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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1382849
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-04 
確定日 2022-03-22 
事件の表示 特願2018−240546「タッチ表示装置,タッチ駆動回路,及びタッチ駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月22日出願公開,特開2019−121383,請求項の数(12)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成30年12月25日(パリ条約による優先権主張2017年12月29日,韓国(KR))の出願であって,令和2年1月17日付けで拒絶理由通知がされ,同年4月21日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年8月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和3年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和3年9月22日付けで当審から最後の拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)がされ,同年12月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1〜12に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」〜「本願発明12」という。)は,令和3年12月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数のタッチ電極が配置されたタッチパネルと,
複数のタッチ電極のうちの1つ以上にタッチ駆動信号を供給するタッチ駆動回路とを含み,
前記複数のタッチ電極は第1タッチ電極と,第2タッチ電極と,第3タッチ電極と,を含み,
前記第1タッチ電極及び前記第2タッチ電極は第1グループに含まれ,前記第3タッチ電極は第1グループと異なる第2グループに含まれ,
a)前記第2タッチ電極での時定数が前記第1タッチ電極での時定数より小さく,前記第2タッチ電極での時定数が前記第3タッチ電極での時定数より大きい場合と,
b)前記第2タッチ電極が前記第1タッチ電極に比べて前記タッチ駆動回路の近くに位置し,前記第3タッチ電極が前記第2タッチ電極に比べて前記タッチ駆動回路の近くに位置する場合と,
c)前記第2タッチ電極が前記第1タッチ電極に比べて前記タッチ駆動信号の信号伝達長さが短く,前記第3タッチ電極が前記第2タッチ電極に比べて前記タッチ駆動信号の信号伝達長さが短い場合のうち,少なくとも1つの場合に,
前記第2タッチ電極に供給されるタッチ駆動信号の駆動周波数は前記第1タッチ電極に供給されるタッチ駆動信号の駆動周波数と同じであり,前記第3タッチ電極に供給されるタッチ駆動信号の駆動周波数は前記第1タッチ電極に供給されるタッチ駆動信号の駆動周波数より高く,
前記第1タッチ電極及び前記第3タッチ電極は,第1マルチプレクサに電気的に連結され,前記第2タッチ電極は,前記第1マルチプレクサとは異なる第2マルチプレクサに電気的に連結され,
前記第1マルチプレクサは,少なくとも2つの周波数を有する複数のタッチ駆動信号を出力し,前記第2マルチプレクサは,少なくとも2つの周波数を有する複数のタッチ駆動信号を出力する,タッチ表示装置。」

なお,本願発明2〜10は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明11は,本願発明1のタッチ表示装置に含まれるタッチ駆動回路についての発明であり,本願発明12は,本願発明11に対応するタッチ駆動方法の発明であり,本願発明11とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2014−174851号公報)には,次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下,同様である。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,タッチセンサ装置(タッチパネルとも呼ばれる),タッチセンサ機能を備える表示装置,及び電子機器等の技術に関する。」

「【0082】
<実施の形態1A>
上記比較例を踏まえ,図1乃至図9を用いて,本発明の実施の形態1Aであるタッチセンサ装置1aについて説明する。実施の形態1Aでは,タッチ駆動部の回路からのタッチ駆動信号Stとして,タッチ駆動電極Txの引き回し配線である配線HTの長さが異なるタッチ検出エリアAsの複数の各々のタッチ駆動電極Txごとに,当該配線HTの時定数に合わせて最適な時間に調整した複数Mの種類のパルスPであるパルスP1乃至パルスPMを生成してタッチ駆動電極Txに印加する構成を示す。
【0083】
[(1)パネル部平面]
図1は,実施の形態1Aのタッチセンサ装置1aの概要として,電極,配線,及び回路部を含むXY平面の構成例を示す。タッチセンサ装置1aのパネル部5Aは,XY平面において,タッチ検出エリアAs,周辺エリアAf,及び接続辺部Acを有する。パネル部5Aの断面構成は後述の図7で示す。パネル部5Aは,本例ではY方向に長い長方形で示す。
【0084】
パネル部5Aは,タッチ検出エリアAsである長方形の面において,Z方向の第1層においてX方向に平行して延在しY方向で並置される複数のタッチ駆動電極Txと,Z方向の第2層においてY方向に平行して延在しX方向で並置される複数のタッチ検出電極Rxとを有する。タッチ検出エリアAsにおいて複数のタッチ駆動電極Txと複数のタッチ検出電極Rxとの対により複数のタッチ検出単位Uがマトリクス状に構成される。タッチ検出領域Asにおいて,タッチ駆動電極Txとタッチ検出電極Rxとの電極対は,Z方向で所定距離で配置されつつZ方向からのXY平面視で交差する。当該電極対の交差部の付近に対応して形成される容量を,タッチ検出単位Uとして定義する。M本のタッチ駆動電極TxをY方向上側から順に,タッチ駆動電極Tx1,タッチ駆動電極Tx2,乃至タッチ駆動電極TxMで示す。N本のタッチ検出電極RxをX方向左側から順に,タッチ検出電極Rx1,タッチ検出電極Rx2,乃至タッチ検出電極RxNで示す。
・・・
【0087】
接続辺部Acに実装されるタッチセンサ回路50は,タッチ駆動部51と,タッチ検出部52とを含む。タッチ駆動部51は,タッチ検出エリアAsの複数のタッチ駆動電極Txに対して配線HTを通じてタッチ駆動信号StのパルスPを順次に印加する走査駆動によって行われるタッチ駆動を行う。タッチ検出部52は,タッチ検出エリアAsの複数のタッチ検出電極RxからのパルスPを,配線HRを通じて入力し,タッチ検出信号Srとして検出する。
・・・
【0093】
図1において,タッチ駆動部51からのタッチ駆動電極Txに対するタッチ駆動信号Stとして,M本の配線HTの時定数τである時点数τ1乃至時定数τMに応じて調整された複数Mの種類のパルスPであるパルスP1乃至パルスPMを印加する構成を示している。配線HTの時定数τとして,例えば配線HT1では時定数τ1,配線HT2では時定数τ2,配線HTMでは時定数τMとする。周辺エリアAfにおける配線HTの長さに応じて時定数τが異なり,τ1>τ2>……>τMである。接続辺Sc乃至タッチ駆動部51の回路から一番遠いタッチ駆動電極Tx1では,その配線HT1の時定数τ1が相対的に一番大きく,一番近いタッチ駆動電極TxMでは,その配線HTMの時定数τMが相対的に一番小さくなる。
【0094】
実施の形態1Aでは,タッチ駆動部51は,タッチ駆動信号StのパルスPとして,タッチ駆動電極Txの電極数かつ走査数であるMに対応した複数Mの種類のパルスPであるパルスP1乃至パルスPMを生成する。例えばタッチ駆動電極Tx1に印加するパルスP1は,後述の図3のように,配線HT1の時定数τ1に応じて調整された時間t1を持つ。タッチ駆動電極Tx2へのパルスP2は,配線HT2の時定数τ2に応じた時間t2を持つ。同様に,タッチ駆動電極TxMへのパルスPMは,配線HTMの時定数τMに応じた時間tMを持つ。各パルスPの時間tである時間t1乃至時間tMは,t1>t2>……>tMである。
・・・
【0101】
[(3)タッチ駆動シーケンス]
図3は,タッチ駆動部51からのタッチ検出エリアAsのタッチ駆動電極Txに対する走査駆動によるタッチ駆動のシーケンス例を示す。タッチ駆動部51は,タッチ検出エリアAsのタッチ駆動電極Txに対する走査駆動の際,タッチ駆動信号Stとして,例えばY方向上側のタッチ駆動電極Txから順次,即ちタッチ駆動電極Tx1,タッチ駆動電極Tx2,乃至,タッチ駆動電極TxM−1,及びタッチ駆動電極TxMの順に,タッチ駆動電極Txごとに対応付けられた異なる種類のパルスPを印加する。タッチ駆動電極Txごとに対応付けられた種類のパルスPを,パルスP1,パルスP2,乃至,パルスPM−1,及びパルスPMで示す。パルスP1乃至パルスPMの各々の時間tを,時間t1乃至時間tMで示す。時間tはパルス周期であり,周波数fは,f=1/tである。パルスP1乃至パルスPMの各々の周波数fを,周波数f1乃至周波数fMで示す。またタッチ検出感度を高めるため,1回の走査ごとに1つのタッチ駆動電極Txに対し,電極ごとに対応付けられた周波数fによるm個のパルスPが印加される。
【0102】
図3(a)は,1番目の走査対象であるタッチ駆動電極Tx1に対するタッチ駆動信号StのパルスP1,及びタッチ駆動電極Tx1のタッチ駆動時間T1を示す。パルスP1は,配線HT1の時定数τ1に基づいて規定された時間t1及び周波数f1を有する。タッチ駆動時間T1は,t1×mである。
【0103】
同様に,図3(b)は,2番目の走査対象のタッチ駆動電極Tx2へのパルスP2及びタッチ駆動時間T2を示す。パルスP2は,配線HT2の時定数τ1に基づいて規定された時間t2及び周波数f2を有する。パルスP2の時間t2はパルスP1の時間t1よりも短い。パルスP2の周波数f2はパルスP1の周波数f1よりも低い。タッチ駆動時間T2は,t2×mであり,T1>T2である。
【0104】
同様に,図3(c)は,M番目の走査対象のタッチ駆動電極TxMへのパルスPM及びタッチ駆動時間TMを示す。パルスPMは,配線HTMの時定数τMに基づいて規定された時間tM及び周波数fMを有する。パルスPMは,複数Mの種類のパルスPのうちで一番短い時間tM,及び一番低い周波数fMを持つ。タッチ駆動時間TMは,tM×mであり,T1>T2>……>TMである。」

「【図1】



「【図3】



以上によれば,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「タッチセンサ装置において,
タッチセンサ装置1aのパネル部5Aは,タッチ検出エリアAs,周辺エリアAf,及び接続辺部Acを有し,
パネル部5Aは,X方向に平行して延在しY方向で並置される複数のタッチ駆動電極Txと,Y方向に平行して延在しX方向で並置される複数のタッチ検出電極Rxとを有し,
接続辺部Acに実装されるタッチセンサ回路50は,タッチ駆動部51と,タッチ検出部52とを含み,タッチ駆動部51は,複数のタッチ駆動電極Txに対して配線HTを通じてタッチ駆動信号StのパルスPを順次に印加する走査駆動によって行われるタッチ駆動を行い,
タッチ駆動部51からのタッチ駆動電極Txに対するタッチ駆動信号Stとして,M本の配線HTの時定数τである時点数τ1乃至時定数τMに応じて調整された複数Mの種類のパルスPであるパルスP1乃至パルスPMを印加し,
1番目の走査対象であるタッチ駆動電極Tx1に印加するパルスP1は,配線HT1の時定数τ1に応じて調整された時間t1を持ち,タッチ駆動時間T1は,t1×mであり,
M番目の走査対象のタッチ駆動電極TxMへのパルスPMは,配線HTMの時定数τMに応じた時間tMを持ち,t1>tMであり,タッチ駆動時間TMは,tM×mであり,
1回の走査ごとに1つのタッチ駆動電極Txに対し,電極ごとに対応付けられた周波数fによるm個のパルスPが印加される,タッチセンサ装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2015−064854号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0026】
実施の形態1.
図2ないし図5は,本発明の実施の形態1に係るタッチスクリーン一体型表示装置の構成を示す図面である。
【0027】
本発明の実施の形態1に係るタッチスクリーン一体型表示装置は,図面に示すように,パネル100,ディスプレイドライバIC200及びタッチIC300を備える。
【0028】
まず,パネル100は,表示領域110と非表示領域120とに区分されている。表示領域110には,タッチスクリーン(図示せず)が内蔵されており,非表示領域120には,ディスプレイドライバIC200が内蔵されている。
【0029】
タッチスクリーンは,ユーザーのタッチ位置を感知する働きをするものであり,特に,本発明に適用されるタッチスクリーンは,共通電極を分割し,それを直接タッチ電極として活用し,タッチ電極とユーザーの入力との間に静電容量が形成されるようにすることにより,ユーザーのタッチ入力時に発生する静電容量の変化量を測定して,タッチを認識する方法で動作する自己静電容量方式のタッチスクリーンである。
【0030】
本発明の実施の形態1に係るパネル100は,2枚の基板の間に液晶層が挟まれた形に構成することができる。この場合,パネル100の下部基板には,複数のゲートラインと,ゲートラインと交差する複数のデータラインと,データラインとゲートラインとの交差部に形成される複数のTFT(Thin Film Transistor)と,TFTに接続された複数のピクセル電極とが形成されている。データラインとゲートラインとの交差構造により定義される複数のピクセルは,パネル100の下部基板にマトリクス状に配置される。
【0031】
上述したパネル100は,表示領域110にm個の駆動電極111を含む。m個の駆動電極111は,ディスプレイ駆動期間の間,各ピクセルに形成されたピクセル電極と共に液晶を駆動する共通電極として動作し,タッチ駆動期間の間,タッチIC300から印加されるタッチスキャン信号によってタッチ位置を感知するタッチ電極として動作する。
・・・
【0052】
また,ディスプレイドライバIC200は,m個の駆動電極111をグループに分割し,分割したグループ毎にタッチスキャン信号を印加するためのマルチプレクサを更に含むことができる。」

「【図2】



以上によれば,引用文献2には,以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「パネル100,ディスプレイドライバIC200及びタッチIC300を備えるタッチスクリーン一体型表示装置であって,
パネル100は,表示領域110と非表示領域120とに区分され,表示領域110には,タッチスクリーンが内蔵されており,
タッチスクリーンは,共通電極を分割し,それを直接タッチ電極として活用し,タッチ電極とユーザーの入力との間に静電容量が形成されるようにした自己静電容量方式のタッチスクリーンであり,
パネル100は,表示領域110にm個の駆動電極111を含み,m個の駆動電極111は,タッチ駆動期間の間,タッチIC300から印加されるタッチスキャン信号によってタッチ位置を感知するタッチ電極として動作し,
ディスプレイドライバIC200は,m個の駆動電極111をグループに分割し,分割したグループ毎にタッチスキャン信号を印加するためのマルチプレクサを含む,タッチスクリーン一体型表示装置。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
ア 引用発明2の「タッチ駆動期間の間,タッチIC300から印加されるタッチスキャン信号によってタッチ位置を感知するタッチ電極として動作」する「m個の駆動電極111」は,本願発明1の「複数のタッチ電極」に相当する。
そして,引用発明2の「m個の駆動電極111」は,「パネル100」の「表示領域110」に含まれ,また,「パネル100」の「表示領域110」には,「タッチスクリーンが内蔵されている」から,当該「パネル100」は,タッチパネルであって,「m個の駆動電極111」が配列されているといえる。
したがって,引用発明2の「パネル100」は,本願発明1の「複数のタッチ電極が配列されたタッチパネル」に相当する。

イ 引用発明2の「m個の駆動電極111をグループに分割し,分割したグループ毎にタッチスキャン信号を印加するためのマルチプレクサを含む」「ディスプレイドライバIC200」は,本願発明1の「複数のタッチ電極のうちの1つ以上にタッチ駆動信号を供給するタッチ駆動回路」に相当する。

ウ 引用発明2の「m個の駆動電極111」は,引用文献2の【図2】の記載(前記第3 2)を参酌すると,第1駆動電極と,第2駆動電極と,第3駆動電極とを含んでいるといえ,それらはそれぞれ,本願発明1の「第1タッチ電極」,「第2タッチ電極」,「第3タッチ電極」に相当するといえる。

エ 引用発明2の「ディスプレイドライバIC200」は,「m個の駆動電極111をグループに分割し,分割したグループ毎にタッチスキャン信号を印加するためのマルチプレクサを含」んでいるから,第1マルチプレクサと,第2マルチプレクサとを含んでいるといえる。

オ 引用発明2の「タッチスクリーン一体型表示装置」は,本願発明1の「タッチ表示装置」に相当する。

カ 以上から,本願発明1と引用発明2の一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「複数のタッチ電極が配置されたタッチパネルと,
複数のタッチ電極のうちの1つ以上にタッチ駆動信号を供給するタッチ駆動回路とを含み,
前記複数のタッチ電極は第1タッチ電極と,第2タッチ電極と,第3タッチ電極と,第1マルチプレクサと,第2マルチプレクサと,を含む,タッチ表示装置。」

<相違点>
相違点1:本願発明1は,「前記第1タッチ電極及び前記第2タッチ電極は第1グループに含まれ,前記第3タッチ電極は第1グループと異なる第2グループに含まれ,
a)前記第2タッチ電極での時定数が前記第1タッチ電極での時定数より小さく,前記第2タッチ電極での時定数が前記第3タッチ電極での時定数より大きい場合と,
b)前記第2タッチ電極が前記第1タッチ電極に比べて前記タッチ駆動回路の近くに位置し,前記第3タッチ電極が前記第2タッチ電極に比べて前記タッチ駆動回路の近くに位置する場合と,
c)前記第2タッチ電極が前記第1タッチ電極に比べて前記タッチ駆動信号の信号伝達長さが短く,前記第3タッチ電極が前記第2タッチ電極に比べて前記タッチ駆動信号の信号伝達長さが短い場合のうち,少なくとも1つの場合に,
前記第2タッチ電極に供給されるタッチ駆動信号の駆動周波数は前記第1タッチ電極に供給されるタッチ駆動信号の駆動周波数と同じであり,前記第3タッチ電極に供給されるタッチ駆動信号の駆動周波数は前記第1タッチ電極に供給されるタッチ駆動信号の駆動周波数より高く」されるのに対し,引用発明2は,そのような事項を備えているか不明である点。
相違点2:本願発明1は,「前記第1タッチ電極及び前記第3タッチ電極は,第1マルチプレクサに電気的に連結され,前記第2タッチ電極は,前記第1マルチプレクサとは異なる第2マルチプレクサに電気的に連結され,
前記第1マルチプレクサは,少なくとも2つの周波数を有する複数のタッチ駆動信号を出力し,前記第2マルチプレクサは,少なくとも2つの周波数を有する複数のタッチ駆動信号を出力する」のに対し,引用発明2は,第1マルチプレクサと第2マルチプレクサとを有しているものの,そのような事項を備えているか不明である点。

(2)判断
相違点1に係る本願発明1の構成のうち,「第1タッチ電極」及び「第2タッチ電極」について検討するに,「前記第1タッチ電極及び前記第2タッチ電極は第1グループに含まれ」,「a)前記第2タッチ電極での時定数が前記第1タッチ電極での時定数より小さ」「い場合」と,「b)前記第2タッチ電極が前記第1タッチ電極に比べて前記タッチ駆動回路の近くに位置」「する場合」と,「c)前記第2タッチ電極が前記第1タッチ電極に比べて前記タッチ駆動信号の信号伝達長さが短」「い場合のうち,少なくとも1つの場合に」,「前記第2タッチ電極に供給されるタッチ駆動信号の駆動周波数は前記第1タッチ電極に供給されるタッチ駆動信号の駆動周波数と同じであ」ることは,引用文献1及び引用文献2には,何ら記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明2に引用発明1を適用しても,相違点1係る本願発明1の構成を得ることはできない。
したがって,相違点1に係る本願発明1の「第3タッチ電極」及び相違点2について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明2及び引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2〜12について
本願発明2〜10は,本願発明1を減縮した発明であって,いずれも前記相違点1に係る本願発明1の構成を備えるものであり,本願発明11は,本願発明1のタッチ表示装置に含まれるタッチ駆動回路についての発明であって,前記相違点1に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものであり,本願発明12は,本願発明11に対応するタッチ駆動方法の発明であって,相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから,いずれの発明も,前記1で検討したのと同様の理由により,引用発明2及び引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定(令和2年8月28日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。
本願の請求項1〜14に係る発明は,引用文献2に記載された発明(主引用発明)及び引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 しかしながら,令和3年1月4日の手続補正により補正された請求項1〜12に係る発明は,それぞれ,前記相違点1に係る本願発明1の構成,及び,前記相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成を有するものであり,前記第4 1で検討したとおり,引用発明2及び引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では,請求項7の「前記第2タッチ駆動期間以後には,第1ディスプレイ駆動期間及び第2ディスプレイ駆動期間が存在し」との事項は,技術的意味が不明確であるから,請求項7に係る発明は明確でないとの拒絶の理由を通知したが,令和3年12月1日にされた手続補正によって,請求項7の上記事項は,「前記第1タッチ駆動期間と前記第2タッチ駆動期間との間には第1ディスプレイ駆動期間が存在し,前記第2タッチ駆動期間以後には第2ディスプレイ駆動期間が存在し」と補正されたから,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおりであるから,原査定の理由及び当審拒絶理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-03-02 
出願番号 P2018-240546
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
河本 充雄
発明の名称 タッチ表示装置、タッチ駆動回路、及びタッチ駆動方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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