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審決分類 |
審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 A63F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F |
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管理番号 | 1383059 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-05-14 |
確定日 | 2022-03-29 |
事件の表示 | 特願2016−207516号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年5月18日出願公開、特開2017−80408号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年10月24日(優先権主張 平成27年10月27日)の出願であって、令和2年2月3日に手続補正書が提出され、同年7月14日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月18日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和3年2月3日付け(送達日:同年同月16日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年5月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、合議体により、同年11月24日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和4年1月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定及び当審拒絶理由の概要 1 原査定の概要 原査定は、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本願の出願の前に出願され、その後、特許第6499509号として登録された出願である特願2015−93042号(以下、「先願」という。)に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないというものである。 2 当審拒絶理由の概要 (1) 特許法第36条第6項第2号について 合議体は、請求項1の記載における「第1のタイミング」及び「第2のタイミング」が、時間的な長さを有さない「時点」を示すものとして特定された場合と、時間的な長さを有する「期間」を示すものとして特定された場合が混在しており、請求項1において「第1のタイミング」及び「第2のタイミング」の記載が、どのような態様を表現するために用いられているのか不明であるという拒絶理由を通知した。 (2) 特許法第36条第6項第1号について ア 合議体は、請求項1における「第2タイミング」が時間的な長さを有さない「時点」を示す場合は、特定表示は、変化演出の開始タイミングである「第2タイミング」とされる「一瞬」のみにおいて表示されることになるが、発明の詳細な説明の記載を参照しても、そのような態様を示す記載は存在せず、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないとの拒絶理由を通知した。 イ 合議体は、本願発明は、「前記有利状態に制御されるか否かに応じて異なる割合で前記対応表示の表示態様を変化させる変化演出を実行可能な変化演出実行手段と、を備え、」との記載によって特定される構成を有しているが、発明の詳細な説明には、「入賞時判定結果が大当りであるかハズレであるかに応じて保留・アクティブ変化演出の実行割合が異なって」いる実施例は記載されているものの、「大当りであるかハズレであるか」と「アクティブ表示中に最終色へ変化する保留・アクティブ変化演出パターン」の実行の割合に関する記載は、発明の詳細な説明には存在しないことから、上記の構成を含む本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないとの拒絶理由を通知した。 第3 本願発明 本願発明は、令和4年1月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、本願発明は、次のとおりのものである(符号A等は、分説するため合議体により付した。)。 「【請求項1】 A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 B 可変表示の実行中に、当該可変表示に対応する対応表示を表示可能な対応表示手段と、 C 未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示を表示可能な特定表示手段と、 D 前記対応表示の表示態様を変化させる変化演出を実行可能な変化演出実行手段と、を備え、 E 前記変化演出の開始タイミングは、前記有利状態に制御されるか否かを示唆する特定演出を実行中の第1タイミングと、前記特定演出を実行する前の第2タイミングと、があり、前記第1タイミングと前記第2タイミングとで前記変化演出の態様が異なり、前記第1タイミングに開始される前記変化演出の実行期間は、前記第2タイミングに開始され前記特定演出の開始前に終了する前記変化演出の実行期間よりも短く、 F 前記対応表示手段は、前記対応表示を表示する対応表示エリアを備え、 G 前記第1タイミングで前記対応表示エリア近傍において第1演出を実行し前記対応表示を変化させ、前記第2タイミングで前記対応表示エリア近傍と他の演出表示領域において第2演出を実行し前記対応表示を変化させることが可能であり、 H 前記有利状態に制御されるか否かに応じて、前記変化演出が前記第1タイミングで実行される割合と、前記第2タイミングで実行される割合と、が異なり、 I 前記対応表示、及び、前記特定表示の態様は、特定態様を含むとともに、前記対応表示は前記特定演出の実行中と前記特定演出の実行前とで表示可能であり、前記特定表示は前記特定演出の実行前にのみ表示可能であり、 J 前記対応表示が前記特定態様に変化する割合と、前記特定表示が前記特定態様に変化する割合とが異なる、 K ことを特徴とする遊技機。」 第4 先願発明及び原査定において周知文献として示された文献の記載事項 (1) 先願発明 令和2年7月14日付け拒絶理由で引用された先願の特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている(aないしkの符号は、本願発明の構成AないしKに対応させて合議体により付した。)。 「【請求項1】 a 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 b 可変表示の実行中に、当該可変表示に対応する対応表示を表示可能な対応表示手段と、 d 前記有利状態に制御されるか否かに応じて異なる割合で前記対応表示の表示態様を変化させる変化演出を実行可能な変化演出実行手段と、 を備え、 e 前記変化演出の開始タイミングは、前記有利状態に制御されるか否かを示唆する特定演出を実行中の第1タイミングと、前記特定演出を実行する前の第2タイミングとがあり、前記第1タイミングと前記第2タイミングとで前記変化演出の態様が異なり、前記第1タイミングに開始される前記変化演出の実行期間は、前記第2タイミングに開始され前記特定演出の開始前に終了する前記変化演出の実行期間よりも短く、 f 前記対応表示手段は、前記対応表示を表示する対応表示エリアを備え、 g 前記第1タイミングでは前記対応表示エリア近傍において第1演出を実行し前記対応表示を変化させ、前記第2タイミングでは前記対応表示エリア近傍と他の演出表示領域において第2演出を実行し前記対応表示を変化させることが可能である、 k ことを特徴とする遊技機。」 (2) 原査定において周知文献として示された文献の記載事項 ア 周知文献1 原査定時に本願出願前に周知の技術を示す文献として提示された特開2015−42226号公報(以下、「周知文献1」という。)には以下の記載がある。 「【0017】 (5)上記の(1)〜(4)の遊技盤において、保留表示手段は、保留記憶にもとづく可変表示が開始される前に、可変表示の表示結果が特定表示結果になる期待度に応じた態様で保留表示を表示することによって、可変表示開始前保留予告を実行し(図31参照:例えば、大当りの場合に使用される保留予告演出決定テーブルでは、スーパーリーチはずれの場合に使用される保留予告演出決定テーブルに比べて、始動入賞時に保留表示の表示態様が「赤」になるパターン(パターン5)に多くの判定値が割り合てられている)、所定演出(例えば、通常予告演出やスーパーリーチ演出)を実行する所定演出実行手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100において、ステップS824〜S826,S841〜S843の処理を実行する部分)と、所定演出実行手段が所定演出を演出実行しているときに、可変表示開始前保留予告の実行を制限する制限手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100において、ステップS851〜S854,S6005,S6007,S6015,S6017の処理を実行する部分)を備えていてもよい。」 「【0020】 [第1の実施の形態] 以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成を説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。」 「【0229】 図27は、保留表示の変化の他の例を示す説明図である。図27の左側には、演出図柄の可変表示(変動)が開始された後であってリーチになる前に保留表示の態様が変化するリーチ前態様変化の例が示されている。」 「【0253】 図31は、ステップS6002の処理で使用される保留予告演出決定テーブルの一例を示す説明図である。図31に例示する保留予告演出決定テーブルには、始動入賞時の保留表示の態様、リーチ前の保留表示の態様、およびリーチ後の保留表示の態様と、判定値とが、対応して設定されている。なお、図31には、判定値数が示されている。 【0254】 図31に示す例において、始動入賞時の保留表示の態様、リーチ前の保留表示の態様、リーチ後の保留表示の態様が、「青」、「青」、「青」のパターンは、保留予告を実行しないことに対応するパターンである。「青」は、保留表示の通常態様だからである。 【0255】 「青」、「青」、「黄」のパターンは、リーチ演出中(リーチ後)にのみ保留予告を実行することに対応するパターンである。「青」、「黄」、「黄」のパターンは、リーチ前にのみ保留予告を実行することに対応するパターンである。「黄」、「黄」、「黄」のパターンは、始動入賞時にのみ保留予告を実行することに対応するパターンである。「赤」、「赤」、「赤」のパターンも、始動入賞時にのみ保留予告を実行することに対応するパターンである。 【0256】 「黄」、「赤」、「赤」のパターンは、始動入賞時およびリーチ前に保留予告を実行することに対応するパターンである。「青」、「赤」、「赤」のパターンは、リーチ前にのみ保留予告を実行することに対応するパターンである。「黄」、「黄」、「赤」のパターンは、始動入賞時およびリーチ演出中に保留予告を実行することに対応するパターンである。「青」、「黄」、「赤」のパターンは、リーチ前およびリーチ演出中に保留予告を実行することに対応するパターンである。」 「【図31】 ![]() 」 図31の保留態様変化がリーチ演出中にのみ実行されるパターン2に注目すると、「大当りの場合に使用」のテーブルにおいて、リーチ演出中に「青」から「黄」に変化するパターンは判定値数が2%であるのに対して、「スーパーリーチはずれの場合に使用」のテーブルでは、パターン2の判定値数が20%に設定されていることが見て取れる。 また、図31の保留態様変化が始動入賞時とリーチ前に実行されるパターン6に注目すると、「大当りの場合に使用」のテーブルにおいて、始動入賞時にすでに「黄」で表示され、リーチ前に「黄」から「赤」に変化するパターンは判定値数が10%であるのに対して、「スーパーリーチはずれの場合に使用」のテーブルでは、パターン6の判定値数が4%に設定されていることが見て取れる。 してみると、周知文献1には、 「大当りになる期待度に応じた態様で保留表示を表示するパチンコ遊技機1において、「大当りの場合」と「スーパーリーチはずれの場合」とで、「始動入賞時」、「可変表示が開始された後であってリーチになる前であるリーチ前」又は「リーチ演出中」に、「青」又は「黄」の保留表示の態様を「黄」又は「赤」の保留表示の態様に変化させる保留態様変化を実行する割合を異ならせた点。」(以下、「周知文献1記載事項」という。) が記載されている。 イ 周知文献2 原査定時に本願出願前に周知の技術を示す文献として提示された特開2015−136510号公報(以下、「周知文献2」という。)には以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、遊技球等の遊技媒体を使用して遊技を行う遊技機に関する。」 「【0831】 保留アイコン83は、表示装置41に表示される保留記憶(始動記憶)の表示であり、例えば、円形で表示され、先読み(事前判定)により、信頼度に応じた色や文字が表示される。本発明の第1の実施の形態では、保留アイコン83は、図99に示す、信頼度を報知する通常系保留アイコンと、図100に示す、発展先や当りをそのまま報知する特殊系保留アイコンとに大別することができる。 【0832】 通常系保留アイコンには、通常保留表示である「白」のほか、「青」、「赤」、「虹」に変化する保留アイコン83が用意される。「青」、「赤」、「虹」の順に信頼度が高くなる。」 「【0853】 また、図105は、本発明の第1の実施の形態の保留変化タイミング決定テーブルを説明する図であり、(A)は保留アイコン83が青に変化する場合に用いるテーブル1、(B)は保留アイコン83が赤に変化する場合に用いるテーブル2、(C)は保留アイコン83が虹、SP、SP3、突、確に変化する場合に用いるテーブル3を説明する図である。」 「【図105】(B) ![]() 」 上記図105(B)には、保留数が1の場合に、「始動入賞時」に「赤」で表示されるパターンの振分割合が80%、「始動入賞時」に「青」で表示され、「変動開始時」に「赤」に変化するパターンの振分割合が20%に設定されたことが示されており、また、保留2ないし4の場合において、「始動入賞時」、「保留1個消化時」、「保留2個消化時」、「保留3個消化時」又は「変動開始時」において「青」又は「赤」に保留変化するパターンが、それぞれ振分割合とともに示されている。 そして、「保留1個消化時」、「保留2個消化時」及び「保留3個消化時」は、「保留消化時」であると認められる。 してみると、周知文献2には、 「遊技機において、信頼度に応じた色で表示される保留アイコンの色の変化のタイミングとして、「始動入賞時」、「保留消化時」、「変動開始時」が設定されるとともに、それらの振分割合がそれぞれ設定され、保留アイコンには、通常保留表示である「白」のほか、「青」と、より信頼度が高い「赤」が用意された点。」(以下、「周知文献2記載事項」という。) が記載されている。 第5 対比・判断 (1)本願発明と先願発明との対比 本願発明と先願発明を対比する。 ア 本願発明の構成Aについて 先願発明の構成aにおける「可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」は、本願発明の構成Aにおける「可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」に相当する。 よって、先願発明は、本願発明の構成Aを有する。 イ 本願発明の構成Bについて 先願発明の構成bにおける「可変表示の実行中に、当該可変表示に対応する対応表示を表示可能な対応表示手段」は、本願発明の構成Bにおける「可変表示の実行中に、当該可変表示に対応する対応表示を表示可能な対応表示手段」に相当する。 よって、先願発明は、本願発明の構成Bを有する。 ウ 本願発明の構成Dについて 先願発明の構成dにおける「前記有利状態に制御されるか否かに応じて異なる割合で前記対応表示の表示態様を変化させる変化演出を実行可能な変化演出実行手段」「を備え」ることと、本願発明の構成Dにおける「前記対応表示の表示態様を変化させる変化演出を実行可能な変化演出実行手段」「を備え」ることとは、「対応表示の表示態様を変化させる変化演出を実行可能な変化演出実行手段」「を備え」る点で両者は一致する。 エ 本願発明の構成Eについて 先願発明の構成eにおける「前記変化演出の開始タイミングは、前記有利状態に制御されるか否かを示唆する特定演出を実行中の第1タイミングと、前記特定演出を実行する前の第2タイミングとがあり、前記第1タイミングと前記第2タイミングとで前記変化演出の態様が異なり、前記第1タイミングに開始される前記変化演出の実行期間は、前記第2タイミングに開始され前記特定演出の開始前に終了する前記変化演出の実行期間よりも短」いことは、本願発明の構成Eにおける「前記変化演出の開始タイミングは、前記有利状態に制御されるか否かを示唆する特定演出を実行中の第1タイミングと、前記特定演出を実行する前の第2タイミングと、があり、前記第1タイミングと前記第2タイミングとで前記変化演出の態様が異なり、前記第1タイミングに開始される前記変化演出の実行期間は、前記第2タイミングに開始され前記特定演出の開始前に終了する前記変化演出の実行期間よりも短」いことに相当する。 よって、先願発明は、本願発明の構成Eに相当する構成を有する。 オ 本願発明の構成Fについて 先願発明の構成fにおける「前記対応表示手段」が「前記対応表示を表示する対応表示エリアを備え」ることは、本願発明の構成Fにおける「前記対応表示手段」が「前記対応表示を表示する対応表示エリアを備え」ることに相当する。 よって、先願発明は、本願発明の構成Fを有する。 カ 本願発明の構成Gについて 先願発明の構成gにおける「前記第1タイミングでは前記対応表示エリア近傍において第1演出を実行し前記対応表示を変化させ、前記第2タイミングでは前記対応表示エリア近傍と他の演出表示領域において第2演出を実行し前記対応表示を変化させることが可能である」ことは、本願発明の構成Gにおける「前記第1タイミングで前記対応表示エリア近傍において第1演出を実行し前記対応表示を変化させ、前記第2タイミングで前記対応表示エリア近傍と他の演出表示領域において第2演出を実行し前記対応表示を変化させることが可能であ」ることに相当する。 よって、先願発明は、本願発明の構成Gに相当する構成を有する。 キ 本願発明の構成Kについて 先願発明の構成kにおける「遊技機」は、本願発明の構成Kにおける「遊技機」に相当する。 ク 一致点及び相違点 上記アないしキより、本願発明と先願発明は、以下の点で一致する。 <一致点> A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 B 可変表示の実行中に、当該可変表示に対応する対応表示を表示可能な対応表示手段と、 D’前記対応表示の表示態様を変化させる変化演出を実行可能な変化演出実行手段と、を備え、 E 前記変化演出の開始タイミングは、前記有利状態に制御されるか否かを示唆する特定演出を実行中の第1タイミングと、前記特定演出を実行する前の第2タイミングと、があり、前記第1タイミングと前記第2タイミングとで前記変化演出の態様が異なり、前記第1タイミングに開始される前記変化演出の実行期間は、前記第2タイミングに開始され前記特定演出の開始前に終了する前記変化演出の実行期間よりも短く、 F 前記対応表示手段は、前記対応表示を表示する対応表示エリアを備え、 G 前記第1タイミングで前記対応表示エリア近傍において第1演出を実行し前記対応表示を変化させ、前記第2タイミングで前記対応表示エリア近傍と他の演出表示領域において第2演出を実行し前記対応表示を変化させることが可能である K ことを特徴とする遊技機。 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1> (本願発明の構成Cについて) 本願発明は、「未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示を表示可能な特定表示手段」「を備え」る点が特定されているのに対して、先願発明は、「未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示」に関する特定が何もなされていない点。 <相違点2> (本願発明の構成Dについて) 「対応表示の表示態様を変化させる変化演出」における「対応表示の表示態様を変化させる」割合に関して、本願発明は、前記割合についての特定がなされていないのに対して、先願発明は、前記割合が「有利状態に制御されるか否かに応じて異なる割合」であることが特定されている点。 <相違点3> (本願発明の構成Hについて) 本願発明は、「有利状態に制御されるか否かに応じて、」「変化演出が」「第1タイミングで実行される割合と、」「第2タイミングで実行される割合とが異な」るのに対して、先願発明は、その点が特定されていない点。 <相違点4> (本願発明の構成Iについて) 本願発明は、「前記対応表示は前記特定演出の実行中と前記特定演出の実行前とで表示可能であり、前記特定表示は前記特定演出の実行前にのみ表示可能であ」るのに対して、先願発明は、「未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示」に関する特定が何もなされていないことから、その点が不明である点。 <相違点5> (本願発明の構成I及びJについて) 本願発明は、「前記対応表示、及び、前記特定表示の態様は、特定態様を含むとともに、」「前記対応表示が前記特定態様に変化する割合と、前記特定表示が前記特定態様に変化する割合とが異なる」のに対して、先願発明は、「未だ開始されていない可変表示に対応する特定表示」に関する特定が何もなされていないことから、その点が不明である点。 (2)検討 上記相違点5について検討する。 周知文献1記載事項における「始動入賞時」の「保留表示」は、本願発明の相違点5に係る構成における「特定表示」に相当し、周知文献1記載事項における「可変表示が開始された後であってリーチになる前であるリーチ前」及び「リーチ演出中」の「保留表示」は、本願発明の相違点5に係る構成における「対応表示」に相当し、周知文献1記載事項における「「黄」又は「赤」の保留表示の態様」は、本願発明の相違点5に係る構成における「特定態様」に相当し、周知文献1記載事項における「「青」又は「黄」の保留表示の態様を「黄」又は「赤」の保留表示の態様に変化させる保留態様変化を実行する」ことは、本願発明の相違点5に係る構成における「対応表示」又は「特定表示」を「特定態様に変化する」ことに相当し、周知文献1記載事項における「保留態様変化を実行する割合を異ならせ」ることは、本願発明の相違点5に係る構成における「変化する割合」が「異なる」ことに相当する。 してみると、周知文献1記載事項は、本願発明の相違点5に係る構成のうち、「対応表示」及び「特定表示」「の態様は、特定態様を含むとともに、」「対応表示」「が前記特定態様に変化する」構成を有していると認められ、また、「対応表示」「が前記特定態様に変化する割合」が「異なる」場合があることが認められる。 しかしながら、周知文献1記載事項において、「可変表示が開始された後であってリーチになる前であるリーチ前」及び「リーチ演出中」であるときの「保留態様変化」は、本願発明の相違点5に係る構成における「対応表示」の「特定態様」への「変化」に相当するといえるが、周知文献1記載事項においては、「始動入賞時」以後は「可変表示が開始され」るまでは「保留態様変化」が行われていないことから、本願発明の相違点5に係る構成のうちの、「特定表示が」「特定態様に変化する」構成に相当する構成を有しておらず、さらには、本願発明の相違点5に係る構成における「前記対応表示が前記特定態様に変化する割合と、前記特定表示が前記特定態様に変化する割合とが異なる」点に相当する構成を有するものとはいえない。 したがって、周知文献1記載事項は、本願発明の相違点5に係る構成に相当する構成を有しておらず、ましてや、その構成が、本願出願前に周知の技術であることを根拠づけるものではない。 また、周知文献2記載事項における「始動入賞時」、「保留消化時」及び「変動開始時」の「保留アイコン」は、いずれも、変動が開始された後の「変動アイコン」ではなく、すなわち、変動中の「保留アイコン」ではないことから、本願発明の相違点5に係る構成における「特定表示」に相当し、周知文献2記載事項における「「青」又は「赤」」は、本願発明の相違点5に係る構成における「特定態様」に相当し、周知文献2記載事項における「保留アイコンの色の」「「青」又は「赤」」への「変化」は、本願発明の相違点5に係る構成における「特定表示」が「特定態様に変化する」ことに相当し、周知文献2記載事項における「振分割合を設定」することは、本願発明の相違点5に係る構成における「変化する割合」が「異なる」ことに相当する。 してみると、周知文献2記載事項は、本願発明の相違点5に係る構成のうち、「前記特定表示の態様は、特定態様を含むとともに、」「前記特定表示が前記特定態様に変化する割合」「が異なる」構成を有していると認められる。 しかしながら、周知文献2記載事項において、「始動入賞時」、「保留消化時」及び「変動開始時」の「保留アイコン」の「色の変化」は、変動中の「保留アイコン」ではないことから、周知文献2記載事項は、本願発明の相違点5に係る構成における「対応表示が」「特定態様に」「変化する」ことに相当する構成を有しておらず、本願発明の相違点5に係る構成における「前記対応表示が前記特定態様に変化する割合と、前記特定表示が前記特定態様に変化する割合とが異なる」点に相当する構成を有していないことは明らかである。 したがって、周知文献2記載事項は、本願発明の相違点5に係る構成に相当する構成を有しておらず、ましてや、その構成が、本願出願前に周知の技術であることを根拠づけるものではない。 さらに、本願発明は、上記相違点5に係る構成を備えることにより、本願の発明の詳細な説明の【0244】に記載されているように、「アクティブ変化演出と保留変化演出とにおいて、特別な色である金色の表示を出現させるととも、金色の表示に変化する割合を異ならせることにより、保留・アクティブ変化演出の態様を増やして興趣を向上させることができる」という作用効果を奏するものである。 してみると、本願発明の上記相違点5に係る構成は、本願出願前に周知の技術とはいえず、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないものとはいえず、課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明は、先願発明と同一であるとはいえない。 第6 原査定についての判断 本願発明は、上記相違点5に係る構成を有するものであるから、先願発明と同一であるとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第7 当審拒絶理由についての判断 1 特許法第36条第6項第2号について 令和4年1月14日付けの手続補正により、「第1のタイミング」及び「第2のタイミング」の記載は、時間的な長さを有する「期間」を示すものではなく、時間的な長さを有さない「時点」を示すものであることが明らかにされた結果、この拒絶の理由は解消した。 2 特許法第36条第6項第1号について (1) 上記手続補正において、本願発明の構成Iの記載が「前記特定表示は前記特定演出の実行前にのみ表示可能であり、」と補正された結果、特定表示が、変化演出の開始タイミングである「第2タイミング」とされる「一瞬」のみにおいて表示される場合は含まれなくなり、この拒絶の理由は解消した。 (2) 上記手続補正において、本願発明の構成Dの記載が、「前記対応表示の表示態様を変化させる変化演出を実行可能な変化演出実行手段と、を備え、」と補正され、本願発明の「変化演出実行手段」が、発明の詳細な説明に記載されていない、「有利状態に制御されるか否かに応じて異なる割合で前記対応表示の表示態様を変化させる変化演出を実行可能」であると限定されたものではなくなった結果、この拒絶の理由は解消した。 第8 むすび 以上のことから、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願発明を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-03-08 |
出願番号 | P2016-207516 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(A63F)
P 1 8・ 4- WY (A63F) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
石井 哲 |
特許庁審判官 |
▲高▼橋 祐介 鷲崎 亮 |
発明の名称 | 遊技機 |