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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24C
管理番号 1382809
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-07 
確定日 2022-02-24 
事件の表示 特願2016−160589「加熱装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月22日出願公開、特開2018− 28409〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月18日の出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和2年2月27日付けで拒絶理由通知
令和2年4月30日に意見書及び手続補正書の提出
令和2年9月4日付けで拒絶査定(9月15日送達;以下「原査定」という。)
令和2年12月7日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出
令和3年7月1日に当審において、令和2年12月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定及び同日付けで最後の拒絶理由通知
令和3年9月3日に意見書及び手続補正書の提出

第2 令和3年9月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年9月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、本件補正前に下記(2)のとおりであった特許請求の範囲の記載を、下記(1)のとおり補正するものである。

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
「 【請求項1】
加熱装置によって加熱されることにより提供可能な状態に調理される飲食品の、加熱装置による加熱前の調理状態に応じて定められた情報であって、飲食品を提供可能な状態にするのに用いられる加熱方法の種類と、当該種類の加熱方法により加熱すべき加熱時間とが含まれる加熱情報を記憶する記憶部から、前記加熱情報を取得する加熱情報取得部と、
自装置が加熱する飲食品の前記加熱情報を示す加熱指示情報であって、コンピュータで読み取り可能に示す加熱指示情報を取得する加熱指示情報取得部と、
前記加熱情報取得部が取得する前記加熱情報と、前記加熱指示情報取得部が取得する前記加熱指示情報とに基づいて、飲食品の加熱を制御する加熱制御部と、
前記加熱制御部の制御に基づいて、前記飲食品を加熱する加熱部と、
を備える加熱装置であって、
前記加熱方法には、マイクロ波によって加熱する方法、ヒーターによって加熱する方法、蒸気によって加熱する方法のうち、少なくとも1つが含まれ、
前記加熱制御部は、前記加熱方法のいずれかである第1の方法により前記飲食品を加熱する第1のパターン、又は前記第1の方法により前記飲食品を加熱した後、前記加熱方法のいずれかであって前記第1の方法とは異なる第2の方法により前記飲食品を加熱する第2のパターンのいずれかのパターンにより前記飲食品を加熱する
加熱装置。
【請求項2】
前記飲食品は、
真空包装され、又は冷凍されている
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記飲食品は、包装物によって包装されており、
前記加熱情報には、前記包装物の開封の要否を示す情報が含まれ、
前記加熱制御部は、前記加熱情報に含まれる前記包装物の開封の要否を示す情報に基づいて開封され又は容器に移された後、前記飲食品の加熱を制御する
請求項1又は請求項2に記載の加熱装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和2年4月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
加熱装置によって加熱されることにより提供可能な状態に調理される飲食品の、加熱装置による加熱前の調理状態に応じて定められた情報であって、飲食品を提供可能な状態にするのに用いられる加熱方法の種類と、当該種類の加熱方法により加熱すべき加熱時間とが含まれる加熱情報を記憶する記憶部から、前記加熱情報を取得する加熱情報取得部と、
自装置が加熱する飲食品の前記加熱情報をコンピュータで読み取り可能に示す加熱指示情報を取得する加熱指示情報取得部と、
前記加熱情報取得部が取得する前記加熱情報と、前記加熱指示情報取得部が取得する前記加熱指示情報とに基づいて、飲食品の加熱を制御する加熱制御部と、
前記加熱制御部の制御に基づいて、前記飲食品を加熱する加熱部と、
を備える加熱装置。
【請求項2】
前記加熱方法には、
マイクロ波によって加熱する方法、ヒーターによって加熱する方法、蒸気によって加熱する方法とのうち、少なくとも1つが含まれる
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記飲食品は、
真空包装され、又は冷凍されている
請求項1又は請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記飲食品は、包装物によって包装されており、
前記加熱情報には、前記包装物の開封の要否を示す情報が含まれ、
前記加熱制御部は、前記加熱情報に含まれる前記包装物の開封の要否を示す情報に基づいて前記飲食品の加熱を制御する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加熱装置。」

2 補正の適否
本件補正の請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載された発明における「自装置が加熱する飲食品の前記加熱情報をコンピュータで読み取り可能に示す加熱指示情報」を、「自装置が加熱する飲食品の前記加熱情報を示す加熱指示情報であって、コンピュータで読み取り可能に示す加熱指示情報」とし、加熱指示情報について明確な記載とするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
また、本件補正の請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載された発明における「加熱情報」において特定する「加熱方法」について、「前記加熱方法には、マイクロ波によって加熱する方法、ヒーターによって加熱する方法、蒸気によって加熱する方法のうち、少なくとも1つが含まれ」(11〜12行)という事項を限定するとともに、「加熱制御部」について、「前記加熱制御部は、前記加熱方法のいずれかである第1の方法により前記飲食品を加熱する第1のパターン、又は前記第1の方法により前記飲食品を加熱した後、前記加熱方法のいずれかであって前記第1の方法とは異なる第2の方法により前記飲食品を加熱する第2のパターンのいずれかのパターンにより前記飲食品を加熱する」(13〜16行)という事項を限定するものであり、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

<特許法第29条第2項進歩性)について>
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
当審において最後として通知した拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002−156117号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審において付したものである。以下同様。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報処理装置による弁当様食材の加熱パターンの提供方法、および情報処理装置に関し、特に、加熱調理器に対して最適な加熱方法等の情報提供方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】宅配の弁当用食材において、流通性と保存性を考慮した場合、冷凍弁当のような冷凍による流通やレトルトパウチ食品のような非通気性パック化された食品としての流通が想定される。現状ではこれらの弁当様食材は各需要先において高周波加熱装置やお湯による間接加熱で解凍及び再加熱され、食卓に供給されることが一般的となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ここで用いられる高周波加熱装置による加熱はその高周波加熱装置自身の高周波分布特性やこれらの弁当様食材に搭載された食品の種類や温度等の状態によって定まる加熱特性に応じて、解凍、加熱され、必ずしも均一にあたたまることは無い、まして、それぞれの食品を食べるのに望ましい温度に調整することは困難であった。
【0004】また、特定のメニューに特化し、容器の形状や内装される食品の位置や形状を最適化することで、所定の加熱が実現できるように調整された弁当様食材は実現されているが、その様に特定のメニューに特化してのみ実現されているため、需要者の望むような多様なメニューや複数の食品の混在した弁当様食材で、複数の食品毎に異なる提供温度を達成するといった要求には答えることができなかった。
【0005】本発明は上記従来の課題を解決するもので、多様なメニューや複数の食品の混在した状態にあっても、食品毎の異なる提供温度等の加熱パターンに適合した加熱を実現し、より快適な弁当様食材の提供を実現することを目的とした。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記従来の課題を解決するために、本発明の情報処理装置による弁当様食材の加熱パターンの提供方法は、弁当様食材の容器の一部に所定の符号を光学符号、磁気符号または形状符号等の形式を用いて記載し、その所定の符号と、弁当様食材の設定された提供温度、加熱時間、加熱条件等の少なくとも一つを含む加熱パターンとを関連付けて情報処理装置の記憶装置に記憶する一方、前記所定の符号の読み取り手段を搭載した加熱調理器で、前記所定の符号を読み取り、前記記憶手段に前記所定の符号を元に照会し、最適な加熱パターンを取得し、それに応じて加熱調理器で加熱するものである。
【0007】これによって、最適な加熱パターンをもとに加熱調理器の出力手段を制御して、前記弁当様食材を加熱調理することにより、需要家は多種の弁当様食材に対して前記加熱調理器を用いることで、弁当様食材を常に最適の加熱調理を実現できるものである。」

「【0019】
【実施例】以下本発明の実施例について図1〜図39を参照しながら説明する。
【0020】(実施例1)図1は本発明の第1の実施例における弁当様食材の最適加熱パターン提供のシステム構成を示す図である。また、図2は本実施例1で取り上げる弁当様食材の1例の模式図である。
【0021】図1、図2に示されるように、本実施例1による弁当様食材の最適加熱パターン提供のシステムは互いにネットワーク接続される、サーバ(情報処理装置)1、複数の加熱調理器2、及び流通する複数の弁当様食材3から構成されている。
【0022】4は弁当様食材3の容器5の一部に記載された英数字を利用した所定の符号(以下、識別符号とする)である。弁当様食材3は容器5に食品6を搭載している。8は弁当様食材メーカーに配置された入力装置にして、前記識別符号4とともに弁当様食材3の入れられた食品6に最適な加熱出力、加熱時間、提供温度等のデータ(以下、加熱パターンと呼ぶ)7を関連付けて入力する。入力装置8はネットワーク9を介して、記憶装置10を有するサーバ(情報処理装置)1へ連結されている。
【0023】さて、識別符号4は弁当様食材3を特定する符号であり、弁当様食材3の食品6の種類やその組み合わせ毎にもしくは容器5毎に設定された符号である。識別符号4はサーバー1の上で弁当様食材3の食品6の種類や組み合わせに応じた最適な加熱パターンに、もしくは容器5に搭載された食品6の種類や組み合わせに応じた最適な加熱パターンに関連付けされている。つまり、ある識別符号4をもってサーバー1に問い合わせれば、当該弁当様食材3のに対応する最適な加熱パターンが一意的に取得できるものである。
【0024】一方、2は需要家宅に置かれたマイクロ波を利用した加熱調理器にして、前記識別符号4を光学的に読み取るカメラ等の読み取り手段12を搭載している。また、この加熱調理器2はマイクロ波の出力装置13を搭載しており、それぞれのOn−Off、強弱等の加熱出力を調整できるものである。さて、前記読み取り手段12は加熱調理器2の出力装置13とともに制御装置14に接続されおり、前記識別符号4を読み取り、制御装置14に伝達する。15は制御装置14と接続された通信装置にして、ネットワーク16を介して前記サーバ(情報処理装置)1に接続されている。
【0025】以上の構成にあってその動作を説明する。
【0026】図3、図4は動作を説明するフローチャートである。図5、図6は動作を説明するシステム構成図である。まず、弁当様食材メーカーでは、食品6を容器5に搭載し、例えば冷凍し、冷凍した弁当様食材3として、需要家へ配布する。
【0027】その際、入力装置8によって前記識別符号4及び食品6、その加熱パターン7を関連付けて入力する(S00001)。これらの識別符号4、加熱パターン7のデータはネットワーク9を介して記憶装置10を有するサーバ1に関連付けて蓄積される(S00002)。
【0028】一方、需要家宅には何らかの流通手段を介して弁当様食材3が配布される。弁当様食材3は例えば冷凍であれば、、需要家の必要に応じて相当期間保存され、必要に応じて消費されることとなる。さて、図4にあるように、消費時に弁当様食材3は加熱調理器2にセットされ(S00003)、加熱調理器2のスタートスイッチ(図示せず)によって、同加熱調理器2内の制御装置14に加熱指示が成される(S00004)。加熱調理器2内の制御装置14は接続された読み取り手段12を用いて弁当様食材3の容器5の一角に表示された識別符号4を光学的に読み取る(S00005)。この識別符号4のデータは制御装置14、通信装置15、ネットワーク16を介して前記サーバ1に問い合わせを行う(S00006)。前記サーバ1は読み取られた識別符号4に対応する加熱パターン7のデータをネットワーク16を介して加熱調理器2内の通信装置15を介して制御装置14に伝達される(S00007)。制御装置14は加熱パターン7に合わせて、出力装置13を制御し、加熱を行う(S00008)。これによって弁当様食材3は最適に調理されて需要家に提供される(S00009)。
【0029】ここで提供される弁当様食材3は従来とは異なり、識別符号4に応じて予めサーバ(情報処理装置)1に蓄積された加熱パターンに合わせて加熱調理器2を制御して加熱されるため、予め設定されたように、食品6にそれぞれ望ましいと設定されている温度に加熱されて提供される。
【0030】以上述べたように本発明によれば、需要家はその求める弁当様食材を当該加熱調理器にセットさえすれば、特別に意識したり入力調整をしなくとも、最適な加熱に加熱された弁当様食材を入手でき、面倒な設定や調整から開放されるものである。」

「【0106】さて、ここまでの実施例1〜10にあっては、識別符号の例として英数字を用いることにより説明を進めたが、識別符号はバーコードのような印刷によるものやピンなどの物理的な構造によるものでも、また、磁気記憶に基づく磁気コードなどでも同様の形態を実現でき、どのような種類で表現される識別符号を用いたとしても本発明は有効であり、それら識別符号の表現手段の違いが、本発明の主旨に影響を及ぼすものではない。
【0107】なお、本実施例の説明にあっては食材を事前調理し冷凍した例について説明を進めたが、真空、レトルト、脱酸素密封などの食品保存方法を用いても、また、そのまま流通しての再加熱であっても、また、調理済み食品でなく、半調理もしくは未調理食品であっても、更には調理の必要としない食品を混載した場合にあっても、何れの場合にあっても本発明の主旨を逸脱するものではない。
【0108】また、本発明の実施例を説明するの中では、加熱、加熱調理、加熱パターンと言う表現を使用して説明を行ったが、ここでの加熱パターンの中には加熱しない行為も加熱パターンのひとつとして包含しており、一部を加熱しないと言う調理を含むものとする。
【0109】また、本実施例において、高周波加熱装置を例に説明を行ったが、本発明の意図する加熱調理器はある任意の場所をそれぞれ略選択的に加熱できる構成であれば、その達成方式の如何に関わらず有効であり、同時に高周波加熱ではなくとも、例えば誘導加熱を熱源とする電磁調理機やガス機器の他の熱源による加熱調理器であっても、選択的に制御できる熱源であれば、同様の構成が実現でき、その熱源の違いが本発明の主旨に影響するものではない。」















(イ)上記(ア)及び図面の記載から認められる事項
上記(ア)及び図面の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記(ア)の段落0001〜0007、00019〜0030及び0106〜0109並びに図1〜6の記載によれば、引用文献1には、加熱調理器2が記載されている。

b 上記(ア)の段落0021〜0023、0027〜0029及び0107並びに図1〜3及び図6の記載によれば、サーバー1は、加熱調理器2によって加熱されることにより提供可能な状態に調理される弁当様食材3の食品6の、加熱調理器2による加熱前の調理状態に応じて定められた情報であって、弁当様食材3の食品6を提供可能な状態にするのに用いられる弁当様食材3の食品6に最適な加熱出力、加熱時間、提供温度等のデータである加熱パターン7を記憶する記憶装置10を有することが認められる。

c 上記(ア)の段落0024及び0028並びに図1の記載によれば、加熱調理器2は、サーバー1の記憶装置10から、加熱パターン7を伝達する通信装置15を備えることが認められる。

d 上記(ア)の段落0022〜0024及び0028並びに図1及び2の記載によれば、加熱調理器2は、加熱調理器2が加熱する弁当様食材3の食品6の前記加熱パターン7を示す識別符合4であって、サーバー1に問い合わせることが可能な識別符合4を読み取る読み取り手段12を備えることが認められる。

e 上記(ア)の段落0024及び0028並びに図1、4及び6の記載によれば、加熱調理器2は、通信装置15が伝達する加熱パターン7と、読み取り手段12が読み取る識別符合4とに基づいて、弁当様食材3の食品6の加熱を制御する制御装置14を備えることが認められる。

f 上記(ア)の段落0024及び0028並びに図1及び6の記載によれば、加熱調理器2は、制御装置14の制御に基づいて、弁当様食材3の食品6を加熱するマイクロ波の出力装置13を備えることが認められる。

(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)から、本件補正発明に倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「加熱調理器2によって加熱されることにより提供可能な状態に調理される弁当様食材3の食品6の、加熱調理器2による加熱前の調理状態に応じて定められた情報であって、弁当様食材3の食品6を提供可能な状態にするのに用いられる弁当様食材3の食品6に最適な加熱出力、加熱時間、提供温度等のデータである加熱パターン7を記憶する記憶装置10から、前記加熱パターン7を伝達する通信装置15と、
加熱調理器2が加熱する弁当様食材3の食品6の前記加熱パターン7を示す識別符合4であって、サーバ1ーに問い合わせることが可能な識別符合4を読み取る読み取り手段12と、
前記通信装置15が伝達する前記加熱パターン7と、前記読み取り手段12が読み取る前記識別符合4とに基づいて、弁当様食材3の食品6の加熱を制御する制御装置14と、
前記制御装置14の制御に基づいて、前記弁当様食材3の食品6を加熱するマイクロ波の出力装置13と、
を備える加熱調理器2。」

イ 引用文献2
当審において最後として通知した拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002−63254号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

「【0082】(b)の冷凍食材メニューでは各種メニューが提示される、例えばハンバーグを選択すると更に(c)のお好みハンバーグの画面が表示される。
【0083】(c)でデミグラソースハンバーグを選択すると(d)の調理法で焼き加減が聞かれる。(d)の画面で例えばミディアムを選択すると(e)の発注確認画面で発注メニューの写真や詳細またカロリー、価格、お届け日時が表示される。この情報は発注No12345として情報センター3に送られる。
【0084】この際、発注者の過去の好みが情報センターに記録されており、味付けや焼き具合等発注者の好みにあったレシピ、例えば(f)が配送される。このため、発注者は送られてきた調理プログラムに表示された調理機器に所定の調理シーケンスNo11と入力することにより最適の条件が調理器に入力される。また、調理器に調理プログラムに表示した加工条件を、図示しないが発注端末1に接続したプリンターより調理プログラムとして入手が可能である。そして機器に調理シーケンスを入力できる。この調理情報は前記のようにネットワーク網2を通じて家庭での過去の調理条件としてデータ化される。
【0085】(実施の形態5)図7に、本発明の一実施の形態である食材の受発注供給システムの構成を示す。本実施の形態の構成は、第1の実施の形態食材受発注供給システムに加えて、プログラム調理器24を備える。
【0086】プログラム調理器24は所定プログラムで制御しながら食材の加熱調理が出来る機器で加熱手段としては、マイクロ波やヒータや蒸気等いずれか、またそれらの組み合わせで食材を加熱できるものである。」





ウ 引用文献3
当審において最後として通知した拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010−55489号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

「【0002】
伝統的な加熱調理の方法として、「焼く」、「煮る」、「炒める」、「蒸す」などの基本的な手法が知られている。これら伝統的な加熱調理では、加熱調理手段が広く普及していることから、調理手順と加熱時間が使用者の体感事項として身についているとともに、食品の外観の変化や食材の硬さの変化などを仕上がり確認することにより、加熱調理の補正がある程度可能であり、加熱調理の失敗を防止することができる。
【0003】
これら伝統的な加熱調理方法と異なる加熱調理方法として、電子レンジを使用したマイクロ波による高周波加熱調理が登場した。高周波加熱調理は、伝統的な加熱調理方法の体感事項が利用できず、特に、仕上がり確認が困難であることから、加熱調理の失敗を防止することが困難であった。このため、電子レンジ料理教室の開催や電子レンジに対応したクックブックの発行などによる啓蒙活動により、新たな体感事項を広める必要があった。
【0004】
また、マイクロプロセッサーを利用して、加熱調理器内に、多種の調理レシピに適した加熱調理手順(調理シーケンス)を記憶し、使用者が、希望する調理レシピに適した調理メニューを選択することによって、お仕着せの範囲内とはいえ、調理レシピに適した加熱シーケンスによって加熱調理することができるようになった。
【0005】
これに加えて、食品重量にあわせて加熱調理時間を制御する方法や加熱調理中の食品から発散される水蒸気やにおい成分をセンサーで検知することにより仕上がり検知して制御する方法が採用され、特定の食品と調理レシピでは、自動調理的に加熱調理することができるようになった。
【0006】
このように、ほぼ40年以上の長年に亘る啓蒙活動による体感事項の普及と各機器メーカーの技術革新による機器の進歩とにより、高周波加熱調理器は、依然として仕上がり確認が困難である特徴は残るものの、一般消費者から、伝統的な加熱調理の方法に準ずる周知の加熱調理機器としての認知を得ている。
【0007】
ここに新たに加わったのが過熱水蒸気調理器である。過熱水蒸気調理器は、密閉性の高い加熱室内に載置した食品に対して、100℃を超える過熱蒸気をシャワーのごとく吹き付けることによって食品を「焼く」調理方法である。」

「【0017】
この発明のある局面に従う定期ケータリングシステムは、宅配業者が複数の顧客に対し、一定期間食材を配送するためのケータリングシステムであって、宅配業者に保有される第1の端末と、各顧客に対し、一定期間貸し出される複数の調理器と、第1の端末とインターネットを介して接続され、調理器のメーカーに保有されるサーバとを備え、第1の端末は、顧客に関する情報を管理するための第1の顧客管理データベースと、サーバより予め送信された複数の調理メニューに関する第1のレシピ情報を記憶するための第1のレシピ管理データベースとを含み、第1のレシピ情報は、各調理メニューに対応する、食材データおよび調理器での調理シーケンスデータを識別するためのシーケンス識別データを有し、顧客ごとに、第1のレシピ情報のうち、予約された調理メニューに対応するシーケンス識別データを含む予約シーケンス情報を出力するための出力処理手段と、顧客からのフィードバック情報を取得し、取得したフィードバック情報をサーバに送信するための処理を行なう第1の情報処理手段とをさらに含む。各調理器は、予め、複数の調理シーケンスデータを記憶するための記憶手段と、複数の調理シーケンスデータのうち、第1の端末より出力された予約シーケンス情報により特定される調理シーケンスデータに従い、宅配業者により配送された食材の調理を制御するための調理制御手段とを含む。サーバは、第1の端末からのフィードバック情報に基づいて、所定の処理を実行するための第2の情報処理手段を含む。」

「【0084】
図14を参照して、調理器400は、制御部402と、操作パネル404と、水タンク(図示せず)内の水を蒸気発生装置(図示せず)内に給水するためのポンプ406と、排気通路(図示せず)を開閉するためのダンパ408と、送風ファン410と、蒸気過熱ヒータ412と、蒸気発生ヒータ414と、被加熱物を加熱するためにマイクロ波を発生するためのマグネトロン416と、記憶部418と、外部からの情報を入出力するためのドライブ装置420とを備える。 」

「【0093】
図17は、レシピ管理DB152におけるシーケンスデータテーブル1522のデータ構造の一例を示す図である。
【0094】
図17を参照して、シーケンスデータテーブル1522は、調理シーケンスNo2010ごとに、たとえば、予熱時間を示すデータ2011、予熱温度を示すデータ2012、加熱時間を示すデータ2013、加熱温度を示すデータ2014など、調理器400での調理制御のためのシーケンスデータが格納される。」

「【0138】
宅配業者端末200の登録・出力処理部204は、ダウンロードが要求されると、予約注文管理DB258より、入力された顧客番号に対応する1ヵ月分(代表的に翌月分)の注文情報(メニュー番号)を読出す(ステップS118)。そして、登録・出力処理部204は、読出された注文に基づいて、調理器400に格納すべき予約シーケンス情報を生成する(ステップS119)。ステップS119において、登録・出力処理部204は、ユーザー30ごとに適した調理シーケンスを選択する。具体的には、たとえば、予約されたメニュー番号が「LC2580」で、ユーザーのカロリー制限レベルが「1」であるとすると、ユーザーに適した調理シーケンスNoとして、それらを組み合わせた「LC25801」が選択される。ここで生成された予約シーケンス情報は、図23に示すように、メニュー番号とメニュー名も含む。」

「【0157】
次に、ユーザー30より、開始指示が入力されると(ステップS310)、調理制御部436は、特定されたメニュー番号とユーザーのカロリー制限レベルにより定まる調理シーケンスNoを抽出し、抽出された調理シーケンスNoに応じた調理を開始する(ステップS312)。具体的には、予約シーケンス情報4182において、特定されたメニュー番号と対応付けられた調理シーケンスNoのデータ2063を抽出する。そして、シーケンスデータテーブル4183において、抽出された調理シーケンスNoに対応付けられたシーケンスデータを読出し、読出したシーケンスデータが示す内容(レシピ)に従い、調理制御を開始する。 」
















【図17】



エ 引用文献4
当審において最後として通知した拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平3−221724号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。

「(産業上の利用分野)
本発明は冷凍された混線後のパン生地などの冷凍生地を解凍・発酵させる調理を自動的に行うように構成したオーブン機能付き電子レンジに関する。」(1ページ右下欄7〜11行)

「そこで、本発明の目的は、冷凍生地の解凍を過不足なく行うことができ、また冷凍生地を最適な発酵温度に制御できるオーブン機能付き電子レンジを提供するにある。」(2ページ右上欄12〜15行)

「かかる電子レンジの電気回路構成の概略を示す第6図において、前記マグネトロン4は、整流回路18を介して高圧トランス1つに接続され、その高圧トランス19への交流電源20の供給は、リレースイッチ21及び22により制御される。また、上ヒータ5への交流電源の供給は、上記リレースイッチ21及び22並びに別のリレースイッチ23により制御され、下ヒータ6への交流電源20の供給は、上記リレースイッチ21及び22により制御される。そして、それらリレースイッチ21ないし23は、制御手段すなわちマイクロコンピュータを主体とする制御装置24により制御される。この制御装置24には、前記温度センサ7、重量センサ10、スイッチ15及びスタートスイッチ16を含む各種のスイッチからの信号か入力される。そして、制御装置24は、それらの信号及び予め記憶されたプログラムに基づいてNPN形トランジスタ25ないし27を介してリレースイッチ21ないし23を制御するものである。
次に上記構成において、冷凍パン生地を解凍して発酵及び焼成する場合の作用を第1図のフローチャート及び第2図のタイムチャート(斜線は通電期間)を参照しながら説明する。
・・・
さて、Mt,Tが設定されると、制御装置24は、マグネトロン4及び下ヒータ6を低出力状態に制御して冷凍パン生地の解凍を開始する。・・・
・・・
さて、調理開始から上記一定時間経過すると(ステップS9で「YES」)、解凍行程を終了し、引続いて発酵行程に移行する。この発酵行程では、上下両ヒータ5及び6を5秒間通電、5秒間断電のパターン(リレースイッチ22の接点c−b間オン、リレースイッチ23オンの状態でリレースイッチ21が5秒オン、5秒オフ)を繰返すことによって行われる(ステップS11〜S13の繰り返し)。・・・
・・・
そして、スタート時点から1時間30分経過すると、発酵行程を終了し(ステップS13で「YES」)、この終了をブザーなどによって報知する。この時点で一旦バン生地を加熱室2から取出してその表面にドリールを塗布する。さて、発酵行程が終了すると、制御装置24は、焼成行程に移り、上下両ヒータ5及び6に連続通電する(ステップS15〜S17の繰り返し)。これにより加熱室2内の雰囲気温度が上昇し、パン生地の焼成が行われる。・・・
・・・
このように本実施例によれば、解凍時には、下ヒータ6による加熱に加えてマグネトロン4からのマイクロ波によっても加熱するようにしたので、冷凍パン生地28は内部まで良好に解凍される。しかも、マイクロ波による加熱は、冷凍パン生地28の量に応した時間だけ行うので、冷凍パン生地28か解凍され過ぎになる不具合も生ぜず、冷凍パン生地28を過不足なく解凍できる。
また、解凍時には、下ヒータ6が通電されるので、加熱室2内の温度は次第に上昇し、解凍が終了し次第、発酵に円滑に移行させることができる。そして、発酵時には、温度センサ7の検出温度と比較して両ヒータ5及び6を通断電するための制御基準温度Tを冷凍パン生地28の量に応じて変化、具体的には量が多くなる程、制御基準温度Tを低く設定するようにしたので、両ヒータ5及び6の通電時間がパン生地28の量に応じた最適時間に制御されるようになる。」(3ページ右上欄7行〜4ページ右下欄10行。「・・・」は、文章の省略を意味する。)









オ 引用文献5
当審において最後として通知した拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平5−141668号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。

「【0012】
【実施例】図1〜図4は、本願発明の実施例に係るトースターレンジ型高周波加熱装置の構成を示している。
【0013】先ず図1は、当該高周波加熱装置の全体的な構造(筺体構造)を示すもので、その筺体1の内側には天井部にマイクロ波センサ26を備えた加熱室(調理物収納庫)2が設けられている。そして、該加熱室2の底部には重量センサ27を備えた調理物載置用のターンテーブル3が回転可能に設置されている。また該加熱室2の正面側開口部4にはファィンダー部5を形成したドア6が上下方向に開閉可能な状態で取付けられている。
【0014】一方、上記筺体1正面側の上記ドア6の右側部には当該高周波加熱装置の各種の機能を操作・制御するための操作パネル7が設置されている。該操作パネル7には、例えば図2に詳細に示すように、上方側から下方側(又左右)にかけて、表示部(液晶表示部)10、加熱時間設定キー(5分、1分、10秒の3つのキーよりなる)11、スタートキー12a、とり消しキー12b、手動加熱キー(レンジ強/弱、生もの解凍、トースター、ピザ加熱の5つのキーよりなる)13、自動加熱キー(あたため、牛乳あたため、酒のかん、トースト、炊飯の5つのキーよりなる)14、仕上り調節キー(仕上り、焼色調節の2つの機能を有し、強めキーと弱めキーとの2つからなる)15、時刻合せキー16が各々適切に操作性良く配設されている。特に本実施例では上記自動加熱用のトーストキーが1個であることが特徴である。
【0015】そして、上記表示部10には、例えば下部側の上述した各種操作キーがON操作されると、それに対応して図示のように各種の選択設定状態が表示される(図2は、全ての操作情報を表示した状態である)。
【0016】該操作パネル7は、例えば図3に示すようにマイクロコンピュータを中心として構成された電子レンジコントロールユニット19とデータバス20およびコントロールバス21を介して接続されていて自由に信号の送受が行えるようになっている。
【0017】一方、符号22は高周波出力発振手段としてのマグネトロンであり、該マグネトロン22は高圧トランスTRを介して家庭用のAC電源(100V)に接続されていて、その高周波出力供給量および同出力のON/OFF並びにON時の供給時間(加熱時間)は上記操作パネル7側での設定内容(自動/手動)に基いて形成された上記電子レンジコントロールユニット19からのマグネトロン制御信号によって適切に制御されるようになっている。
【0018】また、符号22は上記加熱室2の上下に2組設けられているトースト/オーブン加熱用のヒータであり、該ヒータ23の加熱状態(上下ヒータのON/OFFおよびON時のデューティー)、加熱時間も上記電子レンジコントロールユニット19からの制御信号によって制御される。さらに、符号24はターンテーブルモータ、25はファンモータであり、これら各モータ24,25も上記マグネトロン22又はヒータ23の駆動状態に対応して上記電子レンジコントロールユニット19により所定のプログラムで駆動制御される。また、上述のように符号26は上記加熱室2内のターンテーブル3上にセットされたパンに照射されたマイクロ波の反射量を検出するマイクロ波センサであり、その検出値は上記電子レンジコントロールユニット19に入力される。また、符号27で示す重量センサは、上記ターンテーブル3上にセットされたパンの重量からその枚数を検出して電子レンジコントロールユニット19に入力する。
【0019】そして、本実施例の場合、上記電子レンジコントロールユニット19は、例えば図4のフローチャートに示すようなトースト焼上げ制御機能を有している。
【0020】次に本実施例の上記電子レンジコントロールユニット19によるトースト焼選択時のトースト焼上げ制御動作について図4のフローチャートを参照して具体的に説明する。
【0021】すなわち、先ずステップS1では、上記手動加熱、自動加熱の各種操作メニューキー13,14のON状態(操作状態)に対応したメニューデータを、またステップS2で上記重量センサ27のデータを各々読み込む。次にステップS3に進み、上記メニューデータに基き、ユーザにより選択された調理メニューが「自動トースト」メニューであるか否かを判定する。
【0022】その結果、YES(自動トースト)の時は例えば図3に示すように当該自動トーストメニューである旨を、その枚数並びに焼上レベル(手動設定された場合)とともに表示した後、更にステップS4に進んで、一定時間t01内マイクロ波スイッチをONにして上記マグネトロン22を駆動し、上記ターンテーブル3上のトースト用パンにマイクロ波を照射する(図5の(a)参照)。
【0023】次に上記一定時間t01経過後ステップS5で上記マイクロ波センサ26の検出値Dを読み込む。そして、続くステップS6で、当該トーストパンに照射されたマイクロ波の反射量ΔDが通常のトーストパンの反射量の上限値を基準として設定した判定値ΔD1よりも大であるか否か(ΔD>ΔD1?)を判定する。
【0024】冷凍トーストの場合、低温かつ氷結しているために通常トーストパンに比較してマイクロ波の反射量が相当に大きくなる。従って、上記マイクロ波の反射量ΔDの大小を判定すれば通常トーストと冷凍トーストの別を自動的に判定することができる。このため、本実施例では先に述べた如く、自動加熱によるトーストメニューキーが単一のもので足りることになる。
【0025】上記判定の結果、YES(ΔD>ΔD1)の時は結局「冷凍トースト」であるから、先ずステップS7で上記マイクロ波スイッチのON状態を更に所定時間継続させることにより冷凍パンの解凍を行った上でステップS8に進み、上記重量センサ27の検出値(W)に基くパン枚数を考慮し当該冷凍トーストに対応したヒータ23の加熱時間t2を設定する(図5の(a),(b)参照)。
【0026】そして、それに対応してステップS9で上記ヒータ23をONにして冷凍トーストの焼上げを実行する。その後、ステップS10に進み、上記冷凍トーストの焼上げ設定時間t2が経過したか否かを判定する。その結果、YES(設定時間t2経過)と判定されると、最終的にステップS11で上記ヒータ23への通電を停止してユーザに対し冷凍トースト焼上げ完了の旨を報知する。他方、上記ステップS10で設定時間t2の経過が判定されるまでは、上記ヒータ23への通電状態が継続される。
【0027】一方、上記ステップS6での判定の結果、NO(ΔD≦ΔD1)の時は結局解凍の不要な「通常トースト」であるから、先ずステップS12で上記マイクロ波スイッチをOFFにした上でステップS13に進み、上記重量センサ27の検出値(W)に基くパン枚数を考慮し当該通常トーストに対応したヒータ23の加熱時間t3を設定する(図5(c)参照)。
【0028】そして、それに対応して上記ステップS9で上記ヒータ23をONにして通常トーストの焼上げを実行する。その後、ステップS10に進み、上記通常トーストの焼上げ設定時間t3が経過したか否かを判定する。その結果、YES(設定時間t3経過)と判定されると、最終的にステップS11で上記ヒータ23への通電を停止してユーザに対し通常トースト焼上げ完了の旨を報知する。他方、上記ステップS10で上記設定時間t3の経過が判定されるまでは、上記ヒータ23への通電状態が継続される。」


【図3】


【図4】


【図5】



カ 引用文献6
当審において最後として通知した拒絶の理由で引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004−308981号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。

「【0035】
図5は別の形態における加熱シーケンスと加熱条件およびそれら加熱プログラム進行中の食品の温度チャートである。
【0036】
加熱シーケンスが複数の加熱ステップで構成されている場合、例えば最初のステップを(S1)次のステップを(S2)とする。グラタン等の加熱の場合、S1は電波と下ヒーターのみの加熱シーケンスで加熱して食品の温度を上げる加熱ステップとしてS1、次に食品の表面に焦げ目をつけるため上ヒーターのみの加熱シーケンスのステップS2が存在する。初期の加熱プログラムの終了時間をT1とした場合、加熱ステップS1の段階の任意の時間T1’時点で、残り時間T2が10分であったとする。この残り時間10分を加熱時間設定手段にて、8分に変更することができるが、この時、変更された加熱時間に対応するシーケンスは最終加熱ステップのシーケンスS2である。もちろん、加熱時間設定手段により、加熱時間が初期加熱プログラム設定時間より長く設定された場合、すなわち、上記実施例では、残り時間10分を12分に延長した場合でも同じである。
【0037】
また、一つの加熱プログラム中に複数の加熱シーケンスに対応する加熱ステップが存在する場合、加熱条件変更を行った時点の加熱シーケンスに対応する加熱ステップの加熱条件をのみを変更するほうが調理上都合のよい場合もある。例えば前記グラタンの加熱において、ステップ1にて内部の温度が十分に上がっていないと判断した場合、ステップ1に対応する電波と下ヒーターの加熱シーケンスのみが任意に延長可能となる。この場合、現在の加熱ステップや、その加熱条件を表示手段に表示することが望ましい。
【0038】
また、複数の加熱シーケンスに対応する加熱ステップが存在する場合、加熱条件変更を行った時点以降の加熱シーケンスの加熱条件をすべて変更する。例えば初期に設定された加熱プログラムで想定していた食品の量に比べ、半分の量であった場合、任意の時間に、加熱時間などの加熱条件を初期に設定された加熱プログラムの加熱条件の50%に設定すると、それ以降の各加熱ステップの加熱条件がそれぞれ50%の加熱条件で終了する。」





(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
ア 後者の「加熱調理器2」は、前者の「加熱装置」又は「自装置」に相当し、以下同様に、「弁当様食材3の食品6」は「飲食品」に、「加熱パターン7」は「加熱情報」に、「記憶装置10」は「記憶部」に、「伝達する」は「取得する」に、「通信装置15」は「加熱情報取得部」に、「サーバ1」は「コンピュータ」に、「読み取る」は「取得する」に、「読み取り手段12」は「加熱指示情報取得部」に、「制御装置14」は「加熱制御部」に、「マイクロ波の出力装置13」は「加熱部」に、それぞれ相当する。

イ 後者の「弁当様食材3の食品6に最適な加熱出力、加熱時間、提供温度等のデータである加熱パターン7」は、前者の「加熱方法の種類と、当該種類の加熱方法により加熱すべき加熱時間とが含まれる加熱情報」に、「少なくとも所定の加熱時間が含まれる加熱情報」という点で一致する。

ウ 後者の「加熱パターン7を示す識別符合4であって、サーバー1に問い合わせることが可能な識別符合4」は、「読み取り手段12」で「読み取」られて、制御に用いられるものであり、そのために識別符号4がコンピュータで読み取り可能となっていることは明らかであるから、前者の「コンピュータで読み取り可能に示す加熱指示情報」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「加熱装置によって加熱されることにより提供可能な状態に調理される飲食品の、加熱装置による加熱前の調理状態に応じて定められた情報であって、飲食品を提供可能な状態にするのに用いられる少なくとも所定の加熱時間が含まれる加熱情報を記憶する記憶部から、前記加熱情報を取得する加熱情報取得部と、
自装置が加熱する飲食品の前記加熱情報を示す加熱指示情報であって、コンピュータで読み取り可能に示す加熱指示情報を取得する加熱指示情報取得部と、
前記加熱情報取得部が取得する前記加熱情報と、前記加熱指示情報取得部が取得する前記加熱指示情報とに基づいて、飲食品の加熱を制御する加熱制御部と、
前記加熱制御部の制御に基づいて、前記飲食品を加熱する加熱部と、
を備える加熱装置」

[相違点1]
「少なくとも所定の加熱時間が含まれる加熱情報」関し、本件補正発明では、「加熱方法の種類と、当該種類の加熱方法により加熱すべき加熱時間とが含まれる加熱情報」であり、「前記加熱方法には、マイクロ波によって加熱する方法、ヒーターによって加熱する方法、蒸気によって加熱する方法のうち、少なくとも1つが含まれ」るのに対して、引用発明では、「弁当様食材3の食品6に最適な加熱出力、加熱時間、提供温度等のデータである加熱パターン7」である点。

[相違点2]
本件補正発明では、「前記加熱制御部は、前記加熱方法のいずれかである第1の方法により前記飲食品を加熱する第1のパターン、又は前記第1の方法により前記飲食品を加熱した後、前記加熱方法のいずれかであって前記第1の方法とは異なる第2の方法により前記飲食品を加熱する第2のパターンのいずれかのパターンにより前記飲食品を加熱する」のに対して、引用発明では、そのような構成を有することは特定されていない点。

(4)判断
ア 相違点1について
上記相違点1について検討する。
飲食品を加熱する加熱装置において、マイクロ波によって加熱する方法、ヒーターによって加熱する方法、蒸気によって加熱する方法及びこれらの2つ以上を組み合わせた加熱する方法などの異なる種類の加熱方法を備え、飲食品に応じた種類の加熱方法により加熱を行うように、制御することは、上記(2)イ〜カに摘記した引用文献2〜6の記載から理解できるように、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
そして、引用発明と周知技術1とは、飲食品に応じた加熱条件で飲食品を加熱を行う点で共通しており、引用発明において、マイクロ波による加熱以外の加熱方法も採用することが可能である(引用文献1の段落0109を参照。)から、引用発明において、提供する飲食品に応じた加熱態様を考慮して、同じ加熱調理器に係る技術分野の周知技術1を適用し、加熱パターン7(加熱情報)に加熱方法の種類を含み、前記加熱方法には、マイクロ波によって加熱する方法、ヒーターによって加熱する方法、蒸気によって加熱する方法のうち、少なくとも1つが含まれるようにし、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
引用発明において、周知技術1を適用することにより、マイクロ波によって加熱する方法、ヒーターによって加熱する方法及び蒸気によって加熱する方法(前記加熱方法)のいずれかである第1の方法により弁当様食材3の食品6(飲食品)を加熱する第1のパターンにより前記弁当様食材3の食品6を加熱することになるから、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
仮に、本件補正発明において、「前記第1の方法により前記飲食品を加熱した後、前記加熱方法のいずれかであって前記第1の方法とは異なる第2の方法により前記飲食品を加熱する第2のパターン」により前記飲食品を加熱することも必須の事項であるとして検討する。
飲食品を加熱する加熱装置において、マイクロ波によって加熱する方法、ヒーターによって加熱する方法、蒸気によって加熱する方法及びこれらの2つ以上を組み合わせた加熱する方法などの異なる種類の加熱方法を備え、飲食品に応じた種類の加熱方法により加熱を行うにあたり、さらに前記異なる種類の加熱方法のいずれかである前記第1の方法により前記飲食品を加熱した後、前記異なる種類の加熱方法のいずれかであって前記第1の方法とは異なる第2の方法により前記飲食品を加熱する第2のパターンにより前記飲食品を加熱することは、上記(2)エ〜カに摘記した引用文献4(特に第2図のタイムチャートの説明)、引用文献5(特に段落0020〜0028、図4及び図5)及び引用文献6(特に段落0035、0036及び図5)の記載から理解できるように、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明と周知技術2とは、飲食品に応じた加熱条件で飲食品を加熱を行う点で共通しており、引用発明において、提供する飲食品に応じた加熱態様を考慮して、同じ加熱調理器に係る技術分野の周知技術2を周知技術1と共に適用し、制御装置14(加熱制御部)が、マイクロ波によって加熱する方法、ヒーターによって加熱する方法、蒸気によって加熱する方法及びこれらの2つ以上を組み合わせた加熱する方法などの異なる種類の加熱方法(前記加熱方法)のいずれかである第1の方法により弁当様食材3の食品6(飲食品)を加熱した後、前記異なる種類の加熱方法のいずれかであって前記第1の方法とは異なる第2の方法により前記弁当様食材3の食品6を加熱する第2のパターンにより前記弁当様食材3の食品6を加熱するようにし、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 請求人の主張について
請求人は、令和3年9月3日に提出した意見書の3ページ17〜32行において、次の主張をする。
「(2)引用文献との対比
ここで、審判長殿の引用する引用文献1に記載の技術は、「需要者の望むような多様なメニューや複数の食品の混在した弁当様食材で、複数の食品毎に異なる提供温度を達成するといった要求」に応えるため、複数の小部屋に分割された容器を用い、それぞれの小部屋の位置情報と、小部屋に載置された食材の情報に応じて、異なる出力により加熱するものであると思料します(引用文献1段落0004、段落0033、図8等参照)。つまり、引用文献1に記載の技術は、弁当の容器の小部屋ごとに調理方法(加熱出力)を異ならせ、それぞれの食材に適した加熱をするという技術的思想であると考えられます。」
「引用文献1に記載の技術によれば、弁当の容器の小部屋ごとに調理方法(加熱出力)を異ならせることはできるかもしれませんが、第1の方法により加熱した後に、更に第1の方法とは異なる第2の方法により加熱することは記載されていないものと思料します。したがって、引用文献1には、少なくとも本願請求項1に係る加熱装置が備える構成要件1Fについては、記載も示唆もされていないものと思料します。」
「引用文献1には構成要件1Fについて記載も示唆もされていないため、引用文献1に基いて、本願請求項1に係る加熱装置を、容易に想到することができたものではなく、本願請求項1について理由1の拒絶理由が解消しているものと思料します。」と主張する。
しかし、構成要件1F(すなわち上記相違点2に係る本件補正発明の構成)は、上記イで検討したとおり、引用発明に周知技術1を適用することにより、又は、引用発明に周知技術1及び周知技術2を適用することにより、当業者が容易に想到し得たことであるから、請求人の上記主張は採用できない。

エ 効果について
そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1の奏する作用効果、又は、引用発明、周知技術1及び周知技術2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1に基いて、又は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜4に係る発明は、令和2年4月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 当審において最後として通知した拒絶の理由
当審において最後として通知した拒絶の理由の一部は、以下のとおりである。
<理由1(進歩性)について>
本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:特開2002−156117号公報
引用文献2:特開2002−63254号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2010−55489号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開平3−221724号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開平5−141668号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開2004−308981号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
当審において最後として通知した拒絶の理由で引用された引用文献1〜6の記載及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明と引用発明とを、前記第2の[理由]2(3)の検討を踏まえて対比すると、以下の相違点1’で相違し、その余は一致するものと認める。
[相違点1’]
「少なくとも所定の加熱時間が含まれる加熱情報」に関し、本願発明では、「加熱方法の種類と、当該種類の加熱方法により加熱すべき加熱時間とが含まれる加熱情報」であるのに対して、引用発明では、「加熱方法の種類と、当該種類の加熱方法により加熱すべき加熱時間とが含まれる加熱情報」である点。
そして、前記第2の[理由]2(4)の検討を踏まえると、上記相違点1’に係る本願発明の構成は、引用発明に周知技術1を適用することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-12-17 
結審通知日 2021-12-21 
審決日 2022-01-05 
出願番号 P2016-160589
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24C)
P 1 8・ 575- WZ (F24C)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 平城 俊雅
槙原 進
発明の名称 加熱装置  
代理人 松本 裕幸  
代理人 川渕 健一  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 小林 淳一  

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