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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1383080
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-26 
確定日 2022-03-28 
事件の表示 特願2018−519404号「ガラス内部トリム要素を自動車両内へ固定するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日国際公開,WO2017/064187,平成31年 1月17日国内公表、特表2019−501052号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2016年(平成28年)10月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年10月16日,欧州(EP))を国際出願日とする特許出願であって,令和2年6月30日付けで拒絶理由が通知され,同年9月2日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,令和3年2月12日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,同年5月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和3年5月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年5月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項14の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項14の記載は,次のとおり補正された(下線は,当審で付与したものであり,補正箇所を示す。)。
「ガラストリム要素とプラスチックフレームとを含む,自動車両の内部のための組立体において,
前記ガラストリム要素のガラスは,ガラスの全重量によるパーセンテージとして表される含有量において,
SiO2 55〜85%
Al2O3 0〜30%
B2O3 0〜20%
Na2O 0〜25%
CaO 0〜20%
MgO 0〜15%
K2O 0〜20%
BaO 0〜20%
を含む基本組成物を有し,ソーダ石灰シリカのガラスであることを特徴とする組立体。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項16の記載
本件補正前の令和2年9月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項16の記載は次のとおりである。
「ガラストリム要素とプラスチックフレームとを含む,自動車両の内部のための組立体。」

2.補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項16に記載された発明を特定するために必要な事項である「ガラストリム要素」に関して,「前記ガラストリム要素のガラスは,ガラスの全重量によるパーセンテージとして表される含有量において,
SiO2 55〜85%
Al2O3 0〜30%
B2O3 0〜20%
Na2O 0〜25%
CaO 0〜20%
MgO 0〜15%
K2O 0〜20%
BaO 0〜20%
を含む基本組成物を有し,ソーダ石灰シリカのガラスであることを特徴とする」との限定を付すことを含むものであって,本件補正前の請求項16に記載された発明と本件補正後の請求項14に記載された発明とは,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項14に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア.引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された,本願の優先日前に頒布された特開2015−162184号公報(以下「引用文献1」という。2015年9月7日出願公開)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
・「【請求項1】
タッチ操作を受け付ける画像表示装置であって,
画像を表示する平面の表示面を有するディスプレイと,
前記ディスプレイの前記表示面に重ねて配置され,前記タッチ操作の対象となる曲面の第1主面を有するカバー部材と,
前記カバー部材と前記ディスプレイとの相互間を非中空に埋める透過体と,
前記カバー部材と前記ディスプレイとの相互間に配置され,前記カバー部材の前記第1主面に対する前記タッチ操作を検出するタッチセンサと,
を備えることを特徴とする画像表示装置。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,タッチ操作を受け付ける画像表示装置に関する。」
・「【0003】
このような画像表示装置は,自動車などの車両においても用いられる。車両においては,画像表示装置は,操作面をユーザ側に露出した状態で,車両の内装における運転席と助手席との間にあるセンターコンソールなどに配置される。」
・「【0023】
<1.第1の実施の形態>
<1−1.画像表示装置の概要>
図1は,本実施の形態に係る画像表示装置1の概要を示す図である。この画像表示装置1は,自動車などの車両に搭載され,車両の車室内で利用される車載装置である。画像表示装置1は,例えば,目的地までのルートを案内する案内画像など,ユーザ(主に車両のドライバ)が利用可能な各種の画像を表示する。また,画像表示装置1は,ユーザのタッチ操作を受け付けるタッチパネル機能を備えており,ユーザはタッチ操作を行うことで画像表示装置に各種の指示を行うことができる。
【0024】
図1は,画像表示装置1が搭載される車両の車室内の様子を示しており,図中の右側が車両の前方側に相当する。図1に示すように,画像表示装置1は,車両の内装の一部であるセンターコンソール91に,タッチ操作の対象となる操作面1aを外部に露出した状態で取り付けられている。
【0025】
美的外観などの観点から,センターコンソール91のユーザに対向するパネル面91aは,全体として滑らかな曲面となっている。画像表示装置1の操作面1aは,このパネル面91aの一部となるように曲面となっている。画像表示装置1は,操作面1aとその周囲の部分と段差がなくなるように,センターコンソール91に取り付けられる。
【0026】
一般に,センターコンソール91は運転席と助手席との間に配置される。ユーザは,車両の座席(運転席または助手席)92に着座した状態で,このセンターコンソール91に取り付けられた画像表示装置1を利用する。このため,ユーザは,通常,操作面1aの正面から左右方向にズレた位置から操作面1aを視認する。
【0027】
<1−2.画像表示装置の基本構成>
次に,画像表示装置1の基本的な構成について説明する。図2は,画像表示装置1の構成を示す分解斜視図である。図に示すように,画像表示装置1は主に,表示モジュール11とハウジング12とを備えている。
【0028】
表示モジュール11は,各種の画像を表示するとともに,操作面1aに対するユーザのタッチ操作を受け付ける電子部品である。また,ハウジング12は,表示モジュール11における操作面1aとは逆側に取り付けられ,表示モジュール11を保護する。なお,表示モジュール11に関して,操作面1aの側を「表側」,操作面1aとは逆側を「裏側」と表現する。」
・「【0032】
図3及び図4に示すように,表示モジュール11は,カバー部材2と,タッチセンサ3と,透明樹脂体4と,フレーム5と,ディスプレイ6とを,奥行方向(Z軸方向)に重ねて備えている。
【0033】
カバー部材2は,ガラスまたはプラスチック等の光透過性のある透明部材であり,表示モジュール11の最も表側(+Z側)に配置される。カバー部材2の表側(+Z側)の第1主面2aは,ユーザが実際に触れてタッチ操作を行う操作面1aとなる。すなわち,カバー部材2は,曲面の第1主面2aを有している。
【0034】
タッチセンサ3は,カバー部材2の裏側(−Z側)の第2主面2bに配置され,カバー部材2の表側(+Z側)の第1主面2a(すなわち,操作面1a)に対するタッチ操作を検出する。タッチセンサ3は,検出方式として例えば静電容量方式を採用しており,静電容量の変化に基づいて操作面1aに対するタッチ操作のタッチ位置を検出する。タッチセンサ3は,部品としては光透過性のある透明なフィルム状の部材であり,任意に曲げることが可能である。表示モジュール11においてタッチセンサ3は,曲面に曲げられた状態で,カバー部材2の裏側(−Z側)の第2主面2bに沿って配置される。
【0035】
ディスプレイ6は,各種の画像を表示する有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイである。ディスプレイ6は,画像を表示する平面の表示面6aをその表側(+Z側)に有している。表示モジュール11において,上述したカバー部材2はこのディスプレイ6の表示面6aの表側(+Z側)に重なるように配置され,タッチセンサ3はカバー部材2とディスプレイ6との相互間に配置される。
【0036】
フレーム5は,ガラスまたはプラスチック等の枠状部材であり,その中央部に奥行方向(Z軸方向)に開口した開口部5aを有している。フレーム5は,表側(+Z側)においてタッチセンサ3の裏側(−Z側)の周縁部と接合され,裏側(−Z側)においてディスプレイ6の表側(+Z側)の周縁部と接合される。フレーム5において,タッチセンサ3と接合される部分はタッチセンサ3の形状に合わせて曲面となっており,ディスプレイ6と接合される部分はディスプレイ6の表示面6aの形状に合わせて平面となっている。
【0037】
透明樹脂体4は,光透過性のある透過体であり,タッチセンサ3とディスプレイ6とフレーム5とで囲まれた空間(フレーム5の開口部5a)を非中空に埋めるように配置される。透明樹脂体4は,後述するOCRを硬化することで形成される。透明樹脂体4も,タッチセンサ3と接触する部分はタッチセンサ3の形状に沿って曲面となっており,ディスプレイ6と接触する部分はディスプレイ6の表示面6aの形状に沿って平面となっている。
【0038】
図4に示すように,この透明樹脂体4の存在により,カバー部材2とディスプレイ6との相互間は非中空に埋められる。その結果,カバー部材2の第1主面2a(操作面1a)とディスプレイ6の表示面6aとの相互間の全体に非空気層が形成され,この相互間における空気層が排除される。」
・図1〜図4には,以下の内容が示されている。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】

これらの記載事項から引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「画像表示装置1は,自動車などの車両に搭載され,車両の車室内で利用される車載装置であり,目的地までのルートを案内する案内画像など,ユーザが利用可能な各種の画像を表示し,ユーザのタッチ操作を受け付けるタッチパネル機能を備え,
画像表示装置1は,車両の内装の一部であるセンターコンソール91に,タッチ操作の対象となる操作面1aを外部に露出した状態で取り付けられ,美的外観などの観点から,センターコンソール91のユーザに対向するパネル面91aは,全体として滑らかな曲面となっており,画像表示装置1の操作面1aは,このパネル面91aの一部となるように曲面となっており,画像表示装置1は,操作面1aとその周囲の部分と段差がなくなるように,センターコンソール91に取り付けられ,
画像表示装置1は,表示モジュール11とハウジング12とを備え,
表示モジュール11は,各種の画像を表示するとともに,操作面1aに対するユーザのタッチ操作を受け付ける電子部品であって,カバー部材2と,タッチセンサ3と,透明樹脂体4と,フレーム5と,ディスプレイ6とを,奥行方向に重ねて備え,
カバー部材2は,ガラスまたはプラスチック等の光透過性のある透明部材であり,カバー部材2の表側の第1主面2aは,ユーザが実際に触れてタッチ操作を行う操作面1aとなり,
フレーム5は,ガラスまたはプラスチック等の枠状部材である,
ハウジング12は,表示モジュール11における操作面1aとは逆側に取り付けられ,表示モジュール11を保護する,
画像表示装置1。」

イ.引用文献2
原査定の拒絶の理由において,引用文献4として周知技術を示す文献として引用された,本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2015/011044号(以下「引用文献2」という。国際公開日:2015年1月29日)には,図面とともに次の事項が記載されている({}内に当審が作成した翻訳文を示す。)。
・「1. Field of the Invention
The present invention relates to a glass sheet with high infrared transmission.
The invention also relates to the use of such a glass sheet in a device using infrared radiation propagating essentially inside said sheet.
Because of its high infrared (IR) transmission, the glass sheet according to the invention can in fact be used advantageously in a touchscreen or touch panel or touchpad, for example, using optical technology called planar scatter detection (PSD) or frustrated total internal reflection (FTIR) (or any other technology that requires a high IR transmission) to detect the position of one or more objects (e.g. a finger or a stylus) on a surface of said sheet.
Consequently, the invention also relates to a touchscreen, a touch panel or a touchpad comprising such a glass sheet.」
{1. 発明の分野
本発明は,高い赤外線透過率を有するガラスシートに関する。
本発明はまた,このシートの内側に本質的に伝播する赤外放射を用いた装置ではこのようなガラス板の使用に関する。
その高い赤外線(IR)伝送のためには,本発明によるガラスシートは,実際に面状散乱検出器(PSD)又はフラストレイテッド全反射(FTIR)(または高いIR透過率を必要とする任意の他の技術)と呼ばれる光学技術を用いて,前記シートの表面上に1つ以上の物体(例えば,指又はスタイラス)の位置を検出するために,例えば,タッチスクリーンまたはタッチパネルまたはタッチパッドで有利に使用することができる。
従って,本発明はまた,タッチスクリーン,タッチパネルまたはガラスシートを含むタッチパッドに関する。}
・「3. Objectives of the Invention
The objective of the invention in at least one of its embodiments is to provide a glass sheet with a high infrared transmission. In particular, an object of the invention is to provide a glass sheet with a high transmission to near infrared radiation.
The objective of the invention in at least one of its embodiments is to provide a glass sheet with a high infrared transmission that in particular is especially advantageous in a device using an infrared radiation that propagates essentially inside said sheet.
Another objective of the invention in at least one of its embodiments is to provide a glass sheet which, when used as touch sensitive surface in touchscreens, touch panels or touchpads of large dimension, does not cause any loss of sensitivity of the touch sensitive function, or if so very little.
Another objective of the invention in at least one of its embodiments is to provide a glass sheet which, when used as touch sensitive surface in touchscreens, touch panels or touchpads of more moderate dimensions, is beneficial to the energy consumption of the device.
Another objective of the invention in at least one of its embodiments is to provide a glass sheet with a high infrared transmission and with an acceptable aesthetic appearance for the chosen application.
Finally, the objective of the invention is also to provide a glass sheet with a high infrared transmission that is inexpensive to produce.

4. Outline of the Invention
The invention relates to a glass sheet having a composition that comprises in a content expressed in percentages of the total weight of the glass:
55≦SiO2≦85%(審決注:以下,等号付きの不等号を「≦ 」として示す。)
0≦Al2O3≦30%
0≦B2O3≦20%
0≦Na2O≦25%
0≦CaO≦20%
0≦MgO≦15%
10 0≦BaO≦20%
0.002≦total iron (expressed in the form of Fe2O3)≦0.06%.」
{ 3. 発明が解決しようとする課題
本発明の少なくとも1つの実施形態では,本発明の目的は,高い赤外線透過率を有するガラスシートを提供することにある。特に,本発明の目的は,近赤外放射に対して高い透過率を有するガラスシートを提供することにある。
本発明の少なくとも1つの実施形態では,本発明の目的は,実質的に前記シート内を伝播する赤外放射を使用する装置において特に有利であること,高い赤外線透過率を有するガラスシートを提供することにある。
本発明の少なくとも1つの実施形態では,本発明の別の目的は,大きな寸法のタッチスクリーン,タッチパネルまたはタッチパッドの接触感知表面として使用される場合,タッチセンサ機能の感度の損失が全くない,または非常に少ないガラスシートを提供することにある。
本発明の少なくとも1つの実施形態では,本発明の別の目的は,適度な寸法のタッチスクリーン,タッチパネルまたはタッチパッドの接触感知表面として使用されるときには,装置のエネルギ消費に有利なガラスシートを提供することにある。
本発明の少なくとも1つの実施形態では,本発明の別の目的は,高い赤外透過率,及び選択された用途に対して許容可能な美的外観を備えたガラスシートを提供することである。
最後に,本発明の目的は,製造するのに安価で高い赤外線透過率を有するガラスシートを提供する。

4. 本発明の概要
本発明は,ガラスの全重量の%で表現される含有量で含む組成物を有するガラスシートに関する。
55≦SiO2≦85%
0≦Al2O3≦30%
0≦B2O3≦20%
0≦Na2O≦25%
0≦CaO≦20%
0≦MgO≦15%
10 0≦BaO≦20%
0.002≦全鉄(Fe2O3で表す)が0.06%以下である。}

これらの記載事項からみて,引用文献2には,以下の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。) が記載されているといえる。
「シートの表面上に指の位置を検出するために,タッチスクリーンまたはタッチパネルまたはタッチパッドで有利に使用することができるガラスシートにおいて,
適度な寸法のタッチスクリーン,タッチパネルまたはタッチパッドの接触感知表面として使用されるときには,装置のエネルギ消費に有利なガラスシートを提供することや選択された用途に対して許容可能な美的外観を備えたガラスシートを提供することを目的として,
ガラスの全重量の%で表現される含有量で含む組成物を有するガラスシートであって,
55≦SiO2≦85%
0≦Al2O3≦30%
0≦B2O3≦20%
0≦Na2O≦25%
0≦CaO≦20%
0≦MgO≦15%
10 0≦BaO≦20%
0.002≦全鉄(Fe2O3で表す)が0.06%以下である
ガラスシート。」

(3)対比
ア.本件補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「自動車などの車両」は前者の「自動車両」に相当し,後者の「画像表示装置1は,表示モジュール11とハウジング12とを備え,」「表示モジュール11は,」「カバー部材2と,タッチセンサ3と,透明樹脂体4と,フレーム5と,ディスプレイ6とを,奥行方向に重ねて備え」るものであるから,後者の「画像表示装置1」は前者の「組立体」に相当する。
イ.車室内の「トリム」とは,「自動車のシート,フロア,あるいは内張りといった内装の装飾部品のこと」である。
本願の明細書には,「ガラストリム要素」に関して,「本発明は,ガラス内部トリム要素を自動車両内へ固定するための方法に関する。特に,本発明は,コンソール本体とコンソール本体上に取付けられたトリム要素とを含む,自動車両のための中心コンソールに関する。」(段落【0001】),「ガラストリム要素またはガラスコンソールは,より良い美観を有するのが好ましく,車両の魅力を増すことができる。」(段落【0006】),「ここで,ガラストリム要素は,コンソールベース上に提供される上方部分である。」(段落【0010】),「ガラストリム要素は,中心コンソール本体であって,その上に機能要素と少なくとも1つのトリム要素とが取付けられる中心コンソール本体の上方部分に取付けられるトリム要素である」(段落【0020】),「このように,ガラス板で製造されるトリム要素は,電子機器の周りの異なる機能性および車両制御情報,接続性,タッチ,ディスプレイおよびオーディオのホストとして機能する場合がある。・・・中心コンソールの上方部分のより大きい部分においてガラス板で製造され得,・・・」(段落【0045】)と記載されているように,「ガラストリム要素」とは,「中心コンソールの上方部分におけるガラス板で製造されたもの」を含み,より良い美観を有するのが好ましく,タッチパネルをも含む概念として使用されているといえる。
後者は「画像表示装置1は,車両の内装の一部であるセンターコンソール91に,タッチ操作の対象となる操作面1aを外部に露出した状態で取り付けられ,美的外観などの観点から,センターコンソール91のユーザに対向するパネル面91aは,全体として滑らかな曲面となっており,画像表示装置1の操作面1aは,このパネル面91aの一部となるように曲面となっており,画像表示装置1は,操作面1aとその周囲の部分と段差がなくなるように,センターコンソール91に取り付けられ」るものであり,「カバー部材2は,ガラスまたはプラスチック等の光透過性のある透明部材であり,カバー部材2の表側の第1主面2aは,ユーザが実際に触れてタッチ操作を行う操作面1a」であるところ,後者の「ガラスまたはプラスチック等の光透過性のある透明部材」である「カバー部材2」は,「車両の内装の一部であるセンターコンソール91に,タッチ操作の対象となる操作面1aを外部に露出した状態で取り付けられ」るものであり,美的外観の観点を考慮されているから,後者の「カバー部材」と前者の「ガラストリム要素」とは,「トリム要素」において共通する。
ウ.後者の「フレーム5」は「ガラスまたはプラスチック等の枠状部材である」から,前者の「プラスチックフレーム」とは「フレーム」において共通する。
エ.後者の「画像表示装置1」は,「自動車などの車両に搭載され,車両の車室内で利用される車載装置」であり,カバー部材2とフレーム5を含むことは明らかであるから,上記ア.〜ウ.の相当関係を踏まえると,後者の「画像表示装置1」と,前者の「ガラストリム要素とプラスチックフレームとを含む,自動車両の内部のための組立体」とは,「トリム要素とフレームとを含む,自動車両の内部のための組立体」において共通する。
オ.そうすると,両者は,
「トリム要素とフレームとを含む,自動車両の内部のための組立体」の点で一致し,以下の点で相違すると認められる。
<相違点1>
トリム要素に関し,本件補正発明では,「ガラストリム要素」であり,「前記ガラストリム要素のガラスは,ガラスの全重量によるパーセンテージとして表される含有量において,
SiO2 55〜85%
Al2O3 0〜30%
B2O3 0〜20%
Na2O 0〜25%
CaO 0〜20%
MgO 0〜15%
K2O 0〜20%
BaO 0〜20%
を含む基本組成物を有し,ソーダ石灰シリカのガラスである」のに対して,引用発明では,「カバー部材2」は「ガラスまたはプラスチック等の光透過性のある透明部材」であるものの,それ以上の特定はなされていない点。
<相違点2>
フレームに関し,本件補正発明では,「プラスチックフレーム」であるのに対して,引用発明では,「ガラスまたはプラスチック等の枠状部材である」「フレーム5」である点。

(4)相違点の判断
<相違点1について>
ア.上記(2)イにおいて述べたとおり,引用文献2に記載された事項は以下のとおりである。
「シートの表面上に指の位置を検出するために,タッチスクリーンまたはタッチパネルまたはタッチパッドで有利に使用することができるガラスシートにおいて,
適度な寸法のタッチスクリーン,タッチパネルまたはタッチパッドの接触感知表面として使用されるときには,装置のエネルギ消費に有利なガラスシートを提供することや選択された用途に対して許容可能な美的外観を備えたガラスシートを提供することを目的として,
ガラスの全重量の%で表現される含有量で含む組成物を有するガラスシートであって,
55≦SiO2≦85%
0≦Al2O3≦30%
0≦B2O3≦20%
0≦Na2O≦25%
0≦CaO≦20%
0≦MgO≦15%
10 0≦BaO≦20%
0.002≦全鉄(Fe2O3で表す)が0.06%以下である
ガラスシート。」
イ.本件補正発明と引用文献2に記載された事項とを対比すると,後者の「%」は前者の「パーセンテージ」に相当し,以下同様に,「表現される」ことは「表される」ことに,相当する。
ウ.後者の「ガラスの全重量の%で表現される含有量で含む組成物を有するガラスシートであって,
55≦SiO2≦85%
0≦Al2O3≦30%
0≦B2O3≦20%
0≦Na2O≦25%
0≦CaO≦20%
0≦MgO≦15%
10 0≦BaO≦20%
0.002≦全鉄(Fe2O3で表す)が0.06%以下である
ガラスシート。」と,前者の「前記ガラストリム要素のガラスは,ガラスの全重量によるパーセンテージとして表される含有量において,
SiO2 55〜85%
Al2O3 0〜30%
B2O3 0〜20%
Na2O 0〜25%
CaO 0〜20%
MgO 0〜15%
K2O 0〜20%
BaO 0〜20%
を含む基本組成物を有し,ソーダ石灰シリカのガラスである」こととは,
「ガラスは,ガラスの全重量によるパーセンテージとして表される含有量において,
SiO2 55〜85%
Al2O3 0〜30%
B2O3 0〜20%
Na2O 0〜25%
CaO 0〜20%
MgO 0〜15%
K2O 10〜20%
BaO 0〜20%
を含む基本組成物を有する,ガラスである」ことにおいて共通する。
エ.そうすると,引用文献2に記載された事項を,本件補正発明に倣って整理すると,以下の技術(以下「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されているといえる。
「シートの表面上に指の位置を検出するために,タッチスクリーンまたはタッチパネルまたはタッチパッドで有利に使用することができるガラスシートにおいて,
適度な寸法のタッチスクリーン,タッチパネルまたはタッチパッドの接触感知表面として使用されるときには,装置のエネルギ消費に有利なガラスシートを提供することや選択された用途に対して許容可能な美的外観を備えたガラスシートを提供することを目的として,
前記ガラスシートのガラスは,ガラスの全重量によるパーセンテージとして表される含有量において,
SiO2 55〜85%
Al2O3 0〜30%
B2O3 0〜20%
Na2O 0〜25%
CaO 0〜20%
MgO 0〜15%
K2O 10〜20%
BaO 0〜20%
を含む基本組成物を有する,ガラスである,ガラスシート。」
オ.ここで,引用文献2に記載された技術の「SiO2」,「Na2O」,「CaO」は,それぞれ「シリカ」,「ソーダ灰」,「石灰」であるから,引用文献2に記載された技術は,「ソーダ石灰シリカのガラス」に相当するものを含み,それを選択することは,当業者が適宜なし得ることである。
そして,引用発明のトリム要素としての「カバー部材2」は,「ガラスまたはプラスチック等の光透過性のある透明部材」であり,カバー部材2をガラスとすることの示唆があって,引用発明と引用文献2に記載された技術とは,タッチパネル機能を有する操作面としての部材であって,美的外観を考慮したものである点において共通するから,引用発明のカバー部材2において示唆のあるガラスの組成に引用文献2に記載された技術を採用して,相違点1における本件補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
引用発明の「ガラスまたはプラスチック等の枠状部材である」「フレーム5」において,「プラスチック」を選択して,本件補正発明の「プラスチックフレーム」とすることは,当業者が適宜採用可能な選択的事項にすぎない。

そして,本件補正発明の効果について検討しても,引用発明及び引用文献2に記載された技術から予測される以上の格別のものがあるともいえない。
したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張の検討
ア.請求人は,審判請求書の「(3)(B)拒絶査定に対する反論」において,以下のように主張する。
「引用文献1は,自動車の中心コンソール,特にダッシュボードの上に一体化される画像表示装置を開示する。この画像表示装置は,実際,ガラスシートを含む。しかし,この画像表示装置は,トリム要素として理解されることはできない。基本的に,画像表示装置は,ダッシュボードのプラスチックトリム要素に一体化される。従って,引用文献1は,本願発明のようなガラストリム要素の固定に関するものではなく,プラスチックトリム要素への画像表示装置の固定に関するものである。さらに述べると,引用文献1は,本願の独立請求項1及び14に要件として組み入れたガラスの組成について完全に黙ったままである。
従って,本願発明は,引用文献1に記載されたものではないし,引用文献1から容易に想起できない。」
イ.しかしながら,上記(3)イ.及び,(4)<相違点1について>で示したように,引用文献1の「画像表示装置1」の「カバー部材2」において,引用文献2(原査定の引用文献4)に記載された技術を採用することにより,上記相違点1に係る本件補正発明の事項を有するものとすることは,当業者が適宜なし得ることである。
したがって,請求人の上記主張は,採用することができない。

(6)まとめ
したがって,本件補正発明は,引用発明,及び,引用文献2に記載された技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,本件補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件補正前の本願の請求項16に係る発明(以下「本願発明」という。)は,「第2 1.(2)」に示したとおりのものと認められる。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は,以下のとおりである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<理由1><理由2>
・請求項 1−3,5−8,15−18,20,21
・引用文献等 1

・請求項 1―4,6−9,15−20
・引用文献等 2

<理由2>
・請求項 1−9,15−20
・引用文献等 1,2

・請求項 10
・引用文献等 1−3

・請求項 11
・引用文献等 1−4

・請求項 12−14
・引用文献等 1−5

引用文献等一覧
1.特開2015−162184号公報(上記第2 2.(2)ア.で示した「引用文献1」と同じ。)
2.国際公開第2015/121964号
3.特開2010−46941号公報(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2015/011044号(周知技術を示す文献)(上記第2 2.(2)イ.で示した「引用文献2」と同じ。)
5.特開2008−139833号公報
6.特表2012−515104号公報(新たに引用された文献:なお書きで「ガラストリム要素」について記載。)

3.引用文献とその記載事項等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1,その記載事項及び引用発明は,上記「第2 2.(2)ア.」に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,第3(3)の対比で検討したとおり,両者は,
「トリム要素とフレームとを含む,自動車両の内部のための組立体」
の点で一致し,以下の<相違点1’>において相違すると認められる。
<相違点1’>
トリム要素とフレームに関し,それぞれ,本願発明では,「ガラストリム要素」,「プラスチックフレーム」であるのに対して,引用発明では,「ガラスまたはプラスチック等の光透過性のある透明部材」である「カバー部材2」,「ガラスまたはプラスチック等の枠状部材である」「フレーム5」である点。

<相違点1’について>
引用発明のトリム要素としての「ガラスまたはプラスチック等の光透過性のある透明部材」である「カバー部材2」において,「ガラス」を選択して,本願発明の「ガラストリム要素」とし,引用発明の「ガラスまたはプラスチック等の枠状部材である」「フレーム5」において,「プラスチック」を選択して,本願発明の「プラスチックフレーム」とすることは,当業者が適宜採用可能な選択的事項にすぎない。
そして,本願発明の効果について検討しても,引用発明から予測される以上の格別のものがあるともいえない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,その余の請求項を検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。

審判長 一ノ瀬 覚
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-10-26 
結審通知日 2021-10-29 
審決日 2021-11-09 
出願番号 P2018-519404
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60R)
P 1 8・ 575- Z (B60R)
P 1 8・ 113- Z (B60R)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 藤井 昇
八木 誠
発明の名称 ガラス内部トリム要素を自動車両内へ固定するための方法  
代理人 風早 信昭  
代理人 浅野 典子  

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