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審決分類 審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  G06F
審判 一部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1383218
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-11 
確定日 2021-11-22 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6574888号発明「案内表示プログラム、案内表示方法及び操作案内システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 令和2年9月2日付け訂正請求において、特許第6574888号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項11、〔12−13〕について訂正することを認める。 特許第6574888号の請求項1ないし4、6ないし9、11及び12に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6574888号の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、平成30年11月7日に出願され、令和元年8月23日にその特許権の設定登録がされ、令和元年9月11日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年3月11日 :特許異議申立人野々山彩による請求項1ないし4
、6ないし9、11及び12に係る特許に対する
特許異議の申立て
令和2年7月 6日付け:取消理由通知書
令和2年9月 2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和2年9月28日付け:訂正請求があった旨の通知書
令和3年2月 9日付け:訂正拒絶理由通知書
令和3年3月31日付け:訂正拒絶理由通知書
令和3年7月 6日付け:取消理由通知書(決定の予告)

なお、当審が通知した令和2年9月28日付けの通知書に対して、異議申立人からの応答はなかった。また、当審が通知した令和3年2月9日付けの訂正拒絶理由通知書、令和3年3月31日付けの訂正拒絶理由通知書及び令和3年7月6日付の取消理由通知書(決定の予告)に対して、特許権者からの応答はなかった。
また、本件特許異議申立ての理由は、概略、本件特許の請求項1ないし請求項4、請求項6ないし請求項9、請求項11、請求項12に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に基づいて当業者がその出願前に容易に発明することができたものであるから、これらの特許に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである、というものである(特許異議申立書第25頁等)。

第2 訂正の適否
以下の1に記載した訂正の内容に対して、当審が通知した令和3年3月31日付け訂正拒絶理由の具体的内容は、以下の4に記載したとおりであり、これに対する特許権者からの応答はなく、以下の4で記載した訂正拒絶理由は妥当なものであると認められるので、以下の5で述べるとおり、令和2年9月2日に特許権者が行った訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)のうち、訂正事項1ないし4に係る訂正は、認められない。

1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、特許第6574888号の特許請求の範囲を、令和2年9月2日に提出した訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし13について訂正することを求める、というものであり、訂正の内容は、以下の(1)ないし(6)からなる(下線は、訂正箇所を示す)。

(1)訂正事項1
請求項1に「前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、及び前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部」と記載されているのを、「前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、及び前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合に、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2−8も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(4)訂正事項4
請求項10に「前記操作受付部は、複数の前記ウェブページごとに、前記ウェブページが表示されている間に、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付け、前記送信部は、前記複数のウェブページごとに、前記複数のウェブページを遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、前記ページ識別情報とを関連付けて前記情報提供装置に送信する、請求項9に記載の案内表示プログラム。」と記載されているのを、
「 コンピュータを、
ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部、
前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、
前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部、及び
ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、前記ウェブページが表示されている間に、複数のウェブページごとに、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部、
として機能させ、
前記送信部は、前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいており、前記複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、を関連付けて、前記情報提供装置に送信する、案内表示プログラム。」に訂正する。

(5)訂正事項5
請求項11に「送信された前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得するステップと、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させるステップ」と記載されているのを、「前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、送信された前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得するステップと、前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合に、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させるステップ」に訂正する。

(6)訂正事項6
請求項12に「前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を前記ユーザ端末に送信する送信部と、を有し、前記ユーザ端末は、前記ページ識別情報を前記情報提供装置に送信するページ情報送信部、前記送信部が送信した前記案内情報を取得する案内情報取得部、及び前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部、」と記載されているのを、「前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を前記ユーザ端末に送信する送信部と、を有し、前記ユーザ端末は、前記ページ識別情報を前記情報提供装置に送信するページ情報送信部と、前記送信部が送信した前記案内情報を取得する案内情報取得部と、前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合に、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部と、」に訂正する(請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する。)。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(下線は、当審が強調のために付した。以下、同様。)

(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1に係る発明について、「前記案内情報」に「前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含」んでいることを限定し、「前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる」場合を「前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合」であることを限定するという限定を付加するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

イ 実質上の拡張・変更の有無
前記アの訂正事項1の目的からみて、訂正事項1は、案内表示プログラムを減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加の有無
訂正事項1について、願書に添付した明細書の段落【0090】には、「表示制御部152は、ウェブページにおいてユーザが行った操作が間違っている場合に、操作の案内をウェブページに表示させてもよい。具体的には、表示制御部152は、操作項目においてユーザが行った操作が、端末取得部151が取得した案内情報に含まれる正常操作情報が示す正常な操作内容と異なる場合に、当該案内情報に基づく操作の案内をウェブページに表示させる。正常操作情報は、ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す情報である。正常操作情報は、例えば、管理ユーザが設定した情報であり、操作に習熟した一般ユーザの操作内容に基づいて設定される情報である。」と記載されており、訂正事項1により追加される構成は、本件明細書に記載した事項である。
したがって、訂正事項1は願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2及び3
訂正事項2及び3に係る訂正は、いずれも請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられた事項である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2及び3に係る訂正は、請求項の削除であるから、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。

(3)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、請求項10に係る発明が「前記操作受付部は、複数の前記ウェブページごとに、前記ウェブページが表示されている間に、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付け、前記送信部は、前記複数のウェブページごとに、前記複数のウェブページを遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、前記ページ識別情報とを関連付けて前記情報提供装置に送信する、請求項9に記載の案内表示プログラム。」であったのを、
「コンピュータを、ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部、前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部、及びユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、前記ウェブページが表示されている間に、複数の前記ウェブページごとに、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部、として機能させ、前記送信部は、前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいており、前記複数のウェブページを遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、を関連付けて、前記情報提供装置に送信する、案内表示プログラム。」に訂正するものである。
ここで、訂正前の請求項9に係る発明は、「前記コンピュータを、ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、前記ウェブページが表示されている間に、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部としてさらに機能させ、前記送信部は、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づく前記案内情報とを関連付けて前記情報提供装置に送信する、(当審注:訂正前の)請求項1から8のいずれか一項に記載の案内表示プログラム。」であり、訂正前の請求項1に係る発明は、「コンピュータを、ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部、 前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、及び、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部として機能させるための案内表示プログラム」である。
よって、訂正事項4は、「として機能させるための案内プログラム」を「として機能させ」(る)、「案内プログラム」に限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
また、上記目的に加えて、訂正前の請求項10が、訂正前の請求項9を引用する記載であったものを独立形式請求項に改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであると認められる。

イ 実質上の拡張・変更の有無
前記アの訂正事項4の目的からみて、訂正事項4は案内プログラムを減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加の有無
訂正事項4に係る構成は、訂正前の請求項10に係る発明に基づき、「機能させるための案内プログラム」を「として機能させ」(る)、「案内プログラム」に限定するものであるから、本件明細書に記載した事項である。
したがって、訂正事項4は願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項5及び6
ア 訂正の目的について
訂正事項5及び6は、それぞれ、請求項11、請求項12に係る発明について、「前記案内情報」に「前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含」むことを限定し、「前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる」場合を「前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合」であることを限定するという限定を付加するものである。
したがって、訂正事項5及び6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

イ 実質上の拡張・変更の有無
前記アの訂正事項5及び6の目的からみて、訂正事項5及び6は、案内表示プログラムを減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加の有無
上記(1)ウにおいて検討したとおり、訂正事項5及び6は、本件明細書に記載した事項である。
したがって、訂正事項5及び6は願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

3 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし10について、請求項2ないし10はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正がされるものである。そのため、訂正後の請求項〔1−10〕は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
また、訂正前の請求項12及び13について、請求項13は請求項12を引用しているから、訂正事項6によって記載が訂正される請求項12に連動して訂正されるものである。そのため、訂正後の請求項〔12−13〕は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
さらに、特許権者から、訂正後の請求項10について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることの求めがあった。

4 独立特許要件について
本件は、訂正前の請求項1ないし4、6ないし9、11、12について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1ないし3、5について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
一方、訂正事項4及び6について、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むものであるから、特許異議の申立てがされていない請求項10及び13に係る訂正事項4及び6について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。
したがって、訂正後の請求項10及び13に係る発明(それぞれ、本件訂正発明10及び13という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、検討を行う。

(1)本件訂正発明10及び13
訂正後の請求項10及び13に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正発明10」及び「本件訂正発明13」という。)は、訂正特許請求の範囲の10及び13に記載された次のとおりのものである(参考のため、請求項13が引用する請求項12についても併せて記載する。また、訂正箇所に下線を付した。)。

ア 本件訂正発明10
コンピュータを、
ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部、
前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、
前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部、及び
ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、前記ウェブページが表示されている間に、複数のウェブページごとに、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部、
として機能させ、
前記送信部は、前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいており、前記複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、を関連付けて、前記情報提供装置に送信する、案内表示プログラム。

イ 本件訂正発明13
前記情報提供装置は、所定のウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記所定のウェブページにおいて複数のユーザが操作を行った操作内容とを組み合わせた教師データに基づいて、前記案内情報を学習する学習部をさらに有し、
前記送信部は、前記ページ情報取得部が取得した前記ページ識別情報に対応する、前記学習部が学習した前記案内情報を前記ユーザ端末に送信する、
請求項12に記載の操作案内システム。
(【請求項12】
ウェブページを表示させるユーザ端末と、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を前記ユーザ端末に提供する情報提供装置と、を有する操作案内システムであって、
前記情報提供装置は、
前記ユーザ端末のウェブブラウザがアクセスした前記ウェブページを識別するページ識別情報を取得するページ情報取得部と、
前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を前記ユーザ端末に送信する送信部と、
を有し、
前記ユーザ端末は、
前記ページ識別情報を前記情報提供装置に送信するページ情報送信部と、
前記送信部が送信した前記案内情報を取得する案内情報取得部と、
前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合に、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部と、
を有する
操作案内システム。)

(2)本件訂正発明10についての判断(引用発明1に基づく進歩性の判断)
ア 本件訂正発明10
本件訂正発明10は、上記(1)アに記載されたとおりである。

イ 引用文献、記載事項、引用発明
(ア)引用文献1記載事項、引用発明1
取消理由通知で引用した引用文献1(国際公開第2013/061325号)には、次の事項が記載されている(下線は当審付加。以下同様)。

a 第2頁第29行目〜第3頁第4行目
「According to an aspect of some embodiments of the present invention there is provided a network node of creating a dynamically adaptable tutorial, comprising: a server that allows a user to provide a plurality of descriptive elements for a plurality of separate objects of a website having at least one web document; a repository which stores the plurality of descriptive elements, each the descriptive element is separately associated with at least one of the plurality of separate objects; a calling module which receives a plurality of requests from a plurality of calling scripts which are loaded by a browser loading the website and retrieves a group of the plurality of descriptive elements in response to the plurality of requests; wherein the at least one web document enables a browsing user who uses the browser to initiate a tutorial session during which members of the group are sequentially presented in accordance with a current layout of a respective group from the plurality of separate objects.」
(当審訳:本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、動的に適応可能なチュートリアルを作成するネットワークノードが提供され、以下の構成からなる。ユーザーが少なくとも1つのウェブ文書を有するウェブサイトの複数の個別のオブジェクトに複数の説明要素を提供することを可能にするサーバー、複数の説明要素を格納するリポジトリであって、各説明要素は、複数の個別のオブジェクトの少なくとも1つに個別に関連付けられており、ウェブサイトをロードするブラウザによってロードされる複数の呼び出しスクリプトから複数のリクエストを受け取り、複数のリクエストに応答して複数の説明要素のグループを検索する呼び出しモジュール、ここで、少なくとも1つのウェブ文書は、ブラウザを使用する閲覧ユーザがチュートリアルセッションを開始できるようにし、その間、グループのメンバーは、複数の個別のオブジェクトからのそれぞれのグループの現在のレイアウトに従って順次提示される。)

b 第3頁18行目〜第3頁19行目
「Optionally, the calling module is hosted by a server and the plurality of requests from a plurality of calling scripts are sent from an end user device to the server.」
(当審訳:オプションで、呼び出しモジュールはサーバーによってホストされ、複数の呼び出しスクリプトからの複数のリクエストがエンドユーザーデバイスからサーバーに送信される。)

c 第4頁第17行目〜第4頁第24行目
「Moreover, according to actual instrumentation and equipment of embodiments of the method and/or system of the invention, several selected tasks could be implemented by hardware, by software or by firmware or by a combination thereof using an operating system.
For example, hardware for performing selected tasks according to embodiments of the invention could be implemented as a chip or a circuit. As software, selected tasks according to embodiments of the invention could be implemented as a plurality of software instructions being executed by a computer using any suitable operating system.」
(当審訳:さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の実際の計装および機器によれば、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェアによって、ソフトウェアまたはファームウェアによって、あるいはオペレーティングシステムを使用するそれらの組み合わせによって実装され得る。
例えば、本発明の実施形態に従って選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実装され得る。ソフトウェアとして、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装され得る。)

d 第6頁第2行目〜第6頁第5行目
「The present invention, in some embodiments thereof, relates to tutorials for websites and, more particularly, but not exclusively, to methods and/or systems for creating, maintaining and using dynamically adaptable tutorials having calling scripts which triggers the display of descriptive elements associated with separate objects.」
(当審訳:本発明は、そのいくつかの実施形態では、ウェブサイトのチュートリアルに関し、より詳細には、ただしそれに限定されないが、個別のオブジェクトに関連する説明要素の表示のきっかけとなる呼び出しスクリプトを有する動的に適応可能なチュートリアルを作成、維持および使用するための方法および/またはシステムに関連している。)

e 第6頁第23行目〜第7頁第9行目
「A dynamically adaptable tutorial enables to present sequentially descriptive elements in accordance with a current layout of a web document. The web document has separate objects, such as a button, an input box, a menu etc. The dynamically adaptable tutorial which is loaded with the web document includes descriptive elements such as text, audio and/or video segments which typically include instructions and/or examples of usage are associated with respective separate object of the web document. Calling scripts are also associated with respective separate object of the web document. Upon loading of the objects in a certain web document with a current layout, the respective descriptive elements of the tutorial are loaded in accordance with the current layout.
The dynamically adaptable tutorial is created according to user instructions received by a user interface. The user interface enables a user to provide descriptive elements and to store them in a repository. The user interface enables a user to associate the descriptive elements with separate objects of a website. The user interface further enables a user to determine the sequence of presenting descriptive elements. Once the tutorial is created, a calling module receives requests from calling scripts. There is a cross talk between the calling module and the browser: The browser loads calling scripts which send request to the calling module and the calling module responds by sending the corresponding descriptive elements.」
(当審訳:動的に適応可能なチュートリアルにより、ウェブ文書の現在のレイアウトに従って、説明要素を順番に提示できる。ウェブ文書には、ボタン、入力ボックス、メニューなどの個別のオブジェクトがある。ウェブ文書とともに読み込まれる動的に適応可能なチュートリアルには、通常、指示、及び/または、使用例を含むような、テキストや、音声、映像のセグメントなどの説明要素が含まれており、それぞれ、ウェブ文書の個別のオブジェクトに関連付けられている。呼び出しスクリプトも、ウェブ文書の個別のオブジェクトに関連付けられている。特定のウェブ文書内のオブジェクトを現在のレイアウトでロードすると、チュートリアルのそれぞれの説明要素が現在のレイアウトに従ってロードされる。
動的に適応可能なチュートリアルは、ユーザーインターフェースで受け取ったユーザーの指示に従って作成される。ユーザーインターフェースを使用すると、ユーザーは説明要素を提供してリポジトリに保存できる。ユーザーインターフェースを使用すると、ユーザーは説明要素をウェブサイトの個別のオブジェクトに関連付けることができる。ユーザーインターフェースはさらに、提示する説明要素のシーケンスをユーザーが決定することを可能にする。チュートリアルが作成されると、呼び出しモジュールは呼び出しスクリプトからリクエストを受け取る。呼び出しモジュールとブラウザの間には相互の対話がある。すなわち、ブラウザは、呼び出しスクリプトをロードし、呼び出しスクリプトは、呼び出しモジュールにリクエストを送信し、呼び出しモジュールは、対応する説明要素を送信することによって応答する。)

f 第9頁6行目〜第9頁8行目
「Optionally, the dynamically adaptable tutorial displays online images, images, banner and other advertising material on top of a web document.」
(当審訳:オプションで、動的に適応可能なチュートリアルでは、オンライン画像、画像、バナー、およびその他の広告素材をウェブ文書の上に重ねて表示する。)

g 第10頁第14行目〜第10頁17行目
「A branching dynamically adaptable tutorial may be branch upon a user selection of a descriptive element from multiple optional descriptive elements, such as multiple balloons displayed together next to one another.」
(当審訳:ある分岐する動的なチュートリアルは、例えば、互いに隣り合って表示される複数の吹き出しなどの、複数の選択可能な説明要素から、ユーザーが一つの説明要素を選択することによって、分岐することができる。)

h 第11頁第6行目〜第11頁第16行目
「Optionally, the browsed content identifying module 320 determines a size, a location, timing, duration, and the like, of displayed descriptive elements using pixel coordination (X, Y). Optionally, the browsed content identification module 204 may highlight the browsed elements by displaying graphical elements on top of the website that is being browsed. Optionally, features of a plurality of separate objects in a web document are identified. The identification of features of a plurality of separate objects may be performed by the browsed content identification module 204. The identified features may include graphical features such as location and/or size, temporal features, such as timing and/or duration, and/or sound features, such as volume. The features may be identified as they are being provided by an internet browser.」
(当審訳:オプションで、閲覧コンテンツ識別モジュール320は、ピクセル座標(X、Y)を使用して、表示された説明要素のサイズ、場所、タイミング、持続時間などを決定する。オプションで、閲覧されたコンテンツ識別モジュール204は、閲覧中のウェブサイトの上に重ねてグラフィック要素を表示することによって、閲覧された要素を強調表示することができる。オプションで、ウェブ文書内の複数の別個のオブジェクトの特徴が識別される。複数の別個のオブジェクトの特徴の識別は、閲覧コンテンツ識別モジュール204によって実行され得る。識別される特徴には、位置及び/またはサイズなどの表示の特徴、タイミング及び/または持続時間などの時間的な特徴、及び/または、音量などの音声の特徴が含まれる。これらの特徴は、インターネットブラウザによって提示されることに伴って、識別される場合がある。)

i 第12頁第20行目〜第12頁31行目、図4
「Reference is now made to FIG. 4, which is a schematic illustration of a descriptive element displayed in association with an object of a website, according to some embodiments of the present invention. In this example, a web document 405 is displayed in a web browser 410. The web document 405 has multiple separate objects 450. One of them is a products tab object 450. A descriptive element 460 is associated with the separate object 450. The descriptive element may include text. For example, the text may include clicking instructions such as "Click on "Products"". The shape of the descriptive element 460 may indicate the association to one or more separate objects 450. For example, the bubble-shape 462 points to the Products tab 450. The descriptive element 460 may be part of a sequence of descriptive elements. The descriptive element 460 may indicate the number of the current step and the total number of steps in the sequence.」
(当審訳:図4を次に参照すると、本発明のいくつかの実施形態による、ウェブサイトのオブジェクトに関連して表示される説明要素の概略図である。この例では、ウェブ文書405はウェブブラウザ410に表示される。ウェブ文書405は複数の個別のオブジェクト450を有する。それらの1つは「製品」タブのオブジェクト450である。説明要素460は、個別のオブジェクト450に関連付けられる。説明要素にはテキストを含めることができる。たとえば、テキストには「「製品」をクリックせよ」のようなクリックの指示が含まれる場合がある。説明要素460の形状によって、1つまたは複数の個別のオブジェクト450との関連付けを示すことができる。例えば、吹き出しの形状462は、製品タブ450を指す。説明要素460は、一連の説明要素の一部とすることができる。説明要素460は、シーケンスにおける現在のステップの数およびステップの総数を示し得る。)

「図4



j 第14頁第26行目〜第28行目、図7A
「Reference is now made to FIG. 7A-7K, which are schematic illustrations of a user interface for creating and editing descriptive elements, according to some embodiments of the present invention.」
(当審訳:図7A−7Kは、本発明のいくつかの実施形態による、説明要素を作成および編集するためのユーザインターフェースの概略図である。)

「図7A



k 第15頁第3行目〜第15頁第7行目
「Invoking conditions include: Uniform Resource Locator (URL) condition, step condition, auto step condition, redirected condition and/or a combination thereof. These conditions are captured in calling scripts.」
(当審訳:呼び出し条件には、Uniform Resource Locator(URL)条件、ステップ条件、自動ステップ条件、リダイレクトされた条件、および/またはそれらの組み合わせが含まれる。これらの条件は、呼び出しスクリプトに取り込まれる。)

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「 複数の説明要素を格納するリポジトリ、
ブラウザによってロードされる複数の呼び出しスクリプトから複数のリクエストを受け取り、複数のリクエストに応答して複数の説明要素のグループを検索する呼び出しモジュールを有し、
呼び出しモジュールはサーバーによってホストされ、複数の呼び出しスクリプトからの複数のリクエストがエンドユーザーデバイスからサーバーに送信され、
システムのいくつかの選択されたタスクは、コンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装され得る、
ウェブサイトのチュートリアルに関する、
説明要素の表示のきっかけとなる呼び出しスクリプトを有する動的に適応可能なチュートリアルを使用するためのシステムであって、
ウェブ文書には、ボタン、入力ボックス、メニューなどの個別のオブジェクトがあり、
ウェブ文書とともに読み込まれる動的に適応可能なチュートリアルには、説明要素が含まれ、それぞれ、ウェブ文書の個別のオブジェクトに関連付けられ、
呼び出しスクリプトも、ウェブ文書の個別のオブジェクトに関連付けられ、
動的に適応可能なチュートリアルは、ユーザーインターフェースで受け取ったユーザーの指示に従って作成され、
ユーザーインターフェースを使用すると、ユーザーは説明要素を提供してリポジトリに保存でき、
ユーザーインターフェースを使用すると、ユーザーは説明要素をウェブサイトの個別のオブジェクトに関連付けることができ、
ユーザーインターフェースはさらに、提示する説明要素のシーケンスをユーザーが決定することを可能にし、
呼び出しモジュールとブラウザの間には相互の対話があり、すなわち、
ブラウザは、呼び出しスクリプトをロードし、
呼び出しスクリプトは、呼び出しモジュールにリクエストを送信し、
呼び出しモジュールは対応する説明要素を送信することによって応答し、
ウェブサイトのオブジェクトに関連して表示される説明要素では、
ウェブ文書405はウェブブラウザ410に表示され、
ウェブ文書405は複数の個別のオブジェクト450を有し、
説明要素460は個別のオブジェクト450に関連付けられ、
説明要素にはテキストを含めることができ、
テキストには「「製品」をクリックせよ」などのクリックの指示が含まれ、
説明要素460は、個別のオブジェクト450に関連付けられ、説明要素にはテキストを含めることができ、シーケンスにおける現在のステップの数およびステップの総数を示し得、
呼び出し条件には、Uniform Resource Locator(URL)条件が含まれ、
これらの条件は、呼び出しスクリプトに取り込まれる、
説明要素の表示をトリガーする呼び出しスクリプトを有するチュートリアルを使用するためのシステム。」

(イ)引用発明2
取消理由通知で引用した引用文献2(特開2005−293248号公報)には、以下の(3)イ(ア)において特定した引用発明2が記載されている。

ウ 対比
(ア)引用発明1の「説明要素」は、「説明要素460は個別のオブジェクト450に関連付けられ、説明要素にはテキストを含めることができ、テキストには「「製品」をクリックせよ」などのクリック手順が含まれ」ており、この説明情報はクリックの手順というウェブページに関する操作を案内する情報といえるから、本件訂正発明10の「ウェブページに関する操作を案内する案内情報」に相当する。
また、引用発明1の「説明要素」は「レポジトリ」に格納され、「呼び出しモジュール」は、「複数のリクエストに応答して複数の説明要素のグループを検索」し、「対応する説明要素を送信することによって応答し」ており、「サーバーによってホストされ、複数の呼び出しスクリプトからの複数のリクエストがエンドユーザーデバイスからサーバーに送信」されており、説明要素(本件訂正発明10の「ウェブページに関する操作を案内する案内情報」に対応。)を送信(提供)しているから、引用発明1の「サーバーにホストされた呼び出しモジュール」及び「レポジトリ」は、本件訂正発明10の「情報提供装置」と、「ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置」である点で共通する。
引用発明1では、「複数の呼び出しスクリプトからの複数のリクエストがエンドユーザーデバイスからサーバーに送信され」、「呼び出し条件には、Uniform Resource Locator(URL)条件が含まれ、これらの条件は、呼び出しスクリプトに取り込まれ」ているから、URL条件を含む呼び出し条件が取り込まれた呼び出しスクリプトからの複数のリクエストがエンドユーザーデバイスからサーバーに送信されていると認められる。
また、引用発明1は、「URL条件を含む呼び出し条件が取り込まれた呼び出しスクリプトからのリクエスト」を送信している。ここで、URLはウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別する識別情報であることは技術常識であり、URL条件という条件により呼び出されたスクリプトからのリクエストであるから、当該リクエストは、ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報に対応した情報であるといえる。
よって、引用発明1の「URL条件を含む呼び出し条件が取り込まれた呼び出しスクリプトからのリクエスト」と本件訂正発明10の「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報」とは、「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報に対応した情報」である点で共通する。
したがって、引用発明1の「URL条件を含む呼び出し条件が取り込まれた呼び出しスクリプト」は、リクエストをサーバーにホストされた呼び出しモジュール(情報提供装置)に送信しているから、本件訂正発明10の「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部」と、「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報に対応した情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部」である点で共通している。

(イ)引用発明1では、「呼び出しモジュールとブラウザの間には相互の対話があり、すなわち、ブラウザは、呼び出しスクリプトをロードし、呼び出しスクリプトは、呼び出しモジュールにリクエストを送信し、呼び出しモジュールは対応する説明要素を送信することによって応答し」ているから、呼び出しスクリプトがロードされたウェブブラウザは、リクエストに対応する説明要素(ウェブページに関する操作を案内する情報)を呼び出しモジュールから取得していることは自明である。
したがって、引用発明1の「呼び出しスクリプトがロードされたウェブブラウザ」が、上記のようにリクエストに対応する説明要素(ウェブページに関する操作を案内する情報)を呼び出しモジュールから取得していることは、本件訂正発明10の「前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部」と、「前記送信部が送信した前記情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部」である点で共通している。

(ウ)引用発明1の「説明要素」は、「ウェブサイトのオブジェクトに関連して表示される説明要素では、ウェブ文書405はウェブブラウザ410に表示され、ウェブ文書405は複数の個別オブジェクト450を有し、説明要素460は個別のオブジェクト450に関連付けられ、説明要素にはテキストを含めることができ、テキストには「「製品」をクリックせよ」などのクリック手順が含ま」れていることから、ウェブブラウザは、説明要素(ウェブページに関する操作を案内する案内情報)とウェブ文書とをウェブページとして表示しているといえる。
したがって、引用発明1の説明要素とウェブ文書とを表示する「ウェブブラウザ」は、本件訂正発明10の「前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部」に相当する。

(エ)引用発明1の「ユーザ」が「説明要素」(ウェブページに関する操作を案内する情報)をレポジトリに保存(登録)することは、本件訂正発明10の「ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った」ことといえる。
また、引用発明1の「ユーザーインタフェース」は、その使用により「ユーザーは説明要素を提供してリポジトリに保存でき」、「ユーザの指示を受け取る」ものであるから、ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部といえる。
そして、引用発明1は、
「説明要素にはテキストを含めることができ、
テキストには「「製品」をクリックせよ」などのクリックの指示が含まれ、
説明要素460は、個別のオブジェクト450に関連付けられ、説明要素にはテキストを含めることができ、シーケンスにおける現在のステップの数およびステップの総数を示し得」るとの構成を備え、また、「クリック」等の操作により、「ウェブ文書」(ウェブページ)が他の「ウェブ文書」(ウェブページ)に遷移することが通常であるから、引用発明1の「説明要素」は、「ウェブ文書」(ウェブページ)に関連づけられ、「ウェブ文書」(ウェブページ)の一連のシーケンス(遷移)のステップに対応した「説明要素」をレポジトリに保存している(ユーザが行った登録の操作を受け付けている)といえる。ここで、複数のウェブ文書(ウェブページ)は互いに異なる説明要素を備えた複数のウェブページであるから、それらのレポジトリへの保存は複数のウェブページごとに行われていることは自明である。
よって、引用発明1の「ユーザインターフェース」は、本件訂正発明10の「ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、前記ウェブページが表示されている間に、複数のウェブページごとに、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部」と「ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、複数のウェブページごとに、前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部」である点で共通している。

(オ)引用発明1の「説明要素」は、各「ウェブ文書」に関連づけられており、ウェブ文書がURLに関連づけられていることは技術常識であるから、「前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報」に関連づけられているといえる。
また、引用発明1の「説明要素」(ウェブページに関する操作を案内する情報)は、ユーザがレポジトリ(情報提供装置)に保存(登録)していることから、引用発明1の「説明要素」は、「前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいて」情報提供装置に送信しているといえる。
そして、前記(エ)より、引用発明1の「説明要素」は、「シーケンスにおける現在のステップ」を示し得るものであるから、複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む案内情報といえる。
よって、前記(イ)を参酌すれば、引用発明1の「説明要素」をレポジトリ(情報提供装置)に保存することは、本件訂正発明10の「前記送信部は、前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいており、前記複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、を関連付けて、前記情報提供装置に送信する」ことと、「前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応するページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいており、前記複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、を関連付けて、前記情報提供装置に送信する」点で共通している。

(カ)引用発明1の「説明要素の表示をトリガーする呼び出しスクリプトを有するチュートリアルを使用するためのシステム」は、「説明要素」を表示することにより案内表示を行う手段である。よって、引用発明1の前記「システム」と、本件訂正発明10の「案内表示プログラム」とは、前記「送信部」、「取得部」、「表示制御部」及び「操作受付部」として機能するための「案内表示を行う手段」である点で共通している。

したがって、本件訂正発明10と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「 ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報に対応した情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部、
前記送信部が送信した前記情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、
前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部、
ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、複数のウェブページごとに、前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部、
として機能するための手段であって、
前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応するページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいており、前記複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、を関連付けて、前記情報提供装置に送信する、
案内表示を行う手段。」

[相違点]
<相違点1−1>
本件訂正発明10では、情報提供装置に対して送信する情報が、「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報」(それ自体)であるのに対し、引用発明1では、「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報に対応する情報」である点。

<相違点1−2>
本件訂正発明10では、操作受付部におけるユーザの操作を受け付けを「前記ウェブページが表示されている間に、」行っているのに対して、引用発明1では、そのようなことが特定されていない点。

<相違点1−3>
本件訂正発明10では、ページ識別情報と前記案内情報とを関連付けて、情報提供装置に送信する処理を「前記送信部」で行っているのに対して、引用発明1では、そのようなことが特定されていない点。

<相違点1−4>
本件訂正発明10では、送信部、取得部、表示制御部を、コンピュータを機能させるプログラムとして構成しているのに対して、引用発明1においてそのようなことが特定されていない点。

エ 判断
(ア)相違点1−1について
引用発明1において、URL条件により呼び出されたスクリプトに対応したリクエスト(ページ識別情報に対応した情報)は、スクリプトを介して間接的に特定のURL(ページ識別情報)がアクセスされたことを通知している情報といえる。
よって、ページ識別情報を、特定のURLに対応するリクエストの送信によって間接的に通知することに替えて、ページ識別情報それ自体を直接的に通知することは、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)における設計範囲内の技術的事項である。
したがって、引用発明1において、ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別する識別情報を直接的に送信する構成を採用することで、上記相違点1−1に係る本件訂正発明10の構成とすることは、当業者の設計範囲内の技術的事項である。

加えて、引用発明1と引用発明2とは、いずれもブラウザにより案内情報を表示する技術という同一技術分野に属しており、いずれもユーザーの操作の案内情報を表示するという同一の機能を有しているから、URLに対応した案内情報を取得するための情報として、引用発明1における呼び出しスクリプトからのリクエストに替えて、引用発明2のウェブページを識別する識別情報を送信するとの技術的事項を採用して、ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別する識別情報を送信する構成とすることで、上記相違点1−1に係る本件訂正発明10の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(イ)相違点1−2について
上記イ(ア)jを参照すると、引用文献1の図7Aには、ウェブページとユーザの操作を受け付けるユーザーインターフェイス(操作受付部)とが同じページ上で同時に表示されることが示唆されている。
したがって、上記示唆に基づいて、引用発明1において、ユーザインターフェイス(操作受付部)が、ウェブページを表示している間に、ユーザの操作を受け付けるよう構成することにより、相違点1−2に係る本件訂正発明10の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(ウ)相違点1−3について
引用発明1は、「ユーザーインターフェースを使用すると、ユーザーは説明要素を提供してリポジトリに保存でき」、「複数の呼び出しスクリプトからの複数のリクエストがエンドユーザーデバイスからサーバーに送信され」るものであり、「説明要素」(ページ識別情報と関連づけた案内情報)を送信する手段である当該ユーザーインターフェイスはユーザデバイスに備えられた手段であり、「リクエスト」(ページ識別情報に対応)を送信する手段である「呼び出しスクリプト」もまた、(エンド)ユーザデバイスに備えられた手段である。
したがって、「リクエスト」、「説明要素」は、いずれもユーザデバイスから送信されるものであり、ユーザデバイスから他の装置への送信手段を「送信部」と呼称して、「リクエスト」と「説明要素」とを当該送信部から送信される構成とし、相違点1−3に係る本件訂正発明10の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(エ)相違点1−4について
引用発明1は、「コンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装され得」るものであり、呼び出しスクリプトにより、送信を行い、ブラウザ取得処理及び表示制御処理を行うことが記載されていると認められる。
そして、スクリプトとブラウザとをコンピュータプログラムにより実現することは、周知・慣用手段であり、呼び出しスクリプトはブラウザにロードされることにより実行されるものであるから、引用発明1を、送信部、取得処理部、表示制御部として機能させる案内表示プログラムとして構成し、相違点1−4に係る本件訂正発明10の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(オ)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件訂正発明10の奏する作用効果は、引用発明1、2及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(カ)よって、本件訂正発明10は、引用発明1、2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3)本件訂正発明10についての判断(引用発明2に基づく進歩性の判断)ア 本件訂正発明10
本件訂正発明10は、前記(1)アに記載されたとおりである。

イ 引用文献2記載事項、引用発明2
(ア)引用文献2(特開2005−293248号公報)には、次の事項が記載されている。

a 段落[0002]〜段落[0003]
「【背景技術】
【0002】
ブラウザに表示されたWebページに対してアノテーション(コメント、ヘルプ、装飾等の注釈)を付ける技術及びその技術を利用する技術が注目を集めている。特に、銀行のオンラインシステムや企業の販売システム等、多くのレガシーアプリケーションがWebベースのシステムに移行しつつある。そして、それらWeb上のアプリケーションを利用するユーザに対しての操作支援を行うシステムも望まれている。
【0003】
アノテーションは通常構造化文書を作成した後に、付加的に付けられ、その表示もユーザの状態や操作等に応じて付加的に行われることが多い。ユーザの状態に応じて表示する例としては、教育目的のアプリケーションにおいて、ユーザの理解度や興味の度合いに応じてアノテーションの表示を切り替えることが挙げられる。また、操作に応じて表示する例としては、Webアプリケーションのヘルプシステムにおいて、ユーザが間違った操作をしたときや、どうすればよいか分からずウロウロしているときに、アノテーションを表示することが挙げられる。」

b 段落[0020]〜段落[0028]
「【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、ブラウザに表示されるアノテーションの表示用のトリガ(条件ルール)となるアノテーションルールデータの作成に関して説明する。
【0021】
本願発明に係るアノテーションルールデータ作成装置(コンピュータ)1は、図1に示すように、コンテンツデータ2を読み取り表示部に表示するブラウザ3、マウスやキーボード等の入力手段4、操作イベント記憶手段5、操作イベントデータ表示手段6、操作イベントデータ選択手段7、再現手段8、アノテーションルールデータ作成手段9、アノテーションルールデータ記憶手段10、アノテーション出力データ記憶手段11とを備え、これらの手段は、コンピュータ1に搭載されているハードウエア及びソフトウエアが協働して実現している。
【0022】
コンテンツデータ2は、HTML文書XML文書等の構造化文書のデータ、この構造化文書によって表示部に表示される画像(動画像、静止画像)情報や文字情報、音声出力部(スピーカー等)から出力される音声(人の声、音楽等の音)情報等のデータである。
【0023】
ブラウザ3は、コンテンツサーバ(Webサーバ)等にコンテンツデータ2の取得要求を行い、取得したコンテンツデータを表示部に表示する手段であり、図2で示す画面を表示したり、スクリプトやアプレット等のプログラムを実行可能なものである。このブラウザ3は、Internet Explorer、Netscape(登録商標)等のパーソナルコンピュータにインストールされているものであってもよいし、専用のブラウザであってもよい。
【0024】
操作イベント記憶手段5は、操作者がマウスやキーボード等の入力手段4を操作して、ブラウザ3内で発生するイベント(例えば、キーボードを操作して文字が入力されたり、マウスを操作してカーソルを移動させたり、クリックする等)の種類、該イベントの種類の発生回数(繰り返し回数)、該イベントが発生した画面内の発生位置、該発生位置における画面内のオブジェクト情報を検知し、これらの情報と該イベントが発生した時刻とを操作イベントデータとして記憶する手段である。これらのイベントは、イベントハンドラを用いて検知さるものであり、イベントの種類とは、「クリックした(click)」、「入力内容が変更された(change)」、「フォーカスが当たった(focus)」、「フォーカスが外れた(blue)」等を示す。また、イベントの発生回数とは、発生するイベントの記録を開始してから、同一の種類のイベントが繰り返し発生した回数を示す。また、イベントの発生位置とは、該イベントが発生した画面上の位置を示し、通常X−Y座標を用いて示される情報であり、カーソル13(図2参照)の位置等の情報である。また、イベントの発生位置におけるオブジェクト情報とは、ブラウザ3内でイベントが発生した位置に表示されているボタン、入力欄14、選択欄15、表などのオブジェクトの種類とオブジェクト同士を識別するオブジェクトID等のオブジェクトに関する情報である。イベントが発生した時刻とは、該イベントが発生したときのコンピュータ1のマシンタイムや、イベントの記録を開始してからの経過時間等の時間である。なお、「mousemove」のように発生回数が多いイベントの種類の場合には、発生したイベントの種類、該イベントの発生位置、該イベントの発生時刻の情報のみを記憶し、その他の情報に関しては記憶せずに、コンピュータ1のデータ処理の付加を軽減すると共に、記憶すべき情報量を削減してもよい。
【0025】
操作イベントデータ表示手段6は、イベントの種類毎及びオブジェクトの種類毎に、予め設定された重み付けに基づいてポイントを記憶しておき、このポイントに基づいて前記操作イベント記憶手段5によって記録されたイベントに対してポイントを演算し、ポイントが高い順に並び替えて、図4(当審注:「図5」の誤記と認める。)に示すような一覧表にして表示する手段である。ポイントの演算方法としてはイベントの種類に基づいてポイントを演算する方法と、イベントの種類とオブジェクトの種類の双方のに基づいてポイントを演算する方法とが考えられる。なお、予めイベント毎に設定されているポイントは、「click」や「change」のように重要性が高いと思われるイベントにはポイントを高く設定し、逆に「mousemove」のように重要性が低いと思われるイベントにはポイントを低く設定する。
これによって、操作者は、アノテーションを付加する必要性が高いイベントを容易に選択することができるようになる。
【0026】
前記操作イベントデータ選択手段7は、前記操作イベントデータ表示手段6によってポイントの高い順に並び替えて表示された操作イベントデータの中から、人が入力手段を操作して1つの操作イベントデータを選択する手段であり、図4で示すような操作イベント一覧の中から1つのイベントを選択する手段である。
【0027】
前記再現手段8は、前記操作イベントデータ選択手段7によって選択された操作イベントデータと、前記操作イベント記憶手段5に記憶されている複数の操作イベントの中から選択された操作イベントの数秒から数十秒(例えば、15秒)程度前から該選択された操作イベントを選び出し、それらを発生時刻順に並び替えて、画面上にその一連の動作を再現する。より具体的には、DynamicHTMLの機能を用いて実現する。なお、DynamicHTMLでは、システムのマウスを操作することはできないので、HTML文書上に、新たなマウスポインタ用の画像をオブジェクトとして追加し、その画像の位置を移動させる。また、スクロール座標とボタンの状態に変更のあるものは、対応するオブジェクトの属性値を更新する。入力されたキーがある場合は、その入力されたキーを使って、対象となるオブジェクトの入力テキストを表す属性値を更新する。
このように、選択した操作イベントを再現することによって、アノテーションルールデータを作成すべきイベントを確認することができ、容易にアノテーションを付加したい操作イベントを選択することができる。
【0028】
前記アノテーションルールデータ作成手段9は、前記操作イベントデータ選択手段7によって選択された操作イベントデータの中からイベントの種類、該イベントの発生回数、該イベントの発生位置における画面内のオブジェクト情報を選択し、ブラウザ3から該イベントが発生した画面に表示されているコンテンツのコンテンツ識別情報とを対応させて、ルール条件データ部10aとし、さらに、このルール条件データ部該ルール条件データ部に設定されたイベントと同一のイベントが発生したときに出力する、アノテーション出力データ記憶手段11に記憶されているアノテーション出力データのアノテーション種類情報、及び該アノテーション出力データのURL(アドレス)から設定されるルール実行データ部10bとからアノテーションルールデータを作成する手段である。そして、作成されたアノテーションルールデータは、アノテーションルールデータ記憶手段10に記憶される。
なお、図1では、アノテーションルールデータ記憶手段10及びアノテーション出力データ記憶手段11は、アノテーションルールデータ作成装置1に備えられているが、後述するアノテーションサーバAS(図7参照)に備えて、前記アノテーションルールデータ作成手段9によって作成したデータをアノテーションサーバASに送信して記憶させてもよい。」

c 図2
「【図2】コンテンツを表示したブラウザの画面図である。



d 段落[0029]〜段落[0034]
「【0029】
つぎに、該アノテーションルールデータ作成装置1を用いて、図2で示す、曜日選択欄15aの選択状態を変更したときにアノテーションが表示するためのアノテーションルールデータを作成手順を説明する。
【0030】
まず、アノテーションルールデータの作成者は、コンピュータ(アノテーションルールデータ作成装置)1の入力手段4を操作してブラウザ3にコンテンツデータのURL(例えば、http://www.abcd.com)を入力し、コンテンツデータ2を取得させて、図2で示すように、表示部に表示させる。画面12には、複数の文字情報以外にも、名前や住所等のデータを入力する入力欄14,…,14、複数のデータの選択肢の中から1つを選択可能となる選択欄15,…,15が備えられており、各欄にデータを入力可能となっている。さらに、図3に示すイベント記憶画面16を表示させて、操作イベントデータの記録を開始する。この画面16の記録ボタン17を押下することにより、ブラウザ3内で発生するイベントを検知して記憶を開始する。前記作成者は、マウスやキーボード等の入力手段4を用いて、アノテーションを付加する例示操作を行い、操作イベント記憶手段5はこの例示操作を記憶する。例示操作としては、図2に示した画面の曜日選択欄15aの選択した内容を、「金(曜日)」に変更する等、通常、入力手段4を操作するときと同じ動作を行う。記憶する操作イベント情報としては、図4に示すような各種のデータである。図4は、複数の操作イベントデータ55の一例であり、各データを「,」で区切っており、左から「イベント発生時刻」、「イベントの発生位置のX座標」、「イベントの発生位置のY座標」、「イベントの種類」、「オブジェクトID(オブジェクト情報)」、「オブジェクトの種類」、「その他の情報」の順に配列して記憶する。例示操作が終了すると、図3に示す停止ボタン18を押下して、イベントの記憶を終了すると、コンピュータ1は、図5で示す、操作イベント一覧画面を表示する。なお、例示操作して記憶した操作イベントデータを記録媒体に保存するときには、図3に示す保存ボタン20を押下することで、該データを記録してもよい。また、既に記録されている操作イベントデータを読み込むときには、読込ボタン21を押下して、記録媒体に記録されている操作イベントデータを読み込んでもよい。
【0031】
図5に示した操作イベント一覧画面22は、記録された操作イベントデータを、予め設定していた重み付けに基づきポイントを演算し、このポイントの高い順にデータを並び替えて、一覧表23に表示している。一覧表には、6つのデータが表示されているが、当然、これに限定するものではない。なお、画面に全てのデータが収まりきらない場合には、スクロールバーを一覧表23に備えさせて、全てのイベントデータを表示できるようにする。この一覧表23の画面の1番には、イベントの種類が「click」のデータが、2番目には「change」のデータが表示されている。前述のように、図2で示す、曜日選択欄15aの内容を変更した場合に、アノテーションを表示する場合には、2番目のデータを選択し(入力手段4を操作して、2番目のデータをクリックし)、ルール作成ボタン24を押下する。
【0032】
ルール作成ボタン24が押下されると、コンピュータ1は、図6で示すように、ルール設定画面26を表示する。この画面には、前記操作イベント一覧画面22で選択した操作イベントデータとURL(コンテンツ識別情報)に基づいて、動作対象URL欄27、イベント種類欄28、オブジェクト名欄29a、オブジェクトID29d、オブジェクト種類欄29b、発生回数欄29cの各欄にそれぞれのデータが引き継がれて表示される。また、前記作成者は、プログラミングを行うことなく、イベントの種類、イベントの発生回数、コンテンツ識別情報、オブジェクト情報からルール条件データ部10a(図1参照)を設定することができる。そして、再生ボタン35を押下すると、選択した操作イベントデータより数十秒前(例えば、20秒前)からのイベントを再現して、アノテーションを付加するイベントを表示部に表示して、視覚的にイベントを確認できる。
【0033】
また、前記ルール条件データ部10aの条件と一致する操作を行ったときに出力するアノテーションは、図6に示すアノテーション種類欄30、アノテーションメッセージ欄31、データファイル欄32にデータを入力(選択)して、アノテーション出力データ部を作成する。前記アノテーション種類欄30はアノテーションとして出力するデータの種類を選択することができ、「アバター表示」、「音声出力」、「画像表示」、「警告ウインドウ表示」、「ページ移動」、「別ウインドウでのページ表示」、「オブジェクトの非表示」、「入力禁止化」、「他ページの埋め込み」、「フォーカス移動」、「バルーンヘルプ表示」、「テキスト表示」、「アイコン表示」、「背景色変更」、「下線表示」、「太字化」等の複数のアノテーションの種類の中から1つを選択することができ、例えば、「アバター表示」を選択した場合には、図9で示すように、アバター54aを表示する。なお、アノテーション種類としては、前述した1つのアノテーションであってもよいが、2つ以上のアノテーションの種類を組み合わせてもよい。前記アノテーションメッセージ欄31は、アノテーションとして表示する文字情報を入力する欄であり、このアノテーションメッセージ欄31に入力した文字情報が、図9に示す、アノテーションメッセージ54bとして表示される。また、データファイル欄32には、アノテーションサーバAS(図7参照)に記憶されている音声データファイル、画像(動画像、静止画像)データファイルのアドレス(URL、パス)を入力する欄である。そして、アノテーションとして出力するデータの入力が終了して、アノテーションルールデータを作成する場合には、登録ボタン33を押下すると、アノテーション種類情報、アノテーション出力データのアドレス(URL)、文字情報からルール実行データ部を設定する。
【0034】
そして、作成者は所望のルール条件データ部と、該ルール条件データ部に対応するルール実行データ部との設定が終了して、登録ボタン33を押下すると、アノテーションルールデータ作成手段9は、該ルール条件データ部と、ルール実行データ部のデータをアノテーションルールデータ記憶手段10に記憶させる。」

e 段落[0044]〜段落[0045]
「【0044】
前記ユーザマシンTは、プロキシサーバPSから取得した前記アノテーションルールデータ取得プログラム42と協働することによって、前記ブラウザ3に表示されているコンテンツデータを識別するコンテンツ識別情報及びユーザIDを少なくとも含む識別データを前記アノテーションサーバASに送信する識別データ送信手段43と、前記アノテーションサーバASのアノテーションルールデータ送信手段51から送信されたアノテーションルールデータを記憶する第2アノテーションルールデータ記憶手段44とを備える。
【0045】
また、前記ユーザマシンTは、プロキシサーバPSから取得した前記アノテーション出力プログラム45と協働することによって、人が入力手段を操作することで発生するイベントの種類、該イベントの種類の発生回数(繰り返し回数)、該イベントの発生位置、該発生位置における画面内のオブジェクト情報を少なくとも検知するイベント検知手段46と、前記イベント検知手段46によって検知されたイベントの情報と前記第2アノテーションルールデータ記憶手段44に記憶されているアノテーションルールデータの前記ルール条件データ部とが一致するか否かを判断するイベント判断手段47と、前記イベント判断手段47によってイベントが一致した場合には、該ルール条件データ部に対応したルール実行部のアノテーションの種類情報、アノテーション出力データのアドレスに基づき、前記アノテーションサーバASからアノテーション出力データを取得するアノテーション出力データ取得手段48と、このアノテーション出力データを表示部若しくは音声出力部に出力するアノテーション出力手段49とを備える。」

f 段落[0047]〜段落[0052]
「【0047】
つぎに、図2で示したWebページの画面にアノテーションを出力するとき、本願発明に係るアノテーションシステムを用いた場合について述べる。
【0048】
ユーザマシンTのブラウザ3は、図8に示すように、ブラウザ3はユーザに指定されたコンテンツのURLに基づき、プロキシサーバPSに該コンテンツの取得要求を行う。プロキシサーバPSを仲介する方法としては、
(1)ブラウザのプロキシの設定を変更し、この設定に基づいて、プロキシサーバPSを介してアクセスする。
(2)外部のWebサーバをプロキシサーバと見なして、このWebサーバ(プロキシサーバPS)を介して、コンテンツサーバにアクセスする。
の方法などがある。
【0049】
プロキシサーバPSは、受け取った対象コンテンツのURLをそのコンテンツサーバCSに送信し、コンテンツのHTMLファイルを受信する。そして、前記URL付加手段38は、アノテーションルールデータ取得プログラムのURLと、アノテーション出力プログラムのURLを挿入し、この改変されたHTMLファイルを前記ブラウザ3に送り返す。
【0050】
改変されたHTMLファイルを読み込んだブラウザ3は、図2で示す画面12を表示し、前記アノテーションルールデータ取得プログラムと前記アノテーション出力プログラムを自動的にダウンロードする。ダウンロードしたアノテーションルールデータ取得プログラム42を組み込んだブラウザ3は、対象のコンテンツのURLとユーザID(Cookie)を識別データとして、前記アノテーションサーバASに送信する。プロキシサーバPSとアノテーションサーバASが同一マシン(同一のIPアドレス)の場合は、既にアクセスしているプロキシサーバPSに対してアクセスし、プロキシサーバPSとアノテーションサーバASとが異なったマシン(異なったIPアドレス)の場合には、前記アノテーションルールデータ取得プログラムに設定されているアノテーションサーバのアドレスに基づいてアクセスする。
【0051】
アノテーションサーバASは、送信された前記識別データに基づき、URL及びユーザIDに対応したアノテーションルールデータを選択し、ブラウザ3に送信する。したがって、URL毎(画面毎)のアノテーションルールデータを選択するだけでなく、ユーザ毎のアノテーションルールデータを選択するので、ユーザの理解度や興味の度合いに応じてアノテーションを設定することができる。
【0052】
また、前記アノテーション出力プログラム45を組み込んだブラウザ3は、その画面12(図2参照)内で発生したイベントを検知し、このイベントと、前記アノテーションサーバASから受信したアノテーションルールデータ(ルール条件部データ)とが一致した場合には、そのアノテーションルールデータに対応したアノテーション出力データを、アノテーションサーバASから取得して、図9に示すアノテーション54を表示する。アノテーションサーバASから取得するアノテーション出力データは、アノテーションルールデータ(ルール条件部データ)と発生したイベントが一致する度に、アノテーションサーバASから取得しているが、アノテーション54をすぐに表示できるように、アノテーションルールデータを取得したときに、ブラウザ3が必要なアノテーション出力データをダウンロードして、ユーザマシンTに記憶してもよい。
なお、前記イベント判断手段は、「mousemove」のような発生する頻度が高く且つ重要性の低いイベントの種類の場合には、該イベントの発生位置のオブジェクトが一致するか否かの断を中止して、ユーザマシンTの負荷を軽減することもできる。

g 図9
「【図9】は、アノテーションを表示した画面の説明図である。

54 アノテーション
54b アノテーションメッセージ
54a アバター」

図9には、アノテーション54として、アバター54aを表示するとともに、文字情報「ここでは、曜日を一つ選択してください。」が、アノテーションメッセージ54bとしてウェブページの文字情報の「曜日」の近傍に表示されることが開示されていると認定できる。

したがって、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

「 ブラウザに表示されたWebページに対してアノテーション(コメント、ヘルプ、装飾等の注釈)を付ける技術であって、
操作に応じて表示する例としては、ユーザが間違った操作をしたときや、どうすればよいか分からずウロウロしているときに、アノテーションを表示し、
ブラウザに表示されるアノテーションの表示用のトリガ(条件ルール)となるアノテーションルールデータの作成に関し、アノテーションルールデータ作成装置(コンピュータ)1は、ブラウザ3、入力手段4、操作イベント記憶手段5、操作イベントデータ表示手段6、操作イベントデータ選択手段7、アノテーションルールデータ作成手段9、アノテーションルールデータ記憶手段10、アノテーション出力データ記憶手段11とを備え、これらの手段は、コンピュータ1に搭載されているハードウエア及びソフトウエアが協働して実現しており、
ブラウザ3は、コンテンツサーバ(Webサーバ)等にコンテンツデータ2の取得要求を行い、取得したコンテンツデータを表示部に表示する手段であり、図2で示す画面を表示したり、スクリプトやアプレット等のプログラムを実行可能であり、
操作イベント記憶手段5は、操作者がマウスやキーボード等の入力手段4を操作して、ブラウザ3内で発生するイベント(例えば、キーボードを操作して文字が入力されたり、マウスを操作してカーソルを移動させたり、クリックする等)の種類、該イベントの種類の発生回数(繰り返し回数)、該イベントが発生した画面内の発生位置、該発生位置における画面内のオブジェクト情報を検知し、これらの情報と該イベントが発生した時刻とを操作イベントデータとして記憶する手段であり、
操作イベントデータ表示手段6は、操作イベント記憶手段5によって記録されたイベントに対してポイントを演算し、表示する手段であり、
操作イベントデータ選択手段7は、操作イベントデータ表示手段6によって並び替えて表示された操作イベントデータの中から選択する手段であり、
アノテーションルールデータ作成手段9は、前記操作イベントデータ選択手段7によって選択された操作イベントデータの中からイベントの種類、該イベントの発生回数、該イベントの発生位置における画面内のオブジェクト情報を選択し、ブラウザ3から該イベントが発生した画面に表示されているコンテンツのコンテンツ識別情報とを対応させて、ルール条件データ部10aとし、このルール条件データ部該ルール条件データ部に設定されたイベントと同一のイベントが発生したときに出力する、アノテーション出力データ記憶手段11に記憶されているアノテーション出力データのアノテーション種類情報、及び該アノテーション出力データのURL(アドレス)から設定されるルール実行データ部10bとからアノテーションルールデータを作成する手段であり、
アノテーションルールデータ記憶手段10及びアノテーション出力データ記憶手段11は、アノテーションサーバASに備えて、前記アノテーションルールデータ作成手段9によって作成したデータをアノテーションサーバASに送信して記憶させ、
アノテーションルールデータの作成者は、コンピュータ(アノテーションルールデータ作成装置)1の入力手段4を操作し、
ルール作成ボタン24が押下されると、前記作成者は、ルール条件データ部10aを設定することができ、再生ボタン35を押下すると、アノテーションを付加するイベントを表示部に表示して、視覚的にイベントを確認でき、
前記アノテーション種類欄30はアノテーションとして出力するデータの種類を選択することができ、
「バルーンヘルプ表示」、「テキスト表示」、「アイコン表示」、「背景色変更」、「下線表示」、「太字化」等の複数のアノテーションの種類の中から1つを選択することができ、アバター54aを表示し、
アノテーション種類としては、前述した1つのアノテーションであってもよいが、2つ以上のアノテーションの種類を組み合わせてもよく、
アノテーションとして表示する文字情報を入力する欄に入力した文字情報が、アノテーションメッセージ54bとして表示され、
アノテーションルールデータを作成する場合には、登録ボタン33を押下すると、アノテーション種類情報、アノテーション出力データのアドレス(URL)、文字情報からルール実行データ部を設定し、
作成者は所望の設定が終了して、登録ボタン33を押下すると、アノテーションルールデータ作成手段9は、該ルール条件データ部と、ルール実行データ部のデータをアノテーションルールデータ記憶手段10に記憶させ、
ユーザマシンTは、アノテーションルールデータ取得プログラム42と協働することによって、ブラウザ3に表示されているコンテンツデータを識別するコンテンツ識別情報及びユーザIDを少なくとも含む識別データを前記アノテーションサーバASに送信する識別データ送信手段43と、
前記アノテーションサーバASからアノテーション出力データを取得するアノテーション出力データ取得手段48と、このアノテーション出力データを表示部若しくは音声出力部に出力するアノテーション出力手段49とを備え、
Webページの画面にアノテーションを出力するとき、
ユーザマシンTのブラウザ3は、コンテンツのURLに基づき、該コンテンツの取得要求を行い、
画面12を表示し、ブラウザ3は、対象のコンテンツのURLとユーザID(Cookie)を識別データとして、前記アノテーションサーバASに送信し、
アノテーションサーバASは、URL及びユーザIDに対応したアノテーションルールデータを選択し、ブラウザ3に送信し、
ブラウザ3は、その画面12内で発生したイベントを検知し、このイベントとアノテーションルールデータ(ルール条件部データ)とが一致した場合には、そのアノテーションルールデータに対応したアノテーション出力データを、アノテーションサーバASから取得して、アノテーション54を表示し、
アノテーション54をすぐに表示できるように、アノテーションルールデータを取得したときに、ブラウザ3が必要なアノテーション出力データをダウンロードして、ユーザマシンTに記憶し、
アバター54aを表示するとともに、文字情報「ここでは、曜日を一つ選択してください。」が、アノテーションメッセージ54bとしてウェブページの文字情報の「曜日」の近傍に表示される、
ユーザマシンT。」

ウ 対比
本件訂正発明10と引用発明2を対比する。

(ア)引用発明2は、「ブラウザ3は、ユーザに指定されたコンテンツのURLに基づき、該コンテンツの取得要求を行い、画面12を表示し」、「対象のコンテンツのURLとユーザID(Cookie)を識別データとして、前記アノテーションサーバASに送信し」ており、当該対象のコンテンツのURLはブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報であるから、引用発明2の「コンテンツのURL」は、本件訂正発明10の「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別する識別情報」に相当する。
また、引用発明2の「ユーザマシンTは、ブラウザ3に表示されているコンテンツデータを識別するコンテンツ識別情報及びユーザIDを少なくとも含む識別データを前記アノテーションサーバASに送信する識別データ送信手段43」を備えており、「ブラウザ3は、対象のコンテンツのURLとユーザID(Cookie)を識別データとして、アノテーションサーバASに送信し」ているから、引用発明2の「ブラウザ3」に備えられた「識別データ送信手段43」により「対象のコンテンツのURL」(ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別する識別情報)を送信していると認められる。
そして、引用発明2の「アノテーションルールデータに対応したアノテーション出力データ」は、「アノテーション54」を表示するためのデータである。そして、当該「アノテーション54」は、図9の記載から「ここでは、曜日を一つ選択してください。」というアノテーションメッセージ54bを含み、当該アノテーションメッセージは曜日の選択というウェブページに関する操作の案内を行なっているから、「アノテーションルールデータに対応したアノテーション出力データ」は、本件訂正発明10の「案内情報」に相当する。
したがって、引用発明2の「ブラウザ3」に備えられた「識別データ送信手段43」は、本件訂正発明10の「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部」に相当する。

(イ)引用発明2は、「ブラウザ3は、対象のコンテンツのURLとユーザID(Cookie)を識別データとして前記アノテーションサーバASに送信し」、「アノテーションサーバASは、URL及びユーザIDに対応したアノテーションルールデータを選択し、ブラウザ3に送信し」、「ブラウザ3は、その画面12内で発生したイベントを検知し、このイベントとアノテーションルールデータ(ルール条件部データ)とが一致した場合に、そのアノテーションルールデータに対応したアノテーション出力データを、アノテーションサーバASから取得して、アノテーション54を表示する」という、動的にアノテーション出力データをダウンロードする構成と、「アノテーション54をすぐに表示できるように、アノテーションルールデータを取得したときに、ブラウザが必要なアノテーション出力データをダウンロード」するという、静的に(事前に)アノテーション出力データをダウンロードする構成とを備えている。後者の構成の場合、ブラウザ3は、対象のコンテンツのURLとユーザID(Cookie)を識別データとして前記アノテーションサーバASに送信し、アノテーションサーバASは、URL及びユーザIDに対応したアノテーションルールデータに加えて当該アノテーションルールデータに対応するアノテーション出力データをも取得する構成であると認められる。
また、引用発明2は「前記アノテーションサーバASからアノテーション出力データを取得するアノテーション出力データ取得手段48」を備え、「ブラウザ3は、・・・・そのアノテーションルールデータに対応したアノテーション出力データを、アノテーションサーバASから取得して」いるから、引用発明2の「ブラウザ3」に備えられた「アノテーション出力データ取得部48」により「アノテーション出力データ」を取得していると認められる。
そして、アノテーション出力データは、アノテーションルールデータに対応しており、当該アノテーションルールデータは、URL及びユーザIDに対応していることから、アノテーションサーバASから取得するアノテーション出力データはURLに対応しているといえる。
したがって、引用発明2の「ブラウザ3」に備えられた「アノテーション出力データ取得手段48」は、本件特許発明10の「前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部」に相当する。

(ウ)引用発明2では、「アノテーション54」は「アノテーションメッセージ54b」を含んでおり、前記(ア)で検討したとおり、当該「アノテーションメッセージ」は曜日の選択というウェブページに関する操作の案内を行なっているから、引用発明2の「アノテーション54」を表示させることは、本件訂正発明10の「案内情報に基づく操作の案内」を表示させることに相当する。
そして、引用発明2の「ブラウザ3」は、「図2で示したWebページの画面にアノテーションを出力するとき」に「アノテーション54を表示」させており、「このアノテーション出力データを表示部若しくは音声出力部に出力するアノテーション出力手段49とを備え」ていることから、引用発明2の「ブラウザ3」に備えられた「アノテーション出力手段49」は、本件訂正発明10の「前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部」に相当する。

(エ)引用発明2の「アノテーションルール作成者」は、「コンピュータ(アノテーションルールデータ作成装置)1の入力手段4を操作」する者であるから、コンピュータ1のユーザであるといえる。
引用発明2の「アノテーション」は、上記アで検討したとおり、「ウェブページに関する操作の案内」といい得るものであり、「(アノテーションルール)作成者」が「アノテーションルール作成手段」が作成したデータを記憶させることは、本件訂正発明10の「ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において」行う処理といえる。
引用発明2においては、「アノテーションルールデータを作成する場合には、登録ボタン33を押下すると、アノテーション種類情報、アノテーション出力データのアドレス(URL)、文字情報からルール実行データ部を設定」しているから、URL(複数のウェブページ)ごとに、アノテーションルールデータを作成しているといえる。そして、引用発明2においては、「アノテーションとして表示する文字情報を入力する欄に入力した文字情報が、アノテーションメッセージ54bとして表示され」ており、当該「入力」はアノテーションルール作成者であるユーザによる入力であることは自明であり、当該入力はアノテーションを表示させる対象となるウェブページにおいて表示される情報であることから、引用発明の「ルール作成手段9」は、複数のウェブページごとに、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部を備えているといえる。
よって、引用発明2の「アノテーションルールデータ作成手段9」は、本件訂正発明10の「ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、前記ウェブページが表示されている間に、複数のウェブページごとに、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部」と「ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、複数のウェブページごとに、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部」である点で共通している。

(オ)引用発明2は、「アノテーションルールデータを作成する場合には、登録ボタン33を押下すると、アノテーション種類情報、アノテーション出力データのアドレス(URL)、文字情報からルール実行データ部を設定」し、「アノテーションとして表示する文字情報を入力する欄に入力した文字情報が、アノテーションメッセージ54bとして表示される」ことから、引用発明2の「アノテーションルールデータ」の作成においては、識別情報(URL)と(作成者の)入力(ユーザが行った操作)に基づいたアノテーションメッセージ(案内情報)とを作成しているといえる。
よって、引用発明2の「アノテーションルールデータ作成手段9」が作成したデータを「アノテーションサーバ」(情報提供装置)に送信して記憶させることは、本件訂正発明10の「前記送信部は、前記送信部は、前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいており、前記複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、を関連付けて、前記情報提供装置に送信する」ことと、「前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいており、前記案内情報と、を関連付けて、前記情報提供装置に送信する」点で共通している。

(カ)上記(ア)ないし(エ)において検討したとおり、引用発明2の「ユーザマシンT」は本件訂正後発明10の「送信部」、「取得部」、「表示制御部」、「操作受付部」として機能するものであり、「ユーザマシンT」は「アノテーション出力データ」を表示する手段を有するものであるから、引用発明2の「ユーザマシンT」と本件訂正発明10の「案内表示プログラム」とは、「送信部」、「取得部」、「表示制御部」、「操作受付部」として機能するための「案内表示を行う手段」である点で共通している。

したがって、本件訂正発明10と引用発明2の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部、
前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、
前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部、
ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、複数のウェブページごとに、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部、として機能するための手段であって、
前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいており、前記案内情報と、を関連付けて、前記情報提供装置に送信する、
案内表示を行う手段。」

[相違点2−1]
本件訂正発明10では、操作受付部におけるユーザの操作を受け付けを「前記ウェブページが表示されている間に、」行っているのに対して、引用発明2では、そのようなことが特定されていない点。

[相違点2−2]
本件訂正発明10では、「前記送信部」で識別情報と「前記複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む」案内情報と関連付けて送信しているのに対して、引用発明2では、そのようなことが特定されていない点。

[相違点2−3]
本件訂正発明10がコンピュータを、送信部、取得部、表示制御部、操作受付部として、機能させる「案内表示プログラム」であるのに対し、引用発明2においては、「案内表示プログラム」とは明記されていない点。

エ 判断
(ア)相違点2−1について
引用発明2においては、「再生ボタン35を押下すると、アノテーションを付加するイベントを表示部に表示して、視覚的にイベントを確認でき」ることからルールを登録している間にイベントを表示するものであり、また、上記(2)イ(ア)jを参照すると、引用文献1の図7Aには、ウェブページとユーザの操作を受け付けるユーザーインターフェイス(操作受付部)とが同じページ上で同時に表示されることが示唆されている。
したがって、引用文献1及び2は、いずれもウェプページにおける案内情報の表示制御という同一技術分野に属し、案内情報を表示制御するという同一の機能を有するものであるから、上記示唆に基づいて、引用発明2において、アノテーションルール作成手段(操作受付部)が、ウェブページを表示している間に、ユーザの操作を受け付けるようにし、相違点2−1に係る本件訂正発明10の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(イ)相違点2−2について
引用発明2は、コンピュータTに備えられた「アノテーション出力データ取得手段48」、「アノテーションルール作成手段9」からそれぞれ、「アノテーション」(案内情報)、「アノテーションルールデータ」(識別情報と案内情報とを関連づけた情報)を送信している。
よって、引用発明2の「アノテーション」、「アノテーションルールデータ」は、いずれも、「コンピュータT」から送信されるものであり、コンピュータTからAS(情報提供装置)への送信手段を「送信部」と呼称して、「アノテーション」と「アノテーションルールデータ」とを当該送信部から送信される構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、引用発明2は、「ブラウザに表示されるアノテーションの表示用のトリガ(条件ルール)となるアノテーションルールデータの作成」をしており、「ブラウザ3は、その画面12内で発生したイベントを検知し、このイベントとアノテーションルールデータ(ルール条件部データ)とが一致した場合に、そのアノテーションルールデータに対応したアノテーション出力データを、アノテーションサーバASから取得して、アノテーション54を表示」しているから、作成されたアノテーションルールデータに基づいて、アノテーションの表示制御を行うものである。
そして、ルールを変更・追加することによって、制御内容を容易に拡張可能であることは、ルール制御に係る技術常識であり、引用発明2は、ルールによる表示制御を行っていることから、表示制御を拡張することが予定されていると認められ、表示制御を行う際のルールをどのように設定するのかは、当業者における設計範囲内の技術事項である。
加えて、引用発明1は、「説明要素460は、一連の説明要素の一部とすることができ、説明要素460は、シーケンスにおける現在のステップの数およびステップの総数を示し得」るとの構成を備え、当該構成は、本件訂正発明10の「複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む、案内情報」に相当する。
そして、引用文献1、2はいずれも、ウェプページにおける案内情報の表示制御という同一技術分野に属するものであるから、引用発明2において、引用発明1に係る「複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む、案内情報」を表示させるという「ルール」を追加し、コンピュータTからAS(情報提供装置)への送信手段を「送信部」と呼称して、識別情報と「前記複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む」案内情報と関連付けて送信することにより、相違点2−2に係る本件訂正発明10の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(ウ)相違点2−3について
引用発明2の、コンピュータに備えられた「ブラウザ3」及び「アノテーションルールデータ作成手段9」が、案内表示プログラムであることについて特定されていないものの、引用発明2は、「アノテーションルールデータ作成装置(コンピュータ)1は、ブラウザ3、入力手段4、操作イベント記憶手段5、操作イベントデータ表示手段6、操作イベントデータ選択手段7、アノテーションルールデータ作成手段9、アノテーションルールデータ記憶手段10、アノテーション出力データ記憶手段11とを備え、これらの手段は、コンピュータ1に搭載されているハードウエア及びソフトウエアが協働して実現して」おり、アノテーション出力データ(案内)を表示することから、これらの手段を案内表示のソフトウェア(プログラム)において実現することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
よって、引用発明2において、相違点2−3に係る本件訂正発明10の構成を採用することは当業者が容易に想到し得たものである。

(エ)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件訂正発明10の奏する作用効果は、引用文献1、2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ よって、本件訂正発明10は、当業者が、引用発明2及び引用文献1に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)本件発明13についての判断
本件発明13は、「前記情報提供装置は、所定のウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記所定のウェブページにおいて複数のユーザが操作を行った操作内容とを組み合わせた教師データに基づいて、前記案内情報を学習する学習部をさらに有し、
前記送信部は、前記ページ情報取得部が取得した前記ページ識別情報に対応する、前記学習部が学習した前記案内情報を前記ユーザ端末に送信する」なる構成を有しており、当該構成は、取消理由通知において引用した引用文献1ないし3(引用文献3については、以下の「第4」参照。)のいずれにも記載されておらず、本願出願前において周知技術であったともいえない。
よって、本件発明13は、当業者であっても、上記引用文献1ないし3に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとする他の理由は見当たらない。
したがって、本件発明13は、独立特許要件を満たしているから、特許法第126条第7項の規定に適合する。

5 小括
上記4のとおり、上記訂正のうち、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定に適合していないから、訂正事項4に係る訂正は認められない。
そして、訂正事項4が認められないため、請求項10に係る訂正を「別の訂正単位とする求め」も認められない。さらに、前記「別の訂正単位とする求め」が認められないため、一群の請求項(上記「第2」の3参照。)である請求項〔1−10〕については、請求項10と共に「一群の請求項」を構成する請求項1ないし9に係る訂正事項1ないし3に係る訂正も一体的に認められない。
よって、本件訂正のうち、訂正後の請求項〔1−10〕についての訂正は、認められない。
一方、本件訂正のうち、訂正事項5及び6に係る訂正は訂正の各要件を満たしているため、訂正後の請求項11、〔12−13〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件特許発明
上記のとおり、本件訂正のうち、訂正事項5及び6に係る訂正は認められ、訂正事項1ないし4に係る訂正は認められないから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明(それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明13」という。)は、次のとおりのものである(なお、下線は訂正により変更された箇所を示す。)。

【請求項1】
コンピュータを、
ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するベージ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部、
前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、及び
前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部、
として機能させるための案内表示プログラム。
【請求項2】
前記取得部は、前記ウェブページに表示される所定のテキスト項目の領域内の位置を示すテキスト位置情報を含む前記案内情報を取得し、
前記表示制御部は、前記操作の案内を、前記テキスト位置情報が示す前記所定のテキスト項目の領域内の位置に表示させる、
請求項1に記載の案内表示プログラム。
【請求項3】
前記取得部は、前記ウェブページに表示される広告の領域内の位置を示す広告位置情報を含む前記案内情報を取得し、
前記表示制御部は、前記操作の案内を、前記広告位置情報が示す前記広告の領域内の位置に表示させる、
請求項1又は2に記載の案内表示プログラム。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記ウェブページを表示させてから所定の期間が経過した後に、前記操作の案内を前記ウェブページに表示させる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の案内表示プログラム。
【請求項5】
前記取得部は、前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含む前記案内情報を取得し、
前記表示制御部は、前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合に、前記操作の案内を前記ウェブページに表示させる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の表示案内プログラム。
【請求項6】
前記取得部は、前記ウェブページに表示される操作項目に対応し、それぞれ異なる複数の前記操作の案内に対応する複数の操作パターンを含む前記案内情報を取得し、
前記表示制御部は、ユーザが選択した前記操作パターンに対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の案内表示プログラム。
【請求項7】
前記取得部は、前記ウェブページに表示される複数の操作項目それぞれに関連付けられた操作順序を含む前記案内情報を取得し、
前記表示制御部は、前記複数の操作項目のうちの第1操作項目に対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させた後において、ユーザが前記第1操作項目に所定の操作を行った場合に、前記複数の操作項目における前記第1操作項目の次の操作順序に対応する第2操作項目に対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の案内表示プログラム。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記操作の案内として、前記ウェブページに表示される操作項目の領域内の表示態様を変化させる、
請求項1から7のいずれか一項に記載の案内表示プログラム。
【請求項9】
前記コンピュータを、ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、前記ウェブページが表示されている間に、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部としてさらに機能させ、前記送信部は、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づく前記案内情報とを関連付けて前記情報提供装置に送信する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の案内表示プログラム。
【請求項10】
前記操作受付部は、複数の前記ウェブページごとに、前記ウェブページが表示されている間に、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付け、前記送信部は、前記複数のウェブページごとに、前記複数のウェブページを遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、前記ページ識別情報とを関連付けて前記情報提供装置に送信する、
請求項9に記載の案内表示プログラム。
【請求項11】
コンピュータが実行する、
ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信するステップと、
前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、送信された前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得するステップと、
前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報を示す前記正常な操作内容と異なる場合に、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させるステップと、
を有する案内表示方法。
【請求項12】
ウェブページを表示させるユーザ端末と、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を前記ユーザ端末に提供する情報提供装置と、を有する操作案内システムであって、
前記情報提供装置は、
前記ユーザ端末のウェブブラウザがアクセスした前記ウェブページを識別するページ識別情報を取得するページ情報取得部と、
前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を前記ユーザ端末に送信する送信部と、
を有し、
前記ユーザ端末は、
前記ページ識別情報を前記情報提供装置に送信するページ情報送信部と、
前記送信部が送信した前記案内情報を取得する案内情報取得部と、
前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合に、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部と、
を有する、
操作案内システム。
【請求項13】
前記情報提供装置は、所定のウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記所定のウェブページにおいて複数のユーザが操作を行った操作内容とを組み合わせた教師データに基づいて、前記案内情報を学習する学習部をさらに有し、
前記送信部は、前記ページ情報取得部が取得した前記ページ識別情報に対応する、前記学習部が学習した前記案内情報を前記ユーザ端末に送信する、
請求項12に記載の操作案内システム。」

第4 取消理由通知の概要
令和2年7月6日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(理由1)請求項1ないし4、6ないし9、11及び12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


引用文献1:国際公開第2013/061325号
(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2:特開2005−293248号公報
(当審が新たに引用する文献)
引用文献3:特表2006−523332号公報
(特許異議申立人が提出した甲第2号証)

なお、当該取消理由においては、主たる引用文献を、引用文献1とする場合と、引用文献2とする場合とが併記されている。

第5 当審の判断(引用発明1に基づく理由1について)
1 本件特許発明1について
(1)本件特許発明1
本件特許発明1は、上記「第3」において示したとおりのものであって、本件訂正発明10から「ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、前記ウェブページが表示されている間に、複数のウェブページごとに、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部」及び「前記送信部は、前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいており、前記複数のウェブページに遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、を関連付けて、前記情報提供装置に送信する」との技術的事項を削除したものといえる。

(2)引用文献記載事項、引用発明
引用文献1に記載した事項及び引用発明1は、上記「第2」の4(2)イ(ア)に記載したとおりである。
引用文献2に記載した事項及び引用発明2は、上記「第2」の4(3)イ(ア)に記載したとおりである。

(3)対比、一致点、相違点
上記「第2」の4(2)ウ(本件訂正発明10と引用発明1との対比)を参酌すると、本件特許発明1と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりといえる。

[一致点]
「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報に対応した情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部、
前記送信した情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、
前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部、
として機能するための、
案内表示を行う手段。」

[相違点]
<相違点1−1−1>
本件特許発明1では、情報提供装置に対して送信する情報が、「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報」(それ自体)であるのに対し、引用発明1では、「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報に対応する情報」である点。

<相違点1−1−2>
本件特許発明1では、送信部、取得部、表示制御部を、コンピュータを機能させるプログラムとして構成しているのに対して、引用発明1においてそのようなことが特定されていない点。

(4)判断
ア 相違点1−1−1について
引用発明1において、URL条件により呼び出されたスクリプトに対応したリクエスト(ページ識別情報に対応した情報)は、スクリプトを介して間接的に特定のURL(ページ識別情報)がアクセスされたことを通知している情報といえる。
よって、ページ識別情報を、特定のURLに対応するリクエストの送信によって間接的に通知することに替えて、ページ識別情報それ自体を直接的に通知することは当業者における設計範囲内の技術的事項である。
したがって、引用発明1に基づいて、ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別する識別情報を直接的に送信する構成とすることで、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者の設計範囲内の技術的事項である。
加えて、引用発明1と引用発明2とは、いずれもブラウザにより案内情報を表示する技術という同一技術分野に属しており、いずれもユーザーの操作の案内情報を表示するという同一の機能を有しているから、URLに対応した案内情報を取得するための情報として、引用発明1における呼び出しスクリプトからのリクエストに代えて、引用発明2のウェブページを識別する識別情報を送信するとの技術的事項を採用して、ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別する識別情報を送信する構成とすることで、上記相違点1−1−1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 相違点1−1−2について
引用発明1は、「コンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装され得」るものであり、呼び出しスクリプトにより、送信を行い、ブラウザ取得処理及び表示制御処理を行うことが記載されていると認められる。
そして、スクリプトとブラウザとをコンピュータプログラムにより実現することは、周知・慣用手段であり、呼び出しスクリプトはブラウザにロードされることにより実行されるものであるから、引用発明1を、送信部、取得処理部、表示制御部として機能させる案内表示プログラムとして構成することにより、相違点1−1−2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件特許発明1の奏する作用効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ よって、本件特許発明1は、当業者が、引用発明1、2及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

2 本件特許発明2、4、6ないし9について
本件特許発明2、4、6ないし9と引用文献1に記載の発明との相違点に係る構成は、以下の「第6」の2〜「第6」の8に示したように、引用発明2の構成又は引用文献1の記載事項に含まれるので、引用発明1、引用発明2及び周知技術により当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本件特許発明2、4及び6ないし9は、当業者が、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

3 本件特許発明3について
本件特許発明3と引用発明1に記載の発明との相違点は、以下の「第6」の3に示したように、引用文献3の記載事項に含まれる。
よって、本件特許発明3は、当業者が、引用発明1、引用発明2、引用文献3記載事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4 本件特許発明11について
(1)対比、一致点、相違点
引用発明1では、「呼び出しモジュールとブラウザの間には相互の対話があり、すなわち、ブラウザは、呼び出しスクリプトをロードし、呼び出しスクリプトは、呼び出しモジュールにリクエストを送信し、呼び出しモジュールは対応する説明要素を送信することによって応答し」ているから、呼び出しスクリプトがロードされたウェブブラウザは、リクエストに対応する説明要素(ウェブページに関する操作を案内する情報)を呼び出しモジュールから取得していることは自明である。
そして、引用発明1の「ウェブサイトのオブジェクトに関連して表示される」「説明要素」は、「ウェブ文書405はウェブブラウザ410に表示され、ウェブ文書405は複数の個別オブジェクト450を有し、説明要素460は個別のオブジェクト450に関連付けられ、説明要素にはテキストを含めることができ、テキストには「「製品」をクリックせよ」などのクリックの指示が含ま」れている。
ここで、当該説明要素である「「製品」をクリックせよ」などの「クリックの指示」は、「製品」というウェブページ上のオブジェクト450(「操作項目」)において(次の手順に進むための)正常な操作内容を示す正常操作情報であるといえる。
したがって、引用発明1の「呼び出しスクリプトがロードされたウェブブラウザ」が、上記のようにリクエストに対応する説明要素(ウェブページに関する操作を案内する情報)を呼び出しモジュールから取得していることと、本件特許発明11の「前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、送信された前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得するステップ」とは、「前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、送信された前記ページ識別情報に対応した情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得するステップ」である点で共通する。
よって、上記「第2」の4(2)ウ(本件訂正発明10と引用発明1との対比)を参酌すると、本件特許発明1と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりといえる。

[一致点]
「コンピュータが実行する、
ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報に対応した情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信するステップと、
前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、送信された前記ページ識別情報に対応した情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得するステップと、
前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させるステップと、
を有する案内表示方法。」

[相違点]
前記<相違点1−1−1>に加え
<相違点1−11−1>
本件特許発明11では、取得される「案内情報」が、「送信された前記ページ識別情報に対応する」ものであるのに対し、引用発明1では、送信されるものが「ページ識別情報」自体ではないため、「送信された前記ページ識別情報に対応する」ものではない点。

<相違点1−11−2>
本件特許発明11では、「操作の案内」を表示させる契機が「前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合」であるのに対し、引用発明1では、そのような契機となる事項が特定がなされていない点。

(2)判断
ア 相違点1−11−1について
相違点1−11−1は、実質的に相違点1−1−1に連動した相違点であり、相違点1−1−1に係る本願発明11の構成が当業者にとって容易に想到できることは前記1(4)アで述べたとおりである。
よって、相違点1−11−1に係る本件特許発明11の構成も、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 相違点1−11−2について
引用発明2は、「ユーザが間違った操作をしたとき」にアノテーション(操作の案内)を表示させるとの技術的事項を含んでおり、間違った操作を検出する方法として、正常な操作との比較(異なるかどうかを判定)により行うことは例を示すまでもない周知技術である。
そして、引用発明1と引用発明2とは、いずれもブラウザにより案内情報を表示する技術という同一技術分野に属しており、いずれもユーザーの操作の案内情報を表示するという同一の機能を有しているから、引用発明1において、上記周知技術を勘案するとともに、引用発明2に記載の「ユーザが間違った操作をしたとき」に表示する技術を採用して、「前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合に」、操作の案内を表示させることは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件特許発明11の奏する作用効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本件特許発明11は、当業者が、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

5 本件特許発明12について
本件特許発明12は、本件特許発明11を、「システム」の発明として特定したものであって、本件特許発明11に対応する技術事項を備える発明である。
よって、本件特許発明12は、本件特許発明5と同じ理由により、当業者が、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 当審の判断(引用発明2に基づく理由1について)
1 本件特許発明1について
(1)本件特許発明1
本件特許発明1は、上記「第3」において示したとおりのものである。

(2)引用文献記載事項、引用発明
引用文献1に記載した事項及び引用発明1は、上記「第2」の4(2)イ(ア)に記載したとおりである。
引用文献2に記載した事項及び引用発明2は、上記「第2」の4(3)イ(ア)に記載したとおりである。

(3)対比、一致点、相違点
上記「第2」の4(3)ウ(本件訂正発明10と引用発明2との対比)を参酌すると、本件特許発明1と引用発明2の一致点及び相違点は、次のとおりといえる。

[一致点]
「ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するベージ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部、
前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、及び
前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部、
として機能するための、
案内表示を行う手段。」

[相違点]
<相違点2−1−1>
本件特許発明1がコンピュータを、送信部、取得部、表示制御部として、機能させる「案内表示プログラム」であるのに対し、引用発明2の「ブラウザ3」はそのような点について具体的に特定されていない点。

(4)判断
引用発明2では、コンピュータに備えられたブラウザ3が、案内表示プログラムであることについて特定されていないものの、ブラウザがインターネット上のウェブページの情報を画面上に表示するためのプログラムにより実現されることは、周知・慣用手段であるから、引用発明2における、ブラウザ3を案内表示プログラムとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、相違点2−1−1を総合的に勘案しても、本件特許発明1の奏する作用効果は、引用発明2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本件特許発明1は、当業者が、引用発明2に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

2 本件特許発明2について
引用発明2は「文字情報「ここでは、曜日を一つ選択してください。」を、アノテーションメッセージ54bとしてウェブページの文字情報の「曜日」の近傍に表示」するものであり、ウェブページの「曜日」(ウェブページに表示される「所定のテキスト項目」に相当)の近傍(「領域内の位置」に相当)に表示することが示唆されているといえる。
また、ウェブページ文書のオブジェクト(ウェブに表示される所定の項目に相当)が、サイズ、位置、ピクセル座標(X、Y)により識別されることは例えば引用文献1(「第2」の4(2)イ(ア)h参照。)に記載されているように本願出願時における周知技術である。
また、引用発明2は、「ブラウザに表示されるアノテーションの表示用のトリガ(条件ルール)となるアノテーションルールデータの作成」をしており、「ブラウザ3は、その画面12内で発生したイベントを検知し、このイベントとアノテーションルールデータ(ルール条件部データ)とが一致した場合に、そのアノテーションルールデータに対応したアノテーション出力データを、アノテーションサーバASから取得して、アノテーション54を表示」しているから、作成されたアノテーションルールデータに基づいて、アノテーションの表示制御を行うものである。
そして、ルールを変更・追加することによって、制御内容を容易に拡張可能であることは、ルール制御に係る技術常識であり、引用発明2は、ルールによる表示制御を行っていることから、表示制御を拡張することが予定されていると認められ、表示制御を行う際のルールをどのように設定するのかは、当業者における設計範囲内の技術事項である。
したがって、引用発明2の「アノテーションルール」として、引用発明2の示唆及び周知技術に基づき、コンテンツの位置情報に基づきアノテーションを表示させるものを付加することは、当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本件特許発明2は、当業者が、引用発明2及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

3 本件特許発明3について
引用文献3(段落[0022]〜段落[0024]、図4)には、特定のバナー広告領域にバナー広告を表示すること、ガイダンス4a〜4d(操作の案内)を当該バナー広告に四方(広告位置情報が示す領域内の位置に相当)に表示させることが記載されている。
そして、引用発明2は、ウェブブラウザにおいて表示制御を行う技術であり、ウェプページにおいて広告を表示させることがよく行われており、引用発明2及び引用文献3記載事項はいずれもウェブページの表示制御という同一技術分野に属するものであるから、引用発明2において、引用文献3記載事項である、広告を特定領域に表示させ、操作の案内を広告位置情報が示す領域内の位置に表示させるという制御内容を「アノテーションルール」として付加することは、当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本件特許発明3は、当業者が、引用発明2、引用文献3記載事項及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4 本件特許発明4について
引用発明2は、「操作に応じて表示する例」として「どうすればよいか分からずウロウロしているときに、アノテーションを表示」する場合を含むものであり、どうすれば良いのか分からずウロウロしている場合には、ウェブページを表示した後にある程度の時間が経過しているものと認められるから、引用発明2には、ウェブページを表示させてから所定の期間が経過した後に、操作の案内(アノテーション)をウェブページに表示させることが示唆されているといえる。
そして、上記示唆からすれば、所定の時間が経過した後にアノテーションを表示させる「アノテーションルール」を付加することは、当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本件特許発明4は、当業者が、引用発明2、引用文献3記載事項及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

5 本件特許発明6について
上記「第2」の4(2)イ(ア)aを参照すれば、引用文献1(第2頁第29行目−第3頁第3行)には、各説明要素(「案内情報」に相当)は、複数の個別のオブジェクトに個別に関連付けられている(操作項目に対応しているに相当)ことが記載されており、上記「第2」の4(2)イ(ア)gを参照すれば、引用文献1(第10頁第14−17行目)には、分岐する動的なチュートリアルには、互いに隣り合って表示される複数のバルーンなど、複数のオプションの説明要素(「それぞれ異なる複数の操作の案内に対応する複数の操作パターンを含む案内情報」に相当)から説明要素についてのユーザー選択の分岐があることが記載されている。
したがって、引用文献1においては、所定のオプションを選択した後にはそのオプションに対応する説明要素を表示することは自明であることから、複数の説明要素のオプションがユーザによって選択される際にその説明要素を表示すること、ウェブページに表示される操作項目に対応し、それぞれ異なる複数の前記操作の案内に対応する複数の操作パターンを含む案内情報を取得し、ユーザが選択した前記操作パターンに対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させることが記載されていると認められる。
そして、引用発明1、2はいずれも、ウェプページにおける案内情報の表示制御という同一技術分野に属するものであるから、引用発明2において、引用文献1に記載された上記技術事項を適用して、引用発明2の「アノテーションルール」に、ウェブページに表示される操作項目に対応し、それぞれ異なる複数の前記操作の案内に対応する複数の操作パターンを含む案内情報を取得し、ユーザが選択した前記操作パターンに対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させるというルールを追加することは、当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本件特許発明6は、当業者が、引用発明2、引用文献1記載事項、引用文献3記載事項及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

6 本件特許発明7について
引用発明1は、「説明要素460は、一連の説明要素の一部とすることができ、説明要素460は、シーケンスにおける現在のステップの数およびステップの総数を示し得」るとの構成を備え、「ステップの数」は、一連のシーケンスにおける操作順序に対応し、操作に応じてウェブページが別のウェブページに遷移することは技術常識であるから、前記構成は、本件特許発明7の「複数の操作項目のうちの第1操作項目に対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させた後において、ユーザが前記第1操作項目に所定の操作を行った場合に、前記複数の操作項目における前記第1操作項目の次の操作順序に対応する第2操作項目に対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させること」に相当する。
そして、引用発明1、2はいずれも、ウェプページにおける案内情報の表示制御という同一技術分野に属するものであるから、引用発明2において、引用発明1に係る「複数の操作項目のうちの第1操作項目に対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させた後において、ユーザが前記第1操作項目に所定の操作を行った場合に、前記複数の操作項目における前記第1操作項目の次の操作順序に対応する第2操作項目に対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させる」という「アノテーションルール」を追加し、本件特許発明7とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本件特許発明7は、当業者が、引用発明2、引用発明1、引用文献3記載事項及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

7 本件特許発明8について
引用発明2は、「アノテーション種類欄30はアノテーションとして出力するデータの種類を選択することができ、「バルーンヘルプ表示」、「テキスト表示」、「アイコン表示」、「背景色変更」、「下線表示」、「太字化」等の複数のアノテーションの種類の中から1つを選択することができ」、「アノテーション種類としては、前述した1つのアノテーションであってもよいが、2つ以上のアノテーションの種類を組み合わせてもよい」ものである。
そして、「バルーンヘルプ表示」、「アイコン表示」、「背景色変更」、「下線表示」、「太字化」はテキストの表示形態を変化させるものであるから、本件特許発明8の「表示の形態を変化させることに相当する。
よって、本件特許発明8は、当業者が、引用発明2、引用発明1、引用文献3記載事項及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

8 本件特許発明9について
引用発明2は、アノテーションルールデータがイベントと一致した場合に、アノテーション(案内情報に基づく操作の案内)の出力を行うことから、当該アノテーションルールデータの作成は、案内情報に基づく操作の案内を作成することに相当する。
また、引用発明2は、「操作者がマウスやキーボード等の入力手段4を操作して、ブラウザ3内で発生するイベント(例えば、キーボードを操作して文字が入力されたり、マウスを操作してカーソルを移動させたり、クリックする等)の種類、該イベントの種類の発生回数(繰り返し回数)、該イベントが発生した画面内の発生位置、該発生位置における画面内のオブジェクト情報を検知し、これらの情報と該イベントが発生した時刻とを操作イベントデータとして記憶」しており、これは、案内情報に基づく操作の案内を登録する場合に、ユーザの操作を記憶(受け付けること)に相当する。
そして、引用発明2の「アノテーションルールデータ作成手段9は、前記操作イベントデータ選択手段7によって選択された操作イベントデータの中からイベントの種類、該イベントの発生回数、該イベントの発生位置における画面内のオブジェクト情報を選択し、ブラウザ3から該イベントが発生した画面に表示されているコンテンツのコンテンツ識別情報とを対応させて、ルール条件データ部10aとし、このルール条件データ部該ルール条件データ部に設定されたイベントと同一のイベントが発生したときに出力する、アノテーション出力データ記憶手段11に記憶されているアノテーション出力データのアノテーション種類情報、及び該アノテーション出力データのURL(アドレス)から設定されるルール実行データ部10bとからアノテーションルールデータを作成する手段であり」、「アノテーションサーバAS(図7参照)に備えて、前記アノテーションルールデータ作成手段9によって作成したデータをアノテーションサーバASに送信して記憶させる」との構成を備え、これらは、ページ識別情報と対応した案内情報を情報提供装置に送信することに相当する。
よって、本件特許発明9は、当業者が、引用発明2、引用発明1、引用文献3記載事項及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

9 本件特許発明11について
(1)対比、一致点、相違点
引用発明2の「アノテーション54」は、「アバター54aを表示するとともに、文字情報「ここでは、曜日を一つ選択してください。」が、アノテーションメッセージ54bとしてウェブページの文字情報の「曜日」の近傍に表示される」ものであり、操作項目である「曜日」を一つ選択するという正常な操作内容を示す正常操作情報を含んでいるといえる。
よって、上記「第2」の4(3)ウ(本件訂正発明10と引用発明2との対比)を参酌すると、本件特許発明11と引用発明2の一致点及び相違点は、次のとおりといえる。

[一致点]
「コンピュータが実行する、
ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信するステップと、
前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、送信された前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得するステップと、
前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させるステップと、
を有する案内表示方法。」

[相違点]
<相違点2−11−1>
「操作の案内」を表示させる契機が、本件特許発明11においては、「前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す正常な操作内容と異なる場合」であるのに対し、引用発明2は、「その画面12(図2参照)内で発生したイベントを検知し、このイベントとアノテーションルールデータ(ルール条件部データ)とが一致した場合」である点。

(2)判断
引用発明2は、「ブラウザに表示されるアノテーションの表示用のトリガ(条件ルール)となるアノテーションルールデータの作成」をしており、「ブラウザ3は、その画面12内で発生したイベントを検知し、このイベントとアノテーションルールデータ(ルール条件部データ)とが一致した場合に、そのアノテーションルールデータに対応したアノテーション出力データを、アノテーションサーバASから取得して、アノテーション54を表示」しているから、作成されたアノテーションルールデータに基づいて、アノテーションの表示制御を行うものである。
そして、ルールを変更・追加することによって、制御内容を容易に拡張可能であることは、ルール制御に係る技術常識であり、引用発明2は、ルールによる表示制御を行っていることから、表示制御を拡張することが予定されていると認められ、表示制御を行う際のルールをどのように設定するのかは、当業者における設計範囲内の技術事項である。
ここで、引用発明2においては、前記操作項目における正常な操作情報を示す正常操作情報を含む案内情報を取得しており、アノテーションを表示させる例として、ユーザが間違った操作をしたときが例示されている。そして、「ユーザが間違った操作をしたとき」とは、正常操作情報と異なる操作をしたときであることは自明である。
したがって、引用発明2の「アノテーションルール」として、上記技術的事項に基づき、「操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す正常な操作内容と異なる」場合にアノテーションを表示させるものを付加することは、当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本件特許発明11は、当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

10 本件特許発明12について
本件特許発明12は、本件特許発明11に対応するシステムの発明であるから本件特許発明11と同じ理由により、当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本件特許発明1ないし4、6ないし9、11及び12は、当業者が引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものである。そうすると、本件特許発明1ないし4、6ないし9、11及び12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許発明1ないし4、6ないし9、11及び12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部、
前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、及び
前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合に、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部、
として機能させるための案内表示プログラム。
【請求項2】
前記取得部は、前記ウェブページに表示される所定のテキスト項目の領域内の位置を示すテキスト位置情報を含む前記案内情報を取得し、
前記表示制御部は、前記操作の案内を、前記テキスト位置情報が示す前記所定のテキスト項目の領域内の位置に表示させる、
請求項1に記載の案内表示プログラム。
【請求項3】
前記取得部は、前記ウェブページに表示される広告の領域内の位置を示す広告位置情報を含む前記案内情報を取得し、
前記表示制御部は、前記操作の案内を、前記広告位置情報が示す前記広告の領域内の位置に表示させる、
請求項1又は2に記載の案内表示プログラム。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記ウェブページを表示させてから所定の期間が経過した後に、前記操作の案内を前記ウェブページに表示させる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の案内表示プログラム。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記取得部は、前記ウェブページに表示される操作項目に対応し、それぞれ異なる複数の前記操作の案内に対応する複数の操作パターンを含む前記案内情報を取得し、
前記表示制御部は、ユーザが選択した前記操作パターンに対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の案内表示プログラム。
【請求項7】
前記取得部は、前記ウェブページに表示される複数の操作項目それぞれに関連付けられた操作順序を含む前記案内情報を取得し、
前記表示制御部は、前記複数の操作項目のうちの第1操作項目に対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させた後において、ユーザが前記第1操作項目に所定の操作を行った場合に、前記複数の操作項目における前記第1操作項目の次の操作順序に対応する第2操作項目に対応する前記操作の案内を前記ウェブページに表示させる、
請求項1から6のいずれか一項に記載の案内表示プログラム。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記操作の案内として、前記ウェブページに表示される操作項目の領域内の表示態様を変化させる、
請求項1から7のいずれか一項に記載の案内表示プログラム。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
コンピュータを、
ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信する送信部、
前記送信部が送信した前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得する取得部、
前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部、及び
ユーザが前記ウェブページに関する操作の案内を登録する操作を行った場合において、
前記ウェブページが表示されている間に、複数の前記ウェブページごとに、前記ウェブページにおいて前記ユーザが行った操作を受け付ける操作受付部、
として機能させ、
前記送信部は、前記複数のウェブページごとに、前記ウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記操作受付部が受け付けた前記ユーザが行った操作に基づいており、前記複数のウェブページを遷移させた遷移順序を含む前記案内情報と、を関連付けて、前記情報提供装置に送信する、案内表示プログラム。
【請求項11】
コンピュータが実行する、
ウェブブラウザがアクセスしたウェブページを識別するページ識別情報を、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を提供する情報提供装置に送信するステップと、
前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、送信された前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を、前記情報提供装置から取得するステップと、
前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合に、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させるステップと、
を有する案内表示方法。
【請求項12】
ウェブページを表示させるユーザ端末と、前記ウェブページに関する操作を案内する案内情報を前記ユーザ端末に提供する情報提供装置と、を有する操作案内システムであって、
前記情報提供装置は、
前記ユーザ端末のウェブブラウザがアクセスした前記ウェブページを識別するページ識別情報を取得するページ情報取得部と、
前記ウェブページに表示される操作項目における正常な操作内容を示す正常操作情報を含み、前記ページ識別情報に対応する前記案内情報を前記ユーザ端末に送信する送信部と、
を有し、
前記ユーザ端末は、
前記ページ識別情報を前記情報提供装置に送信するページ情報送信部と、
前記送信部が送信した前記案内情報を取得する案内情報取得部と、
前記操作項目においてユーザが行った操作が前記正常操作情報が示す前記正常な操作内容と異なる場合に、前記案内情報に基づく操作の案内を前記ウェブページに表示させる表示制御部と、
を有する、
操作案内システム。
【請求項13】
前記情報提供装置は、所定のウェブページに対応する前記ページ識別情報と、前記所定のウェブページにおいて複数のユーザが操作を行った操作内容とを組み合わせた教師データに基づいて、前記案内情報を学習する学習部をさらに有し、
前記送信部は、前記ページ情報取得部が取得した前記ページ識別情報に対応する、前記学習部が学習した前記案内情報を前記ユーザ端末に送信する、
請求項12に記載の操作案内システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-10-12 
出願番号 P2018-209981
審決分類 P 1 652・ 121- ZAB (G06F)
P 1 652・ 856- ZAB (G06F)
最終処分 06   取消
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 林 毅
富澤 哲生
登録日 2019-08-23 
登録番号 6574888
権利者 株式会社テンダ
発明の名称 案内表示プログラム、案内表示方法及び操作案内システム  
代理人 泉 通博  
代理人 泉 通博  

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