• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1383114
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-16 
確定日 2022-03-02 
事件の表示 特願2019−169314「振動計を用いて燃料制御システム内の粘度を制御する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月 6日出願公開、特開2020− 20804〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は2015年(平成27年)6月8日を国際出願日とする特願2017−563533号の一部を、令和元年9月18日に新たな特許出願とした出願であって、令和元年9月19日に手続補正書が提出され、令和2年9月7日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月7日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年3月4日付けで拒絶査定がなされ、同年6月16日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1〜13に係る発明は、令和2年12月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜13に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。ここで、各構成単位冒頭の「6A」等は当審にて付した分説記号であり、以下当該構成単位について「構成6A」などという。

「【請求項6】
6A 燃料制御システム(400)内の粘度を制御するコリオリ流量計(5)であって、
6B エンジン(439)への燃料ライン(425)を介して、燃料源(410)に流体が行き来可能に結合されたメータアセンブリ(10)であって、燃料ライン(425)は燃料を冷却する距離を有するメータアセンブリ(10)と、
6C 前記メータアセンブリ(10)に通信可能に結合されたメータ電子機器(20)とを備え、
6D 前記メータ電子機器(20)はメータアセンブリ(10)を用いて燃料の密度を測定し、
6E 測定された密度及び基準値に基づいて信号を生成し、
6F 燃料が燃料ラインを通ってエンジンに流れる際に、前記基準値によって燃料の冷却を補償し、
6G コリオリ流量計(5)に提供される燃料の温度を制御するように構成された温度制御ユニット(420)に信号を提供するように構成されている、
6H コリオリ流量計(5)。」

第3 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の原出願日(以下単に「原出願日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるか、または該引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号、または同条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特表平11−500535号公報

第4 引用文献の記載事項及び引用発明
引用文献1には、図面と共に以下の記載がある。

1 明細書の記載事項
明細書各記載範囲の段落ごとの記載事項は次のとおりである。下線は、特に引用した箇所を示すべく当審にて付与したものである。引用箇所を示す等のために、各段落に対し下記項番を用い「記載事項1(1)ア」などと呼ぶ場合がある。

(1)6頁下から5行目〜9頁2行までの記載事項

ア 「 改善された粘度計装置を必要とする主な例は、製紙産業に存在する。製紙プラントは、一般的に、廃産物を「黒液」の形態のボイラ燃料としてリサイクルする。これらの及び他の黒液燃料は、国内の全燃料消費量の中の統計的に大きな割合を示す。黒液は、パルプ、リグニン、硫酸及び水を一般的に含む流体又はスラリーである。そのような燃料混合物は、通常、約90℃から120℃までの範囲の温度まで加熱される。この温度は、黒液を燃料として使用することのできる許容レベルまで粘度を減少させる。小さな微粒子が、存在する水と共にコロイド溶液を形成することができる。大きな微粒子は、液体をベースにしたスラリーを形成することができる。上記混合物は、腐食性を有しており、汚染された表面から除去することが困難である。

イ 「 黒液に使用されるように設計された通常のボイラは燃料噴霧器又はスプレー装置を備えており、そのような燃料噴霧器又はスプレー装置は、ボイラの最大効率を得るための最適な粘度範囲に入る粘度を有する燃料を受け入れるように設計されている。黒液燃料の個々のストックの含水率が変動して、上記最適粘度範囲に入らない大きな燃料粘度の偏差を生じさせることがある。そのような偏差が生ずる理由は、黒液燃料のストックは、通常、濃縮されていて大部分の水が除かれているが、そのような濃縮の度合いは、優勢なプロセス条件に応じて変動するからである。」

ウ 「 粘度計を用いて黒液燃料を測定することは、従来は非実用的であった。すなわち、燃料のハンドサンプルに対して行う測定は、ボイラに導かれる温度及び流動条件を再現することのできない実験室条件で測定されるため、所望の結果を生ずることができなかった。また、測定用のハンドサンプルを得ることも非実用的であって、その理由は、一般的には、一日を通してプロセス変化に影響を与えるに十分なほどに頻繁にサンプルを得ることができないからである。手操作によるサンプリング、及び、実験室における検査は、長い時間遅延を生じ、そのような長い時間遅延は、急速に変化するプロセス条件に直面した場合には、実験室の結果を適時応用することを非実用的又は不可能にする。また、黒液は有害物質であるので、閉鎖型のプロセスにすることが望ましい。

エ 「 種々の粘度計が商業的に入手可能である。粘度計は、伝統的に、ボール型粘度計を含んでおり、そのようなボール型粘度計は、金属ボールが液体柱を通って落下するのに必要とされる時間の関数として、粘度を決定する。他の粘度計は、管状部材の中の回転体が受ける流体の剪断抵抗の関数として、粘度を決定する。しかしながら、これらの装置は、プラントの配管系の中でインライン粘度計として使用するには望ましくない。例えば、インライン粘度計は、汚損が生ずる可能性があるので、黒液系において疑わしい結果を生ずる。インライン粘度計は、極めて頻繁にその設置箇所から取り外し、流動実験室で洗浄及び校正を行う必要がある。」

オ 「 商業的に入手可能なコリオリ質量流量計を同時的な差圧測定装置と組み合わせることによって、粘度測定を行うことができる。コリオリ質量流量計及び圧力トランスジューサは、汚れた流体によって汚損されるべき可動部品を有しておらず、大きく変化する流体の流動条件の下で、高い精度で作動する。そのような計器は、依然として、適時の校正及び洗浄を必要とする。従って、コリオリ流量計を設けると、計器をインラインの役務から取り除いて流動実験室で校正を行うという必要性を排除できない。」

カ 「 コリオリ質量流量計を用いて導管を通って流れる材料の質量流量及び他の情報を測定することは公知である。そのような流量計は、米国特許第4,109,524号(発行日:1978年8月29日)、米国特許第4,491,025号(発行日:1985年1月1日)、及び、米国再発行特許第31,450号(1982年2月11日)に開示されており、これら米国特許は総て、J.E.Smithetal.に与えられている。これらの流量計は、直線的な又は湾曲した1又はそれ以上の流管を備えている。コリオリ質量流量計の各々の流管の形態は、単純曲げ、ねじり、又は、結合型とすることのできる一組の固有振動モードを有している。各流管は、上記固有モードの中のいずれか一つのモードで共振して振動するように駆動される。流量計の入口側に接続された導管から流量計に入る材料の流れが、単数又は複数の流管に導入され、出口側を通って流量計から出る。計器の電子回路を用いて、上記計器の振動信号から流れの情報を導出する。」

キ 「 発明の概要
本発明は、配管の流通系に使用される低メンテナンス型のインライン粘度計検査校正装置を提供することによって、上に概説した問題を解消する。好ましい装置は、コリオリ粘度計を差圧測定装置と組み合わせて使用する。これらのトランスジューサはいずれも、汚れた流体又は材料によって汚損される可動部品を備えていない。」

(2)10頁下から2行目〜12頁下から3行目

ア 「好ましい実施例の詳細な説明
主フローライン202は、第1の点と第2の点との間で材料を搬送するために使用される任意のラインとすることができる。ライン202は、燃料リザーバ211から始まって通常のボイラ212で終わる燃料ラインであるのが好ましい。」

イ 「流れは、重力、又は、通常の燃料ポンプ216の動力支援を受けて、主フローライン202を通って失印214の方向に進行する。中央弁又はチョーク218が、ライン202の中に減圧部を形成している。加熱コイル219が、弁218の上流側の位置でライン202を包囲している。そうではなく、ヒータ219は、流通系の中の任意の箇所に設けることができる。」

ウ 「分流ライン204が、上流側の位置220と下流側の位置222とにおいて、主フローライン202と交差している。分流ライン204は、位置220及び222において主フローライン202と交差して、弁又はチョーク218(主フローライン202の減圧部)を点220、222の間に位置させている。分流ライン204は、主フローライン202の直径よりも小さい直径を有するのが好ましいが、ライン204は、総ての流動条件においてライン204の中に層流を生じさせるような寸法の内径を有するのが好ましい。従って、ライン204に関する適正な管径の決定は、特定の用途に応じて設計上の選択として変動することになる。通常の流動様式の計算は、一般的に、レイノルズ数の値の付与を含み、当業者には十分に理解することができる。ライン204は、主フローライン202の中の流れの一部だけを分流するのが好ましいが、弁218を閉じることによって、ライン202の流れを総て分流することができる。」

エ 「分流ライン204は、上流側の湾曲したフランジ部分226に繋がっている上流側の弁224を含んでいる。フランジ部分226は、対応するフランジ要素227にボルト止めされており、該フランジ要素は、粘度計又は計器アセンブリ10の一部を構成している。」

オ 「アセンブリ10は、分流ライン204から単一の部品として取り外すことができるので、図2において破線で囲まれている。アセンブリ10は、コリオリ質量流量計12を備えており、このコリオリ質量流量計は、例えば、MicroMotion(コロラド州ボールダー)から商業的に入手可能なModelCMFO25質量流量計とすることができる。質量流量計12は、通信導線18を介して計器の電子回路14に接続されている。上記ModelCMFO25質量流量計と共に使用される計器の電子回路の特に好ましい形態は、遠隔型の流量送信器であるModelRFT9739であり、これもMicroMotion(コロラド州ボールダー)から商業的に入手可能である。計器の電子回路14は、導線20を介して、差圧トランスジューサ又は発信器16と交信する。差圧測定トランスジューサ16として使用するのに適した装置は、Model3051CDであり、これは、Rosemount(ミネソタ州ミネアポリス)から商業的に入手可能である。トランスジューサ16は、導線26、28を介して、一対の通常の圧力トランスジューサ22、24に接続されている。上にモデル番号をもって挙げた好ましい構成要素に代えて、商業的に入手可能な他の種々の装置を用いることができる。」

カ 「計器の電子回路14は、質量流量計12及び差圧トランスジューサ14から測定信号を受信するように作動する。計器の電子回路14は、通常のコリオリ処理技術を利用して、上記信号の材料流動情報(例えば、質量流量、密度、温度及び粘度)としての理解を容易にする。計器の電子回路14は、下の式(1)のハーゲン−ポアズイユの毛細管の関係に従って、質量流量情報から粘度を計算するのが好ましい。
(1) μ=KPρ/m
上式において、μは、絶対粘度であり、Kは、毛細管に関する比例定数であり、Pは、毛細管の前後の差圧であり、ρは、密度であり、mは、材料の質量流量である。上記ハーゲン−ポアズイユの関係は、ニュートン流体(又は、近ニュートン流体)及び層流に関して有効である。従って、上記条件が粘度計12を通して存在するのが好ましい。この手法は、別のレオロジーに相当する他の固有方程式を解くことによって、非ニュートン流体に拡張することができる。」
(当審註:冒頭「計器の電子回路14は、質量流量計12及び差圧トランスジューサ14から」の「差圧トランスジューサ14」は「差圧トランスジューサ16」の明らかな誤記と認める。以下、当該記載について「差圧トランスジューサ16」と読み替える。)

キ 「アセンブリ10は、下流側のフランジ要素228を備えており、このフランジ要素は、下流側の弁234に繋がっている下流側の湾曲した対応するフランジ部分232にボルト止めされている。」

(3)14頁9行〜15頁18行の記載事項

ア 「 プロセス制御装置210は、通常のプラント制御装置であるのが好ましい。代表的な装置は、商業的に注文することにより、HoneyWell、Allen−Bradley、及び、Rosemountの如き国内のメーカーから購入することができる。制御装置の特定の還択は、本発明にとって重要ではなく、通常販売されている制御装置、あるいは、通常のプログラム可能な論理制御装置等を含むことができる。典型的な制御装置は、Rosemount(ミネソタ州ミネアポリス)から入手することのできるRS3装置である。出力導線270、272が、計器の電子回路14から制御装置210へ情報を伝送する。この情報は、粘度及び温度のデータを含むのが好ましい。他の導線を追加して、粘度計アセンブリ10を通過している流体又は材料に関する質量流量、密度又は他の環境的な情報を伝送することができる。」

イ 「 導線276、278、280、282が、制御装置210を対応する電動弁(又は空圧弁)224、238、256、234にそれぞれ接続して、これら弁の遠隔制御を行えるようになっている。」

ウ 「 図1は、装置200の作動を説明する概略的なプロセス制御図である。図1は図2の参照符号に従って説明されるが、図1を任意の流量制御装置に使用できるようにすることができることは理解されよう。図1のプロセス制御ステップは、制御装置210にプログラムされるのが好ましい。」

エ 「 ステップP110乃至P114は、粘度計12がアセンブリ10を通る主フローライン202から分流された材料に対して測定を行っている粘度計の作動の通常の測定状態又はモードを示している。ステップP110においては、粘度計アセンブリ10を用いて、主フローライン202から分流ライン204を通って流れている材料の粘度値を得る。この時点において、弁238、256は、総ての方向において完全に閉じている。弁224、234は開いており、弁218は部分的に閉じていて、主フローライン202に減圧部を形成している。これにより、材料は、ライン202から分流ライン204に入ることができる。アセンブリ10は、定期的に粘度値を計算し、その粘度値をデータとして制御装置210に供給する。ステップP112において、制御装置210が制御装置10からの粘度値を好ましい値又は好ましい範囲の値と比較する。制御装置210は、粘度を適正な範囲にするために必要な流体のパラメータ値(例えば、温度)を調節する。例えば、上記最適範囲よりも大きな粘度値は、制御装置210が加熱コイル219又は燃料供給ラインの上流側の他のヒータを作動させて主フローライン202の中の材料を加熱するので、修正される。その結果増大した温度は、対応する粘度の減少を生じさせて、燃料の粘度を上記最適範囲に維持する。」
(当審註:「ステップP112において、制御装置210が制御装置10からの粘度値を・・・」の「制御装置10」は「計器アセンブリ10」の誤記と認め、以下読み替える。)

オ 「 ステップP114は、現存する通常の測定モードを終了させて検査モードに移行させるか否かの決定を行う。検査モードへの移行は、制御装置210のクロックタイマに従って、あるいは、操作者の手動操作による関与に応答して、定期的に行うことができる。ステップP110乃至P114は、検査モードに移行すべき時ではない場合には、無期限に繰り返される。」

(4)10頁下から7行目〜同頁下から3行目の「図面の簡単な説明」は次のとおりである。

「図面の簡単な説明
図1は、本発明のインライン粘度計検査校正装置の動作を統御する概略的なプロセス流れ図を示しており、
図2は、図1のプロセスに従って使用されるインライン粘度計検査校正装置を示している。」

2 図面の記載事項について

(1)図2は次のとおりである。











(2)図2の看取事項
図2及び上記1の各記載事項から、次の各事項を看取することができる。以下、下記項番を用いて「看取事項2(2)ア」などと引用する。

ア 記載事項1(2)アを合わせ読むと、主フローライン202は、燃料リザーバ211から燃料ポンプ216、弁218を経てボイラ212に到る流路であることが看取できる。

イ 記載事項1(2)ア〜オ・キを合わせ読むと、
(ア)主フローライン202の弁218より上流側を加熱コイル219が包囲し、該加熱コイル219の下流側で弁218よりも上流側の位置220と下流側の位置222とを結ぶように分流ライン204が主フローライン202に分岐接続していること、及び、
(イ)分流ライン204の上流側は、主フローライン202とは、主フローライン202の弁218の上流側の位置220で分岐接続し、そこから上流側の弁224、上流側の湾曲したフランジ部分226を順に経て粘度計又は計器アセンブリ10のフランジ要素227に接続され、分流ライン204の下流側は、粘度計又は計器アセンブリ10の下流側のフランジ要素228が下流側の湾曲したフランジ部分232に接続され、下流側の弁234を介し、主フローライン202の弁218の下流側の位置222で主フローライン202と合流接続すること、
をそれぞれ看取できる。

ウ 記載事項1(2)イを合わせ読むと、主フローライン202の、弁218の上流側で、かつ該弁218の上流側で分流ライン204が分岐する位置220よりも上流側に、加熱コイル219が取り付けられていることを看取できるといえる。

エ 記載事項1(2)エ〜カを合わせ読むと、
(ア)粘度計又は計器アセンブリ10は、フランジ部分226とフランジ部分232との間の管路にコリオリ質量流量計12が接続されること、
(イ)粘度計又は計器アセンブリ10は、フランジ部分226とフランジ部分232との間の管路に、上流側から順に圧力トランスジューサ22、コリオリ質量流量計12、圧力トランスジューサ24が順に設けられ、コリオリ質量流量計12は上下流側を圧力トランスジューサ22・24に挟まれて設置されること、
をそれぞれ看取できる。

オ 記載事項1(3)アを合わせ読むと、
「計器の電子回路14は、プロセス制御装置210に接続される」こと、を看取できる。

3 認定事項
上記1、2の各記載事項・看取事項から、以下の各事項が導かれる(以下、各々項番を用いて「認定事項3(1)ア」などという。)。

(1)記載事項1(2)ア・イ・オ、記載事項1(3)エ、並びに看取事項2(2)ア・イ(イ)・エ(ア)から、以下のア、イ、ウの各事項が導かれる。
ア 記載事項1(2)ア・オ、記載事項1(3)エ、並びに看取事項2(2)ア・イ(イ)・エ(ア)から、以下の事項が導かれる。
「燃料リザーバ211からボイラ212に到る主フローライン202の弁218の上流側の位置220から分岐接続する分流ライン204に接続される、粘度計又は計器アセンブリ10の質量流量計12、及び該分流ライン204に取り付けられる圧力トランスジューサ22・24を接続した差圧トランスジューサ16」を備えること。

イ 記載事項1(3)エから、次の事項が導かれる。
「通常の測定状態において、主フローライン202の弁218は部分的に閉じていて、これにより、材料は、主フローライン202の弁218の上流側の位置220から分流ライン204に入ることができ」ること。

ウ 記載事項1(2)イ・1(3)エ、看取事項2(2)
「主フローライン202の弁218より上流側で、かつ主フローライン202の弁218の上流側の位置220より上流側で、流通系の中の任意の箇所に設けられる加熱コイル219、又は該上流側の他のヒータが、主フローライン202の中の材料を加熱する」こと。

(2)記載事項1(2)オ・カ、1(3)ア及び看取事項3(2)エ(イ)、3(2)オから、次の各事項が導かれる。
ア 特に記載事項1(2)オ・カ及び看取事項3(2)エ(イ)、3(2)オによれば、
「計器の電子回路14は、コリオリ質量流量計12と圧力トランスジューサ22・24に接続される差圧トランスジューサ16とからの測定信号を受け、通常のコリオリ処理技術を利用して、上記信号の材料流動情報(例えば、質量流量、密度、温度及び粘度)としての理解を容易にし、」「ハーゲン−ポアズイユの毛細管の関係『μ=KPρ/m』に従って、毛細管前後の差圧P、密度ρ、材料の質量流量mから粘度を計算」すること、
が導かれる。

イ 特に記載事項1(3)アによれば、
「計器の電子回路14にはさらにプロセス制御装置210が接続され」、計器の電子回路14は、プロセス制御装置210に「粘度及び温度のデータ」並びに「計器アセンブリ10を通過している流体又は材料に関する質量流量、密度を伝送」すること、
が導かれる。

(3)記載事項1(3)エから次の事項が導かれる。
記載事項1(3)エには、上記読み替えた結果として「制御装置210が計器アセンブリ10からの粘度値を好ましい値又は好ましい範囲の値と比較する。制御装置210は、粘度を適正な範囲にするために必要な流体のパラメータ値(例えば、温度)を調節する。例えば、上記最適範囲よりも大きな粘度値は、制御装置210が加熱コイル219又は燃料供給ラインの上流側の他のヒータを作動させて主フローライン202の中の材料を加熱するので、修正される。その結果増大した温度は、対応する粘度の減少を生じさせて、燃料の粘度を上記最適範囲に維持する。」との記載がある。
該記載から、「制御装置210は、計器アセンブリ10からの粘度値を好ましい値又は好ましい範囲の値と比較し、粘度を適正な範囲にするために必要な流体の温度を調節すべく、例えば、該最適範囲よりも大きな粘度値であれば、制御装置210が加熱コイル219又は燃料供給ラインの上流側の他のヒータを作動させて主フローライン202の中の材料を加熱する結果、温度が上昇し、対応する粘度の減少を生じさせて、燃料の粘度を上記最適範囲に維持するように制御する」との技術事項が導かれる。

(4)記載事項1(1)ア、1(3)ア・ウから,次の事項が導かれる。
ア 記載事項1(1)アからは「黒液燃料をボイラ燃料としてリサイクルされる製紙プラントにおいて、黒液を燃料として使用することのできる許容レベルまで粘度を減少させる」ことが導かれる。
イ 記載事項1(3)アからは、プロセス制御装置210は、通常のプラント制御装置である場合が少なくとも含まれることが導かれる。
ウ 記載事項1(3)ウ及び記載事項1(4)から、プロセス制御装置210は装置200に含まれ、装置200は「インライン粘度計」を構成することが導かれる。
エ 以上から、「例えば、黒液燃料をボイラ燃料としてリサイクルする製紙プラントにおいて、黒液を燃料として使用することのできる許容レベルまで粘度を減少させる、プロセス制御装置210及び粘度計又は計器アセンブリ10を含むインライン粘度計である装置200」が導かれる。

4 引用発明
引用文献1の上記明細書及び図面の記載事項及び認定事項から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。なお、各構成単位冒頭の「6a」などは分説番号であり、以下当該構成単位を「構成6a」などという。また、各構成単位末尾の括弧内には、認定元となった上記記載事項、看取事項、認定事項を示した。

「6a 例えば、黒液燃料をボイラ燃料としてリサイクルする製紙プラントにおいて、黒液を燃料として使用することのできる許容レベルまで粘度を減少させる、プロセス制御装置210及び粘度計又は計器アセンブリ10を含むインライン粘度計である装置200であって、(認定事項3(4))
6b 燃料リザーバ211からボイラ212に到る主フローライン202の弁218の上流側の位置220から分岐接続する分流ライン204に接続される、粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び圧力トランスジューサ22・24に接続される差圧トランスジューサ16であって、(認定事項3(1)ア)
通常の測定状態において、主フローライン202の弁218は部分的に閉じていて、これにより、材料は、主フローライン202の弁218の上流側の位置220から分流ライン204に入ることができ、(認定事項3(1)イ)
主フローライン202の弁218より上流側で、かつ主フローライン202の弁218の上流側の位置220より上流側で、流通系の中の任意の箇所に設けられる加熱コイル219、又は該上流側の他のヒータが、主フローライン202の中の材料を加熱するものであり、(認定事項3(1)ウ)
6c 粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び圧力トランスジューサ22・24に接続される差圧トランスジューサ16が通信導線18を介して接続される計器の電子回路14を備え、(記載事項1(2)オ)
計器の電子回路14はさらにプロセス制御装置210に接続され、(看取事項2(2)オ)
6d 計器の電子回路14は、粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び圧力トランスジューサ22・24に接続される差圧トランスジューサ16とからの測定信号を受け、通常のコリオリ処理技術を利用して、上記信号の材料流動情報(例えば、質量流量、密度、温度及び粘度)としての理解を容易にし、ハーゲン−ポアズイユの毛細管の関係『μ=KPρ/m』に従って、毛細管前後の差圧P、密度ρ、材料の質量流量mから粘度を計算し、(認定事項3(2)ア)
6e 計器の電子回路14にはさらにプロセス制御装置210が接続され、計器の電子回路14は、プロセス制御装置210に粘度及び温度のデータ並びに計器アセンブリ10を通過している流体又は材料に関する質量流量、密度を伝送するものであり、(認定事項3(2)イ)
計器アセンブリ10は、定期的に粘度値を計算し、その粘度値をデータとして制御装置210に供給し、制御装置210が計器アセンブリ10からの粘度値を好ましい値又は好ましい範囲の値と比較し、(記載事項1(3)エ)
6f 燃料の粘度を上記最適範囲に維持するように、粘度を適正な範囲にするために必要な流体の温度を調節すべく、(認定事項3(3))
6g 例えば、該最適範囲よりも大きな粘度値であれば、制御装置210が加熱コイル219又は燃料供給ラインの上流側の他のヒータを作動させて主フローライン202の中の材料を加熱する結果、温度が上昇し、対応する粘度の減少を生じさせるように制御する、(認定事項3(3))
6h プロセス制御装置210及び粘度計又は計器アセンブリ10を含むインライン粘度計である装置200。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると次のとおりとなる。

1 構成6Bについて

ア 構成6bの「主フローライン202」、「燃料リザーバ211」、「粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び該分流ライン204に取り付けられる圧力トランスジューサ22・24」はそれぞれ、構成6Bの「燃料ライン(425)」、「燃料源(410)」、「メータアセンブリ(10)」
に相当する。

イ また、構成6bでは、「粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び該分流ライン204に取り付けられる圧力トランスジューサ22・24」は「燃料リザーバ211からボイラ212に到る主フローライン202の弁218の上流側の位置220から分岐接続する分流ライン204に接続される」のであるから、「粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び該分流ライン204に取り付けられる圧力トランスジューサ22・24」は「燃料リザーバ211」と管路により連通されているということができ、このことは、構成6Bのメータアセンブリ(10)が「燃料源(410)に流体が行き来可能に結合され」ることに相当するといえる。

ウ(ア)また、構成6Bにおいて「燃料ライン(425)」は燃料の利用箇所である「エンジン(439)への」管路であるとともに、それを「介して、燃料源(410)に流体が行き来可能」でもあるもの、即ち、「燃料源(410)」から「エンジン(439)」に到る管路として定義されていると解される。
(イ)(ア)に対し、構成6bにおける「加熱コイル219又は該上流側の他のヒータ」の取付位置は、「主フローライン202の弁218の上流側の位置220より上流側で、流通系の中の任意の箇所」であるから、燃料の利用箇所であるボイラまでに相応の距離があり、燃料が当該距離を流通する間に、環境と燃料の温度との関係及び前記距離に応じ、冷却を受けうることは明らかであるといえる。
(ウ)また、構成6bにおける、上記(イ)の「加熱コイル219又は該上流側の他のヒータ」の取付位置は、「位置220」と「加熱コイル219又は該上流側の他のヒータ」との間にも一定程度の距離があることになり、ここでも、燃料が当該距離を流通する間に、環境と燃料の温度との関係及び前記距離に応じ、冷却を受けうることは明らかであるといえる。
(エ)よって、構成6Bの「燃料ライン(425)は燃料を冷却する距離を有する」における「燃料ライン(425)」が上記ウのとおり「燃料源(410)」から「エンジン(439)」に到る管路を指す場合はもちろん、仮に、本願発明において特定されない燃料の加熱部位(加熱手段)とメータアセンブリ(10)との間の管路のみを指すとしても、この構成6Bの「燃料を冷却する距離を有する」「燃料ライン(425)」に、構成6bで、環境と燃料の温度との関係及び前記距離に応じ、燃料が冷却を受けうる、「主フローライン202」の全体、またはその「加熱コイル219、又は該上流側の他のヒータ」と「位置220」との間の部分が相当することが明らかであるといえる。

エ また、構成6bの「ボイラ212」は構成6Bの「エンジン(439)」と、少なくとも共に「燃料の利用箇所」である点で共通する。

2 構成6Cについて
構成6cの「計器の電子回路14」及びそれと接続される「プロセス制御装置210」は、構成6Cの「メータ電子機器(20)」に相当する。
また、構成6cの「通信導線18を介して接続される」ことは、構成6Cの「通信可能に結合された」ことに相当する。

3 構成6Dについて

ア 構成6dで、「計器の電子回路14」は「粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び圧力トランスジューサ22・24に接続される差圧トランスジューサ16とからの測定信号を受け」、「ハーゲン−ポアズイユの毛細管の関係『μ=KPρ/m』に従って、毛細管前後の差圧P、密度ρ、材料の質量流量mから」「粘度を計算」している。

イ アにおいて、粘度は計算値とされている。そして、その計算には「粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び圧力トランスジューサ22・24に接続される差圧トランスジューサ16とからの測定信号を受け」、「毛細管前後の差圧P、密度ρ、材料の質量流量m」なる物理量が用いられている。そして、これら各物理量は何れも定数値でなく、「粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び圧力トランスジューサ22・24に接続される差圧トランスジューサ16とからの測定信号」により求められたものであることが明らかである。この解釈は、質量流量及び密度が一般的な市販のコリオリ質量流量計の標準的な出力物理量であるとの技術常識(下記(ア)・(イ)参照)や、差圧が「差圧トランスジューサ16」の出力物理量に対応することが明らかであることと矛盾しない。

(ア)質量流量及び密度が一般的な市販のコリオリ質量流量計の標準的な出力物理量であるとの技術常識については、例えば本願遡及日前に公知となった特許5084976号公報の下記(イ)の記載によっても裏付けられる。
(イ)「【0015】
上記のコリオリ式質量流量計は、計測応答性が高く、沈殿物や浮遊物を含む固液二相状態である固液混相流体の密度および質量流量のオンライン計測が行えることから、測定の手間を軽減することができる。」

ウ 以上ア、イから、構成6dにおいて、「計器の電子回路14」は「粘度」の計算にあたり、「粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び圧力トランスジューサ22・24に接続される差圧トランスジューサ16とからの測定信号を受け」、「密度ρ」に関する物理量を得(測定し)、用いているといえるから、構成6dは構成6Dに相当するといえる。

4 構成6A・6E〜6Hについて

ア 構成6eの「粘度値」が「「計器の電子回路14」は「粘度」の計算にあたり、「粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び圧力トランスジューサ22・24に接続される差圧トランスジューサ16とからの測定信号」を通じ「計器の電子回路14」が得た(測定した)物理量である「密度」の値に基づくものであるといえることは、上記3で説示したとおりである。

イ(ア)構成6Eにいう「基準値」については、本願明細書の【0013】において、「好ましくは、測定された特性に基づいて信号を生成するように構成されたメータ電子機器(20)は、測定された特性値を基準値と比較し、測定された特性値と基準値との差に比例した信号を生成するように構成されている。」と説明されるとおり、メータ電子機器(20)が測定した燃料の特性値を比較する対象の値を意味すると解される。
(イ)そうすると、構成6eにおいて「制御装置210が計器アセンブリ10からの粘度値を好ましい値又は好ましい範囲の値と比較」する際の「好ましい値又は好ましい範囲の値」は、構成6Eの「基準値」に相当するといえる。

ウ(ア)構成6f〜6gの「流体」、「燃料」及び「材料」は何れも構成6Fの「燃料」に相当する。
(イ)構成6a・6hの「プロセス制御装置210及び粘度計又は計器アセンブリ10を含むインライン粘度計である装置200」は構成6A・6G・6Hの「コリオリ流量計(5)」に相当する。

エ 構成6Fで「燃料の冷却」が起きる「燃料が燃料ラインを通ってエンジンに流れる際」の「燃料ライン」の部分に、引用発明の、環境と燃料の温度との関係及び前記距離に応じ、燃料が冷却を受けうる、「主フローライン202」の全体、またはその「加熱コイル219、又は該上流側の他のヒータ」と「位置220」との間の部分が相当することは、上記1ウ(エ)で説示したとおりである。

オ(ア)構成6gの、「加熱コイル219又は燃料供給ラインの上流側の他のヒータ」及びこれら「を作動させ」る「制御装置210」からなる手段は、「プロセス制御装置210及び粘度計又は計器アセンブリ10を含むインライン粘度計」に提供される燃料の温度を「調節」(構成6f)、「加熱」・「温度」を「上昇」(構成6g)させるものであるから、構成6Gの「コリオリ流量計(5)に提供される燃料の温度を制御するように構成された温度制御ユニット(420)」に相当するといえる。
(イ)また、構成6eで「制御装置210が計器アセンブリ10からの粘度値を好ましい値又は好ましい範囲の値と比較し」た結果、構成6gで該「制御装置210が加熱コイル219又は燃料供給ラインの上流側の他のヒータを作動させて主フローライン202の中の材料を加熱する結果、温度が上昇し、対応する粘度の減少を生じさせるように制御する」際には、「制御装置210」における前記「比較」を行う機能1(プログラム1)から、該機能1で作成された、前記比較の結果を示す値(信号)が、「加熱コイル219又は燃料供給ラインの上流側の他のヒータを作動させ」る機能2(プログラム2;構成6Eの「温度制御ユニット(420)」に相当。)に対し伝達されるべきことが、技術常識に照らし明らかである。
(ウ)そして、ここでの、前記比較の結果を示す値(信号)が機能1で作成されることは、構成6Eの「信号を生成」することに相当し、該値(信号)が機能2(プログラム2)に対し伝達されることは、構成6Gの「信号を提供する」ことに相当する。

カ(ア)上記イ(イ)で説示したとおり、「好ましい値又は好ましい範囲の値」は、構成6Eの「基準値」に相当すること、「計器アセンブリ10」で測定される燃料の密度やそれから計算される粘度は、上記、燃料が冷却を受けうる、「主フローライン202」の全体、またはその「加熱コイル219、又は該上流側の他のヒータ」と「位置220」との間の部分において、「加熱コイル219、又は該上流側の他のヒータ」による加熱後に冷却を受けた結果の燃料の物理量である。
(イ)構成6eでは、上記(ア)の物理量である粘度を「好ましい値又は好ましい範囲の値と比較」し、構成6fで「燃料の粘度を上記最適範囲に維持するように、粘度を適正な範囲にするために必要な流体の温度を調節」するのであるから、当該「温度の調節」は、粘度値を、上記冷却を受けたことによる増加分も含め、「加熱コイル219、又は該上流側の他のヒータ」の温度を調節することによって「最適範囲に維持」する制御に外ならない。
(ウ)そうすると、構成6eの「制御装置210が計器アセンブリ10からの粘度値を好ましい値又は好ましい範囲の値と比較」することによって構成6fで「温度を調節」する機能、及び構成6gで「温度が上昇し、対応する粘度の減少を生じさせるように制御する」機能は共に、構成6Fの「基準値によって燃料の冷却を補償」する機能に相当するといえる。

キ 構成6a・6g・6hの「プロセス制御装置210及び粘度計又は計器アセンブリ10を含むインライン粘度計である装置200」が、構成6aにいう「黒液燃料をボイラ燃料としてリサイクルする製紙プラントにおいて、黒液を燃料として使用することのできる許容レベルまで粘度を減少させる」ものであると共に、構成6f・6gにいう、燃料の「温度を調節」することにより燃料の「粘度の減少を生じさせるように制御する」ものであることは、構成6Aの「コリオリ流量計(5)」が「粘度を制御する」ことに相当する。

ク 構成6aの、「プロセス制御装置210及び粘度計又は計器アセンブリ10を含むインライン粘度計である装置200」を含む「黒液燃料をボイラ燃料としてリサイクルする製紙プラント」は、構成6Aの「燃料制御システム(400)」に相当する。

5 一致点
以上1〜4を総合すると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致するといえる。

「6A 燃料制御システム(400)内の粘度を制御するコリオリ流量計(5)であって、
6B’ 燃料の利用箇所への燃料ライン(425)を介して、燃料源(410)に流体が行き来可能に結合されたメータアセンブリ(10)であって、燃料ライン(425)は燃料を冷却する距離を有するメータアセンブリ(10)と、
6C 前記メータアセンブリ(10)に通信可能に結合されたメータ電子機器(20)とを備え、
6D 前記メータ電子機器(20)はメータアセンブリ(10)を用いて燃料の密度を測定し、
6E 測定された密度及び基準値に基づいて信号を生成し、
6F 燃料が燃料ラインを通ってエンジンに流れる際に、前記基準値によって燃料の冷却を補償し、
6G コリオリ流量計(5)に提供される燃料の温度を制御するように構成された温度制御ユニット(420)に信号を提供するように構成されている、
6H コリオリ流量計(5)。」

6 相違点
本願発明と引用発明とは、構成6Bに関し、次の点で一応相違する。

(1)相違点1(構成6B)
本願発明では燃料の利用箇所が「エンジン(439)」であるのに対し、引用発明では「ボイラ212」である点。

第6 相違点1の検討
1 構成6bの「ボイラ」は、構成6aで特定される「黒液燃料をボイラ燃料としてリサイクルする製紙プラント」における「ボイラ」であるところ、製紙プラントにおいて「黒液燃料をボイラ燃料としてリサイクル」する場合には、当該ボイラで黒液の噴霧・燃焼により発生した蒸気を用いて蒸気タービンを駆動して発電を行う黒液利用発電システムを構成することが技術常識であることに照らし、引用発明の「ボイラ」は、外部機関としてのエンジンに該当する蒸気タービン式の発電システムの一要素であるか、少なくともそのような位置づけのボイラである場合を態様として含むといえる。

2 念のため言及すれば、上記1の技術常識は、例えば、本件出願の遡及日前に公知となった文献である「特開2004−270600号公報」(以下「周知文献1」という。)の以下の各記載によっても裏付けられる(改行は一部省略した。)。
(1)「【請求項2】木材から紙を生産する生産過程で生成される黒液を燃焼させて蒸気を発生させる黒液回収ボイラーと、該黒液回収ボイラーからの発生蒸気で駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンによって駆動される発電機・・・。」
(2)「【0016】黒液回収ボイラー36では、過熱管等には耐食性材料を採用することで、SOxが含まれる条件でも、100ataで500℃以上の蒸気を発生することができる。この結果、黒液回収ボイラー36からの発生蒸気を蒸気タービン37で発電する場合の効率は30〜35%にも達する。・・・。」
(3)「【0033】80%まで濃縮された黒液は、発熱量が3000Mcal/tonも有るので、ポンプで黒液回収ボイラー13の空気中に噴霧して、助燃材無しで燃焼させることが可能で有る。・・・。」
(4)「【0039】・・・黒液回収ボイラー13で発生する蒸気を蒸気タービン17での発電に適切に利用可能となり、・・・」

3 以上のとおりであるから、上記相違点1は実質的な相違点とはいえない。
よって、本願発明と引用発明との間に実質的な相違点は認められず、本願発明は引用発明である。

4(1)また、仮に上記相違点1において両発明が相違するとしても、引用発明において、黒液の利用箇所であるボイラを、外部機関としてのエンジンに該当する蒸気タービン式の発電システムの一要素としてのボイラとすることは、上記技術常識、即ち周知技術に照らし、当業者が容易に想到し得たことであるということができる。
(2)ア ここで、本願発明は実施例において重油を燃料とする船舶用のエンジンを燃料の利用箇所とするものであるが(【0002】)、引用発明の黒液ボイラ同様に燃料の噴霧・燃焼機構を有する船舶用のエンジンにおいても、燃料の粘度測定による粘度管理を要することは、例えば令和2年9月7日付け拒絶理由通知書においても引用された米国特許第4704898号明細書の4欄17〜63行の下記イに摘記する記載でも開示されるとおり、周知の課題であり解決手段である。よって、本願発明を前記実施例に沿って解釈したとしても、引用発明を共通の課題を持つ船舶用の重油を燃料とするエンジンへ適用することは当業者が容易に想到できたことといえる。

イ 「 The fuel pipes 42, 43 may lead to internal-combustion engines 48, 49, 50, 51 which are supplied with fuel through the fuel pipes 42, 43. The internal-combustion engines 48, 49, 50, 51 may, for example, be such as are installed on board ships. The internal-combustion engine 48 represents the main engine, and the internal-combustion engines 49, 50, 51 represent the ship's auxiliary diesels.
A further dev1ce 52, 53 for measur1ng the temperature of the fuel entering the internal-combustion engines 48, 49, 50, 51 is provided immediately before the entry of the fuel pipes 42, 43 into the internalcombustion engines 48, 49, 50, 51.
These devices 52, 53 are connected via control lines 54, 55 to the computer 12.
As a rule, there exists between the apparatus 1 and the internal combustion engines 48, 49, 50, 51 a relatively great interval, across which heat losses of the liquid flowing through the fuel pipes 42, 43 may occur. As a result of these heat losses, the liquid 21 arrives in the internalcombustion engines 48, 49, 50, 51 with a different viscosity than that measured in the apparatus 1. The viscosity change which then occurs corresponds substantially to the heat loss occurring in the fuel pipe 42, 43.
The temperature variation resulting from this is measured by the devices 52, 53 and acquired by the computer 12. Depending upon the value of the heat loss, the viscosity of the liquid 21 must be corrected by raising the temperature in the region of the heat transfer device 30, 31, by means of the computer 12, the quantity of steam flowing through the heating device 32, 33 is controlled so that the apparatus 1 measures a viscosity of the liquid 21 which, taking into consideration the heat loss in the fuel pipe 42, 43, has on enetering the internal-combustion engines 48, 49, 50, 51 a constant value which is dictated by the requirement of the internal-combustion engines 48, 49, 50, 51.」
(当審訳:「燃料配管42、43は、内燃機関48、49、50、51に導かれ、これらへは燃料配管42、43を介して燃料が供給される。内燃機関48、49、50、51は、例えば船舶に設置されているようなものであってもよい。内燃機関48は主エンジンを示し、内部燃焼エンジン49、50、51は、船の補助ディーゼルを表す。
内燃機関48、49、50、51に流入する燃料の温度を測定する装置52、53は燃料配管42、43の内燃機関48、49、50、51への入口の直前に設けられる。これら装置52、53は制御信号線54、55を介しコンピュータ12に接続される。
一般に、装置1と内燃機関48、49、50、51との間には相対的に大きな距離が存在し、この距離にわたって燃料配管42、43を通って流れる液体には熱損失が生じる。これら熱損失の結果として、液体21は装置1で測定された粘度とは異なる粘度で内燃機関48、49、50、51に到達する。その際生じる粘度の変化は燃料配管42、43で生じる熱損失に実質的に対応する。これによる温度の変化は装置52、53により測定され、コンピュータ12により取得される。熱損失の値により液体21の粘度は、コンピュータ12によって、加熱装置32、33に流れる蒸気の量を制御することにより熱交換装置30、31の領域での温度上昇に応じて修正され、したがって装置1は液体21の、燃料配管42、43における熱損失を考慮に入れた粘度を測定し、液体21は内燃機関48、49、50、51に流入する時には内燃機関48、49、50、51が要求する一定の粘度値を持つことになる。」)

5 よって、本願発明は、引用発明及び技術常識(周知技術)に基づき、当業者が容易に発明することができたものである。

第7 請求人の主張について

1 請求人の主張
請求人は審判請求書において、本願発明の新規性について概略次のとおり主張している。

(1)請求項6に係る発明では、燃料源(410)とメータアセンブリ(10)を結合する燃料ライン(425)と、燃料がエンジンに流れる際に通る燃料ラインは同じラインであるが、引用文献1では分流ライン204と主フローライン202との別のラインである。従って、分流ライン204と主フローライン202とでは、ラインの長さによる燃料を冷却する効果が異なる可能性がある。

(2)引用文献1では、燃料の粘度を維持するためにボイラ212への主フローライン202を加熱している。
直径の異なる分流ライン204と主フローライン202は燃料の流量が異なることが自明であり、燃料の流量が異なれば、ラインの長さによる燃料を冷却する効果が異なり、燃料の温度が異なることは明らかである。従って、引用文献1では燃料の粘度を維持するために分流ライン204の温度が制御されておらず、本願請求項6に係る発明の燃料源(410)とメータアセンブリ(10)を結合する燃料ライン(425)の温度を制御する内容は開示されていない。
(3)引用文献1ではボイラ212に入る燃料の温度は、コリオリ流量計12を備えたアセンブリ10に入る燃料の温度とは定量化可能な関係を有していない。故に、引用文献1に開示された内容にて、燃料源(410)とメータアセンブリ(10)を結合する燃料ライン(425)の温度を制御する請求項6に係る発明の新規性は否定されないと解する。

2 請求人の主張に対して

(1)ア 構成6bで「粘度計又は計器アセンブリ10のコリオリ質量流量計12、及び該分流ライン204に取り付けられる圧力トランスジューサ22・24」は「燃料リザーバ211」と管路により連通されているということができ、このことが、構成6Bのメータアセンブリ(10)が「燃料源(410)に流体が行き来可能に結合され」ることに相当する、という点は、上記第5の1で説示したとおりである。この点をさらに敷衍すると以下のとおりである。
イ まず、本願発明は、メータアセンブリ(10)の取付位置が、燃料がエンジンに流れる際に通る燃料ラインと同じラインか別のラインかについて特定はなく、構成6Bにおいて「エンジン(439)への燃料ライン(425)を介して、燃料源(410)に流体が行き来可能に結合された」旨特定するにとどまる。
ウ 構成6Bの「燃料ライン(425)」は「エンジン(439)への」ものであり、かつ「燃料ライン(425)」に「メータアセンブリ(10)」が「燃料源(410)に流体が行き来可能に結合」されることから、「燃料ライン(425)」は「燃料源(410)」と「エンジン(439)」とを結ぶものと理解できるが、「メータアセンブリ(10)」を「燃料ライン(425)」の途中に直列的に設けたとしても、「燃料ライン(425)」は「エンジン(439)への」でもある以上、「メータアセンブリ(10)」と「燃料源(410)」との間のほか、「メータアセンブリ(10)」から「エンジン(439)」に到る下流側にも「燃料ライン(425)」がさらに延長されるのであるから、「燃料ライン(425)」の全部ではなく一部を介して「燃料源(410)に流体が行き来可能に結合され」ることになる。よって、構成6Bにおいて「エンジン(439)への燃料ライン(425)を介して、構成6Bの「燃料源(410)に流体が行き来可能に結合され」ることは、「燃料ライン(425)」全長の一部を介して「メータアセンブリ(10)」が「燃料源(410)」と結合される態様を少なくとも含み、構成6Bは「燃料ライン(425)」全長の総てを介して「メータアセンブリ(10)」が「燃料源(410)」と結合されることに限定されない。
この解釈は、本願の図4において、メータアセンブリ(10)とエンジン439またはその燃料注入システム430との間が直づけではなく、当該間の部分に管路が描かれていることでも裏付けられる。
エ よって、燃料ラインに対しメータアセンブリが並列的に接続され、メータアセンブリのある分岐ラインと燃料ラインとの分岐点より上流側、燃料源に到るまでの燃料ライン部分を介してメータアセンブリと燃料源とが(行き来可能に)結合されるような態様も、構成6Bの「燃料源(410)に流体が行き来可能に結合され」に含まれ、該態様に属する引用発明の構成6bが前記構成6Bの特定事項に相当するといえる。

(2)請求人は上記1のとおり、引用発明では直径が異なる主フローライン202と分流ライン204とで燃料の冷却効果が非定量的に異なることや、分流ラインでの温度制御手段がないことを理由として、引用発明では、本願発明の「燃料源(410)とメータアセンブリ(10)を結合する燃料ライン(425)の温度を制御する」内容が開示されていない旨主張する。
しかし、引用発明における分流ライン204の、特に粘度計又は計器アセンブリ10の上流側部分の長さについては、引用文献1において特段長尺である旨言及があるわけでもない。
そして、引用発明は、引用文献1の上記第4の1(1)キの記載事項にあるとおり、配管の流通系に使用される「インライン粘度計検査校正装置」の提供を目的とし、上記第4の1(1)ウの「実験室における検査は、長い時間遅延を生じ、そのような長い時間遅延は、急速に変化するプロセス条件に直面した場合には、実験室の結果を適時応用することを非実用的又は不可能にする。」なる記載から明らかなとおり、測定の適時性を課題とするものであるから、「粘度計又は計器アセンブリ10」自体の分流配管を徒に長いものとしたり極端に細いものとしたり、熱損失の大きいものとしたりして、当該分流配管流通時に著しい遅延や著しい冷却を受けて、主フローライン内の燃料の物理量を「粘度計又は計器アセンブリ10」の測定結果が反映しない、前記物理量と前記測定結果とが相関しない(関係性が不明)、または適時性を失う、ような設置条件を伴う態様は、前記目的に反し、前記課題を解決できないから、含み得ないといえる。
さらに、仮に上記分流ライン204の粘度計又は計器アセンブリ10の上流側部分によって多少の冷却を受けるとしても、上記目的に合致し上記課題を解決する範囲内の態様である限り、粘度計又は計器アセンブリ10においては、該分流ライン204の分岐点である「位置220」における主フローライン202内の燃料の温度の変化に応じた(相関した)燃料温度やそれに伴う粘度等の物理量の変化、即ち、前者が上昇すれば後者も上昇する変化、を生じると当然に期待されることが明らかである。
そして、当該相関した温度や粘度等の物理量変化を生じる限り、それに応じた、主フローライン202の上流部分での加熱制御を行いうることも明らかである。
よって、請求人の上記、引用発明では、本願発明の「燃料源(410)とメータアセンブリ(10)を結合する燃料ライン(425)の温度を制御する」内容が開示されていない旨の主張は、引用発明の、その目的に反し、その課題を解決し得ない態様を想定してのものであり、失当である。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当するか、又は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 福島 浩司
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-09-27 
結審通知日 2021-09-28 
審決日 2021-10-13 
出願番号 P2019-169314
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 113- Z (G01N)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 井上 博之
樋口 宗彦
発明の名称 振動計を用いて燃料制御システム内の粘度を制御する方法  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ