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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H02J 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H02J 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する H02J 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する H02J 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H02J |
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管理番号 | 1383199 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2021-08-25 |
確定日 | 2022-01-14 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6364567号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第6364567号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり〔2−5〕、〔6〕について訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第6364567号は、平成30年3月9日を出願日とする出願であって、平成30年7月6日に特許権の設定登録がなされたものである。 その後の手続の概要は以下のとおり。 平成31年1月 9日 :特許異議の申立て (異議2019−700006) 令和1年10月29日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和1年12月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和2年 2月12日付け:特許異議の決定 令和3年 8月25日 :訂正審判の請求(本件訂正審判) 第2 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6364567号の令和1年12月20日の訂正請求書に添付された特許請求の範囲(確定済)を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2ないし6について訂正することを認める、との審決を求めるものである。 第3 訂正の内容 1 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項2において、 「太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、負荷に接続された受変電部と、 前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力を制御する発電制御装置と、を備え、 前記発電制御装置は、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する ことを特徴とする発電制御システム。」 と記載されているのを 「太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、負荷に接続された受変電部と、 前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力の上限値を制御する1つの発電制御装置と、を備え、 前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避し、 前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能であることを特徴とする発電制御システム。」(下線は訂正箇所を示す。) に訂正する。なお、請求項2を引用する請求項3ないし5も同様に訂正する。 2 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項6において、 「太陽電池の発電電力及び負荷の消費電力を取得すると共に、 前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、 前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する発電制御装置。」 と記載されているのを 「太陽電池の発電電力の上限値を制御するパワーコンディショナに接続される1つの発電制御装置であって、 前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、 太陽電池の発電電力と負荷の消費電力とを取得すると共に、 前記演算処理部を用いて前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避し、 前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能であることを特徴とする発電制御装置。」(下線は訂正箇所を示す。) に訂正する。 第4 当審の判断 1 訂正事項1 (1)訂正の目的について ア.訂正事項1のうち 「前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力を制御する・・・」 と記載されているのを 「前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力の上限値を制御する・・・」 とする訂正(以下、「訂正事項1−1」という。)について検討する。 上記訂正事項1−1に関連して、本件明細書段落【0027】には、 「制御装置6は、計時部の計時機能を用い、指定された(又は記憶装置に記憶された)頻度で(又は日時に)、消費電力を取得し、演算処理部において、得られた消費電力の値を用い、後述する関数(一次関数)によって太陽電池1の発電電力の上限値を設定する。さらに制御装置6は、発電電力の上限値を太陽電池1の定格電力で除して出力指令値(=(発電電力の上限値)/(定格電力)[%])を算出する。出力指令値は、入出力部を経由してPCS2に出力され、PCS2は出力指令値に従って、太陽電池1の発電電力が上限値以下となるように制御する。なお、発電電力の上限値そのものを出力指令値としてPCS2に出力してもよい。」(下線は当審で付した。以下同様。) と記載され、また、請求項2の後段部に「前記発電制御装置は・・・前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し」と記載されている。上記記載によれば、明細書の記載や請求項2の他の記載部分では、発電制御装置(段落【0020】の「発電制御装置(以下単に、制御装置6と称す)」との記載によれば「制御装置」と「発電制御装置」は同義であるので、以下引用箇所以外の記載は「発電制御装置」に統一する。)が制御するのは発電電力の上限値であり、これがPCS2(パワーコンディショナ)の出力の上限値であることは明らかである。 そうしてみると、本件訂正事項1−1は、発電制御装置が制御するのは、パワーコンディショナの出力の上限値であることをより正確に特定したものといえ、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ.訂正事項1のうち 「・・・制御する発電制御装置と、を備え、」 と記載されているのを、 「・・・制御する1つの発電制御装置と、を備え、」 とする訂正(以下、「訂正事項1−2」という。)について検討する。 上記訂正事項1−2は、「発電制御装置」について数に制限がなかったものを、「1つの」との記載により数を特定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 ウ.訂正事項1のうち 「前記発電制御装置は、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し」 と記載されているのを、 「前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し」 とする訂正(以下、「訂正事項1−3」という。)について検討する。 上記訂正事項1−3は、「発電制御装置」が「少なくとも演算処理部及び計時部を備え」る装置であることを特定し、「発電制御装置」の構成を限定する訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 エ.訂正事項1のうち 「・・・を回避することを特徴とする発電制御システム」 と記載されているのを、 「・・・を回避し、前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能であることを特徴とする発電制御システム」 とする訂正(以下、「訂正事項1−4」という。)について検討する。 上記訂正事項1−4は、請求項2の発電制御装置が「発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し」ているとの記載に関連して、「一次関数の一次係数」が「前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」ことを特定する訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて ア.訂正事項1−1について 本件明細書段落【0027】には、上記「(1)ア.」に摘記した記載があり、当該記載から発電制御装置が制御するのは発電電力の上限値であり、PCS2(パワーコンディショナ)の出力の上限値であることは明らかである。 したがって、発電制御装置が「前記パワーコンディショナの出力の上限値を制御する」ことは願書に添付した明細書に記載した事項であり、訂正事項1−1は特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 イ.訂正事項1−2について 発電制御システムについて記載された図1をみると「発電制御装置」は1つであることが見てとれ、また、「制御装置6」について記載された明細書の段落【0025】ないし【0027】の記載をみても発電制御装置が複数存在することは記載されていない。 そうしてみると、訂正事項1−2に係る「発電制御装置」が1つであるという事項は、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項であり、訂正事項1−2は特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ.訂正事項1−3について 本件明細書の段落【0027】に「制御装置6は、さらにマイコン等の演算処理部、記憶装置及び計時部を備える。」とあるように、明細書には発電制御装置が少なくとも演算処理部び計時部を備えることが記載されている。 したがって、発電制御装置が「少なくとも演算処理部及び計時部を備え」ることは願書に添付した明細書に記載した事項であり、訂正事項1−3は特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 エ.訂正事項1−4について 本件明細書の段落【0050】に「また、時間積分する時刻t0、t1は、適宜変更が可能であり、例えば6時から10時、10時から14時、14時から18時のように複数の時間帯を設け、それぞれの時間帯でa、bを確定し、それぞれの時間帯毎に一次係数a、0次係数bの値を変えてもよい。」とあるように、一次関数の一次係数が時間帯毎に変更可能であることが記載されている。 そして、本件明細書の段落【0027】には「制御装置6は、さらにマイコン等の演算処理部、記憶装置及び計時部を備える。制御装置6は、計時部の計時機能を用い、指定された(又は記憶装置に記憶された)頻度で(又は日時に)、消費電力を取得し、演算処理部において、得られた消費電力の値を用い、後述する関数(一次関数)によって太陽電池1の発電電力の上限値を設定する。」と記載されているように発電制御装置は計時部を備え、計時部の計時機能を用いて制御を行っているから、上述した段落【0050】の時間帯毎に一次係数aを変更する動作も計時部の計時機能によることは明らかである。 したがって、発電制御システムにおいて「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」ことは願書に添付した明細書に記載した事項であり、訂正事項1−4は特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3)実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア.訂正事項1−1について 訂正事項1−1に係る訂正は、上記(1)ア.で指摘したとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かかる訂正によって特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではないことは明らかである。 したがって、訂正事項1−1に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 イ.訂正事項1−2について 訂正事項1−2に係る訂正は、上記(1)イ.で指摘したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かかる訂正によって特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではないことは明らかである。 したがって、訂正事項1−2に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ.訂正事項1−3について 訂正事項1−3に係る訂正は、上記(1)ウ.で指摘したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かかる訂正によって特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではないことは明らかである。 したがって、訂正事項1−3に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 エ.訂正事項1−4について 訂正事項1−4に係る訂正は、上記(1)エ.で指摘したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かかる訂正によって特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではないことは明らかである。 したがって、訂正事項1−4に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について ア.本件訂正発明2について 訂正事項1に係る訂正後の請求項2に係る発明(以下、「本件訂正発明2」という。)は以下のとおりと認められる。 「太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、負荷に接続された受変電部と、 前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力の上限値を制御する1つの発電制御装置と、を備え、 前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避し、 前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能であることを特徴とする発電制御システム。」 イ.引用発明1について 本件訂正審判請求書において独立特許要件の判断に引用された実開昭61−58834号公報に係る実願昭59−142040号のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。) (ア)「この考案は、商用交流電力系統と太陽光発電とを連係させて並列的に負荷を駆動するための太陽光発電の連係装置に関する。」(2頁5ないし7行) (イ)「第1図はこの考案の一実施例による装置の構成を示している。太陽光発電セル10の直流出力がインバータ12で交流電力に変換され、商用交流電力系統14とともに共通の負荷16に印加される。 (中略) また、系統14側の給電路には計器用変流器38と計器用変圧器40が設けられ、負荷16に近い共通給電路には交流器42が設けられている。 (中略) インバータ12は変圧器40の出力に従つて同期制御され、インバータ12の出力は系統14に同期する。またインバータ12は、変圧器40の出力と変流器42の出力に従つて出力電力が制御される。つまり、変圧器40と変流器42の各出力から負荷16への供給電力が求められ、その電力をPLとすると、インバータ12の出力電力がPLの90%になるように制御される。」(6頁13行ないし8頁7行) (ウ)「以上詳細に説明したように、この考案に係る太陽光発電の連係装置によれば、太陽光発電出力の変動および負荷の変動にかかわらず負荷に安定した電力を供給でき、かつ系統への電力逆流を防止することができ、保安面や電力の売買関係にも問題が生じない。とくに負荷に見合つてインバータの出力電力が制御されるので、太陽光発電出力が過大なときでも、インバータと系統とを切り離す必要がなく、安定な電力供給ができる。また、系統の停電時にはインバータを完全に系統から切り離すことができ、保安面で効果がある。」(11頁2ないし12行) (エ)図1として以下の図面が記載されている。 上記(ア)ないし(ウ)の記載及び(エ)の図面の記載から、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「 商用交流電力系統と太陽光発電とを連係させて並列的に負荷を駆動するための太陽光発電の連係装置であって、 太陽光発電セル10の直流出力がインバータ12で交流電力に変換され、商用交流電力系統14とともに共通の負荷16に印加され、 変圧器40と変流器42の各出力から負荷16への供給電力が求められ、その電力をPLとすると、インバータ12の出力電力がPLの90%になるように制御され、 系統への電力逆流を防止する、太陽光発電の連係装置。」 ウ.対比・判断 本件訂正発明2と引用発明1を対比すると、 (ア)引用発明1の「太陽光発電セル10」は、本件訂正発明2の「太陽電池」に相当する。 (イ)引用発明1の「インバータ12」は太陽光発電セル10の直流出力を交流電力に変換し、出力電力が負荷16への供給電力の90%となるように制御しており、太陽光発電セル10の発電電力を制御しているといえるから、本件訂正発明2における「パワーコンディショナ」とは、太陽電池の発電電力を制御する「電力制御手段」といえる点で共通する。しかしながら、当該「電力制御手段」は引用発明1では「インバータ」により構成されているのに対して本件訂正発明2では「パワーコンディショナ」から構成されており、構成される装置が異なる点で相違する。 また、引用発明1の「インバータ12の出力電力」は、本件訂正発明2においてパワーコンディショナの出力である太陽電池の「発電電力」に相当する。 (ウ)本件訂正発明2は「負荷に接続された受変電部」を有するが、引用発明1は当該構成を有さない点で相違する。 また、引用発明1は「変圧器40と変流器42の各出力から負荷16への供給電力」を求めており、引用発明1の「負荷16への供給電力」は負荷が消費する電力に等しいから、本件訂正発明2の「負荷の消費電力を取得する」ことに相当する。 (エ)引用発明1において「インバータ12の出力電力がPLの90%になるように制御され」るから、インバータ12を制御する手段(以下、「インバータ12を制御する手段」という。)が存在することは明らかであり、当該「インバータ12を制御する手段」が本件訂正発明2の「発電制御装置」に相当する。 しかしながら、本件訂正発明2の「発電制御装置」は「パワーコンディショナの出力の上限値を制御」しているのに対して、引用発明1における「インバータ12を制御する手段」はインバータ12の出力電力の上限値を制御することが特定されていない点、及び、本件訂正発明2では「発電制御装置」が「1つ」であることが特定されているのに対して、引用発明1では数について特定されていない点で、引用発明1と相違している。 (オ)引用発明1では負荷16への供給電力(PL)を求め、インバータ12の出力電力をPLの90%になるように制御している。これはインバータ12の出力電力と負荷16への供給電力(PL)との差分を、負荷16への供給電力(PL)の10%(=100%−90%)、すなわち一次係数が0.1である供給電力(PL)の一次関数となるように設定していることといえる。したがって、引用発明1は、明示されていないもののインバータ12の出力電力と負荷16への供給電力との差分が負荷への供給電力の一次関数となるよう設定しているといえる。そうしてみると、本件訂正発明2が「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるように設定して」いるのに対して、引用発明1は出力電力の「上限値」であることについての特定がない点で相違している。 (カ)引用発明1では本件訂正発明2の「出力指令値」に対応する構成について明示されていないものの、インバータ12を制御するためには何らかの制御値が必要になることは技術常識であるから、インバータ12を制御するために引用発明1においても本件訂正発明2の「出力指令値」に相当する構成を有しているといえる。 (キ)本件訂正発明2は、「前記発電制御装置は少なくとも演算処理部」を備えるのに対して、引用発明1には明示されていない。しかしながら、引用発明1は上記(エ)で検討した「インバータ12を制御する手段」において、上記(カ)で検討した「出力指令値」を算出するために何らかの演算を行っていると考えるのが自然であり本件訂正発明2の「演算処理部」に相当する構成を有しているといえる。 ただし、本件訂正発明2は「前記発電制御装置は少なくとも・・・計時部を備え」るのに対して、引用発明1には明示されていない点で相違している。 (ク)引用発明1は、「系統への電力逆流を防止」するものであり、本件訂正発明2と同様に「逆潮流を回避」するものであるが、本件訂正発明2は「前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避し」ているのに対し、引用発明1では出力電力の「上限値以下」とすることにより制御することは特定されていない点で相違する。 (ケ)本件訂正発明2の「発電制御装置」は「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能」に構成されているのに対し、引用発明1は当該構成を有していない点で相違する。 (コ)引用発明1の「太陽光発電の連係装置」は本件訂正発明2の「発電制御システム」に相当する。 そうしてみると、引用発明1は本件訂正発明2と以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「 太陽電池の発電電力を制御する電力制御手段と、 負荷の消費電力を取得すると共に前記電力制御手段の出力を制御する発電制御装置と、を備え、 前記発電制御装置は、少なくとも演算処理部を備え、前記発電電力を、前記発電電力と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、 前記出力指令値に基づいて前記電力制御手段は前記発電電力を制御することで逆潮流を回避することを特徴とする発電制御システム。」 (相違点1) 本件訂正発明2では、太陽電池の発電電力を制御を行う「電力制御手段」が「パワーコンディショナ」であるのに対して、引用発明1では「電力制御手段」として「インバータ12」が制御を行っている点。 (相違点2) 本件訂正発明2では、発電制御システムは「負荷に接続された受変電部」を備えているのに対して、引用発明1は当該構成を有さない点。 (相違点3) 本件訂正発明2では「発電制御装置」は「前記パワーコンディショナの出力の上限値を制御する1つの発電制御装置」であり、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が消費電力の一次関数となるよう設定して」いるのに対して、引用発明1では「インバータ12を制御する手段」が「1つ」であるとの特定はなく、また出力電力の「上限値」と供給電力との差分に基づき発電電力の「上限値」を設定し制御することが特定されていない点。 (相違点4) 本件訂正発明2の「発電制御装置」は少なくとも「計時部を備え」ており、前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能」に構成されているのに対し、引用発明1は当該構成を有していない点。 (相違点5) 本件訂正発明2は、逆潮流の回避を、出力指令値に基づいて発電電力が上限値以下となるようにパワーコンディショナを制御することにより行っているのに対し、引用発明1では出力電力の「上限値以下」に制御することは特定されていない点。 事案に鑑み、相違点4について先に検討する。 引用発明1は「計時部を備え」「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能」(以下、「相違点4に係る事項」という。)とするものではない。そして、本件特許の出願時において、相違点4に係る事項が周知技術や公知技術であるということもできない。 そうしてみると、引用発明1の相違点4に係る事項は当業者が容易に想到できたものとはいえない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明2は引用発明1から容易に発明できたものとはいえない。 本件訂正発明2に係る請求項2を引用する請求項3ないし5に係る発明についても同様である。 また、本件訂正発明2及び請求項2を引用する請求項3ないし5に係る発明には、他に拒絶理由を発見しない。 2 訂正事項2 (1)訂正の目的について ア.訂正事項2のうち 「太陽電池の発電電力の上限値を制御するパワーコンディショナに接続される1つの発電制御装置であって、」 との記載を追加する訂正(以下、「訂正事項2−1」という。)について検討する。 上記訂正事項2−1は、発電制御装置が「太陽電池の発電電力の上限値を制御するパワーコンディショナに接続され」、さらに数が1つであることを特定する訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ.訂正事項2のうち 「前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、」 との記載を追加する訂正(以下、「訂正事項2−2」という。)について検討する。 上記訂正事項2−2は、「発電制御装置」が「少なくとも演算処理部及び計時部を備え」る装置であることを特定し、「発電制御装置」の構成を限定する訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 ウ.訂正事項2のうち 「太陽電池の発電電力及び負荷の消費電力を取得すると共に、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し」 と記載されているのを、 「太陽電池の発電電力と負荷の消費電力とを取得すると共に、前記演算処理部を用いて前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し」 とする訂正(以下、「訂正事項2−3」という。)について検討する。 上記訂正事項2−3は、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出」する事項が「前記演算処理部を用いて」行われることを特定する訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 エ.訂正事項2のうち 「前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避・・・」 と記載されているのを 「前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避・・・」 とする訂正(以下、「訂正事項2−4」という。)について検討する。 上記訂正事項2−4は、「前記パワーコンディショナ」が「前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避」する動作が「前記出力指令値に基づいて」行われることを特定する訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 オ.訂正事項2のうち 「発電制御装置」 と記載されているのを 「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能であることを特徴とする発電制御装置」 とする訂正(以下、「訂正事項2−5」という。)について検討する。 上記訂正事項2−5は、請求項6の発電制御装置が「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し」ているとの記載に関連して、「一次関数の一次係数」が「前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」ことを特定する訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて ア.訂正事項2−1について 本件明細書段落【0027】には、上記「(1)ア.」に摘記した記載があり、当該記載から発電制御装置が太陽電池1の発電電力の上限値を制御していることは明らかである。また、上記記載によれば発電制御装置6は出力指令値をPCS2(パワーコンディショナ)に出力しており、図1から発電制御装置6がPCS2(パワーコンディショナ)に接続していることが見てとれる。さらに、図1からは発電制御装置6が1つであることも見て取れる。 したがって、「発電制御装置」が「太陽電池1の発電電力の上限値を制御」すること、「発電制御装置」が「パワーコンディショナに接続される」こと、及び、「発電制御装置」が「1つ」であることは願書に添付した明細書及び図面に記載した事項であり、訂正事項2−1は特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 イ.訂正事項2−2について 本件明細書の段落【0027】に「制御装置6は、さらにマイコン等の演算処理部、記憶装置及び計時部を備える。」とあるように、明細書には発電制御装置が少なくとも演算処理部び計時部を備えることが記載されている。 したがって、「発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え」ることは願書に添付した明細書に記載した事項であり、訂正事項2−2は特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ.訂正事項2−3について 本件明細書段落【0027】には、 「制御装置6は、・・・、演算処理部において、得られた消費電力の値を用い、後述する関数(一次関数)によって太陽電池1の発電電力の上限値を設定する。さらに制御装置6は、発電電力の上限値を太陽電池1の定格電力で除して出力指令値(=(発電電力の上限値)/(定格電力)[%])を算出する。出力指令値は、入出力部を経由してPCS2に出力され、PCS2は出力指令値に従って、太陽電池1の発電電力が上限値以下となるように制御する。」とあり、発電制御装置は演算処理部を用いて発電電力の上限値を設定し、PCS2(パワーコンディショナ)の出力指令値を算出していることは明らかである。また、上記段落【0027】中の「後述する関数(一次関数)」に関して、段落【0035】【0036】に以下のように記載されている。 「【0035】 消費電力は時刻により変化するため、時刻tにおける消費電力及び発電電力上限をそれぞれS(t)、P(t)[W]とする。 S(t)=消費電力 [式1] P(t)=発電電力上限値(最大発電許容値) [式2] 【0036】 P(t)は、S(t)とP(t)との差分が、S(t)の一次式となるように設定する。 S(t)−P(t)=aS(t)+b [式3]」 上記段落【0035】【0036】の記載によれば段落【0027】中の「後述する関数(一次関数)」は発電電力上限値と消費電力の差分が消費電力の一次関数となる関係を示しており、当該一次関数によって発電制御装置は太陽電池の発電電力の上限値を設定している。 したがって、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出」する事項が「演算処理部を用いて」行われることを特定した訂正事項2−3は、願書に添付した明細書に記載した事項であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 エ.訂正事項2−4について 本件明細書段落【0027】には 「出力指令値は、入出力部を経由してPCS2に出力され、PCS2は出力指令値に従って、太陽電池1の発電電力が上限値以下となるように制御する」と記載されており、また当該記載における「制御」は、段落【0017】に記載された発明の効果を参照すれば逆潮流を回避するためのものであることは明らかである。 したがって、「前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避」することが「前記出力指令値に基づいて」行われることを特定した訂正事項2−4は、願書に添付した明細書に記載した事項であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 オ.訂正事項2−5について 本件明細書の段落【0050】に「また、時間積分する時刻t0、t1は、適宜変更が可能であり、例えば6時から10時、10時から14時、14時から18時のように複数の時間帯を設け、それぞれの時間帯でa、bを確定し、それぞれの時間帯毎に一次係数a、0次係数bの値を変えてもよい。」とあるように、一次関数の一次係数が時間帯毎に変更可能であることが記載されている。 そして、本件明細書の段落【0027】には「制御装置6は、さらにマイコン等の演算処理部、記憶装置及び計時部を備える。制御装置6は、計時部の計時機能を用い、指定された(又は記憶装置に記憶された)頻度で(又は日時に)、消費電力を取得し、演算処理部において、得られた消費電力の値を用い、後述する関数(一次関数)によって太陽電池1の発電電力の上限値を設定する。」と記載されているように発電制御装置は計時部を備え、計時部の計時機能を用いて制御を行っているから、上述した段落【0050】に記載された時間帯毎の一次係数aの変更も計時部の計時機能によることは明らかである。 したがって、発電制御装置において「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」ことは願書に添付した明細書に記載した事項であり、訂正事項2−5は特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3)実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア.訂正事項2−1について 訂正事項2−1に係る訂正は、上記(1)ア.で指摘したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かかる訂正によって特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではないことは明らかである。 したがって、訂正事項2−1に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 イ.訂正事項2−2について 訂正事項2−2に係る訂正は、上記(1)イ.で指摘したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かかる訂正によって特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではないことは明らかである。 したがって、訂正事項2−2に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ.訂正事項2−3について 訂正事項2−3に係る訂正は、上記(1)ウ.で指摘したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かかる訂正によって特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではないことは明らかである。 したがって、訂正事項2−3に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 エ.訂正事項2−4について 訂正事項2−4に係る訂正は、上記(1)エ.で指摘したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かかる訂正によって特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではないことは明らかである。 したがって、訂正事項2−4に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 オ.訂正事項2−5について 訂正事項2−5に係る訂正は、上記(1)オ.で指摘したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かかる訂正によって特許請求の範囲の内容が実質的に拡張・変更されるものではないことは明らかである。 したがって、訂正事項2−5に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について ア.本件訂正発明6について 訂正事項2に係る本件訂正後の請求項6に係る発明(以下、「本件訂正発明6」という。)は以下のとおりと認める。 「太陽電池の発電電力の上限値を制御するパワーコンディショナに接続される1つの発電制御装置であって、 前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、 太陽電池の発電電力と負荷の消費電力とを取得すると共に、 前記演算処理部を用いて前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避し、 前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能であることを特徴とする発電制御装置。」 イ.引用発明2について 本件訂正審判請求書において独立特許要件の判断に引用された実開昭61−58834号公報に係る実願昭59−142040号のマイクロフィルム(引用文献)には上記「1(4)イ.」の(ア)ないし(エ)に引用したとおりの事項が記載されており、当該記載によれば以下のことがいえる。 ・上記「1(4)イ.」の(ア)によれば、「商用交流電力系統と太陽光発電とを連係させて並列的に負荷を駆動するための太陽光発電の連係装置に関」して記載されている。 ・上記「1(4)イ.」の(イ)によれば、「変圧器40と変流器42の各出力から負荷16への供給電力が求められ、その電力をPLとすると、インバータ12の出力電力がPLの90%になるように制御される」から、変圧器40と変流器42の各出力から負荷16への供給電力を求め、インバータ12の出力電力が前記供給電力の90%になるようにインバータ12を制御する手段(以下、「インバータ12を制御する手段」という。)が存在することは明らかである。 ・上記「1(4)イ.」の(イ)によれば、「太陽光発電セル10の直流出力がインバータ12で交流電力に変換され、商用交流電力系統14とともに共通の負荷16に印加され」ている。 ・上記「1(4)イ.」の(イ)及び(ウ)によれば、「インバータ12を制御する手段」はインバータ12の出力電力を負荷16の供給電力の90%となるように制御することにより、系統への電力逆流を防止するものといえる。 そうしてみると、上記「1(4)イ.」の(ア)ないし(エ)の記載、及び上記検討した事項を総合すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「商用交流電力系統と太陽光発電とを連係させて並列的に負荷を駆動するための太陽光発電の連係装置において、変圧器40と変流器42の各出力から負荷16への供給電力を求め、インバータ12の出力電力が前記供給電力の90%になるようにインバータ12を制御する手段であって、 太陽光発電セル10の直流出力がインバータ12で交流電力に変換され、商用交流電力系統14とともに共通の負荷16に印加され、 インバータ12の出力電力を負荷16の供給電力の90%となるように制御することにより、系統への電力逆流を防止する、 インバータ12を制御する手段。」 ウ.対比・判断 本件訂正発明6と引用発明2を対比すると、 (ア)引用発明2の「インバータ12」は太陽光発電セル10の直流出力を交流電力に変換しており、太陽光発電セル10の出力電力を制御しているといえるから、本件訂正発明6における「パワーコンディショナ」と太陽電池の発電電力を制御する「電力制御手段」であるといえる点で共通する。しかしながら、当該「電力制御手段」は引用発明2では「インバータ」により構成されているのに対して本件訂正発明6では「パワーコンディショナ」から構成され、構成される装置が異なる点で相違する。 また、引用発明2の「インバータ12の出力電力」は、本件訂正発明6においてパワーコンディショナの出力である太陽電池の「発電電力」に相当する。 (イ)本件訂正発明6における「発電制御装置」は「パワーコンディショナ」を制御しているといえるから、引用発明2において「インバータ12」を制御する「インバータ12を制御する手段」は本件訂正発明6の「発電制御装置」に相当する。ただし、本件訂正発明6における「発電制御装置」は「1つ」であるのに対して、引用発明2では数が特定されていない点で相違する。 (ウ)本件訂正発明6の「発電制御装置」は「太陽電池の発電電力の上限値を制御」しているのに対して、引用発明2の「インバータ12を制御する手段」はインバータ12の出力電力の上限値を制御することは特定されていない点相違する。 また、引用発明2の「インバータ12を制御する手段」は、インバータ12を制御しているから「インバータ12」に接続されているといえ、この点で本件訂正発明6の「パワーコンディショナに接続される」「発電制御装置」に相当する。 (エ)引用発明2の「インバータ12を制御する手段」は変圧器40と変流器42の各出力から負荷16への供給電力を求めインバータ12を制御しているから、制御に必要な制御値を演算して求めていると考えるのが自然であり、明示されていないものの引用発明2は本件訂正発明6における「演算処理部」を少なくとも有しているといえる。 しかしながら、引用発明2の「インバータ12を制御する手段」は「計時部」を備えていない点で本件訂正発明6と相違する。 (オ)引用発明2において、変圧器40と変流器42の各出力から求められる「負荷16への供給電力」は負荷が消費する電力に等しいから、本件訂正発明6の「負荷の消費電力」に相当する。 (カ)引用発明2では「インバータ12を制御する手段」はインバータ12の出力電力が供給電力の90%になるようにインバータ12を制御していることから、技術常識に照らせば「インバータ12を制御する手段」は制御を行う上で「インバータ12の出力電力」を検出していると考えるのが自然である。そして、引用発明2において「インバータ12を制御する手段」は変圧器40と変流器42の各出力から負荷16への供給電力を求めていることを踏まえると、引用発明2において「インバータ12を制御する手段」は「インバータ12の出力電力」と「負荷16への供給電力」を求めているといえ、これは本件訂正発明6の発電制御装置が「太陽電池の発電電力と負荷の消費電力とを取得する」構成に相当する。 (キ)引用発明2では負荷16への供給電力を求め、インバータ12の出力電力を負荷への供給電力の90%になるように制御している。これはインバータ12の出力電力と負荷16への供給電力との差分を、負荷16への供給電力の10%(=100%−90%)、すなわち一次係数が0.1である供給電力の一次関数となるように設定していることといえる。したがって、引用発明2には明示されていないものの、引用発明2においてインバータ12の出力電力と負荷16への供給電力との差分が負荷への供給電力の一次関数となるよう設定しているといえる。そうしてみると、本件訂正発明6が「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数」となるように設定しているのに対して、引用発明2は出力電力の「上限値」であることについて特定されていない点で相違している。また、上記(エ)で検討したように引用発明2の「インバータ12を制御する手段」がインバータ12を制御するために何らかの制御値を演算して出力することが必要になるのは技術常識であるから、インバータ12を制御するために引用発明2も本件訂正発明6の「出力指令値」に相当する値を「インバータ12を制御する手段」が出力しているということができる。さらに引用発明2においては、「出力指令値」は本件訂正発明6の「演算処理部」に相当する上記(エ)で検討した「演算処理部」において算出されると考えるのが自然である。 (ク)引用発明2は「系統への電力逆流を防止」するものであり、本件訂正発明6と同様に「逆潮流を回避」するものといえるが、本件訂正発明6は逆潮流の回避を、発電電力が上限値以下となるようにパワーコンディショナを制御することによって行っているのに対して、引用発明2では出力電力の「上限値以下」になるように制御していない点で相違する。 また、引用発明2における出力電力の制御は、上記(キ)で検討したように「出力指令値」に基づいて行われる構成となり、当該構成は本件訂正発明6の「前記出力指令値に基づいて」制御する構成に相当する。 (ケ)本件訂正発明6では、「発電制御装置」は「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能」に構成されているのに対し、引用発明2は当該構成を有していない点で相違している。 上記(ア)ないし(ケ)によれば、本件訂正発明6と引用発明2は以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「太陽電池の発電電力を制御する電力制御手段に接続される発電制御装置であって、 前記発電制御装置は少なくとも演算処理部を備え、 太陽電池の発電電力と負荷の消費電力とを取得すると共に、 前記演算処理部を用いて前記発電電力を、前記発電電力と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して電力制御手段の出力指令値を算出し、 前記出力指令値に基づいて前記電力制御手段は前記発電電力を制御することで逆潮流を回避する、発電制御装置。」 (相違点1) 本件訂正発明6では「発電制御装置」は太陽電池の発電電力の上限値を制御しており、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるように設定して」いるのに対して、引用発明2は出力電力の「上限値」と供給電力との差分に基づき発電電力の「上限値」を設定し制御することが特定されていない点。 (相違点2) 本件訂正発明6では、太陽電池の発電電力の制御を行う「電力制御手段」が「パワーコンディショナ」であるのに対して、引用発明2では「電力制御手段」として「インバータ12」が制御を行っている点。 (相違点3) 本件訂正発明6では「発電制御装置」は「1つ」であることが特定されているが、引用発明2では数の特定がなされていない点。 (相違点4) 本件訂正発明6は逆潮流の回避を、発電電力が上限値以下となるようにパワーコンディショナを制御することによって行っているのに対して、引用発明2では出力電力が「上限値以下」とすることについては特定されていない点。 (相違点5) 本件訂正発明6において、「発電制御装置」は少なくとも「計時部を備え」、「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能」に構成されているのに対し、引用発明2は当該構成を有していない点。 事案に鑑み、相違点5について先に検討する。 引用発明2は「計時部を備え」「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能」(以下、「相違点5に係る事項」という。)とするものではない。そして、本件特許の出願前、相違点5に係る事項が周知技術や公知技術であるということもできない。 そうしてみると、引用発明2の相違点5に係る事項は当業者が容易に想到できたものとはいえない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明6は引用発明2から容易に発明できたものとはいえない。 また、本件訂正発明6に係る発明には、他に拒絶理由を発見しない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】削除 【請求項2】 太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、負荷に接続された受変電部と、 前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力の上限値を制御する1つの発電制御装置と、を備え、 前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避し、 前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能であることを特徴とする発電制御システム。 【請求項3】 前記発電制御システムは、 さらに蓄電池を備えることを特徴とする 請求項2記載の発電制御システム。 【請求項4】 前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の0次係数は、 前記蓄電池の蓄電可能量に依存することを特徴とする 請求項3記載の発電制御システム。 【請求項5】 前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の一次係数と0次係数は、 時間に依存することを特徴とする 請求項2乃至4のいずれか1項記載の発電制御システム。 【請求項6】 太陽電池の発電電力の上限値を制御するパワーコンディショナに接続される1つの発電制御装置であって、 前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、 太陽電池の発電電力と負荷の消費電力とを取得すると共に、 前記演算処理部を用いて前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分か前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避し、 前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能であることを特徴とする発電制御装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2021-12-10 |
結審通知日 | 2021-12-15 |
審決日 | 2022-01-04 |
出願番号 | P2018-042951 |
審決分類 |
P
1
41・
854-
Y
(H02J)
P 1 41・ 853- Y (H02J) P 1 41・ 851- Y (H02J) P 1 41・ 856- Y (H02J) P 1 41・ 841- Y (H02J) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
井上 信一 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 山田 正文 |
登録日 | 2018-07-06 |
登録番号 | 6364567 |
発明の名称 | 発電制御装置及びそれを用いた発電制御システム |
代理人 | 奥村 直樹 |
代理人 | 奥村 直樹 |
代理人 | 工藤 嘉晃 |
代理人 | 工藤 嘉晃 |
代理人 | 特許業務法人森脇特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人森脇特許事務所 |