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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1383101
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-08 
確定日 2022-03-17 
事件の表示 特願2020−58599号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年7月2日出願公開、特開2020−99773号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、令和2年3月27日の特許出願であって、同年10月8日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月9日に意見書および手続補正書が提出されたところ、令和3年2月22日付け(送達日:同年3月9日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年6月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年12月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年12月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正により、令和2年12月9日付け手続補正書の特許請求の範囲を「【請求項1】
表示部と、
前扉に配置された1つの構造部と、
遊技者が操作可能な第1操作手段および第2操作手段と、
所定の演出を実行可能な演出実行手段と、を備え、
前記構造部には、前記第1操作手段および前記第2操作手段の両方が配置されており、
前記演出実行手段は、
振動音を伴う振動態様で前記第2操作手段を振動可能であり、
前記表示部に前記第1操作手段の操作を促すための操作促進画像を表示可能であり、
前記第2操作手段への遊技者の操作によって、当該第2操作手段を振動させるときがあり、
前記操作促進画像の表示中における前記第1操作手段への遊技者の操作によっても、振動音を伴う振動態様で前記第2操作手段を振動させるときがあることを特徴とする遊技機。
【請求項2】請求項1に記載の遊技機であって、
前記演出実行手段は、
前記第1操作手段を振動可能であり、
前記操作促進画像の表示中における前記第1操作手段への遊技者の操作によって、当該第1操作手段を振動させるときがあることを特徴とする遊技機。
【請求項3】請求項1又は請求項2に記載の遊技機であって、
前記第2操作手段の方が前記第1操作手段よりも振動する部分が大きいことを特徴とする遊技機。
【請求項4】請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の遊技機であって、
遊技者に有利な特別遊技を実行可能な特別遊技実行手段を備え、
前記第1操作手段への遊技者の操作によって前記第2操作手段が振動した場合には、前記特別遊技が実行されることを特徴とする遊技機。」から、 審判請求時に提出された手続補正書(令和3年6月8日付け)の特許請求の範囲により
「【請求項1】
表示部と、
前扉に配置され、遊技球が流下可能な遊技領域を視認可能にする透明板と、
前記前扉のうち、前記透明板よりも外側に配置されている1つの操作構造部と、
遊技者が操作可能な第1操作手段および第2操作手段と、
所定の演出を実行可能な演出実行手段と、を備え、
前記操作構造部には、前記第1操作手段および前記第2操作手段の両方が配置されており、
前記演出実行手段は、
振動音を伴う振動態様で前記第2操作手段を振動可能であり、
前記表示部に前記第1操作手段の操作を促すための操作促進画像を表示可能であり、
前記第2操作手段への遊技者の操作によって、当該第2操作手段を振動させるときがあり、
前記操作促進画像の表示中における前記第1操作手段への遊技者の操作によっても、振動音を伴う振動態様で前記第2操作手段を振動させるときがあることを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審判合議体にて付した。)。

2 補正の適否
2−1 補正の目的及び新規事項について
本件補正は、補正前の請求項2〜4を削除するとともに、補正前の請求項1について、「前扉に配置され、遊技球が流下可能な遊技領域を視認可能にする透明板」なる事項を加え、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「構造部」に関して、「前扉に配置された1つの構造部」を「前記前扉のうち、前記透明板よりも外側に配置されている1つの操作構造部」と限定するとともに「前記構造部には、前記第1操作手段および前記第2操作手段の両方が配置されており」を「前記前扉のうち、前記透明板よりも外側に配置されている1つの操作構造部と」と限定することを含むものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正の補正事項は、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の段落【0010】〜【0013】、【図1】の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

2−2 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A〜Hは、分説するため当審判合議体にて付した。)。
「【請求項1】
A 表示部と、
B 前扉に配置され、遊技球が流下可能な遊技領域を視認可能にする透明板と、
C 前記前扉のうち、前記透明板よりも外側に配置されている1つの操作構造部と、
D 遊技者が操作可能な第1操作手段および第2操作手段と、
E 所定の演出を実行可能な演出実行手段と、を備え、
F 前記操作構造部には、前記第1操作部および前記第2操作手段の両方が配置されており、
G 前記演出実行手段は、
G1 振動音を伴う振動態様で前記第2操作手段を振動可能であり、
G2 前記表示部に前記第1操作手段の操作を促すための操作促進画像を表示可能であり、
G3 前記第2操作手段への遊技者の操作によって、当該第2操作手段を振動させるときがあり、
G4 前記操作促進画像の表示中における前記第1操作手段への遊技者の操作によっても、振動音を伴う振動態様で前記第2操作手段を振動させるときがある
H ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用文献として引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017−196125号公報(平成29年11月2日公開)(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審判合議体にて付した。以下同じ。)。

ア 記載事項
(ア)
「【0006】
本発明の目的は、操作手段に特徴を持った遊技台を提供することにある。」

(イ)
「【0011】
<全体構成>
まず、図1を用いて、パチンコ機100の全体構成について説明する。なお、同図はパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。
【0012】
パチンコ機100は、外部的構造として、外枠102と、本体104と、前面枠扉106と、球貯留皿付扉108と、発射装置110と、遊技盤200(図3参照)と、を備える。外枠102は、遊技機設置営業店に設けられた設置場所(島設備等)へと固定させるための縦長方形状から成る木製の枠部材である。本体104は、内枠と呼ばれ、外枠102の内部に備えられ、ヒンジ部112を介して外枠102に回動自在に装着された縦長方形状の遊技機基軸体となる部材である。また、本体104は、枠状に形成され、内側に空間を有している。また、本体104が開放された場合、本体104の開放を検出する不図示の内枠開放センサを備える。
【0013】
前面枠扉106は、ロック機能付きで且つ開閉自在となるようにパチンコ機100の前面側となる本体104の前面に対しヒンジ部112を介して装着され、枠状に構成されることでその内側を開口部とした扉部材である。この前面枠扉106には、開口部にガラス製又は樹脂製の透明板部材118が設けられ、前面側には、スピーカ120や、枠ランプ122が取り付けられている。なお、枠ランプ122は、発光手段の一例であり、本明細書では、光源をLEDとするものもランプと称する他、蛍光灯、冷陰極管等、光を発するものであればランプと称する場合があり、光を発するものは発光手段の一例に相当する。
・・・
【0016】
球貯留皿付扉108は、パチンコ機100の前面において本体104の下側に対して、ロック機能付きで且つ開閉自在となるように装着された扉部材である。球貯留皿付扉108は、複数の遊技球(以下、単に「球」と称する場合がある)が貯留可能で且つ発射装置110へと遊技球を案内させる通路が設けられている上皿126と、上皿126に貯留しきれない遊技球を貯留する下皿128と、遊技者の操作によって上皿126に貯留された遊技球を下皿128へと排出させる球抜ボタン130と、遊技者の操作によって下皿128に貯留された遊技球を遊技球収集容器(俗称、ドル箱)へと排出させる球排出レバー132と、遊技者の操作によって発射装置110へと案内された遊技球を遊技盤200の遊技領域124へと打ち出す球発射ハンドル134と、遊技者の操作によって各種演出装置206(図3参照)の演出態様に変化を与えるチャンスボタン136と、チャンスボタン136を発光させるチャンスボタンランプ138と、を備える。このチャンスボタン136は演出ボタンであって、操作手段の一例に相当する。また、チャンスボタン136は、可動手段の一例でもあり、図1に示すチャンスボタン136は初期位置にある。詳しくは後述するように、このチャンスボタン136は進退動作を実行可能なものである。さらに、下皿128が満タンであることを検出する不図示の下皿満タンセンサを備える。
【0017】
加えて、チャンスボタン136の右横には、操作キーユニット181が設けられている。この操作キーユニット181は、十字キー181aと、OKボタン181bと、キャンセルボタン181cを有する。また、操作キーユニット181の右上には、パネル表示部183も設けられている。」

(ウ)
「【0024】
図3に示す遊技盤200はいわゆる右打ち機の遊技盤である。この遊技盤200には、外レール202と内レール204とを配設し、遊技球が転動可能な遊技領域124を区画形成している。一般的に知られる右打ち機の遊技盤においては、遊技者の操作によって、遊技球を打ち出す強さを変化させることで、後述する普図始動口228および第2特図始動口232と、第1特図始動口230とに分けることができる。具体的には、遊技領域124に対し、遊技釘238等の配設により、第一特図始動口230が備えられた第1の領域(遊技領域における左側)を転動する遊技球は第2特図始動口232への入球が困難又は不可能に構成され、その逆に第2特図始動口232が備えられた第2の領域(遊技領域における右側)を転動する遊技球は第1特図始動口230への入球が困難又は不可能に構成されている。なお、本発明は、右打ち機の遊技盤を備えたパチンコ機100に限って適用されるものではなく、広く一般の遊技盤を備えたパチンコ機に適用することができる。
【0025】
遊技領域124の略中央には、演出装置206を配設している。この演出装置206には、略中央に装飾図柄表示装置208を配設し、その周囲に、普通図柄表示装置210と、第1特別図柄表示装置212と、第2特別図柄表示装置214と、普通図柄保留ランプ216と、第1特別図柄保留ランプ218と、第2特別図柄保留ランプ220と、高確中ランプ222を配設している。なお、以下、普通図柄を「普図」、特別図柄を「特図」と称する場合がある。演出装置206についは後述する。」

(エ)
「【0045】
<制御部>
次に、図4を用いて、このパチンコ機100の制御部の回路構成について詳細に説明する。なお、同図は制御部の回路ブロック図を示したものである。
【0046】
パチンコ機100の制御部は、大別すると、遊技の中枢部分を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて主に演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、主制御部300が送信するコマンドに応じて主に遊技球の払い出しに関する制御を行う払出制御部600と、遊技球の発射制御を行う発射制御部630と、パチンコ機100に供給される電源を制御する電源制御部660と、によって構成している。」

(オ)
「【0198】
図10は、図1に示すパチンコ機100に設けられた操作手段について詳しく説明するための図である。
【0199】
図1に示すパチンコ機100には、進退動作を実行可能なチャンスボタン136と、前後方向に回動可能な透過部191が設けられている。」

(カ)
「【0205】
ここでは、操作手段として、図10を用いて説明した、チャンスボタン136を操作手段Aとし、透過部191を操作手段Bとして説明する。ここでの操作手段Aと操作手段Bを比較すると、操作手段Bは、操作手段Aよりも大きな操作手段(操作面が大きな操作手段)であり、操作手段Aは初期位置でも操作可能だが、操作手段Bは初期位置では操作不能であるといった違いがあるが、操作手段Bと操作手段Aは逆であってもよいし、両者は、同じ大きさの操作手段であってもよいし、初期位置でともに操作可能な操作手段であってもよいし、ともに操作不能な操作手段であってもよい。なお、ここで列挙した操作手段についての複数種類の例のうちのいずれか一種類の例のみを適用してもよいし、複数種類の例を適用してもよいし、全種類を適用してもよい。
【0206】
また、以降の説明で透過部191として説明してる操作手段は、後述する第二のチャンスボタン137等の他の操作手段に置き換えることができる。
【0207】
図11(a)に示すように、操作手段B(透過部191)を操作することを絡めた演出の方が、操作手段A(チャンスボタン136)を操作することを絡めた演出よりも、大当りの期待度は高い。また、機能Aについては両方備わっているが、機能Bについては操作手段Aにしか備わっていない。機能Aの例として、動作位置で振動するといった機能や、光るといった機能があげられる。機能Bの例として、回転するといった機能や、初期位置でも振動するといった機能があげられる。図11(a)に示すように、操作手段Bの方が、操作手段Aよりも、機能数では劣っている。
・・・
【0212】
図12は、操作手段Aを絡めた演出と操作手段Bを絡めた演出に関する実行タイミングを表すフローチャートである。図12に示すフローチャートでは、図の左から右に向かって時間が経過していく。図12(a)〜同図(c)に示すフロチャートでは、上から順に、操作手段B(透過部191)の操作に応じて開始される「操作手段B関連演出」、操作手段Bが操作されると操作手段B関連演出が開始されることになる「操作手段B操作有効状態」、操作手段Bが操作されたことを表す「操作手段B操作」、操作手段A(チャンスボタン136)の操作に応じて開始される「操作手段A関連演出」、操作手段Aが操作されると操作手段A関連演出が開始されることになる「操作手段A操作有効状態」、操作手段Aが操作されたことを表す「操作手段A操作」が示されている。「操作手段B関連演出」には、操作手段B自体が振動する演出も含まれるし、演出表示や効果音出力やLED発光等も含まれる。また、「操作手段A関連演出」には、操作手段A自体が振動する演出も含まれるし、演出表示や効果音出力やLED発光等も含まれる。ただし「操作手段A関連演出」は、操作手段A自体が振動することのみを示していてもよい。なお、「操作手段B操作有効状態」中には、操作手段Bを操作することを促す報知が行われる場合と、行われない場合があり、「操作手段A操作有効状態」中にも、操作手段Aを操作することを促す報知(操作促進報知)が行われる場合と、行われない場合がある。これらの報知が行われれば遊技者は操作有効状態であることを知ることができるが、行われない場合には、各操作手段は、いわゆる裏ボタンになる。
・・・
【0214】
図12(b)に示す例では、操作手段B操作有効状態中に、操作手段Bが操作され、操作手段Bが操作されると、操作手段B操作有効状態から操作手段B関連演出の実行に切り替わる。一方、操作手段Aに関しては、ここでも、「操作手段A操作有効状態」を経ずに、また操作手段Aも操作されずに、操作手段B関連演出の開始と同時に操作手段A関連演出が開始されている。この例でも、操作手段B関連演出の実行期間と操作手段A関連演出の実行期間は同じであり、例えば、操作手段B(透過部191)の振動と、操作手段A(チャンスボタン136)の振動が同時に開始され、同時に終了する。」

(キ)
「【0365】
図38(A)に示すパチンコ機100は、チャンスボタンが2つある。以下、これまで説明したチャンスボタンは、ボタンAあるいは第一のチャンスボタン136と称し、第一のチャンスボタン136とは別のチャンスボタンを、ボタンBあるいは第二のチャンスボタン137と称する。ボタンB(第二のチャンスボタン137)は、ボタンA(第一のチャンスボタン136)よりも、球発射ハンドル134から離れた位置に設けられている。すなわち、ボタンA(第一のチャンスボタン136)は、球発射ハンドル134から直線距離(最短距離)でLA離れた位置に設けられているのに対して、ボタンB(第二のチャンスボタン137)は、球発射ハンドル134から直線距離(最短距離)でLB離れた位置に設けられており、LAはLBよりも長い。さらに別の見方をすれば、ボタンB(第二のチャンスボタン137)は、ボタンA(第二のチャンスボタン136)よりも、パチンコ機100の左右方向の中央位置から離れた位置に設けられている。
・・・
【0367】
図37までに説明した各例において、操作手段Bの一例として説明した透過部191に代えて、図38(A)に示すボタンB(第二のチャンスボタン137)を適用することもできる。また、同じく、透過部191に代えて、図1に示す操作キーユニット181を適用することもできるが、図1に示す操作キーユニット181は振動機能を備えていないため、振動機能を付与する必要がある。」

(ク)
「【0376】
図39(c)では、リーチ演出が開始されている。ここでは、リーチ演出の開始に応じて、ボタン演出が開始される。図39(d)に示す、ボタンB(第二のチャンスボタン137)は、赤色に点灯し始めている。また、図39(d)に示す装飾図柄表示装置208には、赤色に点灯し始めたボタンB(第二のチャンスボタン137)を模したボタン画像137aと、ボタンB(第二のチャンスボタン137)の操作(押下)を促す促進表示としての、矢印の表示137bおよび「PUSH」という文字表示と、ボタンB(第二のチャンスボタン137)の操作有効期間に関する表示としての残期間メータ表示137cとの3つがワンセットになって表示されている。以下、これら3つの画像137a,137b,137cと「PUSH」という文字表示を総称して、操作促進報知のボタンB表示137Xと称する。」

(ケ)
「【0536】
前面枠扉106は、施錠機能付きで且つ開閉自在となるようにパチンコ機100の前面側となる本体104の前面に対しヒンジ部112を介して装着され、枠状に構成されることでその内側を開口部116とした扉部材である。遊技店の店員は、この前面枠扉106も開閉操作することが可能であり、前面枠扉106が開いたことを検出する前面枠扉センサも設けられている。なお、この前面枠扉106には、開口部116にガラス製又は樹脂製の透明板部材118が設けられ、前面側には、スピーカ120や枠ランプ122が取り付けられている。前面枠扉106の後面と遊技盤200の前面とで遊技領域124が設けられる空間を区画形成する。なお、本実施形態では、光源をLEDとするものもランプと称する。
【0537】
球貯留皿付扉108は、パチンコ機100の前面において本体104の下側に対して、施錠機能付きで且つ開閉自在となるように装着された扉部材である。この球貯留皿付扉108は、前面枠扉106を開放した状態で操作可能となる不図示の開放レバーを押すことによって開く。なお、球貯留皿付扉108が開いたことを検出する球貯留皿付扉センサを設けてもよい。球貯留皿付扉108は、複数の遊技球(以下、単に「球」と称する場合がある)が貯留可能で且つ発射装置110へと遊技球を案内させる通路が設けられている上皿126と、上皿126に貯留しきれない遊技球を貯留する下皿128と、遊技者の操作によって上皿126に貯留された遊技球を下皿128へと排出させる球抜ボタン130と、遊技者の操作によって下皿128に貯留された遊技球を遊技球収集容器(俗称、ドル箱)へと排出させる球排出レバー132と、遊技者の操作によって発射装置110へと案内された遊技球を遊技盤の遊技領域124へと打ち出す球発射ハンドル134と、遊技者の操作によって各種演出装置206(図66参照)の演出態様に変化を与える演出ボタン136と、演出ボタン136に内蔵され、その演出ボタン136を発光させるチャンスボタンランプ138と、遊技店に設置されたカードユニット(CRユニット)に対して球貸し指示を行う球貸操作ボタン140と、カードユニットに対して遊技者の残高の返却指示を行う返却操作ボタン142と、遊技者の残高やカードユニットの状態を表示する球貸表示部(不図示)と、を備える。また、図64に示すパチンコ機100には、下皿128が遊技球によって満タンになったことを検知する下皿満タン検知センサ(不図示)が設けられている。さらに、操作キーユニット137も備えている。」

イ 図面の図示内容
(コ)
「【0009】
【図1】 パチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。」

「【図1】



(サ)
「【0009】
【図64】本発明に適用可能な他のパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。」

「【図64】



ウ 認定事項
(シ)
【0016】に「球貯留皿付扉108は、・・・チャンスボタン136・・・を備える。」と記載され、
【0199】に「図1に示すパチンコ機100には、進退動作を実行可能なチャンスボタン136と、前後方向に回動可能な透過部191が設けられている。」と記載され、
【0205】に「ここでは、操作手段として、図10を用いて説明した、チャンスボタン136を操作手段Aとし、透過部191を操作手段Bとして説明する。」と記載され、
【0206】に「また、以降の説明で透過部191として説明してる操作手段は、後述する第二のチャンスボタン137等の他の操作手段に置き換えることができる。」と記載され、
【0365】に「図38(A)に示すパチンコ機100は、チャンスボタンが2つある。以下、これまで説明したチャンスボタンは、ボタンAあるいは第一のチャンスボタン136と称し、第一のチャンスボタン136とは別のチャンスボタンを、ボタンBあるいは第二のチャンスボタン137と称する。」と記載され、
【0367】に「図37までに説明した各例において、操作手段Bの一例として説明した透過部191に代えて、図38(A)に示すボタンB(第二のチャンスボタン137)を適用することもできる。」と記載されている。
また、【図1】には、球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置され、チャンスボタン136を備えた「突出部」が図示されている。
これらの記載事項から、引用文献2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出し、操作手段A(第一のチャンスボタン136)を備えた「突出部」を配置したパチンコ機100において、
操作手段A(第一のチャンスボタン136)と、操作手段B(第二のチャンスボタン137)とが備えられること。」

(ス)
【0537】に「図64に示すパチンコ機100には、・・・操作キーユニット137も備えている。」と記載され、
【図64】には、球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置された「1つの突出部」上に、チャンスボタン136と操作キーユニット137を備えたことが示されている。
これらの記載事項から、引用文献2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置され、チャンスボタン136と操作キーユニット137とを備えた、1つの突出部を配置したパチンコ機100。」

エ 引用発明
上記アの記載事項、上記イの図示内容、および、上記ウの認定事項(シ)から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「a 外部的構造として、外枠102と、本体104と、前面枠扉106と、球貯留皿付扉108と、発射装置110と、遊技盤200と、を備えるパチンコ機100において(【0012】)、
前面枠扉106は、パチンコ機100の前面側となる本体104の前面に装着された扉部材であり(【0013】)、
球貯留皿付扉108は、パチンコ機100の前面において本体104の下側に対して装着された扉部材であり(【0016】)、
遊技盤200には、遊技領域124が区画形成され(【0024】)、
遊技領域124の略中央には、演出装置206が配設され、この演出装置206には、略中央に装飾図柄表示装置208が配設され(【0025】)、
b 前面枠扉106には、開口部に透明板部材118が設けられ(【0013】)、
前面枠扉106の後面と遊技盤200の前面とで遊技領域124が設けられる空間を区画形成し(【0536】)、
c 球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置され、操作手段A(第一のチャンスボタン136)を備えた突出部(認定事項(シ))と、
d 操作手段A(第一のチャンスボタン136)と、操作手段B(第二のチャンスボタン137)とが備えられ(認定事項(シ))、
e 遊技の中枢部分を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号に応じて主に演出の制御を行う第1副制御部400とを備え(【0046】)、
f 操作手段A(第一のチャンスボタン136)は、前記突出部に備えられ(認定事項(シ))、
g 第1副制御部400は(【0046】)、
g1、g3 操作手段A(第一のチャンスボタン136)の操作に応じて、操作手段A(第一のチャンスボタン136)自体が振動する演出が含まれる「操作手段A関連演出」を開始し(【0212】)、
g2 装飾図柄表示装置208に、リーチ演出の開始に応じて、操作手段B(第二のチャンスボタン137)を模したボタン画像137aと、操作手段B(第二のチャンスボタン137)の操作(押下)を促す促進表示としての、矢印の表示137bおよび「PUSH」という文字表示と、操作手段B(第二のチャンスボタン137)の操作有効期間に関する表示としての残期間メータ表示137cとの3つをワンセットになって表示し(認定事項(シ)、【0376】)、
g4 操作手段Bを操作することを促す報知が行われる、操作手段B操作有効状態中に、操作手段Bが操作されると、操作手段B操作有効状態から操作手段B関連演出の実行に切り替え、操作手段B関連演出の開始と同時に操作手段A関連演出を開始する(【0212】、【0214】)
h パチンコ機100(【0011】)。」

(3)周知例、周知技術
ア 特開2019−92627号公報
【0012】、【0013】及び【図1】には、「遊技盤取付枠51に支持される前枠53に、透明板55が取り付けられ、前枠53前面の下部中央であって透明板55の外側の位置には、前方に向けて大きく突出した下部装飾体61が設けられ、下部装飾体61の上面には、第1入力装置63及び十字キーが設けられたパチンコ遊技機1。」が記載されている。

「【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る遊技機の斜視図である。」

「【図1】



イ 特開2018−196519号公報
【0008】、【0009】、【0012】、【0013】、【図1】には、「本体枠6の前側にガラス扉7が配置され、ガラス扉7に備えられた扉ベース22には、ガラス窓24の窓孔24aが形成され、また、扉ベース22の下部前側であって、ガラス24の外側に配置された上皿30及び下皿31には、これらを前側から略覆う下装飾カバー33が装着され、下装飾カバー33には、その上部側に演出ボタン34及び十字操作手段35が設けられているパチンコ機。」が記載されている。

「【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るパチンコ機の全体正面図である。」

「【図1】



「【0007】
【図2】同パチンコ機の分解斜視図である。」

「【図2】



ウ 特開2017−185383号公報
【0011】、【0012】、【0014】、【図1】には、「前面枠扉106が、本体104の前面に対し装着され、前面枠扉106の開口部116に透明板部材118が設けられ、開口部116よりも下方の部位に、チャンスボタン136、チャンスボタンとして機能する設定操作部137が備えられているパチンコ機100。」が記載されている。

「【0008】
【図1】本発明の一実施の形態によるパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。」

「【図1】



エ 周知技術1
上記ア〜ウに示したように、遊技機の技術分野において、本体枠の前面に取り付けられる前扉のうち、透明板よりも外側に1つの操作構造部を設け、該操作構造部に2つの操作手段を設けることは、本願出願前に周知の技術事項(以下「周知の技術事項1」という。)である。

オ 原査定で提示された特開2018−192361号公報
【0009】、【0234】、【0237】、【0249】には、「通常ボタン40(半球型ボタンユニット200)が振動機構により振動する際に振動する第2モータ331で振動音が発生するパチンコ遊技機PY1。」が記載されている。

カ 原査定で提示された「"漆黒の衝撃 強烈なボタンバイブ演出が最高!",俺の慶次 やっぱり花の慶次が一番すきっ!,[online],2018年9月19日,[検索日:2021年2月12日],URL,https://keijifan.net/hananokeiji/0919/」
「真・花の慶次2と真・花の慶次2漆黒の衝撃で好きな演出の1つが、ボタンバイブ演出だ。」
「真・花の慶次2と漆黒の衝撃は違う。ボタンに触る前にボタンが震えていることがわかるのだ!」、
「ブルブルブル〜!と振動している音が聞こえる!そして台全体が震えるくらい強烈な振動なのだ。」、
「ボタンに触らなくても振動していることがわかるので、従来の他機種とは違った演出を採用できる。それが、先読み予告である。」と記載されている。

キ 周知技術2
上記オ〜カに示したように、遊技機の技術分野において、操作ボタンの震動音が聞こえる程度に、操作ボタンを震動させることは、本願出願前に周知の技術事項(以下「周知の技術事項2」という。)である。

(4)対比
本件補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
(a)
引用発明の構成aの「装飾図柄表示装置208」は、本件補正発明の構成Aの「表示部」に相当する。
したがって、引用発明の構成aは、本件補正発明の構成Aに相当する。

(b)
引用発明の構成bの「前面枠扉106」は、本件補正発明の構成Bの「前扉」に相当する。
そして、引用発明において、「前面枠扉106の後面と遊技盤200の前面とで遊技領域124が設けられる空間」が「区画形成」されていることから、「前面枠扉106」の「開口部」に設けられた「透明板部材118」から、「遊技領域124」を視認可能であるといえる。
そうすると、引用発明の構成bの「開口部に」「設けられ」た「透明板部材118」は、本件補正発明の構成Bの「遊技球が流下可能な遊技領域を視認可能にする透明板」に相当する。
したがって、引用発明の構成bは、本件補正発明の構成Bに相当する。

(c)
引用発明の「突出部」は、「球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置され、操作手段A(第一のチャンスボタン136)を備え」ているから、本件補正発明の「操作構造部」に相当する。
そして、「引用発明の構成cの「球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置」することは、本件補正発明の構成Cの「透明板よりも外側に配置されている」ことに相当する。
そうすると、引用発明の構成cの「球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置され、操作手段A(第一のチャンスボタン136)を備えた突出部」と、本件補正発明の構成Cの「前扉のうち、透明板よりも外側に配置されている1つの操作構造部」とは、「透明板よりも外側に配置されている」「操作構造部」である点で共通する。

(d)
引用発明の構成dの「操作手段A(第一のチャンスボタン136)」、「操作手段B(第二のチャンスボタン137)」は、それぞれ、本件補正発明の構成Dの「第2操作手段」、「第1操作手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成dは、本件補正発明の構成Dに相当する。

(e)
引用発明の構成eの「演出の制御を行う第1副制御部400」は、本件補正発明の構成Eの「所定の演出を実行可能な演出実行手段」に相当する。

(f)
引用発明の構成fの「操作手段A(第一のチャンスボタン136)」が備えられた「突出部」と、本件補正発明の構成Fの「前記操作構造部には、前記第1操作部および第2操作手段の両方が配置されて」いることとは、上記(c)、(d)より、「前記操作構造部には」、「第2操作手段が配置されて」いることで共通する。

(g、g1)
引用発明の構成g及び構成g1、g3の「操作手段A(第一のチャンスボタン136)自体」を「振動」させる「第1副制御部400」は、本件補正発明の構成G及び構成G1の「振動態様で第2操作手段を振動可能であ」る「演出実行手段」に相当する。
そうすると、引用発明の構成g及び構成g1、g3の「操作手段A(第一のチャンスボタン136)自体が振動」する制御を行う「第1副制御部400」と、本件補正発明の構成G及び構成G1の「振動音を伴う振動態様で前記第2操作手段を振動可能であ」る「演出実行手段」とは、「振動態様で第2操作手段を振動可能であ」る「演出実行手段」であることで共通する。

(g、g2)
上記(a)より、引用発明の構成g2の「装飾図柄表示装置208」は、本件補正発明の構成G2の「表示部」に相当する。
そして、上記(d)より、引用発明の「操作手段B(第二のチャンスボタン137)」は、本件補正発明の「第1操作手段」に相当することから、引用発明の構成g2の「操作手段B(第二のチャンスボタン137)の操作(押下)を促す促進表示としての、矢印の表示137bおよび「PUSH」という文字表示」は、本件補正発明の構成G2の「第1操作手段の操作を促すための操作促進画像」に相当する。
したがって、引用発明の構成g及び構成g2の「装飾図柄表示装置208に、」「操作手段B(第二のチャンスボタン137)の操作(押下)を促す促進表示としての、矢印の表示137bおよび「PUSH」という文字表示」を「表示」する「第1副制御部400」は、本件補正発明の構成G及び構成G2の「表示部に第1操作手段の操作を促すための操作促進画像を表示可能であ」る「演出実行手段」に相当する。
よって、引用発明の構成g及び構成g2は、本件補正発明の構成G及び構成G2に相当する。

(g、g3)
上記(d)より、引用発明の「操作手段A(第一のチャンスボタン136)」は、本件補正発明の「第2操作手段」に相当することから、引用発明の構成g1、g3の「操作手段A(第一のチャンスボタン136)の操作に応じて、操作手段A(第一のチャンスボタン136)自体が振動する演出」を行うことは、本件補正発明の構成G3の「第2操作手段への遊技者の操作によって、当該第2操作手段を振動させる」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成g及び構成g1、g3の「操作手段A(第一のチャンスボタン136)の操作に応じて、操作手段A(第一のチャンスボタン136)自体が振動する演出」を行う「第1副制御部400」は、本件補正発明の構成G及び構成G3の「第2操作手段への遊技者の操作によって、当該第2操作手段を振動させるときがあ」る「演出実行手段」に相当する。

(g、g4)
上記(g、g2)より、引用発明の「操作手段B(第二のチャンスボタン137)の操作(押下)を促す促進表示」は、本件補正発明の「第1操作手段の操作を促すための操作促進画像」に相当することから、引用発明の構成g4の「操作手段Bを操作することを促す報知が行われる、操作手段B操作有効状態中に、操作手段Bが操作される」ことは、本件補正発明の構成G4の「操作促進画像の表示中における第1操作手段への遊技者の操作」に相当する。
そして、引用発明における「操作手段A関連演出」には、構成g1、g3によると、「操作手段A(第一のチャンスボタン136)自体が振動する演出」が含まれることから、引用発明の構成g及び構成g4における「操作手段A関連演出を開始する」「第1副制御部400」は、本件補正発明の構成G及び構成G4における「振動態様で第2操作手段を振動させるときがある」「演出実行手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成g及び構成g4は、本件補正発明の構成G及び構成G4の「前記操作促進画像の表示中における前記第1操作手段への遊技者の操作によっても、振動音を伴う振動態様で前記第2操作手段を振動させるときがある」「演出実行手段」とは、「前記操作促進画像の表示中における前記第1操作手段への遊技者の操作によっても」、「振動態様で前記第2操作手段を振動させるときがある」「演出実行手段」であることで共通する。

(h)
引用発明の格子柄hの「パチンコ機100」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。

(i)
上記(a)〜(h)によれば、本件補正発明と引用発明は、
[一致点]
「A 表示部と、
B 前扉に配置され、遊技球が流下可能な遊技領域を視認可能にする透明板と、
C’ 前記透明板よりも外側に配置されている操作構造部と、
D 遊技者が操作可能な第1操作手段および第2操作手段と、
E 所定の演出を実行可能な演出実行手段と、を備え、
F’ 前記操作構造部には、前記第2操作手段が配置されており、
G 前記演出実行手段は、
G1’ 振動態様で前記第2操作手段を振動可能であり、
G2 前記表示部に前記第1操作手段の操作を促すための操作促進画像を表示可能であり、
G3 前記第2操作手段への遊技者の操作によって、当該第2操作手段を振動させるときがあり、
G4’ 前記操作促進画像の表示中における前記第1操作手段への遊技者の操作によっても、振動態様で前記第2操作手段を振動させるときがある
H 遊技機。」
の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1](構成C)
「透明板よりも外側に配置されている」「操作構造部」に関して、本件補正発明は、「1つの操作構造部」として「前扉」に配置されているのに対して、引用発明は、「突出部」が、「透明板部材118が設けられ」た「前面枠扉106」とは、別体である「球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置され、操作手段A(第一のチャンスボタン136)を備えた突出部」である点。

「相違点2」(構成F)
操作部の配置に関して、本件補正発明は、「第1操作手段および第2操作手段の両方」が「操作構造部」に配置されているのに対して、引用発明は、「操作手段A(第一のチャンスボタン136)」は、「突出部」(操作構造部)に備えられるが、「操作手段B(第二のチャンスボタン137)」が、遊技機のどの箇所に備えられているのか不明である点。

[相違点3](構成G1、G4)
「第2操作手段」の「振動態様」に関して、本件補正発明は、「振動音を伴う振動態様」であるのに対して、引用発明は、振動態様に振動音を伴うか否か不明である点。

(5)当審判合議体の判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1、2について
上記(3)のア〜エに「周知の技術事項1」として示したように、遊技機の技術分野において、本体枠の前面に取り付けられる前扉のうち、透明板よりも外側に1つの操作構造部を設け、該操作構造部に2つの操作手段を設けることは、本願出願前に周知の技術事項である。
そして、引用発明は、「操作手段に特徴を持った遊技台を提供する」ことを目的とするものである、
一方、上記周知の技術事項も、複数の操作手段を有するため、上記「操作手段に特徴を持った遊技台を提供する」という自明の課題を内在するものである。
したがって、引用発明の「突出部」に上記周知の技術事項1を適用して、透明板部材118が設けられた「前面枠扉106」に、操作手段A(第一のチャンスボタン136)及び操作手段B(第二のチャンスボタン137)とが備えられた1つの突出部を一体的に設け、上記相違点1、2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2について
相違点2について、相違点1と併せて検討するのではなく、単独でも検討する。
引用文献2には、認定事項(ス)に示すように、「球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置され、チャンスボタン136と操作キーユニット137とを備えた、1つの突出部を配置したパチンコ機100。」について記載されており、「1つの突出部」は本願補正発明の「1つの操作構造部」に相当する。
そうすると、引用発明において、認定事項(ス)に倣って、「操作手段A(第一のチャンスボタン136)」と同様に、「操作手段B(第二のチャンスボタン137)」を「球貯留皿付扉108に」「配置」した「突出部」(操作構造部)上に設け、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。
さらに、引用文献2の【0365】には、「図38(A)に示すパチンコ機100は、チャンスボタンが2つある。以下、これまで説明したチャンスボタンは、ボタンAあるいは第一のチャンスボタン136と称し、第一のチャンスボタン136とは別のチャンスボタンを、ボタンBあるいは第二のチャンスボタン137と称する。」と記載されていることから、引用発明において、チャンスボタンを2つにする場合、2つ目のチャンスボタンである「第二のチャンスボタン137」を、「第一のチャンスボタン136」と同様に「球貯留皿付扉108」に「配置」した1つの「突出部」(操作構造部)に備えることは、当業者が必要に応じてなし得たものである。

ウ 相違点3について
遊技機の技術分野において、操作ボタンの振動音が聞こえる程度に、操作ボタンを震動させることは、上記(3)のオ〜キに示されているように、本願出願前に周知の技術事項(以下「周知の技術事項2」という。)である。
したがって、引用発明のそれ「自体が振動する」「操作手段A(第一のチャンスボタン136)」に上記周知の技術事項2を適用して、「操作手段A(第一のチャンスボタン136)」が振動する際に音も発生させることは当業者が必要に応じてなし得たものである。

エ 請求人の主張について
請求人は、令和3年6月8日付けの審判請求書において、次の点について主張をする。「引用文献2に記載の遊技機には、本願の新請求項1の第2操作手段に相当するもの、並びに、1つの操作構造部に相当するものがありません。さらに、この引用文献2に記載の遊技機は、遊技者が操作可能な透過部191およびチャンスボタン136がいずれも、前面枠扉106のうち前面枠扉106の透過部191よりも外側に配置された1つの構造物(操作構造部)にある構成ではありません。したがって、このような引用文献2に基づいて、表示部と、透明板と、前扉のうち透明板よりも外側に配置されている1つの操作構造部と、第1操作手段および第2操作手段とを備え、操作構造部には第1操作手段および第2操作手段の両方が配置された、本願の新請求項1に係る遊技機について、当業者であっても容易に想到できません。また、本願の新請求項1に係る遊技機には、引用文献2に記載の遊技機から導出し難い顕著な効果があります。」((4)本願発明と引用発明との対比)

そこで、請求人の上記主張について検討する。
上記ア、イにおいて検討したように、引用発明において、「操作手段A(第一のチャンスボタン136)」と同様に、「操作手段B(第二のチャンスボタン137)」を「球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置され」た1つの「突出部」(操作構造部)に設けることは、当業者が容易になし得たものである。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

オ 小括
本件補正発明により奏される効果は、当業者が、引用発明、引用文献2に記載された技術事項、及び、周知の技術事項1〜2から予測し得た効果の範囲内のものであって、格別なものではない。
よって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項、及び、周知の技術事項1〜2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(6)まとめ
上記(1)〜(5)において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年12月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
A 表示部と、
C2 前扉に配置された1つの構造部と、
D 遊技者が操作可能な第1操作手段および第2操作手段と、
E 所定の演出を実行可能な演出実行手段と、を備え、
F2 前記構造部には、前記第1操作手段および前記第2操作手段の両方が配置されており、
G 前記演出実行手段は、
G1 振動音を伴う振動態様で前記第2操作手段を振動可能であり、
G2 前記表示部に前記第1操作手段の操作を促すための操作促進画像を表示可能であり、
G3 前記第2操作手段への遊技者の操作によって、当該第2操作手段を振動させるときがあり、
G4 前記操作促進画像の表示中における前記第1操作手段への遊技者の操作によっても、振動音を伴う振動態様で前記第2操作手段を振動させるときがある
H ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
理由3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1〜4
・引用文献等2〜4
<引用文献等一覧>
引用文献2.特開2017−196125号公報
引用文献3. "漆黒の衝撃 強烈なボタンバイブ演出が最高!",俺の慶次 やっぱり花の慶次が一番すきっ! [online],2018年9月19日,[検索日:2021年2月12日],URL,https://keijifan.net/hananokeiji/0919/(新たに引用/周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2018−192361号公報(新たに引用/周知技術を示す文献)

3 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2017−196125号公報)の記載事項及び引用発明の認定については、前記「第2 2 2−2(2)引用発明」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本件補正発明において、補正前の請求項1の構成Bに「前扉に配置され、遊技球が流下可能な遊技領域を視認可能にする透明板」とあったものを、その構成を削除し、
同じく、前記「構造部」に関して、「前記前扉のうち、前記透明板よりも外側に配置されている1つの操作構造部」とあったものを「前扉に配置された1つの構造部」とその限定を省くとともに、「前記前扉のうち、前記透明板よりも外側に配置されている1つの操作構造部と」とあったものを、「前記構造部には、前記第1操作手段および前記第2操作手段の両方が配置されており」とその限定を省くことを含むものである。
そこで、本願発明と引用発明の構成とを対比する。
(c2)
引用発明の構成cと本願発明の構成C2とを対比する。
引用発明の「球貯留皿付扉108」は、構成aによると、「扉部材」に相当する。
そして、引用発明の「突出部」と本願発明の「1つの構造部」とは、前記「第2 [理由]2 2−2(4)(c)」によると、「構造物」である点で共通する。
そうすると、引用発明の構成cの「球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置され、操作手段A(第一のチャンスボタン136)を備えた突出部」と、本願発明の「前扉に配置された1つの構造部」とは、「前扉に配置された構造部」である点で共通する。
(f2)
引用発明の構成f2と本願発明の構成F2とを対比する。
前記「第2 [理由]2 2−2(4)(c)」によると、引用発明の構成fの「操作手段A(第一のチャンスボタン136)は、前記突出部に備えられ」ることと、本願発明の構成F2の「第2操作手段」「が配置され」た「構造部」とは、「第2操作手段が配置された操作構造部」である点で共通する。
そして、上記(c2)、(f2)と、前記「第2 [理由]2 2−2(4)よれば、本願発明と引用発明は、

[一致点]
「【請求項1】
A 表示部と、
C2’ 前扉に配置された構造部と、
D 遊技者が操作可能な第1操作手段および第2操作手段と、
E 所定の演出を実行可能な演出実行手段と、を備え、
F2’ 前記構造部には、前記第2操作手段が配置されており、
G 前記演出実行手段は、
G1’ 振動態様で前記第2操作手段を振動可能であり、
G2 前記表示部に前記第1操作手段の操作を促すための操作促進画像を表示可能であり、
G3 前記第2操作手段への遊技者の操作によって、当該第2操作手段を振動させるときがあり、
G4’ 前記操作促進画像の表示中における前記第1操作手段への遊技者の操作によっても、振動態様で前記第2操作手段を振動させるときがある
H ことを特徴とする遊技機。」
の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1’](構成C2)
「前扉に配置された構造部」に関して、本願発明は、「1つの構造部」であるのに対して、引用発明は、「突出部」が、「1つの構造部」であるか否か明らかでない点。

「相違点2’」(構成F2)
操作手段の配置に関して、本願発明は、「第1操作手段および第2操作手段の両方」が「構造部」に配置されているのに対して、引用発明は、「操作手段A(第一のチャンスボタン136)」は、「突出部」に備えられるが、「操作手段B(第二のチャンスボタン137)」が、遊技機のどの箇所に備えられているのか不明である点。

[相違点3](構成G1、G4)
「第2操作手段」の「振動態様」に関して、本願発明は、「振動音を伴う振動態様」であるのに対して、引用発明は、振動態様に振動音を伴うか否か不明である点。

次に、上記相違点1’、2’、3について検討する。
(1)相違点1’、2’について
上記相違点1’、2’は、構造物に関する構成であるのでまとめて検討する。
引用文献2の【0365】には、「図38(A)に示すパチンコ機100は、チャンスボタンが2つある。以下、これまで説明したチャンスボタンは、ボタンAあるいは第一のチャンスボタン136と称し、第一のチャンスボタン136とは別のチャンスボタンを、ボタンBあるいは第二のチャンスボタン137と称する。」と記載されている。
そして、引用文献2の【図64】は、「本発明に適用可能な他のパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図であ」り(【0008】)、操作手段として、チャンスボタン136と操作キーユニット137の2つの操作手段を備えることが図示されており、【0365】に説明される【図38】とは、2つの操作手段を有することで共通する。
ここで、「図1に示すパチンコ機100とは異なるパチンコ機の例を示す図である」(【0008】)【図38】を示す。


【図38】(A)には、「第一のチャンスボタン136」と「第二のチャンスボタン137」の2つの操作手段がパチンコ機100に備えられることが示されているが、2つの操作手段の備えられる箇所について詳細に示すものではない。
ここで、2つの操作手段の備えられる箇所の具体例について、引用文献2には、【図64】に例として示されている。
そうすると、【図38】(A)に示される「第一のチャンスボタン136」と「第二のチャンスボタン137」は、【図64】の例と同様に、「1つの突出部」に備えられているとみるのが妥当である。
また、上記第2(5)イにおいて既に検討した内容を考慮すると、「1つの突出部」は本願発明の「1つの構造部」に相当する。
そして、引用文献2の認定事項(ス)も考慮にいれると、引用文献2には、「球貯留皿付扉108において、透明板部材118下端より下方で手前側へ突出するように配置され、チャンスボタン136とチャンスボタン137とを備えた、1つの突出部を配置したパチンコ機100。」について記載されているものと認められる。
したがって、引用発明において、「突出部」を「1つの突出部」(1つの構造部)とし、「操作手段A(第一のチャンスボタン136)」と同様に、「操作手段B(第二のチャンスボタン137)」を「球貯留皿付扉108に」「配置」した「1つの突出部」上に設け、上記相違点1’、2’に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

(2)相違点3について
相違点3は、前記「第2 [理由]2 2−2(4)」に示した[相違点3]と同じであるので、前記「第2 [理由]2 2−2(5)ウ」において検討したとおり、引用発明のそれ「自体が振動する」「操作手段A(第一のチャンスボタン136)」に上記周知の技術事項2を適用し、振動する際に音も発生させることにより、当業者が必要に応じてなし得たものである。

(3)小括
上記(1)、(2)より、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項、及び、周知の技術事項2に基づいて当業者が容易になし得たものである。
また、本願発明により奏される効果は、当業者が、引用発明、引用文献2に記載された技術事項、及び、周知の技術事項2から予測し得た効果の範囲内のものであって、格別なものではない。

5 むすび
上記1〜4より、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。
よって、本願は拒絶すべきものである。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-12-21 
結審通知日 2022-01-11 
審決日 2022-01-25 
出願番号 P2020-058599
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 太田 恒明
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人コスモス国際特許商標事務所  

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