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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61F
審判 全部申し立て 発明同一  A61F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
管理番号 1383227
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-14 
確定日 2021-12-16 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6631731号発明「吸収体及びそれを備える吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6631731号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2〜6〕について訂正することを認める。 特許第6631731号の請求項2〜6に係る特許を維持する。 特許第6631731号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6631731号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成31年2月20日の出願であって、令和元年12月20日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和2年1月15日発行)がされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和 2年 7月14日 :特許異議申立人宮本俊明(以下「申立人1」という。)による請求項1〜6に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 2年 7月15日 :特許異議申立人出川栄一郎(以下「申立人2」という。)による請求項1〜6に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 2年 9月30日付け:取消理由通知書
令和 2年12月 2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 3年 1月27日 :申立人1による意見書の提出
令和 3年 2月 2日 :申立人2による意見書の提出
令和 3年 2月24日付け:訂正拒絶理由通知書
令和 3年 3月22日 :特許権者による意見書の提出
令和 3年 4月13日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 3年 5月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、訂正請求書による訂正の請求を、「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和 3年 7月 8日 :申立人1による意見書の提出
令和 3年 7月 8日 :申立人2による意見書の提出

なお、令和2年12月2日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6631731号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜6について訂正することを求めるものであり、本件訂正の内容は以下のとおりのものである。なお、下線は当審で訂正箇所に付したものである。

(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項2の「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している、
請求項1に記載の吸収体。」という記載を、
「不織布で形成され、液体を透過する基材と、
前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、
前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、
を備え、
前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、
前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、
前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、
前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上であり、
前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している、
吸収体。」と訂正する(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3〜6も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項4の「請求項1から3のいずれか一項に記載」という記載を、「請求項2又は3に記載」と訂正する(請求項4を直接的又は間接的に引用する請求項5、6も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項6の「請求項1から5のいずれか一項に記載」という記載を、「請求項2から5のいずれか一項に記載」と訂正する。

2.訂正の適否
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1〜6は、請求項2〜6が、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、特許権者は、本件訂正後の請求項2と、請求項2を引用する請求項3〜6について、本件訂正が認められるときには、請求項1とは別の訂正単位とすることを求めている。

(2)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(3)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が、請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改め、本件訂正前の請求項1の「上部SAP層」及び「下部SAP層」について、高吸収性重合体であるSAPの粒子以外の材料を含む場合を除いたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項2の、「前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、」「前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、」とする訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)の【0019】に「吸収体6は、基材61の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAP(Super Absorbent Polymer)の粒子を含むSAP層62L、62R(「上部SAP層」の一例)を備えている。」と、【0020】に「吸収体6が吸収性物品に配置された場合に、SAP層62Lは当該吸収性物品の着用者の左側に位置し、SAP層62Rは当該吸収性物品の着用者の右側に位置する。SAP層62L、62Rは、複数のSAP粒子が接着剤で基材61の表面に付着されることで形成される。」と、【0021】に「また、吸収体6は、基材61の裏面に配置され、SAPの粒子を含むSAP層63(「下部SAP層」の一例)を備えている。SAP層63は、基材61の裏面の略全域に形成されている。SAP層63は、複数のSAP粒子が接着剤で基材61の表面に付着されることで形成される。」と記載されており、複数のSAP粒子からなる「上部SAP層」、「下部SAP層」が、接着剤で基材に付着される旨記載されているから、訂正事項2の上記訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。
ウ また、訂正事項2は、上記のように、本件訂正前の請求項1、2の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1の削除に伴い、本件訂正前の請求項4で「請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収体」としていたものを、「請求項2又は3に記載の吸収体」と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項1の削除に伴い、本件訂正前の請求項6で「請求項1から5のいずれか一項に記載の吸収体」としていたものを、「請求項2から5のいずれか一項に記載の吸収体」と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

3.小括
したがって、訂正事項1〜4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項1、〔2−6〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項2〜6に係る発明(以下「本件発明2」等といい、また、本件発明2〜6を「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2〜6に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項2】
不織布で形成され、液体を透過する基材と、
前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、
前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、
を備え、
前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、
前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、
前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、
前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上であり、
前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している、
吸収体。
【請求項3】
前記基材の表面側には、前記幅方向中央部に、且つ、両側の前記上部SAP層に沿うように溝が形成されている、
請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記基材の表面を覆うように配置された第1不織布シートと、
前記基材の裏面を覆うように配置された第2不織布シートと、
を備える、請求項2又は3に記載の吸収体。
【請求項5】
前記基材、前記上部SAP層、前記下部SAP層、前記第1不織布シート及び前記第2不織布シートを含んで構成される吸収性複合体の外周を被覆するコアラップシート
を備える、請求項4に記載の吸収体。
【請求項6】
着用者の排出した液体を吸収する吸収性物品であって、
液不透過性のバックシートと、
前記バックシートに接合される液透過性のトップシートと、
前記バックシートと前記トップシートとの間に配置された請求項2から5のいずれか一項に記載の吸収体と、
を備える、吸収性物品。」

2.取消理由(決定の予告)の概要
本件発明に対して、特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。
理由1)本件特許は、特許請求の範囲が、以下(1)及び(2)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)本件特許明細書の記載をみると、上部SAP層の液体吸収速度及び下部SAP層の液体吸液性は、いずれも、上部SAP層と下部SAP層を構成するSAP自体の液体吸収速度と液体吸液性を測定し、評価しているに過ぎず、基材の表面に配置された上部SAP層としての液体吸収速度、及び基材の裏面に配置された下部SAP層としての液体吸液性を測定し、評価しているものではないから、請求項1〜6に係る発明の、「前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上である」との事項は明確でない。

(2)上部SAP層と下部SAP層に、それぞれ、どの種類のSAPを、どの程度の量、配置するのか、それによって、上部SAP層と下部SAP層の液体透過性と液体吸液性がどの程度になるのか、具体的な実施例は一つも示されておらず、本件発明の吸収体とすることにより、「液体の漏れと逆戻りを抑制し得る技術を提供すること」(【0005】)という課題を解決し得ると認識することができないから、請求項1〜6に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

理由2)請求項1、4に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由3)請求項1、4〜6に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、また、本件発明1、5、6は、引用文献4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由4)請求項1、4〜6に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に国際公開がされた先願5の願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第184条の13の規定により読み替える特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

申立人1の提出した甲第1号証〜甲第12号証を、それぞれ「甲1−1」〜「甲1−12」といい、申立人2の提出した甲第1号証〜甲第10号証を、それぞれ「甲2−1」〜「甲2−10」という。

[引用文献等一覧]
引用文献1:特開2017−192714号公報(甲1−1)
引用文献2:韓国公開特許第10−2018−0076272号公報(甲1−2)
引用文献3:特開2014−108165号公報(甲1−3)
引用文献4:特開2007−144101号公報(甲2−1)
先願5:特願2018−235117号(国際公開第2019/198821号(甲1−7))

3.取消理由(決定の予告)についての判断
(1)明確性要件に係る取消理由について
特許請求の範囲の請求項2には、「前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、」を備え、その「上部SAP層」及び「下部SAP層」は、「前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上」となるとされ、そのような「上部SAP層」及び「下部SAP層」は、「前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく」なると記載されており、本件発明は明確である。
本件特許明細書には、上部SAP層を構成するSAP自体の液体透過性と液体吸液性が、それぞれ「30(ml/min)以上」で、「35(g/g)より小さ」いSAPであること、及び下部SAP層を構成するSAP自体の液体吸液性と液体吸液性が、それぞれ「30(ml/min)より小さ」く、「35(g/g)以上」のSAPであることが記載されているが、上記のように、上部SAP層と下部SAP層はSAPから形成されるものであるから、上部SAP層と下部SAP層を構成するSAP自体の液体透過性と液体吸液性と、それらを用いて形成した上部SAP層と下部SAP層の液体吸収速度と液体吸液性との間で大きな差があるといえず、本件発明の「前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上」とする記載と、本件特許明細書の記載との間に矛盾はない。

(2)サポート要件に係る取消理由について
ア 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定される要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。以下、本件特許の特許請求の範囲の記載について検討する。
イ 特許請求の範囲の請求項2には、次のように記載されている。
「不織布で形成され、液体を透過する基材と、
前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、
前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、
を備え、
前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、
前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、
前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、
前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上であり、
前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している、
吸収体。」
ウ 他方、本件特許の発明の詳細な説明には、次のように記載されている。
本件発明の解決しようとする課題については、
「【0004】
吸収体においては液体を着用者の肌から遠位で保持することが好ましい。しかしながら、SAP粒子を不織布基材に固定させた吸収体において、SAP粒子を着用者の肌から遠位の基材裏面側のみに所定量の液体の吸収保持に必要量なSAPを配置すると、裏面側におけるSAPの密度が高くなりすぎるため、SAPが液体を吸収した後にゲルブロッキングを起こしやすい。よって不織布基材の両面にSAPを配置することが好ましいが、不織布基材表面に配置されたSAPがゲル状になると、当該表面側の液体透過性を低下させて吸収体全体に液体が拡散するのを阻害し液体の漏れを生じさせてしまう。このため、吸収体における不織布基材表面では液体吸収性と液体透過性との両立が求められる。更に、SAPがゲル状になって液体の保持量が低下すると、吸収体が一旦吸収した液体が着用者の肌側に出でしまう逆戻りが生じてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、液体の漏れと逆戻りを抑制し得る技術を提供することを目的とする。」と記載されている。
また、その課題を解決する具体的な実施形態について、
「【0018】
吸収体6は、基材61を備えている。基材61は、長方形のシート状に形成されている。基材61には、エアスルー法やニードルパンチ法等で製造された厚さが約1mm〜10mmの嵩高の不織布が用いられる。基材61は、液体を透過して拡散する。
【0019】
吸収体6は、基材61の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAP(Super Absorbent Polymer)の粒子を含むSAP層62L、62R(「上部SAP層」の一例)を備えている。ここで、吸収体6を吸収性物品に配置した場合に、基材61の表面は肌対向面側に配置され、基材61の裏面は肌対向面側と反対側の肌非対向面側に配置される。SAP層62L、62Rは、基材61の表面に、且つ、基材61の幅方向中央部に沿って幅方向両側に配置され、基材61の長手方向に延在する。なお、基材61の長手方向は、基材61の幅方向と直交する。
【0020】
吸収体6が吸収性物品に配置された場合に、SAP層62Lは当該吸収性物品の着用者の左側に位置し、SAP層62Rは当該吸収性物品の着用者の右側に位置する。SAP層62L、62Rは、複数のSAP粒子が接着剤で基材61の表面に付着されることで形成される。SAP層62L、62R内において、SAP粒子は略均一に配置されている。基材61は、SAP層62L、62Rを保持する。SAP層62L、62Rは、基材61の長手方向全体に亘って延在している。
【0021】
また、吸収体6は、基材61の裏面に配置され、SAPの粒子を含むSAP層63(「下部SAP層」の一例)を備えている。SAP層63は、基材61の裏面の略全域に形成されている。SAP層63は、複数のSAP粒子が接着剤で基材61の表面に付着されることで形成される。SAP層63内において、SAP粒子は略均一に配置されている。基材61は、SAP層63を保持する。吸収体6は、SAP層63を設けることによって、全体としての液体の吸収、保持量を増大させる。なお、基材61内の隙間にSAPの粒子が含まれていてもよい。」
「【0026】
SAP層62L、62Rには、液体透過性が30(ml/min)以上であるSAPが用いられる。このため、SAP層62L、62Rは、液体透過性が30(ml/min)以上である。なお、SAP層63は、液体透過性が30(ml/min)より小さい。」
「【0029】
SAP層63には、液体吸液性が35(g/g)以上であるSAPが用いられる。このため、SAP層63は、液体吸液性が35(g/g)以上である。なお、SAP層62L,62Rは、液体吸液性が35(g/g)より小さい。」
「【0031】
本実施形態に係る吸収体6は吸収性物品に配置された場合に、SAP層62L、62Rは肌対向面側に位置し、SAP層63は肌非対向面側に位置する。言い換えると、SAP層63は、SAP層62L、62Rよりも着用者の肌の遠位に配置される。そして吸収体6において、SAP層62L、62Rは、液体透過性が30(ml/min)以上である。このため、吸収体6は、尿を複数回吸収した後においても、着用者の肌に近い方に配置されるSAP層62L、62Rの液体透過性を確保し、基材61の内部やSAP層63に尿が入りこみ易くして、この尿が漏れるのを抑制できる。また、吸収体6において、SAP層63は、液体吸液性が35(g/g)以上である。本実施形態に係る吸収体6は、相対的に大量の尿を着用者の肌から遠位に配置されるSAP層63で保持するので、肌面の濡れ感を抑え、着用感の低下を抑制できる。また、吸収体6は、基材61の表面及び裏面にSAP層を配置しており、所定量の液体の吸収保持に必要量なSAPをSAP層62L、62R、63に分けて配置することができ、SAP層62L、62R、63におけるSAPの密度が高くなりすぎるのを防いで、ゲルブロッキングが起こるのを防ぐことができる。更に、吸収体6は、SAP層62L、62R、63におけるSAPがゲル状になるのを防ぐことができ、SAP層62L、62R、63における液体の吸収保持量の低下を防ぐことで、一旦吸収した液体が着用者の肌側に出でしまう逆戻りを抑制できる。
【0032】
また、基材61の表面側(肌対向面側)において、幅方向中央部にSAPを設けず、幅方向両側にSAP層62L、62Rを配置する。基材61の表面側幅方向中央部は、吸収体6が吸収性物品に配置された場合に、尿道口に対向する位置(以下、「尿道口対向位置」と称する)に配置される。吸収体6において、尿道口対向位置にSAPを設けないことにより、排出された尿を基材61に導入して全体に拡散することができる。なお、基材61の表面側全体にSAP層を形成してもよい。」と記載されている。
エ 発明の詳細な説明の記載から、上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、液体吸液性が35(g/g)より小さいSAPからなり、これにより、上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、液体吸液性が35(g/g)より小さくなること(【0026】及び【0029】)、下部SAP層には、液体透過性が30(ml/min)より小さく、液体吸液性が35(g/g)以上であるSAPからなり、これにより、下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、液体吸液性が35(g/g)以上となること(【0026】及び【0029】)、着用者の肌に近い方に配置される上部SAP層の液体透過性が30(ml/min)以上であることにより、尿を複数回吸収した後においても、液体透過性を確保し、基材の内部や下部SAP層に尿が入りこみ易くして、この尿が漏れるのを抑制できること(【0031】)、着用者の肌の遠位に配置される下部SAP層の液体吸液性が35(g/g)以上であることにより、相対的に大量の尿を着用者の肌から遠位に配置されるSAP層63で保持するので、肌面の濡れ感を抑え、着用感の低下を抑制でき、また、吸収体6は、基材61の表面及び裏面にSAP層を配置しており、所定量の液体の吸収保持に必要量なSAPをSAP層62L、62R、63に分けて配置することができ、SAP層62L、62R、63におけるSAPの密度が高くなりすぎるのを防いで、ゲルブロッキングが起こるのを防ぐことができる。更に、吸収体6は、SAP層62L、62R、63におけるSAPがゲル状になるのを防ぐことができ、SAP層62L、62R、63における液体の吸収保持量の低下を防ぐことで、一旦吸収した液体が着用者の肌側に出でしまう逆戻りを抑制できること(【0031】)、及び所定量の液体の吸収保持に必要量なSAPを上部SAP層及び下部SAP層に分けて配置することができ、上部SAP層及び下部SAP層におけるSAPの密度が高くなりすぎるのを防いで、ゲルブロッキングが起こるのを防ぐことができ、上部SAP層及び下部SAP層における液体の吸収保持量の低下を防ぐことで、一旦吸収した液体が着用者の肌側に出でしまう逆戻りを抑制できること(【0031】)が、それぞれ理解できる。
オ 上記のように、本件発明の解決しようとする課題は、上部SAP層の液体透過性を30(ml/min)以上とし、下部SAP層の液体吸液性を35(g/g)以上とすることで解決し得るものといえるから、上部SAP層と下部SAP層に配置されるSAPの種類及び量について、本件発明に特定されることを必要とするものとはいえない。

(3)引用文献1を主引例とする新規性進歩性に係る取消理由について
ア 引用文献1の記載事項、引用文献1に記載された発明
引用文献1には、次のように記載されている。
「【背景技術】
・・・
【0003】
現在、市販で手に入る使い捨ておむつは通常、液体透過性のトップシート(A)(89)、液体不透性バックシート(B)(83)、層(A)と層(B)との間にある吸水性貯蔵層(吸収性芯材)(C)(80)、及び層(A)と層(C)との間にある捕捉・分配層(D)から構成されている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって本発明の課題は、改善された芯材性能を有する流体吸収性製品を提供することである。
【0013】
本発明の課題はさらに、漏れを回避するためにそれぞれ改善された流体貯蔵性能を有する、吸収性芯材及び吸収性製品を提供することである。
【0014】
本発明の課題はまた、それぞれ改善されたリウェット性を有する、吸収性芯材及び吸収性製品を提供することである。
【0015】
本発明の課題はまた、それぞれ改善された芯材構造を有する、吸収性芯材及び吸収性製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は、少なくとも2つの層、つまり上側層(91)及び下側層(92)を有する吸収性芯材(80)であって、各層が、吸水性ポリマー粒子と繊維材料との合計に対して、繊維材料を0〜10質量%、及び吸水性ポリマー粒子を90〜100質量%含有し、前記上側層内にある吸水性ポリマー粒子が、少なくとも0.89の球形度、及び少なくとも34g/gのCRCを有する吸収性芯材によって解決される。」
「【0027】
発明の詳細な説明
A:定義
本明細書で使用するように、「流体吸収性製品」とは、体から放出された液体を捕捉及び貯蔵することができる、あらゆる三次元の固体材料をいう。好ましい流体吸収性製品は、使用者の体と接触して着用されることが意図されている使い捨ての流体吸収性製品であり、例えばパンティライナー、生理用ナプキン、月経用品、失禁用挿入物/パッド、おむつ、トレーニングパンツおむつ、ブラ用パッド、陰唇部挿入物/パッド、又は体液を吸収するために有用な他の製品である。」
「【0243】
C.流体吸収性製品
流体吸収性製品は、以下のものを備えている:
(A)上側の液体透過層(89)
(B)下側の液体不透層(83)
(C)少なくとも2つの層(91、92)を有する、(89)と(83)との間にある流体吸収性芯材(80)、
ここで各層は、吸水性ポリマー材料と繊維材料との合計に対して、
繊維材料を0〜10質量%、及び吸水性ポリマー粒子を90〜100質量%含有し、
好ましくは繊維材料を0〜5質量%、及び吸水性ポリマー粒子を95〜100質量%含有し、
より好ましくは繊維材料を0質量%、及び吸水性ポリマー粒子を100質量%含有し、
(D)(A)と(C)との間にある任意の捕捉・分配層、及び
(E)その他の任意要素。
【0244】
(89)と(83)との間にある流体吸収性芯材は好ましくは、以下のものを備える:
上側のティッシュ層(95)、吸水性ポリマー粒子を含有する上側層(91)、及び吸水性ポリマー粒子を含有する下側層(92)、上側層(91)と下側層(92)との間に挟まれた少なくとも1つの不織布材料の層(94)。
【0245】
流体吸収性製品とは例えば、失禁用パッド、及び成人向け失禁用ブリーフ、又はおむつ、及び乳児用トレーニングパンツを意味すると理解される。適切な流体吸収性製品(流体吸収性構成要素を含む)は、繊維材料、及び任意で吸水性ポリマー粒子を有し、繊維状織布、又は基材、層、シート、及び/又は流体吸収性芯材のためのマトリックスが形成される。」
「【0251】
図16は、流体吸収性製品の概略図である。
【0252】
流体吸収性製品は、少なくとも2つの吸水性ポリマー粒子層を備える吸収性芯材(80)、トップ(91)、少なくとも2つのティッシュ層に挟まれたボトム(92)、トップ95、ボトム96、及び少なくとも2つの吸水性ポリマー粒子層(91,92)に挟まれた、少なくとも1つの不織布(94)(例えば嵩高のエアスルー不織布)を有する。これらの層は、例えば接着剤、超音波接合、又はあらゆる適切な方法により、相互に結合されていてよい。吸水性芯材(80)の構造全体は任意で、さらなる不織布シート又はティッシュ層(86)によって取り囲まれている/包まれており、また接着剤によってサンドイッチ構造に任意で接続されている。
【0253】
さらに、吸収性製品は、吸収性芯材(80)又は芯材包装(86)の上部に(それぞれ、上側の液体透過性シート、又はカバー体(89)(例えばエンボス加工されたスパンボンド不織布)の下部に)捕捉・分配層を有することができ、また下側の液体不透性シート(83)を有することができる。レッグ・カフ(81)、及び何らかの弾性体(88)が存在していてよい。」
「【0286】
流体吸収性芯材の一体性を向上させるために、芯材は任意で、カバー(86)を備えていてよい(例えばティッシュ包装)。このカバーは、ホットメルト、超音波接合、熱接合、又は当業者に公知の接合の組み合わせによって、側方接続部における接合、及び/又は遠位接続部における接合により、流体吸収性芯材(80)の上部及び/又は底部に存在していてよい。さらにこのカバーは、材料のまとまったシートを有する流体吸収性芯材(80)全体を包含することができ、このシートはひいては包装として機能する。包装は、完全包装として、部分包装として、又はCラップとして可能である。
【0287】
芯材カバー(86)の材料は、あらゆる公知の基材を備えることができ、これには不織布、ウェブ、衣料品、テキスタイル、フィルム、ティッシュ、及び2つ以上の基材若しくはウェブの積層体が含まれる。芯材カバー材料は、天然繊維、例えばセルロース、木綿、亜麻、リネン、麻、絹、毛皮、毛、及び天然に産生する無機繊維を含有することができる。芯材カバー材料はまた、合成繊維、例えばレーヨン、及びリヨセル(セルロース由来のもの)、多糖類(デンプン)、ポリオレフィン繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリアミド、ポリエステル、ブタジエンスチレンブロックコポリマー、ポリウレタン、及びこれらの組み合わせを含有することができる。芯材カバーは合成繊維、又はティッシュを有するのが好ましい。」
「【0289】
吸収紙/吸収性芯材(80)の概略図が、図17に示してある。
【0290】
吸収紙(80)、又は吸収性芯材(80)はそれぞれ本発明によれば、少なくとも2つの吸水性ポリマー粒子層を有し、その一方はトップ側(91)に置かれ、もう一方はボトム(92)に置かれる。2つの層は、例えば接着剤(93)、超音波接合、及び/又は熱接合によって、例えばエアスルー結合された不織布材料(94)(この不織布材料は、前記2つの層に挟まれている)に接続されている。芯材の良好な一体性のために、上側のティッシュ層(95)及び/又は下側のティッシュ層(96)が、上側層(91)及び下側層(92)の表面にそれぞれつなげられている。」
「【0298】
芯材(80)内部にある不織布(94)は通常、単独層であり、例えばエアスルー結合プロセスにより作製されている。合計坪量は、約10〜100gsm、好ましくは40〜60gsmである。
【0299】
吸収性芯材(80)は、少なくとも2つの芯材シート又はティッシュ層(95、96)を有する。ティッシュ層とは、ティッシュ材料(例えば紙)に限られず、不織布のこともいう。・・・」
「【0303】
本発明によれば、少なくとも2つの層(91)、(92)はそれぞれ、少なくとも1種の吸水性ポリマー粒子を含有する。
【0304】
各層(91、92)内における吸水性ポリマー粒子は、異なっていてよい。
・・・
【0307】
上側の液体透過性シート(89)に面する上側層(91)におけるポリマー粒子のCRCは好ましくは、少なくとも34g/gである。CRCは好ましくは、少なくとも36g/gであり、より好ましくは38g/gである。
【0308】
上側の液体透過性シート(89)に面する上側層(91)におけるポリマー粒子のAUL(21g/cm2)は好ましくは、少なくとも30g/gである。AULは好ましくは、少なくとも32g/gであり、より好ましくは34g/gである。」
「【0316】
図18は、吸収性芯材(80)を製造するために考えられる方法を説明している。
【0317】
第一の吸水性ポリマー(230)を、不織布材料(250)の片側に滴下する。接着剤(200)を、トップティッシュ紙(210)に適用する。それからティッシュ紙(210)を、吸水性ポリマー(230)を担持する不織布(250)の側で積層する。その後、不織布(250)をひっくり返し、第二の吸水性ポリマー(240)を不織布(250)の反対側に滴下する。接着剤(200)を、ボトムに、又は下側のティッシュ紙(260)に適用する。それからティッシュ紙(260)を、吸水性ポリマー(240)を担持する不織布(250)の側で積層する。最後に、吸収紙を切って、所望の幅、及びねじりにする。」
「【0470】
例6
吸収紙/吸収性芯材の製造
ホットメルト接着剤(2.0gsm、Bostik社製の建築用ホットメルト接着剤)を、ティッシュボトム層(45gsm、Fujian Qiao Dong-Paper Co., Ltd.社製の凝縮ティッシュ)に吹き付け、それからSAP(ボトム層)を、130gsmの負荷でローラフィーダー(市販で手に入るSAPフィーダー、ローラ型)を用いてティッシュに適用する。嵩高な不織布材料(50gsm、エアスルー結合されたポリエステル不織布、Fujian Qiao Dong-Paper Co., Ltd.社製)を積層設備に供給し、ホットメルト接着剤を不織布に吹き付ける(0.5gsm、Bostik社製の建築用ホットメルト接着剤)。それからホットメルト接着剤を含有する不織布を、ティッシュ層、ホットメルト接着剤、及びSAPで積層する。こうして、吸収紙のボトム層が得られる。
【0471】
ホットメルト接着剤(2.0gsm)を別のティッシュシート(トップ層、Fujian Qiao Dong-Paper Co., Ltd.社製の凝縮ティッシュ層)に吹き付けることにより、別の層を製造し、それから別の種類のSAP(130gsm)をこのティッシュ層に適用する。こうして、吸収紙の第二の層が得られる。
【0472】
それから第一及び第二の層を、ホットメルト接着剤(0.5gsm、Bostik社製の建築用ホットメルト接着剤)を用いて、圧縮ローラ(市販で手に入る金属圧縮ローラ)を通過させることによって、積層させる。これによって、完成した吸収紙が得られる。
【0473】
吸収紙は、超吸収性ポリマー(SAP)の2つの層から成り、そのうちの1つはトップ側(91)に置き、もう1つはシート(92)の底部に置く。トップ及びボトムのSAP層はともに、1平方メートルあたり130グラム含有する(g/m2)。2つの層を、0.5g/m2のホットメルト接着剤によって、50g/m2のエアスルー結合された不織布材料(94)上に貼り合わせ(93)、それからトップ(95)及びボトム(96)にある45g/m2の凝縮ティッシュ層である2つの層によって、表面に2.0g/m2で適用されたホットメルト接着剤を用いて挟む。ホットメルト接着剤は、トップ層及びボトム層の両方について、2.5g/m2で使用する(番号は図17に関するもの)。
【0474】
積層シート(以下では検体という)を、幅95mm、長さ400mmに切断する。
【0475】
この寸法に切断した吸収紙を、事前に作製したテープ式オムツのポケット部(エンボス加工された2層の不織布トップシートをg/m2で有する)に挿入する(Daddy Baby diapers、Lサイズ、テープ式、Fuzhou Angel Commodity Co., Ltd社製)。この検体は、捕捉層を有さない。スパンボンド不織布のレッグカフは2つとも、高さが35mmであり、2つの弾性ストランドを有する。両側について、鋲止めしたレッグカフと吸収性芯材との距離は、幅10mmである。吸収性芯材の寸法は、使用する吸収紙の寸法と同じである。
【0476】
例7
おむつサンプルの製造
エンボス加工された2層の不織布トップシートを有する、市販の52gsmのテープ式オムツ(Daddy Baby diapers、Lサイズ、テープ式、Fuzhou Angel Commodity Co., Ltd社製)。おむつのサンプルを、バックシートから中央で切り取る。本来の吸収性芯材を、慎重に取り除く。このおむつサンプルは、捕捉層を有さない。スパンボンド不織布のレッグカフ(左右)は2つとも、高さが35mmであり、2つの弾性ストランドを有する。両側について、鋲止めしたレッグカフと吸収性芯材との距離は、幅10mmである。その他の材料は、同じであり、おむつのポケット部のように空いている。
【0477】
実験室で積層した吸収紙/吸収性芯材をはさみで切断し、長さ400mm、幅95mmの寸法にする。吸収紙のシートを挿入し、本来の吸収性芯材に代えて、おむつのポケット部に配置する。このおむつサンプルを、それから接着テープにより慎重に封止し、実験室試験用のおむつサンプルを作製する。
【0478】
例8
様々な吸収紙を製造した:
・・・
3.トップ層(91)、130gsm、Sanwett IM930、San-Dia Polymers,Ltd.社製、
ボトム層(92)、130gsm、Aquakeep SA60SX-II、日本国Sumitomo Seika Chemicals Co., Ltd.社製。」
「【0487】
例12:
例8の吸水性粒子の特性が、表12にまとめてある。
【0488】
表12:吸水性ポリマーの特性
【表12】


「【図16】


「【図17】



上記記載からみて、【0470】〜【0478】、【0487】、【0488】の例6〜8に示す実施態様のうち、吸収紙を「3」としたもの(トップ層(91)を「Sanwett IM930、San-Dia Polymers, Ltd. 社製」、ボトム層(92)を「Aquakeep SA60SX-II、日本国Sumitomo Seika Chemics Co., Ltd. 社製」で、それぞれ形成したもの)に着目すると、引用文献1には、次の「引用発明1」が記載されている。
「不織布材料(94)と、吸収性ポリマー粒子としてSanwett IM930を有するトップ層(91)と、吸収性ポリマー粒子としてAquakeep SA60-SX-IIを有するボトム層(92)をホットメルト接着剤によって不織布材料(94)に貼り合わせ、それからトップ(95)及びボトム(96)にある凝縮ティッシュ層である2つの層によって、表面に適用されたホットメルト接着剤を用いて挟まれ、Sanwett IM930のCRCが35.5g/gであり、Aquakeep SA60-SX-IIのCRCが30.1g/gである、吸収紙。」

イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と引用発明1を対比する。
引用発明1の「不織布材料(94)」は本件発明2の「基材」に相当し、以下同様に、「Sanwett IM930」は「高吸収性重合体であるSAPの粒子」に、「トップ層(91)」は「上部SAP層」に、「Aquakeep SA60-SX-II」は「高吸収性重合体であるSAPの粒子」に、「ボトム層(92)」は「下部SAP層」に、「吸収紙」は「吸収体」に相当する。
引用発明1の「トップ層(91)」及び「ボトム層(91)」は、高吸収性重合体であるSAPの粒子である「Sanwett IM930」及び「Aquakeep SA60-SX-II」と「ホットメルト接着剤」とからなるところ、ホットメルト接着剤は、溶融後に、「Sanwett IM930」及び「Aquakeep SA60-SX-II」の吸収性能に影響を与えない程度に添加され、付着されることが明らかであるから、「トップ層(91)」及び「ボトム層(91)」としての吸収性能は、それぞれが含有する吸収性自体の吸収性能と同程度になるものといえる。
引用発明1の「Sanwett IM930のCRCが35.5g/gであり、Aquakeep SA60-SX-IIのCRCが30.1g/gである」ことは、本件発明2の「前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上である」ことに相当する。
引用発明1の「Sanwett IM930」のSAPの液体透過性は、引用文献2(比較例5)のCRC(g/g)を参照すると「30(g/g)」であり、引用発明1の「Sanwett IM930を有するトップ層(91)」は、本件発明2の「前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上」であることに相当する。
引用発明1の「Aquakeep SA60-SX-II」の液体透過性は、引用文献3(比較合成例5)を参照すると「3(ml/min)」(=30÷600×60)であり、引用発明1の「Aquakeep SA60-SX-IIを有するボトム層(92)」は、本件発明2の「前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さ」いことに相当する。
そうすると、本件発明2と引用発明1とは、
「不織布で形成され、液体を透過する基材と、
前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、
前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、
を備え、
前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、
前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、
前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、
前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上である、
吸収体。」
で一致し、次の《相違点1》で相違する。
《相違点1》
本件発明2の「上部SAP層は、基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」のに対し、引用発明1のトップ層(91)は、そのように特定されていない点。
(イ)上記《相違点1》について検討する。
引用発明1に係る引用文献1には、トップ層(91)の基材への配置で、基材の幅方向中央部に沿って幅方向両側に配置することを示唆する記載はない。
申立人2は、令和3年7月8日の意見書で、「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側 に配置され、該基材の長手方向に延在している」という構成は、参考資料1〜13にも記載されている旨主張する(意見書5ページ)
しかし、参考資料1(再公表特許WO01/089439号)には、第1不織布2に吸水性樹脂粉末非存在領域としての中間領域2bに沿って、両側に吸水性樹脂粉末3を配置したことが記載されているものの、この参考資料1(20頁25〜27行)に「吸水性樹脂粉末3の保持効果の高い第2ホットメルト接着剤層S2を下側に、第1不織布2を着用者側にして使い捨て吸収性物品に組み込むことが好ましい。」と記載されるように、中間領域2bの両側の吸水性樹脂粉末3の層は、人の肌から遠い側に配置される本件発明2の「下部SAP層」に該当するものであるから、参考資料1には、「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側 に配置され、該基材の長手方向に延在している」という構成は記載されていない。
同様に、同構成は参考資料2〜13にも記載されておらず、申立人2の上記主張は採用できない。
そして、本件発明2の上記《相違点1》に係る構成は、申立人1及び申立人2が提出した他の証拠にも、記載ないし示唆がされておらず、引用発明1に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
(ウ)よって、本件発明2は、引用発明1ではなく、また、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明4〜6について
本件発明4〜6は、本件発明2の発明特定事項を全て備えるものであるところ、本件発明2は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明4は、引用発明1ではなく、また、本件発明4〜6は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)引用文献4を主引用例とする新規性進歩性に係る取消理由について
ア 引用文献4に記載された発明
引用文献4の、特に図5(c)に示される実施態様に着目すると、引用文献4には、次の「引用発明4」が記載されている。
「不織布の液透過性シート30と、高吸収性ポリマー21を含む長繊維のウエブ20の2層とを組み合わせた形態の吸収体10であり、2層のウエブ20間に液透過性シート30が配置されている、吸収体。」

イ 本件発明2について
本件発明2と引用発明4を対比すると、引用発明4も、本件発明2と引用発明1との間の《相違点1》と同様に、引用発明4が、「上部SAP層は、基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」配置構成を備えていない点で相違する。
引用発明4に係る引用文献2には、このような配置構成に関して示唆する記載はなく、また、この配置構成について記載あるいは示唆する証拠が提出されていないことは、上述のとおりである。
よって、本件発明2は、引用発明4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明4〜6について
本件発明4〜6は、本件発明2の発明特定事項を全て備えるものであるところ、本件発明2は、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明4〜6は、引用発明4ではなく、また、引用発明4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5)拡大先願に係る取消理由について
ア 先願5の願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面の記載事項、先願明細書に記載された発明
本件特許の出願日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に国際公開がされたPCT/JP2019/015991号(国際出願日2019年4月12日、優先権主張 2018年4月13日 日本 2018年12月17日 日本、出願人 株式会社日本触媒、国際公開第2019/198821号)の優先権主張に係る先願5(特願2018−235117号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書」という。)、及び先願に係る国際出願(PCT/JP2019/015991号)の国際公開(甲1−7)には、次の事項が記載されている。
先願の発明者と本件特許の発明者とが同一でなく、また、本件特許の出願時において、本件特許の出願人と先願の出願人とが同一でない。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性シート、吸水性シートの製造方法および吸収性物品に関する。」(甲1−7[0001]に対応。以下同じ。)
「【0013】
[1−2.吸水性樹脂]
本明細書において「吸水性樹脂」とは、ERT441.2−02により規定される水膨潤性(CRC)が5g/g以上であり、およびERT441.2−02により規定される水不溶性(Ext)が50質量%以下である高分子ゲル化剤をいう。」([0014])
「【0015】
本明細書において「吸水性樹脂」とは、全量(100質量%)が当該吸水性樹脂のみである態様に限定されない。そうではなく、上述のCRCおよびExtを満足するならば、添加剤などを含んでいる吸水性樹脂組成物であってもよい。また、本明細書において「吸水性樹脂」とは、吸水性樹脂の製造工程における中間体をも包含する概念である。例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体、乾燥後の乾燥重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末なども、「吸水性樹脂」と表記する場合がある。」([0016])
「【0017】
[1−3.吸水剤、粒子状吸水剤]
本明細書において「吸水剤」とは、吸水性樹脂を主成分として含む、水性液を吸収するための吸収ゲル化剤を意味する。ここで、上記水性液とは水のみならず、水を含む液体であれば特に限定されない。本発明の一実施形態に係る吸水性シートが吸収する水性液は、尿、経血、汗、その他の体液であり、特に尿は乳幼児などの健康状態によって塩濃度が広範囲に変化している尿を含む。
【0018】
本明細書において「粒子状吸水剤」とは、粒子状(粉末状)の吸水剤を意味する。「粒子状吸収剤」の概念には、一粒の粒子状吸水剤と、複数個の粒子状吸水剤の集合体との、いずれもが包含される。本明細書において「粒子状」とは、粒子の形態を有することを意味する。ここで、「粒子」とは、物質の比較的小さな分割体を指し、数Å〜数mmの大きさを有している(「粒子」、マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会 編『マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版』、日刊工業新聞社、1996年、1929頁を参照)。なお、本明細書では、「粒子状吸水剤」を単に「吸水剤」と表記することがある。」([0018]、[0019])
「【0030】
〔2.吸水性シート〕
本項目では、まず本発明の一実施形態に係る吸水性シートの概要について、図1、2に基づいて説明する。次いで、上記吸水性シートを構成する各要素などについて説明する。」([0031])
「【0097】
〔3.吸収性物品〕
本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、〔2〕で説明されている吸水性シートを、液体透過性シートおよび液体不透過性シートによって挟持した構造を有している。吸収性物品の具体例としては、使い捨てオムツ、失禁パッド、生理用ナプキン、ペットシート、食品用ドリップシート、電力ケーブルの止水剤などが挙げられる。
【0098】
液体透過性シートおよび液体不透過性シートとしては、吸収性物品の技術分野で公知のものを、特に制限なく用いることができる。また、吸収性物品は、公知の方法によって製造することができる。」([0106]、[0107])
「【0102】
[4−1.ゲル透過速度(GPR);通液性]
(ゲル透過速度(GPR)の測定方法)
本発明の一実施形態に係る吸水性シートに含まれている粒子状吸水剤(第1の粒子状吸水剤および第2の粒子状吸水剤)のゲル透過速度(GPR)は、米国特許第5849405号明細書記載の食塩水流れ誘導性(SFC)試験を参考に、測定条件を変更し、以下の手順で行った。
【0103】
測定のための装置として、図4に示す装置400を用いた。装置400は、大きく分けて、容器410とタンク420とから構成されている。
【0104】
容器410にはセル411(内径6cm)が設けられており、セル411の内部に膨潤ゲル414(粒子状吸水剤を吸水させたもの)を収納、および液体423を導入できる。また、セル411にピストン412を嵌合させることにより、膨潤ゲル414に対して圧力を負荷することができる。セル411の底面およびピストン412の底面には、金網413a、413b(No.400ステンレス製金網、目開き38μm)が張られており、膨潤ゲル414(および粒子状吸水剤)が通過できないようになっている。ここで、液体423は、0.00から0.90重量%塩化ナトリウム水溶液を用いる。」([0111]、[0112]、[0113])
「【0105】
タンク420は、内部に液体423を蓄えている。液体423は、コック付きL字管422を通じてセル411に導入される。また、タンク420にはガラス管421が挿入されており、ガラス管421の内部は空気で満たされている。これによって、ガラス管421の下端とセル411内の液面を同じとすることができる。すなわち、タンク420内の液体423の液面がガラス管421の下端よりも上部にある間は、セル411内の液面を一定に保持することが可能となる。今回の測定では、タンク420内の液体423の下部液面(すなわち、ガラス管421の下端)と、膨潤ゲル414の底面との高低差を、4cmとした。
【0106】
つまり、装置400によれば、セル411に一定の静水圧の液体423を導入することができる。ピストン412には孔415が空けられているので、液体423は孔415を流通し、さらに膨潤ゲル414層も流通して、セル411の外部へと流出する。容器410は、液体423の通過を妨げないステンレス製の金網431の上に載せられている。そのため、セル411から流出した液体422は、最終的に捕集容器432に集められる。そして、捕集容器432に集められた液体422の量は、上皿天秤433によって秤量できる。
【0107】
具体的なゲル通過速度(GPR)の測定方法は以下の通りである。なお、以下の操作は室温(20〜25℃)にておこなう。
(1)セル411に、粒子状吸水剤(0.900g)を均一に入れる。
(2)上記粒子状吸水剤を、無加圧下にて、液体(0.00から0.90質量%の塩化ナトリウム水溶液)を60分間吸水させ、膨潤ゲル414とする。
(3)膨潤ゲル414の上にピストンを載置して、0.3psi(2.07kPa)の加圧状態にする。
(4)静水圧を3923dyne/cm2の一定値に保ちながら、液体423をセル411に導入し、膨潤ゲル414層を通液させる。
(5)膨潤ゲル414層を通液する液体423の量を、5秒間隔で3分間記録した。すなわち、膨潤ゲル414層を通過する液体423の流速を測定した。測定には、上皿天秤433およびコンピュータ(図示せず)を使用する。
(6)液体423の流通を開始してから1分後〜3分後の流速を平均し、ゲル透過速度(GPR)[g/min]を算出する。」([0115]、[0116]、[0117])
「【0193】
以下に粒子状吸水剤の製造例を示す。しかしこれらはあくまで例であり、公知の技術を適宜組み合わせることによっても、粒子状吸水剤を製造することができる。
【0194】
[製造例1]
アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数:9)0.94質量部、0.1質量%のジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液16.4質量部、および脱イオン水314.3質量部からなる、単量体水溶液(1)を調製した。
【0195】
次に、38℃に調温した上記単量体水溶液(1)に、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を混合した。
【0196】
次に、4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を混合した。その後、平面状の重合機に、厚さが10mmとなるように、単量体水溶液(1)を投入した。その後、重合を進行させて(重合時間3分間)、含水ゲル(1)を得た。
【0197】
得られた含水ゲル(1)は、ゲルCRCが33.5g/g、含水率が50.5質量%であった。
【0198】
上記で得られた含水ゲル(1)を、スクリュー押出機を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(1)を得た。
【0199】
上記ゲル粉砕後に得られた粒子状含水ゲル(1)は、含水率が50.9質量%、質量平均粒子径(D50)が994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が1.01であった。
【0200】
上記ゲル粉砕の終了後1分以内に、上記粒子状含水ゲル(1)を、通気式乾燥機を用いて、185℃の熱風を30分間通気させることで乾燥させ、乾燥重合体(1)を得た。
【0201】
乾燥後に得られた乾燥重合体(1)を粉砕し、目開き710μmおよび175μmのJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(1)を得た。吸水性樹脂粉末(1)は、質量平均粒子径(D50)が348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.32、CRCが42.1g/g、粒子径150μm未満の粒子の割合(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が0.5質量%であった。
【0202】
吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、および脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(1)を添加して、均一になるまで混合した。その後、得られる吸水性樹脂粒子(1)のCRCが33g/gとなるように、190℃で45分間程度、加熱処理した。その後、60℃まで強制冷却した。
【0203】
次に、上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(1)に、ペイントシェーカーテストを課し、製造プロセス相当のダメージを付与した。その後、吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01質量部、および脱イオン水1質量部からなるキレート剤水溶液(1)1.01質量部を添加して、均一になるまで混合した。その後、60℃で1時間乾燥し、得られた結果物を目開き710μmのJIS標準篩に通過させた。その後、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4質量部を添加して、均一になるまで混合した。
【0204】
以上の操作によって、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の物性を、表1に示した。
【0205】
[製造例1−2]
製造例1の表面架橋工程において、得られる吸水性樹脂粒子(1−2)のCRCが30g/gとなるように、190℃で60分間程度、加熱処理した。それ以外の工程は、製造例1と同様に操作を行い。粒子状吸水剤(1−2)を得た。粒子状吸水剤(1−2)の物性を、表1に示した。」([0218]、[0219]、[0220]、[0221]、[0222]、[0223]、[0224]、[0225]、[0226]、[0227]、[0228]、[0229]、[0230])
「【0215】
[製造例3]
アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数:9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、および脱イオン水371.6重量部からなる単量体水溶液(3)を作製した。
【0216】
単量体水溶液(3)を製造例1と同様に重合させた後、ゲル粉砕を行った。
【0217】
得られた粒子状含水ゲル(3)は、含水率53.4重量%、重量平均粒子径(D50)627μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.02であった。
【0218】
粒子状含水ゲル(3)を製造例1と同様に乾燥させて、乾燥重合体(3)を得た。
【0219】
乾燥重合体(3)を粉砕し、目開き425μmのJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(3)を得た。吸水性樹脂粒子(3)は、重量平均粒子径(D50)175μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.56であり、CRC48.9[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)39重量%であった。
【0220】
吸水性樹脂粒子(3)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.04重量部、プロピレングリコール1.5重量部、および脱イオン水3.5重量部からなる共有結合性表面架橋剤溶液を均一に混合した。その後、得られる吸水性樹脂粉末(3)のCRCが35g/gとなるように加熱処理し、冷却した。
【0221】
上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(3)に、ペイントシェーカーテストを課し、製造プロセス相当のダメージを付与した。その後、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、およびジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させた。その後、上記標準篩の通過物に、ハイドロタルサイト(DHT−6、協和化学工業株式会社製)0.3重量部を、均一に混合した。こうして、粒子状吸水剤(3)を得た。粒子状吸水剤(3)の物性を、表1に示した。
【0222】
[製造例4]
アクリル酸ナトリウム水溶液(中和率75モル%、単量体濃度38質量%)5500gに、トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)1.7gを溶解させて、反応液とした。上記反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。その後、反応器(双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成したもの。シグマ型羽根を2本有する。内容積10L)に上記反応液を投入した。反応液温を30℃に保ちながら、上記反応器内に窒素ガスを吹き込み、系内の溶存酸素濃度が1ppm以下となるように窒素置換した。
【0223】
続いて、上記反応液を撹拌しながら、10質量%の過硫酸ナトリウム水溶液29.8g、および、0.2質量%のL−アスコルビン酸水溶液21.8gを添加した。その結果、およそ1分後に重合が開始された。系内の温度は、重合開始後17分で、重合ピーク温度となる86℃を示した。重合を開始してから60分後に、含水ゲルを取り出した。
【0224】
得られた含水ゲルは、約1〜5mmの粒子状に細分化されていた。この細分化されている含水ゲルを、50メッシュ(目開き:300μm)の金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥し、乾燥物とした。
【0225】
次いで、上記乾燥物をロールミルで粉砕した後、さらに目開き450μmの金網、および目開き106μmの金網を用いて、連続的に分級した。このとき、目開き450μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕した。一方、目開き106μmの金網を通過した吸水性樹脂微粒子は、90℃に加熱された水を同量混合し、再度同条件で乾燥し、粉砕した(ちなみに、上記吸水性樹脂微粒子は、粉砕を行った乾燥物の全量に対して、13質量%を占めていた)。このようにして、不
定形破砕状の吸水性樹脂粒子(4)を得た。吸水性樹脂粒子(4)のCRCは44.5[g/g]であった。
【0226】
吸水性樹脂粒子(4)100質量部に対して、グリセリン0.5質量部、イソプロピルアルコール0.5質量部、および脱イオン水2.5質量部からなる表面架橋剤水溶液3.5質量部を混合した。上記の混合物を、190℃で40分間加熱処理することにより、吸水性樹脂粉末(4)を得た。
【0227】
さらに、吸水性樹脂粉末(4)100重量部に、二酸化ケイ素(アエロジル200、日本アエロジル製)を0.3重量部加え、均一に混合した。このようにして、粒子状吸水剤(4)を得た。粒子状吸水剤(4)の物性を、表1に示した。」([0240]、[0241]、[0242]、[0243]、[0244]、[0245]、[0246]、[0247]、[0248]、[0249]、[0250]、[0251]、[0252])
「【0236】
【表1】

【0237】
[実施例1]
縦8cm、横16cmに切断したパルプ繊維製不織布(1)(第2のシートに相当する。目付量:42g/m2)の表面に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.1〜0.2g散布した(散布量:7.8〜15.6g/m2)。
【0238】
次に、接着剤が散布されているパルプ繊維製不織布(1)の表面に、製造例3で得られた粒子状吸水剤(3)(第2の粒子状吸水剤に相当する)を、1.405g(散布量:110g/m2)均一に散布した。さらにその上に、ポリプロピレン製不織布(2)(中間シートに相当する。目付量:50.6g/m2。厚みのあるもの。厚みは無荷重下で約4〜6mm程度)を重ね、加圧圧着した。
【0239】
次に、粒子状吸水剤(3)と面していない側のポリプロピレン製不織布(2)の表面に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.1〜0.2g(散布量:7.8〜15.6g/m2)散布した。さらにその上に、製造例1で得られた粒子状吸水剤(1)(第1の粒子状吸水剤に相当)を、1.405g(散布量:110g/m2)均一に散布した。
【0240】
最後に、粒子状吸水剤(1)の上にパルプ繊維製不織布(1)(第1のシートに相当する。目付量:15g/m2)を重ね、加圧圧着した。このようにして、吸水性シート(1)を得た。
【0241】
なお、本実施例で使用したパルプ繊維製不織布(1)およびポリプロピレン製不織布(2)は、いずれも透水性シートである。
【0242】
[実施例2]
実施例1において、粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(4)を用いて、吸水性シート(2)を得た。」([0261]、[0262]、[0263]、[0264]、[0265]、[0266]、[0267])
「【0244】
[実施例4]
実施例1において、粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(1−2)を用いて、吸水性シート(4)を得た。」([0269])

上記記載を総合し、実施例1、2、4に係る「吸収シート」に着目すると、先願明細書には、次の「先願発明5」が記載されている。
「透水性シートであるポリプロピレン製不織布を備え、パルプ繊維製不織布(第2のシート)の表面に乾燥重合体である第2の粒子状吸水剤(3、4)が均一に散布された上に、ポリプロピレン製不織布を重ね、加圧圧着し、第2の粒子状吸水材(3、4)と面していない側のポリプロピレン製不織布の表面に乾燥重合体である第1の粒子状吸水剤(1、1−2)が均一に散布し、最後に、第1粒子状吸水剤(1、1−2)の上にパルプ繊維製不織布(第1のシート)を重ね、加圧圧着し、第1の粒子状吸水剤(1、1−2)と第2の粒子状吸水剤(3、4)のゲル透過速度(GPR)及びCRCが、それぞれ、157g/min及び35g/g、4g/min及び33g/g、157g/min及び36g/g、0g/min及び33g/g、又は201g/min及び35g/g、4g/min及び30g/gである、吸収シート。」

イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と先願発明5を対比する。
本件発明2と先願発明5とを対比する。
先願発明5の「透水性シートであるポリプロピレン製不織布」は本件発明2の「不織布で形成され、液体を透過する基材」に相当し、同様に、「吸収シート」は「吸収体」に相当する。
先願明細書の【0097】〜【0100】の記載から「第2の粒子状吸水剤」は「先に第1の粒子状吸水性樹脂」に液体が接触した「次に」に液体に接触するものであること、及び先願発明5において「パルプ繊維製不織布(第2のシート)の表面に乾燥重合体である第2の粒子状吸水剤(3、4)が均一に散布された上」に、「ポリプロピレン製不織布」が重ねられていることから、先願発明5の「乾燥重合体である第2の粒子状吸水剤(3、4)」は本件発明2の「前記高吸収性重合体であるSAPの粒子を含む下部SAP層」及び「下部SAP層」に相当し、先願発明5の「パルプ繊維製不織布の表面に乾燥重合体である第2の粒子状吸水剤(3、4)が均一に散布された上に、ポリプロピレン製不織布を重ね、加圧圧着」することは、本件発明2の「前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子を含む下部SAP層」を備えることに相当する。
先願明細書の【0097】〜【0100】の記載から「第1の粒子状吸水剤」は、「透水性シート」であって、かつ「液体透過性シート側に配置」されている「第1のシート」に含まれるものであること、及び先願発明5において、「第1の粒子状吸水剤(1、1−2)」は「第2の粒子状吸水材(3、4)と面していない側のポリプロピレン製不織布の表面」に散布されていることから、先願発明5の「乾燥重合体である第1の粒子状吸水剤(1、1−2)」は、本件発明2の「高吸収性重合体であるSAPの粒子を含む上部SAP層」及び「上部SAP層」に相当し、先願発明5の「第2の粒子状吸水材(3、4)と面していない側のポリプロピレン製不織布の表面に乾燥重合体である第1の粒子状吸水剤(1、1−2)が均一に散布」されることは、本件発明2の「基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子を含む上部SAP層」を備えることに相当する。
本件特許明細書の【0024】〜【0025】の記載、及び引用文献2の【0281】〜【0308】の記載を参考にすると、先願明細書の【0102】〜【0107】の記載から、ゲル透過速度(GPR)201g/min、157g/min、4g/min、0g/minを液体透過性に換算すると約45.1ml/min、約35.3ml/min、約0.90ml/min、約0ml/minとなり、また、本件明細書の【0027】〜【0028】の記載、引用文献2の【0268】〜【0279】の記載、及び欧州不織布産業協会(EDANA)規格;WSP241.2(甲1−8)の記載を参考にすると、先願明細書の【0013】の記載から、CRC31g/g、34g/g、36g/g、37g/gを液体吸液性に換算すると32g/g、35g/g、37g/g、38g/gとなる。
そうすると、先願発明5における「第1の粒子状吸水剤(1、1−2)と第2の粒子状吸水剤(3、4)のゲル透過速度(GPR)及びCRCが、それぞれ、157g/min及び35g/g、4g/min及び33g/g、157g/min及び36g/g、0g/min及び33g/g、又は201g/min及び35g/g、4g/min及び30g/g」であることは、本件発明2の「前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上である」ことに相当する。
そうすると、本件発明2と先願発明5とは、
「不織布で形成され、液体を透過する基材と、
前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、
前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、
を備え、
前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、
前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、
前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、
前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上である、
吸収体。」
で一致し、次の《相違点2》で相違する。
《相違点2》
本件発明2の「上部SAP層は、基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」のに対し、先願発明5の乾燥重合体である第1の粒子状吸水剤(1、1−2)は、そのように特定されていない点。
(イ)上記《相違点2》について検討する。
先願明細書には、乾燥重合体である第1の粒子状吸水剤(1、1−2)の基材への配置で、基材の幅方向中央部に沿って幅方向両側に配置することを示唆する記載はなく、上記《相違点2》は実質的なものである。
よって、本件発明2は先願発明5ではない。

ウ 本件発明4〜6について
本件発明4〜6は、本件発明2の発明特定事項を全て備えるものであるところ、本件発明2は、先願発明5ではないから、本件発明4〜6は、先願発明5ではない。

第4 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1.新規性進歩性について
(1)申立人1、申立人2は、取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった、以下の理由についても主張している。
ア 請求項5、6に係る発明に対する、引用文献1(甲1−1)に基づく新規性に係る理由(申立人1による特許異議申立書53ページ17行〜54ページ8行、55ページ1〜下から2行)

イ 請求項2、3、5に係る発明に対する、引用文献1(甲1−1)に記載された発明に基づく進歩性に係る理由(申立人1による特許異議申立書48ページ12行51ページ11行、53ページ17行〜54ページ8行)

ウ 請求項1、4〜6に係る発明に対する、特開2009−72420号公報(甲1−10)に記載された発明に基づく進歩性に係る理由(申立人1による特許異議申立書43ページ19行〜48ページ11行、52ページ20行〜53ページ16行、54ページ9〜末行、55ページ末行〜57ページ2行)

エ 請求項1に係る発明に対する、引用文献4(甲2−1)に基づく新規性に係る理由(申立人2の特許異議申立書27ページ2行〜34ページ4行)

オ 請求項2〜4に係る発明に対する、引用文献4(甲2−1)に基づく進歩性、又は請求項1〜6に係る発明に対する、再公表特許WO2010/076857号(甲2−2)に基づく進歩性に係る理由(申立人2の特許異議申立書34ページ2行〜48ページ9行)

(2)しかし、上記ア〜エの申立理由は、以下に述べるように、いずれも理由がない。
ア 上記(1)アについて
上記第3の3.(3)ウで示したとおり、本件発明2を引用する本件発明4は、引用文献1に記載された発明ではないから、同様に、本件発明2を引用する本件発明5、6も引用文献1に記載された発明ではない。

イ 上記(1)イについて
申立人1は、上記《相違点1》に係る本件発明2の「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」との事項について、甲1−1(引用文献1)に記載された発明に、甲1−4(特開2015−150056号公報)、甲1−5(特開2015−150057号公報)、及び甲1−6(特開2015−150059号公報)の記載事項を適用することにより想到できる旨(特許異議申立書48頁22行〜50頁1行)の主張をしている。
しかしながら、甲1−4の溝を挟んで幅方向両側に配置した第1吸収体11の吸収性樹脂13は、接着剤層14によりシート部材12に固定され、そのシート部材12同士の間に配置されるものであり、本件発明2のように、基材の表面に複数のSAPの粒子が付着されているものではない。また、甲1−4の記載事項から、吸収性樹脂13が溝を挟んで幅方向両側に配置されていることのみを抽出して、引用文献1に記載された発明に適用する動機付けがない。甲1−5及び甲1−6についても同様である。

ウ 上記(1)ウについて
甲1−10に記載された発明は、本件発明2の「前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上であ」るとの事項、及び「上部SAP層は、基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」との事項を備えておらず、甲1−10に記載された発明には、これらの事項を共に備えようとする動機付けがない。また、これらの事項について記載された証拠は提出されていない。
したがって、本件発明2は、甲1−10に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明4〜6は、本件発明2の発明特定事項を全て備えるものであるところ、本件発明2は、甲1−10に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明4〜6は、甲1−10に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

エ 上記(1)エ及びオについて
(ア)本件訂正により、請求項1に係る発明は削除された。

(イ)申立人2は、上記《相違点1》に係る本件発明2の「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」との事項について、引用文献4に記載された発明、又は甲2−2(国際公開第2010/76857号公報)に記載された発明に、甲2−5(特表2010−532204号公報)の記載事項を適用することにより想到できる旨(特許異議申立書41ページ12行〜42ページ1行)の主張をしている。
しかしながら、申立人2は、甲2−5のY字形状の貫通孔8が形成された上側吸収層のSAPの配置が、本件発明2の「上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側 に配置され、該基材の長手方向に延在している」ことに該当する旨主張するが、甲2−5のY字形状の貫通孔8は、甲2−5に「用品の前方および中間部分に所望のお椀形状を形成するために、孔8のY字形状は、Y字の分岐脚部8b,8cの間の角度を変更することによって、かつY字の他の脚部の相対的な長さを変更することによって変更可能である。」(【0039】)、「上述したように、孔8の脚部は、吸収コアのための折り曲げ線として機能する。それによって、使用時に使用者の大腿部の間に配置される用品の中間部分は、脚部8aの縁部の周囲の折り曲げの角度が変化することのみによって、吸収コアが変形することなく、大腿部の動きに容易に追従するようになる。」(【0040】)と記載されるように、折り曲げ線として機能させるために設けられるものであって、本件発明2のように、基材の幅方向中央部にSAPを設けず、幅方向両側にSAP層を配置して、尿道口対向位置にSAPを設けないことにより、排出された尿を基材に導入して全体に拡散することを意図したものではない。
そのため、甲2−5のY字形状の貫通孔8が形成された上側吸収層のSAPの配置は、基材の幅方向中央部の尿道口対向位置にSAPを設けず、幅方向両側にSAP層を配置したものではないから、引用文献4に記載された発明又は甲2−2に記載された発明、及び甲2−5の上記構造からは、本件発明2の「上部SAP層は、基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」ことを想到することはできない。

2.明確性及びサポート要件について
(1)申立人2は、本件訂正前の請求項2、及び請求項2を引用する請求項3〜6に係る発明は、「基材の表面に、且つ、基材の幅方向中央部に沿って幅方向両側に配置され、基材長手方向に延在し、基材の表面側(肌対向面側)において、幅方向中央部にSAPを設ける」ものも包含する否かが不明であり、また、そのようなものは発明の詳細な説明に記載されていない旨主張する(特許異議申立書51〜53ページ)。
しかしながら、請求項2の「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」の記載から、「上部SAP層」は「基材」の「幅方向中央部」ではなく、「幅方向両側」に配置されるものであることは明らかである。

(2)申立人2は、本件訂正前の請求項1の「前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上であり」の記載について、「上部SAP層」及び「下部SAP層」のそれぞれの「液体透過性」及び「液体吸収性」の数値範囲が、「上限値」及び「下限値」の一方しか示されていないため、不明確である旨主張する(特許異議申立書52ページ)。
しかしながら、それらの上限値及び下限値は、SAPとして実現可能な範囲として理解されるものであり、上記記載自体は明確である。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件発明2〜6に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明2〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正請求に係る訂正により、請求項1に係る特許は削除されたため、請求項1に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
不織布で形成され、液体を透過する基材と、
前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、
前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、
を備え、
前記上部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)以上であり、
前記下部SAP層は、液体透過性が30(ml/min)より小さく、
前記上部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)より小さく、
前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上であり、
前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している、
吸収体。
【請求項3】
前記基材の表面側には、前記幅方向中央部に、且つ、両側の前記上部SAP層に沿うように溝が形成されている、
請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記基材の表面を覆うように配置された第1不織布シートと、
前記基材の裏面を覆うように配置された第2不織布シートと、
を備える、請求項2又は3に記載の吸収体。
【請求項5】
前記基材、前記上部SAP層、前記下部SAP層、前記第1不織布シート及び前記第2不織布シートを含んで構成される吸収性複合体の外周を被覆するコアラップシート
を備える、請求項4に記載の吸収体。
【請求項6】
着用者の排出した液体を吸収する吸収性物品であって、
液不透過性のバックシートと、
前記バックシートに接合される液透過性のトップシートと、
前記バックシートと前記トップシートとの間に配置された請求項2から5のいずれか一項に記載の吸収体と、
を備える、吸収性物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-12-07 
出願番号 P2019-028699
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61F)
P 1 651・ 161- YAA (A61F)
P 1 651・ 537- YAA (A61F)
P 1 651・ 113- YAA (A61F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 村山 達也
藤井 眞吾
登録日 2019-12-20 
登録番号 6631731
権利者 王子ホールディングス株式会社
発明の名称 吸収体及びそれを備える吸収性物品  
代理人 特許業務法人秀和特許事務所  
代理人 特許業務法人秀和特許事務所  
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