免疫抑制性の性質を実証することができた。これによって、IL−6値の明瞭な低下が達成された。マウス(S.ピュオゲネス(pyogenes)を含む敗血症モデル)のインビボ試験によって、形態IIの相当な治療有効性もまた検証することができよう。
【0067】
さらに、本発明者らは、健康なマウスの体重推移および肝酵素値によって、新規の形態IおよびIIが、まったくまたは極く低い毒性しか有していないことを示すことができた。両形態は、排他的に免疫賦活性、または排他的に免疫抑制性であるのではなく、免疫調節の方式で作用する。形態IIだけでなく形態Iも、敗血症モデルにおいてより高い生存率をもたらした。
【0068】
本発明者らは、形態Iおよび形態IIの、組み合わせた、好ましくは時間をずらした適用もまた、成功し得ること、および、特に自己免疫疾患に限るものではないがある種の徴候に、個々の適用より組み合わせた適用が有利であることを仮定する。」

記載(1f)
「【0104】
本発明による結晶性無水物形態IおよびIIの製造
以下において、結晶形IおよびIIの製造は典型として記載される。
【0105】
すべての製造例の合成の開始点は、先行技術から公知のルミノールであり、これは、例えば、以下の反応スキームに従って製造することができる。
【0106】
【化2】

(i) (ii) (iii)
【0107】
ここに、ヒドラジンもしくはその塩の1つ、または他の適切な還元剤、例えば、亜硫酸アンモニウムもしくはトリエチレングリコールによって、アルカリ媒体中で、3−ニトロフタル酸無水物(ii)を経由してルミノールに還元することができる、3−ニトロフタル酸(i)の反応によるルミノール(iii)の合成が示される。ルミノールの適切な製造法は、以下に見出すことができる:Williamson, K.L. In:巨視的規模および微視的規模の有機実験(Macroscale and Microscale Organic Experiments);2nd ed.; D.C. Heath: Lexington, MA, 1994.。ラネーニッケルを使用するルミノールを製造するのに適切な別の方法は、例えば、米国特許第6,489,326B1号に見られる。
【0108】
より具体的な方法で、開始物質のルミノールはまた、以下のように製造することができ、また、指定された当量を使用して任意の量のルミノールを製造することができる。
ルミノール製造例
第1のステップ:3−ニトロフタル酸−3−ニトロフタルヒドラジド
バッチの大きさ:
【0109】
【表14】

【0110】
第1のステップにおいて、3−ニトロフタル酸(200g,0.95mol)およびヒドラジン水和物(51g,1.02mol)を準備し、還流凝縮器(T=110℃)およびリービッヒ冷却器の組み合わせを装備した2L反応フラスコ内で、エチレングリコール(300mL)と混合した。温度を110℃に上げ、水は蒸留によって除去した。反応混合物の加熱は、およそ200℃でエチレングリコールが還流するまで継続した。1時間後、それ以上の水は形成されなかった。その混合物はおよそ100℃に冷却し、水(1200mL)を添加した。やや褐色を帯びた沈殿物が発生した。混合物は、室温(25℃±5℃)に氷水の添加によって冷却し、終夜撹拌した。沈殿物を濾過し、水(3×300mL)で洗浄した。湿った生成物は、恒量が得られるまで、90℃/20±10mbarで回転蒸発装置で乾燥した。
【0111】
この方法の利点は、硫酸ヒドラジンの代わりにヒドラジン水和物を使用することによって、何ら妨害する無機物質が以下のステップで形成されないこと、および、その使用が生成物中に汚染をもたらし得る、より高い沸点を有する他の溶媒によるよりも、およそ196℃の沸点を有するエチレングリコールの使用によって、還流沸騰によるプロセス制御を良好に扱うことができることである。
第2のステップ:3−ニトロフタルヒドラジド−5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオン
バッチの大きさ:
【0112】
【表15】

【0113】
第2のステップにおいて、およそ50〜60℃まで加熱しながら3−ニトロフタルヒドラジド(100g,0.48mol)を3モル濃度の水酸化ナトリウム溶液(1,700mL)に溶解することによって、3−ニトロフタルヒドラジドを5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンに反応させた。この溶液に、亜ジチオン酸ナトリウム(300g,1.73mol)を分割して添加する。その結果として反応混合物の温度は、およそ80℃に上昇する。亜ジチオン酸ナトリウムを全て添加した後、反応混合物を還流するためにおよそ4時間加熱する。酢酸(200mL,1.73mol)を添加し、反応混合物は終夜冷却する。結果として得られた沈殿物は単離し、水(3x170mL)で洗浄する。生成物はおよそ80℃/20±10mbarで回転蒸発装置で乾燥する。
【0114】
無水物形態I
I. 製造例I −結晶形I
本発明の主題は、水酸化ナトリウム溶液中で5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオン(ルミノール)を混合し、発生したルミノールナトリウム塩の溶解度積を低下させこれが沈殿し始めるような低分子液体アルコール、好ましくはエタノールに、この溶液を滴下して添加することによって、無水物形態Iを製造する方法である。アルコールは、好ましくは≧95%、特に好ましくは≧98%の純度を有していなければならない。本発明によれば、発生した沈殿物を50から最高90℃の間の温度で乾燥する。
製造例I− 結晶形I −実施形態I
【0115】
製造例Iの好ましい実施形態において、結晶形Iは、0.8〜1.2モル濃度のルミノール懸濁液500〜750mLを1.0〜1.3モル濃度のソーダ溶液500〜750mLと混合し、混合物を10〜15Lの低分子アルコール、好ましくは、好ましくは≧95%、特に好ましくは≧98%の純度を有するエタノールに、20〜50℃で撹拌しながら滴下して添加し、次いで、懸濁液を10〜40℃で15〜25時間撹拌することによって沈澱させることができる。単離後、次に、発生した沈殿物を、好ましくは風乾する。50℃〜80℃でさらに乾燥した後、沈殿物は、10〜20倍量の低分子アルコール、好ましくは、好ましくは≧95%の、特に好ましくは≧98%の純度を有するエタノールに溶解し、その懸濁液は15〜25時間10〜40℃で撹拌し濾過する。濾過ケーキを風乾し、50℃〜90℃、好ましくは50℃で再乾燥し、粉砕し、≦0.4%、好ましくは≦0.3%、最も好ましくは≦0.2%の結晶化の含水率が達成されるまで乾燥する。
製造例I− 結晶形I − 実施形態II
【0116】
a) 製造例Iの特に好ましい実施形態において、結晶形Iは以下のように製造することができる。
b) 2Lビーカーにルミノール190〜220gを準備し、撹拌しながら1.0〜1.1モル濃度のNaOH溶液1.25Lに少なくとも20℃でそれを溶解する。
c) 再洗浄せずに、磁製漏斗に通して濾紙φ70mm(例えば、Schleicher & Schuell Type 1575)を用いてバッチ溶液を濾過する。
d) 三首底フラスコに12〜14Lのエタノール(好ましくは純度≧98%を有する)を準備する。撹拌しながらバッチ溶液を25℃±10℃で25分±10分以内に滴下して添加する。懸濁液を20℃±10℃で16±5時間撹拌する。
e) 磁製漏斗に通して濾紙を用いて沈殿物を濾過し、低分子アルコール、好ましくは純度≧98%を有するエタノールおよそ400〜500mLを用いて再洗浄する。
f) ガラスボール上で濾過ケーキを細かく分散し、排気フードの下で終夜乾燥する。次いで、50℃〜90℃、好ましくは50℃〜70℃、特に好ましくは50℃で、恒量が得られるまで、乾燥室内で再乾燥する。
g) 沈殿物を粉砕し秤量する。
h) 得られたg)の沈殿物の12〜15倍量(12〜15mL/g)の低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、好ましくは、純度≧98%を有する)を4Lの三首底フラスコに準備する。撹拌しながら沈殿物をそこで懸濁する。20℃±10℃で16時間±5時間懸濁液を撹拌する。磁製漏斗に通して濾紙を用いて懸濁液を濾過し、低分子アルコールおよそ500mLで再洗浄する。
i) ガラスボール上で濾過ケーキを細かく分散し、排気フードの下で終夜乾燥する。次いで、50℃〜70℃、好ましくは50℃で、2〜6時間、恒量が得られるまで、乾燥室内で再乾燥する。乳鉢を使用して物質を粉砕し、秤量する。結晶化の含水率は、例えば、カールフィッシャー滴定法に従って測定して、≦0.4%でなければならない。結晶化の含水率が>0.4%の場合、ステップh)〜i)を繰り返す。
j) 物質を秤量し、収率を求める。
【0117】
製造例I− 結晶形I − 実施形態III
最も好ましい実施形態において、結晶形Iは以下のように製造することができる。
【0118】
a) 2Lビーカーにルミノール200gを準備し、撹拌しながら1モル濃度のNaOH溶液1.25Lに30℃±10℃で溶解する。
b) 再洗浄せずに、磁製漏斗に通して濾紙φ70mm(例えば、Schleicher & Schuell Type 1575)を用いてバッチ溶液を濾過する。
c) 20Lの三首底フラスコに12.5Lのエタノール(好ましくは純度≧99%を有する)を準備する。撹拌しながらバッチ溶液を25℃±5℃で30分±5分以内に滴下して添加する。懸濁液を25℃±5℃で20時間±1時間撹拌する。
d) 磁製漏斗に通して濾紙φ185mm(例えば、Schleicher & Schuell Type 1575)を用いて懸濁液を濾過し、エタノール(好ましくは純度≧99%を有する)およそ500mLを用いて再洗浄する。ガラスボール上で濾過ケーキを細かく分散し、排気フードの下でそれを終夜乾燥する。次いで、50℃〜70℃、好ましくは50℃で、恒量が得られるまで、乾燥室内で乾燥する。
e) 沈殿物を粉砕し、秤量する。
f) 得られた沈殿物の12倍量(12mL/g)のエタノール(好ましくは、純度≧99%を有する)を三首底フラスコに準備する。撹拌しながら物質をそこで懸濁する。25℃±5℃で20時間±1時間懸濁液を撹拌する。磁製漏斗に通して濾紙φ185mm(例えば、Schleicher & Schuell Type 1575)を用いて懸濁液を濾過し、エタノール(純度≧95%、好ましくは、≧98%を有する)およそ500mLで再洗浄する。ガラスボール上で濾過ケーキを細かく分散し、排気フードの下でそれを乾燥する。次いで、50℃〜70℃、好ましくは50℃で、恒量が得られるまで、乾燥室内で乾燥する。乳鉢を使用して生成物を粉砕し、秤量する。
g) 結晶化の含水率は、例えば、カールフィッシャー滴定法によって測定して、≦0.4%でなければならない。結晶化の含水率が>0.4%の場合、ステップf)〜g)を繰り返す。
h) 物質を秤量し、収率を求める。
【0119】
製造例II −結晶形I 水性条件下において、ルミノールから出発して、結晶形Iは、水酸化ナトリウム溶液を調製しそれにルミノールが添加することによって製造することができる。ルミノールは撹拌により溶解する。次いで、エタノールを10〜40分以内に添加し、ルミノールは塩として沈殿する。数時間の添加および撹拌が完了した後、懸濁液を濾過し、濾過ケーキは洗浄し乾燥する。
【0120】
製造例II− 形態I − 実施形態II
好ましい実施形態において、結晶形Iは以下の当量の反応体を使用して製造する。4〜7vol/mの水に1.0〜1.4当量の水酸化ナトリウムの溶液を調製し、これに1当量のルミノールを添加する。完全溶解が達成されるまで、反応混合物を撹拌する。次いで、エタノール(50〜70vol/m)を室温(25℃±5℃)でおよそ10〜40分以内に滴下して添加する。ルミノールナトリウム塩は沈降物として沈殿する。
【0121】
添加が完了した後、反応混合物は、室温(25℃±5℃)で数時間再度撹拌し、懸濁液を濾過する。濾過ケーキをエタノール(およそ10〜15vol/m)で洗浄し、場合によって、真空乾燥室内でまたは回転蒸発装置で乾燥する。
【0122】
製造例II− 形態I − 実施形態III
特に好ましい実施形態において、結晶形Iは以下の当量の反応体を使用して製造する。
【0123】
【表16】

【0124】
水(6vol/m)中に1.0〜1.4当量の水酸化ナトリウム、好ましくは、1.2当量(22g,0.55mol)の水酸化ナトリウムの溶液を製造する(10Lの反応器)。
【0125】
1当量のルミノールを水酸化ナトリウム溶液に添加する。完全溶解が達成されるまで、反応混合物を撹拌する。褐色の透明溶液が結果として生じる。
【0126】
次いで、エタノール(60vol/m)を室温(25℃±5℃)でおよそ20分以内に滴下して添加する。ルミノールナトリウム塩は沈降物として沈殿する。
【0127】
添加が完了した後、反応混合物は、室温(25℃±5℃)で最大20時間、好ましくは2〜8時間、特に好ましくは、8時間再撹拌し、懸濁液を濾過する。濾過ケーキをエタノール(およそ13vol/m)で洗浄し、場合によって、真空乾燥室内で、50〜90℃/1〜3mbarで、好ましくは50〜70℃、特に好ましくは50℃、または回転蒸発装置で20±10mbarおよび50℃〜90℃で、好ましくは50°〜70℃、特に好ましくは50℃で乾燥する。
製造例III− 形態I − 拡張可能なバッチの大きさ。
【0128】
本発明者らは、見出したこれらの当量関係が、ルミノールの任意のバッチの大きさに適切であり、再現可能な方式で所望の形態Iの製造を可能にすることを見出した。
無水物形態II:
結晶形IIの製造例I
【0129】
本発明者らは、結晶形IIを製造する方法を見出した。すなわち、水性条件下で、ルミノールを水酸化ナトリウム溶液と混合し、2−プロパノールの添加によって、ルミノールナトリウム塩の溶解度積が減少し、その結果、沈殿し始める。沈澱したルミノールナトリウム塩は、2−プロパノールで洗浄し、恒量が得られるまで乾燥する。
製造例I− 結晶形II − 実施形態II
【0130】
好ましい実施形態において、結晶形IIは以下の当量の反応体を使用して製造する。水(6〜7.5vol/m)中に1.0〜2.0当量の水酸化ナトリウム、好ましくは、1.1〜1.4当量の水酸化ナトリウム、特に好ましくは、1.2当量の水酸化ナトリウムの溶液を製造し、これに0.5〜1当量のルミノールを添加する。完全溶解が達成されるまで、反応混合物を撹拌する。次いで、2−プロパノール(60〜120vol/m)を室温(25℃±5℃)でおよそ10〜40分以内に滴下して添加する。ルミノールナトリウム塩は沈降物として沈殿する。添加が完了した後、反応混合物は、室温(25℃±5℃)で撹拌する。生成物を濾過し、低分子アルコール、好ましくは2−プロパノール(およそ13〜16vol/m)で洗浄し、場合によって、85℃〜120℃/1〜3mbar、好ましくは90℃/1〜3mbarで真空乾燥室内で、または85℃〜120℃/20±10mbarで回転蒸発装置で乾燥する。
製造例I− 結晶形II − 実施形態III
【0131】
特に好ましい実施形態において、結晶形IIを製造するための当量およびバッチの大きさが提示され、これは、ルミノールの任意のバッチの大きさに当てはまり、10gのルミノールのバッチの大きさに対して典型的には下記に示される。
表15
【0132】
【表17】

【0133】
1.2当量の水酸化ナトリウムおよび1当量のルミノールを水(6vol/m)に溶解する。透明な溶液が形成される。この溶液はより黒っぽくなるので、直ちに処理しなければならない。次いで、2−プロパノール(60vol/m)を室温(25℃±5℃)でおよそ20分以内に添加すると、ルミノールナトリウム塩の沈降物が形成される。懸濁液は、室温で1〜5時間、好ましくは2時間、特に好ましくは3時間撹拌する。生成物は濾過し、2−プロパノール(およそ15vol/m)で洗浄し、場合によって、真空乾燥室内で85℃〜120℃/1〜3mbar、好ましくは90℃/1〜3mbarで、または回転蒸発装置で85℃〜120℃/20±10mbar、好ましくは90℃/20±10mbarで、恒量が得られるまで乾燥する。
【0134】
結晶形IIの製造例I − 実施形態IV
本発明者らは、少なくとも300g、好ましくは400g、特に好ましくは≧500gのルミノールのバッチの大きさに適切である方法、および、785gのバッチの大きさに関して典型的に記載される方法をさらに示す。
表16
【0135】
【表18】

【0136】
水4,700mL中の水酸化ナトリウム212g(5.32mol,1.2eq.)の溶液を製造する(80L反応器)。ルミノール(785g,4.43mol)を水酸化ナトリウム溶液に添加し、その溶解が達成されるまで撹拌する。透明な褐色溶液が結果として生じ、これに20〜30分、好ましくは30分の時間にわたって2−プロパノール(60vol/m)を添加する。ルミノールナトリウム塩は沈降物として沈殿する。添加が完了した後、混合物は、室温(25℃±5℃)で少なくとも10時間、好ましくは12時間、再撹拌する。混合物は濾過し、2−プロパノール(13vol/m)で洗浄し、場合によって、真空乾燥室内で85℃〜120℃/1〜3mbar、好ましくは90℃/1〜3mbarで、または回転蒸発装置で85℃〜120℃/20±10mbar、好ましくは90℃/20±10mbarで、恒量が得られるまで乾燥する。
【0137】
製造例I− 結晶形II − 拡張可能なバッチの大きさ
本発明者らは、見出したこれらの当量関係が、ルミノールの任意のバッチの大きさに適切であり、再現可能な方式で所望の形態IIの製造を可能にすることを見出した。より多量および高容量のルミノール(≧500g)を使用する場合、撹拌時間は、可能な限り高収率の最終生成物を得るために対応する長さが選択されるように注意を払うべきである。
【0138】
結晶形IIの製造例II(再結晶化)
本発明者らは、結晶形IIを、以下の当量を使用して、結晶形Iの再結晶化によって製造することができることを見出した。70〜90%、好ましくは80〜90%、特に、好ましくは、90%の純度を有する2−プロパノール(10vol/m)を、1当量の形態Iの溶液に添加し、室温(25℃±5℃)で少なくとも10〜14時間、好ましくは10〜12時間撹拌する。混合物を濾過し、濾過ケーキを2−プロパノール(およそ20vol/m)で洗浄し、場合によって、真空乾燥室内で85℃〜120℃/1〜3mbar、好ましくは90℃/1〜3mbarで、または回転蒸発装置で85℃〜120℃/20±10mbarで、恒量が得られるまで乾燥する。
【0139】
結晶形IIの製造例II− 形態Iの再結晶化 − 拡張可能なバッチの大きさ
本発明者らによって見出された再結晶化法は、任意のバッチの大きさに対して以下の当量を用いて使用することができ、1gの形態Iのバッチの大きさに対して典型的に記載される。
表17
【0140】
【表19】

【0141】
結晶形I(1g)を水性2−プロパノール(10〜20%の水)に懸濁し、室温(25℃±5℃)で少なくとも10時間、好ましくは10〜14時間、特に好ましくは10〜12時間撹拌する。残存する溶媒を濾過した後、濾過ケーキを2−プロパノール(2x10mL)で洗浄し、恒量が達成されるまで、回転蒸発装置で90℃/20mbarで乾燥する。」

(2)引用文献2
原査定の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2には、以下の記載がある。
記載(2a)
「医薬品結晶化法
4.1はじめに
医薬品の大半は化学合成あるいは天然物由来の有機化合物であり,それらは製造の最終工程で晶析により結晶性粉末として調製されることが多い.
結晶は晶析条件に依存してさまざまな構造,形状,大きさ,凝集状態などを示すが,それら固体物性あるいは粉体物性は,医薬品の生物学的有効性,安定性,製剤化などに重要な影響を与える.たとえば,結晶構造の異なる多形や晶癖の異なる結晶の溶解速度は一般的に異なるため,医薬品の生物学的有効性に相違が生じる.こうした相違は,散剤,錠剤,顆粒剤,カプセル剤などといった固体状態の医薬品を経口投与する場合においてとくに顕著に表れる.医薬品の作用部位への到達濃度を決定する要因の一つに投与部位からの吸収の効果があり,経口投与される医薬品では製剤から放出される主薬の溶解性が消化管での吸収に大きく影響するからである.
結晶多形の密度や融点,格子エネルギーなどは異なり,結果として熱や湿度,光といったストレスに対する結晶の物理的あるいは化学的な安定性に相違が生じる.このような理由から保存条件によっては準安定形から安定形への結晶転移が生じ,医薬品の生物学的有効性が変わることもあり得る.したがって,安定性の観点からは,一般に常温で安定な結晶形が選択されることが多い.しかし,一方で準安定形の溶解性が安定形と比較して有意に優れる場合があることから,あえて準安定形を開発の基本形として選択し,生物学的有効性に優れた製剤を設計することもある.
結晶中に溶媒が取り込まれた溶媒和物の結晶は,厳密な意味での結晶多形と区別するため疑似結晶多形と称される.・・・溶媒和物の中でも水和物はとくに重要である.・・・
医薬品は人体に直接作用するものである.疾病の治療や予防に有効であることはもとより,期待通りの薬効が発揮されるように一定の品質をもち,安全性が確保されることが強く要求されている.したがって,ICH(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use:日米EU医薬品規制調和国際会議)のガイドラインなどで結晶多形・溶媒和物の取り扱いに関するディシジョンツリーが提示されている.
医薬品の結晶化は通常、溶液の冷却,溶媒の蒸散,低溶解性の溶媒の添加,塩の形成などの方法と,種結晶をかくはん下添加する方法などをさまざまに組み合わせることによって達成される.これらの結晶化条件にかかわる溶媒の特性,過飽和度,温度などのさまざまな因子が,結晶の特性を決定する.したがって,晶析条件と析出する結晶のさまざまな特性の相関を明確にし1,2),医薬品の品質を保証することが重要である3).本章では,そのような医薬品の品質設計の観点から結晶化を概説する.」(57頁1行〜58頁末行)

記載(2b)
「4.2 結晶多形(polymorph)
4.2.1 結晶多形の検索
複数の結晶相が存在する結晶多形は,医薬品においてもしばしば認められる現象である.しかし,結晶構造と晶析条件との相関はいまだ解明されておらず,結晶多形の有無は試行錯誤を繰り返しつつ求めざるを得ないのが現状である.したがって,偶然に見いだされる場合も少なくないが,結晶多形の検索に重要な影響を与えると思われる各因子を適宜組み合わせ,比較的簡便な方法で検索しているいくつかの報告もある4,5).
表4.1はその例の一つで,抗高血圧剤あるいは利尿剤として広く用いられているFurosemide(フロセミド)・・・での析出条件と,各結晶形の析出挙動をまとめたものである4).医薬品における結晶多形の制御は溶媒の選択によってなされることが多いが,ここでも水を含めて18種類の溶媒が検討に用いられた.これら溶媒に対して,さまざまな冷却法や溶媒の蒸発法を組み合わせること


により温度や過飽和度の異なる条件を発生させた.・・・」(59頁1行〜60頁下から8行)

(3)引用文献3
原査定の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献3には、以下の記載がある。
記載(3a)
「1.2.4 結晶多形
薬物には,2つ以上の結晶形を有するものが多く,無晶形をも含めて結晶形が異なると,溶解速度,融点,密度,硬さ,結晶形状,光学的および電気的性質,蒸気圧,安定性などの物性が異なってくることが知られている。結晶多形に関しては,幾多の文献に報告されており,とくに溶解速度が異なることによるバイオアベイラビリティに差のある例として,クロラムフェニコールパルミテートが有名である2)。
薬物に結晶多形が存在するかどうかを検知することは,Preformulation のこの段階における重要な課題である。存在の有無を検出するための簡便な方法のいくつかを以下に紹介する。」(12頁18〜25行)

記載(3b)
「(1)溶融法
少量の薬物をスライドグラス上で完全に溶融し,自然冷却中に結晶転移が起これば,少なくとも2つ以上の結晶形が存在する可能性がある。ホットステージで検体を加熱し,加熱中に固体から固体への転移が起こるかどうかを観察する(ホットステージ法)。」(12頁26行〜13頁1行)

記載(3c)
「(2)昇華法
少量の薬物を昇華させ,ついで昇華物のもとの検体と,いずれか一方の飽和溶液1滴中で混和することにより,転移を起こさせる。もとの薬物結晶形と昇華物結晶形とが多形である場合には,より安定な方がより溶解しにくく,より溶解しやすい安定性の悪い結晶形を犠牲にして成長する。このプロセスは,安定性の比較的悪い結晶形が,完全に安定な結晶形に転移し終るまで継続する。多形が無い場合には,片方は溶解するが,もう一方は成長しない。両者が同じ結晶形なら何も起こらない。
結晶多形が存在することがわかれば,異なった多形結晶を同定し,分離するための方法が必要になってくる。以下にいくつかの方法をあげたが,単独で用いるよりも,2つ以上の方法を併用することがすすめられる。
○1 顕微鏡法(ホットステージ法を含む)
○2 赤外吸収スペクトル
○3 粉末X線回折
○4 熱分析(差動走査熱量計による)
○5 体積膨張測定(Dilatometry)
方法の詳細はしかるべき成書にゆずって,ここには割愛することとする。」(13頁2〜17行)
(審決注:記載(3c)において、「○1」、…、「○5」は原文では「○」の中に「1」、…、「5」であるが、上記のように表記する。)

(4)引用文献4
原査定の理由に引用された本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった情報である引用文献4には、以下の記載がある(訳文で示す。)。
記載(4a)
「[0093]
現在医薬開発中の、合成および半合成起源の分子の大多数が、高分子量と有意な立体配座可動性を有する。そのような分子は、複数の多形体と多数の溶媒和物を持つかもしれない。結晶多形は、薬物(医薬品有効成分、API)と固形製剤の両方の特性のいくつかに直接的な影響を持つ。例えば、結晶多形は、融点、固有密度、硬度、吸湿性等のAPIの物理化学的特性;かさ密度、流動性、凝集性等の粉末特性に影響を与える可能性があり、また、例えばフーリエ変換赤外(FTIR)分光法を使用してまたは核磁気共鳴(NMR)分光法によって測定される粉末X線回析(PXRD)バターン及び/又は分光パターン等の分析特性、および、示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)を使用して測定されるような熱挙動、並びに動的水蒸気吸着(DVS)法を使用して測定されるような水分吸着/脱着特性の点でも異なるかもしれない。重要なことに、結晶多形は、様々な溶媒(体液を含む)における平衡溶解度および溶解速度に影響を与え、それゆえ同じ薬物分子に対し、様々な薬物動態プロファイルおよび治療濃度をもたらすかもしれない。不安定なまたは準安定性の多形体は、保管あるいは処理の間に、熱力学的により安定な多形体に変換するかもしれない。また、同じ薬物分子の多形体は、処理後および保管の際に異なる化学的不純物と分解生成物を示すかもしれない。このように、異なる多形体は、製剤にとって有利な特性と不利な特性を持ちうる。MDT−637の新規な多形体の構造、性質および調製方法が本発明の主題である。」

(5)引用文献5
原査定の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献5には、以下の記載がある。
記載(5a)
「医薬品開発を迅速かつ効率的に進めるためには,開発する原薬の基本形となる塩形の選定と共に多形選定が重要な鍵を握っている。」(81頁左欄2〜4行)

記載(5b)
「2.結晶化条件
医薬品原薬の多くは,合成工程の精製などの最終工程において結晶状態として製造されることが多い。このことは,結晶は原子,分子が立体的に規則正しく配列するために,一定品質の原薬を安定的に製造することが可能であるとの考えに基づいていると思われる。また,液体に較べ,化学的な安定性に優れ,計量や製剤加工などの取り扱いにおいても,はるかに利便性が高いと考えられる理由かもしれない。このように溶液に較べ,品質的には均質な原薬結晶ではあるが,固体の存在形態を制御し,恒常的に安定製造するためには,結晶化条件についての最適化が必要とされる。結晶は,溶液からの晶析による結晶化によって調製されることが多く,晶析条件に応じて,さまざまな結晶形,形状,大きさ,凝集塊の生成などの現象が観測されることも多い。
晶析操作で,結晶多形を制御する際に基本となるのは,各結晶の結晶化に使用する溶媒に対する溶解度の情報である。一般に医薬品の場合には,図2に示したような温度による溶解度差を利用した冷却晶析が多く,温度−溶解度曲線を作成することが基本となる。」(82頁右欄7〜末行)

記載(5c)
「(1)結晶化に使用する溶媒
原薬製造の結晶化に使用する溶媒は先に述べたように,理想的にはICHの『医薬品の残留溶媒ガイドライン』に記載されている安全性の高いクラス3の溶媒を使用することを推奨している。ICHのガイドラインに区分けされている溶媒,クラス3,クラス2,クラス1,およびその他の溶媒について表2〜5に示した。・・・

」(83頁右欄下から5行〜84頁左欄2行及び表2)

記載(5d)
「(2)溶液の状態と晶析操作線図
結晶化の基本的な原理は,先の図2に示したように温度による溶解度差を利用することである。また,結晶化過程については2段階に分けられ,第1段階は核生成過程であり,溶質分子が集合体を形成する。第2段階は核からの結晶成長であり,溶質分子は次々と規則的に分子が積層し,溶液との平衡状態になり結晶成長が完了する」(85頁左欄下から7行〜末行)

記載(5e)
「(3)結晶化の方法について
晶析操作線図で示したように,溶液から薬物を結晶化するには飽和溶液を調製し,ゆっくりと過飽和状態に変化することによって所望する結晶を得ることができる。多くの場合,静置により過飽和溶液は比較的大きな結晶を得ることができる。また,工業晶析では,撹拌したり振動したりすることにより,多数の微結晶が析出するが,種結晶の添加による結晶製造の制御も行われている。結晶化は過飽和溶液からの晶析が基本原理であるが,結晶化の方法は,所望する結晶の用途と目的により多くの試みが行われる。例えば,所望するのが結晶構造解析用の単結晶であれば,静置によって均質で比較的大きな結晶が得られるような方法を選択するが,工業晶析が目的であれば粒度が制御され,一定品質の多結晶体が高収率で得られることを目標とする。晶析は過飽和域で行われるために,溶液を過飽和状態にしなければならない。溶液を過飽和状態にするための方法として次の5つをあげたい。それぞれに特徴があるので,目的に適した方法を選定することが必要である。
〔1〕(本審決注:原文は丸数字であるが亀甲括弧内の数字で示す。以下、引用文献の記載における丸数字は全て同様に表記する。)温度変化を制御する結晶化法
・・・
〔2〕溶媒蒸発による結晶化法
・・・
〔3〕蒸気拡散による結晶化法
・・・
〔4〕反応晶析法
・・・
〔5〕加圧による圧力晶析法」(86頁左欄下から4行〜87頁左欄9行)

記載(5f)
「6.開発候補化合物の物性評価
開発候補化合物を決める前の段階で,周辺化合物の物性評価も考慮し,化合物の物性評価を行いながら塩・結晶形についての評価を行う必要がある。
とりわけ,固体の経口投与製剤の場合では,探索の最終段階における開発候補化合物の選定において,塩・結晶形と物性評価が必要と考えられる。物性評価項目としては,橋田らの報告にあるように,化学的安定性,経口吸収性,物理的安定性(結晶化度,水和度)などの評価が優先して行われるべきと考えられる。そして,開発候補化合物の物性の評価項目としては下記の内容があげられる。
〔1〕結晶性の評価
結晶は,化学的な安定性,溶解性,経口吸収性,物理的な安定性(結晶化度,水和度)ならびに原薬・製剤の製造に対して影響を与える重要な基礎物性である。このために,X線回折,熱分析,赤外線吸収スペクトル,自動水分吸着脱着測定などの評価方法を必要に合わせて適宜用いることになる。このことで結晶多形,結晶化度,結晶形間の相転移を評価するとともに,種々の溶媒を用いて,塩形・結晶形の探索を行って開発候補化合物としての適格性を予測しておく。
〔2〕化学的な安定性の評価
医薬品の安定性は品質を保証する上で重要な物性の1つである。結晶性の評価とともに,固体状態において,熱,湿度,光に対する安定性を評価する。具体的には,通常行われている安定性試験の条件より過酷な試験条件で短期間に,開発候補化合物としての適格性を予測しておくことが重要である。
また,水溶液あるいは各種溶媒,pHを変えた溶液中にて化学的な安定性を評価することで,化合物の基本的な性質を把握し,開発候補化合物としての適格性を予測しておく。
〔3〕溶解性の評価
薬物の溶解性は,経口吸収性,薬効にまで影響を及ぼす重要な物性である。結晶性や化学的安定性の結果も考慮しつつ,消化管吸収も考慮に入れた溶解性評価が重要である。結晶性の評価結果と合わせて考慮することにより,真の溶解性に近い値を予想することによって,開発候補化合物としての適格性を予測しておく。また,溶解性評価は,吸収を考慮して,日局のJP1液,JP2液などの標準的な水溶液や薬物の特性を考慮した種々の緩衝溶液が使用できるものと思われる。さらにこの段階では,原薬量が十分に確保できないことが予想されるため,少量で評価することを工夫することも必要と思われる。
〔4〕物理的な安定性
原薬結晶の物理的安定性,すなわち,結晶化度ならびに水和度は,結晶性の評価とともに重要性は高い。水和物の水和数などの水和度は,水の吸着や再結晶工程において,水分子が結晶構造へ取り込まれる過程でその数が変化する場合が多々ある。種々の溶媒を用いた,塩形・結晶形の探索の中で,結晶形間の相転移を評価するとともに,加温や粉砕によって生じる非晶質化のようなメカノケミカルな安定性を把握することも含めて,開発候補化合物としての適格性を予測しておくことが重要である。
〔5〕吸湿性の評価
吸湿性は製造工程,包装,貯法,化学的ならびに物理的な安定性に影響する重要な基礎物性である。・・・
〔6〕製剤添加剤との適合性評価
・・・
〔7〕塩形を考慮した評価」(94頁左欄1行〜同頁右欄下から7行)

(6)引用文献6
原査定の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献6には、以下の記載がある。
記載(6a)
「したがって,一般的な結晶多形においては,安定系の結晶のほうが分子同士がより強く結合しており,溶解時により多くの溶解熱が発生することになります.現実には,安定形結晶のほうが準安定形よりも溶解度が低い場合が多いですが,これは,前述の溶解度の式から明らかなように,安定形のΔHが準安定形に比べて大きいことを表しています.言い換えれば,よりばらばらに近い状態(準安定形)のほうが完全にばらばらの溶液状態に近いわけですから,溶け易いということになります.」(52頁左欄3〜13行)

2 引用文献に記載された発明
引用文献1には、
「5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンアルカリ塩の結晶形IおよびIIであって、X線粉末図:
形態Iに対し、
d値:13.5;6.9;5.2;4.6;3.9;3.5;3.4;3.3;3.1;3.0および/または
2−シータ値:6.5;12.7;16.9;19.3;22.8;25.8;26.6;27.2;28.7;30.3
および
形態IIに対し、
d値:12.9;7.9;7.1;6.5;5.3;4.0;3.7;3.6;3.3;3.2および/または
2−シータ値:6.8;11.2;12.5;13.7;16.7;22.4;24.3;24.9;27.2;27.8
によって求められた結晶学値を特徴とする、結晶形IおよびII。」が記載されるとともに(記載(1a))、
5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンアルカリ塩の具体例として5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩が記載されている(記載(1b)、記載(1c))。
したがって、引用文献1には、
「5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の結晶形IおよびIIであって、X線粉末図:
形態Iに対し、
d値:13.5;6.9;5.2;4.6;3.9;3.5;3.4;3.3;3.1;3.0および/または
2−シータ値:6.5;12.7;16.9;19.3;22.8;25.8;26.6;27.2;28.7;30.3
および
形態IIに対し、
d値:12.9;7.9;7.1;6.5;5.3;4.0;3.7;3.6;3.3;3.2および/または
2−シータ値:6.8;11.2;12.5;13.7;16.7;22.4;24.3;24.9;27.2;27.8
によって求められた結晶学値を特徴とする、結晶形IおよびII。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、両発明の化合物名はいずれも「5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩」であり、また、引用発明の「5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の結晶形」は本願発明の「結晶形態を有する5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩」と同じ意味であると認められるから、両発明は次の一致点及び相違点を有する。

一致点:
「結晶形態を有する5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩」である点。

相違点:
本願発明は
「d値:13.131;7.987;7.186;6.566;6.512;5.372;3.994;3.662;3.406;3.288;3.283;3.222;3.215;3.127;2.889、及び
2シータ値:6.73;11.07;12.31;13.48;13.59;16.49;22.24;24.29;26.14;27.10;27.14;27.67;27.72;28.52;30.93
のX−線粉末図によって決定された結晶学値」によって特徴づけられたもの(以下、「形態III」という。)であるのに対し、
引用発明は
「X線粉末図:
形態Iに対し、
d値:13.5;6.9;5.2;4.6;3.9;3.5;3.4;3.3;3.1;3.0および/または
2−シータ値:6.5;12.7;16.9;19.3;22.8;25.8;26.6;27.2;28.7;30.3
および
形態IIに対し、
d値:12.9;7.9;7.1;6.5;5.3;4.0;3.7;3.6;3.3;3.2および/または
2−シータ値:6.8;11.2;12.5;13.7;16.7;22.4;24.3;24.9;27.2;27.8
によって求められた結晶学値」を特徴とするもの(以下、「形態Iおよび形態II」という。)である点。

(2)相違点についての検討
ア 結晶多形を得ることの動機付けについて
(ア)本出願の優先日当時、一般に、医薬化合物については、安定性、純度、扱いやすさ等の観点において結晶多形により異なることから、その化合物を結晶化して結晶多形とすることについては強い動機付けがあり、医薬化合物の結晶化条件を検討し、結晶多形を調べることは、当業者がごく普通に行うことであるものと認められる。
文献をいくつか示すと、教科書や総説のようなものには、例えば、引用文献2〜3、5〜6があり、また、特許文献では、例えば、引用文献4があり、実際に、化合物の結晶多形の違いによって、物理的・化学的な物性に差異が生じること、および、結晶化の条件により得られる結晶が異なることがあることがよく知られていた(上記記載(2a)〜(2b)、記載(3a)〜(3c)、記載(4a)、記載(5a)〜(5f))。

(イ)引用文献1には、引用発明の化合物5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の結晶の形態Iおよび形態IIが、免疫賦活性または免疫抑制性を有する治療適用に適切な化合物、すなわち医薬化合物の結晶形態であることが記載され(記載(1b)、記載(1e))、形態IおよびIIが、安定性、保存性、非吸湿性および溶解性を包含する、医薬品加工および適用にポジティブな物理的性質を有することが記載されている(記載(1c))。

(ウ)したがって、引用発明の化合物5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩について、結晶化の条件を検討して結晶多形を調査し、得られた結晶について分析することには、十分な動機付けを認めることができる。

イ 化合物5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の結晶の製造および分析について
(ア)結晶を得るために、溶液から結晶化する方法は、化学物質の製造全般に広く用いられているものである。結晶化の操作としては、1)温度による溶解度の相違を利用して高温の飽和溶液を冷却する冷却法、2)溶媒を蒸発して濃縮する濃縮法、が代表的であり、それらを組み合わせることも広く行われている(記載(2a)〜(2b)、記載(5b)〜(5e))。
また、医薬化合物の結晶化に用いる溶媒については、安全性の高い溶媒としてジメチルスルホキシドはよく知られたものである(記載(5c))。
ここで、本願発明の結晶を得るための方法について検討するに、この出願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願明細書等」という。)には、化合物5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の形態IIIの結晶の製造方法として、段落0084〜段落0112に例示的な記載がされている。
この製造方法は、化合物5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の形態Iおよび形態IIの結晶の製造方法として記載(1f)に記載された方法に替えて、上記の1)温度による溶解度の相違を利用して高温の飽和溶液を冷却する冷却法、及び、2)溶媒を蒸発して濃縮する濃縮法を組み合わせて、記載(5c)に示された溶媒であるジメチルスルホキシドを用いたものといえるから、結晶を得るために当業者が通常行う範囲内の手法であるといえる。
そうすると、本願明細書等に記載される上記製造方法は、当業者が通常採用しないような手法を用いているものではなく、特殊な条件設定が必要であるというものでもないから、本願発明の結晶は、当業者が通常なし得る範囲の試行錯誤で得られた結果物であるといえる。

(イ)さらに、結果物である引用発明の化合物である5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン−1,4−ジオンナトリウム塩の結晶に対し、結晶多形の検討、同定のために、引用文献1に記載された分析法と同様の分析を行い、引用発明と同様にX−線粉末図のd値および2−シータ値により特定することも、当業者が当然行うことと言えるから、相違点に係るX−線粉末図のd値および2シータ値によって特定された結晶学値を有する点は、得られた結晶を分析するにあたり、当業者が当然行う分析結果を提示したに過ぎないものである。

(ウ)以上のことから、引用発明において、結晶を得るための条件や手法を検討したり、得られた結晶について分析することにより、相違点に係る本願発明の構成を備えた結晶に至ることは、当業者が容易に想到し得ることである

(3)発明の効果について
ア 本願明細書等の記載
本願明細書には、次のとおり記載されている。
(ア)
「【0015】
医薬生成物の製造において、特に医薬製剤における有効成分の投与に関して、物質の性質としてのかさ密度は、主要な役割を果たす。特に、低すぎるかさ密度は、厳密な投与において低いフロー性質から困難さへ拡がる生産プロセスにおける問題を引き起こす可能性がある。特に多形剤の場合、医薬用の生成物についての他の共通問題は、より長い期間(在庫可能期間)に渡って有効成分の相純を維持することである。特に、溶媒を用いて、活性の物質の湿潤の危険性を含む医薬製剤において、それが例えば、錠剤、クリーム、ローション又はエマルジョンにおいてその場合である可能性があるように、固体相転移のリスクは、特に、経済的な理由のために、できるだけ長い在庫可能期間内において、特に高い。
【0016】
本発明の課題は、有益な特性、特に改善された貯蔵可能性及び/又は改善されたかさ密度を有する、医薬、特に抗炎症及び免疫調整目的に特定的に使用可能である、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の新規な無水物の形態を提供することであった。更に、提供された形態は、それと共に、個別に又は組み合わせて製造され、貯蔵され及び/又は応用された医薬用の生成物にとって有益である、物理化学的な緒性質を有するであろう。
【0017】
この課題は、物理化学的及び生物学的な緒特性に基づいて、従来技術に驚くべきことに且つ検証可能に対比し、そして特にWO2011/107295A1に開示されるように、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の無水物I及びIIと対比する、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩のための新規な無水物形態(形態III)の提供によって解決された。
【0018】
この結晶性無水物形態III(形態III)は、15個の特性値、各々X−線粉末回折図において示される面間隔及び2−シータ角度(表1を参照)によって定義される(図1)。形態IIIは、夫々のパッキングモチーフ(図2)を備えた結晶構造となる、TOPASアカデミックソフトウエア(タブ2)、を用いたXRPDデータから、構造ソリューション及びリートべルトリファインメントによって、並びに固体−FT−IRスペクトラム(図3)及びラマンスペクトル(図4)によって更に定義される。
【0019】
本発明に係る形態と従来技術において開示されるような5−アミノ− 2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の純粋な無水物形態との間の物理的諸特性に関する差は、例えばかさ密度及び貯蔵能力において存在している。形態I及びIIに比べて、本発明に係る形態IIIは、改善されたかさ密度と及び又改善された貯蔵能力との双方によって特徴づけられ、本発明に係る形態IIIの個別バッチのかさ密度は150kg/m3より高く,好ましくは175kg/m3より高く, 最も好ましくは200kg/m3より高く、そして貯蔵能力は、既に溶媒の少ない量が、部分相転移を引き起こすことがきる、好ましくは湿潤が意図的に又は意図せずに生ずる可能性のある状況における、相純の維持に特に言及している。」

(イ)
「【0052】
無水物形態、形態I及び形態IIのためのWO2011/107295A1に既に記載されているように、本発明に係る無水物は、300℃をはるかに超える分解温度を備えた非常に高い熱安定性も示す。かくして、形態IIIの分解は、391.7℃±10℃の温度から先ずスタートする。合成空気(4N2:1O2)及び10℃/minの加熱レートの下で、MS及びFTIR結合を備えたNetzsch STA 449C(熱バランス)を有する質量分光学的測定に結合したLinseis L81−077における同時thermogravimetry(差分掃引熱量測定)によって、この決定が実行された。データは、ソフトウエア会社Proteusで解析された。
【0053】
熱解析データは、85℃における固体相転移を有するニ水和物に渡る安定性及び貯蔵可能性に関する有益な特性を、結晶形態III並びに形態I及びIIが示すという発明者等によってなされた仮定を確認する(WO2011/107295A1)。他の無水物に対しても(例えば、三水和物、六水和物)、固体相転移は、100℃以下で既にスタートすることが期待されるべきである。この性質は、高いエネルギー入力、例えば、殺菌又は研磨を用いて、手順工程に感じが鈍い形態を与えることによって、本発明に係る結晶形態の薬学的な処理を更に助成する。端末殺菌を可能にする有効成分の製造において、すべての手順的な工程に対してクローズド殺菌生産のGMP要求は、適用されない。これは、かなりのコスト的な利益である。」

(ウ)
「【0068】
結果
形態IIIは、二水和物に比較する程度に、公知の無水物形態に比較したより高いかさ密度を示すことによって、かさ密度における差は、二水和物にそして形態II(p<0.001,t−試験,不対、2−尾部)に比較して非常に大切である。
表3: 形態I−III及び無水物のかさ密度[kg/m3](平均±標準偏差)



(エ)
「【0069】
−飽和溶液が生成されるまで−RTにおける水中の結晶形態IIIの最大溶解度が決定された。従って、145mg/mLの値を備えた形態IIIは、形態I及びII(WO2011/107295A1参照)よりも可溶性が低い。
【0070】
RTにおける水中の結晶形態IIIの最大溶解度の決定は、Agilent Cary 300UV−Vis分光計におけるUV−Vis分光法を用いて実行された。このプロセスは、特定の波長における溶解された固体の濃度と計算された吸収との線型的な相関関係(ビア・ランバート則)に基づいている。
【0071】
2mLH2O(純水化された)内の形態IIIの0.502gのストック溶液が生成された。3ポイント較正カーブを発生させるために、3個の溶液が、0.5041mmol/l,0.2521mmol/l及び0.1260mmol/lの濃度を備えたその適切な希釈の後、生成されて、そして347nmにおけるそれらの夫々の吸収が決定された。この波長において、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩は、UVスペクトルにおける吸収の最大を示す。更に、2mL H2O(純水化された)内の形態IIIの0.531gの超飽和溶液が最大濃度を決定すべく、生成された。この溶液の100μLは、2000回希釈されて、そして347nmにおける吸収も決定された。
【0072】
従って、RTにおける水中の形態IIIの最大溶解度のための形算値は、145mg/mlであった(これは、0.73mol/lの最大濃度に相当する)。」

上記(ア)〜(エ)より、本願発明の効果は、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の形態IIIの結晶を提供できること、及び、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の形態IIIの結晶が、形態IIの結晶に比べて高いかさ密度を有し、形態Iおよび形態IIの結晶に比べて高い熱安定性を有し、形態Iおよび形態IIの結晶に比べて低い溶解性を有する、ということであると認められる。

イ 効果の判断
上記の効果は、以下に示すように、当業者の予想し得ない格別顕著な効果であるとはいえない。
(ア)上記(2)に示したとおり、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の形態IIIの結晶は、当業者が容易に得ることができたものであるから、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の形態IIIの結晶を提供できるという効果は、当業者の予想し得ない格別顕著なものであるとすることはできない。

(イ)かさ密度に関して、
結晶多形の違いによりかさ密度が異なることはよく知られていた(記載(4a))上に、本願明細書の段落0068に記載された5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の形態Iの結晶のかさ密度を参酌すると、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の形態IIIの結晶のかさ密度が、当業者の予想し得ない格別顕著なものであるとすることはできない。

(ウ)熱安定性に関して
結晶多形の違いにより熱に対する安定性が異なることはよく知られていた(記載(5f))上に、引用文献1に記載された5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の形態Iおよび形態IIの結晶の熱安定性(記載(1d))を参酌すると、5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の形態IIIの熱安定性が、当業者の予想し得ない格別顕著なものであるとすることはできない。

(エ)溶解性に関して
結晶多形の違いにより溶解性が異なることはよく知られており(記載(2a)、記載(3a)、記載(4a)、記載(5f)、記載(6a))、上記ア(エ)に示された5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の形態IIIの溶解性を参酌しても、当業者の予想し得ない格別顕著なものであるとすることはできない。

(4)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は,審判請求書において、概略、以下の主張をしている。
(ア)(審判請求書の第3.5(1))
「先に説明した通り,本願発明1に関する形態IIIは,形態IIに比べて,高いかさ密度を有します。本願発明1に関する形態IIIは,300℃をはるかに超え,形態I及び形態IIに比べて,極めて高い熱安定性を有しており,この性質は殺菌工程等を容易にするため,医薬の製造において,顕著な効果を有するといえます。
また,本願発明1に関する形態IIIの室温における溶解性はわずかであり,形態I及び形態IIに比べて,極めて低い溶解性を示します。これは,たとえば,薬剤の貯蔵安定性等の観点で極めて顕著な効果を発揮するといえます。つまり,本件発明は,文献1発明(形態I,形態II)が公知であることを前提として,それに比べて医薬等として重要な,改善された貯蔵可能性や改選されたかさ密度を有する新規な結晶多型を提供するものといえます。
引用文献1は,形態I及び形態IIに関します。引用文献1に記載される通り,5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩(本件化合物)は,引用文献1の優先日において公知でした。一方,引用文献1の優先日において形態I及び形態IIは知られておらず,その結果引用文献1に関する特許出願は,特許され,すでに特許第6061081号として登録されています。
同様の案件については,同様に取り扱われるのが法の下の平等といえます。そうすれば,上記の通り本願発明1に関する形態IIIは,本願の優先日において公知ではなく,しかも公知の形態I及びIIに比べて,上記した効果を有します。引用文献1が特許されている事実を考慮しても,新たな結晶型に関する本件出願も特許されてしかるべきといえます。」

(イ)(審判請求書の第3.5(2))
「次に,当業者であっても形態IIIを容易に見いだせないことについて説明します。
例えば,化合物のうち4〜5%は,結晶多型を有します。一方,3つ以上の結晶多型を有する化合物はわずかに0.03%です(……)。本願の優先日において,本件化合物(5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩)にはすでに2つの結晶多型が見いだされていました。
そうすると,さらに別の結晶多型が存在する可能性は極めて低いといえます。
すでに2つの結晶多型が存在する系において,さらに別の結晶多型を探索する動機付けは極めて低いといえます。
形態I及び形態IIに関する引用文献1に接した当業者であっても,形態IIIが存在することを見出すことは極めて困難です。
つまり,仮に形態IIIを多く含む本件化合物が得られたとしても,当業者であれば,通常は,形態Iと形態IIの混合物と認識し,新たな結晶多型が存在するとは到底思わないのです。
そうすると,引用刊行物1や周知技術(引用刊行物2〜6)に接した当業者であっても,本願発明1には容易に想到し得ないといえます。……。」

イ 検討
(ア)かさ密度、熱安定性及び溶解性並びにそれによる貯蔵安定性についての審判請求人の主張は、上記(3)イに示したとおり、本願発明によるかさ密度、熱安定性及び溶解性の効果がいずれも当業者の予想し得ない格別顕著なものといえないことから、かさ密度、熱安定性及び溶解性による貯蔵安定性も当業者の予想し得ない格別顕著なものということはできず、受けいれられない。
また、引用文献1に関する特許出願が特許された事実から本願発明も特許されてしかるべきである旨の審判請求人の主張は、本願は引用文献1に関する特許出願とは別の出願であることから、本願発明に対する特許性の判断を左右するものではなく、受けいれられない。

(イ)3つ以上の結晶多形を有する化合物の割合は0.03%であり、本願の優先日において5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩にはすでに2つ結晶多形が知られていたことを根拠に、さらなる結晶多形を探索する動機付けが極めて少ない旨の審判請求人の主張は、上記に示したとおり、医薬化合物の分野においては結晶多形を探索する強い動機付けがあることから、たとえ、3つ以上の結晶多形を有する化合物の割合が0.03%程度であることが技術常識であるとしても、さらなる結晶多形を探索する動機付けがないことの根拠にはならず、受けいれられない。
また、形態IIIを多く含む本件化合物を、当業者が、形態Iと形態IIの混合物と誤認することがあり得るとしても、当業者は結晶多形を得る際の分析に細心の注意を払うことから、本願発明を当業者が容易に想到し得ないことの根拠とはならず、受けいれられない。

(5)まとめ
したがって、本願発明は、この出願の優先日前に頒布された引用文献1に記載された発明およびこの出願の優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 大熊 幸治
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-10-25 
結審通知日 2021-10-26 
審決日 2021-11-08 
出願番号 P2017-532153
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 冨永 保
村上 騎見高
発明の名称 5−アミノ−2,3−ジヒドロフタラジン1,4−ジオンナトリウム塩の結晶形態、同一物を含む医薬製剤、及びこの形態の製造ための方法  
代理人 廣瀬 隆行  

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