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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W |
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管理番号 | 1382872 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-01-19 |
確定日 | 2022-03-23 |
事件の表示 | 特願2018−235530「上りリンク制御情報を送信するための方法及びそのための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日出願公開、特開2019−41424、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)1月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年1月20日 米国、2015年2月12日 米国、2015年4月9日 米国、2015年8月24日 米国、2015年9月9日 米国)を国際出願日とする特願2017−533550号の一部を平成30年12月17日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年12月17日 :上申書の提出 令和 元年10月 1日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 1月 7日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年 1月23日付け:拒絶理由通知書(最後) 令和 2年 6月26日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年 9月17日付け:令和2年6月26日にされた手続補正 についての補正の却下の決定、拒絶査定 令和 3年 1月19日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出 令和 3年 9月 9日付け:拒絶理由通知書(当審) 令和 4年 1月 5日 :意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和2年9月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性):この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1ないし20に対して、引用文献1及び引用文献2 引用文献等一覧 1.特表2014−522209号公報(以下、「引用文献1」という。) 2.米国特許出願公開第2014/0286208号明細書(以下、「引用文献2」という。) 第3 当審拒絶理由の概要 当審における令和3年9月9日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。 1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 理由1(明確性)、理由2(サポート要件)について 請求項1の「複数のDCIタイミングを含む時間区間内の前記DCIが受信された現在のDCIタイミングまでの複数のセルにわたる時間における下りリンクスケジューリングに関連したスケジュールされたDCIの累積数に関連した値を示す、」(下線は当審で付与した。)という記載について、「時間における」が何をどのように特定しようとしているのか不明であり、また、発明の詳細な説明のどの部分によってサポートされているのか不明である。 請求項6、11、16についても同様である。 したがって、請求項1−20に係る発明は明確でなく、発明の詳細な説明に記載されていない。 理由3(進歩性)について ・請求項1ないし20に対して、引用文献1及び引用文献2 引用文献等一覧 1.特表2014−522209号公報 2.米国特許出願公開第2014/0286208号明細書 第4 本願発明 本願請求項1ないし20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明20」という。)は、令和4年1月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 無線通信システムにおいて通信装置によって制御情報を送信する方法であって、前記方法は、 下りリンクスケジューリングに関連したDCI(downlink control information)を受信することであって、前記DCIは、DAI(downlink assignment index)を含む、ことと、 前記DCIに基づいて下りリンクデータを受信することと、 前記DAIに基づいて、前記下りリンクデータに関するA/N(acknowledgement/negative acknowledgement)応答を含む制御情報を送信することと を含み、 前記DAIは、前記DCIが受信された該当DCI時点までの複数のセルにわたりカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積総数に関連した値を示し、 前記複数のセルのうちの2つ以上のセルが前記該当DCI時点でスケジュールされる状態において、前記DAIによって示される前記値は、前記2つ以上のスケジュールされたセルの全てについて同一である、方法。 【請求項2】 前記制御情報は、HARQ(hybrid automatic repeat request)ACK(acknowledgement)ビットを含み、前記HARQ ACKビットの数は、前記DAIに基づいて決定される、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記制御情報は、コーディングされたシンボルを含み、コーディングされたシンボルの数は、前記HARQ ACKビットの数に基づいて決定される、請求項2に記載の方法。 【請求項4】 前記DCIは、PDCCH(physical downlink control channel)を介して受信され、前記下りリンクデータは、PDSCH(physical downlink shared channel)を介して受信される、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記制御情報は、PUSCH(physical uplink shared channel)を介して送信される、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 無線通信システムにおいて通信装置によって制御情報を受信する方法であって、前記方法は、 下りリンクスケジューリングに関連したDCI(downlink control information)を送信することであって、前記DCIは、DAI(downlink assignment index)を含む、ことと、 前記DCIに基づいて下りリンクデータを送信することと、 前記DAIに基づいて、前記下りリンクデータに関するA/N(acknowledgement/negative acknowledgement)応答を含む制御情報を受信することと を含み、 前記DAIは、前記DCIが送信された該当DCI時点までの複数のセルにわたりカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積総数に関連した値を示し、 前記複数のセルのうちの2つ以上のセルが前記該当DCI時点でスケジュールされる状態において、前記DAIによって示される前記値は、前記2つ以上のスケジュールされたセルの全てについて同一である、方法。 【請求項7】 前記制御情報は、HARQ(hybrid automatic repeat request)ACK(acknowledgement)ビットを含み、前記HARQ ACKビットの数は、前記DAIに基づいて決定される、請求項6に記載の方法。 【請求項8】 前記制御情報は、コーディングされたシンボルを含み、コーディングされたシンボルの数は、前記HARQ ACKビットの数に基づいて決定される、請求項7に記載の方法。 【請求項9】 前記DCIは、PDCCH(physical downlink control channel)を介して送信され、前記下りリンクデータは、PDSCH(physical downlink shared channel)を介して送信される、請求項6に記載の方法。 【請求項10】 前記制御情報は、PUSCH(physical uplink shared channel)を介して受信される、請求項6に記載の方法。 【請求項11】 無線通信システムにおいて使用される通信装置であって、 前記通信装置は、 メモリと、 前記メモリに接続されたプロセッサと を備え、 前記プロセッサは、 下りリンクスケジューリングに関連したDCI(downlink control information)を受信することであって、前記DCIは、DAI(downlink assignment index)を含む、ことと、 前記DCIに基づいて下りリンクデータを受信することと、 前記DAIに基づいて、前記下りリンクデータに関するA/N(acknowledgement/negative acknowledgement)応答を含む制御情報を送信することと を実行するように構成され、 前記DAIは、前記DCIが受信された該当DCI時点までの複数のセルにわたりカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積総数に関連した値を示し、 前記複数のセルのうちの2つ以上のセルが前記該当DCI時点でスケジュールされる状態において、前記DAIによって示される前記値は、前記2つ以上のスケジュールされたセルの全てについて同一である、通信装置。 【請求項12】 前記制御情報は、HARQ(hybrid automatic repeat request)ACK(acknowledgement)ビットを含み、前記HARQ ACKビットの数は、前記DAIに基づいて決定される、請求項11に記載の通信装置。 【請求項13】 前記制御情報は、コーディングされたシンボルを含み、コーディングされたシンボルの数は、前記HARQ ACKビットの数に基づいて決定される、請求項12に記載の通信装置。 【請求項14】 前記DCIは、PDCCH(physical downlink control channel)を介して受信され、前記下りリンクデータは、PDSCH(physical downlink shared channel)を介して受信される、請求項11に記載の通信装置。 【請求項15】 前記制御情報は、PUSCH(physical uplink shared channel)を介して送信される、請求項11に記載の通信装置。 【請求項16】 無線通信システムにおいて使用される通信装置であって、 前記通信装置は、 メモリと、 前記メモリに接続されたプロセッサと を備え、 前記プロセッサは、 下りリンクスケジューリングに関連したDCI(downlink control information)を送信することであって、前記DCIは、DAI(downlink assignment index)を含む、ことと、 前記DCIに基づいて下りリンクデータを送信することと、 前記DAIに基づいて、前記下りリンクデータに関するA/N(acknowledgement/negative acknowledgement)応答を含む制御情報を受信することと を実行するように構成され、 前記DAIは、前記DCIが送信された該当DCI時点までの複数のセルにわたりカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積総数に関連した値を示し、 前記複数のセルのうちの2つ以上のセルが前記該当DCI時点でスケジュールされる状態において、前記DAIによって示される前記値は、前記2つ以上のスケジュールされたセルの全てについて同一である、通信装置。 【請求項17】 前記制御情報は、HARQ(hybrid automatic repeat request)ACK(acknowledgement)ビットを含み、前記HARQ ACKビットの数は、前記DAIに基づいて決定される、請求項16に記載の通信装置。 【請求項18】 前記制御情報は、コーディングされたシンボルを含み、コーディングされたシンボルの数は、前記HARQ ACKビットの数に基づいて決定される、請求項17に記載の通信装置。 【請求項19】 前記DCIは、PDCCH(physical downlink control channel)を介して送信され、前記下りリンクデータは、PDSCH(physical downlink shared channel)を介して送信される、請求項16に記載の通信装置。 【請求項20】 前記制御情報は、PUSCH(physical uplink shared channel)を介して受信される、請求項16に記載の通信装置。」 第5 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由で引用された、引用文献1(特表2014−522209号公報)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) (1)「【0004】 本発明の一態様として、搬送波集約(carrier aggregation)をサポートし、TDDで動作する無線通信システムにおいてアップリンク制御情報を送信する方法であって、・・・。(後略)」 (2)「【0016】 説明を明確にするために、3GPPLTE/LTE−Aを中心に説明するが、これに本発明の技術的思想が制限されるわけではない。また、以下の説明で使われる特定用語は、本発明の理解を助けるために提供されるものであって、このような特定用語の使用は、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で他の形態に変更してもよい。 【0017】 まず、本明細書で用いられる用語についてまとめる。 【0018】 ●HARQ−ACK:ダウンリンク送信(例えば、物理ダウンリンク共有チャネル(PDSCH)又は半永続スケジュール(SPS)解放(release)物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)に対する受信応答結果、すなわち、肯定応答(ACK)/否定応答(NACK)/不連続送信(DTX)応答(略して、ACK/NACK応答、ACK/NACK、A/N応答、A/Nともいう。)のことを指す。ACK/NACK応答は、ACK、NACK、DTX、又はNACK/DTXを意味する。CCに対するHARQ−ACK又はCCのHARQ−ACKは、該当のCCに関連している(例えば、該当のCCにスケジュールされた)ダウンリンク送信に対するACK/NACK応答を意味する。PDSCHは、伝送ブロック又は符号語と言い換えてもよい。 【0019】 ●PDSCH:DL許可PDCCHに対応するPDSCHを意味する。本明細書においてPDSCHはPDSCHw/PDCCHと同じ意味で使われる。 (中略) 【0022】 ●ダウンリンク割当インデクス(DAI):PDCCHを介して送信されるDCIに含まれる。DAIは、PDCCHの順序値又はカウンタ値を表すものであってよい。便宜上、DL許可PDCCHのDAIフィールドが指示する値をDLDAI(Vと略す)と呼び、UL許可PDCCH内のDAIフィールドが指示する値をULDAI(Wと略す)と呼ぶ。」 (3)「【0046】 PUCCHは次の制御情報を送信するために用いてもよい。 【0047】 − スケジュール要求(SR):アップリンクUL−SCHリソースを要求するために用いられる情報である。オンオフ変調(OOK)方式で送信される。 【0048】 − HARQ ACK/NACK:PDSCH上のダウンリンクデータパケットに対する応答信号である。ダウンリンクデータパケットが成功裏に受信されたか否かを表す。一つのダウンリンク符号語(CW)に対する応答としてACK/NACK1ビットが送信され、二つのダウンリンク符号語に対する応答としてACK/NACK2ビットが送信される。」 (4)「【0072】 図7を参照すると、端末は、M個のDLサブフレーム(SF)上で一つ以上のDL送信(例えば、PDSCH信号)を受信することができる(S502_0〜S502_M−1)。 (中略) 【0073】 上述したとおり、TDDでは、M個のDLサブフレームで受信したデータに対するACK/NACKが一つのULサブフレームで送信され(すなわち、MDLSF(s):1UL SF)、それらの関係はダウンリンクアソシエーションセットインデクス(DASI)によって与えられる。 【0074】 表4は、LTE(−A)に定義されたDASI(K:{k0,k1,…,kM-1})を表すものである。表4は、ACK/NACKを送信するULサブフレームの観点で自身と関連しているDLサブフレームとの間隔を表す。具体的には、サブフレームn−k(k∈K)にPDSCH送信及び/又はSPS解放PDCCHがあれば、端末は、サブフレームnで対応のACK/NACKを送信する。 (中略) 【0079】 TDDで端末が基地局にACK/NACK信号を送信するときに下記の問題が生じることがある。 【0080】 ・複数のサブフレーム区間で基地局が送ったPDCCHのうちの一部を端末が取り損ねた場合、端末は、取り損ねたPDCCHに該当するPDSCHが自身に送信された事実さえ分からず、ACK/NACK生成時に誤りが発生することがある。 【0081】 このような誤りを解決するために、TDDシステムは、PDCCHにダウンリンク割当インデクス(DAI)を含める。DAIは、DLサブフレームn−k(k∈K)内で現在サブフレームまでのPDSCHに対応するPDCCH及びダウンリンクSPS解放を指示するPDCCHの累積値(すなわち、計数値)を表す。(中略) 【0085】 図8に、DL DAIを用いたACK/NACK送信を例示する。本例は、3DLサブフレーム:1ULサブフレームで構成されたTDDシステムを仮定する。便宜上、端末はPUSCHリソースを用いてACK/NACKを送信すると仮定する。既存のLTEでは、PUSCHを介してACK/NACKを送信する場合に1ビット又は2ビットのバンドルされたACK/NACKを送信する。 【0086】 図8を参照すると、例1)のように、2番目のPDCCHを取り損ねた場合、端末は、3番目のPDCCHのDL DAI値とその時まで検出されたPDCCHの数とが異なるため、2番目のPDCCHを取り損ねたことが分かる。この場合、端末は、2番目のPDCCHに対するACK/NACK応答をNACK(又はNACK/DTX)として処理できる。一方、例2)のように、最後のPDCCHを取り損ねた場合には、端末は、最後に検出したPDCCHのDAI値とそのときまで検出されたPDCCHの数とが一致するため、最後のPDCCHを取り損ねたことが認識できない(すなわち、DTX)。そのため、端末は、DLサブフレーム区間において2個のPDCCHだけがスケジュールされたものと認識する。この場合、端末は最初の2個のPDCCHに対応するACK/NACKだけをバンドルすることになるため、ACK/NACKフィードバック過程で誤りが発生する。このような問題を解決するために、PUSCHスケジュールPDCCH(すなわち、UL許可PDCCH)は、DAIフィールド(便宜上、UL DAIフィールド)を含む。UL DAIフィールドは、2ビットフィールドであり、スケジュールされたPDCCHの個数に関する情報を知らせる。」 上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。 ア 上記(1)の【0004】には、「本発明の一態様として、搬送波集約(carrier aggregation)をサポートし、TDDで動作する無線通信システムにおいてアップリンク制御情報を送信する方法であって、」と記載されている。そうすると、引用文献1には、「搬送波集約(carrier aggregation)をサポートし、TDDで動作する無線通信システムにおいてアップリンク制御情報を送信する方法」が記載されているといえる。 イ 上記(2)の【0022】には、「ダウンリンク割当インデクス(DAI):PDCCHを介して送信されるDCIに含まれる。DAIは、PDCCHの順序値又はカウンタ値を表すものであってよい。」と記載され、上記(4)の【0081】には、「TDDシステムは、PDCCHにダウンリンク割当インデクス(DAI)を含める。DAIは、DLサブフレームn−k・・・内で現在サブフレームまでのPDSCHに対応するPDCCH・・・の累積値(すなわち、計数値)を表す。」ことが記載されている。そうすると、ダウンリンク割当インデクス(DAI)は、PDCCHを介して送信されるDCIに含まれるものであるから、引用文献1には、「TDDシステムは、PDCCHを介してDCIを送信するものであって、DCIはダウンリンク割当インデクス(DAI)を含む」こと、「DAIは、DLサブフレームn−k内で現在サブフレームまでのPDSCHに対応するPDCCHの累積値を表す」ことが記載されているといえる。 ウ 上記(4)の【0073】には、「TDDでは、M個のDLサブフレームで受信したデータに対するACK/NACKが一つのULサブフレームで送信され」ること、【0074】には、「サブフレームn−k・・・にPDSCH送信・・・があれば、端末は、サブフレームnで対応のACK/NACKを送信する。」ことが記載されている。そうすると、引用文献1には、「TDDでは、DLサブフレームn−kで受信したデータに対するACK/NACKをサブフレームnで送信する」ことが記載されているといえる。 以上を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 搬送波集約(carrier aggregation)をサポートし、TDDで動作する無線通信システムにおいてアップリンク制御情報を送信する方法であって、 TDDシステムは、PDCCHを介してDCIを送信するものであって、DCIはダウンリンク割当インデクス(DAI)を含む、ことと、 TDDでは、DLサブフレームn−kで受信したデータに対するACK/NACKをサブフレームnで送信する、ことと を含み、 DAIは、DLサブフレームn−k内で現在サブフレームまでのPDSCHに対応するPDCCHの累積値を表す、 方法。」 2 引用文献2について 当審拒絶理由で引用された、引用文献2(米国特許出願公開第2014/0286208号明細書)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) (1)「[0052] FIG. 10 illustrates an operation of a joint DL DAI design across cells and DL subframes according to the related art. [0053] Referring to FIG. 10, DL DAI IE values are shown only for DL subframes and configured DL cells where the NodeB transmits a DL SA to a UE. The DL DAI counter starts from DL subframe 0 in Cell 0 1010 and continues in the cell-domain DL subframe 0 for Cell 1 1020 and Cell 21030. After all DL SAs across the DL cells in DL subframe 0 are counted, the DL DAI counter continues sequentially for the remaining DL Subframes in the bundling window in the same manner as used for the DL subframe 0. This DL DAI IE is also assumed to consist of 2 bits mapping to the values of VDAIDL=1, 2, 3, 0. After VDAIDL=3, the next value is VDAIDL=0 because VDAIDL is computed modulo 4.」 (当審訳: [0052] 図10は、従来技術によるセルを介したジョイントDL DAI設計の動作及びDLサブフレームを示す。 [0053] 図10を参照すると、DL DAI IE値はノードBがDL SAをUEに送信するDLサブフレーム及び設定されたDLセルに対してのみに示される。DL DAIカウンタは、セル0 1010でのDLサブフレーム0から開始し、セル1 1020及びセル2 1030に対するセル領域DLサブフレーム0で継続する。DLサブフレカウンタDLセル上のすべてのDL SAがカウントされた後、DL DAIカウンタは、バンドリングウィンドウでの残りのDLサブフレームに対してDLサブフレーム0で使用した同じ方式で連続的に続ける。このDL DAI IEも、VDAIDL=1、2、3、0の値に対応する2ビットで構成されると仮定する。VDAIDL=3の後、VDAIDLは4のモジュロで計算されるため、次の値はVDAIDL=0となる。) (2)「 ![]() 」 上記(1)の[0053]には、「図10を参照すると、DL DAI IE値は、ノードBがUEにDL SAを送信するDLサブフレームおよび構成されたDLセルについてのみ示されている。DL DAIカウンタは、セル0 1010のDLサブフレーム0から始まり、セル1 1020およびセル2 1030のセルドメインDLサブフレーム0に継続される。DLサブフレーム0内のDLセルにわたるすべてのDL SAがカウントされた後、DL DAIカウンタは、バンドルウィンドウ内の残りのDLサブフレームに対して、DLサブフレーム0に対して使用されるのと同じ方法で順次継続される。このDL DAI IEも、VDAIDL=1、2、3、0の値に対応する2ビットで構成されると仮定する。VDAIDL=3の後、VDAIDLは4のモジュロで計算されるため、次の値はVDAIDL=0となる。」と記載されており、当該記載を元に上記(2)の図10を参照すると、Cell2のDLサブフレーム1では、DL DAI IE値として、ノードBがDLサブフレーム0及びDLサブフレーム1で送信されたDL SAの数を考慮した値である、DAI=0、すなわちDL SAが現在のサブフレームまでの間で、複数のセルにおいて4つ送信されたことを表す累計数を表しているものであることが見て取れる。 そうすると、引用文献2には、「DAIは、複数のサブフレームにおいてDL SAが現在のサブフレームまでの間で、複数のセルにおいて送信された累積数を表す」という技術事項が記載されていると認められる。 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。 ア 引用発明は「搬送波集約(carrier aggregation)をサポートし、TDDで動作する無線通信システムにおいてアップリンク制御情報を送信する方法」であって、無線通信システムにおいてアップリンク制御情報の送信は、通信装置によって行われることは明らかであるから、引用発明の「搬送波集約(carrier aggregation)をサポートし、TDDで動作する無線通信システムにおいてアップリンク制御情報を送信する方法」は、本願発明1の「無線通信システムにおいて通信装置によって制御情報を送信する方法」に含まれる。 イ 引用発明には、「TDDシステムは、PDCCHを介してDCIを送信する」と記載されている。ここで、PDCCHは、基地局から端末である通信装置に向けて送信され、スケジューリングの決定に利用されるものであり、基地局から端末である通信装置に向けての送信は、ダウンリンク(下りリンク)と称され、DCIは下り制御情報であることは、無線通信システムの技術分野において技術常識であるから、DCIは下り(ダウン)リンクスケジューリングに関連した情報であることは自明である。ここで、上記「ア」で説示した「通信装置」は「アップリンク制御情報」を送信するものであるから、下り(ダウン)リンクの情報である、下りリンクスケジューリングに関連したDCIを受信するものであることは明らかである。そして、引用発明には、「DCIはダウンリンク割当インデクス(DAI)を含む」と記載されているから、本願発明1と引用発明は、「DCIはダウンリンク割当インデクス(DAI)を含む」点で、共通する。 そうすると、本願発明1と引用発明は、通信装置が「下りリンクスケジューリングに関連したDCI(downlink control information)を受信することであって、前記DCIは、DAI(downlink assignment index)を含む」点において、共通する。 ウ 引用発明において、TDDシステムが、PDCCHを介してDCIを送信するのは、PDCCH送信の後、PDSCHを用いて下りリンクデータを送信するためであることは技術常識であるから、PDCCHを受信する通信装置では、DCI(ダウンリンク制御情報)に基づいてダウンリンクデータ(下りリンクデータ)を受信するものであることも技術常識である。 そうすると、上記「イ」で説示したように、引用発明の通信装置は、PDCCHを介してDCIを受信するものであるから、本願発明1と引用発明は、「DCIに基づいて下りリンクデータを受信する」点で一致する。 エ 引用発明には、「TDDでは、DLサブフレームn−kで受信したデータに対するACK/NACKをサブフレームnで送信する」と記載されており、ACK/NACKは制御情報の一種であること、DLサブフレームで受信するデータは端末に相当する通信装置が受信するものであることは技術常識であり、上記「ウ」で説示したように、引用発明の通信装置が下りリンクデータを受信するものであるから、DLサブフレームn−kで受信したデータに対する応答であるACK/NACK制御情報をサブフレームnで送信するのは、下りリンクデータを受信した通信装置であることは自明である。 そうすると、本願発明1と引用発明は、通信装置によって「前記下りリンクデータに関するA/N(acknowledgement/negative acknowledgement)応答を含む制御情報を送信する」点で共通する。 オ 引用発明には、「DAIは、DLサブフレームn−k内で現在サブフレームまでのPDSCHに対応するPDCCHの累積値を表す」と記載されており、DAIとは現在のサブフレームまでのPDCCHの累積値を表すものであり、PDCCHにDCIが含まれることは技術常識である。そうすると、引用発明は、「DAIは、DCIが受信された該DCI時点までのDCIの累積値を表す」ものであるといえ、上記「イ」で述べたとおり、DCIは下りリンクスケジューリングに関連したDCI、すなわち下りリンクスケジューリングDCIであるといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明は、「DAIは、DCIが受信された該当DCI時点までカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積数に関連した値を示」す点で共通する。 以上を総合すると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「 無線通信システムにおいて通信装置によって制御情報を送信する方法であって、前記方法は、 下りリンクスケジューリングに関連したDCI(downlink control information)を受信することであって、前記DCIは、DAI(downlink assignment index)を含む、ことと、 前記DCIに基づいて下りリンクデータを受信することと、 前記下りリンクデータに関するA/N(acknowledgement/negative acknowledgement)応答を含む制御情報を送信することと を含み、 前記DAIは、前記DCIが受信された該当DCI時点までカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積数に関連した値を示す、 方法。」 (相違点1) 下りリンクデータに関するA/N(acknowledgement/negative acknowledgement)応答を含む制御情報を送信することにおいて、本願発明1では「DAIに基づいて」下りリンクデータに関するA/N(acknowledgement/negative acknowledgement)応答を含む制御情報を送信されるものであるのに対し、引用発明では、当該発明特定事項を有していない点。 (相違点2) DAIは、前記DCIが受信された該当DCI時点までカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積数に関連した値が、本願発明1では、「複数のセルにわたる」、「累積総数」であって、「前記複数のセルのうちの2つ以上のセルが前記該当DCI時点でスケジュールされる状態において、前記DAIによって示される前記値は、前記2つ以上のスケジュールされたセルの全てについて同一である」に対し、引用発明では、当該発明特定事項を有していない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討するにあたり、事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 相違点2に係る、DAIは、前記DCIが受信された該当DCI時点までカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積数に関連した値が、「複数のセルにわたる」、「累積総数」であって、「前記複数のセルのうちの2つ以上のセルが前記該当DCI時点でスケジュールされる状態において、前記DAIによって示される前記値は、前記2つ以上のスケジュールされたセルの全てについて同一である」という発明特定事項は、引用文献1及び引用文献2には記載も示唆もされていない。さらに、無線通信の技術分野において周知技術であるともいえない。 したがって、当業者といえども、引用発明において、DAIは、前記DCIが受信された該当DCI時点までカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積数に関連した値が、「複数のセルにわたる」、「累積総数」であって、「前記複数のセルのうちの2つ以上のセルが前記該当DCI時点でスケジュールされる状態において、前記DAIによって示される前記値は、前記2つ以上のスケジュールされたセルの全てについて同一である」ものとすることは、容易に想到し得たとはいえない。 よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし5について 本願発明2ないし5は、本願発明1に記載の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2ないし5は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本願発明6について 本願発明6は、本願発明1の通信装置に対応する、制御情報を受信する通信装置の方法を記載したものであって、少なくとも本願発明1に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を含むから、本願発明1と同様の理由により、本願発明6は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 本願発明7ないし10について 本願発明7ないし10は、本願発明6に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て含むから、本願発明6と同じ理由により、本願発明7ないし10は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 5 本願発明11について 本願発明11は、本願発明1の無線通信システムにおいて通信装置によって制御情報を送信する方法を、無線通信システムにおいて使用される通信装置としたものであって、少なくとも本願発明1に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、本願発明11は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 6 本願発明12ないし15について 本願発明12ないし15は、本願発明11に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て含むから、本願発明11と同じ理由により、本願発明12ないし15は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 7 本願発明16について 本願発明16は、本願発明6の無線通信システムにおいて通信装置によって制御情報を受信する方法を、無線通信システムにおいて使用される通信装置としたものであって、少なくとも本願発明6に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て含むから、本願発明6と同じ理由により、本願発明16は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 8 本願発明17ないし20について 本願発明17ないし20は、本願発明16に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て含むから、本願発明16と同じ理由により、本願発明17ないし20は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第7 原査定について 令和4年1月5日にされた手続補正により、本願発明1ないし20に係る発明は、DAIは、前記DCIが受信された該当DCI時点までカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積数に関連した値が、「複数のセルにわたる」、「累積総数」であって、「前記複数のセルのうちの2つ以上のセルが前記該当DCI時点でスケジュールされる状態において、前記DAIによって示される前記値は、前記2つ以上のスケジュールされたセルの全てについて同一である」という発明特定事項、又はそれに対応する発明特定事項を備えているから、上記「第6」のとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載に記載された技術事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由についての判断 1 理由1(明確性)、理由2(サポート要件)について 令和4年1月5日にされた手続補正によって、補正前の請求項1の「複数のDCIタイミングを含む時間区間内の前記DCIが受信された現在のDCIタイミングまでの複数のセルにわたる時間における下りリンクスケジューリングに関連したスケジュールされたDCIの累積数に関連した値を示す、」という記載を、段落【0260】の記載に基づき、「前記DAIは、前記DCIが受信された該当DCI時点までの複数のセルにわたりカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積総数に関連した値を示し、」と補正することによって、また、請求項6、11、16においても同様に補正されたことによって、理由1及び理由2の拒絶理由は解消された。 以上のとおり、当審拒絶理由の理由1(明確性)及び理由2(サポート要件)で指摘した記載不備は全て解消されたため、本願は特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。 2 理由3(進歩性)について 令和4年1月5日にされた手続補正により、本願発明1ないし20に係る発明は、DAIは、前記DCIが受信された該当DCI時点までカウントされた下りリンクスケジューリングDCIの累積数に関連した値が、「複数のセルにわたる」、「累積総数」であって、「前記複数のセルのうちの2つ以上のセルが前記該当DCI時点でスケジュールされる状態において、前記DAIによって示される前記値は、前記2つ以上のスケジュールされたセルの全てについて同一である」という発明特定事項、又はそれに対応する発明特定事項を備えているから、本願発明1ないし20は、上記「第6」のとおり、当業者であっても、当審拒絶理由において引用された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、当審拒絶理由の理由3を維持することはできない。 第9 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-03-07 |
出願番号 | P2018-235530 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
廣川 浩 |
特許庁審判官 |
森田 充功 本郷 彰 |
発明の名称 | 上りリンク制御情報を送信するための方法及びそのための装置 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 森下 夏樹 |