ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C11D |
---|---|
管理番号 | 1382711 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-08-28 |
確定日 | 2022-04-15 |
事件の表示 | 特願2019− 25810「パッケージ入り組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月18日出願公開、特開2019−116624、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年11月3日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年11月4日(US)米国〕を国際出願日とする特願2017−522585号の一部を、平成31年2月15日に新たな特許出願としたものであって、平成31年2月22日付けで上申書の提出がなされるとともに手続補正がなされ、令和元年10月2日付けの拒絶理由通知に対し、令和2年3月6日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年4月23日付けの拒絶査定に対し、同年8月28日付けで審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、令和3年2月1日付けで上申書の提出がなされたものである。 第2 本願発明 本願請求項1〜8に係る発明は、令和2年8月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 パッケージ(160)内に複数の粒子(90)を含む、パッケージ入り組成物であって、前記粒子が、 前記粒子の40重量%超のポリエチレングリコールであって、前記ポリエチレングリコールが5000〜11000の重量平均分子量を有する、ポリエチレングリコールと、前記粒子の0.1重量%〜20重量%の非カプセル化香料と、を含み、 前記パッケージ内の前記粒子の実質的に全てが、実質的に平らなベース部(150)と、前記ベース部に対して直交して測定された高さ(H)と、を有し、全体として前記粒子が、高さの分布を有し、前記高さの分布が、1mm〜5mmの平均高さと、0.3未満の高さの標準偏差と、を有し、 前記パッケージ内の前記粒子の実質的に全てが、実質的に平らなベース部と、最大ベース寸法(MBD)と、を有し、前記粒子が全体として、最大ベース寸法の分布を有し、前記最大ベース寸法の分布が、2mm〜7mmの平均最大ベース寸法と、0.5未満の最大ベース寸法の標準偏差と、を有し、 前記パッケージ内の前記粒子の実質的に全てが、実質的に平らなベース部を有し、前記最大ベース寸法と整列した主軸(MA)と、前記主軸に対して直交してかつ前記ベース部と同一面内で測定された最大副ベース寸法(MMBD)と、を有し、全体として前記粒子が、最大副ベース寸法の分布を有し、前記最大副ベース寸法の分布が、2mm〜7mmの平均最大副ベース寸法と、0.5未満の最大副ベース寸法の標準偏差と、を有する、パッケージ入り組成物。 【請求項2】 前記粒子がさらにカプセル化香料を含む、請求項1に記載のパッケージ入り組成物。 【請求項3】 前記粒子が、0.1重量%〜20重量%のカプセル化香料を含む、請求項1又は2に記載のパッケージ入り組成物。 【請求項4】 前記粒子が、0.1mg〜5gの個別質量を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパッケージ入り組成物。 【請求項5】 前記パッケージ内の前記粒子の90%超が、実質的に平らなベース部と、前記ベース部に対して直交して測定された高さと、を有し、全体として前記粒子が、高さの分布を有し、前記高さの分布が、1mm〜5mmの平均高さと、0.3未満の高さの標準偏差と、を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のパッケージ入り組成物。 【請求項6】 前記パッケージ内の前記粒子の90%超が、実質的に平らなベース部と、前記ベース部に対して直交して測定された高さと、を有し、全体として前記粒子が、高さの分布を有し、前記高さの分布が、1mm〜5mmの平均高さと、0.2未満の高さの標準偏差と、を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のパッケージ入り組成物。 【請求項7】 前記パッケージ内の前記粒子の90%超が、実質的に平らなベース部と、前記ベース部に対して直交して測定された高さと、を有し、全体として前記粒子が、高さの分布を有し、前記高さの分布が、1mm〜5mmの平均高さと、0.15未満の高さの標準偏差と、を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のパッケージ入り組成物。 【請求項8】 前記パッケージ内の前記粒子の99%超が、実質的に平らなベース部と、前記ベース部に対して直交して測定された高さと、を有し、全体として前記粒子が、高さの分布を有し、前記高さの分布が、1mm〜5mmの平均高さと、0.3未満の高さの標準偏差と、を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパッケージ入り組成物。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は「この出願の請求項1〜9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、その「記」では、次の文献が記載されている。 「2.国際公開第2014/099879号 4.特開2008−156522号公報 5.特表2001−521058号公報 6.特表2002−505373号公報」 第4 当審の判断 1.引用文献の記載事項 (1)引用文献2には、和訳にして、次の記載がある(なお、対応する特表2016−506456号公報の段落番号を括弧内に併記する。)。 摘記2a:請求項1〜2 「1.複数個の香錠剤を含む布地処理組成物であって、前記香錠剤は、 (a)前記香錠剤の0.1重量%〜10重量%のバランス剤であって、グリセリン、ポリプロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、ジプロピレングリコール、1,2プロパンジオール、2,000未満の分子量を有するポリエチレングリコール、及びこれらの混合物から成る群から選択される、バランス剤と、 (b)前記香錠剤の80重量%〜91重量%のポリエチレングリコールであって、前記ポリエチレングリコールは、2,000〜13,000の分子量を有する、ポリエチレングリコールと、 (c)前記香錠剤の0.1重量%〜12重量%の破砕可能な香料マイクロカプセルであって、前記破砕可能な香料マイクロカプセルは、カプセル封入香料を含む、破砕可能な香料マイクロカプセルと、を含む、布地処理組成物。 2.前記香錠剤が、前記香錠剤の1重量%〜12重量%の非カプセル封入香料を含む、請求項1に記載の布地処理組成物。」 摘記2b:第11頁第18行〜第12頁第10行(公表公報の段落0041〜0042) 「香錠剤 香錠剤(pastille)は、米国特許第5,013,498号及び同第5,770,235号に開示された方法を含む当該技術分野で既知の方法によって形成され得る。本発明の香錠剤の融解は、バッチ又は連続モードのいずれかで調製されてもよい。バッチモードでは、温度制御を有する混合容器内に溶融PEGが充填される。次に、PMCが添加され、均質になるまでPEGと混合される。次に、非カプセル封入香料が容器に添加されて、混合物全体が均質になるまで、成分が一定時間更に混合される。連続モードでは、静的混合機又は高剪断混合機のような直列式混合機内で、溶融PEGが非カプセル封入香料及びPMCと混合されて、次に生成した均質の混合物が香錠剤形成のために用いられる。PMC及び非カプセル封入香料は、いかなる順番でも又は同時にPEGに添加され得、染料は香錠剤形成の前の工程で添加され得る。 香錠剤(pastille)は、錠剤、丸剤、球などの異なる形状に成形することができる。香錠剤は、球形、半球形、圧縮半球形、扁豆形、長円形からなる群から選択される形状を有しうる。扁豆形とはレンズマメ(lentil bean)の形状のことを指す。圧縮半球形とは、その曲面の曲率が、同じ半径を有する半球の曲率よりも平均において小さくなるように少なくとも部分的に圧し潰された半球に相当する形状のことを指す。圧縮半球形香錠剤は、直径に対する高さの比が約0.01〜約0.4、又は約0.1〜約0.4、又は約0.2〜約0.3でありうる。長円形とは、最大寸法及び最大寸法に直交する最大二次寸法を有し、最大二次寸法に対する最大寸法の比が約1.2よりも大きい形状のことを指す。長円形は、最大二次寸法に対する最大寸法の比が約1.5より大きくてもよい。長円形は、最大二次寸法に対する最大寸法の比が約2より大きくてもよい。長円形の粒子は、最大寸法が約2mm〜約6mm、最大二次寸法が約2mm〜約4mmであってよい。」 摘記2c:第13頁第15〜23行(同段落0047) 「1つの実施形態では、PMCはスラリーとしてポリエチレングリコール及び非カプセル封入香料に添加されて、粘性材料50を形成することができる。PMCは、粉末としてポリエチレングリコール及び非カプセル封入香料に添加されて、粘性材料50を形成することができる。粘性材料50は、小開口10に通過させることができ、移動するコンベヤ表面20上に配置させて、そのコンベヤ表面上で粘性材料50をガラス転移温度以下に冷却して、複数個の香錠剤30を形成する。図1に示されるように、小開口10は、回転可能な香錠剤形成ロール5上にあり得る。粘性材料50は、粘性材料ディストリビュータ40によって、小開口10に分配され得る。香錠剤は、Sandvik Materials Technologyより入手可能なROTOFORMERにより成形することができる。」 摘記2d:第15頁第2〜12行(同段落0051) 「更に、異なる香りのバリエーションにわたる香錠剤30の形状の一貫性は、形状が洗浄時の組成物の溶解性に影響し得ることから望ましく、そして、その一貫性は、一連の布地処理を通じて香錠剤30が同じ溶解プロファイルを有することから望ましい。布地処理組成物112の香錠剤30及び布地処理組成物114の香錠剤30は、任意の寸法において2mm未満で形状が異なってよい。理論に束縛されるものではないが、形状におけるこのような小さな差は、標準的な使用条件下における洗浄時の溶解プロファイルにおいて目立たない差の結果になると考えられる。更に、形状におけるこのような小さな差は、消費者によって直ちに認識されない可能性がある。第1の布地処理組成物112の香錠剤30及び第2の布地処理組成物114の香錠剤30は、任意の寸法において1mm未満で形状が異なってよい。」 摘記2e:第16頁第10〜15行(同段落0056) 「パッケージ 単回投与又は複数回投与が、パッケージ内に封入され得る。パッケージは、ボトル、バッグ、又は他の容器でもよい。一実施形態において、パッケージは、ボトル、例えば見ている消費者に香錠剤30を見せるための半透明の部分を含むPETボトルである。一実施形態において、パッケージは、単回投与(例えば、お試しサイズの袋)、又は多数の投与(例えば、約15投与量〜約100投与量)を含む。」 摘記2f:第17頁第1行〜末行(段落0058〜0061) 「一実施形態は、複数個の香錠剤30を含む布地処理組成物の投与量であってよく、香錠剤30は、(a)香錠剤の0.1重量%〜10重量%のバランス剤であって、グリセリン、ポリプロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、ジプロピレングリコール、1,2プロパンジオール、2,000未満の分子量を有するポリエチレングリコール、及びこれらの混合物から成る群から選択される、バランス剤と、(b)香錠剤30の80重量%〜91重量%のポリエチレングリコールであって、ポリエチレングリコールは、2,000〜約13,000の分子量を有する、ポリエチレングリコールと、(c)香錠剤30の約0重量%〜約12重量%の非カプセル封入香料、あるいは香錠剤30の約0.1重量%〜約12重量%の非カプセル封入香料、あるいは香錠剤30の約1重量%〜約12重量%の非カプセル封入香料と、(d)香錠剤30の約1重量%〜約12重量%の破砕可能な香料マイクロカプセルと、を含み、香料マイクロカプセルは、カプセル封入香料を含み、前記香錠剤30は、それぞれ約0.95mg〜2gの個々の質量を有し、かつ複数個の香錠剤は、投与量を含むために約1g〜約27gの質量を有する。投与量は、約19gであってよい。 1つの実施形態では、本発明の香錠剤30は、洗濯機の「洗浄サイクル」中に使用されるものとして、洗濯機に投与され得る(しかし、「濯ぎサイクル」で使用されてもよい)。別の実施形態では、本発明の香錠剤30は、洗濯物の洗浄及び/又は濯ぎ中に、洗面器に投与される。洗濯物の手濯ぎ用途では、香錠剤は、Wackerから入手可能であるような「消泡剤」を更に含んでもよい。 実施例となる布地処理組成物は、以下の表に記載する。破砕可能な香料マイクロカプセルは、メラミンホルムアルデヒドシェルを有してもよく、かつAppletonによって製造される型であってよい。染料は、Millikenによって製造されたLIQUITINT染料であってよい。 実施例 ![]() 」 摘記2g:図1 「 ![]() 」 (2)引用文献4には、次の記載がある。 摘記4a:段落0026 「【0026】(香料粒子) 上記本発明の製造方法により得られる香料粒子は、香料、特に揮発性の高い香料の揮散を抑制することができ、また、香りや粒子強度の損失が著しく少ないものである。 本発明の香料粒子の平均粒子径は、溶解性の点から、250〜2000μmであることが好ましく、より好ましくは500〜1500μmである。」 (3)引用文献5には、次の記載がある。 摘記5a:段落0041 「【0041】…複数内腔の押出ダイの内腔直径およびストランドの切断長さは、選択された顆粒サイズに合せる。この態様においては、顆粒は、実質的に均一かつ予め決めることができる粒子サイズで製造され、絶対的な粒子サイズを、意図する特定の用途に適合させることができる。一般に、多くとも0.8cmまでの粒子直径が好ましい。重要な態様は、mm範囲、例えば0.5〜5mmの範囲、さらに具体的には約0.8〜3mmの範囲の均一な顆粒の製造を与える。1つの重要な態様においては、一次顆粒の長さと直径の比率は、約1:1〜約3:1の範囲内である。」 (4)引用文献6には、次の記載がある。 摘記6a:段落0015 「【0015】本発明の好ましい態様においては、遊星ロール押出機または二軸押出機もしくは二スクリュー押出機もしくは二スクリュープレス(平行または逆進するスクリューガイドを有する)に、香料成形品プレミックスを、好ましくは連続的に供給する。機械のハウジングおよび押出−造粒ヘッドは、予め設定した押出温度に加熱し得る。押出スクリューの剪断作用下、好ましくは少なくとも25バールに達する圧力下にプレミックスを圧縮および可塑化する。使用する装置によっては処理量は非常に多いが、より少なくてもよい。次いで、押出ヘッドの孔型ノズルプレートから細いストランドの形態でプレミックスを押出し、最後にその押出物を好ましくは、回転切断刃によって切断し、ほぼ球形/円柱形の顆粒とする。ノズルプレートの孔直径、およびストランドの切断長さは、選択した顆粒の寸法に合わせて予め設定する。この態様により、実質的に均一な、予め決定した粒子サイズの顆粒が得られる。場合に応じた所期用途に合わせて絶対粒子サイズを調節することができる。通例、粒子直径は最大0.8cmまでであることが好ましい。重要な態様においては、ミリメートルサイズ、例えば0.5〜5mm、とりわけ約0.8〜3mmの範囲の大きさの均一な顆粒を製造する。重要な態様においては、切断した一次顆粒の長さ:直径比は、約1:1ないし約3:1である。」 2.引用文献2に記載された発明(引2発明) 引用文献2の請求項1には、「複数個の香錠剤を含む布地処理組成物」(摘記2a)が記載されているところ、その「布地処理組成物」を具体化した、一実施形態の布地処理組成物の香錠剤(摘記2f)のうち、表1の「組成物1」に係る香錠剤を複数個含む布地処理組成物について、引用文献2には次のものが記載されていると認められる。 「複数個の、87.375重量%のPEG 8000と、4.300重量%のジプロピレングリコールと、4.920重量%の非カプセル封入香料と、3.390重量%の破砕可能な香料マイクロカプセルと、0.015重量%の染料とからなる香錠剤を含む布地処理組成物」(以下「引2発明」という。) 3.対比 本願請求項1に係る発明(以下「本1発明」ともいう。)と引2発明とを対比する。 引2発明の「87.375重量%のPEG 8000と、4.300重量%のジプロピレングリコールと、4.920重量%の非カプセル封入香料と、3.390重量%の破砕可能な香料マイクロカプセルと、0.015重量%の染料とからなる香錠剤」は本1発明の「粒子(90)」に相当し、引2発明の「複数個の・・・香錠剤」は、本1発明の「複数の粒子(90)」に相当する。 引2発明の「香錠剤」の「PEG 8000」は、ポリエチレングリコールの一種を示すことは明らかであるから、本1発明の「ポリエチレングリコール」に相当する。また、引2発明の「PEG 8000」の含有量(87.375重量%)は、本1発明のポリエチレングリコールの含有量の範囲に含まれる。 引2発明の「非カプセル封入香料」は、本1発明の「非カプセル化香料」に相当する。また、引2発明の「非カプセル封入香料」の含有量(4.920重量%)は、本1発明の非カプセル化香料の含有量の範囲に含まれる。 引2発明の「布地処理組成物」は、本1発明の「組成物」に相当する。 してみると、本1発明と引2発明は「複数の粒子(90)を含む、組成物であって、前記粒子が、前記粒子の40重量%超のポリエチレングリコールと、前記粒子の0.1重量%〜20重量%の非カプセル化香料と、を含む、組成物。」という点において一致し、次の(α)〜(γ)の点において相異する。 (α)組成物の状態について、本1発明では「パッケージ入り組成物」であるのに対し、引2発明は、パッケージ入りであることは規定されていない点。 (β)粒子の形状と大きさについて、本1発明では、「パッケージ内の粒子の実質的に全てが、実質的に平らなベース部(150)と、前記ベース部に対して直交して測定された高さ(H)と、を有し、全体として前記粒子が、高さの分布を有し、前記高さの分布が、1mm〜5mmの平均高さと、0.3未満の高さの標準偏差と、を有し、 前記パッケージ内の前記粒子の実質的に全てが、実質的に平らなベース部と、最大ベース寸法(MBD)と、を有し、前記粒子が全体として、最大ベース寸法の分布を有し、前記最大ベース寸法の分布が、2mm〜7mmの平均最大ベース寸法と、0.5未満の最大ベース寸法の標準偏差と、を有し、 前記パッケージ内の前記粒子の実質的に全てが、実質的に平らなベース部を有し、前記最大ベース寸法と整列した主軸(MA)と、前記主軸に対して直交してかつ前記ベース部と同一面内で測定された最大副ベース寸法(MMBD)と、を有し、全体として前記粒子が、最大副ベース寸法の分布を有し、前記最大副ベース寸法の分布が、2mm〜7mmの平均最大副ベース寸法と、0.5未満の最大副ベース寸法の標準偏差と、を有する」のに対して、引2発明では、このようなことは規定されていない点。 (γ)ポリエチレングリコールの重量分子量について、本1発明では、「5000〜11000」であるのに対し、引2発明では、「PEG 8000」の重量分子量は不明な点。 4.判断 事案に鑑み、まず、相違点(β)について検討する。 引用文献2には、香錠剤の形状について、球形、半球形、圧縮半球形、扁豆形、長円形からなる群から選択される形状を有しうることが記載されている(摘記2b)。この半球形や圧縮半球形の香錠剤は、半球であるから、本1発明で規定される「実質的に平らなベース部(150)」を有する粒子に相当するものが含まれる。 しかしながら、上記半球形や圧縮半球形の香錠剤について、本1発明の「高さ」、「ベース寸法(MBD)」及び「副ベース寸法(MMBD)」にそれぞれ相当するものが規定できるとしても、引用文献2において、香錠剤の具体的な形状や大きさは不明であって、それらの「高さ」の標準偏差、「ベース寸法(MBD)」の平均値及び標準偏差、並びに、「副ベース寸法(MMBD)」の平均値及び標準偏差は明らかではない。また、引2発明の香錠剤の具体的な製造方法は不明であるから、それらを推測することもできない。 また、引用文献4〜6にも、上記相違点(β)に係る本1発明の発明特定事項については、記載も示唆もされていない。 一方、本願明細書には、次の記載がある。 「【0004】 洗濯用芳香粉末添加剤は、重量を基準とした数量で販売されるのが通例である。洗濯用芳香粉末添加剤の製造品質に応じて、粒子は、単一のパッケージ内で又は幾つかのパッケージにわたって様々な粒径を有する場合がある。そのような洗濯用芳香粉末添加剤の粒径にばらつきにより、パッケージ内の充填レベルが異なる同じ質量を含有するパッケージが生じ得る。これにより、消費者の間にひどい驚きを生じさせる可能性があり、最も低い充填レベルを有するパッケージが最も高い充填レベルを有するパッケージよりも少ない製品しか入っていないという間違った結論を下す場合がある。この結果、容器に内容物が緩めに充填されたことに関連した、その他の規制上の懸念が浮上する可能性もある。 【0005】 これらの制限事項を考慮に入れて、異なるパッケージ間で比較的均一な充填レベルを提供する重量基準のパッケージ内に充填され得る洗濯用芳香粉末添加剤への依然として対処されていない必要性が存在する。」 これらの記載から、洗濯用芳香粉末添加剤が充填されたパッケージにおいて、洗濯用芳香粉末添加剤の粒子の粒径にばらつきがあると、洗濯用芳香粉末添加剤の重量は同じであるのに、パッケージによって充填レベルが異なるものが生じてしまい、消費者に驚きを生じさせるという課題を解決するために、本1発明においては、組成物(洗濯用芳香粉末添加剤)の粒子の形状、粒径及び高さについて、上記相違点(β)に係る発明特定事項を満たすものとしたものということができる。 そして、粒径及び高さの範囲が特定の範囲内のものであって、それらの標準偏差が小さければ小さいほど、パッケージに同様な密度で充填され、充填レベルが均一のものとなることは当業者にとって明らかであるから、本1発明は、上記相違点(β)に係る発明特定事項を有することで、粒径のばらつきの範囲が規定され、「異なるパッケージ間で比較的均一な充填レベルを提供する重量基準のパッケージ」が得られる(粒子が所定量の重量充填されたパッケージにおいて、パッケージによって充填レベルが均一のものとなる)という、明細書記載の格別顕著な作用効果を奏するものであるといえる。 これに対し、引2発明は、香錠剤を封入するパッケージについて、「単回投与又は複数回投与が、パッケージ内に封入され得る。パッケージは、ボトル、バッグ、又は他の容器でもよい。・・・一実施形態において、パッケージは、単回投与(例えば、お試しサイズの袋)、又は多数の投与(例えば、約15投与量〜約100投与量)を含む。」(摘記2e)と記載され、パッケージとして、ボトルに加えて、「単回投与」の「お試しサイズの袋」といった、封入される香錠剤の数が少なく、香錠剤の粒径のばらつきによって生じる充填レベルの相違が認識されないものが例示されている。そして、香錠剤の形状についても限定されるものではなく、球形、半球形、圧縮半球形、扁豆形、長円形のいずれの形状であってもパッケージに充填されることが想定されている。 したがって、引2発明においては、香錠剤の形状や大きさについて、その範囲や分布に特段の制約があるとはいえず、また、「異なるパッケージ間で比較的均一な充填レベルを提供する重量基準のパッケージ」を得ようとする課題が存在するものであるということもできない。 そうすると、引2発明において、半球状や圧縮半球形といった「実質的に平らなベース部」を有するものを、選択する動機付けは乏しく、さらに、半球状や圧縮半球形のものが選択されたとしても、上記相違点(β)に係る本1発明の発明特定事項を満たすようなものとする動機付けはない。そして、引2発明の香錠剤の形状や大きさが当業者が適宜決定する設計的事項ということもできない。 したがって、本1発明は、上記相違点(β)に係る発明特定事項を有することで、「異なるパッケージ間で比較的均一な充填レベルを提供する重量基準のパッケージ」が得られるという、引2発明や引用文献2の記載からは予測し得ない、格別顕著な作用効果を奏するものであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、引用文献2及び4〜6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当しない。 また、本願請求項2〜8に係る発明は、本願請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本1発明の進歩性が否定できない以上、これらの発明の進歩性を否定することはできない。 5.むすび 以上総括するに、本願については、原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-03-29 |
出願番号 | P2019-025810 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(C11D)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
川端 修 |
特許庁審判官 |
木村 敏康 亀ヶ谷 明久 |
発明の名称 | パッケージ入り組成物 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 榎並 薫 |
代理人 | 出口 智也 |
代理人 | 村田 卓久 |
代理人 | 小島 一真 |
代理人 | 朝倉 悟 |