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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1383118
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-17 
確定日 2022-04-05 
事件の表示 特願2019−183463「通知方法、装置、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年12月26日出願公開、特開2019−220234、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年8月4日に出願した特願2017−532309号の一部を令和元年10月4日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年10月 4日 上申書 提出
令和2年 6月 8日付け 拒絶理由通知
令和2年 8月13日 意見書・手続補正書 提出
令和2年10月23日付け 拒絶理由通知(最後)
令和2年12月 7日 意見書・手続補正書 提出
令和3年 3月11日付け 令和2年12月7日の手続補正について
の補正の却下の決定,拒絶査定
令和3年 6月17日 審判請求書・手続補正書 提出
令和3年 7月28日付け 前置報告

第2 原査定の概要

原査定(令和3年3月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の請求項1,2,4,5,7−10,12,13,15−18,20,21,23,24に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1. 特開2008−83963号公報

なお,令和3年7月28日付けの前置報告において,審査官は,審判請求時の手続補正に対する周知技術文献として下記引用文献2および3を提示している。

2.特開2014−135019号公報
3.国際公開第2014/162604号

第3 本願発明

本願の請求項1ないし24に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明24」という。)は,令和3年6月17日提出の手続補正書により補正された以下の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項24に記載された事項により特定されるとおりの発明である。

「【請求項1】
タッチセンサを有する装置によって実行される通知方法であって,
前記タッチセンサ上における電子ペンを用いた手書きに基づいて自動的に生成される手書きデータを示すファイル形式のデータがメモリの第1の領域に格納されているかを判定し,
前記手書きデータを示すファイル形式のデータが前記メモリの前記第1の領域に格納されているという判定に応じて,ユーザ向けの第1の通知を行い,
ユーザによる操作部の所定操作に応じて,前記第1の通知と異なるユーザ向けの第2の通知を行う
ことを特徴とする通知方法。
【請求項2】
前記ユーザによる前記操作部の所定操作に応じて,前記手書きデータを示すファイル形式のデータの格納先を前記第1の領域とは異なる前記メモリの第2の領域に切り替え,前記第2の通知を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のユーザ通知方法。
【請求項3】
前記電子ペンがペンアップ状態であるかペンダウン状態であるかをさらに判定し,
前記電子ペンが前記ペンアップ状態であるという判定に応じて,前記第1の通知を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の通知方法。
【請求項4】
前記手書きデータを示すファイル形式のデータが前記メモリの前記第1の領域に格納されていないという判定に応じて,前記第1の通知および前記第2の通知と異なるユーザ向けの第3の通知を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の通知方法。
【請求項5】
前記第1の通知は,発光素子を第1の発光パターンで発光させることによって行われ,
前記第2の通知は,前記発光素子を前記第1の発光パターンとは異なる第2の発光パターンで発光させることによって行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の通知方法。
【請求項6】
前記電子ペンが前記ペンダウン状態であるという判定に応じて,前記第1の通知および前記第2の通知とは異なるユーザ向けの第4の通知を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の通知方法。
【請求項7】
前記第1の通知は,発光素子を前記第1の発光パターンおよび第1の色で発光させることによって行われ,
前記第2の通知は,前記発光素子を前記第2の発光パターンおよび前記第1の色で発光させることによって行われ,
前記第4の通知は,前記発光素子を前記第1の発光パターンおよび前記第2の発光パターンとは異なる第3の発光パターンおよび前記第1の色とは異なる第2の色で発光させることで行われる,
ことを特徴とする請求項6に記載の通知方法。
【請求項8】
前記ユーザによる前記操作部の所定操作はボタンの押下操作である
ことを特徴とする請求項1に記載のユーザ通知方法。
【請求項9】
ユーザによる操作部の所定操作を受け付ける受付手段と,
タッチセンサ上における電子ペンを用いた手書きに基づいて自動的に生成される手書きデータを示すファイル形式のデータがメモリ内の第1の領域に格納されているかを判定する判定手段と,
前記手書きデータを示すファイル形式のデータが前記メモリの前記第1の領域に格納されているという判定に応じて,ユーザ向けの第1の通知を行う第1の通知手段と,
前記ユーザによる前記操作部の所定操作に応じて,前記第1の通知と異なるユーザ向けの第2の通知を行う第2の通知手段と,
を有することを特徴とする装置。
【請求項10】
前記ユーザによる前記操作部の所定操作に応じて,前記手書きデータを示すファイル形式のデータの格納先を前記第1の領域とは異なる前記メモリ内の第2の領域に切り替え,
前記第2の通知手段が前記第2の通知を行う
ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記電子ペンがペンアップ状態であるかペンダウン状態であるかを判定する判定手段をさらに有し,
前記電子ペンが前記ペンアップ状態であるという判定に応じて,前記第1の通知手段が前記第1の通知を行う
ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記手書きデータを示すファイル形式のデータが前記メモリの前記第1の領域に格納されていないという判定に応じて,前記第1の通知および前記第2の通知と異なるユーザ向けの第3の通知を行う第3の通知手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の通知は,発光素子を第1の発光パターンで発光させることによって行われ,
前記第2の通知は,前記発光素子を前記第1の発光パターンとは異なる第2の発光パターンで発光させることによって行われる
ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記電子ペンが前記ペンダウン状態であるという判定に応じて,前記第1の通知および前記第2の通知とは異なるユーザ向けの第4の通知を行う第4の通知手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の通知は,発光素子を前記第1の発光パターンおよび第1の色で発光させることによって行われ,
前記第2の通知は,前記発光素子を前記第2の発光パターンおよび前記第1の色で発光させることによって行われ,
前記第4の通知は,前記発光素子を前記第1の発光パターンおよび前記第2の発光パターンとは異なる第3の発光パターンおよび前記第1の色とは異なる第2の色で発光させることで行われる
ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ユーザによる前記操作部の所定操作はボタンの押下操作である
ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項17】
タッチセンサを有する装置に,
前記タッチセンサ上における電子ペンを用いた手書きに基づいて自動的に生成される手書きデータを示すファイル形式のデータがメモリの第1の領域に格納されているかを判定するステップと,
前記手書きデータを示すファイル形式のデータが前記メモリの前記第1の領域に格納されているという判定に応じて,ユーザ向けの第1の通知を行うステップと,
ユーザによる操作部の所定操作に応じて,前記第1の通知と異なるユーザ向けの第2の通知を行うステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項18】
前記第2の通知を行うステップは,前記ユーザによる前記操作部の所定操作に応じて,
前記手書きデータを示すファイル形式のデータの格納先を前記第1の領域とは異なる前記メモリ内の第2の領域に切り替え,前記第2の通知を行う
ことを特徴とする請求項17に記載のプログラム。
【請求項19】
前記装置に,前記電子ペンがペンアップ状態であるかペンダウン状態であるかを判定するステップをさらに実行させ,
前記第1の通知を行うステップは,前記電子ペンが前記ペンアップ状態であるという判定に応じて,前記第1の通知を行う
ことを特徴とする請求項17に記載のプログラム。
【請求項20】
前記装置に,前記手書きデータを示すファイル形式のデータが前記メモリの前記第1の領域に格納されていないという判定に応じて,前記第1の通知および前記第2の通知と異なるユーザ向けの第3の通知を行うステップをさらに実行させる
ことを特徴とする請求項17に記載のプログラム。
【請求項21】
前記第1の通知は,発光素子を第1の発光パターンで発光させることによって行われ,
前記第2の通知は,前記発光素子を前記第1の発光パターンとは異なる第2の発光パターンで発光させることによって行われる
ことを特徴とする請求項17に記載のプログラム。
【請求項22】
前記装置に,前記電子ペンが前記ペンダウン状態であるという判定に応じて,前記第1
の通知および前記第2の通知とは異なるユーザ向けの第4の通知を行うステップをさらに実行させる
ことを特徴とする請求項17に記載のプログラム。
【請求項23】
前記第1の通知は,発光素子を前記第1の発光パターンおよび第1の色で発光させることによって行われ,
前記第2の通知は,前記発光素子を前記第2の発光パターンおよび前記第1の色で発光させることによって行われ,
前記第4の通知は,前記発光素子を前記第1の発光パターンおよび前記第2の発光パターンとは異なる第3の発光パターンおよび前記第1の色とは異なる第2の色で発光させることで行われる
ことを特徴とする請求項22に記載のプログラム。
【請求項24】
前記ユーザによる前記操作部の所定操作はボタンの押下操作である
ことを特徴とする請求項17に記載のプログラム。」

第4 引用文献

1 引用文献1および引用発明


(1)引用文献1の記載事項

原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付加した。以下同様。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は文書管理に関する。
【背景技術】
【0002】
文書を扱う文書管理システムでは,登録された文書を記録し,その登録された文書は文書名や文書に付加された属性などで呼び出すことにより利用するものである。また文書の版管理するにあたっては文書名が同じであるため文書に版管理のための属性を追加し,それを基に文書を版として管理するのが一般的である。
【0003】
例えば,特許文献1では,呼び出した文書が最新版か否かということを,呼び出した画面を見るのみで確認できるようにしている。
【0004】
また,特許文献2では,文書の登録時,所定位置に記載されている所定の文字列によって当該文書を振り分け,収納先のフォルダ等の領域を決定するようにしている。
【特許文献1】 特開平8−101827号公報
【特許文献2】 特開平11−288417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザにとって文書管理システムの版管理操作はとても煩わしいものであった。また,ユーザが行う操作をなるべく簡単にしたいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の文書管理システムは,文書を保存する際,当該保存対象の文書と同じ名前の文書を既に版管理しているかどうか判断する判断手段と,当該判断した結果に応じて,当該保存対象の文書をどのようにして保存するかユーザに選択させるためのダイアログを変更させて表示する表示手段と,当該表示されたダイアログで選択された選択肢に基づいて,当該保存対象の文書を保存する保存手段と,を有する。」

イ 図1


ウ 「【0008】
(実施例1)
以下,本発明に係わる一実施形態について図面を参照して説明する。文書管理システムは電子文書を管理する文書管理
図1は,本実施形態における電子文書を管理する文書管理システムの構成を説明する図である。101はクライアント,102は文書管理マシン,103はセンターマシンである。
【0009】
一般には一台のセンターマシンに対して複数台の文書管理マシンが存在し,さらに各文書管理マシンには複数台のクライアントマシンが接続される。
また,クライアントマシンから直接センターマシンに通信することも可能である。」

エ 図2


オ 「【0010】
図2は,文書管理マシンにおけるブロック構成図を説明する図である。
201は通信制御部,202は文書管理制御部,203はデータベース制御部,204は文書管理情報データベース,205は文書本体情報データベース,206は登録部,207は版管理部である。
【0011】
クライアントマシンから文書登録要求が送られた場合には,通信制御部が受信し,文書管理部が要求内容を判別する。要求内容が文書登録である場合は登録部に文書管理情報と文書本体情報を送る。登録部ではデータベース制御部を介して,文書管理情報を文書管理情報データベースに保存し,更に,文書本体情報を文書本体情報データベースに保存する。
【0012】
なお,文書管理情報は,文書名,登録ユーザ名,登録日付,データサイズ,文書本体情報データベースへのリンク情報,バージョン管理をしている場合のバージョン管理情報,検索用のインデックス等の情報である。また,文書本体情報とは,文書本体の実データであり,イメージ文書を登録する場合にはイメージデータそのものである。また,登録部は文書管理情報と文書本体情報を通信制御部を通じてセンターマシンに送り,センターマシンは文書管理情報と文書本体情報とを保存する。」

イ 図3


イ 「【0013】
図3は全体の流れを表すフローチャートである。
【0014】
S301では,ユーザの保存指示に応じて,文書が保存される。S302では,S301でクライアントからの文書登録要求があり,すでに同じ名前の文書がデータベースにある場合はS303へ進み,同じ名前の文書がデータベースに登録されていなければ,S304へ進む。
【0015】
S303では,当該文書を新規の登録文書であるとして,当該文書の文書管理情報と文書本体情報とをデータベースへ登録する。
【0016】
一方,S304ではユーザが登録した文書と同じ名前の文書を版管理しているかどうかを文書管理情報データベースで調べ,版管理していればS305へ進む。版管理していなければS306へ進む。S305では,上書きするか別名で保存するかバージョンアップをするかを選択させるためのダイアログを,ユーザに提示する。」
(当審注:段落【0014】の「すでに同じ名前の文書がデータベースにある場合はS303へ進み,同じ名前の文書がデータベースに登録されていなければ,S304へ進む。」という記載は,参照している図3のS302のYesとNoの判断分岐が整合していないことから,「すでに同じ名前の文書がデータベースにある場合はS304へ進み,同じ名前の文書がデータベースに登録されていなければ,S303へ進む。」の誤記であると認められる。)

エ 図7


オ 「【0029】
(実施例3)
本実施例では,別名で保存が選択された場合,予めテンプレート設定しておいた別名の文書名候補を表示する。
【0030】
本実施例3のフローチャートを図7に示す。図7では,別名保存のテンプレート設定として,「作者名(ユーザ名)」が設定されているものとする。S701〜S706の処理は,図3の301〜306の処理と同様である。
【0031】
S707では,S705またはS706で,ユーザにより「別名で保存」が選択されたか否か判断し,別名で保存の場合は,ステップS708に進み,文書名に作者名を付加することにより生成した文書名候補を表示する。
【0032】
一方,別名で保存以外の場合は,選択されたそれぞれの処理をS709で行う。」

(2)引用発明

上記(1)の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「登録された文書を記録し,その登録された文書は文書名や文書に付加された属性などで呼び出すことにより利用するものであり,文書の版管理するにあたっては文書名が同じであるため文書に版管理のための属性を追加し,それを基に文書を版として管理する文書管理システムにおいて,
電子文書を管理する文書管理システムは,一台のセンターマシンに対して複数台の文書管理マシンが存在し,さらに各文書管理マシンには複数台のクライアントマシンが接続されており,
文書管理マシンは,通信制御部,文書管理制御部,データベース制御部,文書管理情報データベース,文書本体情報データベース,登録部,版管理部を備えており,クライアントマシンから文書登録要求が送られた場合には,通信制御部が受信し,文書管理部が要求内容を判別し,要求内容が文書登録である場合は登録部に文書管理情報と文書本体情報を送り,登録部ではデータベース制御部を介して,文書管理情報を文書管理情報データベースに保存し,更に,文書本体情報を文書本体情報データベースに保存しており,
クライアントからの文書登録要求があり,同じ名前の文書がデータベースに登録されていなければ,当該文書を新規の登録文書であるとして,当該文書の文書管理情報と文書本体情報とをデータベースへ登録しており,
すでに同じ名前の文書がデータベースにある場合は,ユーザが登録した文書と同じ名前の文書を版管理しているかどうかを文書管理情報データベースで調べ,版管理していれば,上書きするか別名で保存するかバージョンアップをするかを選択させるためのダイアログを,ユーザに提示し,
別名保存のテンプレート設定として,「作者名(ユーザ名)」が設定されており,
ユーザにより「別名で保存」が選択されたか否か判断し,別名で保存の場合は,文書名に作者名を付加することにより生成した文書名候補を表示する
文書管理システムにおける文書管理方法。」

2 引用文献2および3と周知技術

(1)引用文献2の記載事項

前置報告書において,周知技術文献として提示された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,手書き入力装置及び制御プログラムに関し,特に,用紙上に手書きした情報を電子データに変換する手書き入力装置及び当該手書き入力装置で動作する制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,用紙上に手書きした文字や図形などの情報(手書き情報と呼ぶ。)を電子データとして保存する機能を備えた手書き入力装置が販売されている。この手書き入力装置は,感圧式のタッチパネルを備えており,タッチパネル上に固定した用紙にペンなどで手書きすると,ペンの圧力をタッチパネルが検知し,タッチ位置の移動軌跡を電子データ(手書きデータ)として記憶することができる。
【0003】
このような手書き入力装置では,あるページ(用紙)に手書きした手書き情報と次のページ(用紙)に手書きした手書き情報とを区別するために,ページ(用紙)がめくられたことを検出する必要がある。そこで,従来は,ユーザが,手書き入力装置に予め設けたボタン(ページ送りボタンなど)を押下したり,タッチパネル上で予め定めたペン操作を行ったりすると,手書き入力装置は,ボタンの押下やペン操作を認識して,ページがめくられたことを検出していた。
【0004】
また,ページがめくられたことを手書き入力装置が自動的に検出する方法も提案されている。例えば,下記特許文献1では,左側壁の内面の前方にスイッチA,Bの2つのスイッチを設け,その2つのスイッチのON/OFFを感知することによってページがめくられたことを検出している。また,下記特許文献2では,予め診断用紙上に目印をつけて,その目印をセンサで読み取ることによってページを認識している。また,下記特許文献3では,用紙の穴やマークを検出することによってページがめくられたことを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2002−009988号公報
【特許文献2】 特開平10−211173号公報
【特許文献3】 特開平10−254610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,上記の従来技術では,ページがめくられたことを検出するために,特殊な用紙(特殊な目印やマークが印刷された用紙や穴が開けられた用紙など)を使用したり,手書き入力装置に特殊な構成要素(ページ送りボタンや上記目印,マーク,穴を検出するセンサなど)を設けたり,ユーザに特殊な操作(予め定めたペン操作など)を行わせたりするため,ページがめくられたことを簡便に検出することができないという問題があった。
【0007】
本発明は,上記問題点に鑑みてなされたものであって,その主たる目的は,特殊な用紙や特殊な構成要素,特殊な操作を必要とせずに,自然な操作によってページがめくられたことを簡便に検出することができる手書き入力装置及び制御プログラムを提供することにある。」

イ 図4


ウ 「【0026】
以下,上記構成の手書き入力装置10の動作について,図4のフローチャート図を参照して説明する。
【0027】
まず,ユーザがペンなどの筆記道具(第1の入力手段)又は指(第2の入力手段)を用いて,タッチパネル14の所望の位置にタッチすると,タッチパネル14はタッチを検出し,タッチ位置及びタッチ圧力をタッチパネル制御部13に通知する。タッチパネル制御部13は,タッチ面積やタッチ圧力と予め定めた閾値とを比較することにより,筆記用具以外のタッチを検出したかを判断する(S101)。
【0028】
タッチパネル制御部13は,ペンなどの筆記用具のタッチ(タッチ面積が予め定めた第1の閾値以下のタッチ,又は,タッチ圧力が予め定めた第2の閾値以上のタッチ)を検出した場合は,ユーザの入力操作が手書き情報の入力操作であると判断し,制御部11は,タッチ位置の移動軌跡を入力バッファ(RAM11cなど)に記憶する。その後,S101に戻って,タッチパネル制御部13は,筆記用具以外のタッチを監視する。
【0029】
一方,タッチパネル制御部13は,ペンなどの筆記用具以外のタッチ(タッチ面積が上記第1の閾値より大きいタッチ,又は,タッチ圧力が上記第2の閾値より小さいタッチ)を検出した場合は,指のタッチであるか否かを判断する(S102)。なお,S101で筆記用具以外のタッチを検出した場合に,それが指のタッチであると直ちに判断しないのは,例えば,ペンなどの筆記用具を持つ手がタッチパネル14にタッチする場合などが考えられるからである。
【0030】
そして,タッチパネル制御部13は,指のタッチではないと判断した場合(例えば,タッチ面積が予め定めた第3の閾値(第3の閾値>第1の閾値)より大きい,又は,タッチ圧力が予め定めた第4の閾値(第4の閾値<第2の閾値)より小さい場合)は,ユーザの入力操作が手書き情報の入力操作でもページめくり操作でもないと判断し,S101に戻って,筆記用具以外のタッチを監視する。
【0031】
一方,タッチパネル制御部13は,指のタッチであると判断した場合は,図5乃至図12に基づいて,ユーザの入力操作がページめくり操作であるか否かを判断する(S103)。このページめくり操作であるか否かを判断する手法については後述する。
【0032】
タッチパネル制御部13は,ユーザの入力操作がページめくり操作ではないと判断した場合は,制御部11は,そのタッチ位置の移動軌跡を手書き情報として入力バッファ(RAM11cなど)に記憶する。その後,S101に戻って,タッチパネル制御部13は,筆記用具以外のタッチを監視する。
【0033】
一方,タッチパネル制御部13は,ユーザの入力操作がページめくり操作であると判断した場合は,制御部11は,入力バッファ(RAM11cなど)に記憶した一連の手書き情報を読み出し,一連の手書き情報をそのページの手書きデータとして,SDカード11dなどに保存し(S104),その後,入力バッファ(RAM11cなど)に記憶した一連の手書き情報を消去する(S105)。
【0034】
次に,制御部11は,ページめくり操作が行われたことをユーザにフィードバックする設定になっているか否かを判断し(S106),フィードバックする設定になっていない場合は,S101に戻って,タッチパネル制御部13は,筆記用具以外のタッチを監視する。一方,フィードバックする設定になっている場合は,制御部11は,ページめくり操作を検出したことをユーザに通知する(S107)。
【0035】
この通知方法としては,例えば,手書き入力装置10にスピーカーなどの発音手段を設け,図13(a)に示すように,ブザーや音声などでページめくり操作が行われたことをユーザに通知することができる。また,手書き入力装置10にバイブレーターなどの振動手段を設け,図13(b)に示すように,手書き入力装置10を振動させることによってページめくり操作が行われたことをユーザに通知することができる。また,手書き入力装置10にLED(Light Emitting Diode)などの発光手段を設け,発光手段を点灯/点滅させることによってページめくり操作が行われたことをユーザに通知することもできる。このように,音や振動,光などによってページめくり操作が行われたことをユーザにフィードバックすることにより,ユーザの意図通りに手書きデータを保存することができる。」

(2)引用文献3の記載事項

前置報告書において,周知技術文献として提示された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「技術分野
[0001] 本発明の実施形態は、手書きデータを処理する技術に関する。
背景技術
[0002] 近年、タブレット、PDA、スマートフォンといった種々の電子機器が開発されている。この種の電子機器の多くは、ユーザによる入力操作を容易にするために、タッチスクリーンディスプレイを備えている。
[0003] ユーザは、タッチスクリーンディスプレイ上に表示されるメニューまたはオブジェクトを指などでタッチすることにより、これらメニューまたはオブジェクトに関連づけられた機能の実行を電子機器に指示することができる。
[0004] しかし、タッチスクリーンディスプレイを備える既存の電子機器の多くは、画像、音楽、他の各種メディアデータに対する操作性を追求したコンシューマ向け製品であり、会議、商談、商品開発などのビジネスシーンにおける利用については必ずしも適していない場合がある。このため、ビジネスシーンにおいては、いまなお、紙の手帳が広く利用されている。
[0005] 最近では、会議用の電子黒板システムも開発されている。
先行技術文献
特許文献
[0006] 特許文献1:特開平11−327789号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0007] ところで、手帳のような紙のページでは、ユーザが、手書きする内容に応じて、ペンの色等を使い分けることがある。そのため、電子機器において手書きデータを容易に扱うことができるようにするためには、手書き文書の作成に様々な描画形態を利用できるようにすることが必要とされる。
[0008] 本発明の一形態の目的は、手書きデータを容易に扱うことができる電子機器および手書きデータ処理方法を提供することである。」

イ 「[0065] 時系列情報生成部302は、タッチスクリーンディスプレイ17から出力される上述の座標列を受信し、この座標列に基づいて、図4で詳述したような構造を有する時系列情報(座標データ系列)と、ペン設定部300によって設定されているペンスタイルを示すペンスタイル情報と、背景設定部300Bによって設定されているページスタイルを示すページスタイル情報とを含む、手書きデータを生成する。時系列情報生成部302は、生成された手書きデータを作業メモリ401に一時保存する。
[0066] 上述したように、本実施形態では、画面上に描画されるストロークの色は視認可能な色(第2色)に一時的に変更されるが、生成される手書きデータ内に含まれるストロークデータに付加されているペンスタイル情報(例えば、ストロークの色を示す情報)については必ずしも変更しなくても良い。
[0067] 検索/認識処理部303は、手書きページデータ中の手書き文字列をテキスト(文字コード列)に変換する筆跡認識処理、手書きページデータ中の画像内に含まれる文字列をテキスト(文字コード列)に変換する文字認識処理(OCR)を実行する。さらに、検索/認識処理部303は、上述の筆跡検索およびテキスト検索を実行することができる。
[0068] ページ保存処理部306は、作成中のページ上に配置される複数種のコンテンツデータ(手書きデータ、他の各種コンテンツデータ等)を含む手書きページデータを生成し、この手書きページデータを記憶媒体402に保存する。記憶媒体402は、例えば、タブレットコンピュータ10内のストレージデバイスであってもよいし、サーバコンピュータ2のストレージデバイスであってもよい。」

(3)周知技術

上記(1)および(2)の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献2および3には,以下の周知技術が記載されていると認められる。

「タッチパネルやタッチスクリーンディスプレイなどのタッチセンサを有する装置において,タッチセンサ上におけるペンを用いた手書き入力により生成された座標列系列の手書き情報(データ)を,入力バッファ(RAM)や作業メモリ等のメモリに一時的に記憶(保存)しておいて,その後,SDカードなどの記憶媒体に保存すること。」

第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことが認められる。

ア 引用発明は,「一台のセンターマシンに対して複数台の文書管理マシンが存在し,さらに各文書管理マシンには複数台のクライアントマシンが接続され」た「文書管理システムにおいて,」「クライアントからの文書登録要求があり,」「すでに同じ名前の文書がデータベースにある場合は,ユーザが登録した文書と同じ名前の文書を版管理しているかどうかを文書管理情報データベースで調べ,版管理していれば,上書きするか別名で保存するかバージョンアップをするかを選択させるためのダイアログを,ユーザに提示し」ているとされている。

ここで,引用発明の「上書きするか別名で保存するかバージョンアップをするかを選択させるためのダイアログを,ユーザに提示し」ている主体は,ユーザが利用している「クライアントマシン」であることは,当業者にとって明らかであり,「クライアントマシン」も「装置」であるといえる。

また,引用発明において「すでに同じ名前の文書がデータベースにある場合」に,「上書きするか別名で保存するかバージョンアップをするかを選択させるためのダイアログを,ユーザに提示」することは,「すでに同じ名前の文書がデータベースにある」ことをユーザに「通知」していることであるといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「装置によって実行される通知方法であ」る点で共通しているといえる。

しかし,本願発明1では,「装置」が「タッチセンサを有する」とされているのに対して,引用発明では,「装置」がタッチセンサを有するか否か明らかでない点で相違している

イ 引用発明では,「クライアントからの文書登録要求があり,同じ名前の文書がデータベースに登録されていなければ,当該文書を新規の登録文書であるとして,当該文書の文書管理情報と文書本体情報とをデータベースへ登録しており,すでに同じ名前の文書がデータベースにある場合は,ユーザが登録した文書と同じ名前の文書を版管理しているかどうかを文書管理情報データベースで調べ,版管理していれば,上書きするか別名で保存するかバージョンアップをするかを選択させるためのダイアログを,ユーザに提示」するとされている。

ここで,引用発明において「同じ名前の文書がデータベースに登録されて」いるか否かを判定し,判定結果において,「新規の登録文書」を行ったり,「上書きするか別名で保存するかバージョンアップをするかを選択させるためのダイアログを,ユーザに提示」しているといえ,文書データは一般に文書ファイル形式のデータであるから,引用発明も,本願発明1と同様に,「ファイル形式のデータが」「格納されているかを判定し」ているといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「ファイル形式のデータが」「格納されているかを判定し」ている点で共通しているといえる。

しかし,本願発明1では,「ファイル形式のデータが」「タッチセンサ上における電子ペンを用いた手書きに基づいて自動的に生成される手書きデータを示す」ものであり,「格納されているか」の「判定」が「メモリの第1の領域に」「格納されているか」の「判定」であるのに対して,引用発明では,「ファイル形式のデータが」「文書」であり,「格納されているか」の「判定」がデータベースに登録されているかの判定である点で相違している。

ウ 引用発明において,「クライアントからの文書登録要求があり,」「すでに同じ名前の文書がデータベースにある場合は,ユーザが登録した文書と同じ名前の文書を版管理しているかどうかを文書管理情報データベースで調べ,版管理していれば,上書きするか別名で保存するかバージョンアップをするかを選択させるためのダイアログを,ユーザに提示」するとされている。

上記アで述べたように,引用発明において「すでに同じ名前の文書がデータベースにある場合」に,「上書きするか別名で保存するかバージョンアップをするかを選択させるためのダイアログを,ユーザに提示」することは,「すでに同じ名前の文書がデータベースにある」ことをユーザに「通知」していることであるといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「ファイル形式のデータが」「格納されているという判定に応じて,ユーザ向けの第1の通知を行」う点で共通しているといえる。

しかし,上記イで述べたように,本願発明1では,「ファイル形式のデータが」「手書きデータを示す」ものであり,「格納されているか」の「判定」が「メモリの第1の領域に」「格納されているか」の「判定」であるのに対して,引用発明では,「ファイル形式のデータが」「文書」であり,「格納されているか」の「判定」がデータベースに登録されているかの判定である点で相違している。

エ 引用発明において,「ユーザにより「別名で保存」が選択されたか否か判断し,別名で保存の場合は,文書名に作者名を付加することにより生成した文書名候補を表示する」とされている。

ここで,引用発明において,「ユーザにより「別名で保存」が選択」する際に,「クライアントマシン」が備えるマウスやキーボードのような操作部をユーザが操作していることは,当業者にとって明らかであるから,引用発明において,「ユーザにより「別名で保存」が選択」することは,本願発明1の「ユーザによる操作部の所定操作」することに対応しているといえる。

また,引用発明において,「文書名に作者名を付加することにより生成した文書名候補を表示する」ことは,本願発明1の「第1の通知と異なるユーザ向けの第2の通知を行う」ことに対応しているといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「ユーザによる操作部の所定操作に応じて,前記第1の通知と異なるユーザ向けの第2の通知を行う」点で共通しているといえる。

(2)一致点・相違点

本願発明1と,引用発明とは,以下アの点で一致し,以下イの点で相違する。

ア 一致点

「装置によって実行される通知方法であって,
ファイル形式のデータが格納されているかを判定し,
前記ファイル形式のデータが格納されているという判定に応じて,ユーザ向けの第1の通知を行い,
ユーザによる操作部の所定操作に応じて,前記第1の通知と異なるユーザ向けの第2の通知を行う
ことを特徴とする通知方法。」

イ 相違点

(ア) 相違点1

本願発明1では,「装置」が「タッチセンサを有する」とされているのに対して,引用発明では,「装置」がタッチセンサを有するか否か明らかでない点。

(イ) 相違点2

本願発明1では,「ファイル形式のデータが」「タッチセンサ上における電子ペンを用いた手書きに基づいて自動的に生成される手書きデータを示す」のであり,「格納されているか」の「判定」が「メモリの第1の領域に」「格納されているか」の「判定」であるのに対して,引用発明では,「ファイル形式のデータが」「文書」であり,「格納されているか」の「判定」がデータベースに登録されているかの判定である点。

(3)相違点についての判断

事案に鑑みて,まず,相違点2について検討する。

本願発明1の相違点2に係る構成の,特に,「ファイル形式のデータが」「メモリの第1の領域に」「格納されているかを判定」するという構成について,引用文献1には,記載も示唆も無く,当該構成が周知であったとも認められない。

特に,引用発明において「ファイル形式のデータが」「格納されているかを判定」する際には,データベースに登録されているか否かを判定しており,データベースでは,データベースに登録されているか否かを判定する際には,データベースの検索を行って,当該データがデータベースに登録されているか否かを判定している。データベースを備えたコンピュータにおいて,ファイルの格納に際して,仮想ファイルシステムを用いて行うことが一般的であり,仮想ファイルシステムにおいては,コンピュータが有する主記憶メモリと,HDDやSSD等の二次記憶とが連携して動作し,ファイルの記憶位置が仮想化されて,フォルダ等の論理的な位置で管理されており,ファイルが格納されているメモリの位置をアプリケーションプログラムが把握しなくても,当該ファイルに容易にアクセスできる利便性を有したものとなっている。
よって,仮に,ファイルがメモリの特定の領域に格納されているか否かを判定する構成が公知であったとしても,引用発明において,仮想ファイルシステムにおけるファイルアクセスの利便性を失ってまで,ファイルがメモリの特定の領域に格納されているか否かを判定する構成を採用する動機付けも見当たらない。

したがって,引用発明に基づいて,当業者は本願発明1の相違点2に係る構成を容易に想到することができない。

なお,審査官が前置報告書で提示した引用文献2および3にも,上記相違点2に係る構成は記載も示唆も無い。(引用文献2および3では,いずれも,タッチセンサ上におけるペンを用いた手書き入力により生成された座標列系列の手書き情報(データ)を,入力バッファ(RAM)や作業メモリ等のメモリに一時的に記憶(保存)する周知技術が開示されているのみであり,入力バッファ(RAM)や作業メモリ等のメモリの特定の領域にファイルが格納されているかを判定する構成は開示されていない。)

エ 小括

したがって,上記相違点1について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明および引用文献2ならびに3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし本願発明8について

本願発明2ないし本願発明8は,いずれも,本願発明1を減縮したものであって,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2ならびに3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明9ないし本願発明16について

本願発明9は,概ね,本願発明1の発明のカテゴリを,単に,方法の発明から装置の発明へと変更したものであり,上記相違点2に係る構成と同様の以下の構成を備えているから,本願発明1と同様に,引用発明および引用文献2ならびに3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

「タッチセンサ上における電子ペンを用いた手書きに基づいて自動的に生成される手書きデータを示すファイル形式のデータがメモリ内の第1の領域に格納されているかを判定する判定手段」

本願発明10ないし本願発明16は,いずれも,本願発明9を減縮したものであって,本願発明9と同一の構成を備えるものであるから,本願発明9と同じ理由により,引用発明および引用文献2ならびに3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明17ないし本願発明24について

本願発明17は,概ね,本願発明1の発明のカテゴリを,単に,方法の発明からプログラムの発明へと変更したものであり,上記相違点2に係る構成と同様の以下の構成を備えているから,本願発明1と同様に,引用発明および引用文献2ならびに3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

「前記タッチセンサ上における電子ペンを用いた手書きに基づいて自動的に生成される手書きデータを示すファイル形式のデータがメモリの第1の領域に格納されているかを判定するステップ」

本願発明18ないし本願発明24は,いずれも,本願発明17を減縮したものであって,本願発明17と同一の構成を備えるものであるから,本願発明17と同じ理由により,引用発明および引用文献2ならびに3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について

審判請求時の補正により,本願発明1ないし本願発明24は,いずれも,「指示体の指示に基づいて生成されるファイル形式のデータがメモリの第1の領域に格納されているかを判定」する構成を
「電子ペンを用いた手書きに基づいて自動的に生成される手書きデータを示すファイル形式のデータがメモリの第1の領域に格納されているかを判定」すると限定していることから,本件補正後の本願発明1ないし本願発明24は,原査定において引用された引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

したがって,原査定の理由1(進歩性)は,維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-03-16 
出願番号 P2019-183463
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 ▲高▼瀬 健太郎
野崎 大進
発明の名称 通知方法、装置、及びプログラム  
代理人 黒瀬 泰之  

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