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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1382718
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-02 
確定日 2022-04-12 
事件の表示 特願2016−90087「水中油乳化型メイクアップ化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月2日 出願公開、特開2017−197480、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成28年4月28日の特許出願であって、その主な手続の経緯は次のとおりである。

令和 1年12月23日付け 拒絶理由通知
令和 2年 3月 9日 意見書及び手続補正書の提出
令和 2年 5月28日付け 拒絶査定
令和 2年 9月 2日 審判請求書及び手続補正書の提出

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和2年9月2日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]

1 本件補正の内容

(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載

本件補正前の本願の特許請求の範囲の記載は、令和2年3月9日提出の手続補正書に記載された、以下のとおりのものである(当審注:下線部は本件補正により変更された箇所である。)。

「【請求項1】
(A):油分と、
(B):高級アルコールと、
(C):界面活性剤と、
(D):無機粉体と、
(E):エーテル化度が2.0〜3.5である水溶性ショ糖アリルエーテルによって架橋された、エチレン性不飽和カルボン酸単量体の重合体と、
を含有する水中油乳化型メイクアップ化粧料。
【請求項2】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体が、アクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリル酸、及びメタクリル酸の塩からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の水中油乳化型メイクアップ化粧料。
【請求項3】
(B):高級アルコールが、炭素数12〜40の直鎖又は分岐鎖状の一価アルコールである、請求項1又は2に記載の水中油乳化型メイクアップ化粧料。
【請求項4】
BH型粘度計(回転数:20rpm)により測定される25℃の粘度が1000〜100000mPa・sである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水中油乳化型メイクアップ化粧料。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正後の本願の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりのものである(当審注:下線部は本件補正による変更箇所である。)。

「【請求項1】
(A):油分と、
(B):高級アルコールと、
(C):界面活性剤と、
(D):無機粉体と、
(E):エーテル化度が2.0〜3.5である水溶性ショ糖アリルエーテルによって架橋された、エチレン性不飽和カルボン酸単量体の重合体と、
を含有し、
前記(A):油分は、天然系オイル、炭化水素、シリコーン系オイル及びエステル油からなる群より選ばれる1種であり、
前記天然系オイルは、オリーブオイル、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、ホホバ油、オレンジラフィー油、ミツロウ、ラノリン及びスクワランからなる群より選ばれる1種であり、
前記炭化水素は、スクワラン、流動パラフィン、水素添加ポリイソブテン、水素添加ポリブテン、イソドデカン、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスからなる群より選ばれる1種であり、
前記シリコーン系オイルは、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状メチルシロキサン及びシリコーンポリエーテルコポリマーからなる群より選ばれる1種であり、
前記エステル油は、脂肪酸のオクチルドデシルエステル又はグリセリンエステルであり、前記脂肪酸は、オレイン酸、エルカ酸、ミリスチン酸及びリシノレイン酸からなる群より選ばれる1種であり、
前記(B):高級アルコールは、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール及びオレイルアルコールからなる群より選ばれる1種であり、
前記(C):界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、変性ポリエチレンワックス、変性ポリプロピレンワックス、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、セルロースエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩からなる群より選ばれる1種であり、
前記(D):無機粉体は、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、酸化鉄、黄色酸化鉄及び黒色酸化鉄からなる群より選ばれる1種である、水中油乳化型メイクアップ化粧料。
【請求項2】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体が、アクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリル酸、及びメタクリル酸の塩からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の水中油乳化型メイクアップ化粧料。
【請求項3】
BH型粘度計(回転数:20rpm)により測定される25℃の粘度が1000〜100000mPa・sである、請求項1又は2に記載の水中油乳化型メイクアップ化粧料。」

2 本件補正の適否

(1)本件補正の目的について

本件補正のうち、請求項1の補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「(A):油分」、「(B):高級アルコール」、「(C):界面活性剤」及び「(D):無機粉体」を、それぞれ択一的に記載された具体的な成分に限定するものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(2)特許法第36条第6項第2号に規定する要件の充足について

本件補正後の請求項1に記載された「(C):界面活性剤」の選択肢の中には、「変性ポリエチレンワックス」、「変性ポリプロピレンワックス」、「ポリエチレンオキサイド」及び「セルロースエーテル」が含まれているところ、これらの化合物については、当業者が通常「界面活性剤」であるとは認識しないものであると認められ、当該記載は技術的に矛盾しているから、本件補正後の請求項1に係る発明の水中油乳化型メイクアップ化粧料の成分である「(C):界面活性剤」を明確に理解することができない。
したがって、本件補正後の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないから、当該記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3 補正の却下の決定のむすび

上記2のとおり、本件補正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するため、他の補正事項ついての検討をするまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

上記第2のとおり、令和2年9月2日提出の手続補正書による手続補正は却下されたので、本願に係る発明は、当該補正前の令和2年3月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項によって特定される、次に再掲するとおりのものであると認める(以下、これらの発明を請求項の番号順に「本願発明1」等といい、総称して「本願発明」ということがある。)

「【請求項1】
(A):油分と、
(B):高級アルコールと、
(C):界面活性剤と、
(D):無機粉体と、
(E):エーテル化度が2.0〜3.5である水溶性ショ糖アリルエーテルによって架橋された、エチレン性不飽和カルボン酸単量体の重合体と、
を含有する水中油乳化型メイクアップ化粧料。
【請求項2】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体が、アクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリル酸、及びメタクリル酸の塩からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の水中油乳化型メイクアップ化粧料。
【請求項3】
(B):高級アルコールが、炭素数12〜40の直鎖又は分岐鎖状の一価アルコールである、請求項1又は2に記載の水中油乳化型メイクアップ化粧料。
【請求項4】
BH型粘度計(回転数:20rpm)により測定される25℃の粘度が1000〜100000mPa・sである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水中油乳化型メイクアップ化粧料。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願発明1〜4は、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった、引用文献1(特開2005−232088号公報)及び引用文献2(国際公開第2012/160919)に記載された発明に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものであり、概略、以下の点を指摘している。

(1)引用文献1の実施例1(本発明品1〜6)には、
セタノール(本願発明の「(B):高級アルコール」に相当する。)、
セスキオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、多価アルコール変性シリコーン(本願発明の「(C):界面活性剤」に相当する。)、
ミネラルオイル、ワセリン、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン(本願発明の「(A):油分」に相当する。)、
酸化チタン、タルク、雲母チタン(本願発明の「(D):無機粉体」に相当する。)
及び、
アルキル変性カルボキシビニルポリマー(カーボポール1342)、
等を含有する水中油型化粧下地(本願発明の「水中油乳化型メイクアップ化粧料」に相当する。)
が記載されている。
また、引用文献1には、「本発明」の水中油型化粧料は、B型粘度計によって測定された粘度が2000〜10000mPa・sであることが記載されているから(【0038】)、上記実施例1の組成物の粘度も、この範囲に含まれるものと認められる。

(2)本願発明1と引用文献1に記載された発明を対比すると、前者は「エーテル化度が2.0〜3.5である水溶性ショ糖アリルエーテルによって架橋された、エチレン性不飽和カルボン酸単量体の重合体」を含有するのに対して、後者は「アルキル変性カルボキシビニルポリマー」を含有する点で、両者は相違している。

(3)引用文献2には、親水性増粘剤として、「エーテル化度2.4の水溶性ショ糖アリルエーテルで架橋されたアクリル酸及びそのナトリウム塩の重合体」を化粧料に配合すると、「アルキル変性カルボキシビニルポリマー」を化粧料に配合した場合に比して、良好なサッパリ感及び軽さを有する化粧料が得られたことが記載されている(特に、請求の範囲、[0062]、実施例5〜6、比較例5〜6、表2、[0101])。

(4)引用文献1には、「粉体を含有しても、長期的な保存安定性に優れ、さっぱりとした使用感に優れた、低粘度の水中油型化粧料を提供すること」を課題とすることが記載されているから(【0004】)、引用文献1に記載された発明において、引用文献2の記載に基づいて、使用感をより向上させるために、「アルキル変性カルボキシビニルポリマー」に代えて、「エーテル化度2.4の水溶性ショ糖アリルエーテルで架橋されたアクリル酸及びそのナトリウム塩の重合体」を配合することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(5)本願明細書に記載の使用感の向上効果(実施例1〜2と比較例1〜2を参照)は、引用文献1及び2の記載からみて、当業者の予測を超えるものとはいえない。

(6)出願人は、令和2年3月9日付け意見書において、本願発明の水中油乳化型メイクアップ化粧料は、「使用感」、「保存安定性」、並びに、「ソフトフォーカス効果」のすべての性能を良好なものにすることができるという特有の効果を奏する旨を主張するが、そうした性能は、個々の成分の影響を受けるものであるところ、本願明細書において、それらの性能が確認されているのは、高級アルコールとしてセタノール、界面活性剤としてモノステアリン酸グリセリルなど、特定の成分を用いた実施例1及び2のみであるから、含有する「油分」、「高級アルコール」、「界面活性剤」及び「無機粉体」について、何ら具体的に特定していない本願発明1〜4の全体にわたって、出願人の主張する効果が奏されるとは認められない。

3 当審の判断

(1)本願発明1について

引用文献1には、「粉体を含有しても、長期的な保存安定性に優れ、さっぱりとした使用感に優れた、低粘度の水中油型化粧料を提供すること」が課題とされていたことが記載されており(【0004】)、当該課題を解決するために、「特定の多価アルコール変性シリコーン化合物」及び「環状シリコーン」等とともに、「アルキル変性カルボキシビニルポリマー」を必須の成分として配合したことにより、低粘度領域においても乳化安定性に優れ、粉体の分散性が良好で、かつ経時による粘度変化もなく長期にわたり良好な流動性を保ち、熱や光に対しても安定で、さらには、べたつきがなく、さっぱりとした使用感に優れた水中油型化粧料が得られる旨が記載されていると認められる(【0005】及び【0007】)。

そうすると、引用文献2に、親水性増粘剤として「エーテル化度2.4の水溶性ショ糖アリルエーテルで架橋されたアクリル酸及びそのナトリウム塩の重合体」を化粧料に配合すると、「アルキル変性カルボキシビニルポリマー」を配合した場合に比して、良好なサッパリ感及び軽さを有する化粧料が得られたことが記載されているとしても、引用文献1において、使用感だけでなく、低粘度領域における乳化安定性、粉体の分散性、経時の粘度変化、長期にわたる流動性、熱や光に対する安定性の点でも優れた水中油型化粧料を得るための必須の成分として、「特定の多価アルコール変性シリコーン化合物」及び「環状シリコーン」等と併用するとされている、「アルキル変性カルボキシビニルポリマー」を、敢えて引用文献2に記載の「エーテル化度2.4の水溶性ショ糖アリルエーテルで架橋されたアクリル酸及びそのナトリウム塩の重合体」に置き換える強い動機付けがあるとはいえない。

その一方、本願明細書には、「(E):重合体を配合する(含有させる)ことにより、優れた保存安定性を有し、軽い伸びや拡がりが得られ、触感に優れるなど良好な使用感を有し、さらに、良好なソフトフォーカス効果が得られる化粧料を得ることができる。」(【0048】)と記載されており、当該「(E):重合体」として、「エーテル化度2.4の水溶性ショ糖アリルエーテルで架橋されたアクリル酸及びそのナトリウム塩の重合体」(製造例2で調製したもの)を配合した実施例1及び2のリキッドファンデーション(乳液)が、当該重合体を含まない比較例1及び当該重合体に代えてカルボキシビニルポリマー(製造例3で調製したペンタエリトリトールアリルエーテルで架橋されたアクリル酸の重合体)を配合した比較例2のリキッドファンデーションと比べて、使用感が良好であっただけでなく、ソフトフォーカス効果も良好であった(テカリが無く、シワ及び毛穴の隠蔽性が高い)ことが、具体的に示されている(【0070】【表1】〜【0071】)。

このような、本願発明1が奏する、良好な使用感に加えた、良好なソフトフォーカス効果は、引用文献1及び2には何らの記載も示唆もなく、当業者が予測し得たものとはいえない。

なお、本願明細書に記載された上記実施例1及び2のリキッドファンデーションは、「(A):油分」として「成分2:トリエチルヘキサノイン」及び「成分3:スクアラン」、「(B):高級アルコール」として「成分1:セタノール」、「(C):界面活性剤」として「成分4:自己乳化型モノステアリン酸グリセリル」、「(D):無機粉体」として「タルク」、「マイカ」、「水酸化アルミニウム処理酸化チタン」、「酸化チタン」、「カオリン」、「酸化鉄(ベンガラ)」、「黄色酸化鉄」及び「黒色酸化鉄」を含有するが、これらの特定の成分を用いなければ、「(E):重合体」として、「エーテル化度2.4の水溶性ショ糖アリルエーテルで架橋されたアクリル酸及びそのナトリウム塩の重合体」を配合したとしても、良好な「使用感」及び良好な「ソフトフォーカス効果」が得られないと推認するに足るような根拠は見出せない。

したがって、本願発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2〜4について

本願発明2〜4は、本願発明1の発明特定事項を全て備えており、さらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第4 むすび

以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-03-28 
出願番号 P2016-090087
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61K)
P 1 8・ 575- WY (A61K)
P 1 8・ 537- WY (A61K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 井上 典之
進士 千尋
発明の名称 水中油乳化型メイクアップ化粧料  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
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