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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1382744
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-29 
確定日 2022-03-10 
事件の表示 特願2019− 93734「情報処理装置、及び、情報処理装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月26日出願公開、特開2019−162882〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月4日(以下、「原出願日」という。)に出願した特願2013−78434号の一部を、平成29年8月9日に新たな特許出願とした特願2017−154173号の一部を、令和元年5月17日に新たな特許出願としたものであって、令和2年1月9日付けで手続補正書及び上申書が提出され、令和2年4月7日付けで拒絶理由が通知され、同年6月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して同年9月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和2年9月29日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年9月29日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和2年6月11日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。(下線は当審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
情報処理装置であって、
人を検知する人検知手段と、
負荷と、
前記情報処理装置の電力状態を変更するユーザ操作を受け付け可能な受付手段と、
(1)前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給し、(2)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷に電力を供給し、及び、(3)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷への電力供給を停止する、電力制御手段と、を備え、
前記電力制御手段は、前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止を禁止する、ことを特徴とする情報処理装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
情報処理装置であって、
人を検知する人検知手段と、
負荷と、
前記情報処理装置の電力状態を変更するユーザ操作を受け付け可能な受付手段と、
(1)前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給し、(2)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷に電力を供給し、及び、(3)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷への電力供給を停止する、電力制御手段と、を備え、
前記電力制御手段は、前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく割り込みを無効化し、前記所定の期間に前記受付手段が受け付けた前記ユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止がされない、ことを特徴とする情報処理装置。」

2 本件補正の適否について
本件補正は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「情報処理装置」が備える「電力制御手段」について、「前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止を禁止する」とされていたものを、「前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく割り込みを無効化し、前記所定の期間に前記受付手段が受け付けた前記ユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止がされない」とし、「禁止する」態様を具体化することで限定を付加するものである。
また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の
「【0062】
人感センサ610によって物体が検知され、制御回路620によって物体が画像形成装置100に接近したと判断された場合、人感センサ610による割り込み信号Interrupt_Sが電力制御部260に入力される(S100)。割り込み信号Interrupt_Sが入力された電力制御部260は、レジスタ262の値を確認する(S101)。レジスタ262の値が”010”(画像形成装置100の電力状態がスタンバイ状態(S1)であることを示す情報)の場合、電力制御部260の処理は終了する。レジスタ262の値が”001”(画像形成装置100の電力状態が省電力状態(S2)であることを示す情報)の場合、節電ボタン523による割り込みを無効化する(S102)。具体的には、電力制御部260の電力管理部265がフラグ263を“00”に設定する。これにより、画像形成装置100が省電力状態からスタンバイ状態に復帰している最中に節電ボタン523からの割り込みが発生しなくなる。そして、電力制御部260は、リレー154およびリレー155に対してRelay_ON信号を出力する(S103)。これにより、リレー154およびリレー155がオン状態になって、第2電源部152からCPU210などに電力が供給されると共に第3電源部153からプリンタ制御部900などに電力が供給される。上記した「節電ボタン523による割り込みを無効化する」とは、節電ボタン523による割り込み信号Interrupt_Oが入力されても、電力管理部265が当該信号Interrupt_Oを無視するように制御することを意味する。なお、「節電ボタン523による割り込みを無効化する」とは、割り込み信号Interrupt_Oが電力制御部260に入力されないように制御しても良い。
【0063】
そして、電力制御部260は、画像形成装置100の電力状態がスタンバイ状態(S1)になったか否かを判断する(S104)。具体的には、電力制御部260は、CPU210から画像形成装置100の電力状態がスタンバイ状態(S1)になったことが通知された場合に、画像形成装置100の電力状態がスタンバイ状態(S1)になったと判断する(S104:Yes)。画像形成装置100の電力状態がスタンバイ状態(S1)になったことがCPU210から通知された場合、電力制御部260は、レジスタ262の値を”010”に設定する(S105)。そして、電力制御部260は、節電ボタン523による割り込みの無効化を解除する。具体的には、電力制御部260のフラグ263を”11”に設定する(S106)。」
の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
本件補正の目的が、特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1」に記載したとおりのものと認める。

(2)引用例
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用され、原出願日前に頒布された引用文献である、特開2012−256234号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。
a「【0036】
図2には、本実施の形態に係る画像処理装置10が示されている。画像処理装置10は、記録用紙に画像を形成する画像形成部240と、原稿画像を読み取る画像読取部238と、ファクシミリ通信制御回路236を備えている。画像処理装置10は、メインコントローラ200を備えており、画像形成部240、画像読取部238、ファクシミリ通信制御回路236を制御して、画像読取部238で読み取った原稿画像の画像データを一次的に記憶したり、読み取った画像データを画像形成部240又はファクシミリ通信制御回路236へ送出したりする。」
b「【0041】
(制御系ハード構成)
図3は、画像処理装置10の制御系のハード構成の概略図である。
【0042】
ネットワーク回線網20は、メインコントローラ200に接続されている。メインコントローラ200には、それぞれ、データバスやコントロールバス等のバス33A〜33Dを介して、ファクシミリ通信制御回路236、画像読取部238、画像形成部240、UIタッチパネル216が接続されている。すなわち、このメインコントローラ200が主体となって、画像処理装置10の各処理部が制御されるようになっている。なお、UIタイッチパネル216には、UIタッチパネル用バックライト部(図4参照)が取り付けられている場合がある。
【0043】
また、画像処理装置10は、電源装置202を備えており、メインコントローラ200とはバス33Eで接続されている。電源装置202は、商用電源242から電力の供給を受けている。電源装置202では、メインコントローラ200、ファクシミリ通信制御回路236、画像読取部238、画像形成部240、UIタッチパネル216のそれぞれに対して独立して電力を供給する電力供給線35A〜35Dが設けられている。このため、メインコントローラ200では、各処理部(デバイス)に対して個別に電力供給(電力供給モード)、或いは電力供給遮断(スリープモード)し、所謂部分節電制御を可能としている。
【0044】
また、メインコントローラ200には、2個の第1の人感センサ28、第2の人感センサ30が接続されており、画像処理装置10の周囲の人の有無を監視している。この第1の人感センサ28、第2の人感センサ30については後述する。」
c 「【0062】
(監視制御)
ここで、本実施の形態のメインコントローラ200は、必要最小限の電力消費となるように、部分的にその機能を停止させる場合がある。或いは、メインコントローラ200の大部分を含め、電力の供給を停止させる場合がある。これらを総称して「スリープモード(節電モード)」という場合がある(図5参照)。」
d 「【0066】
また、メインコントローラ200のI/O210には、節電制御ボタン26(単に、「節電ボタン26」という場合がある。)が接続されており、節電中に使用者がこの節電制御ボタン26を操作することで、節電が解除可能となっている。なお、この節電制御ボタン26には、処理部に電力が供給されているときに操作されることで、当該処理部の電力供給を強制的に遮断し、節電状態にする機能を持たせてもよい。」
e 「【0069】
ところで、スリープモード時に使用者が画像処理装置10の前に立ち、その後に節電制御ボタン26を操作して、電力供給を再開した場合、画像処理装置10が立ち上がるまでに時間を要する場合があった。
【0070】
そこで、本実施の形態では、前記節電中監視制御部24に、第1の人感センサ28、第2の人感センサ30を設置すると共に、スリープモードでは、使用者が節電解除ボタンを押す前に人感センサで検知して早期に電力供給を再開して、使用者が早く使えるようにした。なお、節電制御ボタン26と第1の人感センサ28、第2の人感センサ30とを併用しているが、第1の人感センサ28、第2の人感センサ30のみで全ての監視を行うことも可能である。
【0071】
第1の人感センサ28、第2の人感センサ30は、検出部28A、30Aと回路基板部28B、30Bとを備えており、回路基板部28B,30Bは、検出部28A、30Aで検出した信号の感度を調整したり、出力信号を生成する。
【0072】
なお、第1の人感センサ28、第2の人感センサ30は、「人感」としているが、これは、本実施の形態に則した固有名詞であり、少なくとも人が感知(検出)できればよく、言い換えれば、人以外の移動体の感知(検出)も含むものである。従って、以下において、人感センサの検出対象を「人」に言及する場合があるが、将来的には、人に代わって実行するロボット等も感知対象範囲である。なお、逆に、人と特定して感知できる特殊センサが存在する場合は、当該特殊センサを適用可能である。以下では、移動体、人、使用者等は、第1の人感センサ28、第2の人感センサ30が検出する対象として同義として扱い、必要に応じて区別することとする。」
f 「【0091】
(画像処理装置10(デバイス)の電力供給制御のモード遷移)
まず、図5に基づき、画像処理装置10における、各モード状態と、当該モード状態の移行の契機となる事象を示したタイミングチャートを示す。
【0092】
画像処理装置10は、処理がなされていないと動作状態は、スリープモードとなり、本実施の形態では、節電中監視制御部24にのみ電力が供給されている。
【0093】
ここで、立ち上げ契機(立ち上げトリガの検出、或いはUIタッチパネル216等の操作入力(キー入力))があると、動作状態はウォームアップモードへ遷移する。
【0094】
なお、この立ち上げトリガ契機後は、依然としてスリープモードと定義し、UIタッチパネル216のみを起動するようにしてもよいし、或いは、UIタッチパネル216の起動によって、節電中監視制御部24のみの電力供給よりも電力供給量が増加するので、アウェイクモード「awk」(目覚めモード)として定義してもよい(図5の遷移図における、スリープモード範囲の括弧[ ]内参照)。このアウェイクモードでUIタッチパネル216等の操作入力(キー入力))があると、動作状態はウォームアップモードへ遷移する。
【0095】
前記立ち上げトリガとは、主として、第2の人感センサ30による検出結果に基づく信号や情報等がある。なお、操作者による節電解除操作も立ち上げトリガとしてもよい。
【0096】
ウォームアップモードは画像処理装置10を迅速に処理可能状態にもっていくため、各モードの内最大の電力消費量となるが、例えば、定着部におけるヒータとしてIHヒータを利用することによって、ハロゲンランプを用いたヒータよりもウォームアップモード時間は、比較的短い時間とされている。
【0097】
ウォームアップモードによる暖機運転が終了すると、画像処理装置10はスタンバイモードに遷移するようになっている。
【0098】
スタンバイモードは、文字通り「事に備えて準備が完了している」モードであり、画像処理装置10においては、画像処理の動作が即実行できる状態となっている。
【0099】
このため、キー入力としてジョブ実行操作があると、画像処理装置10の動作状態は、ランニングモードに遷移し、指示されたジョブに基づく画像処理が実行されるようになっている。
【0100】
画像処理が終了すると(連続した複数のジョブが待機している場合は、その連続したジョブの全てが終了したとき)、待機トリガによって画像処理装置10の動作状態はスタンバイモードへ遷移する。なお、画像処理後、システムタイマによる計時を開始し、予め定めた時間経過した後に待機トリガを出力し、スタンバイモードへ遷移するようにしてもよい。
【0101】
このスタンバイモード中にジョブ実行指示があれば、再度ランニングモードへ遷移し、立ち下げトリガの検出がある、或いは予め定めた時間が経過したとき、スリープモードへ遷移するようになっている。
【0102】
なお、立ち下げトリガとは、第2の人感センサ30による検出結果に基づく信号や情報等がある。なお、システムタイマを併用してもよい。
【0103】
また、画像処理装置10における実際の動作におけるモード状態の遷移が、全てこのタイミングチャートのとおり時系列で進行するものではない。例えば、ウォームアップモード後のスタンバイモードで処理が中止され、スリープモードへ移行する場合もある。
【0104】
ここで、電力の供給を受けて動作する各デバイスは、図5におけるスリープモードからアウェイクモード、ウォームアップモードを経てスタンバイモードへ遷移することで、それぞれの処理を即時に実行可能となる。」
g 「【0116】
ステップ108では、第2の人感センサ30で移動体(使用者)を検出したか否かが判断され、否定判定されると、ステップ110へ移行してセンサタイマがタイムアップしているか否かが判断される。このステップ110で否定判定されると、ステップ108へ戻り、ステップ108又はステップ110で肯定判定されるまで、ステップ108及びステップ110を繰り返す。
【0117】
前記ステップ110で肯定判定されると、ステップ112へ移行して、センサタイマをストップし、次いでステップ114へ移行して、第2の人感センサ30をオフ、すなわち電力の供給を遮断して、ステップ100へ戻り、上記工程を繰り返す。
【0118】
また、ステップ108で肯定判定されると、ステップ116へ移行して、メインコントローラ200(図4参照)に対して立ち上げトリガを出力し、ステップ118へ移行する。この立ち上げトリガにより、画像処理装置10の必要最小限の一部に対して、電力が供給されスリープモードからアウェイクモード(又は、スタンバイモード)へ遷移する。その後は、使用者にUIタッチパネル216の操作等に基づいて、必要なデバイスを立ち上げ、ジョブ実行キー入力等によって、ランニングモードへ遷移し、画像処理が実行可能となる。」

(イ)上記(ア)から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「ファクシミリ通信制御回路236、画像読取部238、画像形成部240、UIタッチパネル21からなる各処理部(デバイス)を備えた画像処理装置10であって、
画像処理装置10のファクシミリ通信制御回路236、画像読取部238、画像形成部240、UIタッチパネル21からなる各処理部(デバイス)に対して部分節電制御を行うメインコントローラ200と、
前記メインコントローラ200に接続され、人を感知(検出)する第2の人感センサ30と、
前記メインコントローラ200に接続された節電制御ボタン26とを備え、
節電制御ボタン26を使用者が操作することによって、メインコントローラ200が、スリープモードからスタンバイモードへ遷移させる制御を行い、また、節電制御ボタン26を使用者が操作することによって、メインコントローラ200が、スタンバイモードからスリープモードへ遷移させる制御を行い、
第2の人感センサ30で移動体(使用者)を検出したか否かが判断され、肯定判定されると、メインコントローラ200に対して、第2の人感センサ30による検出結果に基づく信号である立ち上げトリガを出力し、この立ち上げトリガにより、画像処理装置10に対して電力が供給され、スリープモードからウォームアップモードを経てスタンバイモードへ遷移する、画像処理装置10。」

イ 引用例2
(ア)同じく原査定に引用され、原出願日前に頒布された引用文献である、特開2012−236293号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。
a 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、複合機が省電力モードである場合に、上述したように、ファクシミリ信号の受信が検知されたことにより、又はユーザによって前記ボタン操作が行われたことにより、省電力モードから通常動作モードに復帰する間は、割り込み信号を受け付け出来ない時間が存在する。
【0007】
すなわち、省電力モードから通常動作モードに復帰する場合は、各種プログラム及び各種部品等を初期化する必要があり、斯かる初期化の際、複合機は割り込み信号の受け付けが出来なくなり、該割り込み信号に係る指示が無効にされてしまうと言う問題が生じていた。
【0008】
例えば、ファクシミリ信号の受信の検知によって省電力モードから通常動作モードに復帰する間に、通常動作モードへの復帰を望むユーザが前記ボタンの操作を行った場合は、該ボタン操作によって生じた信号は受け付け出来ず、無効とされる。その結果、複合機はファクシミリ信号に係るジョブを実行した後、ユーザが望む通常動作モードに復帰せずに、再び省電力モードに移行するので、ユーザに不快感を与える。
【0009】
しかしながら、特許文献1の省電力制御装置では、このような問題を解決することが出来ない。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、省電力モードから通常動作モードへの移行中であっても、ユーザからの通常動作モードへの復帰指示或いは外部からのジョブの処理指示を受け付けた場合は、これらの指示に基づく制御が可能な制御装置を提供するところにある。」
b 「【0019】
以下に、本発明の実施の形態に係る制御装置を複合機に適用した場合を例として、図面に基づいて詳述する。該複合機は、電話機、ファクシミリ、プリンター等の機能を有しており、夫々の機能に係るジョブを実行する。
【0020】
また、本発明の実施の形態の複合機は、省電力モード(第2の状態)と、レディモード(第1の状態)とを有している。省電力モードでは、複合機20の一部の部品への給電を制限して消費電力を減らす。また、レディモードでは給電が制限されていた部品に給電が行われ、ユーザからの指示を受け付け、何れのジョブが即時に実行可能である。」
c 「【0024】
(実施例1)
図1は本発明の実施の形態の複合機20における、要部構成を示す機能ブロック図である。複合機20は、制御部1と、ROM2と、RAM3と、各種ジョブに係るデータが記憶されている記憶部4と、ユーザに対して報知すべき情報を表示する表示部5と、ユーザからの操作(指示)を受け付ける操作パネル6と、原稿の画像を光学的に読み取る画像入力部7と、画像入力部7が読み取った画像に応じた画像データを生成する画像処理部8と、画像処理部8が生成した画像データに基づいて記録シート上に画像を出力する画像出力部9と、外部とのデータの送受信を行う通信部10(ジョブ受付部)と、省電力モードからレディモードへの復帰の間に取得される指示を保持する指示保持部11と、電話通信を行う送受話部12とを備えている。」
d 「【0027】
操作パネル6は、複合機20のジョブ機能を選択するための選択指示、複合機20の動作を制御するための指示等をユーザの操作により受け付けるタッチパネル又はテンキーを備えている。また、操作パネル6には省電力ボタン61が設けられている。
【0028】
省電力ボタン61(操作受付部)は、複合機20の一部の部品への給電を制限する省電力モードに移行する指示(以下、移行指示と言う。)、及び該省電力モードからレディモードに復帰する指示(以下、復帰指示と言う。)を受け付ける。すなわち、レディモードの状態にて、ユーザが省電力ボタン61を押下する操作をした場合、該操作に係る指示(操作指示)が受け付けられ、レディモードからディープスリープモードを経てスーパースリープモードに移行する。一方、スーパースリープモードの状態にて、ユーザが省電力ボタン61を押下する操作をした場合、該操作に係る指示(操作指示)が受け付けられ、ディープスリープモードを経て、レディモードに復帰する。」
e 「【0034】
指示保持部11(保持部)は、レディモードへの復帰の間に省電力ボタン61及び通信部10を介して取得される指示を保持する。詳しくは、指示保持部11は時定数回路111を有しており、レディモードへの復帰の際における、初期化の間に省電力ボタン61及び通信部10を介して取得される指示が時定数回路111によって保持されるように構成されている。
【0035】
本発明の実施の形態の指示保持部11は、例えば、CR時定数回路を有している。該CR時定数回路はスイッチングFETのゲートに直列に接続した抵抗と、該抵抗と基準電位間に接続されたコンデンサとで構成された公知のものであり、詳しい説明を省略する。
【0036】
前記CR時定数回路は、省電力ボタン61を介した復帰指示の受け付けにより、又は通信部10を介したジョブ指示の受信により、スイッチオンとなる。また、前記CR時定数回路は、レディモードへの復帰の間に、すなわち、初期化の際に、省電力ボタン61及び通信部10を介して取得される復帰指示又はジョブ指示を所定時間延長させることによって保持する。遅延時間は、これらの定数の値により任意に設定することが出来る。」
f 「【0041】
制御部1は、レディモードにおいて、ユーザが省電力ボタン61を押下する操作をした場合、所定の部品への給電を制限し、省電力モード(スーパースリープ)への移行を行う。一方、省電力モードにおいて、通信部10がジョブ指示を受信した場合、又はユーザが省電力ボタン61を押下する操作をした場合、制御部1は、給電が制限されていた部品に給電を再開し、ディープスリープモード又はレディモードへの復帰を行う。
【0042】
制御部1は、指示保持部11に指示が保持されている場合、該指示が省電力ボタン61を介して取得された復帰指示であるか、通信部10を介して取得されたジョブ指示であるかを判定する。
【0043】
制御部1は、省電力モードの際に、省電力ボタン61を介して復帰指示を受け付け、又は通信部10を介してジョブ指示を受信する。このように、取得された復帰指示及びジョブ指示は、例えば、RAM3に一時的に記憶される。
【0044】
制御部1は、省電力モードの際に、省電力ボタン61又は通信部10を介して取得した指示が復帰指示であるか又はジョブ指示であるかを判定するとともに、この判定結果に基づき、ディープスリープモード又はレディモードへの復帰を行う。この判定は、例えば、電位変化に基づいて制御部1へ入力される割り込み信号を検知することにより行われる。詳しくは、通信部10からの割り込み信号及び省電力ボタン61からの割り込み信号のみが検出できるように、制御部1のピンが設定されている。通信部10からの割り込み信号又は省電力ボタン61からの割り込み信号が入力された場合、斯かるピンでの電位変化に基づき、どのピンに信号が入力されたか、すなわち、通信部10からの割り込み信号か、省電力ボタン61からの割り込み信号かが認識できる。
【0045】
図2及び図3は本発明の実施の形態における、複合機20の省電力モードからの復帰処理を説明するフローチャートである。
【0046】
まず、複合機20の省電力モードからの復帰処理として、制御部1が初期化処理を行い(ステップS101)、ステップS102に移行する。なお、この省電力モードからの復帰要因は、省電力ボタンを介して受け付けた復帰指示、或いは通信部10を介して受信したジョブ指示による復帰指示のいずれかである。また、制御部1における初期化処理の開始に伴い、指示保持部11の時定数回路111は、スイッチオンとなり、省電力ボタン61及び通信部10を介して取得される復帰指示又はジョブ指示の保持が開始される。
【0047】
続いて、制御部1は、取得された指示が省電力ボタン61を介して受け付けた復帰指示であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0048】
制御部1が取得した指示が省電力ボタン61を介して受け付けた復帰指示であると判定した場合(ステップS102:YES)、制御部1が給電の制限されていた部品に給電を再開することによって、複合機20は、ディープスリープモードを経て、レディモードへの復帰を行う(ステップS103)。
【0049】
次いで、制御部1は、指示保持部11の時定数回路111を確認することにより、指示保持部11が何れかの指示を保持しているか否かを判定する(ステップS104)。
【0050】
制御部1は指示保持部11が何ら指示を保持していないと判定した場合(ステップS104:NO)、処理を終了する。一方、制御部1によって指示保持部11が何れかの指示を保持していると判定された場合(ステップS104:YES)、指示保持部11が保持しているジョブ指示に対応する処理(以下、ジョブ指示対応処理と言う)が適宜実行され(ステップS105)、その後処理が終了する。
【0051】
すなわち、指示保持部11には、レディモードへの復帰の際における、初期化の間に省電力ボタン61及び通信部10を介して取得される復帰指示又はジョブ指示が保持される。換言すれば、レディモードへの復帰の際における、初期化の間に、ユーザが省電力ボタン61を押下する操作をした場合の復帰指示、及び通信部10を介して受信されたジョブ指示が指示保持部11に保持されている。
【0052】
一方、初期化の際、装置外側のユーザには、初期化中であることが判別できないので、初期化の間に、ユーザが省電力ボタン61を押下する操作をした場合、これはユーザによる復帰指示の催促であるとみなすことができる。また、省電力ボタン61を介した復帰指示によって既にレディモードに復帰が完了しているので、指示保持部11に保持されている復帰指示は無効にし、指示保持部11が保持しているジョブ指示に対応する処理のみが適宜実行される。」
g fの記載から、複合機20の省電力モードからの復帰処理の一連の制御は、制御部1が行っていると認められるから、段落【0052】において、指示保持部11に保持されている復帰指示は無効にするのは制御部1であると認められる。

(イ)上記(ア)から、引用例2には、次の技術的事項(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「複合機20であって、
制御部1と、ユーザからの操作(指示)を受け付ける操作パネル6と、画像処理部8が生成した画像データに基づいて記録シート上に画像を出力する画像出力部9と、省電力モードからレディモードへの復帰の間に取得される指示を保持する指示保持部11とを備え、
操作パネル6は、複合機20の一部の部品への給電を制限する省電力モードに移行する指示(以下、移行指示と言う。)、及び該省電力モードからレディモードに復帰する指示(以下、復帰指示と言う。)を受け付ける省電力ボタン61(操作受付部)を備え、
複合機20の省電力モードからレディモードへの復帰処理として、制御部1が初期化処理を行い、
制御部1は、取得された指示が省電力ボタン61を介して受け付けた復帰指示であるか否かを判定し、
制御部1が取得した指示が省電力ボタン61を介して受け付けた復帰指示であると判定した場合、制御部1が給電の制限されていた部品に給電を再開することによって、複合機20は、レディモードへの復帰を行い、
制御部1は、初期化の間に、ユーザが省電力ボタン61を押下する操作をした場合、ユーザによる復帰指示の催促であるとみなして、当該復帰指示を無効にする、
複合機20。」

(3)引用発明1との対比
ア 本願補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「画像形成部240を備えた画像処理装置10」及び「人を感知(検出)する第2の人感センサ30」は、それぞれ、本願補正発明の「情報処理装置」及び「人を検知する人検知手段」に相当する。
引用発明1の「ファクシミリ通信制御回路236、画像読取部238、画像形成部240、UIタッチパネル21からなる各処理部(デバイス)」は、一種の「負荷」であると認められるから、引用発明1の「画像処理装置」は、本願補正発明の「情報処理装置」と「負荷」を備える点で共通する。
引用発明1の「節電制御ボタン26」は、本願補正発明の「前記情報処理装置の電力状態を変更するユーザ操作を受け付け可能な受付手段」に相当する。
引用発明1は「節電制御ボタン26を使用者が操作することによって、メインコントローラ200が、スリープモードからスタンバイモードへ遷移させる制御を行い、また、節電制御ボタン26を使用者が操作することによって、メインコントローラ200が、スタンバイモードからスリープモードへ遷移させる制御を行い、第2の人感センサ30で移動体(使用者)を検出したか否かが判断され、肯定判定されると、メインコントローラ200に対して、第2の人感センサ30による検出結果に基づく信号である立ち上げトリガを出力し、この立ち上げトリガにより、画像処理装置10に対して電力が供給され、スリープモードからウォームアップモードを経てスタンバイモードへ遷移する」のであるから、引用発明1の「メインコントローラ200」は、本願補正発明の「電力制御手段」と、「(1)前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給し、(2)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷に電力を供給し、及び、(3)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷への電力供給を停止する」点で共通する。
引用発明1は、第2の人感センサ30で移動体(使用者)を検出したか否かが判断され、肯定判定されると、メインコントローラ200に対して、第2の人感センサ30による検出結果に基づく信号である立ち上げトリガを出力し、この立ち上げトリガにより、画像処理装置10に対して電力が供給され、スリープモードからウォームアップモードを経てスタンバイモードへ遷移するものであるから、「ウォームアップモード」を有する引用発明1と、本願補正発明は、「前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間」を有する点で共通する。
イ 以上のことから、本願補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「情報処理装置であって、
人を検知する人検知手段と、
負荷と、
前記情報処理装置の電力状態を変更するユーザ操作を受け付け可能な受付手段と、
(1)前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給し、(2)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷に電力を供給し、及び、(3)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷への電力供給を停止する、電力制御手段と、を備え、前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間を有する情報処理装置。」

【相違点1】
本願補正発明が、「前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間」において、「前記電力制御手段」が、「前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく割り込みを無効化し、前記所定の期間に前記受付手段が受け付けた前記ユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止がされない」のに対し、引用発明1は、「前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間」を有するものの「前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間」において、「前記電力制御手段」が、「前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく割り込みを無効化し、前記所定の期間に前記受付手段が受け付けた前記ユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止がされない」という特定を有していない点。

(4)判断
ア 上記【相違点1】について検討する。
上記(2)イ(イ)のとおり、引用例2記載事項は、複合機20の省電力モードからレディモードへの復帰処理において、レディモードへの復帰の際における初期化の間に、ユーザが省電力ボタン61を押下する操作をした場合、制御部1が、ユーザによる復帰指示の催促であるとみなして、当該復帰指示を無効にするものであるから、引用例2記載事項は、レディモードへの復帰を開始してから所定の期間内に、受付手段へのユーザ操作がなされた場合、制御部が、当該ユーザ操作をユーザによるレディモードへの移行指示であるとみなして、当該ユーザ操作に基づく電力状態の移行を無効化するものであるといえる。
してみると、引用例2記載事項には、上記【相違点1】に係る「前記電力制御手段」が、「前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく割り込みを無効化し、前記所定の期間に前記受付手段が受け付けた前記ユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止がされない」という構成が示されているといえる。
ここで、引用例2記載事項は、省電力モードからレディモードへ移行する際に所定の時間を要するものであるところ、引用発明1においても、検知手段による人の検知に基づき画像形成装置の電力状態を移行させる際には、ウォームアップモードという所定の移行期間を要しているものであり、両者は、電力状態を移行させる際に所定の期間を要するという作用を有する点において共通する。
してみると、引用発明1において、人の検知により電力状態を移行させるに当たり、引用例2記載事項に基づき、スリープモードからスタンバイモードへの移行を開始してからの所定期間であるウォームアップモードにおいて受け付けられたユーザ操作をスタンバイモードへの移行指示であるとみなして、当該ユーザ操作基づく電力状態の移行を無効化する構成を採用することで、上記【相違点1】の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

イ そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明1及び引用例2記載事項の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用例2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
「引用文献2には、補正後の請求項1の特徴(F)「 前記電力制御手段は、前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく割り込みを無効化し、前記所定の期間に前記受付手段が受け付けた前記ユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止がされない」が開示されていません。
繰り返しになりますが、引用文献2の段落0051には、「初期化の間に、ユーザが省電力ボタン61を押下する操作をした場合の復帰指示、及び通信部10を介して受信されたジョブ指示が指示保持部11に保持されている」と記載され、また、段落0052には、「レディモードに復帰が完了しているので、指示保持部11に保持されている復帰指示は無効にし、」と記載されています。
つまり、引用文献2では、レディーモードに復帰する前に指示保持部11に保持された復帰指示が無効となることが開示されているだけで、レディーモードに復帰した後の復帰指示(この指示は、“移行指示”である)が無効になることは開示されていません。
そのため、引用文献2では、レディーモードに復帰した後の復帰指示(移行指示)は無効とならず、レディーモードに復帰した直後に復帰指示(移行指示)があれば、スーパースリープモードまたはディープスリープモードに移行する筈です。
一方で、補正後の請求項1の発明では、「…前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく割り込みを無効化」するので、負荷に電力が供給された直後に、当該記負荷への電力供給が停止されるのを防止することができる。
このように、引用文献2と補正後の請求項1の発明とでは、負荷に電力を供給した後(レディーモードに復帰した後)に受け付けたユーザ操作による装置の動作が全く異なります。引用文献2では、スーパースリープモードまたはディープスリープモードに移行するのに対して、補正後の請求項1では、負荷への電力供給は停止されません。
よって、上記のような引用文献2に、人を検知する検知手段を開示する引用文献1を組み合わせても、補正後の請求項1の発明を導き出すことができません。」
と主張する。
そこで、上記主張について以下、検討する。
引用例2に、「前記電力制御手段は、前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく割り込みを無効化し、前記所定の期間に前記受付手段が受け付けた前記ユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止がされない」構成が開示されているとは認定できないとしても、上述した通り、「ウォームアップモード」を有し、「負荷」に電力を供給する時点と(「レディーモード」に対応する)「スタンバイモード」に復帰する時点とが異なる引用発明1において、人の検知により電力状態を移行させるに当たり、引用例2記載事項に基づき、スリープモードからスタンバイモードへの移行を開始してからの所定期間であるウォームアップモードにおいて受け付けられたユーザ操作をスタンバイモードへの移行指示であるとみなして、当該ユーザ操作基づく電力状態の移行を無効化する構成を採用することで、「前記電力制御手段は、前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく割り込みを無効化し、前記所定の期間に前記受付手段が受け付けた前記ユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止がされない」構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであり、引用例2に、「前記電力制御手段は、前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく割り込みを無効化し、前記所定の期間に前記受付手段が受け付けた前記ユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止がされない」構成が開示されてはいないことを理由に、本願補正発明が、引用発明1及び引用例2記載事項から当業者が容易に想到し得たものではないとする上記請求人の主張は採用できない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

4 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和2年6月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
情報処理装置であって、
人を検知する人検知手段と、
負荷と、
前記情報処理装置の電力状態を変更するユーザ操作を受け付け可能な受付手段と、
(1)前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給し、(2)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷に電力を供給し、及び、(3)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷への電力供給を停止する、電力制御手段と、を備え、
前記電力制御手段は、前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止を禁止する、ことを特徴とする情報処理装置。」(以下「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1及び引用例2に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用例1.特開2012−256234号公報
引用例2.特開2012−236293号公報

3 引用例
令和2年4月7日付けの拒絶理由通知に引用された引用例1、引用例2、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用例」に記載したとおりである。

4 対比・判断
ア まず、本願発明と、本願補正発明の違いは、「情報処理装置」が備える「電力制御手段」について、本願発明においては、「前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止を禁止する」とされているのに対して、本願補正発明においては、「前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間、前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく割り込みを無効化し、前記所定の期間に前記受付手段が受け付けた前記ユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止がされない」とされている点のみである。

イ 当該事項を踏まえ、上記「第2 3 (3)引用発明1との対比」と同様に、本願発明と引用発明1との対比を行うと、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「情報処理装置であって、
人を検知する人検知手段と、
負荷と、
前記情報処理装置の電力状態を変更するユーザ操作を受け付け可能な受付手段と、
(1)前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給し、(2)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷に電力を供給し、及び、(3)前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づいて前記負荷への電力供給を停止する、電力制御手段と、を備え、前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間を有する情報処理装置。」

【相違点1’】
本願発明が、「前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間」において、「前記電力制御手段」が、「前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止を禁止する」のに対し、引用発明1は、「前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間」を有するものの「前記人検知手段による人の検知に基づいて前記負荷に電力を供給した後の所定の期間」において、「前記電力制御手段」が、「前記受付手段が受け付けたユーザ操作に基づく前記負荷への電力供給の停止を禁止する」という特定を有していない点。

ウ ここで、本願補正発明と引用発明1との相違点である【相違点1】は、本願発明と引用発明1の相違点である【相違点1’】に対し、「禁止する」態様を具体化することで限定を付加したものである。

エ そうすると、前記第2の[理由]3に記載したとおり、引用発明1において、引用例2記載事項に基づき【相違点1】の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるから、引用発明1において、引用例2記載事項に基づき【相違点1’】の構成を採用することも当業者が容易に想到し得たものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明であって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-12-28 
結審通知日 2022-01-05 
審決日 2022-01-21 
出願番号 P2019-093734
審決分類 P 1 8・ 56- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 藤田 年彦
佐々木 創太郎
発明の名称 情報処理装置、及び、情報処理装置の制御方法  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  

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