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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1382886
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-27 
確定日 2022-03-15 
事件の表示 特願2018−522040「システム情報を送信するための方法、基地局、端末、およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月 4日国際公開、WO2017/071473、平成30年11月 1日国内公表、特表2018−532347、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2016年(平成28年)10月12日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年10月29日、中華人民共和国(CN))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 6月 6日 手続補正書の提出
平成31年 2月21日付け 拒絶理由通知書
令和 元年 5月10日 手続補正書、意見書の提出
令和 元年 9月24日付け 拒絶理由通知書
令和 元年12月 6日 手続補正書、意見書の提出
令和 2年 5月 8日付け 拒絶理由通知書(最後)
令和 2年 8月 6日 手続補正書、意見書の提出
令和 2年10月14日付け 補正の却下の決定、拒絶査定
令和 3年 1月27日 審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 5月 7日 上申書の提出
令和 3年 9月16日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和 3年12月 8日 手続補正書、意見書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和2年10月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由(進歩性)について
・請求項 1ないし15
・引用文献等 1ないし3
<引用文献等一覧>
1.特表2015−502062号公報
2.特開2015−41818号公報(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2015/045659号(周知技術を示す文献)

第3 本願発明について

本願の請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、令和3年12月8日付け手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。(下線は請求人が付したものであり補正箇所を示す。)

「 【請求項1】
システム情報を受信するための方法であって、
端末によって、ダウンリンク信号を受信するステップであって、前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含む、ステップと、
前記端末によって、前記ダウンリンク信号に従って、ビームについての情報を取得するステップと、
前記端末によって、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に基づいてキャンピングに適しているセルとして決定されたセル内の基地局に、アップリンク信号を送信するステップであって、前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであり、かつ前記基地局をトリガして第1のシステム情報を送信させるために使用され、前記第1のシステム情報はセル再選択構成情報を含み、前記セル再選択構成情報は以下の情報のうちの少なくとも1つ、すなわち、セル再選択優先度、同一周波数内セル再選択構成情報、および周波数間セル再選択構成情報のうちの少なくとも1つを含む、ステップと、
前記端末によって、前記基地局から、前記ビーム上で前記第1のシステム情報を受信するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記端末によって、前記アップリンク信号についての構成情報を受信するステップをさらに含み、
前記端末によって、前記アップリンク信号を送信するステップは、前記端末によって、前記構成情報に従って、前記アップリンク信号を送信するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
システム情報を送信するための方法であって、
基地局によって、ダウンリンク信号を送信するステップであって、前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含み、前記ダウンリンク信号は、ビームについての情報を示す、ステップと、
前記基地局によって、端末からアップリンク信号を受信するステップであって、前記アップリンク信号の送信は、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に関連付けられ、前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであり、かつ前記基地局をトリガして第1のシステム情報を送信させるために使用され、前記第1のシステム情報はセル再選択構成情報を含み、前記セル再選択構成情報は以下の情報のうちの少なくとも1つ、すなわち、セル再選択優先度、同一周波数内セル再選択構成情報、および周波数間セル再選択構成情報のうちの少なくとも1つを含む、ステップと、
前記基地局によって、前記第1のシステム情報を前記ビーム上で前記端末に送信するステップと
を含む方法。
【請求項4】
前記基地局によって、前記アップリンク信号についての構成情報を送信するステップであって、前記構成情報は、前記アップリンク信号を設定するために用いられる、ステップをさらに含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
システム情報を受信するための装置であって、
ダウンリンク信号を受信するように構成される受信機であって、ビームについての情報が前記ダウンリンク信号に従って取得され、前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含む、受信機と、
前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に基づいてキャンピングに適したセルとして決定されたセル内の基地局に、アップリンク信号を送信するように構成される送信機であって、前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであり、かつ前記基地局をトリガして第1のシステム情報を送信させるために使用され、前記第1のシステム情報はセル再選択構成情報を含み、前記セル再選択構成情報は以下の情報のうちの少なくとも1つ、すなわち、セル再選択優先度、同一周波数内セル再選択構成情報、および周波数間セル再選択構成情報のうちの少なくとも1つを含む、送信機と、を含み、
前記受信機は、前記基地局から、前記ビーム上で前記第1のシステム情報を受信するようにさらに構成される、装置。
【請求項6】
前記受信機は、前記アップリンク信号についての構成情報を受信するようにさらに構成され、前記送信機は、前記構成情報に従って、前記アップリンク信号を送信するようにさらに構成される、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
システム情報を送信するための装置であって、
ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機であって、前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含み、前記ダウンリンク信号は、ビームについての情報を示す、送信機と、
端末からアップリンク信号を受信するように構成される受信機であって、前記アップリンク信号の送信は、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に関連付けられ、前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであり、かつ前記装置をトリガして第1のシステム情報を送信させるために使用され、前記第1のシステム情報はセル再選択構成情報を含み、前記セル再選択構成情報は以下の情報のうちの少なくとも1つ、すなわち、セル再選択優先度、同一周波数内セル再選択構成情報、および周波数間セル再選択構成情報のうちの少なくとも1つを含む受信機と、を含み、
前記送信機は、前記第1のシステム情報を前記ビーム上で前記端末へ送信するようにさらに構成される、装置。
【請求項8】
前記送信機は、前記アップリンク信号についての構成情報を送信するようにさらに構成され、前記構成情報は、前記アップリンク信号を設定するために用いられる、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
プログラムを記録したコンピュータ可読記録媒体であって、前記プログラムはコンピュータに請求項1又は2に記載の方法を実行させる、コンピュータ可読記録媒体。
【請求項10】
プログラムを記録したコンピュータ可読記録媒体であって、前記プログラムはコンピュータに請求項3又は4に記載の方法を実行させる、コンピュータ可読記録媒体。
【請求項11】
請求項5又は6に記載の前記装置と、請求項7又は8に記載の前記装置とを含む、通信システム。」

第4 引用例の記載事項及び引用発明

1.引用例1について
原査定の拒絶理由で引用された、特表2015−502062号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

(1) 「セルラネットワーク内のセル(基地局)は、通常は、例えば、光ファイバ、銅線または無線であるところの、一つ以上の中継回線を介して残りのネットワークに接続されている。」(段落【0003】)

(2) 「本発明の一実施形態によれば、いくつかの特定のシステム情報の部分の必要性を自身で見つける端末は、セルに向かって、システム情報部分の要求を発行してもよい。このような要求は、従来のネットワーク内に見つからないと、特別の目的のために設計要求されてもよい。このような要求は、例えば、RACH要求に類似するよう、実装されてもよい。さらなる実施形態では、システム情報部分の要求は、端末がどのシステム情報の部分、又は、場合によっては、端末が要求する複数のシステム情報のどの部分かを都合よく、指定することを許可するだろう。要求する端末によって、おそらく他の端末によっても受信され、追加端末がセルのシステム情報チャネルを監視する、そのような明示的な要求の受信に応答して、セルは、要求されたシステム情報部分を送信するように構成されてもよい。」(段落【0063】)

引用例1の上記記載、及び移動体通信分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記(1)には「セル(基地局)」と記載され、上記(2)には「セルは、要求されたシステム情報部分を送信するように構成されてもよい」と記載されている。ここで、「要求されたシステム情報部分」はシステム情報の一部であることが自明であることを考慮すると、引用例1には、システム情報を送信するための基地局が、記載されている。

イ 上記(2)には、「端末は、セルに向かって、システム情報部分の要求を発行してもよい」こと、及び「そのような明示的な要求の受信に応答して、セルは、要求されたシステム情報部分を送信する」ことが記載されている。ここで、「システム情報部分」はシステム情報の一部であること、当該システム情報はセル(基地局)から端末へダウンリンク信号として送信されること、及び当該基地局が当該ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機を含むことは、いずれも自明であるから、引用例1には、基地局が、ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機を含むことが、記載されているといえる。

ウ 上記「イ」で検討したとおり、上記(2)には「端末は、セルに向かって、システム情報部分の要求を発行してもよい」こと、及びセルがそのような「要求の受信に応答」することが記載されている。ここで、当該「要求」は、端末からセル(基地局)へアップリンク信号として送信されること、及び当該基地局が当該アップリンク信号を受信するように構成される受信機を含むことはいずれも自明であるから、引用例1には、基地局が、端末からアップリンク信号を受信するように構成される受信機を含むことが、記載されているといえる。

エ 上記「イ」及び「ウ」で検討したとおり、セル(基地局)は、端末が発行したシステム情報の要求(アップリンク信号)の受信に応答してシステム情報を端末へ送信するための送信機を含むといえるから、引用例1には、基地局に含まれる送信機は、システム情報を、アップリンク信号を発行した端末へ送信するように構成されることが、記載されているといえる。

以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 システム情報を送信するための基地局であって、
ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機と、
端末からアップリンク信号を受信するように構成される受信機と、を含み、
前記送信機は、システム情報を前記端末へ送信するようにさらに構成される、基地局。」

2.引用例2について
原査定の拒絶理由で引用された特開2015−41818号公報(以下、「引用例2」という。)には、「例えば、このようなビームIDは、MM基地局MMeNBで生成されると共に、セルID等のシステム情報と同様に同期信号に含められる。」(段落【0038】)という記載があるから、引用例2には、「ビームIDは、セルID等のシステム情報と同様に同期信号に含められる。」という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用例3について
原査定の拒絶理由で引用された国際公開第2015/045659号(以下、「引用例3」という。)には、「例えば、基地局が上記個別の3次元ビームのための同期信号又はシステム情報などを当該個別の3次元ビームにより送信することも考えられる。」(段落[0061])という記載があるから、引用例3には、「個別の3次元ビームのための同期信号又はシステム情報などを当該個別の3次元ビームにより送信する。」という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断

事案に鑑みて、始めに本願発明7と引用発明を対比する。

1.本願発明7について
(1) 引用発明の「基地局」は本願発明7の「装置」に含まれるから、本願発明7「システム情報を送信するための装置」と引用発明の「システム情報を送信するための基地局」は、「システム情報を送信するための装置」である点で一致する。

(2) 本願発明7の「ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機であって、前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含み、前記ダウンリンク信号は、ビームについての情報を示す、送信機」と、引用発明の「ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機」は、「ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機」である点で共通する。
したがって、本願発明7の「装置」が「ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機であって、前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含み、前記ダウンリンク信号は、ビームについての情報を示す、送信機」を含むことと、引用発明の「基地局」が「ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機」を含むことは、「装置」が「ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機」を含む点で、一致する。

(3) 本願発明7の「端末からアップリンク信号を受信するように構成される受信機であって、前記アップリンク信号の送信は、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に関連付けられ、前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであり、かつ前記装置をトリガして第1のシステム情報を送信させるために使用され、前記第1のシステム情報はセル再選択構成情報を含み、前記セル再選択構成情報は以下の情報のうちの少なくとも1つ、すなわち、セル再選択優先度、同一周波数内セル再選択構成情報、および周波数間セル再選択構成情報のうちの少なくとも1つを含む受信機」と、引用発明の「端末からアップリンク信号を受信するように構成される受信機」は、「端末からアップリンク信号を受信するように構成される受信機」である点で共通する。
したがって、本願発明7の「装置」が「端末からアップリンク信号を受信するように構成される受信機であって、前記アップリンク信号の送信は、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に関連付けられ、前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであり、かつ前記装置をトリガして第1のシステム情報を送信させるために使用され、前記第1のシステム情報はセル再選択構成情報を含み、前記セル再選択構成情報は以下の情報のうちの少なくとも1つ、すなわち、セル再選択優先度、同一周波数内セル再選択構成情報、および周波数間セル再選択構成情報のうちの少なくとも1つを含む受信機」を含むことと、引用発明の「基地局」が「端末からアップリンク信号を受信するように構成される受信機」を含むことは、「装置」が「端末からアップリンク信号を受信するように構成される受信機」を含む点で、一致する。

(4) 引用発明の「システム情報」と本願発明7の「第1のシステム情報」は、「システム情報」である点で共通するから、本願発明7の「前記送信機は、前記第1のシステム情報を前記ビーム上で前記端末へ送信するようにさらに構成される」ことと、引用発明の「前記送信機は、システム情報を前記端末へ送信するようにさらに構成される」ことは、「前記送信機は、システム情報を前記端末へ送信するようにさらに構成される」点で、一致する。

以上のことから、本願発明7と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 システム情報を送信するための装置であって、
ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機と、
端末からアップリンク信号を受信するように構成される受信機と、を含み、
前記送信機は、システム情報を前記端末へ送信するようにさらに構成される、装置。」

(相違点)
本願発明7の「送信機」は、「前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含み、前記ダウンリンク信号は、ビームについての情報を示す」とともに、「前記第1のシステム情報を前記ビーム上で」送信する、という発明特定事項(以下、「送信機についての発明特定事項」という。)を含むものであり、また本願発明7の「受信機」は、「前記アップリンク信号の送信は、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に関連付けられ、前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであり、かつ前記装置をトリガして第1のシステム情報を送信させるために使用され、前記第1のシステム情報はセル再選択構成情報を含み、前記セル再選択構成情報は以下の情報のうちの少なくとも1つ、すなわち、セル再選択優先度、同一周波数内セル再選択構成情報、および周波数間セル再選択構成情報のうちの少なくとも1つを含む」という発明特定事項(以下、「受信機についての発明特定事項」という。)を含むものであるのに対して、引用発明の「送信機」は、前記送信機についての発明特定事項が特定されておらず、また引用発明の「受信機」は、前記受信機についての発明特定事項が特定されていない点。

上記相違点について検討する上で、前記送信機についての発明特定事項及び前記受信機についての発明特定事項の一部である、「前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含み、前記ダウンリンク信号は、ビームについての情報を示す」とともに、「前記アップリンク信号の送信は、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に関連付けられ、前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであ」ることについて、検討する。
「システム情報を送信するための装置」に含まれる、「ダウンリンク信号を送信するように構成される送信機」及び「端末からアップリンク信号を受信するように構成される受信機」において、「前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含み、前記ダウンリンク信号は、ビームについての情報を示す」とともに、「前記アップリンク信号の送信は、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に関連付けられ、前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであ」ることは、引用例2及び3のいずれにも記載されておらず、また、移動体通信分野における周知技術であるともいえない。
そうすると、上記相違点に含まれる他の発明特定事項について論及するまでもなく、引用発明に基づいて上記相違点に係る構成とすること、すなわち、「送信機」を、「前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含み、前記ダウンリンク信号は、ビームについての情報を示す」とともに、「前記第1のシステム情報を前記ビーム上で」送信する、という発明特定事項を含むものとし、また「受信機」を、「前記アップリンク信号の送信は、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に関連付けられ、前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであり、かつ前記装置をトリガして第1のシステム情報を送信させるために使用され、前記第1のシステム情報はセル再選択構成情報を含み、前記セル再選択構成情報は以下の情報のうちの少なくとも1つ、すなわち、セル再選択優先度、同一周波数内セル再選択構成情報、および周波数間セル再選択構成情報のうちの少なくとも1つを含む」という発明特定事項を含むものとすることは、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたこととはいえない。

したがって、本願発明7は、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明8について
本願発明8は、本願発明7の発明特定事項を全て含むから、本願発明7と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明3、4、及び10について
本願発明3は、「システム情報を送信するための装置」の発明である本願発明7を、対応する「システム情報を送信するための方法」とした発明であって、本願発明7の前記送信機についての発明特定事項、及び前記受信機についての発明特定事項と同様、少なくとも、「前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含み、前記ダウンリンク信号は、ビームについての情報を示す」とともに、「前記アップリンク信号の送信は、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に関連付けられ、前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであ」るという発明特定事項を備えるから、本願発明7と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願発明4は、本願発明3の発明特定事項を全て含むから、本願発明3と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願発明10は、本願発明3又は4の方法を実行させる「コンピュータ可読記録媒体」の発明であり、本願発明3の発明特定事項を全て含むから、本願発明3と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.本願発明1、2、及び9について
本願発明1は、「システム情報を送信するための方法」の発明である本願発明3と対応する「システム情報を受信するための方法」とした発明であって、本願発明7の前記送信機についての発明特定事項の一部、及び前記受信機についての発明特定事項の一部と対応する、「前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含む」、「前記ダウンリンク信号に従って、ビームについての情報を取得する」、「前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に基づいて・・・アップリンク信号を送信する」、及び「前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであ」るという発明特定事項を備えるから、本願発明7と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願発明9は、本願発明1又は2の方法を実行させる「コンピュータ可読記録媒体」の発明であり、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

5.本願発明5、及び6について
本願発明5は、「システム情報を送信するための装置」の発明である本願発明7と対応する「システム情報を受信するための装置」の発明であって、本願発明7の前記送信機についての発明特定事項の一部、及び前記受信機についての発明特定事項の一部と対応する、「ビームについての情報が前記ダウンリンク信号に従って取得され、前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含む」、「前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に基づいて・・・アップリンク信号を送信する」、及び「前記アップリンク信号は、ランダムアクセスプリアンブルであ」るという発明特定事項を備えるから、本願発明7と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願発明6は、本願発明5の発明特定事項を全て含むから、本願発明5と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

6.本願発明11について
本願発明11は、本願発明5の発明特定事項を全て含むから、本願発明5と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明11は、本願発明7の発明特定事項を全て含むから、本願発明7と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定についての判断

本願発明1ないし11は、上記「第5」の「1.」ないし「6.」のとおり、当業者であっても、引用発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 当審が通知した拒絶理由について

1.当審拒絶理由の概要
当審が令和3年9月16日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

●理由1(明確性)、理由2(サポート要件)について
・請求項1ないし11
請求項1の第2段落には、「端末によって、ダウンリンク信号を受信するステップであって、前記ダウンリンク信号は、同期信号及び/又は参照信号を含む、ステップ」という発明特定事項が記載されている(下線は当審が付した。)。ここで、「及び/又は」とは、「及び」と「又は」を包括した表記と解されるから、上記発明特定事項は、「前記ダウンリンク信号は、同期信号又は参照信号を含む」という概念を含むといえる。さらに、「同期信号及び参照信号を含む」と区別された「同期信号又は参照信号を含む」という発明特定事項は、「同期信号を含み参照信号を含まない」ことと「参照信号を含み同期信号を含まない」ことを包括した表記と解される。
そうすると、上記「前記ダウンリンク信号は、同期信号及び/又は参照信号を含む」という発明特定事項は、“前記ダウンリンク信号は、同期信号を含み参照信号を含まない”という概念を含む、と認められる。
一方、請求項1の第4段落には、「前記端末によって、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に基づいてキャンピングに適しているセルとして決定されたセル内の基地局に、アップリンク信号を送信するステップ」という発明特定事項が記載されている。ここで、「前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)」とは、“前記ダウンリンク信号の参照信号の受信電力(RSRP)”を意味することが明らかである。
請求項1の第4段落の上記発明特定事項は、「前記ダウンリンク信号」が「参照信号」を含むことを特定しているかどうか明らかでなく、また、上述のとおり、同第2段落の上記発明特定事項は、「前記ダウンリンク信号」が「参照信号」を含まない場合をも包含している。
したがって、請求項1の第2段落の上記発明特定事項に含まれる、“前記ダウンリンク信号は、同期信号を含み参照信号を含まない”場合に、同第4段落に記載された「前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)」という発明特定事項は、何を意味するのか、またどのように得られるものであるのか不明確であり、さらに、「前記端末によって、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に基づいて(中略)アップリンク信号を送信する」ステップは、どのようにして行われるのか不明確である。(明確性

ところで、発明の詳細な説明には、アップリンク信号を送信する前に、端末が受信する「ダウンリンク信号」について、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。
(中略)
そうすると、上記段落【0005】、【0041】、【0054】、及び【0056】には、アップリンク信号を送信する前の端末が、「ダウンリンクディスカバリリファレンス信号DRS」すなわち「参照信号」、に加えて、「ダウンリンク同期信号」すなわち「同期信号」、「PLMN情報」、「セル選択情報」、および「セル再選択情報」のうちの少なくとも1つを含む「ダウンリンク信号」を受信することは記載されているものの、アップリンク信号を送信する前の端末が、「同期信号」を含み「参照信号」を含まない「ダウンリンク信号」を受信することは、記載されていない。
また、発明の詳細な説明全体の記載を参酌しても、端末によって、ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に基づいてアップリンク信号を送信するステップよりも前に、端末によって、「同期信号」を含み「参照信号」を含まない「ダウンリンク信号」を受信するステップは、記載されていない。
そうすると、請求項1に係る発明は、第4段落に記載された「前記端末によって、前記ダウンリンク信号の参照信号受信電力(RSRP)に基づいてキャンピングに適しているセルとして決定されたセル内の基地局に、アップリンク信号を送信するステップ」よりも前に、同第2段落の上記発明特定事項に含まれる、“端末によって、ダウンリンク信号を受信するステップであって、前記ダウンリンク信号は、同期信号を含み参照信号を含まない、ステップ”を含む点において、発明の詳細な説明に記載したものでない。(サポート要件)

請求項3、5、及び7にも同様の不備がある。
(中略)

●理由1(明確性)について
・請求項11
請求項11には、「請求項5又は6に記載の前記装置、及び/又は、請求項7又は8に記載の前記装置を含む、通信システム。」と記載されている(下線は当審が付した。)。
ここで、下線部の「及び/又は」は、請求項1記載の「及び/又は」と同様に解されるから、請求項11に係る発明は、例えば、“請求項5又は6記載の前記装置を含み、請求項7又は8に記載の前記装置を含まない、通信システム。”を含むといえる。さらに、「又は」は一般に択一的な選択を含むから、請求項11に係る発明は、例えば、“請求項5記載の前記装置を含み、請求項6、7又は8に記載の前記装置を含まない、通信システム。”を含むといえる。
一方、「システム」とは、一般に、個々の要素が互いに影響しあいながら、全体として機能する仕組みを指すものであるから、「請求項5記載の前記装置」という単一の要素のみを含む「通信システム」とは、どのようなものであるのか、明確でない。また、請求項6、7、又は8のいずれか1つに記載された前記装置のみを含む「通信システム」についても、同様に明確でない。
したがって、請求項11に係る発明は、明確でない。
(以下略)

2.当審拒絶理由についての判断
(1) 本件補正により、本件補正前の請求項1及び5における「前記ダウンリンク信号は、同期信号及び/又は参照信号を含む」という記載は、「前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含む」という記載へ補正され、本件補正前の請求項3及び7における「前記ダウンリンク信号は、同期信号及び/又は参照信号を含み」という記載は、「前記ダウンリンク信号は、同期信号及び参照信号を含み」という記載へ補正されたから、当審拒絶理由の「●理由1(明確性)、理由2(サポート要件)について」「・請求項1ないし11」で指摘した拒絶理由は、解消された。

(2) 本件補正により、本件補正前の請求項11における「請求項5又は6に記載の前記装置、及び/又は、請求項7又は8に記載の前記装置を含む」という記載は、「請求項5又は6に記載の前記装置と、請求項7又は8に記載の前記装置とを含む」という記載へ補正されたから、当審拒絶理由の「●理由1(明確性)について」「・請求項11」で指摘した拒絶理由は、解消された。

(3) 以上のとおり、当審拒絶理由は全て解消された。

第8 むすび

以上のとおり、本願発明1ないし11は、引用例1に記載された発明、並びに引用例2に記載された技術的事項及び引用例3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-02-24 
出願番号 P2018-522040
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 森田 充功
圓道 浩史
発明の名称 システム情報を送信するための方法、基地局、端末、およびシステム  
代理人 赤澤 克豪  
代理人 窪田 郁大  

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