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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B32B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B32B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B32B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B |
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管理番号 | 1383215 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-12-26 |
確定日 | 2022-01-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6535032号発明「複合シート、並びに、PVC及び可塑剤フリーの発泡装飾シートの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6535032号の明細書及び特許請求の範囲を令和3年6月23日提出の訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−9〕について訂正することを認める。 特許第6535032号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第6535032号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜9に係る特許についての出願は、平成27年1月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年3月6日、欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願であって、令和元年6月7日に特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和元年6月26日)がされたものであって、本件特許異議申立に係る主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和元年12月26日 特許異議申立人 渡辺陽子(以下「申立人」という。)による 請求項1〜9に係る特許に対する特許異議の申立て 令和2年3月31日付け 取消理由通知 同年7月1日 特許権者による訂正請求及び意見書の提出 同年9月11日 申立人による意見書の提出 同年11月5日 申立人による上申書の提出 同年12月25日付け 訂正拒絶理由通知 令和3年2月19日 特許権者による意見書及び手続補正書の提出 同年3月29日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年6月23日 特許権者による訂正請求及び意見書の提出 (これによる訂正を「本件訂正」という。) 同年8月19日 申立人による意見書の提出 なお、令和2年7月1日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2.本件訂正について 1.訂正の内容 本件訂正の内容は以下のとおりである。 なお、訂正箇所に下線を付し、また削除された文字の前後1文字に下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「発泡層」とあるのを、「発泡可能層」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記基層は、0℃〜220℃の範囲における収縮及び膨張の比率が2%未満であり、厚みが0.05mm〜0.15mmであり、」という限定を追加する訂正を行う。 (3)訂正事項3 特許請求項の範囲の請求項1に「前記ポリオレフィン材料は、結晶化度が25%未満であり、」という限定を追加する訂正を行う。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「前記発泡可能層は、前記基層よりも高い熱膨張及び熱収縮性を有し、」という限定を追加する訂正を行う。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1に「前記基層に対する前記発泡可能層の弾性率比は、0.05未満である」という限定を追加する訂正を行う。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項8の「必要に応じて、」を削除する訂正を行う。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に「前記複合シートに印刷する工程」とあるのを、「前記複合シートの前記発泡可能層の表面に印刷を行う工程」に訂正する。 (8)訂正事項8 明細書の段落【0013】、【0017】、【0018】、【0020】、【0022】、【0030】、【0032】、【0040】、【0041】、【0050】−【0052】、【0054】、【0055】、【0061】、【0064】−【0066】、【0068】、【0069】、【0071】、【0072】、【0074】、【0078】、【0079】、【0081】、【0082】にそれぞれ「発泡層」と記載されている箇所を「発泡可能層」に訂正する。 (9)訂正事項9 明細書の段落【0059】に、「それゆえに、弾性率が0.1GPa未満の柔らかい表面層が必要とされる。」とあるのを、「それゆえに、表面層を構成するポリオレフィン材料として弾性率が0.1GPa未満の柔らかいポリオレフィン材料が必要とされる。」に訂正する。 (10)訂正事項10 明細書の段落【0075】に、 「表面層が、弾性率が0.1GPa未満で、できるだけ小さい熱膨張係数の柔らかい合成樹脂から作られなければならないことを示す。」とあるのを、 「表面層が、弾性率が0.1GPa未満の柔らかいポリオレフィン材料から作られなければならないことを示す。」に訂正する。 (11)訂正事項11 明細書の段落【0055】に「低い高い熱膨張/収縮性」とあるのを、「低い熱膨張/収縮性」に訂正する。 2.一群の請求項 本件訂正前の請求項2〜9は、本件訂正前の請求項1を直接又は間接に引用するものであって、訂正事項1ないし5によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、請求項〔1〜9〕に係る本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する、一群の請求項ごとにされたものである。 3.訂正の適否 (1)訂正事項1について 本件特許に係る出願(特願2016−572892号)は、特許法第184条の4第1項の「外国語特許出願」である国際出願PCT/EP2015/050975(以下「本件国際出願」という。)が、同法第184条の3第1項の規定により特許出願とみなされたものである。 したがって、本件訂正請求に係る訂正事項のうち、同法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものについて、同条第9項において準用する同法第126条第5項を適用する際の「外国語書面出願」及び「外国語書面」は、同法第184条の19の規定により、それぞれ「第184条の4第1項の外国語特許出願」及び「第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」となるので、同法第126条第5項で規定する「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」は、「第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」となる。 すなわち、本件訂正請求に係る訂正事項のうち、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものについて、同条第9項において準用する同法第126条第5項を適用する際の「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」は、国際出願日における本件国際出願の明細書、請求の範囲又は図面となる(以下「国際出願日における本件国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」を「基準明細書等」という。国際公開第2015/132014号を参照。)。 訂正事項1は、基準明細書等の特許請求の範囲の請求項1に「foamable layer」と記載されていたところ、訂正前の請求項1において「発泡層」と翻訳していたものが誤訳であることから「発泡可能層」に訂正するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものである そして、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の段落【0082】には、「前記発泡層は、厚みが0.2mmであり、厚みが0.1mmの不織材料にラミネートし、215℃、1分間、対流オーブンで発泡させた。」と記載されているから、訂正前の「発泡層」が発泡前の状態、すなわち発泡可能な層を意味するものであることが明らかであり、新規事項を追加するものではない。また訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項1において「基層」の厚みと熱特性とが特定されていなかったところ、「前記基層は、0℃〜220℃の範囲における収縮及び膨張の比率が2%未満であり、厚みが0.05mm〜0.15mmであり、」と特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の段落【0026】には、「前記基層は、弾性率が1GPa超であり、0℃〜220℃の範囲で収縮と膨張の比率が2%未満であり、厚みが0.05mm〜0.15mmであり、およそ50g/m2〜300g/m2に相当する。」と記載されているから、新規事項を追加するものではない。また訂正事項2は、発明特定事項を直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項1において「ポリオレフィン材料」の結晶化度が特定されていなかったところ、これを特定するための新たな限定を加えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書等の段落【0028】には、「好ましくは、前記ポリオレフィンは、低密度ポリオレフィンであり、密度が0.96g/cm3未満であり、好ましくは0.90g/cm3である。さらに、前記ポリオレフィンは結晶化度が40%未満であってもよく、より好ましくは結晶化度が25%未満である。」と記載されているから、新規事項を追加するものではない。また訂正事項3は、発明特定事項を直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項1において「発泡層」の熱膨張及び熱収縮性が特定されていなかったところ、これを特定するための新たな限定を加えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書等の段落【0055】及び図1には、「図1を参照すると、参照番号10は、高い熱膨張/収縮性の前記発泡層を表し、」と記載されているから、新規事項を追加するものではない。また訂正事項4は、発明特定事項を直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項1において「基層」及び「発泡層」の弾性率比が特定されていなかったところ、これを特定するための新たな限定を加えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書等の段落【0059】には、「弾性率比E1/E2が0.05未満のとき、その曲率半径、それゆえのカールは、E1/E2比の減少にともない急速に減少する。それゆえに、弾性率が0.1GPa未満の柔らかい表面層が必要とされる。」と記載されているから、新規事項を追加するものではない。また訂正事項5は、発明特定事項を直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項8において「(b)必要に応じて、前記複合シートに印刷する工程」と記載されていることで「前記複合シートに印刷する工程」が不明瞭なものとなっていたところ、「必要に応じて、」を削除することで明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また訂正事項6は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項8において「前記複合シート」のうち印刷対象となる層が特定されていなかったところ、これを特定するための新たな限定を加えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書等の段落【0079】には、「次の工程において、前記発泡層を前記基層にラミネートし、170℃で1分間架橋した。前記発泡層にグラビア印刷試験機によりポリオレフィン表面に適した水系インクで印刷し、対流オーブンで、205℃で1分間発泡させた。」 と記載されているから、発泡層(発泡可能層)と基層がラミネートされた複合シートの発泡層(発泡可能層)に印刷を行っていることが明らかであり、新規事項を追加するものではない。また訂正事項7は、発明特定事項を直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (8)訂正事項8について 訂正事項8は、訂正事項1と同様に、訂正前の「発泡層」と翻訳していたものが誤訳であることから「発泡可能層」に訂正するものである。 よって、上記(1)で訂正事項1について述べたのと同様に、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (9)訂正事項9について 訂正事項9は、訂正前の段落【0059】に「それゆえに、弾性率が0.1GPa未満の柔らかい表面層が必要とされる。」と表面層の弾性率として記載されていたところ、段落【0022】の「前記発泡層は、ポリオレフィン材料、発泡剤、及び任意の添加剤を含む。」、段落【0024】の「前記ポリオレフィンは、弾性率が0.1GPa未満であり」、及び段落【0025】の「そのポリオレフィンブレンド全体の弾性率が0.1GPa未満である限り」と表面層に含まれるポリオレフィン材料の弾性率とする記載と不整合が生じていたものを、「表面層を構成するポリオレフィン材料」の弾性率であることに訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また訂正事項9は、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (10)訂正事項10について 訂正事項10は、訂正前の段落【0075】に「弾性率が0.1GPa未満で、できるだけ小さい熱膨張係数の柔らかい合成樹脂」と合成樹脂の弾性率として記載されていたところ、段落【0022】の「前記発泡層は、ポリオレフィン材料、発泡剤、及び任意の添加剤を含む。」、段落【0024】の「前記ポリオレフィンは、弾性率が0.1GPa未満であり」、及び段落【0025】の「そのポリオレフィンブレンド全体の弾性率が0.1GPa未満である限り」とポリオレフィン材料の弾性率とする記載と不整合が生じていたものを、ポリオレフィン材料の弾性率であることに訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また訂正事項10は、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (11)訂正事項11について 訂正事項11は、基準明細書等の7ページ26〜27行に「low thermal expansion/contraction property」と記載されていたところ、訂正前は「低い高い熱膨張/収縮性」と翻訳していたものが誤訳であることから「低い熱膨張/収縮性」に訂正するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものである また訂正事項11は、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (12)明細書の訂正と関係する請求項について 上記2.のとおり、請求項1〜9は一群の請求項であるため、訂正事項1〜11に係る請求項1〜9の全てについて訂正が請求されるものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。 4.小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1〜3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第4〜6項の規定に適合するので、明細書及び特許請求の範囲を、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1〜9〕について訂正することを認める。 第3.訂正後の本件特許発明 上記第2.のとおり、本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1〜9は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された、次のとおりのものである。 なお、訂正特許請求の範囲の請求項1〜9に係る発明を、以下「本件訂正発明1」等という。 「【請求項1】 複合シートであって、 (1)弾性率が1GPaを超える基層と、 (2)前記基層と接合する発泡可能層とを含み、 前記基層は、0℃〜220℃の範囲における収縮及び膨張の比率が2%未満であり、厚みが0.05mm〜0.15mmであり、 前記発泡可能層は、弾性率が0.1GPa未満のポリオレフィン材料100重量部に対して、 0.1〜10重量部の発泡剤と、 0〜200重量部の添加剤を含み、 前記ポリオレフィン材料は、結晶化度が25%未満であり、 前記発泡可能層は、前記基層よりも高い熱膨張及び熱収縮性を有し、厚みが0.05〜0.3mmであり、 前記基層に対する前記発泡可能層の弾性率比は、0.05未満である、複合シート。 【請求項2】 前記ポリオレフィン材料は、熱可塑性エラストマーポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アタクチックポリプロピレンポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の複合シート。 【請求項3】 前記発泡剤は、アゾジカルボンアミド及び/又はそれらの金属塩、ヒドラゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、トリヒドラジノ−sym−トリアジン、pp'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチル−オジニトリル、p−トルエンスルホニルヒドラジド、ビスベンゼンスルホニルヒドラジドからなる群から選択される、請求項1又は請求項2に記載の複合シート。 【請求項4】 前記添加剤は、触媒、顔料、充填剤、艶消剤、抗菌剤、UV安定剤、難燃剤、及び放出化合物からなる群から選択される、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の複合シート。 【請求項5】 前記添加剤は、触媒を含み、前記触媒は、酸化亜鉛、リシノール酸バリウム、マレイン酸メトキシスズ、水和ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、酢酸鉛、ラウリン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、及びリン酸アミルカドミウムからなる群から選択される、請求項4に記載の複合シート。 【請求項6】 前記基層は、紙、紙状材料、不織材料、織物、不織布、及びプラスチック箔からなる群から選択される、請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の複合シート。 【請求項7】 前記ポリオレフィン材料は、弾性率が0.1GPa超のポリオレフィン及び弾性率が0.1GPa未満のポリオレフィンを含むポリオレフィンブレンドであり、前記ポリオレフィンブレンド全体の弾性率が0.1GPa未満である、請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の複合シート。 【請求項8】 発泡装飾シートの製造方法であって、 (a)請求項1〜請求項7の何れか1つに記載の複合シートを供給する工程と、 (b)前記複合シートの前記発泡可能層の表面に印刷を行う工程と、 (c)前記複合シートを発泡させる工程 を含む、発泡装飾シートの製造方法。 【請求項9】 請求項8に記載の方法によって製造される装飾シート、特に壁紙。」 第4.取消理由(決定の予告)の要旨 令和3年2月19日に提出された手続補正書により補正された令和2年7月1日に提出された訂正請求書によって訂正された請求項1〜9に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した令和3年3月29日付けの取消理由の要旨は、次のとおりである。 1)本件特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 2)本件特許は、特許請求の範囲の記載が発明の詳細な説明に記載されたものであるということができないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 3)本件特許の請求項1〜7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 4)本件特許の請求項1〜9に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証、または甲第2号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 甲第1号証等の証拠を「甲1」等と略記し、甲1等に記載された事項を「甲1記載事項」などという。 1.理由1(特許法第36条第4項第1号)について (1)「弾性率」について、発明の詳細な説明は実施可能な程度に記載されていない。「発泡可能層」の「弾性率」も同様である。 (2)膜厚、弾性率、熱膨張係数について、「基層」の熱膨張係数、及び「発泡可能層」の弾性率及び熱膨張係数が、発明の詳細な説明で特定されていないため、実施可能な程度に記載しているといえない。 (3)発明の詳細な説明では、実施例と比較例の比較がなされておらず、各構成の作用・効果や数値範囲の臨界的意義が理解できない。 2.理由2(特許法第36条第6項第1号)について 本件発明の課題の解決に関し、発明の詳細な説明を見るに、「特定の群の合成樹脂を使用することでカールの影響を最小化し、カールのない複合シートの生産すること」については、各層の膜厚、弾性率、熱膨張係数をパラメータとするティモシェンコの分析解の方程式に基づいて課題を解決できるとされている。 これに反し本件訂正前の本件発明1は弾性率のみの特定とされているので、技術常識を参酌しても、当業者が課題を解決できると認識できる程度に記載されているとはいえない。 加えて本件訂正前の本件発明1は、「基層」の熱膨張係数と、「発泡可能層」の弾性率及び熱膨張係数を特定していないので、技術常識を参酌しても、当業者が課題を解決できると認識できる程度に記載されているとはいえない。 3.理由3(特許法第29条第1項第3号)について 本件発明1〜7は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 4.理由4(特許法第29条第2項)について (1)甲1を主引例とする理由 本件発明1〜7は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件発明8及び9は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (2)甲2を主引例とする理由 本件発明1〜7は、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件発明8及び9は、甲2に記載された発明、甲1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 甲1:国際公開第2013/047673号 甲2:特開2000−159923号公報 甲3:【エバフレックス○R(当審注:○内にRの表記。以下同じ。)成形】,[online],三井・ダウ ポリケミカル,[令和元年12月26日印刷],インターネット <URL:http://www.mdp.jp/product/eva/pdf/eva_m_p01_h1.pdf> 甲4:ユメリット○R(メタロセン触媒L−LDPE)613A,[online],宇部丸善ポリエチレン株式会社,[令和元年12月26日印刷],インターネット <URL:http://www.ube-ind.co.jp/ump/products/umerit/613a.html> 甲5:江前敏晴,外3名,身近な素材『紙』の科学と環境,[online],東京大学大学院農学生命科学研究科生物材料科学専攻製紙科学研究室,[令和元年12月26日印刷],インターネット <URL:http://www.enomae.com/mijikami2010/pdf/2010-04-20.pdf> 甲6:特開2001−49591号公報 甲7:特開平5−83788号公報 甲8:エチレン酢酸ビニル共重合体 ウルトラセン○R,[online],東ソー株式会社,[令和元年12月26日印刷],インターネット <URL:https://www.tosoh.co.jp/product/petrochemicals/polymer/assets/ethylene_vinyl_eva_polymer_01.pdf> 甲9:Technical Information ENGAGE Tm8100,[online],Dow Chemical Company,[令和元年12月26日印刷],インターネット <URL:http://www.cheminno.co.th/wp-content/uploads/2018/file/dow/ENGAGE/TDS-ENGAGE-8100.pdf> 甲10:ADCA系発泡剤/複合発泡剤 ビニホール,[online],[令和元年12月26日印刷],インターネット <URL:https://www.eiwa-chem.co.jp/product/vinyfor> 甲11:特開2016−216672号公報 第5.当審の判断 1.理由1(特許法第36条第4項第1号)について (1)「弾性率」について 当該理由の指摘は、本件特許に対して申立人が提出した特許異議申立書の53ページ(4−5)理由3に基づくものであり、そこには概略、次の事項が挙げられている。 ア 本件特許明細書の関連する記載として、【0026】に「弾性率」という用語の記載があり、「前記弾性率は、対象物の数学的記述、又は力が印加されるときの弾性的に変形(すなわち非永久な)する物質が有する傾向である。対象物の前記弾性率は、前記弾性変形領域でのそれ自体の応力−ひずみ曲線の傾きとして定義される。」と記載されているものの、応力の種類に関する記載はないため、弾性率として認識される、引張弾性率や曲げ弾性率等の、いずれの材料力学的な特性を意味するのか不明でありかつ定義も記載されていない。 イ 加えて、測定条件に関する記載も見当たらない。 そこで、本件特許における「弾性率」の記載が全体として当業者にとり理解しがたいものであるか否かを検討することにより、本件特許発明の実施が困難であるか否かを検討する。 特許発明の技術的範囲の画定に当たっては、特許法第70条第1項及び第2項に定める特許請求の範囲に記載された用語の1つである「弾性率」は、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、その用語の意義を解釈するものとされている。 そこで、本件特許明細書等を検討する。 本件発明の課題の解決に関し、発明の詳細な説明を見るに、「特定の群の合成樹脂を使用することでカールの影響を最小化し、カールのない複合シートの生産すること」については、各層の膜厚、弾性率、熱膨張係数をパラメータとするティモシェンコの分析解の方程式に基づいて課題を解決できるとされている。 そして、基層と発泡層とが積層された複合シートについて、発泡層の材料力学的特性値である「弾性率」の程度に着目していることは、実施例と比較例との対照実験を説明した図2及び【0061】−【0074】の記載から、発泡層の弾性率を支配するポリオレフィン材料を異ならせると、カールの発生状態が変化することが、本件特許明細書等により確認できる。 加えて複合シートでのカールの発生について、【数1】を示しつつ分析を加えた【0055】−【0060】に、「弾性率」に関係する記載として、「弾性率比n=E1/E2」の記載がなされていることから見て、特定できない物性値とされるものが記号Eで扱われることが理解できる。 そうすると、ティモシェンコの式(【数1】)が材料力学の分野で著名なことに照らせば、本件で採り上げて説明している弾性率なる用語が、正しくは、通常記号Eで表されるヤング率を指すことに当業者であれば自然に至ると認められ、上述のアで挙げたような、用語の内容が不明であるとは認められず、特段の定義記載も求められないことになる。また、ヤング率であることに行き着けば、上述のイに挙げた測定条件についても当業者にとり必須ではない。 以上まとめると、本件特許明細書等の記載は、当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものと認められる。 なお、申立人は令和3年8月19日に提出の意見書にて、請求項に記載の「弾性率」なる技術用語が明確である以上、明細書の発明の詳細な説明の記載や、乙1号証の記載の参酌は許されない旨主張するが、上記のとおり本件特許明細書等の記載により当業者が本件特許発明の実施をすることができるのであるから、当該主張は当たらない。 (2)膜厚、弾性率、熱膨張係数について 先の取消理由通知で当審の判断として指摘した点は、本件の特許発明として訂正請求を反映して認識される発明の段階では、「基層」の厚みは特定されていたものの、その熱膨張係数は特定されておらず、「発泡可能層」については厚みと主となる材料の弾性率は特定されているものの、他の材料と混合された後の弾性率は特定されておらず、熱膨張係数も特定されていないという点であり、本件発明の「弾性率」はティモシェンコの分析解の方程式に基づくものと発明の詳細な説明では示されており、当該方程式は各層の膜厚、弾性率、熱膨張係数をパラメータとする式であるから、これらのパラメータ3種が特定される必要があると理解すべきところ、本件明細書の発明の詳細な説明には「基層」の熱膨張係数と、「発泡可能層」の弾性率及び熱膨張係数の特定を欠いていることから見て、本件特許発明である請求項1−9を実施可能な程度に記載しているとはいえないとしたものである。 これに対し特許権者は令和3年6月23日に提出の訂正請求書にて、特許請求の範囲及び特許明細書に訂正を施した。 これによると、「基層」については「0℃〜220℃の範囲における収縮及び膨張の比率が2%未満であり」とされ、「発泡可能層」と「基層」との間に、「前記発泡可能層は、前記基層よりも高い熱膨張及び熱収縮性を有し」という条件が示され、「基層」と「発泡可能層」との間に「弾性率比は、0.05未満である」との条件も示された。 これら示された数値及び対応関係の条件は、「基層」の熱膨張の度合いを範囲として示したことになり、また、「基層」の熱膨張の度合いを特定したことで、「基層」と「発泡可能層」との間に成り立つ熱膨張の大小関係が同時に示されたことにより「発泡可能層」の熱膨張の度合いも明らかとなったものと認められる。 また、他の材料と混合された後の「発泡可能層」の弾性率にしても、「基層」の弾性率の範囲が特定済みであることと、両者の弾性率比が特定されたことにより、混合後の「発泡可能層」の弾性率についても不明なものとはならないこととなった。 よって、当該取消理由は本件訂正により解消したものと認められる。 (3)発明の詳細な説明では実施例と比較例の比較がなされておらず、各構成の作用・効果や、数値範囲の臨界的意義が理解できないとした点について 先の取消理由通知では、例えば、と例示した上で、基層と発泡可能層の弾性率の組み合わせや熱膨張率の組み合わせ比較、添加剤含有量の比較、印刷性の比較等は、実施例として記載されていないとしたが、この点も含め検討する。 まず、実施例と比較例との比較については、本件明細書の【0061】−【0082】に記載があり、その比較結果は実施例1と比較例1及び2との対比が、各々【0066】、【0069】、【0073】に記載され、またその状況が【図2】の図示、及び【0074】にまとめて記載されている。 また、作用・効果は【図2】及び【0074】に記載がなされ、【0075】にて「表面層が、弾性率が0.1GPa未満で、できるだけ小さい熱膨張係数の柔らかい合成樹脂から作られなければならないことを示す。」と説明しているとおり、数値範囲の関係を論じていることが認められるため、発明特定事項上の意義はなされていることが確認される。 さらに、基層と発泡可能層の弾性率の組み合わせや熱膨張率の組み合わせ比較について見ると、基層と発泡可能層との弾性率の組み合わせについては【0059】に「弾性率比E1/E2が0.05未満のとき・・・カールは・・・急速に減少する。」との記載がなされ、その後実施例1と比較例1及び2に関して、【0062】で基層シートの弾性率の値と熱膨張の度合いが、【0064】−【0065】にて発泡可能層に用いるポリオレフィン材料の弾性率の値、【0068】で比較例1の発泡可能層に用いられるポリオレフィン材料の弾性率の値、【0071】で比較例2の発泡可能層に用いられるポリオレフィン材料の弾性率の値が、各々記載されている。また、発泡可能層の熱膨張率については直接その度合いが個々に記載されていないものの、比較例1に関する【0068】の【表2】中の組成「LDPE」、比較例2に関する【0071】の【表3】中の組成「HDPE]、実施例1との比較実験の結果と考察を示した【0074】−【0074】の記載から、発泡可能層の材料とされる合成樹脂として「できるだけ小さい熱膨張係数の柔らかい合成樹脂から作られなければならないことを示す。」との記載から、当業者であれば単にLDPEやHDPEに属する合成樹脂では足らず、弾性率の数値範囲で選ばれた、結果熱膨張係数が相当程度低い材料を選択すると理解できる。さらに、実施例1で選ばれた「エチレン−オクテン共重合体」ならびにこれに準じる多少高めの弾性率値のものにLDPEを少量混合させた場合であって、他の発泡剤や発泡助剤の添加量を増減させた場合でも、実施例2及び3として記載がなされ、カール抑制の良好さのみならず印刷性も含めて結果として【0079】、【0082】に記載されているのであるから、先の取消理由通知で例示した点について、実施が困難と考える程度の記載不足は認められない。 よって、当該取消理由1によっては、本件訂正発明1ないし9を取り消すことができない。 2.理由2(特許法第36条第6項第1号)について 決定の予告では、本件発明の課題の解決に関し、各層の膜厚、弾性率、熱膨張係数をパラメータとするティモシェンコの分析解の方程式に基づいて課題を解決できるとした。 上記第2.1.に示した本件訂正の訂正事項2により、基層の熱膨張率及び厚みの特定がなされ、訂正事項4により発泡可能層と基層との熱膨張率の関係が追加され、訂正事項5により基層に対する発泡可能層の弾性率比が追加された。これにより本件発明の課題解決に必要な発明特定事項は充足された。 よって、当該取消理由2によっては、本件訂正発明1ないし9を取り消すことができない。 3.理由3(特許法第29条第1項第3号)について (1)甲1を主引例とする理由 ア.証拠の記載 (ア)甲1について 甲1には、次の記載がある。 a.「【請求項1】 耐震構造物の内装用下地ボードに貼付される耐震構造物壁装用シートであって、 該シートが、繊維質基材上に、少なくとも発泡樹脂層を含む樹脂層を積層した積層構造であり、且つ 該シートが、JIS K7128−3に規定されるシートの引裂き強さ試験方法において、引張速度3mm/分、掴み具間距離800mmでの巾方向の引張強度の第1極大点から第2極大点までの変位が1〜5mmである、 ことを特徴とする、耐震構造物壁装用シート。」 b.「[0001] 本発明は、地震による揺れによっても壁紙の破損を抑制できる耐震構造物壁装用シートに関する。また、本発明は、当該耐震構造物壁装用シートのスクリーニング方法に関する。更に、本発明は、当該耐震構造物壁装用シートを耐震構造物の内装用壁紙として施工する施工方法に関する。」 c.「[0044] 発泡樹脂層には、発泡剤の発泡効果を向上させるために、必要に応じて発泡助剤が含まれていてもよい。発泡助剤としては、特に制限されないが、例えば、金属酸化物、脂肪酸金属塩等が挙げられる。より具体的には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの発泡助剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの発泡助剤の含有量は、発泡助剤の種類、発泡剤の種類や含有量等に応じて適宜設定されるが、例えば、樹脂成分100質量部に対して、0.3〜10質量部程度、好ましくは1〜5質量部程度が挙げられる。」 d.「[0101] [積層シートの製造] 実施例1 3種3層Tダイ押出し機を用いて、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Bの順に厚み5μm/65μm/5μmになるように押出量を調整して、3層構造の樹脂シート(樹脂層)を形成した。押出し条件は、シリンダー温度はいずれも120℃とし、またダイス温度もいずれも120℃とした。得られた樹脂シート中の発泡剤含有樹脂層は未発泡の状態を維持していた。得られた樹脂層の両端をスリットして960mm巾にした。 非発泡樹脂層A、発泡剤含有樹脂層、及び非発泡樹脂層Bは、それぞれ以下の成分を用いて形成した。 [0102] 非発泡樹脂層Aは、低密度ポリエチレン(「ペトロセン208」、東ソー製)により形成した。 [0103] 発泡剤含有樹脂層は、低密度ポリエチレン(「ペトロセン208」、東ソー製)80質量部、直鎖状低密度ポリエチレン(「LUMITAC 54−1」、東ソー製)20重量部、炭酸カルシウム(「ホワイトンH」、白石工業製)30質量部、着色剤(「タイピュアR350」、デュポン製)30質量部、発泡剤(「ビニホールAC♯3」、永和化成工業製)5質量部、発泡助剤(「アデカスタブOF−101」、ADEKA製)4質量部、及び架橋助剤(「オプスターJUA702」、JSR製)1質量部を混練した樹脂により形成した。 [0104] 非発泡樹脂層Bは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルを32質量%含有;「ウルトラセン750」、東ソー製)により形成した。 [0105] 次いで、巾970mmの紙パルプからなる壁紙用紙(WK-665、興人製)の紙面を120℃となるように加熱して、前記樹脂シートの非発泡樹脂層Bが壁紙用紙と接するように積層させて、ラミネートロールに通して壁紙用紙と樹脂シートを熱圧着させて積層体を得た。このとき、樹脂シートは壁紙用紙の中央に配置して積層させ、壁紙用紙の両端部の5mmは樹脂シートが積層されていない状態にした。 [0106] その後、得られた積層体の樹脂シート面に電子線を加速電圧195kV、照射線量30kGyの条件で照射することにより、樹脂シート中の発泡剤含有樹脂層に対して架橋処理を行った。 [0107] 次いで、積層体の表面(非発泡樹脂層A)に対してコロナ放電処理した後、グラビア印刷機により絵柄印刷として水性インキ(「ハイドリック」、大日精化工業製)を用いて布目絵柄を印刷し絵柄模様層を形成した。その後、グラビア印刷機により、絵柄模様層上に、水性インキ(ALTOP−402B、大日精化工業製、アクリル系1液硬化型樹脂)を印刷して、表面保護層を形成した。 [0108] 次に、得られた積層体をオーブンにて加熱(220℃で35秒)して発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成させた後に、表面保護層上に織物調パターンを有する金属ロールを押し付けて型押しすることにより、積層シートを得た。」 e.「[0112] 実施例3 発泡剤含有樹脂層を以下の組成に変更したこと以外は、実施例1と同条件で積層シートを製造した。発泡剤含有樹脂層は、エチレン−酢酸ビニル共重合(酢酸ビニルを33質量%含有;「エバフレックスEV150」、三井デュポンポリケミカル製)90質量部、直鎖状低密度ポリエチレン(「ユメリット613A」、宇部丸善ポリエチレン製)10重量部、炭酸カルシウム(「ホワイトンPC」、白石工業製)20質量部、着色剤(「タイピュアR350」、デュポン製)20質量部、発泡剤(「ビニホールAC♯3」、永和化成工業製)3質量部、発泡助剤(「アデカスタブOF−101」、ADEKA製)3質量部、及び架橋助剤(「オプスターJUA702」、JSR製)を0.3質量部混練した樹脂により形成した。」 上記a.〜e.の記載によれば、特に実施例3に注目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されている。 なお、[0112]には「直鎖状低密度ポリエチレン(「ユメリット613A」、宇部丸善ポリエチレン製)10重量部」と記載されているが、前後の記載からみて「10質量部」の明らかな誤記である。 (甲1発明A)「紙パルプからなる壁紙用紙(WK-665、興人製)と、 非発泡樹脂層A、発泡剤含有樹脂層、及び非発泡樹脂層Bで構成される樹脂シートが積層された積層体であり、 発泡剤含有樹脂層は、エチレン−酢酸ビニル共重合(酢酸ビニルを33質量%含有;「エバフレックスEV150」、三井デュポンポリケミカル製)90質量部、直鎖状低密度ポリエチレン(「ユメリット613A」、宇部丸善ポリエチレン製)10質量部、炭酸カルシウム(「ホワイトンPC」、白石工業製)20質量部、着色剤(「タイピュアR350」、デュポン製)20質量部、発泡剤(「ビニホールAC♯3」、永和化成工業製)3質量部、発泡助剤(「アデカスタブOF−101」、ADEKA製)3質量部、及び架橋助剤(「オプスターJUA702」、JSR製)を0.3質量部混練した樹脂により形成され、 発泡剤含有樹脂層の厚みが65μmであり、 発泡剤含有樹脂層は未発泡の状態を維持している。」 また、製造に関する記載として甲1には次の発明(以下、「甲1発明B」という。)が記載されている。 (甲1発明B)「甲1発明Aの積層体の表面(非発泡樹脂層A)に布目絵柄を印刷し絵柄模様層を形成し、 得られた積層体をオーブンにて加熱(220℃で35秒)して発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成させ、 積層シートを得る、積層シートの製造方法。」 (イ)甲3について 甲3の表から、「三井・ダウ ポリケミカル」の製品である「エバフレックス○R」に関し、銘柄「EV150」の「曲げ剛性率」が「8MPa」、「引張破壊応力」が「7MPa」であることが看取される。 (ウ)甲4について 甲4の表から、「宇部丸善ポリエチレン株式会社」の製品である「ユメリット○R(メタロセン触媒L−LDPE)613A」の「曲げ剛性率」が「190MPa」であることが看取される。 (エ)甲5について 甲5の「紙の弾性率測定」の表から、「紙」の「弾性率」が「2−20GPa」であることが看取される。 (オ)甲6について 甲6には、次の記載がある。 a.「【0055】本発明の繊維素材は繊維表面が酸化されているので、主鎖の開裂に伴う重合度の低下なども生じない。従って、繊維素材のカルボキシル基含有量が上記範囲の場合には、カルボキシル基の導入量によらず、力学的特性及び保水性の変動を抑制できる。さらに、力学的強度(比引張指数、引裂強度、ヤング率、破断伸度など)を高いレベルで維持することができる。比引張指数は、35N・m/g以上(例えば、35〜50N・m/g)、好ましくは35〜40N・m/g程度である。ヤング率は、1〜4GPa、好ましくは1.5〜3.5GPa、さらに好ましくは2.5〜3.2GPa程度である。・・・」 b.「【0059】本発明の成形品(特に、シート状成形品)は、保水性及び力学的性質の変動を抑制できるので、種々の分野(例えば、製紙、壁紙など)で利用できる。」 上記a.及びb.によれば、例えば、製紙、壁紙などに用いられる成形品(特に、シート状成形品)の繊維素材のヤング率は、1〜4GPaであることが看取される。 (カ)甲7について 甲7の段落【0031】の【表1】から、「難燃性コーン紙」の「引張弾性率」が「125〜350kg/mm2」(約1.2〜3.4GPa)であることが看取される。 (キ)甲10について 甲10の記載から、「ADCA発泡剤/複合発泡剤 ビニホール」の製品名「ビニホールAC#3」について、主成分が「アゾジカルボンアミド」であることが看取される。 (ク)甲11について 甲11には、次の記載がある。 「【0094】 発泡助剤A:ZS−6(日東化成工業株式会社製、商品名、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛) 発泡助剤B:ADH(日本化成株式会社製、商品名、アジピン酸ジヒドラジド) 発泡助剤C:4−メチル安息香酸ヒドラジド(東京化成工業株式会社製、化合物名) 発泡助剤D:アデカスタブ OF−101(株式会社ADEKA製、商品名、ステアリン酸亜鉛等脂肪酸金属塩及び炭酸カルシウムの重量比1:1混合物)」 イ.本件訂正発明1ないし7と甲1発明Aとの対比・判断 本件訂正発明1の複合シートと甲1発明Aの積層体とを対比すると、積層されてなるシート様のものになるという観点から、甲1発明Aの「紙パルプからなる壁紙用紙(WK-665、興人製)と、非発泡樹脂層A、発泡剤含有樹脂層、及び非発泡樹脂層Bで構成される樹脂シートが積層された積層体」は、本件訂正発明1の「基層」と「発泡可能層」「とを含」む「複合シート」に対応する。 また、組成として「ポリオレフィン材料」及び「発泡剤」並びに「添加剤」を所定の割合で含む点及び厚みの寸法に限り、甲1発明Aの「エチレン−酢酸ビニル共重合(酢酸ビニルを33質量%含有;「エバフレックスEV150」、三井デュポンポリケミカル製)90質量部、直鎖状低密度ポリエチレン(「ユメリット613A」、宇部丸善ポリエチレン製)10質量部、炭酸カルシウム(「ホワイトンPC」、白石工業製)20質量部、着色剤(「タイピュアR350」、デュポン製)20質量部、発泡剤(「ビニホールAC♯3」、永和化成工業製)3質量部、発泡助剤(「アデカスタブOF−101」、ADEKA製)3質量部、及び架橋助剤(「オプスターJUA702」、JSR製)を0.3質量部混練した樹脂により形成」してなる「厚みが65μm」である「発泡剤含有樹脂層」は、本件訂正発明1の「ポリオレフィン材料100重量部に対して、0.1〜10重量部の発泡剤と、0〜200重量部の添加剤」を「含」む「厚みが0.05mm〜0.3mmであ」る「発泡可能層」に対応する。 さらに、甲1発明Aの「発泡剤含有樹脂層」は、発泡済みであるか未発泡であるかの状態に関し、「未発泡の状態を維持している」ことから、本件訂正発明1の「発泡剤」を含み「発泡可能」とされた「発泡可能層」に発泡状態の有無の点で一致する。 よって、両者は以下の点で一致し、かつ、相違する。 (一致点) 「複合シートであって、 基層と発泡可能層とを含んでなり、 前記発泡可能層は、 ポリオレフィン材料100重量部に対して、 0.1〜10重量部の発泡剤と、 0〜200重量部の添加剤を含み、 前記発泡可能層の厚みは0.05mm〜0.3mmである 複合シート。」 (相違点) 1.複合シートの構造に関し、本件訂正発明1は「基層」に「発泡可能層」が「接合する」としてるのに対して、甲1発明Aの積層体は「紙パルプからなる壁紙用紙(WK-665、興人製)と、非発泡樹脂層A、発泡剤含有樹脂層、及び非発泡樹脂層Bで構成される樹脂シートが積層された」としており、発泡剤含有樹脂層と壁紙用紙とは接合されておらず、非発泡樹脂層を間に介して積層されている点。 2.本件訂正発明1の「基層」は、「弾性率が1GPaを超える」とされかつ「0℃〜220℃の範囲における収縮及び膨張の比率が2%未満であり、厚みが0.05mm〜0.15mm」であるとの特定がなされているのに対して、甲1発明Aの「紙パルプからなる壁紙用紙(WK-665、興人製)」は、弾性率、収縮及び膨張の比率、厚みの3点に関し不明である点。 3.本件訂正発明1の「発泡可能層」の材料とされる「ポリオレフィン材料」は、「弾性率が0.1GPa未満」でありかつ「結晶化度が25%未満」でありかつ「前記基層よりも高い熱膨張及び熱収縮性を有し」でありかつ「前記基層に対する前記発泡可能層の弾性率比は、0.05未満である」としているのに対して、甲1発明Aの「発泡剤含有樹脂層」の材料とされる「エチレン−酢酸ビニル共重合(酢酸ビニルを33質量%含有;「エバフレックスEV150」、三井デュポンポリケミカル製)90質量部、直鎖状低密度ポリエチレン(「ユメリット613A」、宇部丸善ポリエチレン製)10質量部」は、弾性率、結晶化度、壁紙用紙に対する熱膨張及び熱収縮性の度合い、壁紙用紙に対する弾性率比の4点に関し不明である点。 上記相違点について検討する。 相違点1についてみるに、シートとして基層相当と発泡可能層相当とが接合されている本件訂正発明1の構造と、基層相当と発泡可能層相当とが直接接合される関係にない甲1発明Aとは、基層と発泡可能層の熱膨張の差で発生する応力によって発生するカールが、直接接合されるのと、間に他の層が介在されるのとで異なることは明らかであるから、相違点1は実質的な相違点である。 そうすると、上記相違点2及び3を検討するまでもなく、甲1発明Aと本件訂正発明1とは積層構造の点で相違するので、両者を同一発明とする理由3は成り立たない。 本件訂正発明1と甲1発明Aとが相違する以上、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて充足する本件訂正発明2ないし7と甲1発明Aとはいずれも相違し、同様に理由3は成り立たない。 以上のとおり、本件訂正発明1ないし7と甲1発明Aとは相違するから、当該理由3によっては本件訂正発明1ないし7を取り消すことができない。 4.理由4(特許法第29条第2項)について (1)甲1を主引例とする理由の検討 本件訂正発明1と甲1発明Aとの一致点、相違点については、上記3.(1)イに記載のとおりであるから、かかる相違点1〜3について検討する。 まず、相違点2及び3について検討する。 <相違点2及び3について> 甲1発明Aが記載されている甲1には、本件特許発明で解決しようとする課題であるカールの抑制を意識した記載は見当たらない。それゆえ積層体を構成する他の層である繊維質基材の物理的性質や熱膨張の性質との関係を論じた記載や示唆は一切ない。 また、本件訂正により特定された基層の弾性率や熱収縮率、発泡可能層の材料として用いるポリオレフィン材料の結晶化度や基層に比べての熱収縮率並びに弾性率比などは、当該分野に属する当業者にとり技術常識であるとはいえない。 そうすると、甲1に接した当業者が、発泡樹脂層に適した具体素材として、本件訂正発明1で特定した「基層」の弾性率の値を1GPaを超える値とすることや温度範囲における収縮及び膨張の比率を2%未満に設定すること、ポリオレフィン材料の弾性率を0.1GPa未満でありかつ結晶化度を25%未満でありかつ基層に対する弾性率比が0.05未満となる材料を選択することについて、容易に思い至る動機付けに欠けるといわざるを得ない。 よって、相違点1について検討するまでもなく、甲1を主引例として本件訂正発明1に対する容易想到性は、成り立たない。 また、本件訂正発明2ないし7は、本件訂正発明1への容易想到性に係る取消理由が成り立たない以上、同様に成り立たない。 さらに、本件訂正発明8ないし9は、本件訂正発明1を製造する方法とされている関係から、耐震構造物壁紙用シートを製造する方法発明である甲1発明Bを起点とする以上、同様に容易想到であるとはいえない。 (2)甲2を主引例とする理由の検討 ア.証拠の記載 (ア)甲1、3〜7、10、11について 甲1、3〜7、10、11の記載については、上記3.(1)ア.のとおりである。 (イ)甲2について 甲2には、次の記載がある。 a.「【請求項1】 (A)ポリオレフィン、(B)無機充填剤、(C)化学発泡剤、(D)アルキル(メタ)アクリラートを5mol%以上含有するアルキル(メタ)アクリラート単独重合体及び/又は共重合体であって、重量平均分子量がポリスチレン換算で0.5万以上10万以下の重合体の4成分を含有することを特徴とする発泡性樹脂組成物。 【請求項2】 B、C及びD成分の配合量が下記の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性樹脂組成物。 B成分:A成分100重量部に対して30〜200重量部、 C成分:A成分100重量部に対して1〜15重量部、 D成分:B成分100重量部に対して0.2重量部以上3重量部以下、 【請求項3】 請求項1又は2に記載の発泡性樹脂組成物からなる発泡性シート。 【請求項4】 請求項3に記載の発泡性シートと表皮材及び/又はバッキング材とから構成される発泡性原反。 【請求項5】 請求項4記載の発泡性原反を熱処理して発泡させた発泡原反。 【請求項6】 請求項3に記載の発泡性シートを熱処理によって発泡させた発泡シート。 【請求項7】 請求項6に記載の発泡シートと表皮材及び/又はバッキング材とから構成される発泡原反。 【請求項8】 請求項5又は7に記載の発泡原反で構成され、印刷及び/又はエンボス加工が施されたものであることを特徴とする建築内装材。 【請求項9】 請求項6に記載の発泡シートで構成され、印刷及び/又はエンボス加工が施されたものであることを特徴とする建築内装材。」 b.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高度の意匠性を持つポリオレフィン(以下、「PO」と略す)からなるシート状発泡体に関するものであり、例えば壁紙や床材等の建築内装材を提供するシート状発泡体に関するものである。 【0002】 【従来の技術】壁紙や床材等の建築内装材は、従来はポリ塩化ビニル(以下、「PVC」と略す)を用い、アゾジカルボンアミド(以下、「ADCA」と略す)や4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(以下、「OBSH」と略す)等の作用により発泡させたものが主流であった。即ち、ADCAやOBSH等の、熱分解によって揮発性物質を発生させる化学発泡剤を含有するPVCのプラスチゾルを紙等のバッキング材上に塗布し、熱処理して発泡性原反を製造し、更に高温で熱処理してADCA等を分解させ、その際に発生するガスによって発泡体を得るものである。この発泡性は深い立体的意匠性を付与することに必要である。しかし、PVCによる建築内装材は、火災時の発煙性が高いという問題点があった。そこで、POに無機充填剤を配合した樹脂組成物を用い、化学発泡剤の作用により発泡させた建築内装材が提案されている。」 c.「【0008】 【発明の実施の形態】以下、更に詳細に説明する。尚、A成分100重量部に対する重量部はphr単位で、B成分100重量部に対する重量部はphf単位で示す。 【0009】[(A)PO]本発明で用いるPOは、オレフィンをモノマーとする重合体である。重合方法は特に限定されないが、ラジカル重合、アニオン重合、配位重合、カチオン重合等が例示される。これらは単独で用いてもよいし、複数種をブレンドして用いても良い。 【0010】ここでいうオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、ペンテン、ペンタジエン、ヘキセン、ヘキサジエン、ヘキサトリエン、ヘプテン、ヘプタジエン、ヘプタトリエン、オクテン、オクタジエン、オクタトリエン、オクタテトラエン等やその異性体等、本質的には炭素数が2以上で炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するものである。この様なモノマーからなる重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等が例示される。」 d.「【0014】建築内装材としては、柔軟性が要求されることも多い。また、製造された発泡性シートや発泡性原反が反りをもつことも、意匠加工性の面から好ましくないことがある。その様な場合には、結晶化度の低いポリエチレン系樹脂が好適に使用される。低結晶化度のポリエチレン系樹脂としては、エチレンとα−オレフィン、あるいは脂肪酸ビニルとの共重合体が例示される。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」と略す)もしくはそれと他のPOとのブレンド物であって、酢酸ビニル単位が10−45重量%含まれているようなものは、柔軟で、反りが起こりにくいので好適である。」 e.「【0029】発泡は通常の壁紙製造時に用いられる熱風式発泡炉あるいは遠赤外線ヒーター等を用いて常圧下で実施することが出来る。建築内装材に用いる表皮材やバッキング材としては、表面硬度、柔軟性、耐摩耗性等、それぞれの部材として必要な特性を有するポリマーであれば特に限定されない。例えば、壁紙のバッキング材としては、水酸化アルミニウムで処理された不燃紙、グアニジン類等で含浸処理した難燃紙を用いることができる。このような処理のなされていない一般紙を用いることも出来る。表皮材としては、例えば、ポリオレフィン、含フッ素ポリマー、ポリ(メタ)アクリラート、ポリシロキサン等のシート等が例示される。 【0030】また、建築内装材として重要な意匠性を与えるために、表面への印刷やエンボス加工を施すこともできる。印刷は発泡性シート、発泡シート、発泡性原反、発泡原反のいずれかに施すことができる。印刷に先立って、表面の極性を上げる為にコロナ放電処理やオゾン処理を施すと、印刷適性が向上する。また、表面にプライマーを塗布する方法を用いると、印刷適性が更に向上する。 ・・・ 【0032】[他の添加剤]本発明の樹脂組成物や成形体には、本発明の趣旨を損わない範囲で、上記以外の種々の公知の添加剤等を添加、塗布することができる。例えば、樹脂組成物の物性改善の為の変性ポリマー、ADCAやOBSH以外の発泡剤、発泡助剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、架橋剤、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、滑剤、顔料等が添加剤の例として挙げられる。塗布剤としては、接着剤や前記のプライマーが例示される。」 f.「【0043】[A成分、PO] A1:EVA、酢酸ビニル含有量=20重量%、MFR=1.5g/10分 東ソ−株式会社製、商品名「ウルトラセン631」 A2:EVA、酢酸ビニル含有量=26重量%、MFR=4.0g/10分 東ソ−株式会社製、商品名「ウルトラセン634」 A3:EVA、酢酸ビニル含有量=28重量%、MFR=6.0g/10分 東ソ−株式会社製、商品名「ウルトラセン751」 A4:VLDPE、ダウケミカル社製、商品名「Engage 8100」 [B成分、無機充填剤] B1:二酸化チタン B2:水酸化アルミニウム B3:炭酸カルシウム [C成分、化学発泡剤] C1:ADCA C2:OBSH [D成分、ポリ(アルキル(メタ)アクリラート)及びその比較対象物] D1:ポリ(2−メチルプロピルメタアクリラート)、三菱レイヨン株式会社製、商品名「ダイヤナール BR−105」 重量平均分子量=5.5万 D2:エチレンとブチルアクリラートとの共重合体、日本触媒化学株式会社製、商品名「ST−100」 重量平均分子量=5.0万 1H−NMRによって測定したエチレン/ブチルアクリラート共重合比=88/12 D’:ポリ(2−メチルプロピルメタアクリラート)、三菱レイヨン株式会社製、商品名「ダイヤナール BR−101」重量平均分子量=16万 D”:ポリ(2−メチルプロピルメタアクリラート)、重量平均分子量=0.4万 (日本化学会編、「第4版実験化学講座」、第28巻「高分子合成」(1992年、丸善)の第128頁から第129頁に記載された実験例2・87のポリメチルメタクリラートの重合方法において、モノマーを2−メチルプロピルメタクリラートに代え、t−C4H9Liの量を0.5mmolに増やして重合を行って調製した。) LD:低密度ポリエチレン 東ソー株式会社製、商品名「ペトロセン213」 重量平均分子量=5.3万 [実施例1−13、比較例1−10]A成分として酢酸ビニルが26%のEVA(A2)を用い、B成分として炭酸カルシウム(B3)と二酸化チタン(B1)との併用で合計60−210phr、C成分としてADCA(C1)とOBSH(C2)とを、それぞれ、5phr、及び1phr、発泡助剤としてのステアリン酸亜鉛(Zn−St)を3phr、D成分としてD1,D2,D’,D”,LDを0−3.0phr(0−2phf)配合し、135℃にてオープンロールで混練して、表1に示す処方の発泡性樹脂組成物を調製した。次いで、この発泡性樹脂組成物から、135℃に調整したオープンロールを用いて、0.1mmの厚みの発泡性シートを作成し、難燃紙とロール上で熱融着して発泡性原反を得た。この発泡性原反をスモールオーブン(ウェルナマチス社製)によって、210℃で60秒間加熱して発泡原反を得た。発泡倍率と発泡特性とを表1に示した。」 g.「【0060】 【表1】 ![]() 」 上記a.〜g.の記載によれば、特に実施例1に注目すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明A」という。)が記載されている。 「難燃紙と、 発泡性シートとを熱融着した発泡性原反であり、 発泡性シートは、A2成分(ポリオレフィン:東ソ−株式会社製、商品名「ウルトラセン634」)に対して、B1成分(無機充填剤:二酸化チタン)10phr、B3成分(無機充填剤:炭酸カルシウム)50phr、C1成分(化学発泡剤C1=ADCA)5.0phr、C2成分(化学発泡剤:OBSH)1.0phr、D1成分(ポリ(2−メチルプロピルメタアクリラート)、三菱レイヨン株式会社製、商品名「ダイヤナール BR−105」)0.7phrを含み、 発泡性シートの厚みが0.1mmである。」 (ウ)甲8について 甲8の記載から、東ソー株式会社の製品である「エチレン酢酸ビニル共重合体 ウルトラセン○R 634」の「引張弾性率」が「20MPa」、「曲げ弾性率」が「20MPa」であることが看取される。 イ.本件訂正発明1ないし9と甲2発明Aとの対比・検討 本件訂正発明1と甲2発明Aを対比すると、甲2発明Aの「難燃紙」は、本件訂正発明1の「基層」に相当し、以下同様に、「A2成分(ポリオレフィン:東ソ−株式会社製、商品名「ウルトラセン634」)」は「ポリオレフィン材料」に、「C1成分(化学発泡剤C1=ADCA)」と「C2成分(化学発泡剤:OBSH)」は合わせて「発泡剤」に、「B1成分(無機充填剤:二酸化チタン)」と「B3成分(無機充填剤:炭酸カルシウム)」と「D1成分(ポリ(2−メチルプロピルメタアクリラート)、三菱レイヨン株式会社製、商品名「ダイヤナール BR−105」)」は合わせて「添加剤」に、「発泡性原反」は「複合シート」に、それぞれ相当する。 甲2発明Aの「発泡性シート」は、その後に加熱発泡することで発泡原反とするものである(上記ア.(イ)f.)から、本件訂正発明1の「発泡可能層」に相当する。 そして、甲2発明Aの「難燃紙と、発泡性シートとを熱融着」することは、本件訂正発明1の「(2)前記基層と接合する発泡可能層」に相当する。 甲2発明AのC1成分(化学発泡剤C1=ADCA)が5.0phr含まれていることは、本件訂正発明1の「ポリオレフィン材料100重量部に対して、0.1〜10重量部の発泡剤」の範囲内である。 甲2発明Aの「B1成分(無機充填剤:二酸化チタン)」が10phr、「B3成分(無機充填剤:炭酸カルシウム)」が50phr、「D1成分(ポリ(2−メチルプロピルメタアクリラート)、三菱レイヨン株式会社製、商品名「ダイヤナール BR−105」)」が0.7phrで合わせて50.7phrであることは、本件訂正発明1の「ポリオレフィン材料100重量部に対して」「0〜200重量部の添加剤」の範囲内である。 甲2発明Aの「発泡性シートの厚みが0.1mm」は、本件訂正発明1の「前記発泡可能層は、厚みが0.05〜0.3mm」の範囲内である。 よって、本件訂正発明1と甲2発明Aは、以下の点で一致する。 (一致点) 「複合シートであって、基層と、前記基層と接合する発泡可能層とを含み、前記発泡可能層は、ポリオレフィン材料100重量部に対して、0.1〜10重量部の発泡剤と、0〜200重量部の添加剤を含み、前記発泡可能層は、厚みが0.05〜0.3mmである、複合シート。」 そして、本件訂正発明1と甲2発明Aは、以下の点で相違する。 (相違点) 1.基層の弾性率について、本件訂正発明1は、「弾性率が1GPaを超える基層」であるのに対して、甲2発明Aは、難燃紙の弾性率が不明である点。 2.ポリオレフィン材料について、本件訂正発明1は、「弾性率が0.1GPa未満のポリオレフィン材料」であり、かつ、「結晶化度が25%未満」であるのに対して、甲2発明Aは、A2成分(ポリオレフィン:東ソ−株式会社製、商品名「ウルトラセン634」)の弾性率及び結晶化度の双方が不明である点。 3.基層について、本件訂正発明1は、「前記基層の厚みは、0.05mm〜0.15mmであ」り、かつ、「前記基層は、0℃〜220℃の範囲における収縮及び膨張の比率が2%未満」であるのに対して、甲2発明Aの難燃紙は、厚み及び熱収縮・膨張の比率について特定されていない点。 4.発泡可能層と基層との熱膨張性の関係及び弾性率の比の関係について、本件訂正発明1は「前記発泡可能層は、前記基層よりも高い熱膨張及び熱収縮性を有し」かつ「前記基層に対する前記発泡可能層の弾性率比は、0.05未満である」としているのに対して、甲2発明Aはいずれも不明である点。 そこで、上記相違点1〜4について検討する。 まず、甲2発明Aの「発泡性シート」の樹脂成分であるウルトラセンの結晶化度の程度を検討し、発泡剤等の混合後の「発泡性シート」の弾性率を考察し、「発泡性シート」と「難燃紙」との相互の弾性率比について検討する。 甲2にはウルトラセン○R 634の酢酸ビニル含有率が26重量%であることが上記fに記載されており、さらに上記dには反りが起こりにくいA成分(ポリオレフィン(PO))の選定の目安として、酢酸ビニル単位の含有率の程度を、10−45重量%含むPOを好適としている。 酢酸ビニル含有率と結晶化度との間には相関関係があることは当業者に知られた事実であり、例えば製造元の東洋曹達(現:東ソー株式会社)が発行した「東洋曹達研究報告 第16巻 第1号(1972)」の「ペトロセン,ウルトラセン」、p.37−44の43ページ左欄には、結晶化度(%)=63.0−1.47×VAC(wt%)なる式が示されている。 これに当てはめると、甲2で反りを抑える好適な酢酸ビニル単位の含有率(10〜45重量%)が示す結晶化度の範囲は、−3.15〜48.3%(注;現実には45重量%のものは製造対象とされていないと思われる)となる。 上記甲2発明Aで選ばれたウルトラセン○R 634の酢酸ビニル単位の含有率(26重量%)を前述の数式に代入すると、結晶化度は24.78%となり、本件訂正発明1の発明特定事項である「25%未満」に該当することは確認できる。 しかしながら、発泡剤等の混合後の「発泡シート」の弾性率がいかなる値であるかは、証拠のいずれにも記載されておらず、「難燃紙」の弾性率の程度も同様である。 そうすると、たとえウルトラセン○R 634の結晶化度に関する特定を甲2発明Aが満足したとしても、積層によるシートの反りを抑制するために本件訂正発明1が特定する、基層と発泡可能層との弾性率値、基層単独の熱膨張特性、基層と発泡可能層との熱膨張の程度の大小関係、発泡可能層のポリオレフィン材料の結晶化度の、4つの発明特定事項を同時に満足する点について、甲2発明Aを起点として当業者が容易に想到し得るかについて考えてみると、基層の選択可能な候補にしても複数あり得ることが甲2の上記eに記載され、POの選択候補にも幅があり、選択によっては結晶化度の特定を満たさないこともあり得ることを考慮すれば、これら4つの指標がいずれも技術常識であるとは認めがたく、すべての指標を同時に満足することに自然に至ることはあり得ず、相当の困難性があるといわざるを得ない。 そうすると、本件訂正発明1と甲2発明Aとの対比において生じる複数の相違点は、甲2発明A、甲2記載事項、その他参考資料とされる他の証拠により確認できる一般的な技術常識に基づいては、当業者が容易に発明できたとは認められない。 また、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて充足する本件訂正発明2ないし7、本件訂正発明1の製造方法である本件訂正発明8、これを引用する本件訂正発明9についても同様である。 よって、当該取消理由4によっては本件訂正発明1ないし9を取り消すことができない。 第6.取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1ないし9に記載のア.「弾性率」、イ.「発泡層」は明確でない点、及び、ウ.請求項9は製造方法により物を特定する記載であるから、特許を受けようとする発明が不明確である旨を主張する。 しかしながら、前記ア.については、「弾性率」自体は明確であり、上記第5.1.(1)で説示したとおり、明細書の記載とも整合する。前記イ.については本件訂正により「発泡層」の記載は「発泡可能層」に訂正されたため明確であり、前記ウ.については特許権者が令和2年7月1日に提出した意見書(4)(4−1)(d)で主張するとおり、他の物性で特定することが不可能又は非実際的であり、製造方法によって特定するとしたことは不明確とはいえないから、いずれの点においても本件発明は明確であり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。 したがって、申立人の係る主張は、採用することができない。 第7.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】複合シート、並びに、PVC及び可塑剤フリーの発泡装飾シートの製造方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、装飾シートの製造に用いられる複合シート、並びに装飾シートの製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 一方の面が発泡した可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)層、及びもう一方の面が紙又は不織材料の複合シートからなる装飾シートは、現在広く使われている。これらの装飾のシートの用途の1つは、壁紙である。それらは、天然の紙をベースにした壁紙に比べて、低価格なだけでなく耐摩耗性、洗濯可能、長寿命であるため非常に人気がある。ビニール壁紙生産の最先端技術の主流は、主要な3つの工程を含む。 【0003】 1.発泡性組成物層又はいくつかの層を紙又は不織シート上にコーティングする。 【0004】 2.発泡シート上に印刷する。 【0005】 3.シートを発泡させ、さらには、エンボス加工、裁断、梱包等の工程を含む。 【0006】 発泡工程は、非常に重要であり、かつ壁紙生産では不可欠な工程である。なぜなら、低コストで厚みのある層の生産を可能とするからである。前記壁紙は、通常機械的又は化学的にエンボス加工され、構造を作り出し、より現実的で魅力的な模様を作り出す。 【0007】 材料としてPVCを選択する主な欠点は、PVC自体の生産が環境に負の影響があるということである。さらに、強度及び柔軟性のような要求特性を達成するために、PVCは、安定剤、可塑剤及び溶媒と混合しなければならないが、それらは、健康に害があると疑われており、室内環境に移入することがあり得る。その上、PVCのリサイクル又は燃焼は、塩酸を形成すること及び低いエネルギー回収のため問題である。 【0008】 ポリオレフィン(PO)材料は、PVCに替わる存続可能かつ環境にやさしいものであり、可塑剤及び溶剤フリーで用いることができる。ポリオレフィン材料は、例えば、食品包装に広く用いられており、食品と直接接触することも許容される。それに加えて、ポリオレフィン材料は、リサイクルが可能であり、又はエネルギーの回収を燃焼によって行うことも可能である。ポリオレフィン材料は、潜在的に、ビニールの壁紙と同様の利点を提供することが可能であり、且つビニールが有する生態学的な欠点を有していない。 【0009】 特開2002−96433号公報は、優れた耐積圧性を有する難燃性壁紙について開示している。前記壁紙は、基層、発泡樹脂層及び装飾層を含み、前記発泡樹脂層は、発泡剤、無機質成分及び難燃剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる。前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の酢酸ビニル含有量は、20%〜22%であり、メルトフローレートは、45〜80g/10minである。 【0010】 米国登録特許5407617号公報は、発泡層を含む床及び壁紙の製造方法について開示している。前記方法は、支持層上に粉末混合物を散布する工程、それから溶融する工程及び均す工程、それによって支持層上に均した層を形成する工程を含む。前記粉末混合物は、100部の熱可塑性ポリマー、0〜100部の充填剤、及び0.5〜7部の発泡剤を含む。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 前記発泡装飾シートの製造方法に関し、既存の複合シートの一つの欠点は、かなりのカールが起こるために、大規模での生産が不可能であることである。カールは、多様な材料の異なる熱膨張によって起こり、複合シートの個々の層厚だけでなく各層の機械特性及び熱膨張特性に依存する。複合シートは、2つの層からなる。複合シートは、表層が例えば高い熱膨張特性を持つ合成樹脂からなり、最下層が例えば低い熱膨張特性を持つ紙又はフリースからなり、壁紙生産過程での加熱冷却サイクルの間にカールする傾向がある。 【0012】 また、公知技術として、通常の発泡壁紙は、発泡前に発泡性のラミネート上に印刷することで生産される。このように生産されるのは、後に続くラミネートする別の層上に印刷することがあまりに高価であるためである。そして、前記発泡層が不均一であり且つ基材が厚すぎるため現在の印刷技術ではその発泡層上に印刷することができないためである。 【課題を解決するための手段】 【0013】 前述の技術上の制限の1つ又はそれ以上は、本発明の複合シートによって克服する又は少なくとも低減することができる。前記複合シートは、(1)基層及び(2)基層に(直接)接合した発泡可能層を含む。前記発泡可能層は、以下の構成を含む。 【0014】 弾性率が0.1GPa未満のポリオレフィン材料100重量部と、 【0015】 0.1〜10重量部の発泡剤と、 【0016】 0〜200重量部の添加剤。 【0017】 前記発泡可能層は、厚みが0.05mm〜0.3mmであり、およそ50g/m2〜300g/m2に相当する。 【0018】 異なる多層構造を前記発泡合成樹脂層に潜在的に用いることができる。例えば、ラミネートの場合、基層と発泡膜の閧の層は、発泡剤なしでリサイクル材料を用いて作ることが可能である。また、前記発泡可能層は、2つの層(リサイクル材料を含む下層及び白色顔料が続く印刷に適した表面のスキン層)から作ることが可能である。 【0019】 驚くべきことに、特定の群の合成樹脂を使用することでカールの影響を最小化し、カールのない複合シートの生産することが可能であることが分かった。この複合シートは、大きい寸法でかつ連続的に発泡装飾シートを製造するために利用可能である。 【0020】 前記基層は、前記発砲可能層と比べて高い寸法安定性を有していなければならない。前記基層は、弾性率が1GPa超であり、0℃〜220℃の範囲で収縮と膨張の比率が2%未満であり、厚みが0.05mm〜0.15mmであり、およそ50g/m2〜300g/m2に相当する。基層安定性の結果として、前記発泡壁紙の製造過程における前記複合シートの寸法安定性が改善される。これは、どんな印刷過程においても必要なことである。なぜなら、そうでなければ発泡工程の間に気泡が全3次元方向へ拡大する結果、制御不能又は制御が不十分な印刷が記録されてしまうためである。基層が寸法的に安定でかつ高い弾性率を持つ硬い基層であり、発砲可能層が寸法的に不安定であるが柔らかい発泡可能なポリオレフィン層である場合は、発泡の間にZ方向へのみ拡大する複合シートを得ることができる。 【0021】 基層に適した材料としては、紙又は紙状材料、不織材料すなわちフリース、織物、不織布、及びプラスチック箔などである。好ましくは、紙又はフリースが用いられる。 【0022】 前記発泡可能層は、厚みが0.05mm〜0.3mmである。前記発泡可能層は、ポリオレフィン材料、発泡剤、及び任意の添加剤を含む。 【0023】 ポリオレフィンは、オレフィン又は異なるオレフィン組み合わせ(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、及びオクテンのようなオレフィン)から生産されるポリマーの何れの種類でもよい。ここでは、「ポリオレフィン」という用語は、例えば酢酸ビニルのような他の不飽和モノマーとオレフィンの共重合体も含む。ポリオレフィンは、最近では、その費用対効果の点だけでなくその優れた化学的及び物理的特性のため広く用いられている。本発明のポリオレフィンは、好ましくは、平均重量分子量が10000〜30000であり、それらの融点が発泡剤の分解温度範囲よりも下、好ましくは50℃〜110℃の範囲よりも下である。 【0024】 さらに、前記ポリオレフィンは、弾性率が0.1GPa未満であり、好ましくは熱可塑性エラストマーポリオレフィン(熱可塑性エラストマーポリオレフィンブレンドTPE−oとしても知られる。)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アタクチックポリプロピレンポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択されるのがよい。熱可塑性エラストマーポリオレフィンは、例えば、メタロセン触媒又は他の触媒を用いた、エチレンとブテン、ヘキセン、オクテン、又はプロピレンとの共重合のような既存技術の方法によって生産される。この方法で低密度かつ低結晶化度の柔らかいポリオレフィンが作られる。低密度ポリエチレン(又は超低密度ポリエチレン)と熱可塑性ポリオレフィンエラストマーの境界は、はっきりしていない。なぜなら、共にエチレンの共重合体だからである。しかし、いずれのポリオレフィン共重合体もその弾性率が0.1GPa未満である限り本発明において用いることができる。以下の記載において、熱可塑性ポリオレフィンエラストマーの表記は、弾性率が0.1GPa未満のいずれのポリオレフィン共重合体においても用いられる。 【0025】 もう一つの実施形態によれば、ポリオレフィンブレンドは、そのポリオレフィンブレンド全体の弾性率が0.1GPa未満である限り、例えばLDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、及びPP(ポリプロピレン)など弾性率が0.1GPaを超えるポリオレフィン材料を含むポリオレフィン材料として用いてもよい。したがって、前記ポリオレフィン材料は、弾性率が0.1GPaを超えるポリオレフィン及び0.1GPa未満のポリオレフィンのブレンドであってもよく、例えばそのポリオレフィンブレンドの全体の弾性率が0.1GPa未満であればよい。 【0026】 前記弾性率は、対象物の数学的記述、又は力が印加されるときの弾性的に変形(すなわち非永久な)する物質が有する傾向である。対象物の前記弾性率は、前記弾性変形領域でのそれ自体の応力−ひずみ曲線の傾きとして定義される。[Askeland, Donald R, Phule, Pradeep P.(2006), The science and engineering of materials(5th ed.), Cengage Learning. p.198] 【0027】 熱可塑性エラストマー(TPE)は、共重合体であるか又はポリマーの混合物であり、通常は熱可塑性及び弾性特性(または、熱可逆ネットワークを含むエラストマーとして定義される。)を持つプラスチック及びゴムである。特に、前記ポリオレフィンは、ポリオレフィンブレンド(TPE−o)であってもよい。相溶性のあるゴムは、天然ゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエンゴムなどである。 【0028】 好ましくは、前記ポリオレフィンは、低密度ポリオレフィンであり、密度が0.96g/cm3未満であり、好ましくは0.90g/cm3である。さらに、前記ポリオレフィンは結晶化度が40%未満であってもよく、より好ましくは結晶化度が25%未満である。 【0029】 ここで用いられる用語「発泡剤」は、室温で液体又は固体の熱分解剤を意味し、ポリオレフィン(又はポリオレフィンブレンドの化合物の少なくとも1つ)の融点よりも高い分解温度を有しており、前記分解温度よりも高温に加熱されたときに窒素、二酸化炭素、又はアンモニア等のガスを放出しながら分解する。前記発泡剤は、アゾジカルボンアミド及び/又はその金属塩、ヒドラゾジカルボンアミド、ヒドラゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、トリヒドラジノ−sym−トリアジン、pp’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチル−オジニトリル、P−トルエンスルホニルヒドラジド、及びビスベンゼンスルホニルヒドラジドからなる群から選択されてもよい。好ましくは、アゾジカルボンアミド又は炭酸水素ナトリウムである。 【0030】 前記発泡剤の含有量は、所望の膨張係数に従って決定することができる。発泡可能層を形成する構成において発泡剤の好ましい量は、1重量部〜5重量部の範囲である。 【0031】 前記発泡剤の分解温度は、好ましくは120℃〜200℃の範囲である。 【0032】 前記発泡可能層は、前記ポリオレフィン材料及び前記発泡剤にさらに、添加剤を含んでいてもよい。ここで用いられる用語「添加剤」は、前記発泡可能層に加えられる物質を意味し、前記発泡可能層に特定の物性を成すために加えられる。これらの添加剤は、それらの性質で非常に異なる可能性がある。可能性がある添加剤は、触媒、顔料、充填剤、艶消剤、抗菌剤、UV安定剤、難燃剤、及び放出化合物である。 【0033】 例えば、前記発泡剤の分解温度を下げるために、よく知られた技術として、触媒を加えてもよい。そのような触媒は、酸化亜鉛、リシノール酸バリウム、マレイン酸メトキシスズ、水和ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、酢酸鉛、ラウリン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、及びリン酸アミルカドミウムからなる群から選択されてもよい。 【0034】 前記ポリオレフィン材料、特に熱可塑性エラストマーポリオレフィン材料の熱膨張係数を低下させるために、前記ポリマーと比較してかなり低い熱膨張性を有する充填剤(例えば、チョークなどの無機充填剤)のような添加剤を加えることができる。 【0035】 添加剤の全含有量は、0重量部〜200重量部であり、好ましくは50重量部〜80重量部である。 【0036】 本発明はまた、発泡装飾シート、特には発泡壁紙の製造方法に向けられている。前記方法は、以下の工程を含む。 【0037】 工程(a)上述の通り、複合シートを供給する工程と、 【0038】 工程(b)必要に応じて、前記複合シート上へ印刷する工程と、 【0039】 工程(c)前記複合シートの発泡工程。 【0040】 工程(a)によると、前記基層及び前記発泡可能層を含む本発明の複合シートが供給される。前記発泡可能層は、公知技術の異なる方法によっても製造することができる。1つの可能性のある方法は、その1つの化合物が混合され、カレンダーロール、シートダイ等を用いてシートに形成することである。その後、前記フィルムは、直接基層に溶融又は化学的にラミネートすることで形成してもよい。 【0041】 前記発泡可能層を基層へ取り付けた後、必要に応じて、架橋、色付、表面処理等の公知技術で追加の処理を行うことができる。フィルムの発泡を改善するために、公知技術であるように、十分な溶融強度が必要とされる。架橋は、溶融強度を改善するために用いることができる。架橋は、例えば、電離放射線又は架橋剤を用いることで行うことができる。好ましくは、電離放射線を用いる架橋が電圧100〜300kV及び線量10〜200kGyで、好ましくは、線量10〜100kGyの電子ビームによって実行される。発泡表面構造の改善のために、公知技術として低電圧及び高電圧の2つの異なった電子ビームを適用することができる。 【0042】 あるいは、架橋は、高い温度でラジカルに分解する架橋剤を使用することでも行うことができる。架橋剤の具体例は、例えば、ジクミルパーオキサイド、アルキルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、及びアラルキルパーオキサイド等様々な種類を含む有機過酸化物である。 【0043】 前記複合シートの色彩は、例えばグラビア、フレキソスクリーン、又はインクジェット印刷(工程(b))のような印刷方法により行うことができる。 【0044】 追加的な表面処理は、コロナ処理のような方法によって行うことができる。 【0045】 工程(c)において、前記複合シートを、前記発泡装飾シート、それぞれ発泡壁紙を形成するために発泡させる。前記温度は、工程(c)の間、用いる発泡剤及び触媒に応じて120℃〜210℃の範囲であることが好ましい。 【0046】 発泡工程の後、前記発泡シートは、冷却する仕組みを持つローラによって機械的にエンボス加工をする、又は公知技術であるように、抑制剤システムを用いて化学的にエンボス加工をすることができる。 【0047】 前記複合シートは、幅0.5〜3.0mで連続的に生産することができる。 【図面の簡単な説明】 【0048】 本発明は、実施形態及びそれに付随する図面によって以下に記載される。 【0049】 【図1】図1は、積層体がカールすることを示す図面である。 【0050】 【図2】図2は、発泡可能層が、弾性率が0.1GPa未満のポリオレフィン材料からなる複合シートのカール状態及び発泡可能層が、弾性率が0.1GPa超のポリオレフィン材料からなる2つの複合シートのカール状態を示す写真である。 【0051】 【図3】図3は、発泡断面の顕微鏡画像であり、Aは、弾性率が0.1GPa未満である発泡可能層、Bは、可塑化PVC複合シートである。 【0052】 【図4】図4は、エンボス加工した発泡体の写真であり、Aは、弾性率が0.1GPa未満である発泡可能層、Bは、可塑化PVC複合シートである。 【発明の詳細な説明】 【0053】 本発明は、典型的な実施形態によって以下に記載される。 【0054】 基層及び前記基層へ直接接合する発泡可能層を含む複合シートを用いた壁紙の生産における主張な課題は、カールすることである。特に、幅0.5〜3mの壁紙の生産は、かなりのカールが起こるとき、ほぼ不可能である。原理上、その影響は、前記基層及び発泡可能層の熱膨張性が異なることに起因している。合成樹脂は、高い熱膨張率を有しており、さらには、冷却する間さらに収縮が増加し、結晶化が起こるということはよく知られている。しかしながら、前記壁紙の生産において加熱は避けられない工程であり、例えば、前記発泡可能層を前記基層にコーティングする間、表面のインク層を印刷する工程の後、又は加熱経路における発泡工程、などがある。以降の冷却段階の間、前記表面のポリプロピレン層は、前記基層よりもかなり収縮する可能性がある。そのような場合に、図1に示すようにカールが起こる。 【0055】 図1を参照すると、参照番号10は、高い熱膨張/収縮性の前記発泡可能層を表し、参照番号12は、低い熱膨張/収縮性の前記基層を表す。Xは、冷却段階の間、カールが起こることを表す。 【0056】 カールは、ラミネート時の熱ストレスに関する有名な理論から、それぞれの層の厚みだけでなく機械物性及び熱物性に依存する。2つの層(図1の表面層10及び下層12)からなる積層体の梁についての有名なティモシェンコの分析解では、前記梁は、温度T0ではカールせず、温度がTに変化したとき前記梁が曲率kbを得た。 【0057】 【0058】 ここで、m=t1/t2、弾性率比n=E1/E2、層厚h=t1+t2、温度変化ΔT=T−T0、及び熱係数差Δα=α2−α1、である。 【0059】 方程式は、曲率半径、それゆえのカールの膜厚、各層の弾性率、熱膨張係数等への依存性を調べるために用いることができる。弾性率比E1/E2が0.05未満のとき、その曲率半径、それゆえのカールは、E1/E2比の減少にともない急速に減少する。それゆえに、表面層を構成するポリオレフィン材料として弾性率が0.1GPa未満の柔らかいポリオレフィン材料が必要とされる。LDPEやHDPE(高密度ポリエチレン)又はPP(ポリプロピレン)のような標準的なポリオレフィンは、より高い弾性率(1GPa超)であり、それゆえカール性がより悪い。したがって、標準的なポリオレフィンでカールのない要求されるコーティング厚みを得ることは実際には不可能である。 【0060】 しかしながら、柔らかい合成樹脂の特定の群を用いることによって、カール効果を最小化し、かつカールのない積層体を生産することができる。柔らかい樹脂のこの群は、弾性率が0.1GPa未満の、熱可塑性エラストマーポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アタクチックポリプロピレンポリマー又はそれらの混合物を含む。 【0061】 異なる複合シートを、以下に示す基層に(直接に)発泡可能層を溶融することで作製した。 【0062】 前記基層シートは、紙又は不織材料からなり、厚みが0.1mm、弾性率が1GPa超、及び220℃までの収縮と膨張の比率が2%未満である。 【0063】 実施例1 【0064】 前記発泡可能層は、弾性率が0.1GPa未満ポリオレフィン材料からなる。前記発泡可能層の成分を、140℃、60RPMの条件化で混合する。そして、前記発泡可能層を、140℃で紙の上に積層する。 【0065】 より具体的には、前記発泡可能層は、以下の成分からなる。 【0066】 前記発泡可能層は、厚みが0.15mmであり、基材への良好な接着性を有する。室温で冷却後、カールは起こらなかった。 【0067】 比較例1 【0068】 前記発泡可能層は、以下の成分からなる。 【0069】 前記発泡可能層は、厚みが0.15mmであり、基材への良好な接着性を有する。室温で冷却後にある程度のカールが起こった。 【0070】 比較例2 【0071】 前記発泡可能層は、以下の成分からなる。 【0072】 前記発泡可能層は、厚みが0.15mmであり、前記基材に対して良好な接着性を有する。 【0073】 室温に冷却後、かなりのカールが起こった。 【0074】 図2は、上記に記載の通り作製された3つの異なる複合シートを示す。弾性率が0.1GPa未満であるポリオレフィン材料からなる発泡可能層を有する実施例1の複合シートは、カールを示さなかった(左)。比較のため、弾性率が0.1GPa超であるポリオレフィン材料からなる発泡可能層を有する2つの複合シートを作製した(比較例1及び比較例2)。左側のカールのない複合シートに対し、比較例の2つの複合シートは共にカール性を示した(図2の中央が中程度にカールした比較例1で、右側がかなりカールした比較例2である。)。 【0075】 前記実施例は、カールのない複合シートを得るためには、表面層が、弾性率が0.1GPa未満の柔らかいポリオレフィン材料から作られなければならないことを示す。 【0076】 前記サンプルを電圧160kV、電流10mA、可変線量10〜200kGyの電子ビーム放射線によって架橋し、225℃で発泡させた。全てのサンプルは発泡した。 【0077】 実施例2 【0078】 前記発泡可能層は、以下の成分からなる。 【0079】 前記発泡可能層の厚みは、0.15mm程度であった。次の工程において、前記発泡可能層を前記基層にラミネートし、170℃で1分間架橋した。前記発泡可能層にグラビア印刷試験機によりポリオレフィン表面に適した水系インクで印刷し、対流オーブンで、205℃で1分間発泡させた。図3は、発泡可能層が、弾性率が0.1GPa未満で良好な発泡を示す(A)と、壁紙に用いられるPVCベースの発泡体(B)とを対比した複合シートを示す。 【0080】 実施例3 【0081】 前記発泡可能層は、以下の成分からなる。 【0082】 前記発泡可能層は、厚みが0.2mmであり、厚みが0.1mmの不織材料にラミネートし、215℃、1分間、対流オーブンで発泡させた。その後、約140℃で熱エンボス加工をした。図4は、前記複合シートのエンボス加工した構造を例示するもので、発泡可能層の弾性率が0.1GPa未満の(A)と対比したPVC複合シートの(B)を示す。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 複合シートであって、 (1)弾性率が1GPaを超える基層と、 (2)前記基層と接合する発泡可能層とを含み、 前記基層は、0℃〜220℃の範囲における収縮及び膨張の比率が2%未満であり、厚みが0.05mm〜0.15mmであり、 前記発泡可能層は、弾性率が0.1GPa未満のポリオレフィン材料100重量部に対して、 0.1〜10重量部の発泡剤と、 0〜200重量部の添加剤を含み、 前記ポリオレフィン材料は、結晶化度が25%未満であり、 前記発泡可能層は、前記基層よりも高い熱膨張及び熱収縮性を有し、厚みが0.05〜0.3mmであり、 前記基層に対する前記発泡可能層の弾性率比は、0.05未満である、複合シート。 【請求項2】 前記ポリオレフィン材料は、熱可塑性エラストマーポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アタクチックポリプロピレンポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の複合シート。 【請求項3】 前記発泡剤は、アソジカルボンアミド及び/又はそれらの金属塩、ヒドラゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、トリヒドラジノ−sym−トリアジン、pp’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチル−オジニトリル、p−トルエンスルホニルヒドラジド、ビスベンゼンスルホニルヒドラジドからなる群から選択される、請求項1又は請求項2に記載の複合シート。 【請求項4】 前記添加剤は、触媒、顔料、充填剤、艶消剤、抗菌剤、UV安定剤、難燃剤、及び放出化合物からなる群から選択される、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の複合シート。 【請求項5】 前記添加剤は、触媒を含み、前記触媒は、酸化亜鉛、リシノール酸バリウム、マレイン酸メトキシスズ、水和ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、酢酸鉛、ラウリン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、及びリン酸アミルカドミウムからなる群から選択される、請求項4に記載の複合シート。 【請求項6】 前記基層は、紙、紙状材料、不織材料、織物、不織布、及びプラスチック箔からなる群から選択される、請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の複合シート。 【請求項7】 前記ポリオレフィン材料は、弾性率が0.1GPa超のポリオレフィン及び弾性率が0.1GPa未満のポリオレフィンを含むポリオレフィンブレンドであり、前記ポリオレフィンブレンド全体の弾性率が0.lGPa未満である、請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の複合シート。 【請求項8】 発泡装飾シートの製造方法であって、 (a)請求項1〜請求項7の何れか1つに記載の複合シートを供給する工程と、 (b)前記複合シートの前記発泡可能層の表面に印刷を行う工程と、 (c)前記複合シートを発泡させる工程 を含む、発泡装飾シートの製造方法。 【請求項9】 請求項8に記載の方法によって製造される装飾シート、特に壁紙。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-12-24 |
出願番号 | P2016-572892 |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B) P 1 651・ 537- YAA (B32B) P 1 651・ 113- YAA (B32B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
西村 泰英 藤井 眞吾 |
登録日 | 2019-06-07 |
登録番号 | 6535032 |
権利者 | ジェイエスシー バイカ |
発明の名称 | 複合シート、並びに、PVC及び可塑剤フリーの発泡装飾シートの製造方法 |
代理人 | 伊藤 寛之 |
代理人 | 伊藤 寛之 |
代理人 | 奥野 彰彦 |
代理人 | SK特許業務法人 |
代理人 | SK特許業務法人 |
代理人 | 奥野 彰彦 |