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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1383086 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-05-31 |
確定日 | 2022-03-15 |
事件の表示 | 特願2017− 30120「直流集中電源システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月30日出願公開、特開2018−136691、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年2月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 9月23日付け:拒絶理由通知書 令和 2年11月17日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年12月 3日付け:拒絶理由通知書 令和 3年 1月22日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 2月25日付け:拒絶査定 令和 3年 5月31日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提 出 第2 原査定の概要 原査定(令和3年2月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1〜5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1〜4に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1: 米国特許出願公開第2012/0192007号明細書 引用文献2: 特開2015−186372号公報 引用文献3: 特開2009−159678号公報 引用文献4: 特開2011−3001号公報 第3 本願発明 本願請求項1〜5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明5」という。)は、令和3年5月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される発明であり、それらのうちの本願発明1は、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 所定の制御動作を行う複数の負荷と、 交流電源からの交流電力を直流電力に変換する電力変換部と、前記電力変換部により変換された直流電力を蓄電する蓄電部とを含むとともに、前記複数の負荷の各々に直流電力を供給する直流集中電源と、 前記直流集中電源と前記複数の負荷の各々との配線間に、直列に接続され、前記交流電源および前記直流集中電源のうちの少なくとも一方の状態を前記複数の負荷の各々に通知する通信部を含む複数の中継ユニットと、を備え、 前記直流集中電源は、前記状態を監視するとともに前記状態を前記中継ユニットに通知するとともに、前記中継ユニットを介して前記複数の負荷の各々に消費電力の指令値を通知し、 前記複数の負荷の各々は、前記中継ユニットにより前記状態が所定の状態であることが通知された場合に、自身の消費電力を低減させる制御を行うように構成されているとともに、通知された前記消費電力の指令値に基づいて、停止させる処理動作の個数が可変に構成されていることによって、前記消費電力の低減量が可変に構成されており、 前記複数の負荷の各々は、各々に優先度が設定された複数の前記処理動作のうち優先度が互いに略等しい複数の前記処理動作の各々の消費電力の大きさに基づいて、優先度が互いに略等しい前記複数の処理動作のいずれを優先的に停止するかを決定するように構成されている、直流集中電源システム。」 なお、本願発明2〜5は、本願発明1を減縮した発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1、引用発明 (1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。 「[0014]FIG. 1 shows a server rack chassis 100 of information handling system. For purposes of this disclosure, the information handling system may include any instrumentality or aggregate of instrumentalities operable to compute, classify, process, transmit, receive, retrieve, originate, switch, store, display, manifest, detect, record, reproduce, handle, or utilize any form of information, intelligence, or data for business, scientific, control, entertainment, or other purposes. For example, an information handling system may be a personal computer, a PDA, a consumer electronic device, a network server or storage device, a switch router or other network communication device, or any other suitable device and may vary in size, shape, performance, functionality, and price. The information handling system may include memory, one or more processing resources such as a central processing unit (CPU) or hardware or software control logic. Additional components of the information handling system may include one or more storage devices, one or more communications ports for communicating with external devices as well as various input and output (I/O) devices, such as a keyboard, a mouse, and a video display. The information handling system may also include one or more buses operable to transmit communications between the various hardware components. [0015]The server rack chassis 100 includes servers 102, 104, and 106, and uninterruptible power supplies (UPSs) 108. Each of the servers 102, 104, and 106 can include a controller 110, which each are in communication with the UPSs 108. In an embodiment, both of the UPSs 108 can combine to provide backup power to the servers 102, 104, and 106. In another embodiment, one of the UPSs 108 can provide primary backup power to the servers 102, 104, and 106, and the other UPS can be a reserve UPS to provide power to the servers only if the primary UPS fails. Each of the controllers 110 can be any type of controller, such as an integrated Dell Remote Access Controller (iDRAC), which is an interface card that can provide out-of-band management between the server 102, 104, or 106 and a remote user. The controllers 110 can each have a processor, a memory, a battery, a network connection, and access to a server chassis bus. The controller 110 can provide different functions for the server 102, 104, or 106, such as power management, virtual media access, and remote console capabilities. The power management, the virtual media access, and the remote console capabilities can all be available to the remote user through a graphical user interface (GUI) on a web browser. Thus, the remote user can configure the servers 102, 104, and 106 of the server rack chassis 100, as if the remote user was at the local console. [0016]A user, either remote or local to the server rack chassis 100, can access the controller 110 of each of the servers 102, 104, and 106 via the GUI to configure power settings for the servers in situations when AC power or DC power is lost to the server rack chassis 100. For example, the user can set a desired uptime for each individual server, a percentage of power available from the UPS allocated to each server, whether a power limit or cap for the servers is fixed over the desired uptime as shown by waveform 302 of FIG. 3, whether the power limit for the servers decreases over the desired uptime as shown by waveform 402 of FIG. 4, or the like. [0017]When the AC power is lost, the UPS 108 can send a power loss notification signal to each of the controllers 110 of the servers 102, 104, and 106. The power loss notification signal can be any type of communication signal, such as a simple network management protocol (SNMP) signal or trap, or the like. When the controller 110 receives the power loss notification signal, the controller can send a reserve power query to the UPS 108 to request a reserve power capacity of the UPS. After receiving the reserve power capacity of the UPS 108, the controller 110 can compute the power limit for the server 102 based on the reserve power capacity, on whether the power limit is fixed or decreasing, on the percentage of the reserve power capacity allocated to the server, and on desired uptime for the server. The power limit can be a maximum amount of power that the server 102 is allowed to use during given time period. [0018]After setting the power limit, the controller 110 can communicate with a host processor of the server 102, and cut back the host processor to enforce the power limit in the server. The host processor can then disable particular components in the server 102 so that the server can operate at the power limit determined by the controller 110. The controller 110 can dynamically adjust the power limit for the server at fixed intervals over the desired uptime for the server 102. For example, the controller 110 can poll the UPS 108 at the fixed intervals to receive a current reserve power capacity of the UPS. When the controller 110 has received the current reserve power capacity, the controller can calculate and set a new power limit for the server 102. If the current reserve power capacity of the UPS 108 is higher than expected because the servers 102, 104, and 106 did not use all of the allocated power for a given time period, the new power limit for the server 102 can higher than the original power limit. The controller 110 can continue to re-poll the UPS 108 at the fixed intervals to receive the current reserve power capacity of the UPS, and can re-calculate and set the new power limit for the server based on the current reserve power capacity until the AC power is restored to the server rack chassis 100.」 (当審訳: [0014]図1は、情報ハンドリングシステムのサーバラックシャーシ100を示す。本開示の目的のため、情報ハンドリングシステムは、ビジネス、科学、制御、エンターテインメント又はその他の目的のためのあらゆる形式の情報、インテリジェンス又はデータを、計算する、分類する、処理する、送信する、受信する、検索する、発生する、切替える、記憶する、表示する、提示する、検出する、記録する、再生する、ハンドリングする、又は利用するように動作可能な、あらゆる手段又は手段の集合を含み得る。例えば、情報ハンドリングシステムは、パーソナルコンピュータ、PDA、コンシューマ電子デバイス、ネットワークサーバ若しくは記憶デバイス、スイッチルータ若しくは他のネットワーク通信装置、又はあらゆる他の適合するデバイスであり得るものであり、また、そのサイズ、形状、性能、機能及び価格において変化し得る。情報ハンドリングシステムは、メモリ、中央処理装置(CPU)、又は、ハードウェア若しくはソフトウェア制御ロジックのような1つ以上の処理リソースを含み得る。情報ハンドリングシステムの付加的な要素は、1つ又は複数の記憶装置、外部装置と通信するための1つ又は複数の通信ポートを、例えばキーボード、マウス、及びビデオディスプレイのような種々の入力及び出力(I/O)装置とともに、含み得る。情報ハンドリングシステムはまた、種々のハードウェアコンポーネント間のやりとりを送るように動作可能な1つ又は複数のバスを含み得る。 [0015]サーバラックシャーシ100は、サーバ102、104及び106、並びに無停電電源(UPSs)108を含む。サーバ102、104及び106のそれぞれは、各々がUPSs108と通信するコントローラ110を含むことができる。一実施形態では、UPSs108の両方は、サーバ102、104及び106にバックアップ電力を提供するために結合することができる。別の実施形態では、UPSs108のうちの1つは、サーバ102、104及び106に主位的なバックアップ電力を提供することができ、他のUPSが、主位的UPSが故障した場合にのみサーバに電力を供給するための、予備的UPSとすることができる。各コントローラ110は、サーバ102、104又は106とリモートユーザとの間のアウトオブバンド管理を提供することができるインターフェースカードである、integrated Dell Remote Access Controller(iDRAC)のような、任意のタイプのコントローラであり得る。コントローラ110はそれぞれ、プロセッサ、メモリ、バッテリー、ネットワーク接続、及びサーバシャーシバスへのアクセスを有することができる。コントローラ110は、サーバ102、104又は106に、電力管理、仮想メディアアクセス、及び遠隔コンソール機能などの、異なる機能を提供することができる。電力管理、仮想メディアアクセス、及び遠隔コンソール機能はすべて、ウェブブラウザ上でグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して遠隔ユーザに利用可能とすることができる。このように、遠隔ユーザは、サーバラックシャーシ100のサーバ102、104、及び106を、遠隔ユーザがローカルコンソールに所在したかのように構成することができる。 [0016]サーバラックシャーシ100に対してリモートの又はローカルのいずれかユーザは、サーバラックシャーシ100への交流電力又は直流電力が喪失した状況においてサーバのための電力設定を構成するために、サーバ102、104、及び106のそれぞれのコントローラ110に、GUIを介してアクセスすることができる。例えば、ユーザは、個別のサーバそれぞれの所望の動作可能時間、UPSからの各サーバに割り当てられた利用可能な電力のパーセンテージ、サーバの電力制限値すなわち上限が、図3の波形302によって示されるように、所望の動作可能時間にわたって固定されたものとするか否か、サーバのための電力制限値が、図4の波形402によって示されるように、所望の動作可能時間にわたって減少するものとするかどうか、又は類似のものを設定することができる。 [0017]交流電力が喪失した場合、UPS108は、サーバ102、104、及び106のコントローラ110の各々へ電力喪失通知信号を送信することができる。電力喪失通知信号は、簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP)又はトラップ、又はその類似のもののような、あらゆる種類の通信信号とすることができる。コントローラ110が電力喪失通知信号を受信した場合、コントローラは、UPSの予備電力容量を要求するために、UPS108に予備電力のクエリを送信することができる。UPS108の予備電力容量を受信した後、コントローラ110は、予備電力容量、電力限界値が固定されたものであるか又は減少するものであるか、サーバに割り当てられた予備電力容量のパーセンテージ、及び、サーバのための所望の動作可能時間に基づいて、サーバ102のための電力制限値を計算することができる。電力限界値は、サーバ102が所与の時間期間の間に使用することが許されている電力の最大量であり得る。 [0018]電力制限値を設定した後、コントローラ110は、サーバ102のホストプロセッサと通信を行い、サーバにおいて電力制限値を実行するためにホストプロセッサをカットバックすることができる。ホストプロセッサは、すると、サーバがコントローラ110によって決定された電力制限値で動作することができるように、サーバ102内の特定の構成要素を停止することができる。コントローラ110は、サーバ102のための所望の動作可能時間にわたる一定間隔で、サーバのための電力制限値を動的に調節することができる。例えば、コントローラ110は、UPSの最新の予備電力容量を受信するために、一定間隔でUPS108にポーリングすることができる。コントローラ110が最新の予備電力容量を受信すると、コントローラはサーバ102のための新たな電力制限値を算出及び設定することができる。サーバ102、104、及び106は、所与の期間の間に割り当てられた電力の全てを使用しなかったために、UPS108の予備電力容量が予期されるよりも高い場合、サーバ102のための新たな電力制限値は、元の電力制限値よりも高くできる。コントローラ110は、交流電力が、サーバのラック筐体100に復元されるまで、UPSの最新の予備電力容量を受信するために無停電電源装置108を一定間隔で再ポーリングし続けることができ、また、交流電力がサーバラックシャーシ100に対して回復するまで、最新の予備電力容量に基づいて、サーバのための新たな電力制限値を再計算及び設定することができる。) 「[0026]FIG. 5 shows a method 500 for extending an uptime of the server running on backup power. At block 502, a desired server uptime is received at a controller of a server. The desired server uptime can be received from a user via a GUI. An indication of whether a power limit for the server is to be fixed or decreasing over the desired server uptime is received at the controller at block 504. At block 506, a power loss signal is received from a UPS indicating that a primary power has been lost. The primary power can be AC power or DC power. A power capacity query is sent from the controller to the UPS at block 508. [0027]At block 510, a reserve power capacity of the UPS is received at the controller. The power limit for the server is calculated based on the reserve power capacity of the UPS and on the desired server uptime at block 512. At block 514, the power limit of the server is enforced by the controller. The power limit can be enforced by the controller reducing the power consumption of the host processor, memory, and other components, or even shutting down unused components like redundant network adapters. At block 516, a determination is made whether the primary power has been restored. If the primary power has not been restored, the flow repeats as stated above at block 508. If the primary power has been restored, the power limit for the server is cleared at block 518.」 (当審訳: [0026]図5は、バックアップ電源上で動作しているサーバの動作可能時間を延長するための方法500を示す。ブロック502では、所望のサーバの動作可能時間がサーバのコントローラで受信される。所望のサーバ動作可能時間は、GUIを介してユーザから受信することができる。サーバの電力制限値がサーバの稼働時間にわたって固定される又は減少されるべきかどうかの指示は、ブロック504において、コントローラで受信される。ブロック506で、電力喪失信号が、一次電源が失われたことを示すUPSから受信される。一次電源は、AC電力又はDC電力とすることができる。電力容量のクエリは、ブロック508において、コントローラからUPSに送信される。 [0027]ブロック510において、UPSの予備電力容量は、コントローラで受信される。サーバのための電力制限値が、ブロック512において、UPSの予備電力容量及び所望のサーバ動作可能時間に基づいて計算される。ブロック514において、サーバのための電力制限値が、コントローラによって実行される。電力制限値は、ホストプロセッサ、メモリ、及び他のコンポーネントの電力消費を減少させること、又は、更に冗長ネットワークアダプタのような不使用のコンポーネントをシャットダウンすることによって、実行されることができる。ブロック516において、一次電源が回復したか否かが決定される。一次電源が回復されなかった場合、ブロック508おいて、フローが上述のように反復する。一次電源が回復された場合には、サーバの電力制限値は、ブロック518おいてクリアされる。) (図1) 「 ![]() 」 (2)引用発明 上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「情報ハンドリングシステムのサーバラックシャーシ100であって、 サーバラックシャーシ100は、サーバ102、104及び106、並びに無停電電源(UPSs)108を含み、サーバ102、104及び106のそれぞれは、各々がUPSs108と通信するコントローラ110を含み、UPSs108のうちの1つは、サーバ102、104及び106に主位的なバックアップ電力を提供し、 交流電力が喪失した場合、UPS108は、サーバ102、104、及び106のコントローラ110の各々へ電力喪失通知信号を送信し、コントローラ110が電力喪失通知信号を受信した場合、UPS108の予備電力容量を受信した後、コントローラ110は、予備電力容量、電力限界値が固定されたものであるか又は減少するものであるか、サーバに割り当てられた予備電力容量のパーセンテージ、及び、サーバのための所望の動作可能時間に基づいて、サーバ102のための電力制限値を計算し、電力限界値は、サーバ102が所与の時間期間の間に使用することが許されている電力の最大量であり、 電力制限値を設定した後、コントローラ110は、サーバ102のホストプロセッサと通信を行い、サーバにおいて電力制限値を実行するためにホストプロセッサをカットバックすることができ、ホストプロセッサは、すると、サーバがコントローラ110によって決定された電力制限値で動作することができるように、サーバ102内の特定の構成要素を停止することができ、 バックアップ電源上で動作しているサーバの動作可能時間を延長するための方法において、UPSの予備電力容量は、コントローラで受信され、サーバのための電力制限値が、UPSの予備電力容量及び所望のサーバ動作可能時間に基づいて計算され、サーバのための電力制限値が、コントローラによって実行され、電力制限値が、ホストプロセッサ、メモリ、及び他のコンポーネントの電力消費を減少させること、又は、更に冗長ネットワークアダプタのような不使用のコンポーネントをシャットダウンすることによって、実行される、情報ハンドリングシステムのサーバラックシャーシ100。」 2 引用文献2 原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0018】 [構成] 本実施形態における情報処理システム1は、ラックサーバの形態で構成されている。つまり、情報処理システム1は、複数の棚を有するサーバーラックの各棚に、当該情報処理システム1を構成する各装置が収容されて形成されている。 【0019】 具体的に、本実施形態における情報処理システム1は、図1に示すように、サーバーラックの各棚を単位とする各ユニットに、ラックマネージャ10と、電源モジュール20と、サーバ群30と、を搭載して備えている。図1の例では、1つのユニットにラックマネージャ10を、2つのユニットに電源モジュール20を、6つのユニットにサーバ群30を、それぞれ搭載している。但し、本発明における情報処理システム1を構成する、ラックマネージャ10や電源モジュール20、サーバ群30の数は、必ずしも上述した数であることに限定されない。また、情報処理システム1は、ラックサーバの形態で構成されていることに限定されない。 【0020】 上記サーバ群30は、図1に示すように、さらに複数のサーバモジュール40を備えている。そして、各サーバモジュール40は、それぞれが演算装置であるCPU(CentralProcessing Unit)41、記憶装置であるメモリ42、通信装置であるネットワークカード(「NC」を表示する)43、を備えており、単体で情報処理装置として作動するものである。なお、サーバモジュール40は、上述した構成であることに限定されず、例えば、ハードディスクを備えたストレージサーバとして機能するものなど、いかなる構成の情報処理装置であってもよい。 【0021】 また、サーバ群30は、サーバモジュール40を冷却するためのFAN31を備えている。但し、サーバ群30は、上述した構成であることに限定されない。 【0022】 上記サーバモジュール40は、電源モジュール20から電力を供給されて作動する。ここで、本実施形態における電源モジュール20は、1つの電源モジュールで複数のサーバモジュール40に電力を供給するよう構成されている。但し、電源モジュール20は、必ずしも複数のサーバモジュール40に電力を供給することに限定されず、1つのサーバモジュール40に1つの電源モジュール20が対応して設けられていてもよい。 【0023】 また、上記ラックマネージャ10は、演算装置を有する情報処理装置にて構成されており、後述するように、各サーバモジュール40の電力設定を行うピークアシスト機能を有する。なお、ラックマネージャ10は、1つの情報処理装置で構成されていてもよく、あるいは、複数の情報処理装置で構成されていてもよい。そして、ラックマネージャ10は、1つの情報処理装置で複数のサーバモジュール40に対してピークアシスト機能を提供してもよく、あるいは、1つの情報処理装置が1つのサーバモジュール40に対してピークアシスト機能を提供してもよい。 【0024】 次に、上述したラックマネージャ10、電源モジュール20、サーバモジュール40の構成の詳細について、図2乃至5を参照して説明する。 【0025】 まず、電源モジュール20の構成を説明する。電源モジュール20は、図2に示すように、交流電源からの電力を直流に変換してサーバモジュール40に供給する電源装置21(PSU:Power Supply Unit)(他の電源装置)と、電力を蓄電すると共に当該電力をサーバモジュール40に供給するバッテリ22(電力貯蔵装置)と、を備えている。電源モジュール20は、電源装置21とバッテリ22とが協働して、サーバモジュール40が必要とする電力を供給する(図2の符号P参照)。なお、バッテリ22は、キャパシタなど、電力を貯蔵可能であり、当該貯蔵している電力をサーバモジュール40に供給可能な装置であればいかなる装置であってもよい。 【0026】 従って、サーバモジュール40が、電源装置21が供給可能な電力より大きい電力を必要としている場合には、電源装置21のみならずバッテリ22からも電力が供給される。このとき、バッテリ22に蓄積されている電力の残量は低下することとなる。また、サーバモジュール40が、電源装置2が供給可能な電力以下の電力を必要としている場合には、電源装置21のみから電力が供給される。このとき、電源装置21から供給可能な残余の電力は、バッテリ22に蓄電されることとなる。 【0027】 次に、ラックマネージャ10の構成について説明する。図2に示すように、ラックマネージャ10は、装備されている演算装置にプログラムが組み込まれることに構築された、ピークアシスト制御部11(機能部)を備えている。ピークアシスト制御部11は、予め設定された時間間隔Tbでバッテリに蓄積されている電力の残量を採取し、その残量に応じて、サーバモジュール40に対して電力値設定指令(通知、電力制御通知)を入力する。 【0028】 一例として、ピークアシスト制御部11は、採取したバッテリ22の電力残量が、予め設定された閾値以上であるかを判定する。このとき、閾値は、電力装置21が供給できる電力値以上の値であって、バッテリ22からの電力補助で、所定時間だけサーバモジュール40が稼働することができる電力量の値に設定されている。なお、閾値は、サーバモジュール40の種類や個々のサーバモジュール40毎に、異なる値に設定されていてもよい。 【0029】 そして、ピークアシスト制御部11は、バッテリ22の電力残量が閾値以上であると判断した場合には、予め定められた電力値設定指令のうち、サーバモジュール40に対して後述するように許可電力値を高い値(ピークアシスト電力値(第1の電力値))に設定する指令となる「第1指令」(第1通知)を入力する。一方、ピークアシスト制御部11は、バッテリ22の電力残量が閾値より小さいと判断した場合には、予め定められた電力値設定指令のうち、サーバモジュール40に対して後述するように許可電力値を低い値(ベース電力値(第2の電力値))に設定する指令となる「第2指令」(第2通知)を入力する。」 「【図1】 ![]() 」 「【図2】 ![]() 」 以上の記載から、引用文献2には次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「複数の棚を有するサーバーラックの各棚に、情報処理システム1を構成する各装置が収容されて形成されている情報処理システム1であって、 サーバーラックの各棚を単位とする各ユニットに、ラックマネージャ10と、電源モジュール20と、サーバ群30と、を搭載して備え、 上記サーバ群30は、さらに複数のサーバモジュール40を備え、 電源モジュール20は、1つの電源モジュールで複数のサーバモジュール40に電力を供給するよう構成され、 上記ラックマネージャ10は、各サーバモジュール40の電力設定を行うピークアシスト機能を有し、 電源モジュール20は、交流電源からの電力を直流に変換してサーバモジュール40に供給する電源装置21と、電力を蓄電すると共に当該電力をサーバモジュール40に供給するバッテリ22と、を備え、電源モジュール20は、電源装置21とバッテリ22とが協働して、サーバモジュール40が必要とする電力を供給し、 ラックマネージャ10は、ピークアシスト制御部11(機能部)を備え、ピークアシスト制御部11は、予め設定された時間間隔Tbでバッテリに蓄積されている電力の残量を採取し、その残量に応じて、サーバモジュール40に対して電力値設定指令(通知、電力制御通知)を入力する、情報処理システム1。」 3 引用文献3 原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0004】 本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、商用電源の停電時にバックアップ電源として電池を用いて、長時間の負荷の動作が可能な配電システムを提供することにある。」 「【0015】 (実施形態1) 以下に説明する実施形態は、本発明を適用する建物として戸建て住宅の家屋を想定して説明するが、本発明の技術思想を集合住宅に適用することを妨げるものではない。建屋Hには、図3に示すように、直流電力を出力する直流電力供給部101と、直流電力により駆動される電気機器である直流機器102とが設けられ、直流電力供給部101の出力端部に接続した直流供給線路Wdcを通して直流機器102に直流電力が供給される。直流電力供給部101と直流機器102との間には、直流供給線路Wdcに流れる電流を監視し、異常を検知したときに直流給電線路Wdc上で直流電力供給部101から直流機器102への給電を制限ないし遮断する直流ブレーカ114が設けられる。 【0016】 直流供給線路Wdcは、直流電力の給電路であるとともに通信路としても兼用されており、高周波の搬送波を用いてデータを伝送する通信信号を直流電圧に重畳することにより直流供給線路Wdcに接続された機器間での通信を可能にしている。この技術は、交流電力を供給する電力線において交流電圧に通信信号を重畳させる電力線搬送技術と類似した技術である。 【0017】 直流供給線路Wdcは、直流電力供給部101を介して宅内サーバ116に接続される。宅内サーバ116は、宅内の通信網(以下、「宅内網」という)を構築する主装置であり、宅内網において直流機器102が構築するサブシステムなどと通信を行う。」 「【0034】 ところで、直流電力供給部101は、基本的には、商用電源のように宅外から供給される交流電源ACの電力変換により直流電力を生成する。図示する構成では、交流電源ACは、分電盤110に内器として取り付けられた主幹ブレーカ111を通して、スイッチング電源を含むAC/DCコンバータ112に入力される。AC/DCコンバータ112から出力される直流電力は、協調制御部113を通して各直流ブレーカ114に接続される。 【0035】 直流電力供給部101には、交流電源ACから電力が供給されない期間(たとえば、商用電源ACの停電期間)に備えて二次電池162が設けられている。また、直流電力を生成する太陽電池161や燃料電池163を併用することも可能になっている。交流電源ACから直流電力を生成するAC/DCコンバータ112を備える主電源(第1の電源)に対して、太陽電池161や二次電池162や燃料電池163は分散電源(第2の電源)になる。なお、図示例において、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163は出力電圧を制御する回路部を含み、二次電池162は放電だけではなく充電を制御する回路部も含んでいる。」 「【0042】 そして、本実施形態の配電システムは、図1、図3に示すように、協調制御部113内に停電検知部118を配置しており、停電検知部118は、商用電源ACの停電を検知すると(すなわち、AC/DCコンバータ112の出力が停止すると)、協調制御部113に対して、直流供給線路Wdcを介して供給される直流機器102への電力の配分として、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163からの出力を100%、AC/DCコンバータ112からの出力を0%にして、分散電源からの100%供給に切り換えるように指示する。さらに、停電検知部118は、停電検知信号を直流供給線路Wdcの直流電圧に重畳して、直流ブレーカ114を介して全ての直流機器102へ送信する。」 「【図3】 ![]() 」 以上の記載から、引用文献3には次の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「配電システムであって、 直流電力を出力する直流電力供給部101と、直流電力により駆動される電気機器である直流機器102とが設けられ、直流電力供給部101の出力端部に接続した直流供給線路Wdcを通して直流機器102に直流電力が供給され、直流電力供給部101と直流機器102との間には、直流供給線路Wdcに流れる電流を監視し、異常を検知したときに直流給電線路Wdc上で直流電力供給部101から直流機器102への給電を制限ないし遮断する直流ブレーカ114が設けられ、 直流供給線路Wdcは、直流電力の給電路であるとともに通信路としても兼用されており、高周波の搬送波を用いてデータを伝送する通信信号を直流電圧に重畳することにより直流供給線路Wdcに接続された機器間での通信を可能にしており、 直流電力供給部101は、基本的には、商用電源のように宅外から供給される交流電源ACの電力変換により直流電力を生成し、AC/DCコンバータ112から出力される直流電力は、協調制御部113を通して各直流ブレーカ114に接続され、 直流電力供給部101には、交流電源ACから電力が供給されない期間(たとえば、商用電源ACの停電期間)に備えて二次電池162が設けられ、また、直流電力を生成する太陽電池161や燃料電池163を併用し、 協調制御部113内に停電検知部118を配置しており、停電検知部118は、商用電源ACの停電を検知すると(すなわち、AC/DCコンバータ112の出力が停止すると)、協調制御部113に対して、直流供給線路Wdcを介して供給される直流機器102への電力の配分として、太陽電池161、二次電池162、燃料電池163からの出力を100%、AC/DCコンバータ112からの出力を0%にして、分散電源からの100%供給に切り換えるように指示し、さらに、停電検知部118は、停電検知信号を直流供給線路Wdcの直流電圧に重畳して、直流ブレーカ114を介して全ての直流機器102へ送信する、配電システム。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)引用発明の「情報ハンドリングシステムのサーバラックシャーシ100」が含む、「サーバ102、104及び106」は、それぞれ、情報処理に関する所定の制御動作を行うものである。この点は、「サーバ102」が「ホストプロセッサ」を含むことからも明らかである。 また、引用発明において、「UPSs108のうちの1つは、サーバ102、104及び106に主位的なバックアップ電力を提供」する、すなわち、「サーバ102、104及び106」は「バックアップ電力を提供」されるから、本願発明1の「複数の負荷」に相当する。 したがって、引用発明は、本願発明1の 「所定の制御動作を行う複数の負荷」 に相当する構成を備えている。 (イ)引用発明の「UPSs108のうちの1つは、サーバ102、104及び106に主位的なバックアップ電力を提供」することにおける「UPSs108のうちの1つ」と、「交流電力が喪失した場合、UPS108は、サーバ102、104、及び106のコントローラ110の各々へ電力喪失通知信号を送信」することにおける「UPS108」とは、同じものを指していることが明らかである。また、当該「UPS108」について「交流電力が喪失した場合」があることは、当該「UPS108」が、通常、外部の交流電源から「交流電力」の供給を受けることを意味するといえる。 そして、交流電源から「交流電力」の供給を受ける「UPS108」が、「サーバ102、104及び106に主位的なバックアップ電力を提供」することにおいて、「UPS108」は、「サーバ102、104及び106」の各々にとっての集中電源(集中的な電源)であるということができ、また、「バックアップ電力」と本願発明1の「直流電力」とは、「電力」である点で共通しており、「提供」することは、本願発明1の「供給する」ことに相当する。 以上の点について、上記(ア)も踏まえると、引用発明の「UPS108」と、本願発明1の 「交流電源からの交流電力を直流電力に変換する電力変換部と、前記電力変換部により変換された直流電力を蓄電する蓄電部とを含むとともに、前記複数の負荷の各々に直流電力を供給する直流集中電源」 とは、 「交流電源からの交流電力を受け、前記複数の負荷の各々に電力を供給する集中電源」 である点で共通している。 (ウ)本願発明1の「前記直流集中電源と前記複数の負荷の各々との配線」は、「前記直流集中電源」が「前記複数の負荷の各々」に「直流電力を供給する」ための「配線」であるものと解される。 一方、引用発明の「UPSs108のうちの1つは、サーバ102、104及び106に主位的なバックアップ電力を提供」するから、「UPS108」と「サーバ102、104及び106」の各々とは、当然、配線で接続されている。 以上の点について、上記(ア)、(イ)も踏まえると、本願発明1の 「前記直流集中電源と前記複数の負荷の各々との配線」 に関して、引用発明と本願発明1とは、 「前記集中電源と前記複数の負荷の各々との配線」 を備える点で共通している。 (エ)本願発明1の「前記直流集中電源は、前記状態を監視する」ことにおいて、「前記状態」は、「前記交流電源および前記直流集中電源のうちの少なくとも一方の状態」、すなわち、択一的記載である「前記交流電源」又は「前記直流集中電源」の「状態」を指している。 一方、引用発明は「交流電力が喪失した場合、UPS108は、サーバ102、104、及び106のコントローラ110の各々へ電力喪失通知信号を送信」するから、「UPS108」は、「交流電力」が「UPS108」に供給される状態を監視するとともに、その状態が「交流電力が喪失した」状態である場合について、前記状態を、「電力喪失通知信号」として、「サーバ102、104、及び106のコントローラ110の各々」に通知するといえる。 以上の点について、上記(イ)も踏まえると、本願発明1の 「前記直流集中電源は、前記状態を監視するとともに前記状態を前記中継ユニットに通知する」こと に関して、「前記状態」が上記択一的記載のうちの「前記交流電源」の「状態」である場合の対比で、引用発明と本願発明1とは、 「前記集中電源は、前記交流電源の状態を監視するとともに前記状態を通知する」 という点で共通している。 (オ)引用発明は、 「コントローラ110が電力喪失通知信号を受信した場合、UPS108の予備電力容量を受信した後、コントローラ110は、予備電力容量、電力限界値が固定されたものであるか又は減少するものであるか、サーバに割り当てられた予備電力容量のパーセンテージ、及び、サーバのための所望の動作可能時間に基づいて、サーバ102のための電力制限値を計算し、電力限界値は、サーバ102が所与の時間期間の間に使用することが許されている電力の最大量であり、 電力制限値を設定した後、コントローラ110は、サーバ102のホストプロセッサと通信を行い、サーバにおいて電力制限値を実行するためにホストプロセッサをカットバックすることができ、ホストプロセッサは、すると、サーバがコントローラ110によって決定された電力制限値で動作することができるように、サーバ102内の特定の構成要素を停止することができ」、 「電力制限値が、ホストプロセッサ、メモリ、及び他のコンポーネントの電力消費を減少させること、又は、更に冗長ネットワークアダプタのような不使用のコンポーネントをシャットダウンすることによって、実行される」 との構成を含むものである。 当該構成は、要するに、「コントローラ110が電力喪失通知信号を受信した場合」に、「サーバ102」の「電力消費を減少させる」制御を行うように構成されているとともに、「所与の時間期間の間に使用することが許されている電力の最大量」である「電力制限値」に基づいて「サーバ102内の特定の構成要素を停止」するものであるといえる。 ここで、上記構成は「コントローラ110」及び「サーバ102」に関するものであるが、引用発明において、「サーバ102、104及び106のそれぞれは、各々がUPSs108と通信するコントローラ110を含」み、「UPS108は、サーバ102、104、及び106のコントローラ110の各々へ電力喪失通知信号を送信」するから、「サーバ104」及び「サーバ106」についても、それぞれ、上記構成が当てはまることが明らかである。また、「サーバ102、104及び106のそれぞれ」が「コントローラ110を含」む、すなわち、「コントローラ110」は、「サーバ102、104及び106」のそれぞれの内部の構成であるから、「コントローラ110が電力喪失通知信号を受信」する、「電力制限値を計算」する等は、結局、「サーバ102、104及び106」の各々で行われる処理である。 したがって、上記構成は、結局、「サーバ102、104及び106」の各々は、「電力喪失通知信号を受信した場合」に、自身の「電力消費を減少させる」制御を行うように構成されているとともに、「所与の時間期間の間に使用することが許されている電力の最大量」である「電力制限値」に基づいて「特定の構成要素を停止」するように構成されているものである。 ここで、「電力喪失通知信号を受信」することは、上記(エ)の「交流電力が喪失した」状態についてのものであって、当該「交流電力が喪失した」状態は、本願発明1の「所定の状態」に含まれ、「受信」することは、本願発明1の「通知され」ることに相当する。 また、「電力消費を減少させる」こと、「所与の時間期間の間に使用することが許されている電力の最大量」である「電力制限値」は、それぞれ、本願発明1の「消費電力を低減させる」こと、「消費電力の指令値」に相当し、「電力制限値」に基づいて「特定の構成要素を停止」することは、本願発明1の「前記消費電力の指令値に基づいて」、「処理動作」を「停止させる」ことに相当する。 以上の点について、上記(ア)も踏まえると、本願発明1の 「前記複数の負荷の各々は、前記中継ユニットにより前記状態が所定の状態であることが通知された場合に、自身の消費電力を低減させる制御を行うように構成されているとともに、通知された前記消費電力の指令値に基づいて、停止させる処理動作の個数が可変に構成されていることによって、前記消費電力の低減量が可変に構成されて」いる ことに関して、引用発明と本願発明1とは、 「前記複数の負荷の各々は、前記状態が所定の状態であることが通知された場合に、自身の消費電力を低減させる制御を行うように構成されているとともに、消費電力の指令値に基づいて、処理動作を停止させるように構成されている」 という点で共通している。 (カ)引用発明の「情報ハンドリングシステムのサーバラックシャーシ100」は、後述する相違点は別として、本願発明1の「直流集中電源システム」と、「集中電源システム」である点で共通している。 イ 上記アから、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「所定の制御動作を行う複数の負荷と、 交流電源からの交流電力を受け、前記複数の負荷の各々に電力を供給する集中電源と、 前記集中電源と前記複数の負荷の各々との配線と、を備え、 前記集中電源は、前記交流電源の状態を監視するとともに前記状態を通知し、 前記複数の負荷の各々は、前記状態が所定の状態であることが通知された場合に、自身の消費電力を低減させる制御を行うように構成されているとともに、消費電力の指令値に基づいて、処理動作を停止させるように構成されている、直流集中電源システム。」 (相違点1) 本願発明1は、「直流集中電源」を備え、「前記複数の負荷の各々」に「供給する」電力のタイプが「直流電力」であり、また、「直流集中電源」が「交流電源からの交流電力を直流電力に変換する電力変換部と、前記電力変換部により変換された直流電力を蓄電する蓄電部とを含む」ものであるのに対して、引用発明が備える「UPS108」は、「交流電力」の供給を受けるものではあるものの、「UPS108」のタイプ及び「サーバ102、104及び106」に「提供する」「バックアップ電力」のタイプが「直流」であるとは特定されず、「交流電源からの交流電力を直流電力に変換する電力変換部と、前記電力変換部により変換された直流電力を蓄電する蓄電部とを含む」と特定されるものでもない点。 (相違点2) 本願発明1は、「前記直流集中電源と前記複数の負荷の各々との配線間に、直列に接続され、前記交流電源および前記直流集中電源のうちの少なくとも一方の状態を前記複数の負荷の各々に通知する通信部を含む複数の中継ユニット」を備えるのに対して、引用発明は、「UPS108」と「サーバ102、104及び106」の各々とが配線で接続されているものであることは当然である(上記ア(ウ))ものの、当該配線間に「直列に接続され」た、「前記交流電源および前記直流集中電源のうちの少なくとも一方の状態を前記複数の負荷の各々に通知する通信部を含む複数の中継ユニット」を備えると特定されるものではない点。 また、それに伴い、本願発明1では、「前記直流集中電源」による「前記状態」の「通知」先、及び、「前記複数の負荷の各々」に対する「前記状態」の「通知」主体が、「前記中継ユニット」であり、「消費電力の指令値」の「通知」が、「前記中継ユニットを介して」行われるのに対して、引用発明では、「UPS108」による「電力喪失通知信号」の「送信」が直接「サーバ102、104、及び106のコントローラ110の各々」に対してなされるものであって、「中継ユニット」が関与することは特定されず、「電力制限値」についても、「中継ユニットを介して」通知されるとは特定されない点。 (相違点3) 本願発明1では、「消費電力の指令値」を(相違点2に係る「前記中継ユニットを介して」)「前記複数の負荷の各々」に「通知」する主体が、「前記直流集中電源」であって、「前記複数の負荷の各々」は、「消費電力の指令値」が「通知され」るものであるのに対して、引用発明では、「サーバ102、104及び106のそれぞれ」が「含む」「コントローラ110」が「電力制限値を計算」する、すなわち、「電力制限値」の生成主体が「サーバ102、104、及び106」自体であって、「サーバ102、104、及び106」は、「電力制限値」が通知されるものではない点。 (相違点4) 本願発明1は、「前記複数の負荷の各々」が、「前記消費電力の指令値に基づいて」「処理動作」を「停止させる」ことについて、「停止させる処理動作の個数が可変に構成されていることによって、前記消費電力の低減量が可変に構成されて」いると特定されるものであるのに対して、引用発明は、「電力制限値」に基づいて「特定の構成要素を停止」することについて、そのように特定されるものではない点。 (相違点5) 本願発明1では、「前記複数の負荷の各々は、各々に優先度が設定された複数の前記処理動作のうち優先度が互いに略等しい複数の前記処理動作の各々の消費電力の大きさに基づいて、優先度が互いに略等しい前記複数の処理動作のいずれを優先的に停止するかを決定するように構成されている」のに対して、引用発明では、「サーバ102、104、及び106」の「特定の構成要素を停止」することについて、そのように特定されるものではない点。 (2)判断 事案に鑑み、相違点3について先に検討する。 本願発明1において、相違点3に係る「消費電力の指令値」は、「直流集中電源」が、「交流電源および前記直流集中電源のうちの少なくとも一方の状態」とともに、「複数の負荷の各々」に「通知」し、「前記複数の負荷の各々」は、当該「通知」された「状態」及び「指令値」の両者により、「自身の消費電力を低減させる制御」を行うものである。 しかしながら、外部電源から電力を受け、複数の負荷の各々に電力を供給する集中電源が、複数の負荷の各々に、外部電源および集中電源のうちの少なくとも一方の状態、並びに消費電力の指令値を通知することは、引用文献1〜4のいずれにも記載されておらず、本願出願日前において周知技術であったともいえない。 この点に関し、引用文献2記載事項において、「電源モジュール20」の「バッテリ22」に関する「電力の残量」は、「サーバモジュール40」に通知されるものではなく、「電力値設定指令」の「サーバモジュール40」への通知主体は、「電源モジュール20」ではない。また、引用文献3記載事項において、「直流機器102への電力の配分」のための「指示」は、「直流機器102」に通知されるものではない。 よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2〜4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2〜5について 本願発明2〜5は、本願発明1を減縮した発明であり、相違点3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2〜4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定について 本願発明1〜5は、相違点3に係る構成を備えるものであり、上記第5のとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-02-22 |
出願番号 | P2017-030120 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
▲高▼瀬 健太郎 富澤 哲生 |
発明の名称 | 直流集中電源システム |
代理人 | 宮園 博一 |