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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1383177
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-24 
確定日 2022-03-22 
事件の表示 特願2018−222771号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年6月4日出願公開、特開2020−81553号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年11月28日の出願であって、令和2年9月10日付けで拒絶理由通知がされ、同年11月9日付けで手続補正がされ、令和3年1月25日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年3月30日付けで手続補正がされ、同年5月7日付けで同年3月30日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年8月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 令和3年5月7日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1.令和3年5月7日付けの補正の却下の決定(以下、「原審の補正の却下の決定」という。)の概要は、以下のとおりである。
令和3年3月30日付けの補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願の請求項1に係る発明は、引用文献1、4に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないことから、当該補正は却下すべきものである。

引用文献等一覧
1.特開2017−209459号公報
2.特開2018−171116号公報

2.原査定(令和3年5月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は、引用文献1と引用文献2、3に例示される周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2017−209459号公報
2.特開2015−83267号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2007−275402号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年8月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める(当審にて、分説のために記号AからJを付した。記号A等が付された事項を以下「特定事項A」等という。)。

「A ゲームを実行可能な遊技制御手段を備え、前記ゲームの停止結果が特別結果となる場合に、遊技者に有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
B 前記遊技制御手段は、
C 遊技制御プログラムを記憶する遊技制御プログラム記憶手段と、
D 前記遊技制御プログラムにより所要の演算処理を行う演算処理手段と、を備え、
E 前記演算処理手段は、
F 前記遊技制御プログラムにより、当該遊技機に係る試験信号と前記ゲームを制御するための信号とをシリアル通信で出力可能であり、
G 当該遊技機に係る試験信号と前記ゲームを制御するための信号とで出力するシリアルポートを異ならせ、
H 前記ゲームを制御するための信号は、
前記遊技制御手段に備わる駆動手段に対して出力され、当該駆動手段に接続されている遊技装置を駆動するための信号であり、
I 当該遊技機に係る試験信号は、
前記遊技制御手段において、前記シリアルポートまでにおける信号パターンの少なくとも一部が接地パターンに挟まれるように配置された当該信号パターンを介して出力される信号である
J ことを特徴とする遊技機。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
原査定の拒絶の理由及び原審の補正の却下の決定の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2017−209459号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審において付した。以下同様。)。

(1)「【請求項1】
遊技の進行を制御するメインCPUをもつ主制御装置を備え、
複数の回胴を回転させる始動操作信号を契機に予め定義した複数種類の役に対応した条件装置の作動の可否を決定する内部抽せんを実行すると共に、規定の試験装置との間で試射試験を可能にした遊技機において、
前記主制御装置に、前記内部抽せんで決定した条件装置に応じて遊技者に有利となる前記回胴についての推奨停止操作の信号を前記主制御装置から前記試験装置側に出力させる試験用送信手段を設け、
前記試験用送信手段を、この送信手段から出力する信号に基づいて前記試験装置で規定する仕様に合わせた信号を前記試験装置に入力させるインターフェースボードに接続可能に構成していることを特徴とする遊技機。」

(2)「【0004】
しかし、現行遊技機規則が適用される5号機の時代になり、同様に周辺基板から主基板への信号のフィードバックを禁じてはいるが、内部抽せんで決定した当せん役に対応した図柄の組合せを表示させるストップボタンの押し順や狙うべき図柄等の推奨停止操作の情報を液晶表示装置等に表示させるアシストタイムATの機能を搭載したAT機やART機が人気を博するに至り、ATが出玉に影響することから、サブ側で決定するAT作動下でのストップボタンの押し順等を試験装置に取り込み、その押し順どおりのストップスイッチ信号を試験装置から遊技機に出力して試験を行うのが適切となった。」

(3)「【0012】
以上のもので、前記試験用送信手段は、前記メインCPUのシリアル通信ポート(TX2/XCS10)から出力するシリアル信号(TESTCMD)を前記インターフェースボード(IF2)に入力させる仕様にしており、
前記インターフェースボード(IF2)は、前記シリアル信号(TESTCMD)に基づいて、前記試験装置(TD)で規定する回胴停止信号ストローブ信号と同期させて、前記試験装置(TD)で規定する回胴番号信号及び停止実行位置信号から成るパラレル信号を、推奨停止操作の順番に従った時系列にて、前記試験装置(TD)に入力させる仕様にしている。」

(4)「【0017】
図1に、本発明を適用する回胴式遊技機を示す。回胴式遊技機は、一般にパチスロと呼ばれ、遊技機規則、すなわち平成16年(2004年)1月30日の国家公安委員会規則第1での改正を経た昭和60年(1985年)2月12日の国家公安委員会規則第4「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」に適合するスロットマシンである。以下、用語及びその技術内容は現行の遊技機規則に準ずる。」

(5)「【0021】
また、現時のクレジット数を表示させるクレジット表示器DL1、入賞による払出メダル枚数を表示させると共に適合する停止操作情報を報知するアシストタイムATの作動時にそのAT指示情報を表示させるメインモニタMAを兼ねるペイアウト表示器DL2、充当掛けメダルが1枚、2枚、3枚になる毎に点灯させる1〜3枚ランプEL1〜3、掛けメダルが受付可能なとき点灯させるベットランプELb、スタートレバー5による始動操作が可能なとき点灯させるスタートランプELs、再遊技に係る図柄の組合せが表示されたとき点灯させるリプレイランプELrを含む遊技基本ランプ類30を備える。」

(6)「【0033】
図6に示すように、遊技機筐体8Bの内部に組込む制御装置CNは、遊技の進行を管理し、内部抽せん、入賞によるメダルの払出し、再遊技の作動、役物の作動、アシストタイムATの作動等の遊技者利益に関係する主遊技制御を実行させる所謂メイン側の主基板に対応する主制御装置MCと、この主制御装置MCから一方向性通信仕様に従って送信する情報を受信して主制御装置MCでの決定事項に基づいて演出制御を実行させる所謂サブ側の周辺基板に対応する周辺制御装置SCとを含む。一方向性通信仕様とは、主基板に関して遊技機規則で規定する「周辺基板が送信する信号を受信することができるものでないこと」を満たす通信仕様をいう。
【0034】
主制御装置MCは、読み出し専用のリードオンリーメモリROM及び読み書き可能なリードライトメモリーRWMをチップに内蔵したZ80互換チップから成る8ビットのメインCPUを備え、例えば12MHzのシステムクロック動作環境下で使用している。メインCPUは、基本的なZ80仕様に所定の遊技機用拡張仕様を適用している。
【0035】
メインCPUの入力ポートI1には、各リール1L,1C,1Rのインデックスセンサ11L,11C,11R(IDs)、各ストップボタン6L,6C,6R、ベットボタン3、精算ボタン4、スタートレバー5、メダル投入口2iから受入れたメダルを選別して検出するメダルセレクター2に設けるメダル投入センサーSEN0及びメダル通過センサーSEN1,2、メダルセレクター2からメダルを受け継いでメダル払出装置HPのホッパータンクに放出するRシュートに設けるRシュートセンサーSEN3、メダル払出装置HPの出口に設けるメダル払出センサーSEN4の各信号を入力している。出力ポートO1から、各ストップボタン6L,6C,6Rの内蔵LED61,62,63を、モータドライバDr1を介して各リール1L,1C,1Rに駆動軸SHを結合させる各ステッピングモータ12L,12C,12R(SM)を、LEDドライバDr2を介して遊技基本ランプ類30を、ソレノイドドライバDr3を介してメダルセレクター2からメダルを離脱させてメダル受皿8Gに戻すブロッカー爪部28を突出させるブロッカーソレノイド28sを、モータドライバDr4を介してメダル払出装置HPのメダル払出モータHPmを各制御している。
・・・
【0037】
メインCPUのROM上には、スタートレバー5の操作を契機に、予め定義した複数種類の役に対応した条件装置の作動の可否すなわち図4の当せんエリアを決定する内部抽せんを実行する内部抽せん手段K、スタートレバー5の操作後で且つ前遊技の開始から4.1秒経過後に全リールを正転側に加速処理して定常回転速度に到達させる回胴回転装置制御手段V1と各リールを対応するストップボタンの操作により個別に停止させて有効ラインに当せん役に対応した図柄の組合せの表示を許容させる回転停止装置制御手段V2とを含むリール制御手段V、遊技結果が入賞なら所定配当数のメダルを払出すメダル払出手段M、遊技結果が再遊技の作動なら次ゲームの掛けメダルを同一規定数で自動投入するメダル自動投入手段N、遊技結果が役物作動中等への移行を伴うのなら遊技状態を移行させる遊技状態移行手段J、所定のフリーズ抽せんにより当せん役別に定めた所定確率により各リールを逆回転等させる所定の回胴演出の当否を決定するフリーズ抽せん手段W、その当せんに係る回胴演出を実行させる回胴演出実行手段Gを設けている。
【0038】
また、メインCPUのROM上には、アシストタイムATの作動を内部当せん役等と関連付けた所定作動条件下で決定するAT作動決定手段H1、アシストタイムATの作動を延長させることとなる継続ゲーム数等の上乗せを内部当せん役等と関連付けた所定上乗せ条件下で決定するAT上乗せ決定手段H2、アシストタイムATの作動決定から作動終了までを管理するAT継続管理手段H3、択役についての正解押し順等のAT指示情報を主制御装置MCで管理するペイアウト表示器DL2の表示機能を借りて構築するメインモニタMAに出力させると共に周辺制御装置SCで管理する上部液晶表示装置71等に出力させるAT指示情報出力手段H4を設けている。
【0039】
主制御装置MCには、試射試験時に用いる第1インターフェース基板IF1及び第2インターフェース基板IF2から成るインターフェースボードを介して、規定の試験装置TDを接続可能にしている。第1インターフェース基板IF1には、試験装置TD側のインターフェース仕様に合わせた所定規格の第1,第2,第3コネクタCN1,CN2,CN3を実装しており、第2インターフェース基板IF2には、同じく所定規格の第4コネクタCN4を実装している。各コネクタCN1〜4は、総ピン数が68で、各ピンに割り当てる信号は汎用仕様になっている。」

(7)「【0042】
第4コネクタCN4は、主制御装置MCから試験装置TDに信号を入力させるもので、AT指示情報出力手段H4に基づくストップボタン6L,6C,6Rの押し順や押下位置(狙うべき図柄)に対応した回胴番号信号ビット0〜2及び停止実行位置信号ビット0〜9、図柄停止信号STB(ストローブ)信号を定められたピン番号に割り付けている。第2インターフェース基板IF2に実装するROM/RWM一体型のCPUにより、主制御装置MCの出力コネクタCN04とケーブルK4で接続する入力コネクタCN40から入力ポートINに取り込む信号に基づいて、第1番目、第2番目、第3番目に停止させるべきリールがそれぞれ左か中か右かを特定した回胴番号信号ビット0〜2と、第1番目、第2番目、第3番目に停止させるべきリールについてのストップボタンの押下位置がリールインデックス信号を基点として何ステップ目になるかを特定した停止実行位置信号ビット0〜9とを、図柄停止信号STB信号と同期させて、リール始動操作信号のオン(ハイレベルからローレベルへの立下り)から所定時間以内例えば2秒以内に、時系列で出力ポートOUTから試験装置TDに順次送信する。」

(8)「【図1】



(9)「【図6】



(10)認定事項1
引用文献1の図1からは、「遊技基本ランプ類30」が、「回胴式遊技機」の正面側であって遊技者から視認可能な位置に設けられ点が看取できる。
してみると、引用文献1には、「遊技基本ランプ類30が回胴式遊技機の正面側であって遊技者から視認可能な位置に設けられる」点が開示されていると認められる(認定事項1)。

(11)認定事項2
引用文献1の図6からは、「主制御装置MC」に「Dr1」、「Dr2」、「Dr3」、「Dr4」が備わる点が看取できる。そして、引用文献1の【0035】の記載から、図6の「Dr1」、「Dr2」、「Dr3」、「Dr4」は、それぞれ「モータドライバDr1」、「LEDドライバDr2」、「ソレノイドドライバDr3」、「モータドライバDr4」を意味することは明らかである。
してみると、引用文献1には、「主制御装置MCに、モータドライバDr1、LEDドライバDr2、ソレノイドドライバDr3、モータドライバDr4が備わる」点が開示されていると認められる(認定事項2)。

したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(当審にて、分説のために記号アからクを付した。記号ア等が付された事項を以下「特定事項ア」等という。)。

「ア 遊技の進行を管理し、内部抽せん、入賞によるメダルの払出し、再遊技の作動、役物の作動、内部抽せんで決定した当せん役に対応した図柄の組合せを表示させるストップボタンの押し順や狙うべき図柄等の推奨停止操作の情報を液晶表示装置等に表示させるアシストタイムATの作動等の遊技者利益に関係する主遊技制御を実行させる主制御装置MC(【0004】、【0033】)を備える回胴式遊技機(【0017】)において、
イ 主制御装置MCは、読み出し専用のROMをチップに内蔵し遊技の進行を制御するメインCPUを備え(【請求項1】、【0034】)、
ウ メインCPUのROM上には、スタートレバー5の操作を契機に、予め定義した複数種類の役に対応した条件装置の作動の可否を決定する内部抽せんを実行する内部抽せん手段K、スタートレバー5の操作後で且つ前遊技の開始から4.1秒経過後に全リールを正転側に加速処理して定常回転速度に到達させる回胴回転装置制御手段V1と各リールを対応するストップボタンの操作により個別に停止させて有効ラインに当せん役に対応した図柄の組合せの表示を許容させる回転停止装置制御手段V2とを含むリール制御手段V、遊技結果が入賞なら所定配当数のメダルを払出すメダル払出手段M、遊技結果が再遊技の作動なら次ゲームの掛けメダルを同一規定数で自動投入するメダル自動投入手段N、遊技結果が役物作動中等への移行を伴うのなら遊技状態を移行させる遊技状態移行手段J、所定のフリーズ抽せんにより当せん役別に定めた所定確率により各リールを逆回転等させる所定の回胴演出の当否を決定するフリーズ抽せん手段W、その当せんに係る回胴演出を実行させる回胴演出実行手段G、アシストタイムATの作動を内部当せん役等と関連付けた所定作動条件下で決定するAT作動決定手段H1、アシストタイムATの作動を延長させることとなる継続ゲーム数等の上乗せを内部当せん役等と関連付けた所定上乗せ条件下で決定するAT上乗せ決定手段H2、アシストタイムATの作動決定から作動終了までを管理するAT継続管理手段H3、択役についての正解押し順等のAT指示情報を主制御装置MCで管理するペイアウト表示器DL2の表示機能を借りて構築するメインモニタMAに出力させると共に周辺制御装置SCで管理する上部液晶表示装置71等に出力させるAT指示情報出力手段H4を設け(【0037】、【0038】)、
エ メインCPUの出力ポートO1から、モータドライバDr1を介して各リール1L,1C,1Rに駆動軸SHを結合させる各ステッピングモータ12L,12C,12R(SM)を、LEDドライバDr2を介して遊技基本ランプ類30を、ソレノイドドライバDr3を介してメダルセレクター2からメダルを離脱させてメダル受皿8Gに戻すブロッカー爪部28を突出させるブロッカーソレノイド28sを、モータドライバDr4を介してメダル払出装置HPのメダル払出モータHPmを各制御し(【0035】)、主制御装置MCに、モータドライバDr1、LEDドライバDr2、ソレノイドドライバDr3、モータドライバDr4が備わり(認定事項2)、
オ 主制御装置MCには、試射試験時に用いる第1インターフェース基板IF1及び第2インターフェース基板IF2から成るインターフェースボードを介して、規定の試験装置TDを接続可能にしており、第2インターフェース基板IF2の第4コネクタCN4は、主制御装置MCから試験装置TDに、AT指示情報出力手段H4に基づくストップボタン6L,6C,6Rの押し順や押下位置(狙うべき図柄)に対応した回胴番号信号ビット0〜2及び停止実行位置信号ビット0〜9、図柄停止信号STB(ストローブ)信号を入力させ(【0039】、【0042】)、
カ メインCPUのシリアル通信ポート(TX2/XCS10)から出力するシリアル信号(TESTCMD)をインターフェースボード(IF2)に入力させ、インターフェースボード(IF2)は、シリアル信号(TESTCMD)に基づいて、試験装置(TD)で規定する回胴停止信号ストローブ信号と同期させて、試験装置(TD)で規定する回胴番号信号及び停止実行位置信号から成るパラレル信号を、推奨停止操作の順番に従った時系列にて、試験装置(TD)に入力させ(【0012】)、
キ 遊技基本ランプ類30は、回胴式遊技機の正面側であって遊技者から視認可能な位置に設けられ(認定事項1)、現時のクレジット数を表示させるクレジット表示器DL1、入賞による払出メダル枚数を表示させると共に適合する停止操作情報を報知するアシストタイムATの作動時にそのAT指示情報を表示させるメインモニタMAを兼ねるペイアウト表示器DL2、充当掛けメダルが1枚、2枚、3枚になる毎に点灯させる1〜3枚ランプEL1〜3、掛けメダルが受付可能なとき点灯させるベットランプELb、スタートレバー5による始動操作が可能なとき点灯させるスタートランプELs、再遊技に係る図柄の組合せが表示されたとき点灯させるリプレイランプELrを含む(【0021】)、
ク 回胴式遊技機(【0017】)。」

2.引用文献2
原査定の拒絶の理由に、周知技術の例を示す引用文献2として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特開2015−83267号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0054】
前述のように、本発明の第1の実施の形態の遊技機1では、図示しない打球発射装置から遊技領域10aに向けて遊技球(パチンコ球)が打ち出されることによって遊技が行われる。打ち出された遊技球は、遊技領域10a内の各所に配置された障害釘や風車45等の方向転換部材によって転動方向を変えながら遊技領域10aを流下し、普図始動ゲート34、一般入賞口44、第1始動入賞口37、第2始動入賞口38又は特別変動入賞装置42に入賞するか、遊技領域10aの最下部に設けられたアウト口43へ流入し遊技領域から排出される。そして、一般入賞口44、第1始動入賞口37、第2始動入賞口38又は特別変動入賞装置42に遊技球が入賞すると、入賞した入賞口の種類に応じた数の賞球が、払出制御装置580によって制御される払出ユニットから、前面枠3の上皿21又は下皿23に排出される。」

(2)「【0104】
遊技制御装置500の出力部530は、データバス540に接続され払出制御装置580へ出力する4ビットのデータ信号とデータの有効/無効を示す制御信号(データストローブ信号)を生成し、払出制御装置580にパラレル通信によって送信する第1出力ポート531aと、演出制御装置550にシリアル通信によってデータを送信するシリアル送信回路535とを備える。」

(3)「【0121】
また、演出制御装置550には、遊技制御装置500から送信されてくるコマンドを受信するシリアル受信回路565を備える。シリアル受信回路565は、遊技制御装置500からシリアル通信された制御コマンドを受信し、主制御用マイコン(1stCPU)551に通知する。シリアル受信回路565は、変動開始コマンド、客待ちデモコマンド、ファンファーレコマンド、確率情報コマンド、及びエラー指定コマンド等を、演出制御指令信号として受信する。」

したがって、引用文献2には次の事項が記載されていると認められる。
「遊技制御装置500の出力部530は、払出制御装置580にパラレル通信によって送信する第1出力ポート531aと、演出制御装置550にシリアル通信によってデータを送信するシリアル送信回路535とを備え(【0104】)、演出制御装置550には、遊技制御装置500から送信されてくるコマンドを受信するシリアル受信回路565を備える(【0121】)、パチンコ球によって遊技が行われる遊技機1(【0054】)。」(以下、「引用文献2記載事項」という。)。

3.引用文献3
原査定の拒絶の理由に、周知技術の例を示す引用文献3として引用され、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献3(特開2007−275402号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0082】
[遊技機の電気的構成]
本実施形態におけるパチンコ遊技機10の制御回路について図8を参照して説明する。図8は、本実施形態におけるパチンコ遊技機10の制御回路を示すブロック図である。同図に示すように、該パチンコ遊技機10における制御回路は、主制御回路60と、副制御回路200と、各種のセンサ、スイッチ類と、ランプ74、及び払出・発射制御回路126に大別して構成されている。
【0083】
主制御回路60は、メインCPU66と、メインROM(読み出し専用メモリ)68と、メインRAM(読み書き可能メモリ)70とを備えている。この主制御回路60は、遊技の進行を制御する。
・・・
【0085】
また、メインCPU66は、発射装置130が駆動しているか否かを示すコマンドを、発射装置駆動コマンドとして出力する。また、後述する保留球数のデータを含むコマンドを保留球数コマンドとして出力する。この発射装置駆動コマンド、及び保留球数コマンドは、シリアル通信用IC60を介して副制御回路200に送信される。」

したがって、引用文献3には次の事項が記載されていると認められる。
「主制御回路60はメインCPU66を備え(【0083】)、メインCPU66は、発射装置駆動コマンド及び保留球数コマンドを、シリアル通信用IC60を介して副制御回路200に送信する(【0085】)パチンコ遊技機10(【0082】)。」(以下、「引用文献3記載事項」という。)。

4.周知技術1
上記引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項から、次の事項は周知技術であると認められる。
「主制御装置の回路から副制御装置の回路に、シリアル通信によってデータを送信するパチンコ遊技機。」(以下、「周知技術1」という。)

5.引用文献4
原審の補正の却下の決定の理由に引用文献2として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献4(特開2018−171116号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0069】
[3.制御構成]
次に、パチンコ機1の各種制御を行う制御構成について、図17を参照して説明する。図17は、パチンコ機の制御構成を概略的に示すブロック図である。パチンコ機1の主な制御構成は、図示するように、遊技盤5に取付けられる主制御基板1310及び周辺制御基板1510と、本体枠4に取付けられる払出制御基板951と、から構成されており、夫々の制御が分担されている。主制御基板1310は、遊技動作(遊技の進行)を制御する。周辺制御基板1510は、主制御基板1310からのコマンドに基いて遊技中の各種演出装置を制御する周辺制御部1511と、周辺制御部1511からのコマンドに基いてメイン液晶表示装置1600や上皿液晶表示装置244等での演出画像の表示を制御する液晶表示制御部1512と、を備えている。払出制御基板951は、遊技球の払出し等を制御する払出制御部952と、ハンドルレバー504の回転操作による遊技球の発射を制御する発射制御部953と、を備えている。」

(2)「【0077】
主制御基板1310には、パチンコ機1の裏面側から視認可能な位置に役物比率表示器1317が取り付けられる。役物比率表示器1317は、主制御MPU1311が計算した役物比率を表示する。」

(3)「【0297】
役物比率表示器1317は、ドライバ回路13171及び複数の7セグメントLED13172によって構成される。例えば、7セグメントLED13172は4桁で構成される。
・・・
【0299】
ドライバ回路13171と主制御MPU1311とは、3本の信号線(DATA、LOAD、CLOCK)によって接続される。
【0300】
DATA線は、役物比率表示器1317に表示するデータや役物比率表示器1317の動作状態を設定する信号を転送し、主制御MPU1311のシリアル通信回路13114に接続される。LOAD線は、データの取り込みタイミングを示す信号を転送し、主制御MPU1311のシリアル通信回路13114に接続される。CLOCK線は、ドライバ回路13171の動作周期を規定するクロック信号を転送し、主制御MPU1311のシリアル通信回路13114に接続される。」

したがって、引用文献4には次の事項が記載されていると認められる。
「主制御基板1310は、遊技動作(遊技の進行)を制御し(【0069】)、主制御基板1310には、パチンコ機1の裏面側から視認可能な位置に主制御MPU1311が計算した役物比率を表示する役物比率表示器1317が取り付けられ(【0077】)、役物比率表示器1317は、ドライバ回路13171及び複数の7セグメントLED13172によって構成され、ドライバ回路13171と主制御MPU1311とは、3本の信号線(DATA、LOAD、CLOCK)によって接続され、DATA線、LOAD線、CLOCK線は、主制御MPU1311のシリアル通信回路13114に接続される(【0297】、【0299】、【0300】)パチンコ機1(【0069】)。」(以下、「引用文献4記載事項」という。)。

第5 対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(1)特定事項Aについて
引用発明の「遊技の進行を管理し、内部抽せん、入賞によるメダルの払出し、再遊技の作動、役物の作動、内部抽せんで決定した当せん役に対応した図柄の組合せを表示させるストップボタンの押し順や狙うべき図柄等の推奨停止操作の情報を液晶表示装置等に表示させるアシストタイムATの作動等の遊技者利益に関係する主遊技制御を実行させる」ことは、本願発明の「ゲームを実行可能」であることに相当するから、引用発明の「遊技の進行を管理し、内部抽せん、入賞によるメダルの払出し、再遊技の作動、役物の作動、内部抽せんで決定した当せん役に対応した図柄の組合せを表示させるストップボタンの押し順や狙うべき図柄等の推奨停止操作の情報を液晶表示装置等に表示させるアシストタイムATの作動等の遊技者利益に関係する主遊技制御を実行させる主制御装置MC」は、本願発明の「ゲームを実行可能な遊技制御手段」に相当する。
引用発明の「アシストタイムAT」が「作動」した状態は、「ストップボタンの押し順や狙うべき図柄等の推奨停止操作の情報を液晶表示装置等に表示させる」「遊技者利益」の状態であることから、本願発明の「遊技者に有利な特別遊技状態」に相当する。そして、引用発明の「内部抽せんで決定した当せん役に対応した図柄の組合せを表示させるストップボタンの押し順や狙うべき図柄等の推奨停止操作の情報を液晶表示装置等に表示させるアシストタイムAT」が「作動」した状態に「主遊技制御を実行」することは、本願発明の「遊技者に有利な特別遊技状態を発生可能」であることに相当する。
そして、引用発明の「回胴式遊技機」は、本願発明の「遊技機」に相当する。
してみると、引用発明の特定事項アは、本願発明の特定事項Aと、「ゲームを実行可能な遊技制御手段を備え、」「遊技者に有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機」である点で共通する。

(2)特定事項B、Cについて
上記(1)で示したとおり、引用発明の「主制御装置MC」は、本願発明の「遊技制御手段」に相当する。
引用発明の「主制御装置MC」に「備え」られる「メインCPU」に「内蔵」される「読み出し専用のROM」に「設け」られた「内部抽せん手段K」、「回胴回転装置制御手段V1と」「回転停止装置制御手段V2とを含むリール制御手段V」、「メダル払出手段M」、「メダル自動投入手段N」、「遊技状態移行手段J」、「フリーズ抽せん手段W」、「回胴演出実行手段G」、「AT作動決定手段H1」、「AT上乗せ決定手段H2」、「AT継続管理手段H3」、「AT指示情報出力手段H4」は、本願発明の「遊技制御プログラム」に相当することから、引用発明の「読み出し専用のROM」は、本願発明の「遊技制御プログラムを記憶する遊技制御プログラム記憶手段」に相当する。
そして、引用発明の「読み出し専用のROM」は、「主制御装置MC」に「備え」られる「メインCPU」に「内蔵」されていることから、本願発明と同様、「前記遊技制御手段」に「備え」られるものであることは明らかである。
してみると、引用発明の特定事項イ、ウは、本願発明の特定事項B、Cに相当する構成を備える。

(3)特定事項Dについて
上記(1)で示したとおり、引用発明の「主制御装置MC」は、本願発明の「遊技制御手段」に相当する。
引用発明の「メインCPU」は、「内蔵」する「読み出し専用のROM」に「設け」られた「内部抽せん手段K」、「回胴回転装置制御手段V1と」「回転停止装置制御手段V2とを含むリール制御手段V」、「メダル払出手段M」、「メダル自動投入手段N」、「遊技状態移行手段J」、「フリーズ抽せん手段W」、「回胴演出実行手段G」、「AT作動決定手段H1」、「AT上乗せ決定手段H2」、「AT継続管理手段H3」、「AT指示情報出力手段H4」により「遊技の進行を制御」していることは自明である。そして、CPUが演算処理を行うことも技術常識であることからすると、引用発明の「読み出し専用のROM」に「設け」られた「内部抽せん手段K」、「回胴回転装置制御手段V1と」「回転停止装置制御手段V2とを含むリール制御手段V」、「メダル払出手段M」、「メダル自動投入手段N」、「遊技状態移行手段J」、「フリーズ抽せん手段W」、「回胴演出実行手段G」、「AT作動決定手段H1」、「AT上乗せ決定手段H2」、「AT継続管理手段H3」、「AT指示情報出力手段H4」により「遊技の進行を制御」する「メインCPU」は、本願発明の「前記遊技制御プログラムにより所要の演算処理を行う演算処理手段」に相当する。
そして、引用発明の「メインCPU」は、「主制御装置MC」に「備え」られることから、本願発明と同様、「前記遊技制御手段」に「備え」られるものであることは明らかである。
してみると、引用発明の特定事項イ、ウは、本願発明の特定事項Dに相当する構成を備える。

(4)特定事項E、Fについて
上記(3)で示したとおり、引用発明の「メインCPU」は、本願発明の「前記演算処理手段」に相当する。
引用発明の「シリアル通信ポート(TX2/XCS10)から」「シリアル信号(TESTCMD)を」「出力する」ことは、本願発明の「信号」を「シリアル通信で出力可能であ」ることに相当することから、引用発明の「メインCPUのシリアル通信ポート(TX2/XCS10)から出力するシリアル信号(TESTCMD)」を、「試験装置TD」が「接続」される「インターフェースボード(IF2)に入力させ」ることは、本願発明の「前記演算処理手段は、」「当該遊技機に係る試験信号」「をシリアル通信で出力可能であ」ることに相当する。
そして、引用発明は、「メインCPUの出力ポートO1から、モータドライバDr1を介して各リール1L,1C,1Rに駆動軸SHを結合させる各ステッピングモータ12L,12C,12R(SM)を、LEDドライバDr2を介して遊技基本ランプ類30を、ソレノイドドライバDr3を介してメダルセレクター2からメダルを離脱させてメダル受皿8Gに戻すブロッカー爪部28を突出させるブロッカーソレノイド28sを、モータドライバDr4を介してメダル払出装置HPのメダル払出モータHPmを各制御」するものであり、モータやソレノイド等の制御のために信号を出力することは技術常識であるから、引用発明の「メインCPUの出力ポートO1から」「モータドライバDr1」、「LEDドライバDr2」、「ソレノイドドライバDr3」、「モータドライバDr4」に出力される信号は、本願発明の「前記ゲームを制御するための信号」に相当する。ここで、上記(3)で示したとおり、引用発明の「メインCPU」は、「内蔵」する「読み出し専用のROM」に「設け」られた「内部抽せん手段K」、「回胴回転装置制御手段V1と」「回転停止装置制御手段V2とを含むリール制御手段V」、「メダル払出手段M」、「メダル自動投入手段N」、「遊技状態移行手段J」、「フリーズ抽せん手段W」、「回胴演出実行手段G」、「AT作動決定手段H1」、「AT上乗せ決定手段H2」、「AT継続管理手段H3」、「AT指示情報出力手段H4」により「遊技の進行を制御」していることは自明であるから、引用発明の「メインCPUの出力ポートO1から」「モータドライバDr1」、「LEDドライバDr2」、「ソレノイドドライバDr3」、「モータドライバDr4」に信号を出力することは、「前記演算処理手段は、前記遊技制御プログラムにより」、「前記ゲームを制御するための信号」を「出力可能であ」ることに相当する。
してみると、引用発明の特定事項イ〜カは、本願発明の特定事項E、Fと、「前記演算処理手段は、」「当該遊技機に係る試験信号」「をシリアル通信で出力可能であ」る点、及び、「前記演算処理手段は、前記遊技制御プログラムにより」、「前記ゲームを制御するための信号」を「出力可能であ」る点で共通する。

(5)特定事項Gについて
上記(4)の検討も踏まえると、引用発明の「AT指示情報出力手段H4に基づくストップボタン6L,6C,6Rの押し順や押下位置(狙うべき図柄)に対応した回胴番号信号ビット0〜2及び停止実行位置信号ビット0〜9、図柄停止信号STB(ストローブ)信号」を出力する「シリアル通信ポート(TX2/XCS10)」と、「モータドライバDr1」、「LEDドライバDr2」、「ソレノイドドライバDr3」、「モータドライバDr4」に信号を出力する「出力ポートO1」とが異なることは、本願発明の「当該遊技機に係る試験信号と前記ゲームを制御するための信号とで出力する」「ポートを異ならせ」ることに相当する。
してみると、引用発明の特定事項イ〜カは、本願発明の特定事項Gと、「当該遊技機に係る試験信号と前記ゲームを制御するための信号とで出力する」「ポートを異ならせ」る点で共通する。

(6)特定事項Hについて
上記(1)で示したとおり、引用発明の「主制御装置MC」は、本願発明の「前記遊技制御手段」に相当することから、引用発明の「主制御装置MCに」「備わ」る「モータドライバDr1、LEDドライバDr2、ソレノイドドライバDr3、モータドライバDr4」は、いずれも本願発明の「前記遊技制御手段に備わる駆動手段」に相当する。
そして、引用発明の「各リール1L,1C,1Rに駆動軸SHを結合させる各ステッピングモータ12L,12C,12R(SM)」、「遊技基本ランプ類30」、「メダルセレクター2からメダルを離脱させてメダル受皿8Gに戻すブロッカー爪部28を突出させるブロッカーソレノイド28s」、「メダル払出装置HPのメダル払出モータHPm」は、いずれも本願発明の「当該駆動手段に接続されている遊技装置」に相当する。
してみると、引用発明の特定事項エは、本願発明の特定事項Hに相当する構成を備える。

(7)特定事項Jについて
引用発明の「回胴式遊技機」は、本願発明の「遊技機」に相当する。
してみると、引用発明の特定事項クは、本願発明の特定事項Jに相当する。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「A’ゲームを実行可能な遊技制御手段を備え、遊技者に有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
B 前記遊技制御手段は、
C 遊技制御プログラムを記憶する遊技制御プログラム記憶手段と、
D 前記遊技制御プログラムにより所要の演算処理を行う演算処理手段と、を備え、
E 前記演算処理手段は、
F’当該遊技機に係る試験信号をシリアル通信で出力可能であり、
G’当該遊技機に係る試験信号と前記ゲームを制御するための信号とで出力するポートを異ならせ、
H 前記ゲームを制御するための信号は、
前記遊技制御手段に備わる駆動手段に対して出力され、当該駆動手段に接続されている遊技装置を駆動するための信号である、
J 遊技機。」

(相違点)
・相違点1(特定事項A)
「遊技者に有利な特別遊技状態」に関し、本願発明は、「前記ゲームの停止結果が特別結果となる場合に」「発生可能」であるのに対し、引用発明は、「アシストタイムATの作動を内部当せん役等と関連付けた所定作動条件下で決定する」ものの、「内部当せん役等と関連付けた所定作動条件下」がどのような条件であるか特定されておらず、「前記ゲームの停止結果が特別結果となる場合」であるか不明な点。

・相違点2(特定事項F、G)
「前記演算処理手段」が「シリアル通信で出力」する「当該遊技機に係る試験信号」に関し、本願発明は、「前記遊技制御プログラムにより、当該遊技機に係る試験信号」「をシリアル通信で出力可能であ」るのに対し、引用発明は、「メインCPU」に「内蔵」される「読み出し専用のROM」に「設け」られた「内部抽せん手段K」、「回胴回転装置制御手段V1と」「回転停止装置制御手段V2とを含むリール制御手段V」、「メダル払出手段M」、「メダル自動投入手段N」、「遊技状態移行手段J」、「フリーズ抽せん手段W」、「回胴演出実行手段G」、「AT作動決定手段H1」、「AT上乗せ決定手段H2」、「AT継続管理手段H3」、「AT指示情報出力手段H4」により、「メインCPUのシリアル通信ポート(TX2/XCS10)から」「シリアル信号(TESTCMD)」が「出力」されるか、不明な点。

・相違点3(特定事項F、G)
「前記ゲームを制御するための信号」に関し、本願発明は、「シリアル通信で出力可能であり」、「当該遊技機に係る試験信号と」「異なる」「シリアルポート」から「出力する」のに対し、引用発明は、「モータドライバDr1」、「LEDドライバDr2」、「ソレノイドドライバDr3」、「モータドライバDr4」に信号を出力する「出力ポートO1」は、「試験装置TD」が「接続」される「インターフェースボード(IF2)に」「シリアル信号(TESTCMD)」を「出力する」「シリアル通信ポート(TX2/XCS10)」とは異なるものの、「出力ポートO1」における通信態様が特定されておらず、「シリアル通信で」「前記ゲームを制御するための信号」を「出力可能」な「シリアルポート」であるかが不明な点。

・相違点4(特定事項I)
「当該遊技機に係る試験信号」に関し、本願発明は、「前記遊技制御手段において、前記シリアルポートまでにおける信号パターンの少なくとも一部が接地パターンに挟まれるように配置された当該信号パターンを介して出力される信号である」のに対し、引用発明は、「メインCPUのシリアル通信ポート(TX2/XCS10)から出力するシリアル信号(TESTCMD)」の信号線が、「主制御装置MC」上でどのように配置されているか特定されていない点。

2.相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
上記相違点3に係る本願発明の「前記遊技制御プログラムにより、」「前記ゲームを制御するための信号」「をシリアル通信で出力可能であ」る点(特定事項F)及び「当該遊技機に係る試験信号と前記ゲームを制御するための信号とで出力するシリアルポートを異ならせ」る点(特定事項G)は、引用文献2及び引用文献3には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。すなわち、引用文献2記載事項の「遊技制御装置500」から「演出制御装置550にシリアル通信によって」「送信」される「データ」は、本願発明の「前記遊技制御手段に備わる駆動手段に対して出力され」る「前記ゲームを制御するための信号」には相当せず、引用文献3記載事項の「メインCPU66」から「シリアル通信用IC60を介して副制御回路200に送信」される「発射装置駆動コマンド及び保留球数コマンド」は、本願発明の「前記遊技制御手段に備わる駆動手段に対して出力され」る「前記ゲームを制御するための信号」には相当しない。さらに、周知技術1の「主制御装置の回路から副制御装置の回路に、シリアル通信によって」「送信」される「データ」は、本願発明の「前記遊技制御手段に備わる駆動手段に対して出力され」る「前記ゲームを制御するための信号」には相当しない。

また、原審の補正の却下の決定では、引用文献1に記載された発明に引用文献4(原審の補正の却下の決定では、引用文献2として引用。)に記載された技術事項を適用して、「「メインCPU」と「LEDドライバDr2」をシリアル回線で接続するものとし、請求項1に係る発明をなすことは、当業者であれば容易に想到し得たことである」との判断がされているため、以下この点について検討を行う。

引用文献4記載事項の「主制御基板1310」、「パチンコ機1」、「主制御MPU1311」、「主制御基板1310に」取り付けられ」る「役物比率表示器1317」の「ドライバ回路13171」は、それぞれ本願発明の「遊技制御手段」、「遊技機」、「演算処理手段」、「前記遊技制御手段に備わる駆動手段」に相当する。
引用文献4記載事項は、「ドライバ回路13171と主制御MPU1311とは、3本の信号線(DATA、LOAD、CLOCK)によって接続され、DATA線、LOAD線、CLOCK線は、主制御MPU1311のシリアル通信回路13114に接続される」ことから、「主制御MPU1311のシリアル通信回路13114」が「ドライバ回路13171」に「シリアル通信」で「信号」を出力していることは自明であり、さらに、引用文献4記載事項の「主制御MPU1311のシリアル通信回路13114」において「DATA線、LOAD線、CLOCK線」が「接続」される箇所は、本願発明の「シリアルポート」に相当する。
してみると、引用文献4記載事項は、本願発明と、「前記演算処理手段は、」「前記ゲームを制御するための信号」「をシリアル通信で出力可能であ」り(特定事項E、F)、「前記ゲームを制御するための信号」を「出力するシリアルポートを」備える点(特定事項G)で、共通する。

ここで、引用発明に引用文献4記載事項を適用することが、当業者にとって容易か否かについて検討する。
引用発明の「遊技基本ランプ類30」は、「回胴式遊技機の正面側であって遊技者から視認可能な位置に設けられ、現時のクレジット数を表示させるクレジット表示器DL1、入賞による払出メダル枚数を表示させると共に適合する停止操作情報を報知するアシストタイムATの作動時にそのAT指示情報を表示させるメインモニタMAを兼ねるペイアウト表示器DL2、充当掛けメダルが1枚、2枚、3枚になる毎に点灯させる1〜3枚ランプEL1〜3、掛けメダルが受付可能なとき点灯させるベットランプELb、スタートレバー5による始動操作が可能なとき点灯させるスタートランプELs、再遊技に係る図柄の組合せが表示されたとき点灯させるリプレイランプELrを含む」(特定事項キ)ものであるのに対し、引用文献4記載事項の「役物比率表示器1317」は、「パチンコ機1の裏面側から視認可能な位置に主制御MPU1311が計算した役物比率を表示する」ものであって、両者の表示する情報、設置機器、設置位置及び設置目的は全く異なり、引用発明の「遊技基本ランプ類30」に引用文献4記載事項の「役物比率表示器1317」に関する構成を適用することが、当業者にとって容易であるとは認められない。
仮に、引用発明の「遊技基本ランプ類30」と引用文献4記載事項の「役物比率表示器1317」とが表示手段という点で技術的に共通すると解したとしても、引用発明の「メインCPUの出力ポートO1」には、「モータドライバDr1、LEDドライバDr2、ソレノイドドライバDr3、モータドライバDr4」が接続される構成であるのに対し、引用文献4記載事項には、「役物比率表示器1317」の「ドライバ回路13171」以外の構成において「シリアル通信」を行う点は開示されていないことからすると、引用発明の「モータドライバDr1」、「ソレノイドドライバDr3、モータドライバDr4」に接続される「出力ポートO1」については何ら変更は行わず、「遊技基本ランプ類30を」「制御」する「LEDドライバDr2」に接続される「出力ポートO1」のみに対して引用文献4記載事項を適用することに関して、遊技機における出願時の技術常識を参酌しても動機付けがあるとは言えず、当業者にとって容易であるとは認められない。

そして、本願発明は、上記相違点3に係る本願発明の構成を備えることで、「ソレノイドの数が遊技機10の機種ごとに異なっても、ソレノイドに対する駆動信号は演算処理手段(例えばCPU111a)からシリアル通信で出力されるため、パラレル通信の場合に必要であった配線が削減でき、異なる機種間で遊技制御手段(例えば遊技制御装置100)を共通化し易くなる」(【0842】)という有利な効果を奏するものである。

したがって、本願発明は、相違点1、2、4を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、周知技術1、引用文献4記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明は特定事項H及びIを有するものとなったが、上記相違点3(特定事項F、G)に関する判断は上述したとおりであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1と引用文献2、3に例示される周知技術1とに基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-03-01 
出願番号 P2018-222771
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 鷲崎 亮
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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