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審決分類 |
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G01B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G01B 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G01B |
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管理番号 | 1383034 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-04-27 |
確定日 | 2022-02-24 |
事件の表示 | 特願2016−233160「情報処理装置、計測装置、システム、算出方法、プログラムおよび物品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018− 91656〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年11月30日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 8月19日付け:拒絶理由通知書 令和 2年11月 2日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 1月28日付け:拒絶査定(令和3年2月2日送達、以下「原査定」という。) 令和 3年 4月27日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和3年4月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年4月27日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和3年4月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正を含むものであり、この補正により、以下に示すとおり、本件補正前の請求項1が、本件補正後の請求項1に補正された。 <本件補正前の請求項1> 「 【請求項1】 対象物体の姿勢を算出する情報処理装置であって、 前記対象物体の計測データを取得する取得部と、 前記対象物体の形状モデルにおいて、前記対象物体の姿勢を特定するための特定部位であって互いに異なる姿勢とした場合に互いに重ならない特定部位のモデル点のサンプリングに関する情報を、前記特定部位のモデル点の密度が変更可能で、かつ、前記特定部位とは異なる他の部位のモデル点の密度より高くなるように、決定するサンプリング部と、 前記情報により定まる前記特定部位のモデル点と前記計測データに基づいて前記対象物体の姿勢を算出する算出部と、 を有することを特徴とする情報処理装置。」 <本件補正後の請求項1> 「 【請求項1】 対象物体の姿勢を算出する情報処理装置であって、 前記対象物体の計測データを取得する取得部と、 前記対象物体の形状モデルのうち前記対象物体の類似姿勢を判別するための幾何特徴又はユーザによって選択された幾何特徴を含む特定部位と前記特定部位以外の部位においてサンプリングするモデル点を、前記特定部位の前記モデル点の密度が前記特定部位以外の部位の前記モデル点の密度より高くなるように設定するサンプリング部と、 前記特定部位と前記特定部位以外の部位において設定したモデル点と前記計測データに基づいて前記対象物体の姿勢を算出する算出部と、 を有することを特徴とする情報処理装置。」(下線は、補正箇所を示す。) 2 補正の目的 本件補正は、本件補正前の「対象物体の姿勢を特定するための特定部位であって互いに異なる姿勢とした場合に互いに重ならない特定部位」を、「対象物体の類似姿勢を判別するための幾何特徴又はユーザによって選択された幾何特徴を含む特定部位」に変更する補正を含むものであるところ、本件補正により新たに付加された「ユーザによって選択された幾何特徴を含む特定部位」には、「対象物体の姿勢を特定するため」でないものも含まれていることは明らかであるから、本件補正は、本件補正前の「対象物体の姿勢を特定するための特定部位であって互いに異なる姿勢とした場合に互いに重ならない特定部位」を限定するものとはいえず、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するものとは認められない。また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明を目的とする補正のいずれにも該当しないことは、明らかである。 したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当せず、同法17条の2第5項に規定する要件に違反するものであるから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 本件補正は上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の「1 補正の内容」の<本件補正前の請求項1>に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 第4 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に係る発明に対する理由3については、次のとおりである。 本願発明は、下記引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特開2011−179910号公報(周知例として引用) 引用文献2.特開2015−194478号公報(主たる引用例として引用) 引用文献3.特開2014−120068号公報(周知例として引用) 第5 引用文献に記載された発明の認定等 1 引用文献2に記載された事項と引用発明の認定 ア 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開2015−194478号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審において付したもので、以下同様である。 「【0016】 (第1の実施形態) 第1の実施形態では、山積みされた対象物体(部品)の位置姿勢を正確に求め、求められた位置姿勢に基づいて、ロボットハンドにより対象物体を把持する際に本発明を適用した場合について説明する。 【0017】 概略位置姿勢の認識を誤りやすい対象物体に対して、互いに誤りやすい関係にある2つの位置姿勢をGUIを用いて設定する。そして、その位置姿勢間の変換パラメータを登録しておく。そして、その登録された変換パラメータを用いて、誤認識の発生を抑制し、正しく位置姿勢を算出する方法について述べる。本実施形態で対象とする対象物体は、所定の軸に対して回転させた場合に誤認識しやすい物体である(例えば、表裏で形状がよく似ている物体)。 【0018】 具体的には表示装置15に表示されるGUIを用いて誤認識しやすい2つの位置姿勢にモデルを配置し、その変換パラメータを事前に登録、保持しておく。そして、位置姿勢算出時には、概略位置姿勢から一度フィッティングを行った後、登録された変換パラメータに基づき、フィッティング結果と誤りやすい関係にある位置姿勢を作成する。そして、作成された位置姿勢を初期値として新たにフィッティングを行う。そして両フィッティング結果のうち、評価値の高い位置姿勢を採用する。 【0019】 図1は、本実施形態にかかる情報処理装置100の構成を示している。同図に示したように、本実施形態にかかる情報処理装置100は、三次元形状モデル保持部10、変換パラメータ算出部11、概略位置姿勢認識部12、位置姿勢算出部13によって構成され、撮像装置14、表示装置15、操作装置16に接続されている。本実施形態では、このように、情報処理装置1の外部に撮像装置14、表示装置15、操作装置16を接続しているが、撮像装置14、表示装置15、操作装置16を含めて一体として情報処理装置として構成しても良い。 【0020】 以下、情報処理装置100を構成する各部について説明する。 【0021】 三次元形状モデル保持部10は、山積みピッキングの対象とする物体の三次元形状モデルを保持する。三次元形状モデルには、たとえば、対象物体の三次元形状を複数ポリゴンの組み合わせにより近似表現したポリゴンモデルを用いることができる。各ポリゴンは、対象物体表面上の点の位置(三次元座標)と、面を近似するポリゴンを構成するための各点の連結情報によって構成される。なお、ポリゴンは三角形で構成されるのが一般的であるが、四角形や五角形であってもよい。その他、表面点の三次元座標とその連結情報により物体形状を近似表現できるポリゴンモデルであればいかなるものであってもよい。あるいは、三次元形状モデルとして、CADデータのように、B−Rep(Boundary−Representation)表現と呼ばれる、区分されたパラメータ曲面の集合で形状を表現したモデルであってもよい。その他、物体の三次元形状を表現可能なモデルであればいかなるものであってもかまわない。三次元形状モデルは、概略位置姿勢認識部12において誤認識を行いやすい複数の姿勢関係を登録するために、表示装置15のGUIを介して2つのモデルを操作するのに用いられる。さらに、位置姿勢算出部13により対象物体の位置姿勢計測を行う際にも用いられる。なお、モデルにはあらかじめ対象物体表面上の点の座標などを表す基準となる座標系(モデル座標系)が設定されているものとする。図2に本実施形態で取り扱う対象物体とそのモデル座標系を示す。三次元形状モデル保持部10は、メモリやハードディスクなどで構成されるが、記憶媒体等から三次元形状モデルを取得してもかまわない(三次元形状モデル取得)。 【0022】 変換パラメータ算出部11は、対象物体の三次元形状モデルを仮想的なの三次元空間上に表示し、ユーザによる操作を介して、互いに誤りやすい異なる2つの位置姿勢の関係(変換パラメータ)を登録する。本実施形態では、変換パラメータ算出部11は、表示装置15に三次元モデル保持部10が保持する三次元モデルを送出し、表示装置15のGUIに対象物体の三次元形状モデル2つをレンダリングする。そして、表示装置15のGUIに対して、操作装置16によりユーザによる操作を取得して、互いに誤りやすいような位置姿勢関係に配置する。そしてこのときの2つのモデルの仮想的な三次元空間における位置姿勢を取得し、2つの位置姿勢間の変換パラメータを算出して記録することで登録(パラメータ保持)を行う。そして、登録した変換パラメータは、変換パラメータ算出部11に入力される。なお、本実施形態で利用するGUIと登録手順については後述する。変換パラメータ算出部11は登録した変換パラメータを、位置姿勢算出部13に入力する。 【0023】 概略位置姿勢認識部12は、三次元形状モデル保持部10から対象物体の三次元モデルを取得する。また、撮像装置14から画像(濃淡画像、距離画像)を取得する。本実施形態では、画像は山積みされた対象物体を含んでいるとする。そして、概略位置姿勢認識部12は、三次元モデル画像に含まれる山積みされた物体の中から一個体を検出し、撮像装置14に対する物体の位置及び姿勢の概略値を算出することにより、1個体の概略位置姿勢を認識する。撮像装置14には、位置及び姿勢計測の基準となる三次元の座標系(基準座標系)が規定されているものとする。 【0024】 本実施形態では、撮像部14に使用するセンサの中心を原点とし、取得される画像の水平方向をx軸、垂直方向をy軸、センサの光軸をz軸とした座標系を基準座標系とする。撮像部14に対する物体の位置及び姿勢とは、基準座標系における物体の位置及び姿勢を表す。本実施形態では、センサで取得した距離画像および濃淡画像に対して、複数の視点から観測した画像をテンプレートとしてパターンマッチングを行うことによりその一個体のおおまかな位置姿勢を算出する。ただし、概略位置姿勢の認識方法は他の方法であってもかまわない。その他、山積みの中から一個体を発見し、その三次元位置姿勢を算出できる方法であれば、ここで述べた以外のいかなる方法であってもかまわない。本実施形態では、対象物体が所定の軸に対して回転させた場合に、誤認識しやすい物体を対象にしているため、ここで取得した概略位置姿勢は誤認識されている可能性が高い。概略位置姿勢認識12で算出した位置姿勢は、概略位置姿勢として位置姿勢算出部13に入力される。 【0025】 位置姿勢算出部13は、三次元形状モデル保持部10から、三次元形状モデルを取得する。また、位置姿勢算出部13は、概略位置姿勢認識部12から概略位置姿勢を取得する。また、位置姿勢算出部13は、変換パラメータ算出部11が保持する変換パラメータを取得する。また、位置姿勢算出部13は、撮像部14から計測情報(濃淡画像、距離画像)を取得する。そしてそれらの情報から、対象物体の位置姿勢を算出する。 【0026】 具体的には、まず、取得した概略位置姿勢に基づき、対象物体の三次元形状モデルと、撮像装置14により取得した画像中の対象物体とがもっともフィットするような三次元モデルの位置姿勢を算出(導出)する。その後、取得した変換パラメータに基づき、算出された位置姿勢と誤りやすい関係にある位置姿勢を求め、その位置姿勢を初期値として別途フィッティングを行う。その後、フィッティング結果の評価値を比較し、評価値のよい方の位置姿勢を最終結果として出力する。フィッティングは、たとえば、対象物体の三次元形状モデルとセンサにより取得した計測情報(濃淡画像、距離画像)とがフィットするように位置姿勢を補正することで行う。ただし、フィッティング方法は他の方法であってもかまわない。たとえば、距離画像のみあるいは濃淡画像のみを用いてフィッティングを行ってもよい。 【0027】 撮像装置14は、対象物体の位置姿勢を認識するために必要な計測情報を取得するセンサである。たとえば、二次元画像を撮影するカメラでもよいし、各画素が奥行きの情報を持つ距離画像を撮影する距離センサでもよいし、これらを併用してもよい。距離センサとしては、対象に照射したレーザ光やスリット光の反射光をカメラで撮影し、三角測量により距離を計測する方式のほか、光の飛行時間を利用するTime−of−flight方式がある。また、ステレオカメラで撮影する画像から三角測量により距離を計算する方式も利用できる。その他、物体の三次元位置姿勢を認識するのに必要な情報を取得できればいかなるセンサであっても本発明の本質を損なうものではない。 【0028】 撮像装置14は、対象物体に対して上方または横方などに固定されていても良いし、またロボットハンドなどに備えつけられていてもよい。本実施形態では、距離画像および濃淡画像をともに取得可能なセンサを利用するものとする。上述したように、撮像装置14が取得した計測情報は概略位置姿勢認識部12、位置姿勢算出部13に入力される。なお、撮像装置14に設定された座標系を以後、センサ座標系と呼ぶことにする。 【0029】 表示装置15は、三次元形状モデル保持部10から変換パラメータ算出部11を介して三次元形状モデルを取得し、表示する。また、撮像装置から取得した画像や、位置姿勢算出部13によって算出される位置姿勢を表示し、ユーザに確認させるようにしてもよい。表示装置14は例えば液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等が用いられる。 【0030】 操作装置16は、キーボードやとマウスであり、ユーザからの指示を入力するのに用いられ、特にマウスはGUIを操作するのに用いられる。」 「【0104】 (第4の実施形態) 第1の実施形態では、それぞれの候補位置姿勢において対象物体全体についての評価値を比較した。本実施形態では、誤った姿勢と正しい姿勢との比較において評価値に差が出やすいような特定部位を事前に設定しておき、特定部位のみで評価値の比較を行うことでより確実に誤認識の抑制を行う方法について述べる。図12の対象物体は、姿勢Aと、姿勢Aを回転軸まわりに180度回転させた姿勢Bとで重ね合わせたときに見た目の差が少なく、判別が難しい。本実施形態は、このような互いに誤りやすい関係にある複数の姿勢において、対象物体の見た目の差分が小さい認識に対して特に有効な方法である。 【0105】 本実施形態の装置構成は、基本的に第1の実施形態の図1と同様のため省略するものとし、第1の実施形態とは異なる処理を行う変換パラメータ算出部11、および位置姿勢算出部13についてのみ述べる。 【0106】 変換パラメータ算出部11は、仮想的な三次元空間におけるモデルの2つの位置姿勢間の変換パラメータを算出して記録するとともに、登録した2つの位置姿勢において見た目が顕著に異なる部位を特定部位としてユーザが指定し、その部位を記憶する。たとえば図12の物体であれば、回転軸まわりに物体を回転させた姿勢A、姿勢Bの配置において位置がわずかに変化する回転軸付近の2つの小さい円を特定部位として指定するのがよい。本実施形態で利用するGUIと登録手順については後述する。 【0107】 位置姿勢算出部13は、三次元形状モデル保持部10から、三次元形状モデルを取得する。また、位置姿勢算出部13は、概略位置姿勢認識部12から概略位置姿勢を取得する。また、位置姿勢算出部13は、変換パラメータ算出部11が保持する変換パラメータを取得する。また、位置姿勢算出部13は、撮像部14から計測情報(濃淡画像、距離画像)を取得する。また、位置姿勢算出部13は、変換パラメータ算出部11から、記憶しておいた特定部位を取得する。そしてこれらの情報から、対象物体の位置姿勢を算出する。 【0108】 具体的には、まず、取得した概略位置姿勢に基づき、対象物体の三次元形状モデルと、撮像装置14により取得した画像中の対象物体とがもっともフィットするような三次元モデルの位置姿勢を算出(導出)する。その後、取得した変換パラメータに基づき、算出された位置姿勢と誤りやすい関係にある位置姿勢を求め、その位置姿勢を初期値として別途フィッティングを行う。ここまでの処理は第1の実施形態と同様である。その後、フィッティング結果の評価値を比較する際に、特定部位に関する評価値を算出し、評価値のよい方の位置姿勢を最終結果として出力する。」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図12】 」 イ 引用発明の認定 上記アの記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「三次元形状モデル保持部10、変換パラメータ算出部11、概略位置姿勢認識部12、位置姿勢算出部13、撮像装置14を含めて構成された情報処理装置100であって(【0019】)、 三次元形状モデル保持部10は、対象とする物体の三次元形状モデルを保持し(【0021】)、 撮像装置14は、対象物体の位置姿勢を認識するために必要な計測情報を取得するセンサであり(【0027】)、 変換パラメータ算出部11は、仮想的な三次元空間におけるモデルの2つの位置姿勢間の変換パラメータを算出して記録するとともに、登録した2つの位置姿勢において見た目が顕著に異なる部位を特定部位として、たとえば、回転軸まわりに物体を回転させた姿勢A、姿勢Bの配置において位置がわずかに変化する回転軸付近の2つの小さい円を特定部位として記憶し(【0106】)、 位置姿勢算出部13は、三次元形状モデル保持部10から三次元形状モデルを取得し、概略位置姿勢認識部12から概略位置姿勢を取得し、変換パラメータ算出部11が保持する変換パラメータ及び特定部位を取得し、撮像部14から計測情報(濃淡画像、距離画像)を取得し、これらの情報から、対象物体の位置姿勢を算出し(【0107】)、 具体的には、取得した概略位置姿勢に基づき、対象物体の三次元形状モデルと、撮像装置14により取得した画像中の対象物体とがもっともフィットするような三次元モデルの位置姿勢を算出(導出)し、その後、取得した変換パラメータに基づき、算出された位置姿勢と誤りやすい関係にある位置姿勢を求め、その位置姿勢を初期値として別途フィッティングを行い、その後、フィッティング結果の評価値を比較する際に、特定部位に関する評価値を算出し、評価値のよい方の位置姿勢を最終結果として出力する(【0108】)、 情報処理装置。」 2 引用文献1、4に記載された事項と周知技術の認定 ア 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開2011−179910号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0003】 非特許文献1では、距離画像へのモデルフィッティングによる物体の位置及び姿勢の計測を行う方法が開示されている。この方法では、距離画像を3次元点群データに変換し、点群データに対象物体の3次元形状モデルを当て嵌めることにより物体の位置及び姿勢を計測する。すなわち、位置及び姿勢の概略値をもとに、点群データの各点について3次元形状モデルの近傍の面を探索し、点と面との距離の和を最小化するように位置及び姿勢の最適化を繰り返すことにより位置及び姿勢を算出する。 【0004】 特許文献1では、非特許文献1と同様に観測画像へのモデルフィッティングにより、物体の位置及び姿勢を推定する方法が開示されている。このとき、物体のモデルから低曲率の面を選択し、選択した面と対応する距離計測データ上の面との距離の差を最小化する。」 「【0007】 非特許文献1のように距離画像を用いて物体の位置及び姿勢を推定する手法は、距離画像の点群データの各点に対応する3次元モデルの面の探索に多くの計算時間が必要であるという問題があった。 【0008】 この問題の解決策として、対応の数を減らす方法が考えられる。しかしながら、計測データには必ず誤差が含まれる。対応の数を減らすと、それぞれの対応点が位置姿勢推定の計算に寄与する度合いが相対的に高まる。従って、対応点の中に誤差の大きい計測データに基づくものが含まれている場合、位置姿勢推定の精度が低下するという問題がある。 【0009】 上記の課題に対して、特許文献1では、計測対象物体上で低曲率の部位は距離計測誤差が小さいと想定し、モデル上の低曲率の部位に処理対象を限定することによって、精度を低下させずに処理速度を向上することを狙っている。 【0010】 しかしながら、実際には低曲率の部位であっても距離計測の精度が高いとは限らない。図1を参照して説明する。図1は、上記の現象を説明する原理図である。図1において、撮像部101は距離計測装置を構成する撮像部である。計測対象物体102は低曲率の部位を有する計測対象物体である。計測対象物体102の表面上の2点として点103および点104を考える。この場合、点104の方が点103よりも曲率が低い。しかしながら、点103および点104を含む領域に相当する画素を観測する領域105および領域106を考えると、領域106内に含まれる計測対象物体上の表面の撮像部101からの距離の分布は、領域105よりも広範囲に渡る。従って、点104の距離計測値のばらつき誤差は、点103の距離計測値のばらつき誤差よりも大きい。このように、面の傾きによっては、高曲率の部位よりも低曲率の部位の方が、距離計測精度が低いことがある。そのような場合、特許文献1の方法に従えば、距離計測値のばらつき誤差が大きい領域(低曲率な領域)を選択して物体の位置姿勢を推定することになるため、特許文献1の方法を用いない場合よりも、位置姿勢推定の精度が低下してしまう。 【0011】 つまり、特許文献1の方法では、計測誤差の少ないデータを確実に選択できないために、位置姿勢推定精度が低下することがあるという問題があった。 【0012】 上記の課題に鑑み、本発明は、位置姿勢推定の精度低下を防ぎながら、処理速度を維持向上させることを目的とする。」 「【発明の効果】 【0015】 本発明によれば、位置姿勢計測のために用いる対応点の密度を距離計測の誤差に応じて制御することにより、位置姿勢計測精度の低下を抑えながら、処理速度を向上させることができる。」 「【図1】 」 イ 引用文献4に記載された事項 当審において新たに引用され、本願の出願前に発行された特開2016−152586号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 上述したように、動いている物体に映像を投影することが要望されているが、物体の位置・姿勢をトラッキングするための処理時間がかかることで実現が困難であった。 【0009】 本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、プロジェクションマッピングにおいて、動いている物体の位置・姿勢を高速に推定し、映像投影を可能とすることにある。 【課題を解決するための手段】 【0010】 上記の課題を解決するため、本発明にあっては、対象物体を検出し、当該対象物体に投影映像を投影するプロジェクションマッピング装置であって、投影前のオフライン処理に際し、前記対象物体の位置および姿勢を推定するためのモデル点群データから推定に影響しないデータを削除するモデル点群最適化部と、投影中のオンライン処理に際し、前記対象物体からリアルタイムに取得したシーン点群データから推定に影響しないデータを削除するシーン点群最適化部とを備える。 【発明の効果】 【0011】 本発明にあっては、プロジェクションマッピングにおいて、動いている物体の位置・姿勢を高速に推定し、映像投影を行うことができる。」 「【0021】 オフライン処理部21は、事前のオフライン処理を実行する部分であり、3Dスキャン部211とモデル点群最適化部212と特徴点・特徴量推定部213と投影コンテンツ作成部214とを備えている。 【0022】 3Dスキャン部211は、適宜回転させた対象物体Oを深度センサ3で計測することで距離画像を取得し、3次元の頂点データに変換してモデル点群データを生成し、モデル点群データ保持部23に格納する機能を有している。 【0023】 モデル点群最適化部212は、モデル点群データ保持部23に格納されたモデル点群データから推定に影響しないデータを削除することで最適化を行う機能を有している。 【0024】 特徴点・特徴量推定部213は、モデル点群データ保持部23に格納されたモデル点群データから特徴点および特徴量のデータを生成し、モデル点群データ保持部23に格納する機能を有している。 【0025】 投影コンテンツ作成部214は、モデル点群データ保持部23に格納されたモデル点群データに基づき、対象物体Oに投影する映像コンテンツを作成し、映像コンテンツデータ保持部24に格納する機能を有している。 【0026】 オンライン処理部22は、映像投影に際したリアルタイムのオンライン処理を実行する部分であり、シーン点群取得部221と初期位置推定部222とシーン点群最適化部223とトラッキング処理部224と映像生成部225とを備えている。 【0027】 シーン点群取得部221は、映像投影に際し、深度センサ3から距離画像を取得し、3次元の頂点データに変換してシーン点群データを生成し、シーン点群データ保持部25に格納する機能を有している。また、シーン点群取得部221は、対象物体Oがない状態で深度センサ3により距離画像を取得し、3次元の頂点データに変換して背景のシーン点群データとしてシーン点群データ保持部25に格納する機能も有している。 【0028】 初期位置推定部222は、リアルタイムに取得されるシーン点群データから特徴点および特徴量のデータを生成し、モデル点群データ保持部23に予め保持されているモデル点群の特徴点および特徴量と照合することで、対象物体Oの初期位置を推定する機能を有している。」 「【図3】 」 「【図4】 」 ウ 周知技術の認定 引用文献1の上記アの摘記箇所の記載、引用文献4の上記イの摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は、周知技術であると認める(以下「周知技術」という。)。 <周知技術> 「距離画像を3次元点群データに変換し、当該点群データに対象物体の3次元形状モデルの点群データを当て嵌めるモデルフィッティングにより対象物体の位置及び姿勢を推定する際、推定精度に影響を与えない対象物体の3次元形状モデルの点群データについては削除し、モデルフィッティングの処理速度を向上させること。」 第6 対比 1 本願発明と引用発明の対比 本願発明と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「対象物体の位置姿勢を算出」する「位置姿勢算出部13」を備える「情報処理装置100」は、本願発明の「対象物体の姿勢を算出する情報処理装置」に相当する。 イ 引用発明の「対象物体の位置姿勢を認識するために必要な計測情報を取得するセンサ」である「撮像装置14」は、本願発明の「対象物体の計測データを取得する取得部」に相当する。 ウ 引用発明の「対象物体の三次元形状モデル」は、「回転軸まわりに物体を回転させた姿勢A、姿勢Bの配置において位置がわずかに変化する回転軸付近の2つの小さい円を特定部位」とし、「フィッティング結果の評価値を比較する際に、特定部位に関する評価値を算出し、評価値のよい方の位置姿勢を最終結果」とするものである。 ここで、引用発明の「回転軸まわりに物体を回転させた姿勢A、姿勢B」は、本願発明の「互いに異なる姿勢」に相当し、引用発明の「姿勢A、姿勢Bの配置において位置がわずかに変化する」ことは、本願発明の「互いに異なる姿勢とした場合に互いに重ならない」ことに相当する。 そして、引用発明の「評価値のよい方の位置姿勢を最終結果」とすることは、本願発明の「対象物体の姿勢を特定する」ことに相当する。 よって、引用発明の「特定部位」は、本願発明の「対象物体の形状モデルにおいて、前記対象物体の姿勢を特定するための特定部位であって互いに異なる姿勢とした場合に互いに重ならない特定部位」に相当する。 エ 上記ウを踏まえると、引用発明の「対象物体の三次元形状モデル」には「特定部位」が含まれているから、引用発明の「対象物体の三次元形状モデルと、撮像装置14により取得した画像中の対象物体とがもっともフィットするような三次元モデルの位置姿勢を算出」する「位置姿勢算出部13」と、本願発明の「前記情報により定まる前記特定部位のモデル点と前記計測データに基づいて前記対象物体の姿勢を算出する算出部」は、「前記特定部位と前記計測データに基づいて前記対象物体の姿勢を算出する算出部」という点で共通する。 2 一致点及び相違点 上記1の検討を総合すると、本願発明と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。 <一致点> 対象物体の姿勢を算出する情報処理装置であって、 前記対象物体の計測データを取得する取得部と、 前記対象物体の形状モデルにおいて、前記対象物体の姿勢を特定するための特定部位であって互いに異なる姿勢とした場合に互いに重ならない特定部位と前記計測データに基づいて前記対象物体の姿勢を算出する算出部と、 を有する情報処理装置、である点。 <相違点> 本願発明は、「特定部位のモデル点のサンプリングに関する情報を、前記特定部位のモデル点の密度が変更可能で、かつ、前記特定部位とは異なる他の部位のモデル点の密度より高くなるように、決定するサンプリング部」を有しており、「前記情報により定まる前記特定部位のモデル点と前記計測データに基づいて前記対象物体の姿勢を算出」しているのに対して、引用発明は、「対象物体の三次元形状モデルと、撮像装置14により取得した画像中の対象物体とがもっともフィットするような三次元モデルの位置姿勢を算出」しているが、当該算出が、三次元形状モデルをサンプリングしたモデル点に基づくものであるか不明であり、特定部位のモデル点の密度が変更可能で、特定部位とは異なる他の部位の密度より高くなるように決定しているか不明な点。 第7 判断 1 相違点についての判断 上記相違点について検討する。 前記第5の2の「ウ 周知技術の認定」において示したとおり、距離画像を3次元点群データに変換し、当該点群データに対象物体の3次元形状モデルの点群データを当て嵌めるモデルフィッティングにより対象物体の位置及び姿勢を推定する際、推定精度に影響を与えない対象物体の3次元形状モデルの点群データについては削除し、モデルフィッティングの処理速度を向上させることは、本願の出願前に周知である。 そして、引用発明においても、対象物体の三次元形状モデルと、撮像装置14により取得した画像中の対象物体とがもっともフィットするような三次元モデルの位置姿勢を算出しており、当該算出にかかる処理速度を向上させることは当然に有する課題であるから、当該課題を解決するために、引用発明に上記周知技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 ここで、引用発明において、対象物体の三次元形状モデルと、撮像装置14により取得した画像中の対象物体とがもっともフィットする位置姿勢の算出は、特定部位のみでなく特定部位とは異なる他の部位も含めて行っており、引用発明の「特定部位」は、対象物体の位置及び姿勢を特定する上で最も重要な箇所であることは明らかであるから、引用発明に上記周知技術を適用して、特定部位以外のモデル点の点群データは推定精度に影響を与えないものであるとし、当該点群データを削除することにより、特定部位のモデル点の密度を、特定部位とは異なる他の部位のモデル点の密度より高くするよう構成することに格別の困難性は認められない。また、モデル点の密度は推定精度に応じたものとなるから、特定部位のモデル点の密度を、特定部位の形状に応じて変更可能にすることも当然に考慮すべきことにすぎない。 以上のことから、引用発明に周知技術を適用し、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、本願発明によって奏される効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。 2 請求人の主張について 請求人は、審判請求の理由において、次の主張をしている。 (審判請求書4頁8行〜5頁6行) 「引用文献1における距離計測誤差の大小に寄与する部分と、引用文献2におけるユーザにとって見た目が顕著に異なる特定部位とは、関連性がなく、組み合わせ自体が困難なものであります。」 しかしながら、引用文献1に記載の技術は、位置姿勢計測のために用いる対応点の密度を場所によって変更するものであり、その対応点の密度が、距離計測誤差の大小に応じて決定されるものであるところ、それは要するに、推定精度に影響を与えるところは密度を高くし、与えないところは密度を低くするということを意味する。そして、引用文献2に記載の発明は、特定部位を有し、特定部位とそれ以外の部位で推定精度に与える影響が異なることは明らかであるから、引用文献2に記載の発明に、引用文献1に記載の技術を組み合わせることが困難であるとまでは認められない。 したがって、当該主張は採用できない。 なお、請求人による上記主張以外の主張は、本件補正後の請求項の記載に基づくものであり、本件補正は、上記第2で説示したとおり却下されているので、当該主張についても採用できない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2021-12-20 |
結審通知日 | 2021-12-21 |
審決日 | 2022-01-06 |
出願番号 | P2016-233160 |
審決分類 |
P
1
8・
574-
Z
(G01B)
P 1 8・ 572- Z (G01B) P 1 8・ 571- Z (G01B) P 1 8・ 573- Z (G01B) P 1 8・ 121- Z (G01B) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
居島 一仁 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 濱本 禎広 |
発明の名称 | 情報処理装置、計測装置、システム、算出方法、プログラムおよび物品の製造方法 |
代理人 | 高岡 亮一 |
代理人 | 小田 直 |