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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1382866
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-15 
確定日 2022-02-24 
事件の表示 特願2019− 79898「エンコーダ及びその位置検出方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月 5日出願公開、特開2020− 34541〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)4月19日(パリ条約による優先権主張2018年(平成30年)8月27日 中華人民共和国)の外国語書面出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和 元年 5月20日 :外国語書面の翻訳文の提出
令和 2年 6月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 8月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 9月 9日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年 9月23日 :原査定の謄本の送達
令和 3年 1月15日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年1月15日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正である。本件補正前(令和2年8月20日に提出された手続補正書による補正の後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次のとおりである(下線は補正箇所を示す。)。

(1) 本件補正前
「【請求項1】
エンコーダであって、
キャリアディスクと、
前記キャリアディスク上に配置された磁石と、
前記キャリアディスク上に配置され前記磁石を囲む光学式符号化ディスクと、
前記キャリアディスクを囲む筐体と、
前記筐体上に配置された回路基板と、
前記回路基板上に配置され、且つ前記磁石と組み合わされた磁気式検出アセンブリと、
前記回路基板上に配置され、且つ第1インクリメンタルパターントラック及び第2インクリメンタルパターントラックを有する前記光学式符号化ディスクと組み合わされた光学式検出アセンブリと、
前記回路基板上に配置された信号処理ユニットとを備え、
前記光学式符号化ディスクは前記第1インクリメンタルパターントラック及び前記第2インクリメンタルパターントラックを有し、前記第1インクリメンタルパターントラック及び前記第2インクリメンタルパターントラックは前記光学式符号化ディスクの周方向に沿ってそれぞれ配置され、前記キャリアディスク、前記磁石、及び前記光学式符号化ディスクは、回転軸を中心として構造的に同軸であり、且つ回転可能であり、
前記キャリアディスク、前記磁石、及び前記光学式符号化ディスクは、前記筐体に対して動くことが可能であり、
前記磁気式検出アセンブリは、前記磁石が前記筐体に対して動く際に磁気式検出を行い絶対位置信号を取得するためのものであり、
前記光学式検出アセンブリは、前記光学式符号化ディスクが前記筐体に対して動く際に光学式検出を行い第1インクリメンタル位置信号及び第2インクリメンタル位置信号を取得するためのものであり、
前記信号処理ユニットは、前記絶対位置信号、前記第1インクリメンタル位置信号、及び前記第2インクリメンタル位置信号を受信して積分し、絶対位置情報を得、
前記第1インクリメンタルパターントラックは、前記光学式符号化ディスクの前記周方向に沿った1回転においてM個の第1インクリメンタルパターンを有し、前記第2インクリメンタルパターントラックは、前記光学式符号化ディスクの前記周方向に沿った1回転においてN個の第2インクリメンタルパターンを有し、M及びNは整数であり、NはMより大きく、各前記第1インクリメンタルパターン及び各前記第2インクリメンタルパターンは、低反射率領域及び高反射率領域を有する、
エンコーダ。」

(2) 本件補正後
「【請求項1】
エンコーダであって、
キャリアディスクと、
前記キャリアディスク上に配置された磁石と、
前記キャリアディスク上に配置され前記磁石を囲む光学式符号化ディスクと、
前記キャリアディスクを囲む筐体と、
前記筐体上に配置された回路基板と、
前記回路基板上に配置され、且つ前記磁石と組み合わされた磁気式検出アセンブリと、
前記回路基板上に配置され、且つ第1インクリメンタルパターントラック及び第2インクリメンタルパターントラックを有する前記光学式符号化ディスクと組み合わされた光学式検出アセンブリと、
前記回路基板上に配置された信号処理ユニットとを備え、
前記光学式符号化ディスクは前記第1インクリメンタルパターントラック及び前記第2インクリメンタルパターントラックを有し、前記第1インクリメンタルパターントラック及び前記第2インクリメンタルパターントラックは前記光学式符号化ディスクの周方向に沿ってそれぞれ配置され、前記キャリアディスク、前記磁石、及び前記光学式符号化ディスクは、回転軸を中心として構造的に同軸であり、且つ回転可能であり、
前記キャリアディスク、前記磁石、及び前記光学式符号化ディスクは、前記筐体に対して動くことが可能であり、
前記磁気式検出アセンブリは、前記磁石が前記筐体に対して動く際に磁気式検出を行い絶対位置信号を取得するためのものであり、
前記光学式検出アセンブリは、前記光学式符号化ディスクが前記筐体に対して動く際に光学式検出を行い第1インクリメンタル位置信号及び第2インクリメンタル位置信号を取得するためのものであり、
前記信号処理ユニットは、前記絶対位置信号、前記第1インクリメンタル位置信号、及び前記第2インクリメンタル位置信号を受信して積分し、絶対位置情報を得、
前記第1インクリメンタルパターントラックは、前記光学式符号化ディスクの前記周方向に沿った1回転においてM個の第1インクリメンタルパターンを有し、前記第2インクリメンタルパターントラックは、前記光学式符号化ディスクの前記周方向に沿った1回転においてN個の第2インクリメンタルパターンを有し、M及びNは整数であり、NはMより大きく、各前記第1インクリメンタルパターン及び各前記第2インクリメンタルパターンは、低反射率領域及び高反射率領域を有し、
前記光学式検出アセンブリは発光素子及び少なくとも1つの受光素子を備え、前記受光素子は、第1インクリメンタル受光領域及び第2インクリメンタル受光領域を有し、前記第1インクリメンタル受光領域及び前記第2インクリメンタル受光領域は、前記発光素子の両側にそれぞれ存在し、
前記磁石が前記回転軸を中心にして1回転すると、前記磁気式検出アセンブリの位置において磁気特性が対応して1周期分変化し、前記磁気式検出アセンブリは磁気特性の変化を検出して電気信号への変換を行い、前記磁気式検出アセンブリは前記電気信号に従って前記絶対位置信号を出力する、
エンコーダ。」

2 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した事項である「光学式検出アセンブリ」について、「発光素子及び少なくとも1つの受光素子を備え、前記受光素子は、第1インクリメンタル受光領域及び第2インクリメンタル受光領域を有し、前記第1インクリメンタル受光領域及び前記第2インクリメンタル受光領域は、前記発光素子の両側にそれぞれ存在」することを限定するとともに、本件補正前の請求項1に記載した事項である「磁石」及び「磁気式検出アセンブリ」について、「前記磁石が前記回転軸を中心にして1回転すると、前記磁気式検出アセンブリの位置において磁気特性が対応して1周期分変化し、前記磁気式検出アセンブリは磁気特性の変化を検出して電気信号への変換を行い、前記磁気式検出アセンブリは前記電気信号に従って前記絶対位置信号を出力する」ことを限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討を行う。

3 独立特許要件についての判断
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2) 引用文献
以下に示す引用文献1及び2は、原査定の拒絶の理由に引用された文献であり、発行日は本願の優先日より前である。
また、以下に示す引用文献5及び6は、当審が新たに引用する文献であり、発行日は本願の優先日より前である。

引用文献1:特開2011−257166号公報
引用文献2:特開2015−90305号公報
引用文献5:特開2014−13163号公報
引用文献6:特開2009−186229号公報

(3) 引用文献に記載された発明等
ア 引用文献1
(ア) 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある。下線は当審が付した。

「【0044】
(1−2.第1実施形態に係るエンコーダ)
次に、図2及び図3を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダ100の構成について説明する。図2は、本実施形態に係るエンコーダの構成について説明するための説明図である。図3は、本実施形態に係るエンコーダが有するディスクについて説明するための説明図である。
【0045】
図2に示すように、本実施形態に係るエンコーダ100は、シャフトSH3と、ディスク110と、検出部130X,130A〜130Cと、位置データ生成部140と、を有する。
【0046】
(1−2−1.ディスク110)
ディスク110は、図3に示すように円板状に形成され、ディスク中心Oが回転軸AXとほぼ一致するように配置される。そして、ディスク110は、この回転軸AX周りに回転可能なシャフトSH3を介して、モータMのシャフトSH1に対応したシャフトSH2に連結される。従って、ディスク110は、モータMの回転に応じて回転軸AX周りに回転可能に配置されることとなる。
【0047】
図3に示すように、ディスク110は、トラックTA〜TCと、磁石MGとを有する。
【0048】
本実施形態ではアブソ型のエンコーダ100を例に説明しているので、ディスク110は、モータ100の回転における絶対位置xを精度よく検出するために3本のトラックTA〜TCを有する。なお、このトラックTの本数は、3本に限られるものではなく、絶対値xに要求される検出精度や信号処理に応じて適宜複数本に設定される。また、本発明の各実施形態がインクレ型のエンコーダ100に適用される場合、トラックTの本数は、後述する湾曲スリットを有すれば、少なくとも1以上あればよい。
【0049】
(トラックTA〜TC)
トラックTA〜TCは、それぞれディスク110のディスク中心Oを中心とするリング状に所定の幅wA〜wCで設定される。本実施形態では、各トラックTA〜TCの幅wA〜wCは同一の幅wに設定される(w=wA=wB=wC)。ただし、トラック幅wA〜wCは、異なっていても良い。
【0050】
そして、各トラックTA〜TCは、それぞれ幅wの中心における径方向の位置(トラック半径rA〜rC)が異なるように配置される。つまり、トラックTA〜TCは、ディスク中心Oを中心とした同心円状に形成され、ディスク中心Oから外周に向けてトラックTA,TB,TCの順で配置される(rA<rB<rC)。
【0051】
図3に示すように、各トラックTA〜TCのそれぞれには、光学的な回転格子LA〜LC(回転する光学回折格子)が形成される。
【0052】
回転格子LA〜LCのそれぞれは、光学的な複数のスリットSLA〜SLCを有して、回転格子LA〜LC毎にそれぞれ独立した個別の回折干渉光学系の一部を構成する。
【0053】
スリットSLA〜SLCのそれぞれは、光を反射するか(反射スリット)又は光を透過する(透過スリット)ように形成される。
【0054】
反射スリットとして形成される場合、スリットSLは、例えば反射率の高い材質を蒸着するなどの方法により形成されてもよい。一方、ディスク110におけるスリットSLA〜SLC以外の部位は、例えば、蒸着等の方法により光を吸収する材質を配置したり、ディスク110自体に光を透過する材質を使用するなどの方法で形成されてもよい。また、ディスク110自体に光を反射する材質を使用して、スリットSLA〜SLC以外の部位をエッチング等により加工することも可能である。更に、スリットSLA〜SLCもSLA〜SLC以外の部位も反射率の高い材料で形成した上で、スリットSLA〜SLCとSLA〜SLC以外の部位とにギャップ方向の段差を設けて位相回折格子としてスリット形成することも可能である。
一方、透過スリットとして形成される場合、ディスク110自体を光が透過する材質で形成し、スリットSLA〜SLC以外の部位に、吸収又は反射するなどにより光を遮蔽する物質を配置したり光を遮蔽する加工を施すなどの方法で形成されてもよい。ただし、スリットSLA〜SLCの形成方法は特に限定されるものではない。
要するに、反射型スリットの場合、スリットSLA〜SLCは、光を反射し、それ以外の部位は、光を反射せず、透過型スリットの場合、スリットSLA〜SLCは、光を透過し、それ以外の部位は、光を遮蔽することとなる。
【0055】
以下では、本実施形態では、説明の便宜上、ディスク110の各トラックTA〜TCのスリットSLA〜SLCが反射スリットである場合について説明する。このようにディスク110に反射スリットが使用される場合には、反射型の回折干渉光学系を形成することができるので、ディスク110に透過スリットが使用される場合に比べて、ディスク110と後述するマスク120との間のギャップgの変動によるノイズや検出精度への影響を低減することが可能である。
【0056】
トラックTA,TBは、第1トラック又は第2トラックの一例であって、少なくとも1以上が湾曲スリットで形成される。なお、本実施形態では、両トラックTA,TBが湾曲スリットで形成される場合を例示している。
【0057】
各トラックTA,TBは、トラック半径rA,rBが大きいほど、スリット本数nA,nBが多くなるように形成されることが望ましい。つまり、トラックTA,TBそれぞれのスリット本数nA,nBは、トラック半径が「rA<rB」であるため、「nA<nB」となるように設定される。各トラックTA,TBからは、それぞれスリット本数nA,nBに応じた繰り返し数の2の周期信号が得られることになる。この2の周期信号におけるディスク110の1回転(360°)あたりの繰り返し数を、それぞれ周期数mA,mBともいう。つまり、周期数mA,mBそれぞれは、各スリット本数nA,nBに応じた数となる。従って、各トラックTA,TBのスリット本数nA,nBは、要求される精度の絶対位置xが検出可能なように、必要とされる分解能に応じた数に設定されることが望ましい。」

「【0063】
(磁石MG)
磁石MGは、1回転内の大まかな絶対位置xを検出するための1回転検出機構の一例の一部を構成する。磁石MGは、両磁極(N極及びS極)がディスク面と平行な方向でディスク中心O(回転軸AX)を挟んで対称に位置するように配置される。この磁石MGは、本実施形態と異なる1回転検出機構が使用される場合、その機構に応じた構成に変更されてもよい。
【0064】
この1回転検出機構のことを「1X検出機構」又は「第1検出機構」などともいう。
これに対して、トラックTA,TBのスリット本数nA,nBは、上述の通り、nA<nBに設定される。そして、各トラックTA,TBから得られる周期信号の周期数mA,mBは、各トラックTA〜TC毎の位置検出精度を表し、それぞれスリット本数nA,nCに対応する。
【0065】
換言すれば、1X検出機構は、上述の通り、1回転内の大まかな絶対位置xを検出する。
トラックTAによる検出機構は、1回転よりも狭い範囲内での絶対位置xを、1X検出機構よりも高い精度で検出することができる。このトラックTAによる検出機構をここでは「第1インクレ検出機構」又は「第2検出機構」ともいう。
トラックTBによる検出機構は、第1インクレ検出機構よりも更に狭い範囲内での絶対位置xを、第1インクレ検出機構よりも高い精度で検出することができる。このトラックTBによる検出機構をここでは「第2インクレ検出機構」又は「第3検出機構」ともいう。」

「【0069】
(1−2−2.検出部130X,検出部130A〜130C)
次に、図2〜図5を参照しつつ、検出部130X及び検出部130A〜130Cについて説明しつつ、これらの検出機構についてより具体的に説明する。図4及び図5は、本実施形態に係るエンコーダが有する光学検出機構について説明するための説明図である。
【0070】
(1X検出機構)
検出部130Xは、磁石MGに対向して配置され、磁石MGと共に1X検出機構を構成する。検出部130Xと磁石MGとの間のギャップgは、図2に示すように、他の検出部130A〜130Cとディスク110との間のギャップgと同一に設定される。その結果、検出器130X,130A〜130Cのギャップgを同時に調整することが可能になり、製造等が容易になる。ただし、この検出部130Xのギャップgを、検出器130A〜130Cのギャップgと異なる値にすることも可能である。
【0071】
そして、検出部130Xは、ディスク110の回転に応じた磁石MGの磁界の向きの回転を検出する。検出部130Xは、このように磁界の向きを検出可能な構成であれば、特に限定されるものではない。なお、検出部130Xの一例として、例えばMR(磁気抵抗効果:Magnetro Resistive effect)素子やGMR(巨大磁気抵抗効果:Giant Magnetro Resistive effect)素子などのような磁気角度センサを使用することが可能である。また、検出部130Xとして、例えばホール素子などの磁界検出素子を使用して、回転軸AXに対して垂直な2軸方向の磁界の強度を検出し、磁界検出素子からの検出信号に基づいて磁石MGの磁界の向きを算出することで、ディスク110の回転を検出することも可能である。
【0072】
検出部130Xによる検出信号は、ディスク110の回転角度θ(位置x)が360°回転する間に電気角φxで360°回転(つまり1周期)する正弦波状の電気信号となる。そして、この検出信号は、ディスク110の1回転あたりの大まかな絶対位置xを表す。検出部130Xが検出する電気信号を、ここでは「1X検出信号」ともいう。この1X検出信号は、位置データ生成部140に出力される。
【0073】
(光学検出機構)
検出部130Aは、第1検出部又は第2検出部の一例であって、トラックTAに対向して配置され、トラックTAと共に第1インクレ検出機構を構成する。検出部130Bは、第1検出部又は第2検出部の一例であって、トラックTBに対向して配置され、トラックTBと共に第2インクレ検出機構を構成する。検出部130Cは、第3検出部の一例であって、トラックTCに対向して配置され、トラックTCと共に偏心検出機構を構成する。
【0074】
検出部130A〜130Cによる各光学検出機構は、上述の通り、それぞれ独立した回折干渉光学系を有する点などで共通する。従って、ここでは、図4を参照しつつ、一の光学検出機構を例に説明し、各光学検出機構毎に異なる点については、個別に追記することとする。
【0075】
これに伴い、一の光学検出機構を例に説明する場合、以下では、図4に示すように、その光学検出機構に対応する検出部(検出部130A〜130C)、トラック(トラックTA〜TC)及び回転格子(回転格子LA〜LC)を単に「検出部130」、「トラックT」及び「回転格子L」ともいい、その回転格子Lに含まれるスリット(スリットSLA〜SLC)を単に「スリットSL」ともいう。そして、そのスリットSLのピッチ(ピッチpLA〜pLC)を単に「ピッチpL」ともいい、スリット本数(スリット本数nA〜nC)を単に「スリット本数n」ともいい、この光学検出機構から得られる周期信号の周期数(周期数mA〜mC)を単に「周期数m」ともいう。
【0076】
図4に示すように、検出部130は、マスク120と、発光部131と、受光部132とを有する。」

「【0083】
次に、発光部131及び受光部132について説明しつつ、固定格子G1,G2それぞれについて説明する。
【0084】
発光部131は、光源を有して、マスク120の固定格子G1に向けて光を照射する。発光部131が照射する光の波長や強度は特に限定されるものではないが、回折干渉光学系の特性や必要な位置分解能等に応じて適宜決定されてもよい。また、この照射光は、本実施形態では、拡散光が使用される。拡散光を使用することで、後述する固定格子G1の各スリットSG1を略線光源とみなすことができ、回折干渉効果を高めることができる。なお、このようにスリットSG1を略線光源とみなすことができれば、照射光として、平行光やレーザ光、集束光などを使用することも可能である。発光部131は、平行光・レーザ光・集束光・拡散光など、使用する光の特性等に応じて、拡散レンズなどの所定の光学素子を有してもよいことは言うまでもない。
【0085】
固定格子G1は、発光部131が照射する光が入射する位置に形成される。この固定格子G1は、透過型の複数のスリットSG1を有しており、その複数のスリットSG1により入射した光を回折させる。その結果、各スリットSG1は、それぞれディスク110に照射される光を、各スリットSG1を略線光源とする光に変換することができる。
【0086】
固定格子G1の複数のスリットSG1間のピッチpG1は、回転格子Lの複数のスリットSL間のピッチpLに対して「pG1=i×pL(i=1,2,3…)」の関係となるように形成される。ただし、特に「i=1,2」の場合に、得られる周期信号の強度を強めれる場合が多く、更に言えば、「i=2」の場合に、周期信号の強度を「i=1」よりも強められる場合が多い。一方、周期信号の周期数mは、スリット本数nだけでなく、このiに寄っても変化する。具体的には、周期数mは、少なくとも「i=1,2」の場合、「m=2×n/i」となる。以下では、説明の便宜上、「i=2」つまり「pG1=2pL」であり「m=n」である場合について説明する。
【0087】
なお、固定格子G1を透過した光は、固定格子G1に入射する際の入射角に応じて、固定格子G1の幅方向に広がる。従って、回転格子LのスリットSLの幅は、この広がり角を考慮して、信号強度を向上させるために、固定格子G1のスリットSG1の幅よりも広く設定されることが望ましい。その際、回転格子LのスリットSLの幅を、更に、固定格子G1を透過した光が到達すると予想される幅よりも広く設定するか又は狭く設定することにより、固定格子G1と回転格子Lとの取り付け誤差に対する信号の安定性を、更に向上させることが可能である。
これと同様に、回転格子Lで反射した光は、回転格子Lに入射する際の入射角に応じて、回転格子Lの幅方向に広がる。従って、後述する固定格子G2のスリットSG2の幅も、この広がり角を考慮して、信号強度を向上させるために、回転格子LのスリットSLの幅よりも広く設定されることが望ましい。その際、固定格子G2のスリットSLの幅を、更に、回転格子Lで反射した光が到達すると予想される幅よりも広く設定するか又は狭く設定することにより、固定格子G2と回転格子Lとの取り付け誤差に対する信号の安定性を、更に向上させることが可能であることも同様である。
ただし、固定格子G1と固定格子G2と回転格子Lそれぞれのスリットの幅の関係は、十分な信号強度が確保でき、また、取り付け誤差に対する信号の安定性も十分に確保できる場合には、特に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0088】
固定格子G1が有する複数のスリットSG1は、他の回転格子L及び固定格子G2と共に形成する回折干渉光学系の回折干渉効果を高めてノイズを低減するために、対向した位置におけるスリットSLと略平行になるように形成されることが望ましい。
【0089】
つまり、図3に示すように、回転格子LA,LBのスリットSLA,SLBが湾曲スリットであるため、検出部130A,130Bの固定格子G1の複数のスリットSG1,SG2は、対向した湾曲スリットと平行になるように、湾曲スリットで形成されることが望ましい。一方、回転格子LCのスリットSLが同心円スリットであるため、検出部130Cの固定格子G1の複数のスリットSG1,SG2は、対向した同心円スリットと平行になるように、同心円スリットで形成されることが望ましい。
【0090】
ただし、放射スリットについて「米国特許第5,559,600号明細書」にも記載されているように、放射スリットのピッチはトラックの全周長に比べて十分に短いため、放射スリットを光学的には平行スリットとみなすことができる。従って、放射スリットに対応した検出部の固定格子の複数のスリットを、相互に平行な「平行スリット」にすることが可能である。
【0091】
これと同様に、湾曲スリットに対応した検出部130A,130B又は同心円スリットの検出部130Cの固定格子G1の複数のスリットSG1を、図5に示すように、平行スリットとすることも可能である。この場合、湾曲スリットに対応する固定格子G1の平行スリットは、図5に示すように、各湾曲スリットの少なくとも1点での接線LINE3とほぼ平行になるように配置されることが望ましい。同様に、同心円スリットに対応する固定格子G1の平行スリットは、同心円スリットの少なくとも1点での接線とほぼ平行になるように配置されることが望ましい。このように湾曲スリット及び同心円スリットに対応する両固定格子G1を平行スリットとすることで、両固定格子G1に対して同一の固定格子G1を使用することが可能となり、製造等を更に容易にすることが可能となるだけでなく、製造コストを低減することも可能である。
【0092】
図4に示すように、固定格子G1で回折された光は、固定格子G1に対応する回転格子Lに照射される。すると、回転格子Lに照射された光は、回転格子LのスリットSLで反射される。この際、反射される光は、回転格子Lで更に回折される。そして、この回転格子Lで回折された光は、固定格子G2に照射される。
【0093】
固定格子G2は、回転格子Lで回折された光が入射する位置に形成される。この固定格子G2のスリットSG2のピッチpG2は、固定格子G1のスリットSG1のピッチpG1と同じに設定される。つまり、本実施形態では「pG1=pG2=2×pL」となる。更に、このスリットSG2の形状や、固定格子G1のスリットSG1との位置関係等も、上記固定格子G1のスリットSG2と同様である。よって、これらの詳しい説明は省略する。
【0094】
なお、この固定格子G2は、固定格子G1と異なり、2以上の領域(例えば図5に示す領域G2A,G2B)に別れている。そして、各領域のスリットSG2は、その領域内ではピッチpG2が均一に形成されるが、領域間では「pG2/4」ずつずらされて形成される。なお、説明の便宜上、以下では、図5に示すように固定格子G2が2の領域G2A,G2Bに分割された場合について説明する。
【0095】
一方、図4に示すように、回転格子Lで回折された光は、固定格子G2に照射される。この固定格子G2に照射される光は、回転格子Lの複数のスリットSLそれぞれで回折された光が干渉した干渉縞状となる。干渉縞の明部の位置は、ディスク110が回転して固定格子G1と回転格子Lとの間の位置関係の変化に応じて、移動することになる。その結果、「pG2/4」ずつずらされた各領域G2A,G2BそれぞれのスリットSG2を通過する光の強度は、90°ずれて正弦波状に増減する。
【0096】
受光部132は、固定格子G2のスリットSG2を透過した光を受光するように配置される。そして、受光部132は、例えばフォトダイオードのような受光素子を有しており、受光した光の強度を電気信号に変換する。ただし、この際、受光部132は、各領域G2A,G2B毎に別々の電気信号を生成可能なように、例えば2の受光面を有する。
【0097】
そして、受光部132が生成する電気信号は、ディスク110がピッチp等に応じた分だけ移動する度に繰り返される所定の周期の略正弦波状の電気信号(「周期信号」ともいう。)となる。一方、この各領域G2A,G2Bぞれぞれに対応した周期信号は、領域G2A,G2BそれぞれのスリットSG2を通過する光の強度と同様に、位相が90°ずれた2の周期信号となる。この2の周期信号を、それぞれ「A相信号」,「B相信号」ともいう。そして、第1インクレ検出機構、第2インクレ検出機構それぞれで得られるA相及びB相の2の周期信号をまとめてそれぞれ、「第1インクレ検出信号」、「第2インクレ検出信号」、「偏心検出信号」ともいう。なお、第1インクレ検出信号及び第2インクレ検出信号は、第1検出信号及び第2検出信号の一例である。」

「【0128】
(1−2−4.位置データ生成部140)
次に、図2,図7〜図9を参照しつつエンコーダ100の残りの構成である位置データ生成部140について説明する。図7〜図9は、本実施形態に係るエンコーダが有する位置データ生成部について説明するための説明図である。
【0129】
位置データ生成部140は、上述の検出部130X及び検出部130A〜130Cから、正弦波状の1X検出信号、第1インクレ検出信号、第2インクレ検出信号及び偏心検出信号を取得する。そして、位置データ生成部140は、これらの信号からモータMの絶対位置xを特定し、その位置xを表した位置データを出力する。
【0130】
そのために、位置データ生成部140は、図7に示すように、位置データ算出部141と、誤差測定部142と、位置データ補正部143と、以下、より具体的に位置データ生成部140による位置xの特定処理の一例について説明する。
【0131】
位置データ生成部140が取得する第1インクレ検出信号、第2インクレ検出信号及びインクレ信号それぞれは、上述の通り、本実施形態では、位相が90°ずれたA相周期信号とB相周期信号との2の周期信号を含む。
【0132】
一方、検出部130Xも、90°異なる磁界の向きを検出する2(2以上でもよい)の磁気角度センサを有し、上記周期信号と同じように電気角で位相が90°ずつずれた同一周期の2の1X検出信号(A相1X検出信号、B相1X検出信号ともいう。)を出力する。なお、1X検出信号もディスク110が1回転するたびに繰り返される正弦波状の電気信号となるため周期信号となる。しかし、検出原理等が異なるため説明の便宜上ここでは、1X検出信号と、第1インクレ検出信号、第2インクレ検出信号及び偏心検出信号と、を区別する。
【0133】
位置データ算出部141は、1X検出信号、第1インクレ検出信号及び第2インクレ検出信号について、それぞれA相及びB相の2つの正弦波信号を取得する。そして、位置データ生成部140は、A相及びB相の2つの正弦波信号を、1X検出信号、第1インクレ検出信号及び第2インクレ検出信号毎に、各検出信号の電気角φを表す位置データに変換し、各周期内で単調に増加する第1位置データ〜第3位置データを生成する。なお、位置データ生成部141による位置データ生成方法は、特に限定されるものではない。位置データ生成方法としては、例えば、A相及びB相の2つの正弦波信号の除算結果をarctan演算することにより電気角φを算出する方法、トラッキング回路を用いて2つの正弦波信号を電気角φに変換する方法、及び、予め作成されたテーブルにおいてA相及びB相の信号の値に対応付けられた電気角φを特定する方法などが挙げられる。なおこの際、位置データ算出部141は、まず、A相及びB相の2つの正弦波信号を各検出信号毎にアナログ−デジタル変換し、その変換後の2のデジタル信号を逓倍処理して分解能を向上させた後に、上記位置データ生成を行うことが望ましい。位置データ算出部141で算出された第1位置データ〜第3位置データの一例を、図8に示す。なお、図8及び図9において、各位置データ等のプロファイルは、ディスク110が定速で1回転させられた場合のプロファイルを表す。
【0134】
図8に示すように、第1位置データは、磁石MG等による1X検出機構による1X検出信号から生成され、ディスク110の1回転で電気角φX(0°〜360°)が1回単調に増加(又は減少)する(つまり周期数mx=1)。一方、第2位置データは、トラックTA等による第1インクレ検出機構による第1インクレ検出信号から生成され、この例ではディスク110の1回転で電気角φA(0°〜360°)が4回単調に増加(又は減少)する(つまり周期数mA=4)。そして、第3位置データは、トラックTB等による第2インクレ検出機構による第2インクレ検出信号から生成され、この例ではディスク110の1回転で電気角φB(0°〜360°)が16回単調に増加(又は減少)する(つまり周期数mB=16)。各トラックTA〜TCのスリット本数nA〜nCは、本実施形態のようにピッチが「pG1=2×pL=pG2」に設定される場合、このような分解能を実現するために、それぞれ4,16,64本に設定されることとなる。
【0135】
しかし、これは、あくまで一例であって、各トラックTA〜TCのスリット本数nA〜nCを限定するものではなく、各トラックTA〜TCのスリット本数nA〜nCは、それぞれから得られる周期信号に望まれる所望の周期数mA〜mCに応じて適宜設定され得る。なお、実施形態のようにピッチが「pG1=2×pL=pG2」に設定される場合、「mA=nA,mA=nA,mA=nA」となり、「pG1=1×pL=pG2」に設定される場合、「mA=2×nA,mA=2×nA,mA=2×nA」となる。これらの関係から、所望の周期数mA〜mCに応じたスリット本数nA〜nCを決定することが可能である。また、ここでは、説明の便宜上、第1インクレ検出機構及び第2インクレ検出機構による検出信号の周期数mA,mBが4,16に設定される場合を例示している。しかし、この周期数mA,mBは、もっと大きな数に設定されることが望ましい。
【0136】
第1位置データ〜第3位置データは、各周期数mX〜mB応じた分解能で位置xを表すことになる。従って、第3位置データは、第2位置データよりも分解能が高く、第2位置データは、第1位置データよりも分解能が高い。
【0137】
そこで、位置データ算出部141は、第1位置データ〜第3位置データに基づいて、最も分解能が高い第3位置データと同程度の分解能を有する絶対位置xを算出する。第1位置データは、分解能が比較的低いが1Xつまり絶対位置を表す。位置データ算出部141は、この第1位置データが表す絶対位置に、第2位置データが表す比較的高分解能な位置を重畳することにより、第2位置データと同程度の分解能の絶対位置xを算出することが可能である。そして、位置データ算出部141は、同様に、第2位置データから算出された絶対位置xに、更にそれよりも分解能が高い第3位置データが表す位置を重畳することにより、第3位置データと同程度の分解能の絶対位置xを算出することが可能である。換言すれば、位置データ算出部141は、図8に示すように、最も分解能が高い第3位置データが表す位置を、第2位置データ及び第1位置データを順次使用して、絶対位置xに変換する。このように分解能が相異なる複数の位置データから高分解能な絶対位置を特定する方法を、ここでは「積上げ方式」ともいう。
【0138】
ところで、図8では、ディスク110が偏心している場合の各位置データを示している。この場合、例えば、第2位置データ及び第3位置データが生成された第1インクレ検出機構及び第2インクレ検出機構は、湾曲度合いCが相異なる湾曲スリットを有する。このような湾曲スリットは、放射スリットとはことなり、湾曲度合いが相異なることにより、偏心に対して同一のタイミングで検出信号に誤差が含まれるとは限らない。このように誤差が発生するタイミングのズレは、第2位置データと第3位置データとの同期ズレとなる。このような同期ズレは、上述のような積上げ方式などのように、複数のトラックTを使用した絶対位置算出では、その絶対位置算出結果に大きな影響を与える恐れがある。
【0139】
しかし、本実施形態に係る検出部130A,130Bは、湾曲スリットの接線同士が平行となる位置関係で配置される。このような位置関係に検出部130A,130Bが配置されると、例えば図3において接線LINEA,LINEB方向に偏心した場合(図8の時点t1,t2)には、その偏心による影響は検出信号に含まれない一方、この方向と垂直な方向に偏心した場合(図8の時点t3,t4)には、その偏心による影響は、接線LINEAと接線LINEBとが平行であるため、同一のタイミングで検出信号に含まれることになる。その結果、図8に示すように、位置データ算出部131は、補正前の位置データとして、ディスク110の偏心による誤差は含まれるが、同期ズレを含まない高分解能な絶対位置xを算出することが可能である。
【0140】
一方、誤差測定部142は、同心円スリットを含む誤差検出機構から得られた誤差検出信号を取得する。一方、この誤差検出信号は、ディスク110が偏心している場合に、その偏心量に応じた周期mCを有する。そこで、誤差測定部142は、この誤差検出信号に基づいて、上記偏心による誤差を算出する。誤差測定部142が算出した誤差値を、図9に示す。なお、誤差測定部142による誤差検出信号から誤差値への変換は、上記位置データ生成部141による第1位置データ〜第3位置データそれぞれへの変換処理と同様な処理によりおこなわれるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0141】
位置データ補正部143は、図9に示すように、位置データ算出部141が算出した絶対位置データから、誤差測定部142が算出した誤差値を減算(又は加算)することにりり、誤差を補正する。そして、位置データ補正部143は、誤差が低減されて正確であり、かつ、積上げ方式により高分解能な絶対位置xを表す位置データを、制御装置CTに出力する。」

「【図2】



「【図3】



「【図4】



「【図7】



「【図8】



(イ) 引用発明の認定
引用文献1の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「ディスク110と、検出部130X,130A及び130Bと、位置データ生成部140と、を有するエンコーダ100であって(【0045】)、
ディスク110は、円板状に形成され、ディスク中心Oが回転軸AXとほぼ一致するように配置され、回転軸AX周りに回転可能であり(【0046】)、
ディスク110は、トラックTA及びTBと磁石MGとを有し(【0047】)、
トラックTA及びTBは、ディスク中心Oを中心とした同心円状に形成され、ディスク中心Oから外周に向けてトラックTA,TBの順で配置され(【0050】)、
磁石MGは、両磁極(N極及びS極)がディスク面と平行な方向でディスク中心O(回転軸AX)を挟んで対称に位置するように配置され(【0063】)、
検出部130Xは、磁石MGに対向して配置され(【0070】)、
検出部130Aは、トラックTAに対向して配置され、検出部130Bは、トラックTBに対向して配置され(【0073】)、
トラックTAによる検出機構は第1インクレ検出機構であり、トラックTBによる検出機構は第2インクレ検出機構であり(【0065】)、
検出部130Xは、ディスク110の回転に応じた磁石MGの磁界の向きの回転を検出し、この検出信号は、ディスク110の1回転あたりの大まかな絶対位置xを表す1X検出信号であり(【0071】、【0072】)、
検出部130A及び検出部130Bは、それぞれ、発光部131と受光部132を有し(【0076】)、
受光部132は電気信号を生成し、第1インクレ検出機構及び第2インクレ検出機構のそれぞれで得られる信号は、第1インクレ検出信号及び第2インクレ検出信号であり(【0097】)、
位置データ生成部140は、位置データ算出部141を有し(【0130】)、
位置データ生成部140は、A相及びB相の2つの正弦波信号を、1X検出信号、第1インクレ検出信号及び第2インクレ検出信号毎に、各検出信号の電気角φを表す位置データに変換し、各周期内で単調に増加する第1位置データ〜第3位置データを生成し(【0133】)、
第1位置データは、磁石MG等による1X検出機構による1X検出信号から生成され、ディスク110の1回転で電気角φX(0°〜360°)が1回単調に増加(又は減少)するものであり(つまり周期数mX=1)、第2位置データは、トラックTA等による第1インクレ検出機構による第1インクレ検出信号から生成され、ディスク110の1回転で電気角φA(0°〜360°)が4回単調に増加(又は減少)するものであり(つまり周期数mA=4)、第3位置データは、トラックTB等による第2インクレ検出機構による第2インクレ検出信号から生成され、ディスク110の1回転で電気角φB(0°〜360°)が16回単調に増加(又は減少)するものであり(つまり周期数mB=16)(【0134】)、
位置データ算出部141は、第1位置データが表す絶対位置に、第2位置データが表す比較的高分解能な位置を重畳することにより、第2位置データと同程度の分解能の絶対位置xを算出し、同様に、第2位置データから算出された絶対位置xに、更にそれよりも分解能が高い第3位置データが表す位置を重畳することにより、第3位置データと同程度の分解能の絶対位置xを算出するものであり(【0137】)、
トラックTA及びTBのそれぞれには、光学的な複数のスリットSLA及びSLBを有する光学的な回転格子LA及びLBが形成され(【0051】、【0052】)、
トラックTA,TBそれぞれのスリット本数nA,nBは、nA<nBとなるように設定され(【0057】)、
スリットSLA及びSLBは、光を反射し、それ以外の部位は、光を反射せず(【0054】)、
検出部130Xによる検出信号は、ディスク110の回転角度θ(位置x)が360°回転する間に電気角φxで360°回転(つまり1周期)する正弦波状の電気信号となる(【0072】)、
エンコーダ100。」

イ 引用文献2
(ア) 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。下線は当審が付した。

「【0021】
図2に示すように、本実施形態に係るエンコーダ100は、筐体10と、ハウジング150と、基板16と、光学モジュール130と、ハブ160と、ディスク110と、位置データ生成部140と、エンコーダカバー101を有する。
【0022】
(2−1.ディスク)
ディスク110は、後述するハブ160のディスク固着部162に固定されている。このディスク110は、円板状に形成されており、その略中央部には、ボルト14が貫通すると共にハブ160のボルト締結部163がはめ合わされる貫通孔111が設けられている。ディスク110は、貫通孔111にボルト締結部163がはめ合わされた状態で、下面110Bがディスク固着部162の上側の表面であるディスク固定面162Aに固着される。そして、ディスク110は、シャフトshと同一軸心となるように、ハブ160を介してシャフトshに連結されている。シャフトshは、軸受20を介して筐体10に回転自在に支持されている。ディスク110は、モータMの回転、すなわちシャフトshの回転により回転する。
【0023】
ディスク110の上面110Aには、スリットトラックSAが形成されている。スリットトラックSAは、ディスク110の上面110Aにおいてディスク中心を中心とした円環状に配置されたトラックとして形成されている。スリットトラックSAは、トラックの全周にわたって、測定方向に沿って並べられた複数の反射スリット(図示省略)を有する。ここで、「測定方向」とは、後述する光学モジュール130によりディスク110に形成されたスリットトラックを光学的に測定する際の測定方向である。本実施形態のように被測定対象がディスク110である回転型のエンコーダにおいては、測定方向はディスク110の円周方向に一致する。1つ1つの反射スリットは、後述する光学モジュール130の光源131から出射された光を反射するように構成される。すなわち、エンコーダ100は、光源131からの光が反射スリットで反射されて、後述する受光素子で受光される、いわゆる「反射型」エンコーダである。複数の反射スリットは、円周方向で例えばインクリメンタルパターンを有するように、ディスク110の全周に配置されている。」

「【0035】
基板16は、例えば円板状のプリント配線基板であり、その下面には、光学モジュール130及び複数の回路素子等が搭載されている。この基板16は、ハウジング150とほぼ同じ直径となるように形成されており、その縁部がハウジング150の面151に載置されている。基板16の縁部には、固定ネジ15が貫通する複数の貫通孔16Aが円周方向に均等な間隔で設けられている。ハウジング150は、例えば円筒状に形成されており、基板16を支持すると共に、エンコーダ100のディスク110、光学モジュール130、及びハブ160等を収容するように構成される。このハウジング150は、固定ネジ15が貫通する複数の貫通孔152を有している。固定ネジ15は、基板16の貫通孔16A及びハウジング150の貫通孔152を上下方向に貫通して、筐体10に設けられたネジ穴に螺合する。これにより、基板16及びハウジング150が筐体10に固定される。」

「【図2】



(イ) 引用文献2記載事項の認定
引用文献2の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献2には、以下の2つの技術事項が記載されていると認められる。

<引用文献2記載事項1>
「エンコーダ100において、スリットトラックSAが形成され、略中央部に貫通孔111が設けられた円板状のディスク110を、ハブ160の上に配置すること(【0021】〜【0023】、【図2】)。」

<引用文献2記載事項2>
「エンコーダ100において、円筒状に形成されたハウジング150が、ディスク110、光学モジュール130及びハブ160を収容するように構成し、下面に光学モジュール130を搭載した円板状のプリント配線基板である基板16の縁部が、ハウジング150の面151に載置されるように構成すること(【0021】、【0035】、【図2】)。」

ウ 周知技術
(ア) 引用文献5の記載
引用文献5には、以下の記載がある。下線は当審が付した。

「【0023】
<2.エンコーダ>
次に、図2〜図7を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダ100について説明する。図2に示すように、本実施形態に係るエンコーダ100は、いわゆる反射型エンコーダであり、ディスク110と、磁石MGと、磁気検出部120と、光学モジュール130と、位置データ生成部140とを有する。」

「【0036】
一方、光学モジュール130は、図2〜図4に示すように、基板BAの下面(Z軸負の方向の面)、すなわちディスク110に対向する側の面に、光源131と、受光アレイPAと、受光素子PDとを有する。光源131は、対向する位置を通過するスリットアレイSA及びスリットSの一部分に光を照射する。」

「【図2】



(イ) 引用文献6の記載
引用文献6には、以下の記載がある。下線は当審が付した。

「【0017】
反射型のアブソリュートエンコーダ1は、図1に示すように、モータ軸6と連動して回転するようにモータ軸6の先端部に装着される回転符号板3を有しており、回転符号板3の上面には、円環状のインクリメンタルパターン8が、そのパターン中心をモータ軸6の軸心CT1に一致させた形で形成されているとともに、インクリメンタルパターン8の内側に円環状のアブソリュートパターン9が、そのパターン中心をモータ軸6の軸心CT1に一致させた形でインクリメンタルパターン8と同心円状に形成されている。
【0018】
また、回転符号板3の上方には、図1に示すように、プリント配線基板5が配設されており、プリント配線基板5の下面(つまり、回転符号板3側の面)には検出ユニット2が、インクリメンタルパターン8およびアブソリュートパターン9に対向する位置に貼設されている。
【0019】
そして、この検出ユニット2は、図2に示すように、長方形板状のシリコン基板21を有している。シリコン基板21上には、その中央部にLED(発光ダイオード)などの発光素子22が設けられているとともに、円弧状の第1および第2の受光素子アレイ23、24が発光素子22を挟んで互いに対向する形で配設されている。」

「【図1】



(ウ) 周知技術の認定
引用文献5及び6に記載されているように、以下の技術は周知技術である。

<周知技術>
「エンコーダにおいて、一つの発光素子と、前記発光素子を挟むように配置された二つの受光素子を備えた光学検出器により、回転するディスクに隣接して形成された二つのパターンを読み取ること。」

(4) 対比
本件補正発明と引用発明を対比する。

ア 本件補正発明と引用発明は、「エンコーダ」の発明である点で一致する。

イ 引用発明の「磁石MG」は、本件補正発明の「磁石」に相当する。
引用発明の「ディスク110」は、「磁石MG」を有するものであるから、本件補正発明の「キャリアディスク」に相当し、また、「光学的な複数のスリットSLA及びSLBを有する光学的な回転格子LA及びLBが形成され」た「トラックTA及びTB」を有するものであるから、本件補正発明の「光学式符号化ディスク」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「キャリアディスク」と「磁石」と「光学式符号化ディスク」を備える点で共通する。

ウ 引用発明の「検出部130X」は、「磁石MGに対向して配置され」、「ディスク110の回転に応じた磁石MGの磁界の向きの回転を検出」するものであるから、本件補正発明の「磁石と組み合わされた磁気式検出アセンブリ」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「磁石と組み合わされた磁気式検出アセンブリ」を備える点で共通する。

エ 引用発明の「検出部130A」及び「検出部130B」は、「それぞれ、発光部131と受光部132を有し」、「トラックTA」及び「トラックTB」に「対向して配置され」、「トラックTA及びTBのそれぞれには、光学的な複数のスリットSLA及びSLBを有する光学的な回転格子LA及びLBが形成され」ているから、引用発明の「検出部130A」及び「検出部130B」は、本件補正発明の「光学式符号化ディスクと組み合わされた光学式検出アセンブリ」に相当する。
また、引用発明の「トラックTAによる検出機構」(「第1インクレ検出機構」)及び「トラックTBによる検出機構」(「第2インクレ検出機構」)のそれぞれで得られる「第1インクレ検出信号」及び「第2インクレ検出信号」から、それぞれ「第2位置データ」及び「第3位置データ」が「生成」されるところ、「第2位置データ」は、ディスク1回転で電気角φA(0°〜360°)が4回単調に増加(又は減少)し、「第3位置データ」は、ディスク1回転で電気角φB(0°〜360°)が16回単調に増加(又は減少)するものである。
そうすると、このような「第1インクレ検出機構」に係る「トラックTA」及び「第2インクレ検出機構」に係る「トラックTB」は、それぞれ本件補正発明の「第1インクリメンタルパターントラック」及び「第2インクリメンタルパターントラック」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「第1インクリメンタルパターントラック及び第2インクリメンタルパターントラックを有する前記光学式符号化ディスクと組み合わされた光学式検出アセンブリ」を備える点で共通する。

オ 引用発明の「位置データ生成部140」は、各検出信号に基づいて位置データを生成するものであるから、本件補正発明の「信号処理ユニット」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「信号処理ユニット」を備える点で共通する。

カ (ア) 前記エで説示したとおり、引用発明の「ディスク110」が有する「トラックTA」及び「トラックTB」は、それぞれ、本件補正発明の「光学式符号化ディスク」が有する「第1インクリメンタルパターントラック」及び「第2インクリメンタルパターントラック」に相当する。

(イ) そして、引用発明の「トラックTA」及び「トラックTB」は、それぞれ、「ディスク中心Oを中心とした同心円状に形成され」たものであるところ、この点は、本件補正発明において、「前記第1インクリメンタルパターントラック及び前記第2インクリメンタルパターントラックは前記光学式符号化ディスクの周方向に沿ってそれぞれ配置され」たことに相当する。

(ウ) さらに、引用発明の「ディスク110」は、「円板状に形成され、ディスク中心Oが回転軸AXとほぼ一致するように配置され、回転軸AX周りに回転可能」であり、「磁石MG」は「両磁極(N極及びS極)がディスク面と平行な方向でディスク中心O(回転軸AX)を挟んで対称に位置するように配置され」たものであるところ、この点は、本件補正発明において、「前記キャリアディスク、前記磁石、及び前記光学式符号化ディスクは、回転軸を中心として構造的に同軸であり、且つ回転可能であ」ることに相当する。

(エ) 前記(ア)〜(ウ)より、本件補正発明と引用発明は、「前記光学式符号化ディスクは前記第1インクリメンタルパターントラック及び前記第2インクリメンタルパターントラックを有し、前記第1インクリメンタルパターントラック及び前記第2インクリメンタルパターントラックは前記光学式符号化ディスクの周方向に沿ってそれぞれ配置され、前記キャリアディスク、前記磁石、及び前記光学式符号化ディスクは、回転軸を中心として構造的に同軸であり、且つ回転可能であ」る点で一致する。

キ 引用発明の「検出部130X」は、「ディスク110の回転に応じた磁石MGの磁界の向きの回転を検出し、この検出信号は、ディスク110の1回転あたりの大まかな絶対位置xを表す1X検出信号であ」るところ、引用発明の「1X検出信号」は、「ディスク110の1回転あたりの大まかな絶対位置xを表す」ものであるから、本件補正発明の「絶対位置信号」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記磁気式検出アセンブリは、前記磁石が」「動く際に磁気式検出を行い絶対位置信号を取得するためのものであ」る点で共通する。

ク 引用発明の「検出部130A及び検出部130B」は、「それぞれ、発光部131と受光部132を有し」、「受光部132は電気信号を生成し、第1インクレ検出機構及び第2インクレ検出機構のそれぞれで得られる信号は、第1インクレ検出信号及び第2インクレ検出信号であ」るところ、上記エの検討内容を踏まえると、引用発明の「第1インクレ検出信号」及び「第2インクレ検出信号」は、それぞれ、本件補正発明の「第1インクリメンタル位置信号」及び「第2インクリメンタル位置信号」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記光学式検出アセンブリは、前記光学式符号化ディスクが」「動く際に光学式検出を行い第1インクリメンタル位置信号及び第2インクリメンタル位置信号を取得するためのものであ」る点で共通する。

ケ 引用発明の「位置データ生成部140」は、「1X検出信号、第1インクレ検出信号及び第2インクレ検出信号」を変換して「第1位置データ〜第3位置データ」を生成するものであり、「位置データ生成部140」が有する「位置データ算出部141」は、「第1位置データが表す絶対位置に、第2位置データが表す比較的高分解能な位置を重畳することにより、第2位置データと同程度の分解能の絶対位置xを算出し、同様に、第2位置データから算出された絶対位置xに、更にそれよりも分解能が高い第3位置データが表す位置を重畳することにより、第3位置データと同程度の分解能の絶対位置xを算出するものであ」る。
ここで、引用発明において、「第1位置データが表す絶対位置に、第2位置データが表す比較的高分解能な位置を重畳すること」及び「第2位置データから算出された絶対位置xに、更にそれよりも分解能が高い第3位置データが表す位置を重畳すること」は、本件補正発明において、「前記絶対位置信号、前記第1インクリメンタル位置信号、及び前記第2インクリメンタル位置信号を受信して積分」することに相当する。さらに、引用発明において、「重畳すること」の結果得られる「第3位置データと同程度の分解能の絶対位置x」は、本件補正発明における「絶対位置情報」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記信号処理ユニットは、前記絶対位置信号、前記第1インクリメンタル位置信号、及び前記第2インクリメンタル位置信号を受信して積分し、絶対位置情報を得」るものである点で一致する。

コ (ア) 引用発明では、第2位置データは、ディスク1回転で電気角φA(0°〜360°)が4回単調に増加(又は減少)し、第3位置データは、ディスク1回転で電気角φB(0°〜360°)が16回単調に増加(又は減少)するものであるところ、第2位置データの周期数がmA=4であり、第3位置データの周期数がmB=16となるようにトラックTA、TBそれぞれのスリット本数nA及びnBが設定されているといえるから、引用発明の「トラックTA及びTBのそれぞれに」「形成」された「光学的な複数のスリットSLA及びSLBを有する光学的な回転格子LA及びLB」は、それぞれ、本件補正発明の「前記光学式符号化ディスクの前記周方向に沿った1回転」における「M個の第1インクリメンタルパターン」及び「N個の第2インクリメンタルパターン」に相当する。

(イ) 引用発明は、「トラックTA,TBそれぞれのスリット本数nA,nBは、nA<nBとなるように設定され」たものであるところ、この点は、本件補正発明において、「M及びNは整数であり、NはMより大き」いことに相当する。

(ウ) 引用発明は、「スリットSLA及びSLBは、光を反射し、それ以外の部位は、光を反射」しないものであるところ、この点は、本件補正発明において、「各前記第1インクリメンタルパターン及び各前記第2インクリメンタルパターンは、低反射率領域及び高反射率領域を有」することに相当する。

(エ) 前記(ア)〜(ウ)より、本件補正発明と引用発明は、「前記第1インクリメンタルパターントラックは、前記光学式符号化ディスクの前記周方向に沿った1回転においてM個の第1インクリメンタルパターンを有し、前記第2インクリメンタルパターントラックは、前記光学式符号化ディスクの前記周方向に沿った1回転においてN個の第2インクリメンタルパターンを有し、M及びNは整数であり、NはMより大きく、各前記第1インクリメンタルパターン及び各前記第2インクリメンタルパターンは、低反射率領域及び高反射率領域を有」する点で一致する。

サ 引用発明の「検出部130A及び検出部130Bは、それぞれ、発光部131と受光部132を有」するものである。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記光学式検出アセンブリは発光素子及び少なくとも1つの受光素子を備え」る点で共通する。

シ 前記ウ及びキで説示したとおり、引用発明において「検出部130X」で検出する「1X検出信号」は、本件補正発明において「磁気式検出アセンブリ」で検出する「絶対位置信号」に相当する。
そして、引用発明において、「ディスク110の回転角度θ(位置x)が360°回転する」ことは、本件補正発明において、「前記磁石が前記回転軸を中心にして1回転する」ことに相当し、引用発明において、「電気角φxで360°回転(つまり1周期)する正弦波状の電気信号となる」ことは、本件補正発明において、「前記磁気式検出アセンブリの位置において磁気特性が対応して1周期分変化し、前記磁気式検出アセンブリは磁気特性の変化を検出して電気信号への変換を行」うことに相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記磁石が前記回転軸を中心にして1回転すると、前記磁気式検出アセンブリの位置において磁気特性が対応して1周期分変化し、前記磁気式検出アセンブリは磁気特性の変化を検出して電気信号への変換を行い、前記磁気式検出アセンブリは前記電気信号に従って前記絶対位置信号を出力する」点で一致する。

(5) 一致点及び相違点
前記(4)の対比の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点
「エンコーダであって、
キャリアディスクと、
磁石と、
光学式符号化ディスクと、
前記磁石と組み合わされた磁気式検出アセンブリと、
第1インクリメンタルパターントラック及び第2インクリメンタルパターントラックを有する前記光学式符号化ディスクと組み合わされた光学式検出アセンブリと、
信号処理ユニットとを備え、
前記光学式符号化ディスクは前記第1インクリメンタルパターントラック及び前記第2インクリメンタルパターントラックを有し、前記第1インクリメンタルパターントラック及び前記第2インクリメンタルパターントラックは前記光学式符号化ディスクの周方向に沿ってそれぞれ配置され、前記キャリアディスク、前記磁石、及び前記光学式符号化ディスクは、回転軸を中心として構造的に同軸であり、且つ回転可能であり、
前記磁気式検出アセンブリは、前記磁石が動く際に磁気式検出を行い絶対位置信号を取得するためのものであり、
前記光学式検出アセンブリは、前記光学式符号化ディスクが動く際に光学式検出を行い第1インクリメンタル位置信号及び第2インクリメンタル位置信号を取得するためのものであり、
前記信号処理ユニットは、前記絶対位置信号、前記第1インクリメンタル位置信号、及び前記第2インクリメンタル位置信号を受信して積分し、絶対位置情報を得、
前記第1インクリメンタルパターントラックは、前記光学式符号化ディスクの前記周方向に沿った1回転においてM個の第1インクリメンタルパターンを有し、前記第2インクリメンタルパターントラックは、前記光学式符号化ディスクの前記周方向に沿った1回転においてN個の第2インクリメンタルパターンを有し、M及びNは整数であり、NはMより大きく、各前記第1インクリメンタルパターン及び各前記第2インクリメンタルパターンは、低反射率領域及び高反射率領域を有し、
前記光学式検出アセンブリは発光素子及び少なくとも1つの受光素子を備え、
前記磁石が前記回転軸を中心にして1回転すると、前記磁気式検出アセンブリの位置において磁気特性が対応して1周期分変化し、前記磁気式検出アセンブリは磁気特性の変化を検出して電気信号への変換を行い、前記磁気式検出アセンブリは前記電気信号に従って前記絶対位置信号を出力する、
エンコーダ。」

イ 相違点
(ア) 相違点1
本件補正発明は、「磁石」が「前記キャリアディスク上に配置され」、「光学式符号化ディスク」が「前記キャリアディスク上に配置され前記磁石を囲む」のに対して、引用発明は、「磁石MG」を有するディスクと「トラックTA及びTB」を有するディスクが別体ではなく、「ディスク110」がキャリアディスクと光学式符号化ディスクの両方を兼ねているため、「前記キャリアディスク上に配置された磁石」及び「前記キャリアディスク上に配置され前記磁石を囲む光学式符号化ディスク」という位置関係を満たさない点。

(イ) 相違点2
本件補正発明は、「前記キャリアディスクを囲む筐体と、前記筐体上に配置された回路基板」を有し、「磁気式検出アセンブリ」、「光学式検出アセンブリ」及び「信号処理ユニット」が「前記回路基板上に配置され」たものであり、「前記キャリアディスク、前記磁石、及び前記光学式符号化ディスクは、前記筐体に対して動くことが可能であ」り、「磁気式検出」及び「光学式検出」が「前記筐体に対して動く際に」行われるのに対して、引用発明は、「筐体」及び「回路基板」を有しない点。

(ウ) 相違点3
本件補正発明は、「前記光学式検出アセンブリは発光素子及び少なくとも1つの受光素子を備え、前記受光素子は、第1インクリメンタル受光領域及び第2インクリメンタル受光領域を有し、前記第1インクリメンタル受光領域及び前記第2インクリメンタル受光領域は、前記発光素子の両側にそれぞれ存在」するものであるのに対して、引用発明は、「検出部130A」及び「検出部130B」が、それぞれ、「発光部131」と「受光部132」を有する点。

(6) 相違点についての判断
ア 相違点1について
引用文献2には、「エンコーダ100において、スリットトラックSAが形成され、略中央部に貫通孔111が設けられた円板状のディスク110を、ハブ160の上に配置すること。」が記載されている(前記(3)イ(イ)の「引用文献2記載事項1」)。
ここで、引用文献2記載事項1における「ハブ160」及び「ディスク110」は、それぞれ、本件補正発明における「キャリアディスク」及び「光学式符号化ディスク」に相当する。
引用発明は、「ディスク110」が「磁石MG」及び「トラックTA及びTB」をともに有するものであるが、ディスクにトラックを形成するときの位置精度や製造コスト等を考慮して、エンコーダにおける代替的な構成を採用する動機を当業者は有していたというべきである。よって、引用発明に引用文献2記載事項1を適用して、「ディスク110」とは異なるディスクを設け、当該異なるディスクに「トラックTA及びTB」を形成して光学式符号化ディスクとし、当該「ディスク110」の上に配置するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用発明に対してこのような適用を行う場合の最も自然な位置関係は、「ディスク110」上の中心に「磁石MG」が配置され、その周囲に、略中央部に貫通孔が設けられた円板状の「トラックTA及びTB」付きディスク(光学式符号化ディスク)が配置されたものであり、このような位置関係は、相違点1に係る「キャリアディスクと、前記キャリアディスク上に配置された磁石と、前記キャリアディスク上に配置され前記磁石を囲む光学式符号化ディスク」という構成を満たしている。
したがって、引用発明に引用文献2記載事項1を適用して、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
引用文献2には、「エンコーダ100において、円筒状に形成されたハウジング150が、ディスク110、光学モジュール130及びハブ160を収容するように構成し、下面に光学モジュール130を搭載した円板状のプリント配線基板である基板16の縁部が、ハウジング150の面151に載置されるように構成すること。」が記載されている(前記(3)イ(イ)の「引用文献2記載事項2」)。
ここで、引用文献2記載事項2における「ハウジング150」及び「基板16」は、それぞれ、本件補正発明における「筐体」及び「回路基板」に相当する。
引用発明は、「磁石MG」及び「トラックTA,TB」をそれぞれ「検出部130X」及び「検出部130A,130B」で検出するエンコーダであるから、それらの隙間に塵埃や外光が侵入しないようにする動機を当業者は有していたというべきである。よって、引用発明に引用文献2記載事項2を適用して、「ディスク110」を囲む筐体と、当該筐体上に配置された回路基板を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用文献2記載事項2では、「基板16」に「光学モジュール130」が搭載されているところ、引用発明に引用文献2記載事項2を適用するにあたって、「検出部130A,130B」だけでなく、「検出部130X」及び「位置データ生成部140」といった回路も一つの回路基板上に設けるのが通常の合理的な発想である。また、引用文献2記載事項2における「ハウジング150」は固定されたものであるから、引用発明に引用文献2記載事項2を適用した場合、「ディスク110」やその上に配置された部材が筐体に対して動くことが可能であることは自明であり、磁気式検出や光学式検出も前記筐体に対して動く際に行われることになる。
したがって、引用発明に引用文献2記載事項2を適用して、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 相違点3について
「エンコーダにおいて、一つの発光素子と、前記発光素子を挟むように配置された二つの受光素子を備えた光学検出器により、回転するディスクに隣接して形成された二つのパターンを読み取ること。」は周知技術である(前記(3)ウ(ウ))。
ここで、前記周知技術における「一つの発光素子」及び「発光素子を挟むように配置された二つの受光素子」は、それぞれ、本件補正発明における「発光素子」及び「発光素子の両側にそれぞれ存在」する「第1インクリメンタル受光領域及び第2インクリメンタル受光領域」に相当する。
引用発明は、「トラックTA」を検出する「検出部130A」及び「トラックTB」を検出する「検出部130B」が、それぞれ、「発光部131」と「受光部132」を有するものであるが、引用文献1の【図3】によると、「トラックTA」と「トラックTB」は隣接して形成された二つのパターンであるから、引用発明に前記周知技術を適用し、「一つの発光素子」及び「発光素子を挟むように配置された二つの受光素子」により、「トラックTA」及び「トラックTB」を読み取るようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、引用発明に前記周知技術を適用して、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(7) 作用効果について
本件補正発明の奏する作用効果として、引用発明、引用文献2記載事項1,2及び周知技術から予測されるものを超える格別顕著なものは、認めることができない。

(8) 審判請求人の主張について
審判請求人は審判請求書の4頁2〜12行において、「新請求項1に係るエンコーダは、光学式検出アセンブリを備え、「前記光学式検出アセンブリは発光素子及び少なくとも1つの受光素子を備え、前記受光素子は、第1インクリメンタル受光領域及び第2インクリメンタル受光領域を有し、前記第1インクリメンタル受光領域及び前記第2インクリメンタル受光領域は、前記発光素子の両側にそれぞれ存在」する構成を特徴とします。このような構成により、発光素子により照射された光の反射光を第1インクリメンタル受光領域及び第2インクリメンタル受光領域の各々が受光可能となり、その結果得られる光エネルギーの強度分布をもとに高精度の絶対位置情報を得ることができます(段落0024を参照)。引用文献1,2,4のいずれにおいても、本願の新請求項1に係る上記構成の開示又は示唆はありません。」と主張している。
しかしながら、前記(6)ウで説示したとおり、本件補正発明の「前記光学式検出アセンブリは発光素子及び少なくとも1つの受光素子を備え、前記受光素子は、第1インクリメンタル受光領域及び第2インクリメンタル受光領域を有し、前記第1インクリメンタル受光領域及び前記第2インクリメンタル受光領域は、前記発光素子の両側にそれぞれ存在」するという構成は、引用発明に前記周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものであるから、この主張は採用することができない。
また、審判請求人は審判請求書の5頁15〜23行において、「さらに、新請求項1に係るエンコーダは、磁石を備え、「前記磁石が前記回転軸を中心にして1回転すると、前記磁気式検出アセンブリの位置において磁気特性が対応して1周期分変化し、前記磁気式検出アセンブリは磁気特性の変化を検出して電気信号への変換を行い、前記磁気式検出アセンブリは前記電気信号に従って前記絶対位置信号を出力する」構成を特徴とします。このような構成により、出力された絶対位置信号を処理して、高精度の絶対位置情報を得ることが可能となります(段落0020を参照)。引用文献1,2のいずれにおいても、本願の新請求項1に係る当該構成の開示又は示唆はありません。」と主張している。
しかしながら、前記(4)シで説示したとおり、本件補正発明の「前記磁石が前記回転軸を中心にして1回転すると、前記磁気式検出アセンブリの位置において磁気特性が対応して1周期分変化し、前記磁気式検出アセンブリは磁気特性の変化を検出して電気信号への変換を行い、前記磁気式検出アセンブリは前記電気信号に従って前記絶対位置信号を出力する」するという構成は、引用発明が備えるものであるから、この主張は採用することができない。

(9) 独立特許要件についての判断のまとめ
よって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項1,2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2で説示したとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
本願発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献1:特開2011−257166号公報(前掲)
引用文献2:特開2015−90305号公報(前掲)

3 引用文献に記載された発明等
引用文献1には、前記第2の3(3)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「光学式検出アセンブリ」について、「発光素子及び少なくとも1つの受光素子を備え、前記受光素子は、第1インクリメンタル受光領域及び第2インクリメンタル受光領域を有し、前記第1インクリメンタル受光領域及び前記第2インクリメンタル受光領域は、前記発光素子の両側にそれぞれ存在」するという記載を省くとともに、本件補正発明の「磁石」及び「磁気式検出アセンブリ」について、「前記磁石が前記回転軸を中心にして1回転すると、前記磁気式検出アセンブリの位置において磁気特性が対応して1周期分変化し、前記磁気式検出アセンブリは磁気特性の変化を検出して電気信号への変換を行い、前記磁気式検出アセンブリは前記電気信号に従って前記絶対位置信号を出力する」という記載を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、前記第2の3(5)イ(ア)で示した相違点1及び前記第2の3(5)イ(イ)で示した相違点2のみにおいて相違する。
そして、前記第2の3(6)アで示したとおり、相違点1に係る構成は、引用発明と引用文献2記載事項1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。また、前記第2の3(6)イで示したとおり、相違点2に係る構成は、引用発明と引用文献2記載事項2に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本願発明は、引用文献1及び引用文献2記載事項1,2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 中塚 直樹
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-09-16 
結審通知日 2021-09-21 
審決日 2021-10-07 
出願番号 P2019-079898
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 濱野 隆
岸 智史
発明の名称 エンコーダ及びその位置検出方法  
代理人 奥野 彰彦  
代理人 伊藤 寛之  
代理人 SK特許業務法人  

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