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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1383057
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-13 
確定日 2022-03-22 
事件の表示 特願2019−35197号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和1年5月30日出願公開、特開2019−81024号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成28年8月26日に出願した特願2016−165931号の一部を平成31年2月28日に新たな特許出願(特願2019−35197号)としたものであって、同日に手続補正書が提出され、令和1年11月20日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年1月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月9日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年9月10日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和3年2月8日付け(送達日:同年同月16日)で、令和2年9月10日付け手続補正(以下、「査定前補正」という。)が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、令和3年5月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「請求時補正」という。)がなされたものである。

第2 査定前補正の却下の決定及び原査定の概要

1 査定前補正の却下の決定の概要
査定前補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。

査定前補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2ないし4に記載された周知技術及び引用文献5に記載された事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、独立特許要件を満たさないから、査定前補正は却下すべきものである。

引用文献1:特開2016−77496号公報
引用文献2:特開2006−32845号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2001−170262号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2009−95540号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2010−142341号公報

2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明、引用文献Bに記載された発明、引用文献Cに記載された周知技術及び引用文献Dに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献A:特開平8−89621号公報
引用文献B:特開2012−200525号公報
引用文献C:特開2006−32845号公報(周知技術を示す文献)
引用文献D:特開2010−142341号公報

第3 請求時補正について

1 請求時補正の内容
請求時補正は、令和2年1月23日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のとおり、請求時補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正するものである(下線は補正箇所を示す。)。

[補正前]
遊技球を発射する発射装置と、
前記発射装置によって発射された遊技球が転動する遊技盤と、
樹脂によって形成され、前記遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部が、導電体を含む塗料によって塗装されている第一の部材と、
集積回路に電気的に接続されている配線部と、前記集積回路から伝送された制御信号に制御される素子と、が設けられている第二の部材と、
前記第一の部材の前記露出部分の裏面に起立しており、前記塗料によって塗装されていない台座部と、
を備え、
前記第二の部材は前記台座部に当接しており、
且つ、前記発光素子及び前記配線部が前記台座部に当接しない位置に設けられており、
前記第一の部材と前記第二の部材と前記台座部とによって囲われている空間に、前記素子が収まっている
ことを特徴とする遊技機。

[補正後]
遊技球を発射する発射装置と、
前記発射装置によって発射された遊技球が転動する遊技盤と、
樹脂によって形成され、前記遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部が、導電体を含む塗料によって塗装されている第一の部材と、
集積回路に電気的に接続されている配線部と、前記集積回路から伝送された制御信号に制御される発光素子と、が設けられている第二の部材と、
を備え、
前記第一の部材の前記露出部分の裏面には、当該裏面に起立している形状の台座部が、前記第一の部材と一体的に形成されており、
前記第二の部材は、前記台座部が有する面のうち前記裏面から離間している側の一面に当接しており、
前記第一の部材の前記裏面、当該裏面に形成されている前記台座部、及び前記第二の部材によって囲われている空間に、前記発光素子が収まっており、
且つ、前記発光素子及び前記配線部が前記台座部に当接しない位置に設けられており、
前記第一の部材の前記露出部分に開口が設けられており、前記開口に設けられた透過カバーを介して前記発光素子の発光が視認可能になっており、
前記台座部は、前記塗料によって塗装されていない、
ことを特徴とする遊技機。

2 請求時補正の適否

(1) 補正事項
請求時補正は、以下の補正事項を含むものである。

ア 補正事項ア
請求時補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「素子」を「発光素子」に限定する。

イ 補正事項イ
請求時補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第一の部材の」「露出部分の裏面に起立しており」「塗料によって塗装されていない台座部」に関して、「台座部」が「第一の部材と一体的に形成されて」いるとの限定を追加する。

ウ 補正事項ウ
請求時補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第二の部材」に関して、「第二の部材」が「台座部が有する面のうち」「第一の部材の」「露出部分の」「裏面から離間している側の一面に当接して」いるとの限定を追加する。

エ 補正事項エ
請求時補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「素子」が「収ま」る「第一の部材と」「第二の部材と」「台座部とによって囲われている空間」に関して、当該「空間」が、「第一の部材の」「裏面、当該裏面に形成されている」「台座部、及び」「第二の部材によって囲われている空間」であるとの限定を追加する。

オ 補正事項オ
請求時補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第一の部材」に関して、「第一の部材の」「露出部分に開口が設けられており、前記開口に設けられた透過カバーを介して」「発光素子の発光が視認可能になって」いるとの限定を追加する。

(2) 補正の目的について
補正事項アないし補正事項オは、請求時補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求時補正前の請求項1に係る発明と請求時補正後の請求項1に係る発明の両者は産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であると認められる。
したがって、請求時補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3) 新規事項の有無について

ア 補正事項アについて
本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0056】には、「電チュー基板540に実装されている発光素子(発光素子D1〜D6)を保護する。」と記載され、また、「電チュー基板540に実装された発光素子」と記載されていることから、「第二の部材」である電チュー基板540に設けられる素子が「発光素子」である点が記載されていると認められる。

イ 補正事項イについて
当初明細書等の段落【0055】には、「台座部523は、図13に示すように、第二部材520のフランジ部524(露出部分の裏面)に起立して設けられている。」と記載されていることから、「台座部」である台座部523は、「第一の部材」である第二部材520と一体的に形成されている点が記載されていると認められる。

ウ 補正事項ウについて
当初明細書等の段落【0055】には、「また、位置決めピン521及び位置決めピン522は、図13に示すように、フランジ部524から離間した台座部523の一面から突出している。電チュー基板540は、当該一面に当接するように、第二部材520と第三部材550とによって挟持される。」と記載されていることから、「第二の部材」である電チュー基板540は「第一の部材」である第二部材520のフランジ部524から離間した台座部523の一面に当接するように構成されており、「第二の部材」が「台座部が有する面のうち」「第一の部材」の「露出部分の」「裏面から離間している側の一面に当接」する点が記載されていると認められる。

エ 補正事項エについて
当初明細書等の【図12】、【図13】及び【図14】を参照すると、「第二の部材」である電チュー基板540に設けられた発光素子であるD1ないしD6は、「第一の部材」である第二部材520、「第二の部材」である電チュー基板540、「台座部」である台座部523により囲まれた空間に配置される点が見て取れ、「素子」が「収ま」る「空間」が、「第一の部材の」「裏面、当該裏面に形成されている」「台座部、及び」「第二の部材によって囲われている空間」である点が記載されていると認められる。
「【図12】


「【図13】


「【図14】



オ 補正事項オについて
当初明細書等の段落【0056】には、「透過カバー530は、前面部525に設けられた開口の一部(始動口に該当しない開口)を覆うように設けられる部材であって、電チュー基板540に実装されている発光素子(発光素子D1〜D6)を保護する。透過カバー530は、透過性を有する樹脂によって形成されている。これにより、電チュー基板540に実装された発光素子の発光が、遊技機10の正面側から視認可能になっている。」と記載されていることから、「第一の部材の」「露出部分に開口が設けられており、前記開口に設けられた透過カバーを介して」「発光素子の発光が視認可能になって」いる点が記載されていると認められる。

カ 小括
以上のことから、補正事項アないしオからなる請求時補正は、当初明細書等に記載の範囲内のものであり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。このことから、請求時補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(4) 独立特許要件について

ア 請求時補正後の請求項1に係る発明
請求時補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、以下のとおりである。なお、本件補正発明のAないしKの符号は合議体により付与されたものである。

「A 遊技球を発射する発射装置と、
B 前記発射装置によって発射された遊技球が転動する遊技盤と、
C 樹脂によって形成され、前記遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部が、導電体を含む塗料によって塗装されている第一の部材と、
D 集積回路に電気的に接続されている配線部と、前記集積回路から伝送された制御信号に制御される発光素子と、が設けられている第二の部材と、
を備え、
E 前記第一の部材の前記露出部分の裏面には、当該裏面に起立している形状の台座部が、前記第一の部材と一体的に形成されており、
F 前記第二の部材は、前記台座部が有する面のうち前記裏面から離間している側の一面に当接しており、
G 前記第一の部材の前記裏面、当該裏面に形成されている前記台座部、及び前記第二の部材によって囲われている空間に、前記発光素子が収まっており、
H 且つ、前記発光素子及び前記配線部が前記台座部に当接しない位置に設けられており、
I 前記第一の部材の前記露出部分に開口が設けられており、前記開口に設けられた透過カバーを介して前記発光素子の発光が視認可能になっており、
J 前記台座部は、前記塗料によって塗装されていない、
K ことを特徴とする遊技機。」

イ 各引用文献の記載事項及び引用発明等

イ−1 引用文献1について

(ア) 引用文献1に記載された事項
査定前補正の却下の決定で引用した引用文献1には、以下の記載がある。

引1−ア
「【0010】
図1乃至図7において、本実施形態に係るパチンコ機1は、遊技ホールの島設備(図示しない)に設置される外枠2と、外枠2に開閉自在に軸支され前側が開放された箱枠状の本体枠3と、本体枠3に前側から装着固定され遊技媒体としての遊技球が打ち込まれる遊技領域1100を有した遊技盤4と、本体枠3及び遊技盤4の前面を遊技者側から閉鎖するように本体枠3に対して開閉自在に軸支された扉枠5とを備えている。このパチンコ機1の扉枠5には、遊技盤4の遊技領域1100が遊技者側から視認可能となるように形成された遊技窓101と、遊技窓101の下方に配置され遊技球を貯留する皿状の上皿301及び下皿302と、上皿301に貯留された遊技球を遊技盤4の遊技領域1100内へ打ち込むために遊技者が操作するハンドル装置500と、を備えている。」

引1−イ
「【0317】
本例の本体枠3は、本体枠3の骨格を形成すると共に前後方向に貫通し遊技盤4を保持するための矩形状の遊技盤保持口601を有した本体枠ベース600と、本体枠ベース600の正面視左側端部の上端及び下端に夫々取付けられ外枠2に軸支されると共に扉枠5を軸支するための上軸支金具630及び下軸支金具640と、本体枠ベース600の下部前面に取付けられ遊技盤4の遊技領域1100内へ遊技球を打ち込むための打球発射装置650と、本体枠ベース600の後側に取付けられ皿ユニット300の上皿301へ遊技球を払出すための賞球ユニット700と、本体枠ベース600の前面に取付けられ本体枠3に対して扉枠5が開いた時に賞球ユニット700から扉枠5の皿ユニット300への遊技球の流れを遮断する球出口開閉ユニット790と、を備えている。」

引1−ウ
「【0641】
本実施形態のパチンコ機1における遊技盤4は、外レール1111及び内レール1112を有し、遊技者がハンドル装置500を操作することで遊技媒体としての遊技球(単に「球」とも称す)が打ち込まれる遊技領域1100の内周を区画形成する枠状の前構成部材1110Aと、前構成部材1110Aの後側に遊技領域1100を閉鎖するように取付けられ遊技領域1100と対応する位置に所定形状で前後方向へ貫通した複数の開口部1158(図114及び図115等を参照)を有し遊技領域1100の後端を区画する板状の遊技パネル1150と、を備えている。
【0642】
本例の遊技パネル1150は、ベニヤ板等の木製の合板により形成されている。
【0643】
また、遊技盤4は、遊技パネル1150の開口部1158に対して前側から取付けられる表ユニット2000と、遊技パネル1150の後面に取付けられる裏ユニット3000と、裏ユニット3000の後側に遊技者側から視認可能に取付けられ所定の演出画像を表示可能なメイン液晶表示装置1900と、裏ユニット3000の下部を後側から覆うように遊技パネル1150の後面下部に取付けられる基板ホルダ1160と、基板ホルダ1160の後面に取付けられる主制御基板ボックス1170と、を備えている。」

引1−エ
「【0644】
本例の遊技盤4における表ユニット2000は、遊技領域1100内の下部でアウト口1151の正面視右上に配置されたアタッカユニット2100と、アタッカユニット2100の左側でアウト口1151の直上に配置された始動口ユニット2200と、始動口ユニット2200の左側で遊技領域1100の内周に沿って円弧状に延びた表サイドユニット2300と、表サイドユニット2300に取付けられ遊技状態を表示可能な機能表示ユニット1180と、遊技領域1100の略中央部分に配置された枠状のセンター役物2500と、を備えている。」

引1−オ
「【0679】
[2−3.始動口ユニット]
続いて、本実施形態のパチンコ機1の遊技盤4における表ユニット2000の始動口ユニット2200について、主に図124乃至図127を参照して説明する。図124は表ユニットの始動口ユニットを前から見た斜視図であり、図125は表ユニットの始動口ユニットを後から見た斜視図である。また、図126は始動口ユニットを分解して前から見た分解斜視図であり、図127は始動口ユニットを分解して後から見た分解斜視図である。本例の始動口ユニット2200は、図示するように、遊技領域1100における左右方向の中央でアウト口1151の直上に配置されており、上方へ向って開口した常時遊技球を受入可能な第一始動口2201を備えている。
【0680】
本例の始動口ユニット2200は、図示するように、遊技パネル1150の前面に取付けられる板状の始動口ベース2202と、始動口ベース2202の前面に取付けられると共に前方へ膨出し上部に第一始動口2201が配置された始動口ボンネット2203と、始動口ベース2202の後側に取付けられた透光性を有するレンズ部材2204と、レンズ部材2204の後側に配置され前面に複数のLEDが実装された第一始動口装飾基板2205と、第一始動口装飾基板2205と始動口ボンネット2203との間に配置され前後方向へ延びた筒状のリフレクタ2206と、第一始動口装飾基板2205の後側を被覆しレンズ部材2204の後側に取付けられる基板カバー2207とを備えている。
【0681】
始動口ユニット2200の始動口ベース2202は、前面に浅いレリーフ状の装飾が形成されていると共に、金属光沢を有したメッキ層が形成されている。また、始動口ベース2202は、略中央の位置で前後方向へ貫通しリフレクタ2206が通過可能な挿通孔2202aと、始動口ボンネット2203の正面視外側の位置で前後方向に貫通しレンズ部材2204が臨む複数の開口2202bとを備えている。
【0682】
また、始動口ユニット2200の始動口ボンネット2203は、後側が開放された箱状に形成されており、前面に所定の装飾が施されている。また、始動口ボンネット2203は、第一始動口2201を形成し上方及び後方に開放された箱状の受部2203aを上部に備えている。この始動口ボンネット2203は、全体が透光性を有した材料で形成されており、前面における受部2203aよりも下側の略中央を除いた部位に金属光沢を有したメッキ層が形成されている。
【0683】
始動口ユニット2200のレンズ部材2204は、上端に形成され第一始動口2201に受入れられた遊技球を後方へ誘導する樋部2204aと、樋部2204aの下側で始動口ベース2202の挿通孔2202aと略一致するように前後方向へ貫通しリフレクタ2206が通過可能な挿通孔2204bと、前方へ膨出し始動口ベース2202の開口2202bから遊技者側へ臨む装飾部2204cとを備えている。このレンズ部材2204は、第一始動口装飾基板2205の外周付近に備えられたLEDからの光を誘導して始動口ベース2202の開口2202b及び始動口ボンネット2203の側面を発光装飾させることができる。
【0684】
始動口ユニット2200のリフレクタ2206は、透光性の低い材料で形成されており、レンズ部材2204の後面に取付けられている。このリフレクタ2206は、第一始動口装飾基板2205の中央付近に備えられたLEDからの光が、外側へ漏れるのを防止することができると共に、第一始動口装飾基板2205の外周付近に備えられたLEDからの光が、内側へ漏れるのを防止することができ、始動口ボンネット2203の前面中央のみを発光装飾させることができる。
【0685】
本実施形態の始動口ユニット2200は、第一始動口2201を形成する始動口ボンネット2203の受部2203aに遊技球が受入れられると、始動口ボンネット2203から後側のレンズ部材2204における樋部2204aを介して後述する裏ユニット3000の球排出ユニット3400へ受渡すことができる。」

引1−カ
「【図110】



引1−キ
「【図124】



(イ) 引用文献1の記載より認定できる事項
図110及び図124を参照すると、始動口ユニット2200の始動口ベース2202は、遊技盤4の遊技領域1100内において、第一始動口2201に隣接して設けられていることから、「始動口ベース2202は、第一始動口2201に入賞しなかった遊技球が当接し得る部位に設けられていること」(以下、「認定事項1」という。)が認定できる。

(ウ) 引用文献1に記載された発明
上記(ア)及び(イ)より、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「ア1 遊技ホールの島設備に設置される外枠2と、外枠2に開閉自在に軸支され前側が開放された箱枠状の本体枠3と、本体枠3に前側から装着固定され遊技媒体としての遊技球が打ち込まれる遊技領域1100を有した遊技盤4と、本体枠3及び遊技盤4の前面を遊技者側から閉鎖するように本体枠3に対して開閉自在に軸支された扉枠5とを備えたパチンコ機1であって(【0010】)、
イ1 本体枠3は、遊技盤4の遊技領域1100内へ遊技球を打ち込むための打球発射装置650を備え(【0317】)、
ウ1 遊技盤4は、ベニヤ板等の木製の合板により形成された遊技パネル1150と(【0641】、【0642】)、遊技パネル1150に対して前側から取付けられる表ユニット2000を備え(【0643】)、遊技盤4における表ユニット2000は、始動口ユニット2200を備え(【0644】)、
エ1 始動口ユニット2200は、遊技パネル1150の前面に取付けられる板状の始動口ベース2202と、始動口ベース2202の前面に取付けられると共に前方へ膨出し上部に第一始動口2201が配置された始動口ボンネット2203と、始動口ベース2202の後側に取付けられた透光性を有するレンズ部材2204と、レンズ部材2204の後側に配置され前面に複数のLEDが実装された第一始動口装飾基板2205と、第一始動口装飾基板2205と始動口ボンネット2203との間に配置され前後方向へ延びた筒状のリフレクタ2206と、第一始動口装飾基板2205の後側を被覆しレンズ部材2204の後側に取付けられる基板カバー2207とを備え(【0680】)、
オ1 始動口ユニット2200の始動口ベース2202は、金属光沢を有したメッキ層が形成され(【0681】)、第一始動口2201に入賞しなかった遊技球が当接し得る部位に設けられ(認定事項1)、始動口ボンネット2203は、全体が透光性を有した材料で形成され、略中央を除いた部位に金属光沢を有したメッキ層が形成されており(【0682】)、
カ1 始動口ユニット2200のレンズ部材2204は、第一始動口装飾基板2205の外周付近に備えられたLEDからの光を誘導して始動口ボンネット2203の側面を発光装飾させることができ(【0683】)、始動口ユニット2200のリフレクタ2206は、透光性の低い材料で形成されており、レンズ部材2204の後面に取付けられ、このリフレクタ2206は、第一始動口装飾基板2205の中央付近に備えられたLEDからの光が、外側へ漏れるのを防止することができると共に、第一始動口装飾基板2205の外周付近に備えられたLEDからの光が、内側へ漏れるのを防止することができ、始動口ボンネット2203の前面中央のみを発光装飾させることができる(【0684】)、
キ1 パチンコ機1(【0010】)。」

イ−2 引用文献2について
査定前補正の却下の決定で引用した引用文献2には、以下の記載がある。

引2−ア
「【0028】
実施の形態1.
図1及び図2で本発明に係る透明シールドケース及びその製造方法並びに遊技機の実施の形態1を説明する。これらの図において、1はパチンコ台やスロットマシン台等の遊技機が有する電子回路基板であり、この電子回路基板1の少なくとも一部を覆うように透明シールドケース10が設置されている。
【0029】
この透明シールドケース10において、直方体状のケース部構成面のうちで、透明性が不要な部分(4側面)は不透明シールド材料を用いた不透明シールド部11となっており、透明性が必要な部分(天井面)は透明シールド材料を用いた透明シールド部12となっている。」

引2−イ
「【0035】
従って、透明シールドケース10が角部を有する場合においては、少なくとも透明ケース部角部とその周辺は透明性が不要となるように、透明シールドケース10とその配置を設計することが好ましい。すなわち、図1及び図2のように、透明ケース部本体15の角部は不透明なシールド材料を用いて不透明シールド層21を形成することが好ましい。」

引2−ウ
「【0038】
また、不透明シールド材料を用いて形成した不透明シールド層21は、導電性膜であってよい。この場合、不透明シールド材料としては、銀、ニッケル、錫、亜鉛等の金属が用いられ、さらに異なる種類の不透明シールド材料の積層体であってもよい。導電成膜の形成方法としては、メッキ法、スパッタ法、蒸着法、塗布法等が挙げられる。・・・」

以上の記載より、引用文献2には、下記の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「電子回路基板1の少なくとも一部を覆う透明シールドケース10を有する遊技機において、透明シールドケース10の透明性が不要な部分(4側面)に不透明シールド材料を用いて不透明シールド層21を形成するにあたって、塗布法を用いて導電成膜を形成した遊技機。」

イ−3 引用文献3について
査定前補正の却下の決定で引用した引用文献3には、以下の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】一般に、パチンコ機やアレンジボール機に代表されるこの種の遊技機においては、使用者に対して見映えをよくするために、遊技機構成部材、特に遊技盤に取着される役物等に塗装処理がなされている。従来、このような塗装処理の1つとして、重金属メッキ塗膜を施したものが知られている。即ち、合成樹脂にて形成された遊技機構成部材、特に役物等(以下、「被塗装部材」という。)の表面側には光沢をおびた重金属メッキ塗膜が塗布されている。・・・」

以上の記載より、引用文献3には、下記の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「役物等の遊技機構成部材の表面側に光沢をおびた重金属メッキ塗膜が塗布された遊技機。」

イ−4 引用文献4について
査定前補正の却下の決定で引用した引用文献4には、以下の記載がある。

引4−ア
「【0014】
図1及び図2に示す遊技機1は、矩形状の枠本体10と、枠本体10の前側に開閉可能に配設された前枠20と、前枠20の前側の上方に開閉可能に配設され、遊技盤50(図3参照)の透明遊技盤60の遊技領域61の前方を覆う透明板72を有する前扉30と、前枠20の前側の下方に配設された受皿ユニット40とを備えている。
前枠20は、矩形状に形成され、ヒンジ機構Hを介して枠本体10に蝶着されている。そして、前枠20の内側には、遊技盤50(図3参照)が取り付けられる。」

引4−イ
「【0018】
前扉30は、矩形状に形成され、ヒンジ機構H を介して枠本体10に蝶着されている。そして、前扉30は、ベース部70と、ベース部70の前面に配設された一対のBGM用スピーカ8 0及び一つの音声用スピーカ81と、ベース部70の前方を覆う装飾部90とを有している。・・・」

引4−ウ
「【0024】
装飾部90は、ベース部70の前方を覆う装飾板91と、装飾板91の前方を覆う装飾カバー92とを有している。装飾板91は、図6に示すように、ベース部70の上方の左右方向中央部を覆う上部装飾部材91aと、ベース部70の上側の各角部をそれぞれ覆う一対の角部装飾部材91bと、ベース部70の各側方から下方をそれぞれ覆う一対の側部装飾部材91cとを有している。装飾板91の前面には、銀色のメッキ塗装が施されている。装飾板91の中央部には、ベース部70の開口部71に対応する開口部93が設けられている。」

以上の記載より、引用文献4には、下記の事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「矩形状の枠本体10と、枠本体10の前側に開閉可能に配設された前枠20と、前枠20の前側の上方に開閉可能に配設され、遊技盤50の透明遊技盤60の遊技領域61の前方を覆う透明板72を有する前扉30と、前枠20の前側の下方に配設された受皿ユニット40とを備え、前扉30は、装飾部90を有し、装飾部90は、装飾板91を有し、装飾板91の前面には、銀色のメッキ塗装が施されている遊技機。」

イ−5 引用文献5について
査定前補正の却下の決定で引用した引用文献5には、以下の記載がある。

引5−ア
「【0001】
本発明は、パチンコ遊技機の基板取付構造に関し、特に、メッキ加工が施されたセンタ役物外周枠に取付られたプリント基板への電気的ノイズの侵入を阻止できるようにしたパチンコ遊技機の基板取付構造に関するものである。」

引5−イ
「【0046】
光透過型装飾部材24の後側近傍部位には、電子部品としての複数の光源(本実施例ではLED)が実装されたプリント基板27が設けられている。複数の光源の光が、光拡散部材24bにより光透過型装飾部材24の全体に拡散される。
【0047】
センタ役物外周枠左部20Lに、前記のプリント基板27を取付ける基板取付構造が装備されている。図3、図4、図6、図7に示すように、基板取付構造は、センタ役物外周枠左部20Lの前面壁部20aの近傍部位に一体成形された基板取付部25と、この基板取付部25に取付られるプリント基板27の裏面全体を覆う絶縁シート28と、プリント基板27を押圧する基板押え29とを備え、プリント基板27を絶縁シート28を介在させて基板押え29で基板取付部25に押えるように構成されている。
【0048】
図3、図4に示すように、基板取付部25は、センタ役物外周枠左部20Lに一体形成されている。この基板取付部25にも硬質金メッキ加工が施されている。基板取付部25は、前面壁部20aの右端から右方に向けて突出状に形成された平板状の本体板部31と、この本体板部31の左右両端から前方へ直角に立ち上がる左端壁30と右端壁33を有する。」

引5−ウ
「【0052】
本体板部31には、中央部から右端に亙って逆コ字状に切り欠いたコネクタ貫通穴31aが形成されている。本体板部31においてコネクタ貫通穴31aよりも下側には、プリント基板27の裏面27bのうち配線が無い部分を支持する短柱状のボス部35が形成され、そのボス部35にはビス挿通穴が形成されている。ボス部35の前面は、左端から右端へ行く程後方へ移行するように傾斜状に形成されている。」

以上の記載より、引用文献5には、下記の事項(以下、「引用文献5記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「基板取付部25の平板状の本体板部31にLEDが実装されたプリント基板27を取付ける基板取付構造において、前記プリント基板27の裏面27bのうち配線が無い部分を本体板部31に形成された短柱状のボス部35により支持するパチンコ遊技機の基板取付構造。」

イ−6 引用文献Aについて

(ア) 引用文献Aに記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用した引用文献Aには、以下の記載がある。

引A−ア
「【0007】
【実施例】以下に本発明に係るパチンコ機のランプ飾りの一実施例を図面と共に説明する。図1は本発明が適用されるパチンコ機の正面図である。図において1は機枠、2は機枠1の前面に開閉自在に装着される前面枠で、その前面にはガラス枠3と前板4が開閉自在に装着される。また、前記ガラス枠3の後側には遊技盤5が配設されている。
【0008】遊技盤5の前面のガイドレール6で囲まれる遊技部7には複数の通常入賞口8、始動入賞口9、可変表示装置10、変動入賞装置11及び風車12等の多くの盤面部品がそれぞれ配置される。さらに、前板4の前面には打球供給皿13が取り付けられ、前面枠2の下部には操作ハンドル14および余剰球受皿15が取り付けられている。
【0009】そして、前記遊技部7のガイドレール6内側に沿って左右対称位置に、本発明に係るランプ飾りA1,A2が装着される。各ランプ飾りA1,A2はそれぞれ左右対称形をなす2個ずつのランプ飾りユニットa1,a2から構成されている。そこで、以下一方のランプ飾りユニットa1の構成について説明する。
【0010】ランプ飾りユニットa1は図2ないし図4に示すように、遊技盤5面に取り付けられる縦長状の取付基板16と、該取付基板16の前側に装着されるレンズ部材17と、レンズ部材17内に設けられる配線基板18とより大略構成され、外側面がガイドレール6の内側面に沿うように円弧状に形成されている。
【0011】前記取付基板16は、上下端部にそれぞれ垂直な立壁19,19が立設され、中央部に配線基板18を45度の傾斜を保って支持させる受台20,20が突設される。また、両受台20,20間には配線用の開口21が開設されると共に、その一側内側縁に開口21と連通する切込み22が形成されている。
【0012】そして、前記取付基板16の下端部に下方へ突出する突出片部23が設けられ、また上端部には突出片部23が嵌入し得る嵌入凹部24が設けられている。更に、突出片部23と取付基板16の上部一側に取付基板16を遊技盤5面に取り付けるための取付用孔25,25が慣設されている。26,26はレンズ部材17を固着するためのねじ孔である。
【0013】前記レンズ部材17は、着色した透明材料からなり、後面が開放する中空状に形成され、内部の前面側に仕切壁27,27が設けられ、該各仕切壁27,27,の後端面が前記受台20,20と同じ45度の傾斜面に形成され、この傾斜面に突起28,28が突設されている。さらに、レンズ部材17の後面中央の一側に係止爪29が突設されている。30,30はレンズ部材17の後面上下部に設けられ、前記取付基板16のねじ孔26,26に合致するねじ孔である。
【0014】前記配線基板18には、その前面にランプ31が等間隔に3個配設されると共に、抵抗32が取り付けられ、さらに、レンズ部材17の突起28,28が嵌合される嵌合孔33,33が慣設されている。
【0015】そして、配線基板18の嵌合孔33,33に突起28,28を嵌合させ、図5に示すようにレンズ部材17を取付基板16の上面に被着し、配線基板18を受台20,20と仕切壁27,27間で挟着固定させる。また、係止爪29を切込み22に係合させた状態で、図6に示すように取付基板16の裏面からねじ孔26,26を介してねじ孔30,30にビス34,34を
螺締することによりランプ飾りユニットa1が一体に組み立てられる。なお、他方のランプ飾りユニットa2も同様にして組み立てられる。」

引A−イ
「【図6】



(イ) 引用文献Aの記載より認定できる事項
図6を参照すると、ランプ31は、配線基板18上において、仕切壁27・27とは当接しない部位に設けられる点(以下、「認定事項A」という。)が認定できる。

(ウ) 引用文献Aに記載された発明
上記(ア)及び(イ)より、引用文献Aには、以下の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。

「アA 機枠1と、機枠1の前面に開閉自在に装着される前面枠2と、その前面にガラス枠3と前板4が開閉自在に装着されるガラス枠3と前板4と、前記ガラス枠3の後側に配設される遊技盤5を備えたパチンコ機であって(【0007】)、前面枠2の下部には操作ハンドル14が取り付けられており(【0008】)、
イA 遊技盤5の前面の遊技部7には、ランプ飾りA1,A2が装着され(【0008】、【0009】)、各ランプ飾りA1,A2はそれぞれ左右対称形をなす2個ずつのランプ飾りユニットa1,a2から構成され(【0009】)、ランプ飾りユニットa1は、遊技盤5面に取り付けられる縦長状の取付基板16と、該取付基板16の前側に装着されるレンズ部材17と、レンズ部材17内に設けられる配線基板18より構成され(【0010】)、
ウA 前記レンズ部材17は、着色した透明材料からなり、後面が開放する中空状に形成され、内部の前面側に仕切壁27,27が設けられ、該各仕切壁27,27の後端面に突起28,28が突設され(【0013】)、
エA 前記配線基板18には、その前面にランプ31が等間隔に3個配設され、レンズ部材17の突起28,28が嵌合される嵌合孔33,33が慣設され(【0014】)、ランプ31は、配線基板18上において、仕切壁27・27とは当接しない部位に設けられ(図6、認定事項A)、
オA 配線基板18の嵌合孔33,33に突起28,28を嵌合させ、レンズ部材17を取付基板16の上面に被着し、配線基板18を受台20,20と仕切壁27,27間で挟着固定させる(【0015】)、
カA パチンコ機(【0007】)。」

イ−7 引用文献Bについて
引用文献Bについて

(ア) 引用文献Bに記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用した引用文献Bには、以下の記載がある。

引B−ア
「【0013】
まず、本発明に係る構造物の一実施形態である役物100を備える遊技機1の全体的な構成について、図面を用いて説明する。
なお、以下の説明では、遊技機1を遊技者から見て、手前側を遊技機1の前側とし、奥側を遊技機1の後側として、前後方向を規定する。また、遊技機1を遊技者から見て、左手側を遊技機1の左側とし、右手側を遊技機1の右側として、左右方向を規定する。
【0014】
遊技機1は、図1及び図2が示すように、主として、外枠2と、中枠3と、窓枠4と、により構成される枠体に、各種の遊技部品が取り付けられて形成される。
【0015】
外枠2は、遊技機1の外郭を成し、前後面が開口された略四角筒状に形成される枠体である。外枠2は、パチンコホール等の遊技場に設けられた台島に設置される。外枠2には、中枠3が設けられる。
【0016】
中枠3は、前後面が開口された略四角筒状に形成される枠体である。中枠3は、外枠2の前側の開口部にヒンジ等の軸支部材を介して回動可能に支持される。中枠3には、遊技盤5と、窓枠4と、下皿ユニット6と、が設けられる。
【0017】
遊技盤5は、略平板状に形成される部材である。遊技盤5は、中枠3の下側を除く略全面に渡って配置される。遊技盤5は、中枠3に着脱自在に取り付けられる。遊技盤5の前側面には、遊技球が転動する領域である遊技領域19が形成される(図3参照)。
【0018】
窓枠4は、略平板状に形成される枠体である。窓枠4は、遊技盤5の前方に配置される。窓枠4は、中枠3の前側の開口部にヒンジ等の軸支部材を介して回動可能に支持される。窓枠4の略中央には、略円形状の窓枠開口部7が開口される。窓枠開口部7は、透明板27により被覆される。これによって、遊技者は、前方から透明板27を介して窓枠4の後方に配置された遊技盤5(より詳細には、遊技領域19)を視認することができる。窓枠開口部7の下方には、発射前の遊技球が貯溜される上皿8が配設される。窓枠開口部7の左右上方には、スピーカ9がそれぞれ配設される。
【0019】
下皿ユニット6は、中枠3の下側であって窓枠4の下方に取り付けられる。下皿ユニット6の略中央には、上皿8から溢れた遊技球が貯溜される下皿25が配設される。下皿ユニット6の右側部であって下皿25の右方には、上皿8に貯溜された遊技球を遊技盤5の遊技領域19へ向けて発射可能に構成される発射ハンドル26が配設される。
【0020】
次に、遊技盤5の構成について、図3を用いてさらに詳細に説明する。
【0021】
遊技盤5には、ガイドレール10と、図柄表示装置11と、図柄表示開口部12と、一般入賞口13と、大入賞装置14と、可変入賞装置15と、アウト口16と、役物100と、が設けられる。」

引B−イ
「【0029】
役物100は、その外観により遊技盤5を装飾するとともに、発光可能に構成されて遊技者の興趣を高める部材である。役物100は、正面視で遊技領域5の概ね中央で、遊技盤5を前後方向に貫通した開口部に配設される。役物100の中央には、前後方向に貫通した図柄表示開口部12が設けられる。図柄表示開口部12には、図柄表示装置11の液晶画面20が配置される。役物100は、遊技領域19を転動する遊技球が衝突可能に配置される。役物100には、支持部材110を介して電子部品120が取り付けられる(図4参照)。
【0030】
以下では、図4を用いて、役物100に対して、支持部材110を介して電子部品120を取り付ける取付構造について説明する。
【0031】
構造物としての役物100は、非導電性の材料により形成される。役物100は、前壁部101と、一対の側壁部102・102と、により構成される。
【0032】
前壁部101は板状の部分であり、その板面を前後方向に向けて配置される。前壁部101の前側面には、図柄や文字等が適宜描かれて遊技盤5を装飾している。
【0033】
一対の側壁部102・102は板状の部分であり、その板面を左右方向に向けて配置される。一対の側壁部102・102は、前壁部101の左端部および右端部にそれぞれ設けられ、当該前壁部101から背後(後方)に向かってそれぞれ延設される。
【0034】
上述の前壁部101および一対の側壁部102・102は一体的に(一部材として)形成され、役物100を構成する。上述の如く構成することで、役物100は、平面断面視(図4)略コ字状(U字状)となるように形成される。
【0035】
また、役物100の表面にはメッキ加工が施される。ここで役物100の表面とは、当該役物100を構成する面のうち、当該役物100が遊技機1に取り付けられた際に遊技者から視認され得る面および遊技領域19に面している面を指すものである。本実施形態においては、前壁部101の前側面および一対の側壁部102・102の外側面(左側の側壁部102の左側面および右側の側壁部102の右側面)にはメッキ加工が施され、メッキ材103により被覆される。一方、本実施形態においては、役物100の裏面にはメッキ加工が施されない。ここで役物100の裏面とは、当該役物100を構成する面のうち、上述の役物100の表面以外の面を指すものである。なお、メッキ加工が施される役物100の面は、役物100の表面に限定するものではなく、役物100の裏面にメッキ加工が施されてもよい。当該メッキ加工は役物100の外観を美しく見せるためのものである。本実施形態に係る役物100には、導電性を有する硬質金メッキ等を用いた貴金属メッキ加工が施される。
【0036】
支持部材110は、非導電性の材料により形成される。支持部材110は、構造物側固定部111・111と、足部112・112と、電子部品側固定部113と、により構成される。
【0037】
構造物側固定部111・111は板状の部分であり、その板面を前後方向に向けて配置される。構造物側固定部111・111は、一対の側壁部102・102のすぐ内側(左側の側壁部102のすぐ右側および右側の側壁部102のすぐ左側)、すなわち一対の側壁部102・102の裏面側において、ビス130・130により前壁部101の裏面にそれぞれ固定される。
【0038】
足部112・112は板状の部分であり、その板面を左右方向に向けて配置される。足部112・112の一端(前端)は構造物側固定部111・111にそれぞれ固定され、他端(後端)はそれぞれ背後(後方)に向かって延設される。より詳細には、足部112・112の他端(後端)は、前後方向において一対の側壁部102・102の後端と略同一位置まで延設される。この際、足部112・112は役物100と接触することのないように配置される。
【0039】
電子部品側固定部113は板状の部分であり、その板面を前後方向に向けて配置される。電子部品側固定部113の両端(左端および右端)は、それぞれ足部112・112の他端(後端)に固定される。この際、電子部品側固定部113は役物100と接触することのないように配置される。また、電子部品側固定部113は、その前後方向位置が、役物100の一対の側壁部102・102の後端と同一位置となるように配置される。電子部品側固定部113の前側面には、所定間隔をおいて複数のボス部113a・113a・・・が形成される。
【0040】
上述の構造物側固定部111・111、足部112・112および電子部品側固定部113は一体的に(一部材として)形成され、支持部材110を構成する。
【0041】
電子部品120は、図示しない発行ダイオード(LED)を実装したプリント基板である。電子部品120は、その板面を前後方向に向けて配置される。電子部品120は、支持部材110の電子部品側固定部113の前方からビス130・130・・・により当該電子部品側固定部113のボス部113a・113a・・・に固定される。このようにして、電子部品120は、電子部品側固定部113の前方かつ足部112・112の間に配置される。より詳細には、電子部品120は、前壁部101のうち、一対の側壁部102・102の裏面側(内側)に位置する部分の背後に配置されることになる。
【0042】
上述の如く構成することで、電子部品120は、支持部材110を介して役物100に取り付けられる。当該電子部品120に実装されたLEDを点灯させることで、役物100を内側から光らせて(発光可能に構成させて)遊技者の興趣を高めることができる。
【0043】
以下では、上述の如く電子部品120が取り付けられた役物100のメッキ材103に電気的なノイズが発生した場合について説明する。
【0044】
遊技球が役物100(より詳細には、メッキ材103)に繰り返し衝突すると、当該役物100に静電気などの電気的なノイズが発生する場合がある。当該ノイズが電子部品120に伝達されると、当該電子部品120の誤作動や故障が発生するおそれがある。
【0045】
しかしながら、本実施形態においては、役物100と電子部品120とは支持部材110を介して接続されている。当該支持部材110は非導電性の部材であり、電気的なノイズが伝達され難い。さらに、役物100において発生したノイズが電子部品120に伝達されるには、支持部材110の構造物側固定部111・111、足部112・112および電子部品側固定部113という長い経路を順に伝達される必要があるため、当該ノイズは電子部品120に伝達され難い。特に、足部112・112の前後方向長さを長くすれば、当該ノイズをより伝達され難くすることができる。これによって、当該電子部品120の誤作動や故障の発生を防止することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、電子部品120および支持部材110は、役物100により形成される凹状の空間(前壁部101の背後であって、一対の側壁部102・102の間の空間)に配置される。したがって、上述の如く役物100から電子部品120までのノイズの伝達経路を長く確保しながらも、電子部品120を取り付けた状態の役物100全体をコンパクトに構成することができる。
【0047】
以上の如く、本実施形態に係る遊技機1の電子部品取付構造は、表面にメッキ加工が施された遊技機1の役物100(構造物)に対して、支持部材110を介して電子部品120を取り付ける遊技機1の電子部品取付構造であって、役物100は、前方に配置される前壁部101と、前壁部101から背後に向かって延設される側壁部102・102と、を具備し、支持部材110は、前壁部101の裏面のうち側壁部102・102の裏面側に固定される非導電性の構造物側固定部111・111と、役物100と接触することなく、その一端を構造物側固定部111・111に固定され、その他端を背後に向かって延設される非導電性の足部112・112と、役物100と接触することなく、足部112・112の他端側に固定され、電子部品120を前壁部101の裏面のうち側壁部102・102の裏面側に位置する部分の背後において支持する非導電性の電子部品側固定部113と、を具備するものである。
【0048】
このように構成することにより、外部から役物100に静電気などのノイズが伝わった場合であっても、当該役物100から電子部品120までのノイズの伝達経路を、構造物側固定部111、足部112および電子部品側固定部113によって長くすることができる。これによって、電子部品120にノイズを伝え難くすることができ、ひいては電子部品120の誤作動や故障の発生を防止することができる。また、電子部品120、構造物側固定部111、足部112および電子部品側固定部113の全部を一対の側壁部102・102の間に配置することができる。これによって、
上述の如くノイズの伝達経路を長く確保しながらも、電子部品120を取り付けた役物100全体をコンパクトに構成することができる。」

引B−ウ
「【0055】
以下では、本発明に係る電子部品取付構造の第二実施形態について、図7を用いて説明する。なお、以下では第一実施形態に係る電子部品取付構造(図4参照)と異なる点のみ説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0056】
第二実施形態が第一実施形態と異なる点は、支持部材110の足部112が役物100と一体的に形成されている点、および足部112の前端部が構造物側固定部111を兼ねている点である。以下詳述する。
【0057】
足部112・112は板状の部分であり、その板面を左右方向に向けて役物100の前壁部101と一体的に形成される。より詳細には、足部112・112の一端(前端)は役物100の前壁部101の左右両端部近傍にそれぞれ固定され、他端(後端)はそれぞれ背後(後方)に向かって延設される。この際、足部112・112は一対の側壁部102・102と接触することのないように配置される。
【0058】
電子部品側固定部113は板状の部分であり、その板面を前後方向に向けて配置される。電子部品側固定部113の両端(左端および右端)は、それぞれビス130・130により足部112・112の他端(後端)に固定される。
【0059】
上述の如く、支持部材110の足部112・112を役物100側に一体的に構成することも可能である。このように構成する場合、足部112・112の前端部(役物100の前壁部101との結合部)が本発明に係る構造物側固定部を兼ねることになる。」

引B−エ
「【図7】



(イ) 引用文献Bの記載より認定できる事項
【図7】、【0042】、【0056】及び【0057】を参照すると、足部112を役物100と一体的に形成した例が記載されており、【0031】、【0042】の記載を勘案すると、役物100が、「前壁部101と、一対の側壁部102・102と、足部112・112とにより構成され」る点、及び、「電子部品120は、支持部材110を介して足部112・112に取り付けられ」る点が導き出せる(以下、「認定事項B」という。)。また、【0047】には、足部112・112が非導電性である点が記載されており、【図7】を参照すると、足部112・112にはメッキ材103が設けられていないことから、【図7】及び【0056】に示された第二の実施形態においても、「足部112・112は非導電性であり、足部112・112にはメッキ材103による貴金属メッキ加工が施されない」ことが認定できる(以下、「認定事項C」という。)。

(ウ) 引用文献Bに記載された発明
上記(ア)及び(イ)より、引用文献Bには、以下の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。

「アB 外枠2と、中枠3と、窓枠4と、により構成される枠体に、各種の遊技部品が取り付けられて形成される遊技機1であって(【0014】)、
イB 外枠2には、中枠3が設けられ(【0015】)、中枠3には、遊技盤5と、窓枠4と、下皿ユニット6と、が設けられ(【0016】)、遊技盤5の前側面には、遊技球が転動する領域である遊技領域19が形成され(【0017】)、
ウB 中枠3の下側であって窓枠4の下方に取り付けられる下皿ユニット6の右側部には、遊技球を遊技盤5の遊技領域19へ向けて発射可能に構成される発射ハンドル26が配設され(【0019】)、
エB 遊技盤5には、役物100が設けられ(【0021】)、
オB 役物100は、遊技領域19を転動する遊技球が衝突可能に配置され(【0029】)、カB 役物100には、支持部材110を介して電子部品120が取り付けられ(【0029】)、
キB 役物100は、非導電性の材料により形成され、前壁部101と、一対の側壁部102・102と、足部112・112とにより構成され(【0031】、【0056】、認定事項2)、一対の側壁部102・102は板状の部分であり、前壁部101の左端部および右端部にそれぞれ設けられ、当該前壁部101から背後に向かってそれぞれ延設され(【0033】)、足部112・112は板状の部分であり(【0057】)、前壁部101および一対の側壁部102・102、足部112・112は一体的に形成され(【0034】、【0057】)、足部112・112の一端は役物100の前壁部101にそれぞれ固定され、他端はそれぞれ背後に向かって延設され(【0057】)、役物100の前壁部101の前側面および一対の側壁部102・102の外側面には、メッキ材103により導電性を有する貴金属メッキ加工が施され(【0035】)、
クB 電子部品120は、LEDを実装したプリント基板であり(【0041】)、電子部品120は、支持部材110を介して足部112・112に取り付けられ(認定事項B)、当該電子部品120に実装されたLEDを点灯させることで、役物100を内側から光らせて遊技者の興趣を高めることができ(【0042】)、
ケB 支持部材110は、非導電性の材料により形成され(【0036】)、
コB 足部112・112は非導電性であり、足部112・112にはメッキ材103による貴金属メッキ加工が施されない(認定事項C)、
サB 遊技機1。」

イ−8 引用文献Cについて
原査定の拒絶の理由に引用した引用文献Cは、査定前補正の却下の決定で引用した引用文献2と同一の文献であり、下記の引用文献2記載事項が記載されている。
「電子回路基板1の少なくとも一部を覆う透明シールドケース10を有する遊技機において、透明シールドケース10の透明性が不要な部分(4側面)に不透明シールド材料を用いて不透明シールド層21を形成するにあたって、塗布法を用いて導電成膜を形成した遊技機。」

イ−9 引用文献Dについて
原査定の拒絶の理由に引用した引用文献Dは、査定前補正の却下の決定で引用した引用文献5と同一の文献であり、下記の引用文献5記載事項が記載されている。
「基板取付部25の平板状の本体板部31にLEDが実装されたプリント基板27を取付ける基板取付構造において、前記プリント基板27の裏面27bのうち配線が無い部分を本体板部31に形成された短柱状のボス部35により支持するパチンコ遊技機の基板取付構造。」

ウ 対比・検討

ウ−1 本件補正発明と引用発明1との対比・判断

(ア) 本件補正発明の構成Aについて
引用発明1の構成イ1における「遊技球を打ち込むための打球発射装置650」は、本件補正発明の構成Aにおける「遊技球を発射する発射装置」に相当する。

(イ) 本件補正発明の構成Bについて
引用発明1の構成ア1及び構成イ1における「打球発射装置650」により「遊技球が打ち込まれる遊技領域1100を有した遊技盤4」は、本件補正発明の構成Bにおける「前記発射装置によって発射された遊技球が転動する遊技盤」に相当する。

(ウ) 本件補正発明の構成Cについて
引用発明1の構成オ1における「金属光沢を有したメッキ層が形成され」ることと、本件補正発明の構成Cにおける「導電体を含む塗料によって塗装されている」こととは、導電体を含む層が形成される点で一致する。
引用発明1の構成エ1及び構成オ1における「始動口ユニット2200の始動口ベース2202」が「遊技パネル1150の前面に取付けられ」、「第一始動口2201に入賞しなかった遊技球が当接し得る部位に設けられ」ることは、当該部位が露出していることによって遊技球が当接し得るものであるといえるから、本件補正発明の構成Cとは、「第一の部材」が「遊技盤の前面側に露出している露出部分」を備える点で一致する。
また、引用発明1の構成オ1における「始動口ベース2202」が「第一始動口2201に入賞しなかった遊技球が当接し得る部位に設けられ」、「金属光沢を有したメッキ層が形成され」ることと、本件補正発明の構成Cにおける「第一の部材」の「遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部」に「導電体を含む塗料によって塗装されている」こととは、「第一の部材」の「遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部」に「導電体を含む」層が形成される点で一致する。
したがって、引用発明1の構成エ1及び構成オ1における「遊技パネル1150の前面に取付けられ」、「第一始動口2201に入賞しなかった遊技球が当接し得る部位に設けられ」、「金属光沢を有したメッキ層が形成され」た「始動口ベース2202と、始動口ベース2202の前面に取付けられると共に前方へ膨出し上部に第一始動口2201が配置され」、「全体が透光性を有した材料で形成され、略中央を除いた部位に金属光沢を有したメッキ層が形成され」た「始動口ボンネット2203」と、本件補正発明の構成Cにおける「樹脂によって形成され、前記遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部が、導電体を含む塗料によって塗装されている第一の部材」とは、「前記遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部が、導電体を含む層が形成される第一の部材」である点で一致する。

(エ) 本件補正発明の構成Dについて
引用発明1の構成エ1における「前面に複数のLEDが実装された第一始動口装飾基板2205」は、LEDの実装には配線が必須の構成であり、LEDは集積回路に電気的に接続され、前記集積回路から伝送された制御信号により制御されるものであることは明らかであるから、本件補正発明の構成Dにおける「集積回路に電気的に接続されている配線部と、前記集積回路から伝送された制御信号に制御される発光素子と、が設けられている第二の部材」に相当する。

(オ) 本件補正発明の構成Iについて
引用発明1の構成オ1における「全体が透光性を有した材料で形成され、略中央を除いた部位に金属光沢を有したメッキ層が形成されて」いる「始動口ボンネット2203」は、構成カ1における「始動口ユニット2200のリフレクタ2206」により「始動口ボンネット2203の前面中央のみを発光装飾させることができる」ものである。
よって、引用発明1の構成カ1における「始動口ボンネット2203の前面中央のみ」が「発光装飾」することと、本件補正発明の構成Iにおける「前記第一の部材の前記露出部分に開口が設けられており、前記開口に設けられた透過カバーを介して前記発光素子の発光が視認可能になって」いることとは、「前記第一の部材の前記露出部分」「を介して前記発光素子の発光が視認可能になって」いる点で一致する。

(カ) 本件補正発明の構成Kについて
引用発明1の構成キ1における「パチンコ機1」は、本件補正発明の構成Kにおける「遊技機」に相当する。

ウ−2 一致点及び相違点
上記(ア)ないし(カ)より、本件補正発明と引用発明1は、以下の点で一致する。

<一致点>
A 遊技球を発射する発射装置と、
B 前記発射装置によって発射された遊技球が転動する遊技盤と、
C’ 前記遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部が、導電体を含む層が形成される第一の部材と、
D 集積回路に電気的に接続されている配線部と、前記集積回路から伝送された制御信号に制御される発光素子と、が設けられている第二の部材と、
を備え、
I’ 前記第一の部材の前記露出部分を介して前記発光素子の発光が視認可能になっている、
K 遊技機。

そして、両者は以下の点で相違する。

<相違点1> (本件補正発明の構成C)
第一の部材に関して、本件補正発明は「樹脂によって形成され」るものであるのに対して、引用発明1は、「始動口ボンネット2203」が「全体が透光性を有した材料で形成され」たものであるが、樹脂によって形成されたものであるか否かは不明であり、また、「始動口ベース2202」が樹脂によって形成されたものであるか否かも不明である点。
<相違点2> (本件補正発明の構成C)
第一の部材の遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部の構成に関して、本件補正発明は、「第一の部材の遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部が、導電体を含む塗料によって塗装されている」のに対して、引用発明1は、「始動口ベース2202」及び「始動口ボンネット2203」に「金属光沢を有したメッキ層が形成され」ているが、導電体を含む塗料によって塗布されたものではない点。
<相違点3> (本件補正発明の構成E、F及びG)
第一の部材と第二の部材に関して、本件補正発明は、「第一の部材の」「露出部分の裏面には、当該裏面に起立している形状の台座部が、前記第一の部材と一体的に形成されており」、「第二の部材は、前記台座部が有する面のうち前記裏面から離間している側の一面に当接しており」、「前記第一の部材の前記裏面、当該裏面に形成されている前記台座部、及び前記第二の部材によって囲われている空間に、前記発光素子が収まって」いるのに対して、引用発明1は、「始動口ベース2202」及び「始動口ボンネット2203」は、それらの裏面側に起立している形状の部材を有していない点。
<相違点4> (本件補正発明の構成D及びH)
第二の部材に設けられた配線部と発光素子に関して、本件補正発明は、「前記発光素子及び前記配線部が前記台座部に当接しない位置に設けられて」いるのに対して、引用発明1は、「始動口ベース2202」及び「始動口ボンネット2203」は、それらの裏面側に起立している形状の部材を有しておらず、本件補正発明の「台座部」に相当する構成を有していないことから、「第一始動口装飾基板2205」に「実装された」「複数のLED」及びその配線が、「台座部に当接しない位置に設けられて」いるとはいえない点。
<相違点5> (本件補正発明の構成I)
第一の部材に関して、本件補正発明は、「第一の部材の」「露出部分に開口が設けられており、」「前記開口に設けられた透過カバーを介して」「発光素子の発光が視認可能になって」いるのに対して、引用発明1は、「始動口ボンネット2203」に開口が設けられているか不明であり、当該開口に透過カバーが設けられているか否かも不明である点。
<相違点6> (本件補正発明の構成E及びJ)
第一の部材に関して、本件補正発明は、「第一の部材」の「台座部」が「導電体を含む」「塗料によって塗装されていない」のに対して、引用発明1は、「始動口ベース2202」及び「始動口ボンネット2203」は、それらの裏面側に起立している形状の部材を有しておらず、本件補正発明の「台座部」に相当する構成を有していない点。

ウ−3 当審の判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
上記相違点3に係る構成に関して、引用文献2には、上記「イ−2」に示した引用文献2記載事項が、引用文献3には、上記「イ−3」に示した引用文献3記載事項が、引用文献4には、上記「イ−4」に示した引用文献4記載事項が記載されているが、引用文献5には、上記「イ−5」に示した引用文献5記載事項が記載されているが、いずれの文献にも、本件補正発明の上記相違点3に係る構成である「第一の部材の」「露出部分の裏面には、当該裏面に起立している形状の台座部が、前記第一の部材と一体的に形成されており」、「第二の部材は、前記台座部が有する面のうち前記裏面から離間している側の一面に当接しており」、「前記第一の部材の前記裏面、当該裏面に形成されている前記台座部、及び前記第二の部材によって囲われている空間に、前記発光素子が収まって」いる構成は記載されていない。
してみると、本件補正発明の上記相違点3に係る構成は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて、容易に想到することはできない。

また、上記「イ−6」に示した引用発明Aにおける「後面が開放する中空状に形成され」た「レンズ部材17」、「レンズ部材17」に「設けられ」た「仕切壁27,27」、「レンズ部材17内に設けられ」「ランプ31が」「配設され」た「配線基板18」を、それぞれ、本件補正発明の上記相違点3に係る構成における「第一の部材」、「裏面に起立している形状の台座部」、「第二の部材」に相当するものとすると、引用発明Aは、「レンズ部材17」が「着色した透明材料からなり、後面が開放する中空状に形成され、内部の前面側に仕切壁27,27が設けられ、該各仕切壁27,27の後端面に突起28,28が突設され」、「配線基板18には、その前面にランプ31が」「配設され、レンズ部材17の突起28,28が嵌合される嵌合孔33,33が慣設され」た構成を備えるものといえる。
そして、引用発明Aにおける「配線基板18」の「嵌合孔33,33」が「各仕切壁27,27の後端面に」「突設され」た「突起28,28」に「嵌合される」ことは、本件補正発明の上記相違点3に係る構成における「第二の部材は、前記台座部が有する面のうち前記裏面から離間している側の一面に当接して」いること(構成F)に相当し、また、引用発明Aにおける「ランプ31」は、「後面が開放する中空状に形成され」た「レンズ部材17」の内側に位置するものであるから、そのことは、本件補正発明の上記相違点3に係る構成における「前記第一の部材の前記裏面、当該裏面に形成されている前記台座部、及び前記第二の部材によって囲われている空間に、前記発光素子が収まって」いる構成(構成G)に相当すると認められる。
してみると、引用発明Aは、本件補正発明の上記相違点3に係る構成における「第一の部材の」「露出部分の裏面には、当該裏面に起立している形状の台座部が、」「形成されており」(構成Eの一部)、「第二の部材は、前記台座部が有する面のうち前記裏面から離間している側の一面に当接しており」(構成F)、「前記第一の部材の前記裏面、当該裏面に形成されている前記台座部、及び前記第二の部材によって囲われている空間に、前記発光素子が収まって」いる構成(構成G)を有すると認められる。
しかしながら、引用発明1における「始動口ベース2202の後側に取付けられた透光性を有するレンズ部材2204」は、「始動口ベース2202」の裏面に別部材として取り付けられ、「透光性を有するレンズ」として機能するものであるから、引用発明Aにおける「レンズ部材17」に「設けられ」た「仕切壁27,27」が、「レンズ部材17」に一体的に設けられたものであったとしても、引用発明1において、「始動口ベース2202の後側に取付けられた透光性を有するレンズ部材2204」を設けた構成に代えて、「透光性を有するレンズ」としての機能を有さない「レンズ部材17」に一体的に「設けられ」た「仕切壁27,27」を設けた構成を採用することの動機は見いだせない。

さらに、上記「イ−7」に示した引用発明Bにおける「非導電性の材料により形成され、前壁部101と、一対の側壁部102・102」「とにより構成され」た「役物100」、「一体的に形成され」「一端は役物100の前壁部101にそれぞれ固定され、他端はそれぞれ背後に向かって延設され」た「足部112・112」、「LEDを実装したプリント基板であ」る「電子部品120」をそれぞれ、本件補正発明の上記相違点3に係る構成における「第一の部材」、「裏面に起立している形状の台座部」、「第二の部材」に相当するものとすると、引用発明Bは、「電子部品120は、支持部材110を介して足部112・112に取り付けられ」るように構成されており、「LEDを実装したプリント基板であ」る「電子部品120」は、「足部112・112」に当接する構成を有するものではなく、本件補正発明の上記相違点3に係る構成のうち、「第二の部材は、前記台座部が有する面のうち前記裏面から離間している側の一面に当接」する構成(構成F)を有さない。

よって、本件補正発明の上記相違点3に係る構成は、引用発明1、引用文献2ないし5に記載された事項、並びに、引用発明Aに基づいて当業者が容易に想到し得るものとは認められない。

エ 小括
以上のことから、他の相違点に係る構成を検討するまでもなく、本件補正発明は、引用発明1、査定前補正の却下に決定において引用された引用文献2ないし5に記載された事項、並びに、拒絶査定において引用された引用文献A及び引用文献Bに記載された事項によって当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件補正発明は、独立特許要件を満たすものである。

3 まとめ

上記「2」「(1)」ないし「(4)」より、請求時補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第17条の2第3項に適合するものであり、また、同法同条第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、同法同条第6項で準用する同法第126条第7項に適合するものである。

第4 原査定について

1 本件補正発明と引用発明Aとの対比

本件補正発明と、上記「第3」「2」「(4)」「イ」「イ−6」「(ウ)」に示した引用発明Aとを対比する。

(ア) 本件補正発明の構成Aについて
引用発明Aの構成アAにおける「操作ハンドル14」は、本件補正発明の構成Aにおける「遊技球を発射する発射装置」に相当する。

(イ) 本件補正発明の構成Bについて
引用発明Aの構成イAにおける「遊技盤5の前面の遊技部7」は、パチンコ機において、遊技盤5が、遊技球が転動する部位であることは、当業者の技術常識であるから、本件補正発明の構成Bにおける「前記発射装置によって発射された遊技球が転動する遊技盤」に相当する。

(ウ) 本件補正発明の構成Cについて
引用発明Aの構成イA及び構成ウAにおける「遊技盤5の前面の遊技部7」に「装着され」た「ランプ飾りA1,A2」を「構成」する「着色した透明材料からなり、後面が開放する中空状に形成された」「レンズ部材17」と、本件補正発明の構成Cにおける「樹脂によって形成され、前記遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部が、導電体を含む塗料によって塗装されている第一の部材」とは、「遊技盤の前面側に露出している露出部分」を有する「第一の部材」である点で一致する。

(エ) 本件補正発明の構成Dについて
引用発明Aの構成エAにおける「その前面にランプ31が等間隔に3個配設され」た「配線基板18」は、ランプ31の実装には配線が必須の構成であり、ランプ31は集積回路に電気的に接続され、前記集積回路から伝送された制御信号により制御されるものであることは明らかであるから、本件補正発明の構成Dにおける「集積回路に電気的に接続されている配線部と、前記集積回路から伝送された制御信号に制御される発光素子と、が設けられている第二の部材」に相当する。

(オ) 本件補正発明の構成Eについて
引用発明Aの構成ウAにおける「後面が開放する中空状に形成され」た「レンズ部材17」に「仕切壁27,27が設けられ」ることと、本件補正発明の構成Eにおける「第一の部材の前記露出部分の裏面に、当該裏面に起立している形状の台座部が、」「第一の部材と一体的に形成されて」いることとは、「第一の部材の」「露出部分の裏面には、当該裏面に起立している形状の台座部が、」「形成されて」いる点で一致する。

(カ) 本件補正発明の構成Fについて
引用発明Aの構成エA及び構成オAにおける「配線基板18」が「各仕切壁27,27の後端面に」「突設され」た「突起28,28が嵌合される嵌合孔33,33が慣設され」、「配線基板18の嵌合孔33,33に突起28,28を嵌合させ」ることは、本件補正発明の構成Fにおける「第二の部材は、前記台座部が有する面のうち前記裏面から離間している側の一面に当接して」いることに相当する。

(キ) 本件補正発明の構成Gについて
引用発明Aの構成ウA及び構成エAにおいて「配線基板18」に「配設され」た「ランプ31」は、「後面が開放する中空状に形成され」た「レンズ部材17」の内側に位置するから、そのことは、本件補正発明の構成Gにおける「前記第一の部材の前記裏面、当該裏面に形成されている前記台座部、及び前記第二の部材によって囲われている空間に、前記発光素子が収まって」いる構成に相当する。
してみると、引用発明Aは、本件補正発明の構成Gにおける「前記第一の部材の前記裏面、当該裏面に形成されている前記台座部、及び前記第二の部材によって囲われている空間に、前記発光素子が収まって」いる構成に相当する構成を有する。

(ク) 本件補正発明の構成Hについて
引用発明Aの構成エAにおける「ランプ31は、配線基板18上において、仕切壁27・27とは当接しない部位に設けられ」ることと、本件補正発明の構成Hにおける「前記発光素子及び前記配線部が前記台座部に当接しない位置に設けられて」いることとは、「前記発光素子」「が前記台座部に当接しない位置に設けられて」いる点で一致する。

(ケ) 本件補正発明の構成Iについて
引用発明Aは、構成イA、構成ウA及び構成エAより「着色した透明材料からな」る「レンズ部材17と」「レンズ部材17内に設けられる配線基板18より構成され」「前記配線基板18には、その前面にランプ31が等間隔に3個配設され」る構成を有しており、「ランプ31」の発光は、「着色した透明材料からな」る「レンズ部材17」を通して視認可能であると認められることから、引用発明Aの「着色した透明材料からな」る「レンズ部材17と」「レンズ部材17内に設けられる配線基板18より構成され」「前記配線基板18には、その前面にランプ31が等間隔に3個配設され」ることと、本件補正発明の構成Iにおける「前記第一の部材の前記露出部分に開口が設けられており、前記開口に設けられた透過カバーを介して前記発光素子の発光が視認可能になって」いることとは、「第一の部材」を介して「発光素子の発光が視認可能」である点で一致する。

(コ) 本件補正発明の構成Kについて
引用発明Aの構成カAにおける「パチンコ機」は、本件補正発明の構成Kにおける「遊技機」に相当する。

2 一致点及び相違点
上記(ア)ないし(コ)より、本件補正発明と引用発明Aは、以下の点で一致する。

<一致点>
A 遊技球を発射する発射装置と、
B 前記発射装置によって発射された遊技球が転動する遊技盤と、
C’’遊技盤の前面側に露出している露出部分を有する第一の部材と、
D 集積回路に電気的に接続されている配線部と、前記集積回路から伝送された制御信号に制御される発光素子と、が設けられている第二の部材と、
を備え、
E’’前記第一の部材の前記露出部分の裏面には、当該裏面に起立している形状の台座部が、形成されており、
F 前記第二の部材は、前記台座部が有する面のうち前記裏面から離間している側の一面に当接しており、
G 前記第一の部材の前記裏面、当該裏面に形成されている前記台座部、及び前記第二の部材によって囲われている空間に、前記発光素子が収まっており、
H’’且つ、前記発光素子が前記台座部に当接しない位置に設けられており、
I’’前記第一の部材を介して前記発光素子の発光が視認可能になっている、
K 遊技機。

そして、両者は以下の点で相違する。

<相違点A> (本件補正発明の構成C)
第一の部材に関して、本件補正発明は「樹脂によって形成され、」「遊技盤の前面側に露出している露出部分の少なくとも一部が、導電体を含む塗料によって塗装されている」ものであるのに対して、引用発明Aは、「レンズ部材17」が「着色した透明材料からな」るものであるが、樹脂によって形成されたものであるか否かは不明であり、また、導電体を含む塗料によって塗装されているか否かも不明である点。
<相違点B> (本件補正発明の構成E)
台座部に関して、本件補正発明は、「台座部が、」「第一の部材と一体的に形成されて」いるのに対して、引用発明Aは、「仕切壁27,27」が「レンズ部材17」と一体的に形成されているか否かが特定されていない点。
<相違点C> (本件補正発明の構成H)
第2の部材に設けられた配線部と発光素子に関して、本件補正発明は、「発光素子」に加えて「前記配線部が前記台座部に当接しない位置に設けられて」いるのに対して、引用発明Aは、配線基板18における配線の形態が不明であり、配線基板18における配線が仕切壁27・27とは当接しない部位に設けられているか否かが不明である点。
<相違点D> (本件補正発明の構成I)
本件補正発明は、「第一の部材の」「露出部分に開口が設けられており、前記開口に設けられた透過カバーを介して」「発光素子の発光が視認可能になって」いるのに対して、引用発明Aは、「レンズ部材17」に開口は設けられておらず、前記開口に透過カバーは設けられていない点。
<相違点E> (本件補正発明の構成J)
台座部に関して、本件補正発明は、「前記台座部は、」「導電体を含む」「塗料によって塗装されていない」ものであるのに対して、引用発明Aは、「仕切壁27,27」が導電体を含む塗料によって塗装されているか否かは不明である点。

3 当審の判断
事案に鑑み、相違点Dについて検討する。
上記相違点Dに係る構成に関して、引用文献Bには、上記「第3」「2」「(4)」「イ」「イ−7」に示した引用発明Bが、引用文献Cは引用文献2と同一の文献であるから、引用文献Cには、上記「第3」「2」「(4)」「イ」「イ−2」に示した引用文献2記載事項が記載され、引用文献Dは引用文献5と同一の文献であるから、引用文献Dには、上記「第3」「2」「(4)」「イ」「イ−5」に示した引用文献5記載事項が記載されているが、いずれの文献にも、本件補正発明の上記相違点Dに係る構成である「第一の部材の」「露出部分に開口が設けられており、前記開口に設けられた透過カバーを介して」「発光素子の発光が視認可能になって」いる構成は記載されていない。
してみると、本件補正発明の上記相違点Dに係る構成は、当業者であっても、引用発明A、引用発明B、引用文献CないしDに記載された事項に基づいて、容易に想到することはできない。
よって、本件補正発明の他の相違点に係る構成を検討するまでもなく、本件補正発明は、拒絶査定において引用された引用文献Aに記載された発明、引用文献Bに記載された事項、引用文献Cに記載された事項、及び、引用文献Dに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-03-01 
出願番号 P2019-035197
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
北川 創
発明の名称 遊技機  
代理人 右田 俊介  

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