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審決分類 審判 訂正 特29条の2 訂正しない A61M
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない A61M
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A61M
管理番号 1382843
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2020-10-23 
確定日 2022-03-24 
事件の表示 特許第6566160号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第6566160号(以下「本件特許」という。)は、平成29年6月2日(優先権主張 平成28年6月3日)を国際出願日とする特願2018−521150号の一部を平成31年4月26日に新たな特許出願(特願2019−86620号)としたものである。その後、令和1年8月9日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和1年8月28日)がされ、令和2年10月23日に本件訂正審判が請求されたものである。これに対し、当審において令和2年12月11日付け訂正拒絶理由を通知したところ、令和3年1月15日付け意見書が提出された。

第2 請求の趣旨
本件訂正審判は、本件特許の特許請求の範囲を本件審判請求書(以下、「請求書」という。)に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、3について訂正することを認める、との審決を求めるものであって、その請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。

1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2において、「前記係止片は、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、」とあるのを、「前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、」と訂正する。

2.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3において、「前記係止片は、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される」とあるのを、「前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記拡開部の内部にあって、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される」と訂正する。

第3 当審の判断
1 訂正の目的
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項2の「係止片」を「弾性変形可能」なものに限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項3の「係止片」を「弾性変形可能で」あって「拡開部の内部にあ」るものに限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(1)訂正事項1について
願書に添付した明細書には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した(以下同様。)。
ア 「係止片74,74が針ハブ本体26のテーパ状面34により外周側へ押圧されつつ係止爪78,78がテーパ状面34に対して摺動せしめられる。これにより、係止片74,74には内周側への弾性復元力が付勢力として及ぼされる。」(【0069】)

イ 「係止片74,74の係止爪78,78が針ハブ本体26のテーパ状面34を乗り越えて弾性復帰して、係止凹部36内に入り込むようになっている。」(【0070】)

ウ 「係止部(係止片74,74)の外周側に向かって突出するように設けられていてもよい。尤も、変形量制限部は、拡径部の内周面に設けられる態様に限定されるものではなく、例えば係止部の外周面に設けられて、係止部の外周側への弾性変形時に拡径部の内周面に当接することで、その変形が制限されるようになっていてもよい。」(【0104】)

以上のように、係止片が弾性変形可能であることは、願書に添付した明細書に記載されているから、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2における、「係止片」を「弾性変形可能」なものとする訂正は、上記(1)において検討したとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

また、願書に添付した明細書には、以下の事項が記載されている。
ア 「拡開部が、互いに直交する小径部と大径部とを備えた略楕円筒形状とされており、該大径部の周壁で覆われた内部に前記係止部が設けられている」(【0023】)

イ 「拡開部としての拡径部64」(【0054】)
「拡径部64の内部には、断面が、図6中の左右方向寸法より図6中の上下方向寸法の方が大きくされた略長円形状とされて、且つ、基端側に向かって図6中の上下方向寸法が次第に大きくなる内部空間70が、針先プロテクタ10を貫通する内孔60の基端側に形成されている。」(【0056】)
「かかる内部空間70内において、周壁58の内周面65からは、内部に突出する一対の係止部としての係止片74,74が一体的に形成されている。」(【0058】)

ウ 「係止片74,74が、かかる略楕円形状の拡径部64を構成する大径部68,68の内側に設けられている」(【0078】)

以上のように、係止片が拡開部の内部にあることは、願書に添付した明細書に記載されているから、訂正事項2における、「係止片」を「拡開部の内部にあ」るものとする訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

したがって、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、上記1(1)で検討したとおり、訂正前の特許請求の範囲の請求項2の「係止片」を限定するものであり、また、発明を特定するための事項の入替えや発明の対象の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、上記1(2)で検討したとおり、訂正前の特許請求の範囲の請求項3の「係止片」を限定するものであり、また、発明を特定するための事項の入替えや発明の対象の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
よって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。

4 訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
上記1で検討したとおり、訂正事項1及び2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(1)訂正後の発明
訂正後の請求項2及び3に係る発明(以下、「本件訂正発明2」及び「本件訂正発明3」という。)は、次のとおりである。

【請求項2】
針先を有する金属製の留置針と、
前記留置針の基端側に設けられた針ハブと、
筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え、
該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において、該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって、
前記針先プロテクタは、
針軸方向に延びる円筒状部を有し、
前記円筒状部の基端側には、前記係止片と、前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ、
前記大径部の周壁に、前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ、
前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、
前記小径部の外周面に凹部を設けることにより、前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は、前記凹部を設ける前に比べて小さくされている、留置針組立体。

【請求項3】
針先を有する留置針と、
前記留置針の基端側に設けられた針ハブと、
筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え、
該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において、該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって、
前記針先プロテクタは、
その先端部分に、翼状部を有し、
針軸方向に延びる円筒状部を有し、
前記円筒状部の基端側には、前記係止片と、前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ、
前記大径部の周壁に、前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ、
前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記拡開部の内部にあって、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、
前記小径部の外周面に凹部を設けることにより、前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は、前記凹部を設ける前に比べて小さくされている、留置針組立体。

(2)甲第6号証の記載事項及び甲第6号証に記載された発明について
請求人は、審判請求書に添付して、次の甲第6号証を提出している。
甲第6号証:特願2016−88440号(特開2017−196060号公報)
以下、「甲第6号証」を「甲6」といい、甲6の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された発明を「甲6発明」という。

甲6は、本件特許の優先日(平成28年6月3日)前に特許出願(平成28年4月26日)され、本件特許の優先日後に公開(平成29年11月2日)されたものであって、その出願人(株式会社トップ)は本件特許に係る出願の出願人(ニプロ株式会社)とは異なる。

甲6には、以下の記載がある。
(ア)「【0030】
図1に示すように、本実施形態のプロテクタ付き医療用針1は、前端が鋭利な針管2を支持するハブ3と、ハブ3が組み付けられる筒状のプロテクタ4と、プロテクタ4に外嵌された一対の翼状部材5とを備える。
【0031】
プロテクタ4はポリプロピレン樹脂等の射出成形により形成されて針管2を収容可能とされており、翼状部材5は塩化ビニル樹脂等の軟質樹脂の射出成形により形成されている。
【0032】
図2Aに示すように、ハブ3は、後端に可撓性チューブ6が接続されるハブ基部7と、該ハブ基部7の先端から先端方向に延びる円筒状の小円筒部71とからなる。この小円筒部71の先端に、針管2の後端部が支持される。」

(イ)「【0035】
ハブ基部7の後端部には、図2A及び図2Cに示すように、小円筒部71の中心軸に対して対称となるように、1対の腕部73,73が設けられている。腕部73,73は、ハブ基部7との間に間隔を存して、小円筒部71の長さ方向に沿って設けられている。腕部73の先端部には頸部73aを介して鉤部73bが設けられており、鉤部73bの先端には小円筒部71に近接する側を鋭利とする傾斜面73cが先端側から後端側に向けて形成されている。」

(ウ)「【0037】
図2A乃至図2Cに示すように、小円筒部71の先端部の外周面上には、第1突出部74と第2突出部75とが設けられている。第1突出部74は、小円筒部71の先端に設けられ、第2突出部75は、第1突出部74より後端側に、第1突出部74との間に第1の所定間隔を存して設けられている。
【0038】
第1突出部74は、先端側から見たときに、腕部73,73を結ぶ線と直交する線(本発明の第1の軸線に相当)に沿って突出している。また、
第2突出部75は、先端側から見たときに、腕部73,73を結ぶ線(本発明の第2の軸線に相当)に沿って突出している。
【0039】
第1突出部74は、先端部にスロープ74aを備え、上下(図2A参照)対称に1対設けられている。スロープ74aは、先端から後端に向けて徐々に高さが高くなるよう形成されている。また、第2突出部75は、後端部にスロープ75aを備え、左右(図2A参照)対称に1対設けられている。スロープ75aは、先端から後端に向けて徐々に高さが低くなるよう形成されている。」

(エ)「【0043】
図3A乃至図3Cに示すように、プロテクタ4は、筒状の大円筒部41の後端部に平面視(図3B参照)において、先端側から後端側に次第に拡幅する拡幅部42を備える。大円筒部41の内部空間は、小円筒部71(突出部74,75を含む)が摺動可能とされている。
【0044】
拡幅部42の後端部には、腕部73,73が挿入される挿入部42a,42aを備えている。挿入部42aは、側方に窓部42bを備えており、挿入部42aに挿入された腕部73の鉤部73bが窓部42bに係止されるようになっている。即ち、ハブ基部7の腕部73、鉤部73bと、プロテクタ4の挿入部42a、窓部42bとにより第1係止手段が構成される。
【0045】
また、図3A乃至図3Cに示すように、プロテクタ4の後端部には、突片43,43と側壁部44,44とが設けられている。
【0046】
図3A及び図3Bに示すように、突片43,43は、プロテクタ4の軸線に向かって傾斜しつつ後端側に延びる板状部材である。突片43,43は、大円筒部41の後端部から連続して、左右(図3A参照)対称に一対設けられている。なお、この左右方向が、本発明におけるプロテクタ4の軸線と直交する第3の軸線に相当する。
【0047】
また、突片43は、プロテクタ4の軸線から外側に凸状に湾曲されている。一対の突片43,43の突端間は、第2突出部75,75の高さ以下の距離に形成されている。なお、本実施形態では、一対の突片43,43の突端間の距離は、小円筒部71の直径と実質的に等しい長さに形成されている。
【0048】
プロテクタ4は、前述のようにポリプロピレン樹脂からなるので、突片43は、大円筒部41の軸線から離れる方向(図3Aの左右方向)に弾性的に変形することができる。」

(オ)「【0055】
針管2が血管等に穿刺されるときには、図4Aに示すように、ハブ基部7の腕部73の先端に設けられた鉤部73bがプロテクタ4の窓部42bに係止されることにより、針管2がプロテクタ4から突出した状態とされている。」

(カ)「【0059】
その後、さらにハブ3を後退させて、図示を省略した針管2を大円筒部41内に収納すると、図5Bに示すように、突片43,43は第2突出部75,75を乗り越え、それ自体の弾性力により原状に復帰して、第1突出部74と第2突出部75と間の間隙に嵌合される。これにより、平面視(図5B参照)において、突片43,43の後端は、第2突出部75,75の先端により係止される。」

(キ)「【0062】
この結果、突片43及び側壁部44と突出部74,75との係止は、突片43を外方に変形させない限り解除不能であるので、大円筒部41内に収納された針管2は再突出することがなく、誤穿刺を防止することができる。」


(ク)「



(ケ)「



(コ)図1及び図3から、プロテクタの大円筒部41は、針管2の軸方向に延びることが看て取れる。

(サ)図3から、拡幅部42は、大円筒部41より大径で突片43よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えていることが看て取れる。

(シ)図1及び図3から、窓部42bは、拡幅部42の大径部の周壁に設けられていることが看て取れる。

(ス)図3及び【0046】の記載から、突片43は、プロテクタ4の軸線に向かって傾斜した内側面を有し、拡幅部42の内部にあって、大径部側に大円筒部41と一体形成される一方、小径部側には設けられていないことが看て取れる。

(セ)図1及び【0030】の記載から、プロテクタ4は、その先端部分に翼状部材5を有していることが看て取れる。

上記(ア)〜(セ)の各記載事項を整理すると、甲6には、次の甲6発明が記載されている。

「前端が鋭利な針管2と
前記針管2の後端部を支持するハブ3と、
筒状であって、前記ハブ3に組み付けられて該針管2を収容可能なプロテクタ4とを備え、
該針管2の前端側へ該プロテクタ4が移動せしめられた所定位置において、該プロテクタ4に設けられた突片43が該ハブ3に対して係止されることで該針管2の再突出及び誤穿刺が防止されるようになっているプロテクタ付き医療用針1であって、
前記プロテクタ4は、
その先端部分に、翼状部材5を有し、
針管2の軸方向に延びる大円筒部41を有し、
前記大円筒部41の後端部には、前記突片43と、前記大円筒部41より大径で前記突片43よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡幅部42とが設けられ、
大径部の周壁に、前記ハブ3が係止されて前記針管2が突出した状態に保持される窓部42bが設けられ、
前記突片43は、弾性的に変形することができ、前記プロテクタ4の軸線に向かって傾斜した内側面を有し、拡幅部42の内部にあって、前記大径部側に前記大円筒部41と一体形成される一方、前記小径部側には設けられていない、プロテクタ付き医療用針1。」

(3)甲6発明に基づく特許法第29条の2(拡大先願)について
ア 本件訂正発明2について
(ア)対比
甲6発明の「前端が鋭利な針管2」と本件訂正発明2の「針先を有する金属性の留置針」とは、「針先を有する留置針」という限りにおいて一致する。そして、甲6発明の「針管2」は本件訂正発明の「留置針」に相当し、以下同様に、「ハブ3」は「針ハブ」に、「針管2の後端部を支持するハブ3」は「留置針の基端側に設けられた針ハブ」に、「プロテクタ4」は「針先プロテクタ」に、「筒状であって、前記ハブ3に組み付けられて該針管2を収容可能なプロテクタ4」は「筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタ」に、「前端側」は「針先側」に、「突片43」は「係止片」に、「針管2の再突出及び誤穿刺」は「針先の再露出」に、「プロテクタ付き医療用針1」は「留置針組立体」に、「針管2の軸方向」は「針軸方向」に、「大円筒部41」は「円筒状部」に、「後端部」は「基端側」に、「拡幅部42」は「拡開部」に、「係止」は「係合」に、「針管2が突出した状態」は「留置針の針先が突出状態」に、「窓部42b」は「針ハブ係合部」に、「弾性的に変形することができ」は「弾性変形可能で」に、「プロテクタ4の軸線に向かって傾斜した内側面」は「針ハブに向かって傾斜した内側面」に、それぞれ相当する。

したがって、本件訂正発明2と甲6発明とは、
「針先を有する留置針と、
前記留置針の基端側に設けられた針ハブと、
筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え、
該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において、該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって、
前記針先プロテクタは、
針軸方向に延びる円筒状部を有し、
前記円筒状部の基端側には、前記係止片と、前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ、
前記大径部の周壁に、前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ、
前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられていない、留置針組立体。」

という点で一致し、以下の点で一応相違する。

[相違点1]
留置針に関し、本件訂正発明2は金属製であるのに対し、甲6発明はそのように特定されない点。

[相違点2]
小径部の外周面に関し、本件訂正発明2は凹部を設けることにより、前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は、前記凹部を設ける前に比べて小さくされているのに対し、甲6発明はそのように構成されているか不明な点。

(イ)上記相違点についての検討
a[相違点1]について
留置針組立体において、留置針を金属製とすることは、文献を挙げるまでもなく周知、慣用技術である。甲6発明は、針管2の材料について特定の例示はないが、実施に際し、針管の材料を具体的に金属製とすることは、上記周知、慣用技術に照らせば、単なる設計的事項である。よって、上記相違点1は周知、慣用技術を単に付加した設計上の微差にすぎず、それにより新たな効果を奏するものともいえないから、実質的な相違点とはいえない。

b[相違点2]について
相違点2に係る本件訂正発明2の構成について、「凹部を設ける前」のものがどのような形状構造のものであるのかが明かでないし、そのような「凹部を設ける前」のものとの相対的な寸法が規定されるのみであるところの「小径部の肉厚寸法」は、具体的な寸法が何ら特定されていないものと解さざるを得ない。そうすると、本件訂正発明2の凹部は、その形状、大きさ、深さ等に特段の特定のない凹形状というほかなく、また、当該凹部を設けたことの作用、効果も本件特許の発明の詳細な説明を参酌しても何ら記載されていない。むしろ、ほんのわずかに凹んだ小さな凹形状のものも含むものとなっているのであるから、そのようなものが何らかの作用、効果を奏するものとは到底認められない。したがって、当該凹部の有無は、技術的に意味がない単なる外形上の微差というほかなく、それにより何らかの作用、効果を奏するものということはできないから、実質的な相違点とはいえない。

(ウ)小括
以上より、本件訂正発明2は、甲6発明と実質同一であるといえる。
したがって、本件訂正発明2は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

イ 本件訂正発明3について
本件訂正発明3と甲6発明とを対比すると、上記ア(ア)に示した事項に加え、さらに、甲6発明の「翼状部材5」は本件訂正発明3の「翼状部」に相当し、甲6発明の「突片43」は「拡幅部42の内部にあ」る点は本件訂正発明3の「係止片」は「拡開部の内部にあ」る点に相当する。
よって、両者は、上記ア(ア)の相違点1、2において相違し、その余の点で一致する。

そして、上記相違点1、2についての判断は、上記ア(イ)に示したとおりであるから、本件訂正発明3は、甲6発明と実質同一であるといえる。
したがって、本件訂正発明3は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

ウ 請求人の主張について
(ア)出願審査の経緯を参酌すべきとの主張について
請求人は、甲6発明に基づく拡大先願違反の拒絶理由は本件特許の出願審査においては通知されていないという経緯を述べて、本件審判においても当該経緯を参酌すべき旨縷々主張する(令和3年1月15日付け意見書5.(2)ア及びイ)。
しかしながら、本件審判は、出願審査とは別個の手続であるところ、出願審査の経緯に拘束されないことはいうまでもなく、また、特許法第153条第1項に規定されるとおり、審判においては職権による審理が認められているのであるから、本件審判に係る訂正が訂正要件を満たすかどうかの審理にあたっては、職権調査によって得られた証拠に基づいて審理判断することは当然に許される。
したがって、請求人の上記主張は当を得たものではない。

(イ)相違点2に係る構成が「新たな効果」を奏するという主張について
請求人は、
「本件訂正発明には、凹部について『小径部の外周面に凹部を設けることにより、前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は、前記凹部を設ける前に比べて小さくされている』と記載されています。この記載は、「(拡開部の)小径部の外周面に凹部を設ける」という構成が、その構成により「前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は、前記凹部を設ける前に比べて小さくされている」という作用を奏することを明確化したものです。
また、拡開部の肉厚寸法を小さくすることによる効果として、明細書の段落0078には、「(大径部68,68が)厚肉となることも回避されて、成形時の部材内への気泡の混入などによる寸法誤差の発生や品質精度の低下が抑えられる」との記載があります。ここで、段落0078の記載は、直接には拡開部の「大径部」が厚肉となることを回避した効果についての記載でありますが、樹脂が「厚肉になることを回避する」、つまり、樹脂の肉厚を薄くするとの構成を採用することで、「成形時の部材内への気泡の混入などによる寸法誤差の発生や品質精度の低下が抑えられる」との効果を奏することを記載しているのですから、この記載から、拡開部の「小径部」においても肉厚寸法を小さくして厚肉となることを回避すれば同様の効果が得られることは明らかです(この点は、上記した審査過程において、審査官殿も同様な認識を持たれたものと思料致します。)。
したがって、明細書の記載に接した当業者が本件訂正発明を見れば、本件訂正発明における凹部が、小径部の肉厚寸法を小さくし、成形時の部材内への気泡の混入などによる不具合を抑えることを意図した構成であることを理解できます。」
と主張する(令和3年1月15日付け意見書5.(2)ウ)。
しかしながら、本件訂正発明2及び3の「前記小径部の外周面に凹部を設けることにより、前記凹部における前記小径部の肉厚寸法は、前記凹部を設ける前に比べて小さくされている」という構成は、本願の願書に添付された図5の記載のみに依拠するものであるところ(甲32:「令和1年6月19日の意見書」2(5)参照)、当該図5の小径部に係る描画からは、一応そのような構成が見受けられるという程度であって、当該描画のみからは、「凹部が設けられていないものに対して凹部を設けた」ということも含め、その具体的な形状、大きさ、深さや、そのような形状・構造とした目的及び作用効果を把握することはできない。そして、明細書の発明の詳細な説明中にも、そのことについての説明は何ら見当たらない。
したがって、本件訂正発明2及び3の上記構成は、請求人が主張するような「作用を奏することを明確化」しようとするものと解することはできず、上記ア(イ)bで述べたとおり、凹部の形状、大きさ、深さ等に特段の特定のない単なる凹形状と理解するほかないのであって、ほんのわずかに凹んだ小さな凹形状のものも含むものとなっているところ、何らかの機能・作用を特定した構成であるとは認めることはできない。
また、請求人は、大径部の構成について記述された効果が小径部についても当てはまる旨主張しているが、上述のとおり、図5の小径部における描画からは、その具体的な形状、大きさ、深さや、そのような形状・構造とした目的及び作用効果を把握することはできず、明細書の発明の詳細な説明中にも何ら記述がないところ、そのようなものについて、別の箇所(大径部)の構成が奏する効果を援用できる理由はない。仮に、図5の小径部の描画が何らかの効果を奏するものであるとしても、それは、せいぜい、看取された形状・構造から自明な程度の効果が推認されるに留まるのであり、結局、本件訂正発明2及び3の上記構成は、単なる外形上の微差の範囲を超えるものとはならない。
したがって、請求人の上記主張は当を得たものではない。

エ まとめ
以上より、本件訂正発明2及び3は、いずれも特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、訂正事項1及び2は、特許法第126条第7項の規定に適合しない。

第4 むすび
以上のとおり、訂正事項1及び2は、特許法第126条第7項の規定に適合しないから、これらの訂正事項を含む本件訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-03-15 
結審通知日 2021-03-17 
審決日 2021-03-31 
出願番号 P2019-086620
審決分類 P 1 41・ 16- Z (A61M)
P 1 41・ 856- Z (A61M)
P 1 41・ 851- Z (A61M)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 宮崎 基樹
倉橋 紀夫
登録日 2019-08-09 
登録番号 6566160
発明の名称 留置針組立体  
代理人 田村 啓  
代理人 大釜 典子  
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