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審決分類 審判 一部申し立て 発明同一  E04H
審判 一部申し立て 2項進歩性  E04H
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  E04H
管理番号 1383229
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-03 
確定日 2022-01-14 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6640900号発明「駐車装置及び駐車装置の制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6640900号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、7〕について訂正することを認める。 特許第6640900号の請求項1、2及び7に係る特許を取り消す。 特許第6640900号の請求項3ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6640900号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成27年8月6日に出願された特願2015−156178号(以下「原出願」という。)の一部を平成30年3月22日に新たな特許出願としたものであって、令和2年1月7日にその特許権の設定登録がされ、同年2月5日に特許掲載公報が発行されたものである。
そして、その特許について、令和2年8月3日に特許異議申立人川股 くみ子(以下「申立人」という。)により、請求項1ないし5及び7に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。その後の経緯は、以下のとおりである。

令和 2年12月10日付け 取消理由通知
令和 3年 2月 5日 特許権者による意見書の提出及び訂正の
請求(以下、「本件訂正請求」といい、
本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」と
いう。)
令和 3年 3月19日 申立人による意見書の提出
令和 3年 6月 7日付け 取消理由通知(決定の予告)

なお、令和3年6月7日付けの取消理由通知(決定の予告)に対して、特許権者に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定した期間内に特許権者から応答はなかった。

第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

特許請求の範囲の請求項1に記載された
「前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる」を
「前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じ、前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致しない場合にエラー表示をする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。)。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的について
本件訂正は、「駐車装置」が「前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致しない場合にエラー表示をする」ことを特定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.本件訂正に関して、本件特許の特許明細書の段落【0036】には、次の記載がある。
「【0036】
ユーザが操作盤情報入力部126に第2の認証情報を入力すると、第1の認証情報と第2の認証情報とが所定の関係を有するかどうかが判断される(S106)。ここで、第1の認証情報と第2の認証情報とが所定の関係を有する場合とは、第1の認証情報と第2の認証情報とが一致する場合が挙げられるが、これに限定されず、第1の認証情報が別の情報に変換された上で、第2の認証情報と一致する場合であってもよい。この例では、第1の認証情報と第2の認証情報とが一致する場合を前提として説明する。そして、第1の認証情報と第2の認証情報とが一致する場合(S107でYesの場合)には、次のステップ(S108)に進むが、一致しない場合(S107でNoの場合)には、制御部12は、再び第2のユーザ認証のステップ(S105)に戻るようにする。」

イ.本件特許の図面の【図4】は次のものである。



ウ.上記図4からは、「S106」で「照合処理」を行い、「S107」で「照合OK?」に対して「No」の場合に「エラー表示」を行うことを看取することができる。そして、段落【0036】の記載を参照すると、図4の「照合処理」(S106)においては「第1の認証情報と第2の認証情報とが所定の関係を有するかどうかが判断される」ことが理解でき、「照合OK?」(S107)において「第1の認証情報と第2の認証情報とが……一致しない場合(S107でNoの場合)」には「エラー表示」を行うことを理解することができる。

エ.そうすると、本件訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。

オ.また、本件訂正は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

カ.したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1及び7は、請求項7が請求項1を引用するものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1及び7に対応する訂正後の請求項1及び7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(3)小括
以上のとおり、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、7〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件特許発明

上記「第2」のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」といい、これらを合わせて「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】
操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部を含む駐車装置の制御方法であって、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤にユーザによって認証情報の入力がされ、
車体搬送手段を呼び出し、
前記制御部が前記開閉機構に開扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記駐車装置の入出庫扉を開き、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤に前記ユーザによって閉扉指示が入力されると、前記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し、
前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じ、前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致しない場合にエラー表示をする
ことを含む駐車装置の制御方法。
【請求項2】
操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部を含む駐車装置の制御方法であって、
前記駐車装置の入出庫扉が開いた状態で、前記駐車装置の内部に設けられた表示部に確認情報を表示し、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤にユーザによって閉扉指示が入力されると、前記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し、
前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記確認情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる
ことを含む駐車装置の制御方法。
【請求項3】
前記ユーザが表示制御手段に対して所定の操作をすることによって、前記表示部に確認情報を表示することを特徴とする請求項2に記載の駐車装置の制御方法。
【請求項4】
前記表示部に確認情報を表示した後、前記入出庫扉を閉じる前に、パレットの間に障害物があることを検知した場合に、前記確認情報を更新して表示することをさらに含む請求項2又は3に記載の駐車装置の制御方法。
【請求項5】
操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部を含む駐車装置の制御方法であって、
前記駐車装置の入出庫扉が開いた状態で、前記駐車装置の内部に設けられた内部情報入力部でユーザの入力による内部情報を受信し、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤に前記ユーザによって閉扉指示が入力されると、前記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し、
前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記内部情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる
ことを含む駐車装置の制御方法。
【請求項6】
前記内部情報入力部に内部情報を入力した後、前記入出庫扉を閉じる前に、パレットの間に障害物があることを検知した場合に、前記内部情報入力部に入力した内部情報とは異なる内部情報を入力することをさらに含む請求項5に記載の駐車装置の制御方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の駐車装置の制御方法によって制御する前記制御部を有することを特徴とする駐車装置。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要

1.特許異議申立理由の概要
申立人は、本件訂正前の本件特許の請求項1ないし5及び7に係る発明(以下「訂正前の本件特許発明1」等という。)に対して、証拠として下記甲第1号証ないし甲第10号証を提出し、次の特許異議申立理由を申し立てている。

(1)(拡大先願)訂正前の本件特許発明1及び7は、甲第1号証に記載の発明と同一であり、訂正前の本件特許発明5及び7は、甲第8号証に記載の発明と実質同一であるから、訂正前の本件特許発明1、5及び7は、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものである。

(2)(新規性)訂正前の本件特許発明1及び7は、甲第2号証又は甲第3号証に記載の発明と同一であるから、訂正前の本件特許発明1及び7は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。

(3)(進歩性)訂正前の本件特許発明1及び7は、甲第2号証に記載の発明から、甲第3号証に記載の発明から、又は、甲第4号証に記載の発明と甲第2号証又は甲第3号証に記載されている事項から、
訂正前の本件特許発明2及び7は、甲第2号証に記載の発明と甲第5号証に記載されている事項から、又は、甲第3号証に記載の発明と甲第5号証に記載されている事項から、
訂正前の本件特許発明3は、甲第2号証に記載の発明と甲第5号証及び甲第6号証に記載されている事項から、又は、甲第3号証に記載の発明と甲第5号証及び甲第6号証に記載されている事項から、
訂正前の本件特許発明4は、甲第2号証に記載の発明と甲第5号証及び甲第7号証に記載されている事項から、又は、甲第3号証に記載の発明と甲第5号証及び甲第7号証に記載されている事項から、
容易想到であるから、訂正前の本件特許発明1ないし4及び7は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

甲第1号証 特開2017−2535号公報
甲第2号証 特許第5480423号公報
甲第3号証 特開2006−118216号公報
甲第4号証 特許第5710042号公報
甲第5号証 特開平7−62918号公報
甲第6号証 特開昭59−220779号公報
甲第7号証 「機械式駐車装置の安全機能に関する認証基準」、
公益社団法人立体駐車場工業会、平成26年12月5日
甲第8号証 特開2017−20259号公報
甲第9号証 特開2003−328577号公報
甲第10号証 特開2005−194733号公報

申立人はまた、平成3年3月19日提出の意見書に添付して、下記甲第11号証ないし甲第14号証を提出している。なお、甲第14号証は、本件特許の原出願の特許(特許第6313266号)に係る特許異議申立事件の特許決定公報である。

甲第11号証 特開2013−30038号公報
甲第12号証 特開2013−144882号公報
甲第13号証 特開2014−196646号公報
甲第14号証 異議2018−700839の特許決定公報

2.取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要
本件訂正後の請求項1、2及び7に係る特許に対して、当審が令和3年6月7日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)本件特許発明1及び7は、その原出願の日前の特許出願であって、その原出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその原出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件特許発明1及び7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

(2)本件特許発明1及び7は、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、本件特許発明2及び7は、甲第3号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから、本件特許発明1、2及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第5 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由についての当審の判断

1.甲各号証について
(1)甲第1号証
ア.甲第1号証(特開2017−2535号公報)に係る特願2015−116329号(以下「甲1先願」という。)は、本件特許の原出願の日前の特許出願であって、本件特許の原出願後に出願公開がされたものであるところ、その願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「甲1先願当初明細書等」という。)には次の記載がある。

(ア)「【請求項1】
複数の操作者に各々に対応する複数の車両を入出庫空間扉を設けられる入出庫空間に入出庫させて各々に駐車させる駐車装置の制御方法であって、
操作者の行った第一の操作である第一認証操作に基づいて該第一認証操作をおこなった操作者を認証する第一認証処理と、
入出庫空間の状態を車両を入出庫できる状態である入出庫可能状態にする呼出処理と、
入出庫空間扉の状態を閉状態から開状態に変化させる扉開処理と、
操作者の行った第二の操作である第二認証操作に基づいて該第二認証操作をおこなった操作者を認証する第二認証処理と、
第一認証処理が認証した操作者である第一操作者と第二認証処理が認証した操作者である第二操作者とが一致するかを判定する操作者判定処理と、
入出庫空間扉の状態を開状態から閉状態に変化させる扉閉処理と、
を備え、
前記第一認証処理と前記呼出処理と前記扉開処理と前記第二認証処理と前記操作者判定処理とをこの順に実施し、
前記操作者判定処理を実施した後で、前記操作者判定処理が前記第一操作者と前記第二操作者とが一致すると判定すると前記扉閉処理を実施し、前記操作者判定処理が前記第一操作者と前記第二操作者とが一致すると判定しないと前記扉閉処理を実施しない、
ことを特徴とする駐車装置の制御方法。」

(イ)「【0027】
本発明の第一の実施形態にかかる駐車装置は、駐車機構100と制御機構200とで構成される。
駐車機構100は、車両を駐車空間と入出庫空間扉130を設けられる入出庫空間120との間で移動できる機構である。
駐車機構100は、車両をパレットに乗せて駐車空間と入出庫空間扉を設けられる入出庫空間との間で移動できてもよい。
入出庫空間120は、入庫時にドライバーが車両を入れて、乗り捨てる空間である。
入出庫空間120は、出庫時にドライバーが車両に乗り込む空間である。運転手は、車両に沿って、入出庫空間120から外へでる。
入出庫空間扉130は、入出庫空間120と外部空間との境をしきる開閉可能な扉である。
通常操作では、入出庫空間扉130が閉じているときにのみ、 駐車機構100は、車両を駐車空間と入出庫空間120との間で移動できる様になっている。
【0028】
制御機構200は、駐車機構100を制御する機器である。
制御機構200の操作盤は、入出庫空間120の近傍の入出庫空間扉130で仕切られる外部に設けられる。
ドライバーが制御機構200の操作盤を操作するときに、ドライバーは開いた入出庫空間扉130から入出庫空間120の内部を見張ることができる。
制御機構200は、入出庫処理S100と車両搬送処理S200とを実施する。
入出庫処理S100は、車両を入出庫空間で入出庫するのに必要な処理である。
車両搬送処理S200は、車両を入出庫空間と駐車空間とのあいだで搬送し、車両を駐車空間で駐車させる処理である。
以下では、操作盤を操作するドライバーを操作者と呼称する。
以下では、説明の便宜上、駐車機構が車両をパレットに乗せて取り扱う形式であるとして、説明する。
以下では、制御機構200の実施する入出庫処理S100を説明する。
【0029】
制御機構200は、第一認証処理S20と呼出処理S30と扉開処理S40と第二認証処理S70と操作者判定処理S80と扉閉処理S90とを実施できる。
制御機構200は、第一認証処理S20と呼出処理S30と扉開処理S40と扉閉指令受取処理S60と第二認証処理S70と操作者判定処理S80と扉閉処理S90とを実施できてもよい。
制御機構200は、開始処理S10と第一認証処理S20と呼出処理S30と扉開処理S40とドライバー入出庫待ちS50と扉閉指令受取処理S60と第二認証処理S70と操作者判定処理S80と扉閉処理S90とを実施できてもよい。」

(ウ)「【0036】
第一認証処理S20は、操作者の行った第一の操作である第一認証操作に基づいて第一認証操作をおこなった操作者を認証する処理である。
第一認証処理S20が、第一認証操作をおこなった操作者に対応するコードである第一コードを記録してもよい。
【0037】
第一認証処理S20は、操作者認証S21と操作者適任?S22と操作者情報記録S23とで構成されてもよい。
例えば、操作者認証S21は、カード読み取り機器でICカード、磁気カードのコードを読み取り、入力する。
例えば、操作者認証S21は、操作者がキー入力するコードを入力する。
操作者適任?S22は、入力したコードから操作者が適任であるか否かを判定する。
例えば、操作者適任?S22は、入力したコードが予め記録された適任コードテーブルに記載されたものであるかを判断する。
操作者適任?S22は、入力したコードが適任コードテーブルに記載されたものでる(当審注:「記載されたものでる」は「記載されたものである」の誤記と認める。)とき操作者を適任と判断する。
操作者適任?S22は、入力したコードが適任コードテーブルに記載されたものでないとき操作者を適任と判断しない。
操作者を適任と判断したとき、次の操作者情報記録S23を実施する。
操作者を適任と判断しないとき、再度、操作者認証S21へ戻る。
操作者情報記録S23は、入力したコードを第一コードとして記録する。
【0038】
呼出処理S30は、入出庫空間120の状態を車両を入出庫できる状態である入出庫可能状態にする処理である。
呼出処理S30は、スタート釦を押されるのをまち、入出庫空間の状態を車両を入出庫できる状態である入出庫可能状態にしてもよい。
操作者は、操作盤に設けられるスタート釦を押す。
入庫要求であるとき、空パレットを入出庫空間120に移動させる。
パレットに複数の形式があるとき、入力コードに応じて、該当するパレットを入出庫空間120に移動させる。
出庫要求であるとき、入力コードに応じたパレット、または入力コードに応じた車両を載せたパレットを入出庫空間120に移動させる。
ここで、駐車機構がパレットを用いない形式である場合、入力コードに応じた車両を入出庫空間120に移動させる。
呼出処理S30を完了すると、次ぎに、扉開処理S40を実施する。
【0039】
扉開処理S40は、入出庫空間扉130の状態を閉状態から開状態に変化させる処理である。
扉開処理S40は、呼出処理S30を完了すると、操作者の追加の操作を待たずに入出庫空間扉130の状態を閉状態から開状態に変化させてもよい。
扉開処理S40は、操作者から扉開指令を待ち、扉開指令があったときに入出庫空間扉130の状態を閉状態から開状態に変化させてもよい。
操作者は、操作盤に設けられる扉開釦を押す。
扉開処理S40を完了すると、次ぎにドライバー入出庫待ちS50を実施する。
【0040】
ドライバー入出庫待ちS50は、操作者であるドライバーが入出庫作業をするのを待つ。
入庫要求であれば、ドライバーは、車両を入出庫空間120に入れて、車両を降り、入出庫空間120から出る。
出庫要求であれば、ドライバーは、入出庫空間120に入り、入出庫空間120にある車両に乗り込み、車両を入出庫空間120から出す。
必要があれば、制御機器は、車両の誘導等を音声等により行う。
場合によっては、制御機器は、ドライバー入出庫待ちS50において特に何の処理もせず、次の扉閉指令受取処理S60を実施する。
【0041】
扉閉指令受取処理S60は、操作者のする入出庫空間扉130の状態を開状態から閉状態に変化させる旨の指令である扉閉指令を受け付ける処理である。
例えば、扉閉指令受取処理S60は、操作者が操作盤の扉閉釦を押すのを待つ。
扉閉指令受取処理S60を完了すると、次の第二認証処理S70を実施する。
【0042】
第二認証処理S70は、操作者の第二の操作である第二認証操作に基づいて第二認証操作をおこなった操作者を認証する処理である。
第二認証処理S70が、第二認証操作をおこなった操作者に対応するコードである第二コードを記録してもよい。
【0043】
第二認証処理S70は、操作者認証S71で構成されてもよい。
第二認証処理S70は、操作者認証S71と操作者情報記録S73とで構成されてもよい。
例えば、操作者認証S71は、カード読み取り機器でICカード、磁気カードのコードを読み取り、入力する。
例えば、操作者認証S71は、操作者がキー入力するコードを入力する。
操作者情報記録S73は、入力したコードを第二コードとして記録する。
第二認証処理S70を完了すると、次ぎに操作者判定処理S80を実施する。
【0044】
操作者判定処理S80は、第一認証処理S20で認証した操作者である第一操作者と第二認証処理S70で認証した操作者である第二操作者とが一致するかを判定する処理である。
操作者判定処理S80が、操作者一致?S81で構成されてもよい。
操作者一致?S81が、第一コードと第二コードとが対応するときに第一操作者と第二操作者とが一致すると判定してもよい。
操作者一致?S81が、第一コードと第二コードとが一致するときに第一操作者と第二操作者とが一致すると判定してもよい。
操作者一致?S81が、第一コードと第二コードとが部分一致するときに第一操作者と第二操作者とが一致すると判定してもよい。
操作者一致?S81が、第一コードと第二コードとが所定の部分で一致するときに第一操作者と第二操作者とが一致すると判定してもよい。
【0045】
操作者判定処理S80を実施した後で、操作者判定処理S80が第一操作者と第二操作者とが一致すると判定すると次の扉閉処理S90を実施し、操作者判定処理S80が第一操作者と第二操作者とが一致すると判定しないと扉閉処理S90を実施しない。
操作者判定処理S80を実施した後で、操作者判定処理S80が第一操作者と第二操作者とが一致すると判定すると操作者による追加の操作を必要とせずに次の扉閉処理S90を実施し、操作者判定処理S80が第一操作者と第二操作者とが一致すると判定しないと次ぎの扉閉処理S90を実施しなくてもよい。
操作者判定処理S80を実施した後で、操作者判定処理S80が第一操作者と第二操作者とが一致すると判定せず扉閉処理S90を実施しないときに、再度、扉閉指令受付処理S60と第二認証処理S70と操作者判定処理S80とをこの順に実施してもよい。
【0046】
扉閉処理S90は、入出庫空間扉の状態を開状態から閉状態に変化させる処理である。
扉閉処理S90が完了すると、入出庫処理S100を完了する。」

(エ)上記「(イ)」の段落【0028】に「以下では、操作盤を操作するドライバーを操作者と呼称する。」と記載されていることを勘案すると、同段落【0028】の「ドライバーが制御機構200の操作盤を操作する」との記載における「ドライバー」は、「操作盤を操作する」から「操作者」であるといえる。

イ.以上を総合すると、甲1先願当初明細書等には次の駐車装置の制御方法の発明及び駐車装置の発明(以下、それぞれ「甲1先願発明」及び「甲1先願装置発明」という。)が記載されている。

(甲1先願発明)
「駐車装置の制御方法であって、
駐車装置は、駐車機構と制御機構とで構成され、
駐車機構は、車両をパレットに乗せて駐車空間と入出庫空間扉を設けられる入出庫空間との間で移動でき、
制御機構は、駐車機構を制御する機器であり、制御機構の操作盤は、入出庫空間の近傍の入出庫空間扉で仕切られる外部に設けられ、操作者が制御機構の操作盤を操作し、
制御機構は、第一認証処理S20と呼出処理S30と扉開処理S40と扉閉指令受取処理S60と第二認証処理S70と操作者判定処理S80と扉閉処理S90とを実施でき、
第一認証処理S20は、操作者の行った第一の操作である第一認証操作に基づいて第一認証操作をおこなった操作者を認証する処理であって、操作者認証S21と操作者適任?S22と操作者情報記録S23とで構成され、操作者認証S21は、操作者がキー入力するコードを入力し、操作者適任?S22は、入力したコードが適任コードテーブルに記載されたものであるとき操作者を適任と判断し、操作者情報記録S23は、入力したコードを第一コードとして記録し、
呼出処理S30は、入出庫空間の状態を車両を入出庫できる状態である入出庫可能状態にする処理であって、スタート釦を押されるのをまち、入出庫空間の状態を車両を入出庫できる状態である入出庫可能状態にし、操作者は、操作盤に設けられるスタート釦を押し、入庫要求であるとき、空パレットを入出庫空間に移動させ、出庫要求であるとき、入力コードに応じたパレット、または入力コードに応じた車両を載せたパレットを入出庫空間に移動させ、
呼出処理S30を完了すると、次ぎに、扉開処理S40を実施し、
扉開処理S40は、入出庫空間扉の状態を閉状態から開状態に変化させる処理であって、操作者から扉開指令を待ち、扉開指令があったときに入出庫空間扉の状態を閉状態から開状態に変化させ、
扉閉指令受取処理S60は、操作者のする入出庫空間扉の状態を開状態から閉状態に変化させる旨の指令である扉閉指令を受け付ける処理であって、操作者が操作盤の扉閉釦を押すのを待ち、
扉閉指令受取処理S60を完了すると、次の第二認証処理S70を実施し、
第二認証処理S70は、操作者の第二の操作である第二認証操作に基づいて第二認証操作をおこなった操作者を認証する処理であって、操作者認証S71と操作者情報記録S73とで構成され、操作者認証S71は、操作者がキー入力するコードを入力し、操作者情報記録S73は、入力したコードを第二コードとして記録し、
第二認証処理S70を完了すると、次ぎに操作者判定処理S80を実施し、
操作者判定処理S80は、第一認証処理S20で認証した操作者である第一操作者と第二認証処理S70で認証した操作者である第二操作者とが一致するかを判定する処理であって、操作者一致?S81で構成され、操作者一致?S81が、第一コードと第二コードとが一致するときに第一操作者と第二操作者とが一致すると判定し、
操作者判定処理S80が第一操作者と第二操作者とが一致すると判定すると次の扉閉処理S90を実施し、
扉閉処理S90は、入出庫空間扉の状態を開状態から閉状態に変化させる処理である
駐車装置の制御方法。」

(甲1先願装置発明)
「甲1先願発明の駐車装置の制御方法によって制御する制御機構を有する駐車装置。」

(2)甲第3号証
ア.甲第3号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0012】
駐車装置1は、車両を搭載するパレットを12体備え、最大12台の車両を駐車することができる装置である。駐車装置1は後述する利用者の操作に従って、当該利用者の利用に係るパレットを地上面Gの位置へ移動させ、ゲート21を開いて、当該パレットから地上面Gへ矢印A1方向に車両を出庫させ、或いは地上面Gから当該パレットへ矢印A2方向に車両を入庫させることが可能である。駐車装置1は、ゲート21が閉ざされた状態で利用者を待機するようになっており、安全上の観点からこのゲート21が閉ざされた状態が駐車装置1の待機状態として定められている。」

(イ)「【0023】
また、この駐車装置1には、駐車装置1の稼働時における安全性を向上させるために、駐車装置1内への人の進入を防止し、また、地下への人などの転落を防止するために、車両入出庫口Q1にゲート21が設けられている。このゲート21は、車両入出庫口Q1を閉じる閉位置22aと、車両入出庫口Q1を開く開位置22bとの間を移動(昇降)可能に設けられている。ゲート21を移動させる昇降機構は、それ自体公知のものであり、チェーン、駆動モータ等を含んでいる。ゲート21の開位置22bの高さには、支柱5に固定されたリミットスイッチ24が設けられている。リミットスイッチ24は、ゲート21に接触することでゲート21が開位置22bへの移動したことを検知する検知手段として機能する。
【0024】
正面の支柱5には、利用者が操作を行う操作盤23が配設されている。操作盤23は、図3に示すように、カード読取部25、警告灯27、表示部29、指示入力部31、非常停止ボタン33、ロック解除ボタン34等を含んでいる。カード読取部(情報読取手段)25は、例えば、外部情報記憶媒体としてのICカード91(後述する)が近づくことにより、ICカード91を検出し、ICカード91との間で電波の授受によってICカード91に記憶された情報を読み込む、いわゆる非接触型のICカード読取装置が用いられる。カード読取部25は、ICカード91が通信可能な所定の距離範囲内に存在する場合にはICカード91を検出した旨の電気信号を統括制御部37(後述する)へ送信する。表示部29は、表示制御部49に制御され、ICカード91から読み込んだ情報の中のパレット番号や駐車装置1の動作状態等を表示する。警告灯27は、所定の場合に点灯又は点滅することによって動作状態を周囲に表示する。非常停止ボタン33は、例えば非常の際に利用者に操作されることによって駐車装置1の動作を停止させる。指示入力部31はテンキーを含む入力装置であり、利用者の指示が必要な所定の場合に、利用者による入力を受け付ける。ロック解除ボタン34は、駐車装置1が操作ロック状態にある際に、利用者に操作されることによって、当該操作ロック状態を解除する。操作ロック状態とは、利用者が車両を入出庫させる間に各パレット11等及びゲート21が誤って動くことがないように、操作盤23による利用者の操作が受け付けられなくなる状態である。操作ロック状態においては、操作盤23からの入力に関わらず各パレット11等の移動及びゲート21の移動が禁止される。
【0025】
駐車装置1の背面には、各パレットを駆動するためのパレット駆動モータ、ゲート21を駆動するゲート駆動モータ、及び操作盤23の動作等を制御するための制御盤35が、地上面G上に臨んだ状態で配設されている。
【0026】
図4は、駐車装置1の制御構成を示すブロック図である。制御盤35は、たとえばROM及びRAMを含む制御用CPU(図示せず)等を有している。制御用CPUは、ROMに記憶された制御プログラムを読み出して制御を行うことにより、図4に示されるように、統括制御部37、諸元データ記憶部41、通信制御部43、入力制御部47、表示制御部49、モータ制御部50等を含むように構成されることになる。」

(ウ)「【0029】
ICカード91としては、例えば、いわゆる非接触型ICカードが用いられる。ICカード91はデータ記憶部93及び通信部95を有している。ICカード91は通常、駐車装置1の利用者に保持されており、データ記憶部93には所望のパレットに関する情報としてパレット番号が記憶されている。本実施形態では、データ記憶部93にはパレット番号の他、利用者IDも記憶されている。利用者IDとは、駐車装置1を利用する利用者を識別するためのIDデータであり、利用者毎に固有の情報である。パレット番号とは、当該ICカード91を保持する利用者が利用するパレットに関する情報であって、当該利用者が何れのパレットを利用するか(例えば、1番〜12番)を示すデータである。このパレット番号は、駐車装置1の各パレットに採番されたパレット番号に対応して記憶されている。通信部95はカード読取部25との間での情報の通信を行う。データ記憶部93に記憶された情報は通信部95を介して駐車装置1側へと伝達される。」

(エ)「【0032】
図5は、駐車装置1における車両の入出庫処理のフロー図である。本図を参照しながら、駐車装置1の入出庫処理及び利用者の動作について説明する。
【0033】
まず、車両を入出庫しようとする利用者は、駐車装置1のカード読取部25にICカード91を接触させる。待機状態(S202)にあった駐車装置1では、カード読取部25でICカード91が検出されて(S204)、電源が入り、カード読取部25からデータ記憶部93に記憶された利用者ID及びパレット番号が読み込まれる(S206)。そして、諸元データ記憶部41に記憶されたデータと読み込まれた利用者ID及びパレット番号との比較が行われ、ICカード91の正当性がチェックされる(S208)。この正当性チェックでは、例えば、利用者IDが正しいデータであるか否か、利用者に駐車装置1の操作の権限があるか否か、パレット番号が駐車装置1に存在するパレットか否かが確認される。このとき、読み込まれた利用者ID又はパレット番号が不当であると判断された場合は、ICカード91が正当なカードではなく、カードの保持者に駐車装置1の操作の権限がないものとみなして、処理はS202の待機状態へ戻る。
【0034】
S208において、ICカード91が正当なカードであると判断された場合には、パレット駆動モータ61が駆動され、パレットの移動が開始される(S216)。このパレットの移動は、ICカード91から読み込まれたパレット番号に対応するパレット(所望のパレット)を下段駐車領域T1の着床位置P1(入出庫位置)へ移動させるべく、あらかじめ定められた順序で行われる。このとき、着床位置P1に移動させるべきパレットは複数ある下段駐車領域T1のうち、何れの着床位置P1へ移動されてもよい。なお、このパレット移動中には、ICカード91から読み込まれた利用者ID、パレット番号、及び所定のメッセージ等が表示部29に表示されてもよい。上記パレットの着床位置P1への移動が完了した後、ゲート21を開くべく、ゲート駆動モータ63が駆動される(S218)。そして、リミットスイッチ24によってゲート21が完全に開いたことが検知された後(S222)、駐車装置1は操作ロック状態とされ(S224)、ロック解除ボタン34が操作されるまで待機される(S226)。
【0035】
このように、駐車装置1は、ICカード91に記憶されたパレット番号をカード読取部25で読み取ることができ、統括制御部37はパレット番号のキー入力等を利用者へ要求することなく、着床位置P1へ移動させるべきパレット番号を直接認識することができる。よって、車両を入出庫しようとする利用者は、ICカード91をカード読取部25に接触させる動作のみで、所望のパレットを着床位置P1へ移動し、ゲート21を開き、操作ロックを行うという一連の入出庫の準備を自動的に行わせることができる。
【0036】
その後、駐車装置1が操作ロック状態にある間に、利用者は、着床位置P1のパレットに車両Cを入庫、或いは着床位置P1のパレットから車両Cを出庫する。車両Cを入庫する場合にあっては、利用者は、着床位置P1に移動したパレットへ車両Cごと進入し、その後車両Cを降りて駐車装置1から離れる。また、車両Cを出庫する場合にあっては、利用者は、駐車装置1内へ進入し、着床位置P1に移動したパレット上にある車両Cに搭乗し、車両Cごと駐車装置1から出る。
【0037】
このような入出庫が行われている最中に、パレット11等やゲート21が誤って動いてしまうと危険であるので、上記のように自動的に駐車装置1を操作ロック状態にすることとしている。この操作ロックによって、車両の入出庫時にパレット11等やゲート21の移動が禁止されるように制御されるので、利用者が安全に車両の入出庫を行うことができる。なお、操作ロック状態にある間は、その旨を利用者に確認させるため、表示部29に操作ロック状態である旨が表示されてもよく、警告灯27を点灯させる等の動作がされてもよい。
【0038】
続いて、車両の入出庫を終えた利用者は、操作盤23のロック解除ボタン34の操作(例えば、ボタンの押下)を行う。駐車装置1ではロック解除ボタン34の操作が検出され(S226)、操作ロック状態が解除される(S228)。このように、操作ロック状態を解除する際にロック解除ボタン34を操作させることで、駐車装置1が次の動作に移行することを利用者に意識させ、安全確認を促すことができる。
【0039】
操作ロック状態の解除の後、利用者は、再びICカード91をカード読み取り部25へ接触させる。駐車装置1では、検出されたICカードが、先のS204に用いられたカードと同じであることが確認され(S232)、ゲート21を閉じるべくゲート駆動モータ63が駆動される(S234)。そして、ゲート21が閉じ切った後(S236)には、入出庫が終了した旨のメッセージが表示部29に表示され(S238)、電源が切られて待機状態(S202)へ戻る。なお、ゲート21が閉じきった後(S236の後)に、ICカード91を再びカード読取部25に接触させることを要求する処理を加えてもよい。このようにすれば、ゲート21が閉じきる前に利用者が立ち去ることを抑制することができるので、安全性を高めることができる。また、このとき、ICカード91が接触されなかった場合には、利用者が安全確認を怠ったことへのペナルティとして、当該利用者のICカード91を次回から使用不可能とする処理をしてもよい。」

(オ)上記「(イ)」の記載からみて、甲第3号証には「駐車装置1の制御方法」が記載されているといえる。

イ.以上を総合すると、甲第3号証には次の駐車装置の制御方法の発明及び駐車装置の発明(以下、それぞれ「甲3発明」及び「甲3装置発明」という。)が記載されている。

(甲3発明)
「車両を搭載するパレットを備え、車両入出庫口にゲートが設けられ、正面の支柱には、利用者が操作を行う操作盤が配設されている、駐車装置において、
操作盤は、カード読取部、警告灯、表示部、利用者の指示が必要な所定の場合に利用者による入力を受け付けるテンキーを含む指示入力部、非常停止ボタン、ロック解除ボタン等を含んでおり、
ロック解除ボタンは、利用者が車両を入出庫させる間に各パレット等及びゲートが誤って動くことがないよう、駐車装置が各パレット等の移動及びゲートの移動が禁止される操作ロック状態にある際に、利用者に操作されることによって、当該操作ロック状態を解除するものであり、
駐車装置には、各パレットを駆動するためのパレット駆動モータ、ゲートを駆動するゲート駆動モータ、及び操作盤の動作等を制御するための制御盤が、配設されており、制御盤は、ROMに記憶された制御プログラムを読み出して制御を行い、
車両の入出庫処理においては、
車両を入出庫しようとする利用者が、駐車装置のカード読取部に、データ記憶部及び通信部を有するICカードを接触させると、カード読取部からデータ記憶部に記憶された利用者ID及びパレット番号が読み込まれ、諸元データ記憶部に記憶されたデータとの比較が行われ、
ICカードが正当なカードであると判断された場合には、パレット駆動モータが駆動され、パレットの移動が開始され、パレットの着床位置への移動が完了した後、ゲートを開くべく、ゲート駆動モータが駆動され、ゲートが完全に開いた後、駐車装置はロック解除ボタンが操作されるまで操作ロック状態とされ、
駐車装置が操作ロック状態にある間に、利用者は、車両を入庫する場合にあっては、着床位置に移動したパレットへ車両ごと進入し、その後車両を降りて駐車装置から離れ、車両を出庫する場合にあっては、駐車装置内へ進入し、車両に搭乗して駐車装置から出、
続いて、車両の入出庫を終えた利用者が、操作盤のロック解除ボタンの操作を行うと、操作ロック状態が解除され、このようにロック解除ボタンを操作させることで、駐車装置が次の動作に移行することを利用者に意識させ、安全確認を促すことができ、
操作ロック状態の解除の後、利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、駐車装置では、検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され、ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される、
駐車装置の制御方法。」

(甲3装置発明)
「甲3発明の駐車装置の制御方法によって制御する制御機構を有する駐車装置。」

(3)甲第5号証
ア.甲第5号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項4】 出入口の側方に設けられた操作盤により機械式駐車装置が運転されるものにおいて、前記出入口に搬器が到着する度に装置内に設けられた表示装置が表示する内容と該操作盤から入力される入力内容とを比較することにより該装置内の安全確認を行う機械式駐車装置の安全確認方法。」

(イ)「【0003】この機械式駐車装置には既に各種のものが提案され実際に実用に供されているが、一般的には駐車を希望する自動車が装置内に乗り入れるべき乗入部(出入口部)があって、ここに自動車を乗り入れ該自動車から運転者が退出したのち、操作する人(管理人あるいは利用者など)が安全確認を行ってから駐車装置の運転を開始し、複数の自動車を順次格納していくものである。」

(ウ)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、管理人などが駐車装置内(塔内)の人の有無などを確認する場合は飽くまで目視で行うことになるため、駐車装置内を隅々まで見渡して確実に安全確認を行うかは偏に確認を行う人の態度にかかっており、常に安全を確保する方法としては甚だ心許ない。又、構造上自動車3の影に隠れるような死角がどうしてもできてしまい、特に通常操作盤5の付近に位置する管理人にとっては、いちいち出入口1の反操作盤側までいって駐車場内を覗き込む手間をついつい面倒がってしまい、安全確認を疎かにする虞れも考えられる。本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、安全確認を行う人がどのような人であっても間違いなく安全確認が行われる安全確認装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は
○1(当審注:「○1」は丸数字の1を示す。以下同様。) 出入口の側方に操作盤が設けられ、該操作盤の操作により、装置内に配設された搬器が運転される機械式駐車装置において、操作盤からの死角領域には該搬器が出入口に到着する度に異なる表示を行う表示装置を設け、操作盤には表示装置の表示内容に対応する入力手段を備え、該表示内容に対応する入力手段が操作されれば搬器の運転が可能となる確認装置を設ける。
○2 出入口の側方に設けられた操作盤により機械式駐車装置が運転されるものにおいて、出入口に搬器が到着する度に装置内に設けられた表示装置が表示する表示内容と該操作盤から入力される入力内容とを比較することにより装置内の安全確認を行う。
ものである。
【0009】
【作用】上述の如く構成すれば、駐車装置を運転操作する人に目視確認を徹底して行わせることになる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を用いて説明する。図1は本発明に係る確認装置を備えた駐車装置の平面図、図3は図1における操作盤の正面図、図4は安全確認装置のブロック図であり、図中図2と同一符号のものは同一のものを示す。
【0011】10は、安全確認を行う人の死角になりがちな塔内の奥に設けられた表示装置で、例えば各ケージ2が出入口1に到着する度に乱数を表示し乱数信号10aを出力する装置、20は出入口1の側方に設けられた操作盤で、入庫釦21と出庫釦22とテンキーボード23と2組みの数字をディジタル表示する表示器24などからなる。30は表示装置10の乱数信号10aと表示器24の出力信号24aを比較し一致していれば確認信号30aを出力して駐車装置の運転を可能にする比較装置である。
【0012】要するに、ケージ2内に自動車3が入庫されてケージ2を循環運転させるには、そのときに表示装置10により表示されている乱数と同じ数字をテンキーボード23を使って入力し表示器24に表示されない限り運転動作が不可能となるものである。
【0013】つまり、操作盤20を操作する管理人などは、駐車装置の運転に先だって必ず通常死角となる領域を自ら出入口1の反操作盤20から見渡すことにより人の有無をしっかり確認するとともに、その際表示装置10によって表示されている乱数を見て、それと同じ数字をテンキーボード23により入力して比較装置30から確認信号30aを出力させない限り駐車装置を運転させることはできない。
【0014】この表示装置10は乱数を表示する装置として説明したが、例えば赤色,青色,黄色などの色を表示する装置とし、操作盤20にはこの色に対応する釦をそれぞれ別に設けて、表示装置の色と操作盤の釦とが一致したときに確認信号を発するように構成することもでき、表示内容についてはいろいろな方法が考えられ実施例に限定されない。
【0015】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、駐車装置を運転操作する人が通常死角となる領域を自ら積極的に目視確認した後、操作盤を決められたルールに従って正確に操作しなければ運転ができないため、極めて安全な機械式駐車装置を得ることができる。」

イ.以上を総合すると、甲第5号証には次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されている。

「機械式駐車装置の安全確認方法であって、
駐車を希望する自動車が装置内に乗り入れるべき乗入部(出入口部)があって、ここに自動車を乗り入れ該自動車から運転者が退出したのち、操作する人(管理人あるいは利用者など)が安全確認を行ってから駐車装置の運転を開始し、複数の自動車を順次格納していく機械式駐車装置において、
安全確認を行う人がどのような人であっても間違いなく安全確認が行われることを目的とし、
安全確認を行う人の死角になりがちな塔内の奥に設けられた表示装置に、各ケージが出入口に到着する度に乱数を表示し、
出入口の側方に設けられた操作盤を操作する管理人などは、駐車装置の運転に先だって必ず通常死角となる領域をしっかり確認するとともに、その際表示装置によって表示されている乱数を見て、それと同じ数字をテンキーボードにより入力して、
比較装置から一致を示す確認信号が出力されると、駐車装置の運転を可能とする、
安全確認方法。」

(4)甲第11号証
ア.甲第11号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0064】
このように構成された機械式駐車場1は、本発明に係る制御装置40および制御方法によって制御される。図5は、制御装置40を概略的に示した構成図であり、図6は、乗入室5の平面図である。制御装置40は、CPUである主制御部41(制御手段)を有している。また、主制御部41には、ユーザーデータベース42と、入出庫扉開閉制御部43と搬送台昇降制御部44とが接続されており、これらは主制御部41に統括制御される。また、主制御部41には認証照合部46が含まれている。ユーザーデータベース42には、契約しているユーザーのIDや所有車両の入出庫履歴等が記憶されている。」

(イ)「【0112】
次のステップS3では、外部操作盤14の操作表示画面56にテンキーボタン等の認証入力画面が表示され、次のステップS4でユーザーが暗証番号入力やICカードによる認証操作を行う。そして、次のステップS5では、主制御部41の認証照合部46において、ユーザーが入力した認証内容と、ステップS2の第1の外部認証処理における認証内容とが合致しているか否かが判定され、その判定結果が否定判定であれば、ステップS6にてエラー表示がなされた後、ステップS7にてキャンセル処理が行われ、入庫操作がキャンセルされる。」

イ.以上を総合すると、甲第11号証には次の技術的事項(以下「甲11技術的事項」という。)が記載されている。

「機械式駐車場の制御方法において、
ユーザーが入力した認証内容と、第1の外部認証処理における認証内容とが合致しているか否かが判定され、その判定結果が否定判定であれば、エラー表示がなされる点。」

(5)甲第12号証
ア.甲第12号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0033】
以下に、本発明に係る機械式駐車装置、及びその制御システム、制御方法、制御プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。」

(イ)「【0058】
図5は、機械式駐車設備20において、車両12を入庫させるために一般パレットが指定された場合に、車両12を入庫させる機械式駐車装置10を決定する号機決定処理の流れを示すフローチャートである。
(中略)
【0060】
次のステップ102では、管理盤24が、入力された暗証番号が登録されている利用者の暗証番号であるか否かを判定し、否定判定の場合は、ステップ104へ移行し、肯定判定の場合は、ステップ106へ移行する。
【0061】
ステップ104では、入庫予約盤28の画面32を介して認証エラーである旨の報知がされる。」

イ.以上を総合すると、甲第12号証には次の技術的事項(以下「甲12技術的事項」という。)が記載されている。

「機械式駐車装置の制御方法の車両を入庫させる機械式駐車装置を決定する号機決定処理において、
入力された暗証番号が登録されている利用者の暗証番号であるか否かを判定し、否定判定の場合は、入庫予約盤の画面を介して認証エラーである旨の報知がされる点。」

(6)甲第13号証
ア.甲第13号証には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【0024】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る制御装置および制御方法を適用可能な機械式駐車場設備の一例を示すエレベータ式の立体駐車場の縦断面図である。なお、本発明に係る制御装置および制御方法は、以下に述べるエレベータ式の立体駐車場に限らず、複数の駐車スペースに搬送機で駐車車両を入出庫させる機械式駐車場設備であれば、他の様々な形式のものにも幅広く適用することができる。」

(イ)「【0053】
一方、ユーザーのアクションA5によって空のパレット18の搬送が開始され(A7)、空のパレット18が乗入階7に到着して入出庫扉4aが開く(A8)。車両内で待機していたユーザーは車両を運転して乗入階7に乗り入れ(A9)、車両を定位置に停車させた後に降車して操作盤22の前へ移動する(A10)。これにより、2回目のユーザー認証が自動的に行われる(A11)。
【0054】
ユーザーは、乗入室7内の安全を確認して入出庫扉4aを閉め(A12)、次に操作盤22の蓋34を閉める(A13)。このため、施錠部38のオートロック作用によって蓋34が自動施錠される。この時、蓋34の緑ランプ39が消えて赤ランプ40が点灯し、ユーザーに蓋34が施錠されたことが通知される。なお、2回目のユーザー認証の結果が1回目のユーザー認証の結果と異なる場合には、操作盤22の操作画面35にエラー表示がなされ、入出庫扉4aを閉められないようになっている。」

イ.以上を総合すると、甲第13号証には次の技術的事項(以下「甲13技術的事項」という。)が記載されている。

「機械式駐車場設備の制御方法において、
2回目のユーザー認証が行われ、2回目のユーザー認証の結果が1回目のユーザー認証の結果と異なる場合には、操作盤の操作画面にエラー表示がなされる点。」

2.特許法第29条の2(拡大先願)について
(1)本件特許発明1
ア.対比
本件特許発明1と甲1先願発明とを対比する。

(ア)甲1先願発明の「操作盤」、「入出庫空間扉」、「制御機構」、「駐車装置」、「操作者」、「操作者認証S21」における「操作者がキー入力するコード」、「パレット」、及び、「操作者認証S71」における「操作者がキー入力するコード」は、本件特許発明1の「操作盤」、「入出庫扉」、「制御部」、「駐車装置」、「ユーザ」、「認証情報」、「車体搬送手段」、及び、「操作盤入力情報」にそれぞれ相当する。

(イ)甲1先願発明においては、「入出庫空間扉の状態を閉状態から開状態に変化させる処理」及び「入出庫空間扉の状態を開状態から閉状態に変化させる処理」が行われるから、甲1先願発明が「入出庫空間扉の状態を閉状態から開状態に変化させる」及び「入出庫空間扉の状態を開状態から閉状態に変化させる」手段を有していることは自明であって、甲1先願発明の当該手段は、本件特許発明1の「開閉機構」に相当する。

(ウ)甲1先願発明の「入出庫空間の近傍の入出庫空間扉で仕切られる外部に設けられ」た「操作盤」は、本件特許発明1の「駐車装置の外部に設けられた操作盤」に相当する。

(エ)甲1先願発明における「操作盤」は「制御機構の操作盤」であるから「制御機構」を操作する装置であり、「操作者が制御機構の操作盤を操作」するのだから、甲1先願発明において「操作者」による「制御機構」の操作が「操作盤」を通じて行われることは明らかである。そして、甲1先願発明の「制御機構」は「第一認証処理S20と呼出処理S30と扉開処理S40と扉閉指令受取処理S60と第二認証処理S70と操作者判定処理S80と扉閉処理S90とを実施でき」るから、甲1先願発明の「第一認証処理S20」、「呼出処理S30」、「扉開処理S40」、「扉閉指令受取処理S60」、「第二認証処理S70」、「操作者判定処理S80」及び「扉閉処理S90」の各処理に係る操作は「操作盤」を通じて行われるといえる。

(オ)そうすると、甲1先願発明の「扉開処理S40」における「操作者」からの「扉開指令」や、「扉閉指令受取処理S60」における「操作者のする」「扉閉指令」も「操作盤」を通じて行われると解されるから、甲1先願発明の当該「入出庫空間扉の状態を閉状態から開状態に変化させる処理」である「扉開処理S40」、「扉閉指令受取処理S60」、及び、「入出庫空間扉の状態を開状態から閉状態に変化させる処理」である「扉閉処理S90」を行う「制御機構」は、本件特許発明1の「操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部」に相当する。

(カ)同様に、甲1先願発明の「操作者認証S21は、操作者がキー入力するコードを入力し」は、「キー入力」が「操作盤」を通じて行われると解されるから、本件特許発明1の「操作盤にユーザによって認証情報の入力がされ」に相当する。

(キ)甲1先願発明の「入庫要求であるとき、空パレットを入出庫空間に移動させ、出庫要求であるとき、入力コードに応じたパレット、または入力コードに応じた車両を載せたパレットを入出庫空間に移動させ」は、本件特許発明1の「車体搬送手段を呼び出し」に相当する。

(ク)甲1先願発明の「制御機構」は「駐車機構を制御する機器」であり、また、上記「(エ)」のとおり「制御機構」の操作は「操作盤」を通じて行われるところ、装置の制御において、制御に係る信号を送信することは一般に行われていることであって、甲1先願発明における「制御機構」による「駐車機構」の制御や「操作盤」による「制御機構」の操作に際しても信号が送信されることは明らかである。

(ケ)上記「(イ)及び(ク)」での検討を踏まえると、甲1先願発明の「扉開処理S40」は、「操作者から扉開指令を待ち、扉開指令があったときに入出庫空間扉の状態を閉状態から開状態に変化させ」は、本件特許発明1の「前記制御部が前記開閉機構に開扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記駐車装置の入出庫扉を開き」に相当する。

(コ)甲1先願発明は、「扉閉指令を受け付ける処理」である「扉閉指令受取処理S60を完了すると、次の第二認証処理S70を実施」し、その後、「操作者判定処理S80」及び「扉閉処理S90」を実施するところ、上記「ク.」での検討を踏まえると、扉閉指令を受け付けた場合に信号が送信されることは明らかであり、当該信号は「扉閉指令」に応じたものであって、「扉閉処理S90」に至る一連の処理の起点になるものであるから、本件特許発明1の「閉扉信号」に相当する。
また、甲1先願発明は、「扉閉指令受取処理S60」において「操作者が操作盤の扉閉釦を押すのを待」つところ、「操作盤の扉閉釦を押す」ことが「扉閉指令」に係る操作であることは明らかである。そして、扉閉釦が押されるまでの間は「扉閉指令を受け付ける処理」が完了することはないから、その間は扉閉指令に係る信号は送信されず、「操作者が操作盤の扉閉釦を押すのを待」つ状態が続くこととなる。
そうすると、甲1先願発明の「扉閉指令受取処理S60は、操作者のする入出庫空間扉の状態を開状態から閉状態に変化させる旨の指令である扉閉指令を受け付ける処理であって、操作者が操作盤の扉閉釦を押すのを待ち、扉閉指令受取処理S60を完了すると、次の第二認証処理S70を実施し」は、本件特許発明1の「前記駐車装置の外部に設けられた操作盤に前記ユーザによって閉扉指示が入力されると、前記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し」に相当する。

(サ)甲1先願発明においては「操作者認証S21は、操作者がキー入力するコードを入力し」、「操作者情報記録S23は、入力したコードを第一コードとして記録」するから、「第一コード」は「操作者認証S21」において「操作者がキー入力するコード」である。
また、同様に、「操作者認証S71は、操作者がキー入力するコードを入力し」、「操作者情報記録S73は、入力したコードを第二コードとして記録」するから、「第二コード」は「操作者認証S71」において「操作者がキー入力するコード」である。
そして、「開閉機構」については上記「(イ)」で検討したとおりであり、また、上記「(ク)」での検討を踏まえると、「扉閉処理S90を実施」する際に「入出庫空間扉の状態を開状態から閉状態に変化させる」ための信号が送信されることは明らかである。
そうすると、甲1先願発明の「第二認証処理S70は、操作者の第二の操作である第二認証操作に基づいて第二認証操作をおこなった操作者を認証する処理であって、操作者認証S71と操作者情報記録S73とで構成され、操作者認証S71は、操作者がキー入力するコードを入力し、操作者情報記録S73は、入力したコードを第二コードとして記録し、第二認証処理S70を完了すると、次ぎに操作者判定処理S80を実施し、操作者判定処理S80は、第一認証処理S20で認証した操作者である第一操作者と第二認証処理S70で認証した操作者である第二操作者とが一致するかを判定する処理であって、操作者一致?S81で構成され、操作者一致?S81が、第一コードと第二コードとが一致するときに第一操作者と第二操作者とが一致すると判定し、操作者判定処理S80が第一操作者と第二操作者とが一致すると判定すると次の扉閉処理S90を実施し、扉閉処理S90は、入出庫空間扉の状態を開状態から閉状態に変化させる」は、本件特許発明1の「前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じ」に相当する。

(シ)以上を総合すると、本件特許発明1と甲1先願発明とは、
「操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部を含む駐車装置の制御方法であって、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤にユーザによって認証情報の入力がされ、
車体搬送手段を呼び出し、
前記制御部が前記開閉機構に開扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記駐車装置の入出庫扉を開き、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤に前記ユーザによって閉扉指示が入力されると、前記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し、
前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる
ことを含む駐車装置の制御方法。」
の点で一致しており、次の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明1が「認証情報と操作盤入力情報とが一致しない場合にエラー表示をする」のに対して、甲1先願発明はそのようなものでない点。

イ.判断
上記相違点1について検討する。
駐車装置の制御方法において、認証に際して入力した情報と当該情報と対照される情報とが一致しない場合にエラー表示をすることは、例えば、上記甲11技術的事項、甲12技術的事項及び甲13技術的事項(上記「1.(4)ないし(6)」参照。)に示されるように、本件特許の原出願前に周知の技術事項(以下「周知技術」という。)である。そして、その効果も、当該周知技術自体が備えるものであって、当業者にとって自明な効果であると認められる。
そうすると、甲1先願発明を相違点1に係る発明特定事項を有するものとすることは、周知技術の付加であって、本件特許発明1が相違点1に係る事項を備えることにより新たな効果を奏するものでもないから、本件特許発明1が相違点1に係る事項を備えることは、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。

ウ.小括
よって、本件特許発明1は甲1先願発明と実質同一である。

(2)本件特許発明7
本件特許発明1と甲1先願発明との対比は上記「(1)ア.」のとおりであるところ、これを踏まえて本件特許発明7と甲1先願装置発明とを対比すると、両者は上記「(1)ア.」の相違点1と同様の点で相違し、その余の点で一致する。
そして、当該相違点について検討すると、上記「(1)イ.」における相違点1についての検討と同様のことがいえるから、本件特許発明7は甲1先願装置発明と実質同一である。

(3)小括
本件特許発明1及び7は、その原出願の日前の特許出願であって、その原出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその原出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件特許発明1及び7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

3.特許法第29条第2項進歩性)について
(1)本件特許発明1
ア.対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。

(ア)甲3発明における「駐車装置」、「ゲート」、「ゲート駆動モータ」、「利用者」及び「駐車装置の制御方法」は、本件特許発明1における「駐車装置」、「入出庫扉」、「開閉機構」、「ユーザ」及び「駐車装置の制御方法」にそれぞれ相当する。

(イ)甲3発明における「正面の支柱」に配設された「操作盤」は、「駐車装置から出」た「車両の入出庫を終えた利用者」が操作するものであるから、「駐車装置」の外に設けられていると解されるので、本件特許発明1における「駐車装置の外部に設けられた操作盤」に相当する。

(ウ)甲3発明は「車両を入出庫しようとする利用者が、駐車装置のカード読取部に、データ記憶部及び通信部を有するICカードを接触させると、カード読取部からデータ記憶部に記憶された利用者ID及びパレット番号が読み込まれ、諸元データ記憶部に記憶されたデータとの比較が行われ、ICカードが正当なカードであると判断された場合には、パレット駆動モータが駆動され、パレットの移動が開始され、パレットの着床位置への移動が完了した後、ゲートを開くべく、ゲート駆動モータが駆動され」るとともに、「操作ロック状態の解除の後、利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、駐車装置では、検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され、ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」ところ、甲3発明の「カード読取部」が「操作盤」に設けられていることを勘案すると、「カード読取部」にICカードを接触させることは「操作盤」への指示の入力であって、甲3発明においては「操作盤」への指示の入力に応じて、「ゲートを開くべく」又は「ゲートを閉じるべく」、「ゲート駆動モータが駆動され」るといえる。そして、甲3発明の「制御盤」は、「ゲートを駆動するゲート駆動モータ……を制御するための」ものであるから、「操作盤」への指示の入力に応じて、「ゲートを開くべく」又は「ゲートを閉じるべく」、「ゲート駆動モータが駆動され」るように「ゲート駆動モータ……を制御する」ものであるといえる。
そうすると、甲3発明の当該「制御盤」は、本件特許発明1の「操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部」に相当する。

(エ)甲3発明の「車両を入出庫しようとする利用者が、駐車装置のカード読取部に、データ記憶部及び通信部を有するICカードを接触させると、カード読取部からデータ記憶部に記憶された利用者ID及びパレット番号が読み込まれ」ることは、上記「(イ)及び(ウ)」での検討を踏まえると、本件特許発明1の「前記駐車装置の外部に設けられた操作盤にユーザによって認証情報の入力がされ」に相当する。

(オ)甲3発明においては、「ICカードが正当なカードであると判断された場合には、パレット駆動モータが駆動され、パレットの移動が開始され、パレットの着床位置への移動が完了した後、ゲートを開くべく、ゲート駆動モータが駆動され、ゲートが完全に開いた後、駐車装置はロック解除ボタンが操作されるまで操作ロック状態とされ」るから、「ICカードが正当なカードであると判断された場合には、パレット駆動モータが駆動され、パレットの移動が開始され、パレットの着床位置への移動が」行われるものと認められ、甲3発明のこの点は、本件特許発明1の「車体搬送手段を呼び出し」に相当する。

(カ)甲3発明においては、「ICカードが正当なカードであると判断された場合には、パレット駆動モータが駆動され、パレットの移動が開始され、パレットの着床位置への移動が完了した後、ゲートを開くべく、ゲート駆動モータが駆動され、ゲートが完全に開いた後、駐車装置はロック解除ボタンが操作されるまで操作ロック状態とされ」るから、「パレットの着床位置への移動が完了した後、ゲートを開くべく、ゲート駆動モータが駆動され、ゲートが完全に開」くものと認められ、甲3発明の「制御盤」が「ゲートを駆動するゲート駆動モータ」を制御するものであることを踏まえると、「ゲートを開くべく」又は「ゲートを閉じるべく」、「ゲート駆動モータが駆動され」る際にも、「制御盤」から「ゲート駆動モータ」へ信号が送信されることは明らかであるから、甲3発明のこの点は、本件特許発明1の「前記制御部が前記開閉機構に開扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記駐車装置の入出庫扉を開き」に相当する。

(キ)甲3発明において、「ゲートを閉じる」処理に先立って行われる、「利用者」による「ロック解除ボタンの操作」は、後続する「確認」に関する処理を別とすれば、「ゲートを閉じる」前に「利用者」が「操作盤」に対して行う最後の入力であり、また後続する「確認」に関する処理が行われれば「ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」ものであるから、本件特許発明1において、「前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる」動作に先立って行われ、また、「前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し、前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記確認情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信すること」より前に行われる、「操作盤に前記ユーザによって閉扉指示が入力される」操作に相当する。

(ク)甲3発明においては、「操作盤のロック解除ボタンの操作を行うと、操作ロック状態が解除され」るところ、「操作ロック状態が解除され」ることは「操作盤の動作等」に関する制御であるといえるから、その制御が「各パレットを駆動するためのパレット駆動モータ、ゲートを駆動するゲート駆動モータ、及び操作盤の動作等を制御するための制御盤」によって行われることは明らかである。そして、「制御盤」による制御によって「操作盤のロック解除ボタンの操作を行うと、操作ロック状態が解除され」るのだから、技術常識を踏まえると、「操作盤のロック解除ボタンの操作を行う」際に、操作盤から制御盤へ「操作ロック状態が解除され」ることを指示する信号が送信されることは明らかである。
また、上記「(カ)」で検討したとおり、甲3発明において、「ゲートを開くべく」又は「ゲートを閉じるべく」、「ゲート駆動モータが駆動され」る際にも、「制御盤」から「ゲート駆動モータ」へ信号が送信されることは明らかであるところ、甲3発明においては、「操作ロック状態の解除の後、利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、駐車装置では、検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され、ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」のだから、「操作ロック状態の解除の後」から、「利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、駐車装置では、検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され」るまでの間は、「ゲートを閉じるべくゲート駆動モータ」を「駆動」するための信号が送信されず、「検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され」るのを待って、「ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」ということができる。
また、甲3発明が「車両を入出庫しようとする利用者が、駐車装置のカード読取部に、データ記憶部及び通信部を有するICカードを接触させると、カード読取部からデータ記憶部に記憶された利用者ID及びパレット番号が読み込まれ」るものであることを勘案すると、「再びICカードをカード読み取り部へ接触させる」ことは、本件特許発明1の「操作盤へ操作盤入力情報が入力され」ることに相当する。
そうすると、甲3発明において、「操作盤のロック解除ボタンの操作を行うと、操作ロック状態が解除され」、「操作ロック状態の解除の後、利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、駐車装置では、検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され、ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」ことに伴って行われる一連の処理は、本件特許発明1の「記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し」に相当する。

(ケ)甲3発明において「カード読み取り部」が「操作盤」に設けられていること、及び、上記「(カ)」での検討のとおり、「ゲートを閉じるべく」、「ゲート駆動モータが駆動され」る際に、「制御盤」から「ゲート駆動モータ」へ信号が送信されることは明らかであることを勘案すると、甲3発明の「利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、駐車装置では、検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され、ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」ことは、本件特許発明1の「前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じ」ることに相当する。

(コ)以上を総合すると、本件特許発明1と甲3発明とは、
「操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部を含む駐車装置の制御方法であって、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤にユーザによって認証情報の入力がされ、
車体搬送手段を呼び出し、
前記制御部が前記開閉機構に開扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記駐車装置の入出庫扉を開き、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤に前記ユーザによって閉扉指示が入力されると、前記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し、
前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる
ことを含む駐車装置の制御方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点A)
本件特許発明1が、「認証情報と操作盤入力情報とが一致しない場合にエラー表示をする」のに対して、甲3発明はそのようなものでない点。

イ.判断
上記相違点Aについて検討する。

(ア)駐車装置の制御方法において、認証に際して入力した情報と当該情報と対照される情報とが一致しない場合にエラー表示をすることは、上記「2.(1)イ.」で示したとおり周知技術であって、甲3発明において当該周知技術を採用して本件特許発明1の相違点Aに係る発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)そして、甲3発明において、周知技術を採用したことによる効果も、甲3発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。

ウ.小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件特許発明2
ア.対比
本件特許発明2と甲3発明とを対比する。

(ア)甲3発明における「駐車装置」、「ゲート」、「ゲート駆動モータ」及び「利用者」は、本件特許発明2における「駐車装置」、「入出庫扉」、「開閉機構」及び「ユーザ」にそれぞれ相当する。

(イ)甲3発明における「正面の支柱」に配設された「操作盤」は、「駐車装置から出」た「車両の入出庫を終えた利用者」が操作するものであるから、「駐車装置」の外に設けられていると解されるので、本件特許発明2における「駐車装置の外部に設けられた操作盤」に相当する。

(ウ)甲3発明は「車両を入出庫しようとする利用者が、駐車装置のカード読取部に、データ記憶部及び通信部を有するICカードを接触させると、カード読取部からデータ記憶部に記憶された利用者ID及びパレット番号が読み込まれ、諸元データ記憶部に記憶されたデータとの比較が行われ、ICカードが正当なカードであると判断された場合には、パレット駆動モータが駆動され、パレットの移動が開始され、パレットの着床位置への移動が完了した後、ゲートを開くべく、ゲート駆動モータが駆動され」るとともに、「操作ロック状態の解除の後、利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、駐車装置では、検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され、ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」ところ、甲3発明の「カード読取部」が「操作盤」に設けられていることを勘案すると、「カード読取部」にICカードを接触させることは「操作盤」への指示の入力であって、甲3発明においては「操作盤」への指示の入力に応じて、「ゲートを開くべく」又は「ゲートを閉じるべく」、「ゲート駆動モータが駆動され」るといえる。そして、甲3発明の「制御盤」は、「ゲートを駆動するゲート駆動モータ…を制御するための」ものであるから、「操作盤」への指示の入力に応じて、「ゲートを開くべく」又は「ゲートを閉じるべく」、「ゲート駆動モータが駆動され」るように「ゲート駆動モータ……を制御する」ものであるといえる。
そうすると、甲3発明の当該「制御盤」は、本件特許発明2の「操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部」に相当する。

(エ)甲3発明において、「ゲートを閉じる」処理に先立って行われる、「利用者」による「ロック解除ボタンの操作」は、後続する「確認」に関する処理を別とすれば、「ゲートを閉じる」前に「利用者」が「操作盤」に対して行う最後の入力であり、また後続する「確認」に関する処理が行われれば「ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」ものであるから、本件特許発明2において、「前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる」動作に先立って行われ、また、「前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し、前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記確認情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信すること」より前に行われる、「操作盤に前記ユーザによって閉扉指示が入力される」操作に相当する。

(オ)甲3発明においては、「操作盤のロック解除ボタンの操作を行うと、操作ロック状態が解除され」るところ、「操作ロック状態が解除され」ることは「操作盤の動作等」に関する制御であるといえるから、その制御が「各パレットを駆動するためのパレット駆動モータ、ゲートを駆動するゲート駆動モータ、及び操作盤の動作等を制御するための制御盤」によって行われることは明らかである。そして、「制御盤」による制御によって「操作盤のロック解除ボタンの操作を行うと、操作ロック状態が解除され」るのだから、技術常識を踏まえると、「操作盤のロック解除ボタンの操作を行う」際に、操作盤から制御盤へ「操作ロック状態が解除され」ることを指示する信号が送信されることは明らかである。
また、甲3発明の「制御盤」は「ゲートを駆動するゲート駆動モータ」を制御するものでもあるから、「ゲートを開くべく」又は「ゲートを閉じるべく」、「ゲート駆動モータが駆動され」る際にも、「制御盤」から「ゲート駆動モータ」へ信号が送信されることは明らかであるところ、甲3発明においては、「操作ロック状態の解除の後、利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、駐車装置では、検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され、ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」のだから、「操作ロック状態の解除の後」から、「利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、駐車装置では、検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され」るまでの間は、「ゲートを閉じるべくゲート駆動モータ」を「駆動」するための信号が送信されず、「検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され」るのを待って、「ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」ということができる。
また、甲3発明が「車両を入出庫しようとする利用者が、駐車装置のカード読取部に、データ記憶部及び通信部を有するICカードを接触させると、カード読取部からデータ記憶部に記憶された利用者ID及びパレット番号が読み込まれ」るものであることを勘案すると、「再びICカードをカード読み取り部へ接触させる」ことは、本件特許発明2の「操作盤へ操作盤入力情報が入力され」ることに相当する。
そうすると、甲3発明において、「操作盤のロック解除ボタンの操作を行うと、操作ロック状態が解除され」、「操作ロック状態の解除の後、利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、駐車装置では、検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され、ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」ことに伴って行われる上述の一連の処理は、本件特許発明2の「前記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し」に相当する。

(カ)甲3発明において「カード読み取り部」が「操作盤」に設けられていること、及び、上記「(オ)」での検討のとおり、「ゲートを閉じるべく」、「ゲート駆動モータが駆動され」る際に、「制御盤」から「ゲート駆動モータ」へ信号が送信されることは明らかであることを勘案すると、甲3発明の「利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、駐車装置では、検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであることが確認され、ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」ことと、本件特許発明2において、「前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記確認情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる」こととは、「操作盤へ操作盤入力情報が入力された後、所定の情報と操作盤入力情報とが一致する場合に、制御部が開閉機構への閉扉信号を送信することによって、開閉機構が入出庫扉を閉じる」点で共通する。

(キ)以上を総合すると、本件特許発明2と甲3発明とは、
「操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部を含む駐車装置の制御方法であって、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤にユーザによって閉扉指示が入力されると、前記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し、
前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、所定の情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる
ことを含む駐車装置の制御方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点B)
本件特許発明2が、「駐車装置の入出庫扉が開いた状態で、前記駐車装置の内部に設けられた表示部に確認情報を表示」するとともに、「確認情報」と操作盤入力情報とが一致する場合に入出庫扉を閉じるのに対して、甲3発明は「確認情報」を表示せず、「確認情報」と操作盤入力情報とが一致する場合に入出庫扉を閉じるものでもない点。

イ.判断
上記相違点Bについて検討する。

(ア)甲5発明は、機械式駐車装置の安全確認方法において、「安全確認を行う人の死角になりがちな塔内の奥に設けられた表示装置に、例えば各ケージが出入口に到着する度に乱数を表示し、出入口の側方に設けられた操作盤を操作する管理人などは、駐車装置の運転に先だって必ず通常死角となる領域をしっかり確認するとともに、その際表示装置によって表示されている乱数を見て、それと同じ数字をテンキーボードにより入力して、比較装置から一致を示す確認信号が出力されると、駐車装置の運転を可能とする」との技術的事項を有しており、当該事項は本件特許発明2の「駐車装置の内部に設けられた表示部に確認情報を表示」する点に相当する。

(イ)甲3発明も、車両の入出庫を終えた利用者に対して「ロック解除ボタンを操作させることで、駐車装置が次の動作に移行することを利用者に意識させ、安全確認を促す」とともに、「操作盤」自体が「テンキーを含む指示入力部」を備えているところ、ユーザに促す安全確認の確実な実施のために、甲5発明における「安全確認を行う人の死角になりがちな塔内の奥に設けられた表示装置に、例えば各ケージが出入口に到着する度に乱数を表示」して「同じ数字をテンキーボードにより入力」させる構成を、甲3発明における安全確認処理に追加して採用し、ロック解除ボタンの操作の後に、表示された乱数に対応する情報が利用者によって「操作盤」の「テンキーを含む指示入力部」に入力されるのを待機し、該入力された情報と表示された乱数との一致を確認する判断を、ゲートを閉じるゲート駆動モータを駆動するための判断に追加して含めるようにし、以て、本件特許発明2の上記相違点Bに係る「駐車装置の内部に設けられた表示部に確認情報を表示」することとし、当該「確認情報」と操作盤入力情報とが一致する場合に入出庫扉を閉じるようにすることは、当業者が容易に想到することができたことである。
そして、この場合には、「駐車装置の内部に設けられた表示部に確認情報を表示」し、当該「確認情報」と操作盤入力情報とが一致する場合に入出庫扉を閉じることになるから、表示部に確認情報を表示する時点では、入出庫扉が開いた状態であることは明らかである。

(ウ)なお、その際、ゲートを閉じるゲート駆動モータを駆動するための判断として、上記甲5発明に基いて追加した判断のほかに、甲3発明が有する「ICカード」の接触及び「検出されたICカードが、先に用いられたカードと同じであること」の確認の判断をさらに含んでいても、ゲートを閉じる処理が、本件特許発明2における「表示」された「確認情報」と「操作盤の入力キーへの操作」によって入力された「前記操作盤入力情報」とが「所定の関係を有するか否か」という「判断の結果に基づいて」行われていることに変わりはないから、本件訂正発明2との間に新たな相違点が生じるものではない。

(エ)そして、甲3発明において、甲5発明の安全確認処理を追加したことによる効果も、甲3発明及び甲5発明から当業者が予測し得る範囲のものである。

ウ.小括
以上のとおり、本件特許発明2は、甲3発明及び甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件特許発明7
ア.請求項1の記載を引用する場合
本件特許発明1と甲3発明との対比は上記「(1)ア.」のとおりであるところ、これを踏まえて請求項1の記載を引用する場合の本件特許発明7と甲3装置発明とを対比すると、両者は上記「(1)ア.」の相違点Aと同様の相違点で相違し、その余の点で一致する。
そして、当該相違点について検討すると、上記「(1)イ.」における相違点Aについての検討と同様のことがいえるから、本件特許発明7は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ.請求項2の記載を引用する場合
本件特許発明2と甲3発明との対比は上記「(2)ア.」のとおりであるところ、これを踏まえて請求項2の記載を引用する場合の本件特許発明7と甲3装置発明とを対比すると、両者は上記「(2)ア.」の相違点Bと同様の点で相違し、その余の点で一致する。
そして、当該相違点について検討すると、上記「(2)イ.」における相違点Bについての検討と同様のことがいえるから、本件特許発明7は、甲3発明及び甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)小括
本件特許発明1及び7は、甲3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明2及び7は、甲3発明及び甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1、2及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった異議申立理由についての当審の判断

本件特許異議の申立ては、請求項1ないし5及び7に係る特許に対するものであるところ、本件特許発明1、2及び7については、上記「第5」で検討したとおりであるので、以下では、本件特許発明3ないし5に係る特許に対する異議申立理由について判断する。

1.甲各号証について
(1)甲第8号証
ア.甲第8号証(特開2017−20259号公報)に係る特願2015−139373号(以下「甲8先願」という。)は、本件特許の原出願の日前の特許出願であって、本件特許の原出願後に出願公開がされたものであるところ、その願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「甲8先願当初明細書等」という。)には次の記載がある。

(ア)「【0025】
[安全確認装置の構成]
図1は、この実施形態の機械式駐車設備1の入出庫部3を示す平面図であり、矩形状に形成された駐車塔2の正面側に入出庫口4が設けられ、この入出庫口4には入出庫扉5が備えられている。この入出庫口4の側方(図では右方)には、機械式駐車設備1の運転操作を行う運転盤7が設けられている。この実施形態では、この運転盤7と制御装置8が一体となった例を示している。制御装置8には、上記登録者が記憶されている。また、この実施形態では、運転盤7に第1認証装置20が備えられている。」

(イ)「【0027】
そして、この実施形態の安全確認装置10には、上記入出庫部3の上記車両検知センサ16よりも前方の左右位置に、入出庫部3の安全確認後に第2認証データを入力する第2認証装置21,22が備えられている。図示する左位置には左第2認証装置21が設けられ、右位置には右第2認証装置22が設けられている。この第2認証装置21,22で入力する第2認証データは、暗証番号認証、IDカード認証、IDリモコン認証、生体認証などのデータを含み、利用者を認証できるものであればよい。」

(ウ)「【0045】
[入庫制御]
次に、図2に基づいて、上記安全確認装置10による入庫制御のフローを説明する。図の左側に利用者(登録者)の行動を示し、右側に安全確認装置10における各ステップを示している。なお、この図では、入出庫部3である駐車塔2の内部を、単に「塔内」と表示し、入出庫扉外センサ15を「扉外センサ」と表示する。
(中略)
【0049】
そして、利用者が入出庫部3(駐車塔2の内部)の無人を確認し、入出庫部3内の第2認証装置21(22)で暗証番号(第2認証データ)を入力する(SA12)。これにより、制御装置8はこの暗証番号が登録者の暗証番号(登録データ)に含まれるか否かが認証される(SA13)。この「暗証番号」入力(2)による認証が、第2認証である。入力された暗証番号が登録者の暗証番号に含まれていない場合、例えば、運転盤7の画面に「有効な暗証番号ではありません。入力しなおしてください」と表示されて(SA14)、正しい暗証番号が入力されるのを待つ。入力された暗証番号が登録者の暗証番号に含まれる場合、制御装置8は「第2認証」が(全て)行われて全ての第2認証装置21,22が無効になったか否かの判断(SA15)で、「YES」となる。この時、「速やかに退出して扉を閉めてください」と表示又は放送してもよい。
(中略)
【0056】
その後、運転盤7の照合装置25にて暗証番号(照合データ)を入力する(SA20)。この「暗証番号」入力(3)が、照合データの入力である。そして、この暗証番号が、上記第2認証の暗証番号と一致するか否かの照合がなされる(SA21)。照合データと上記第2認証データとが一致しない場合、運転盤7に「塔内無人確認を行った方のみ操作することができます」と表示されて(SA22)、第2認証を行った者の暗証番号入力待ちの状態に戻る。なお、入力しなおしの回数や認証が成功するまでの時間を所定値に制限し、これを超えるとステップ(SA11)に戻るなどの制御を加えることができる。
【0057】
このように、運転盤7における「暗証番号」入力(3)の照合データは、パレット呼び操作時の「暗証番号」入力(1)の第1認証データとは照合されず、入出庫部3で無人確認をして第2認証装置21,22で行った「暗証番号」入力(2)の第2認証データと一致するか否かが照合される。
【0058】
一方、照合データと第2認証データとが一致した場合には、何も表示しないか、必要に応じて「最終確認ボタンを押してください」などの表示が行なわれ、利用者が最終確認ボタン26を押すと(SA23)、制御装置8は、最終確認ボタン26が押されたことを検知する(SA24)。ここで、運転操作のロックが解除される。ただし、後述のように最終確認ボタン26を省略する場合、(SA21)の判定が「YES」となった時点で運転操作のロックが解除される。その後、利用者が運転盤7の扉閉ボタンを押すと(SA25)、制御装置8は扉閉ボタンが押されたことを検知して(SA26)、入出庫扉5が閉じられる(SA27)。」

(エ)上記「(ア)」の「機械式駐車設備1の入出庫部3」及び「(ウ)」の「安全確認装置10による入庫制御」との記載からみて、甲8先願当初明細書等には「機械式駐車設備1の制御方法」が記載されているものと認められる。

イ.以上を総合すると、甲8先願当初明細書等には次の駐車装置の制御方法の発明及び駐車装置の発明(以下「甲8先願発明」という。)が記載されている。

(甲8先願発明)
「利用者が入出庫部内の第2認証装置で第2認証データを入力し、
その後、運転盤の照合装置にて照合データを入力し、
照合データと第2認証データとが一致した場合には、運転操作のロックが解除され、その後、利用者が運転盤の扉閉ボタンを押すと、制御装置は扉閉ボタンが押されたことを検知して、入出庫扉が閉じられる
機械式駐車設備の制御方法。」

(2)甲第2号証
ア.甲第2号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0029】
立体駐車場1は、複数の車両2を収容可能なタワー型の駐車塔3を備えている。駐車塔3の一階部分には車両2を入出庫させる入出庫口4が設けられており、その外側上部に雨よけの庇5が設けられている。入出庫口4にはスライド式の入出庫扉4aが設けられている。」

(イ)「【0043】
一方、操作盤22(操作画面35)の近傍、例えば庇5の下部に、アンテナ43(認証情報取得部)が設けられている。このアンテナ43は、契約利用者が所持している携帯認証媒体41から発信される認証情報を取得し、後述するように主制御部30(演算処理部30a)に送信して、主制御部30に操作盤22の施錠部38の開錠を行わせたり、契約利用者の認証を行わせたりするものである。」

(ウ)「【0059】
[入出庫制御の第1実施形態]
制御装置50における主制御部30の演算処理部30aは、契約利用者(操作者)が操作盤22を操作するのに先立ち、アンテナ43が取得した認証情報によって契約利用者の初回認証を自動的に行い、この初回認証が成功した時にのみ操作盤22のタッチパネル式の操作画面35を操作可能にする制御を行う。この制御の流れを、図7〜図12を参照しながら説明する。
(中略)
【0065】
すると、図12に示す閉扉操作画面に変わり、「場内の無人を確認し、扉を閉めて下さい」という案内と、閉扉ボタン57が表示される。契約利用者は、場内の無人を再度確認してから閉扉ボタン57にタッチして入出庫扉4aを閉める。これで入庫操作が完了する。なお、出庫の場合は、図8〜図12中に表示されている「入庫」の文字が「出庫」となる。」

(エ)「【0075】
ところで、制御装置50(演算処理部30a)は、契約利用者が入出庫扉4aを閉扉操作する際に、当該契約利用者の再認証を行い、その認証結果と、初回認証時における認証結果とが一致した場合にのみ入出庫扉4aの閉扉を許可する制御を実行するようになっている。
【0076】
この制御の流れを図14に示すフローチャートを参照しながら説明する。このフローチャートにおいて、各制御ステップには符号S21,S22,S23…を付してある。
【0077】
この制御のスタート後、契約利用者が図12に示す閉扉ボタン57にタッチすると(S21)、契約利用者が所持している携帯認証媒体41から発信される認証情報がアンテナ43に取得され(S22)、認証情報の取得が成功したか否かが判定される(S23)。
【0078】
認証情報の取得に失敗した場合(S23→NO)には、入出庫扉4aの閉扉が不許可になる(S24)。また、認証情報の取得に成功した場合(S23→YES)には、取得された認証情報が主制御部30に送られ、データベースに記憶されているユーザー登録情報と照合される(S25)。
【0079】
次に、取得した認証情報がデータベースに記憶されている契約利用者の認証情報であるか否かが判定される(S26)。データベースに記憶されている契約利用者の認証情報ではない場合(S26→NO)には、入出庫扉4aの閉扉が不許可になる(S24)。
【0080】
また、取得した認証情報がデータベースに記憶されている契約利用者の認証情報である場合(S26→YES)には、この認証情報が初回認証時の認証情報と一致するか否かが判定される(S27)。取得した認証情報が初回認証時の認証情報と一致しない場合(S27→NO)には、入出庫扉4aの閉扉が不許可になる(S24)。また、取得した認証情報が初回認証時の認証情報と一致する場合(S27→YES)には、入出庫扉4aの閉扉が許可され(S28)、制御が終了する。
【0081】
このように、入出庫扉4aが閉じられる前に、この閉扉操作を行っている契約利用者の再認証が行われ、この再認証の結果が初回認証の結果と一致した場合にのみ入出庫扉4aの閉扉が許可されるため、例えば初回認証を受けた契約利用者が操作盤22から離れた時(乗入室7の中に入った時等)に、認証を受けていない他の利用者が操作盤22を操作して入出庫扉4aを閉じてしまうことが規制される。
【0082】
したがって、初回の認証から最後に入出庫扉4aが閉じられるまで、終始一貫して同一の契約利用者のみが操作を許可され、これによって立体駐車場1の保安性および運用性を高めることができる。」

(オ)上記「(ア)及び(ウ)」には、「立体駐車場1」において「入出庫制御」を行うことが記載されているから、甲第2号証には「立体駐車場1の制御方法」が記載されているといえる。

(カ)上記「(ウ)」の記載から、「操作盤22の操作画面35」に「閉扉ボタン57が表示される」といえる。

イ.以上を総合すると、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。

「操作盤の近傍である庇の下部に、アンテナが設けられており、
操作盤の操作画面に閉扉ボタンが表示され、
契約利用者が閉扉ボタンにタッチすると、携帯認証媒体から発信される認証情報がアンテナに取得され、認証情報がユーザー登録情報と照合され、
取得した認証情報がデータベースに記憶されている契約利用者の認証情報である場合には、この認証情報が初回認証時の認証情報と一致するか否かが判定され、一致する場合には、入出庫扉の閉扉が許可される
立体駐車場の制御方法。」

(3)甲第6号証
ア.甲第6号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「(a)発明の技術分野
本発明は、取引カウンタ等で使用される取引窓口装置に附属する表示装置に係り、特に取引内容を表示することの可否を選択できる表示方式に関す。」
(第1ページ左下欄第13〜17行)

(イ)「本発明は、表示データを画面に表示指示する表示指示釦を備えて成り、表示ランプが点燈した後に表示指示釦が押下されることによってデータを表示することを特徴とする表示方式であり、かくすることにより目的を達成することができる。」(第2ページ右上欄第7〜11行)

(ウ)「第2図に示すように、表示装置3には画面23a,表示ランプ4及び表示指示釦5が設けられている。」(第2ページ右上欄第18〜20行)

(エ)「即ち、表示ランプ4が点燈してからでなければ、表示指示釦5を押しても画面表示せず、また表示ランプ4が点燈しても表示指示釦5を押さなければ画面表示されない。
従ってお客は表示ランプ4が点燈してから、もし表示したければ表示指示釦5を押し、表示したくなければ、表示指示釦5を押さなければよい。」(第2ページ左下欄下から3行〜右下欄第4行)

(オ)「以上説明したように本発明によれば、取引時に表示装置の画面に表示する金額表示を、表示指示釦の操作によって表示することができるので、お客の表示可否の意向に沿い、またプライバシーを守ることもできるという効果がある。」(第3ページ左上欄第1〜5行)

イ.以上を総合すると、甲第6号証には次の技術的事項(以下「甲6技術的事項」という。)が記載されている。

「取引カウンタ等で使用される取引窓口装置に附属する表示装置において、
表示データを画面に表示指示する表示指示釦を備えて成り、表示ランプが点燈した後に表示指示釦が押下されることによってデータを表示するものであり、
取引時に表示装置の画面に表示する金額表示を、表示指示釦の操作によって表示することができるので、お客の表示可否の意向に沿い、またプライバシーを守ることもできる点。」

(4)甲第7号証
ア.甲第7号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「2.7 乗降領域
搬器が停止状態であるときに,利用者が自動車等の入出庫のために機械式駐車装置との受け渡しを行う領域をいい,一般的にこの領域の一部は,機械式駐車装置が動作するときに搬送頷域又は駐車領域となる。」(第2ページ第4〜6行)

(イ)「2.27 出入口扉
入出庫で自動車等と利用者の入退出に用いられる,乗降領域と前庭との間の扉。」(第3ページ第21〜22行)

(ウ)「6.2.2 検知装置による区画
駐車・搬送領域から乗降領域を検知装置で区画する場合は,次の要件をすべて満たさなければならない。
(中略)
d) 駐車装置内で人が移動できる範囲のすべての搬器に対して,搬器と搬器及び搬器と外囲いの間に,人の検知装置を設ける。」(第8ページ第31行〜下から3行)

(エ)「8.3 操作盤
8.3.1 一般事項
a) 通常使用の操作盤は,操作に必要な最小の機器で構成し,主たる操作盤は前庭又は乗降領域と接する場所に設置しなければならない。
(中略)
8.3.2 無人確認手段
(中略)
b) 乗降領域と駐車・搬送領域を検知装置による区画(6.2.2参照)とした駐車設備では,次のいずれかの確認手段を設けなければならない。
1) どこが乗降領域になろうとも,出入口扉を閉操作する場所から死角となる乗降領域内の部分を視認するのに適切な場所(1ヶ所若しくは複数ヶ所)に,目視した範囲に人がいない確認をしたことを利用者が入力する,無人確認入力器を設ける。
(中略)
f) 無人確認入力器への入力開始から駐車設備を起動するまでの間に,侵入検知装置(8.5.1.2a)参照),扉乗越え検知装置(8.5.1.2c)参照),乗降領域を区画して人を検知する装置(6.2.2d)参照),又は乗降領域の有人検知装置(8.6.1参照)が作動した場合は,それまでの入力はすべて無効としなければならない。」(第14ページ第28行〜第15ページ第18行)

(オ)「8.4.4.3 出入口扉の操作
a) 出入口扉の閉操作は,次のいずれかの方法を用いる。
1) 操作盤からの単独動作の操作。」(第17頁第1〜3行)

(カ)「8.5.1.2 検知装置
a) 侵入検知装置
自動制御の駐車設備では,開いている出入口扉又は自動車の出入口から侵入する人を検知する,侵入検知装置を備えなければならない。なお,この検知装置は扉閉検知保護装置を兼ねるものでもよい。」(第17頁下から6〜3行)

イ.以上を総合すると、甲第7号証には次の技術的事項(以下「甲7技術的事項」という。)が記載されている。

「乗降領域と駐車・搬送領域を検知装置による区画とした駐車設備において、
目視した範囲に人がいない確認をしたことを利用者が入力する,無人確認入力器を設け、
無人確認入力器への入力開始から駐車設備を起動するまでの間に,侵入検知装置,扉乗越え検知装置,乗降領域を区画して人を検知する装置,又は乗降領域の有人検知装置が作動した場合は,それまでの入力はすべて無効としなければならない点。」

(5)甲第9号証
ア.甲第9号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0017】
【発明の実施の形態】添付の図面を参照しながら本発明の機械的駐車設備およびその遠隔操作装置の実施形態を説明する。」

(イ)「【0024】ついで、退出した車両の利用者がリモコン1によって「扉閉」入力部3のボタン操作により、利用者IDが付加された扉閉信号を受信器24に向けて発信することで、上記と同様に予め設定されている複数の利用者IDと今回発信された利用者IDとが照合される。さらには、前回スタート操作時に受け付けられた利用者IDとも照合され、全てが一致すれば扉開閉用のモータが作動して扉が閉まる。ここで、車両が退出したのではなく進入した場合には同乗者の降り残しという事態が発生する可能性があるため、センサ27との組み合わせの判定によってリモコンの扉閉操作を無効にするようにしても良い。」

イ.以上を総合すると、甲第9号証には次の技術的事項(以下「甲9技術的事項」という。)が記載されている。

「機械的駐車設備において、
退出した車両の利用者がリモコンによって「扉閉」入力部のボタン操作により、利用者IDが付加された扉閉信号を受信器に向けて発信することで、予め設定されている複数の利用者IDと今回発信された利用者IDとが照合され、さらには、前回スタート操作時に受け付けられた利用者IDとも照合され、全てが一致すれば扉開閉用のモータが作動して扉が閉まる点。」

(6)甲第10号証
ア.甲第10号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0032】
図5は、制御盤35における車両の入出庫処理のフロー図である。図5を参照し、駐車装置1の入出庫処理について説明する。
【0033】
まず、S202の待機状態において、カード読取部25でICカード91が検出されたら(S204)、駐車装置1の電源を入れ、カード読取部25からデータ記憶部93に記憶された利用者ID及びパレット番号が読み込まれる(S206)。そして、諸元データ記憶部41に記憶されたデータと読み込まれた利用者ID及びパレット番号との比較が行われ、ICカード91の正当性がチェックされる(S208)。この正当性チェックでは、例えば、利用者IDが正しいデータであるか否か、利用者に駐車装置1の操作の権限があるか否か、パレット番号が駐車装置1に存在するパレットか否かが確認される。読み込まれた利用者ID又はパレット番号が不当であると判断された場合は、ICカード91が正当なカードではなくカードの保持者に駐車装置1の操作の権限がないものとみなし、所定のエラー表示が表示部29に表示される(S212)。その後、カード読取部25にICカード91が検出されなくなったことが確認された後(S214)、処理はS202の待機状態へ戻る。
(中略)
【0035】
上記パレットが着床位置P1へ移動されたら、ゲート駆動モータ63が駆動され、ゲート21が開かれる(S222)。ここで再度、カード読取部25にICカード91が検出されないことが確認された後(S224)、操作ロック状態とされ(S228)、待機される。操作ロック状態にある間は、その旨を利用者に確認させるため、表示部29に操作ロック状態である旨を表示してもよく、警告灯27を点灯させる等の動作をしてもよい。S224においてICカード91が検出される場合は表示部29にメッセージが表示され(S226)、検出されなくなるまで待機される。操作ロック状態とは、操作盤23による利用者の操作が受け付けられなくなる状態であり、操作盤23からの入力に関わらず各パレットの移動及びゲート21の昇降が禁止された状態である。操作ロック状態は、後述のS230において再び正当なICカード91がカード読取部25で検出されることによって解除される。利用者は、上記操作ロック状態にある間に、パレットへ車両を入庫し、或いはパレットから車両を出庫する。なお、この間、周囲の者に安全確認を促すべく、警告灯27が点滅する等の表示がされるようにしてもよい。
【0036】
この後、カード読取部25にICカード91が検出された場合は(S230)、S232の処理へ進む。S232では再びICカード91から利用者IDが読み込まれ、再びカードの正当性が確認される(S232)。このカードの正当性確認では、ここで読み込まれた利用者IDが、S206において読み取られた利用者IDと同一であるか否かが確認される。両者が同一でないと判断された場合には、他の者がICカードをカード読取部25に近づけたものとみなされ、駐車装置1が使用中である旨のメッセージが表示部29へ表示されて(S234)、処理はS230へ戻る。
【0037】
S232において利用者IDが同一であると判断された場合には、利用者が車両の搬入或いは搬出を終えたものとみなされ、操作ロック状態が解除される(S235)。すなわち、操作ロック状態はS206で読み取られたICカードと同一のカードを再びカード読取部25において検出した場合に解除される。操作ロック状態が解除されたら、ゲート21を閉じるべくゲート駆動モータ63が駆動される(S236)。そして、S238においてカード読取部25にICカード91が検出され続けるか否かがチェックされると共に、カードの利用者IDがチェックされる。S238のチェックは、ゲート21が閉じ切った待機状態に復帰するまでの間、継続的に行われる。」

イ.以上を総合すると、甲第10号証には次の技術的事項(以下「甲10技術的事項」という。)が記載されている。

「駐車装置の入出庫処理において、
待機状態において、カード読取部でICカードが検出されたら、利用者IDが読み込まれ(S206)、
ゲートが開かれ、操作ロック状態とされ、待機され、
カード読取部にICカードが検出された場合は、ICカードから利用者IDが読み込まれ、ここで読み込まれた利用者IDが、S206において読み取られた利用者IDと同一であるか否かが確認され、
利用者IDが同一であると判断された場合には、操作ロック状態が解除され、ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される点。」

2.特許法第29条の2(拡大先願)について(上記「第4 1.(1)参照)
(1)本件特許発明5
ア.対比
本件特許発明5と甲8先願発明とを対比する。
(ア)甲8先願発明の「第2認証データ」及び「照合データ」は、本件特許発明5の「内部情報」及び「操作盤入力情報」にそれぞれ相当する。
また、甲8先願発明の「扉閉ボタンを押す」ことは、本件特許発明5の「閉扉指示が入力される」ことに相当する。

(イ)そうすると、本件特許発明5と甲8先願発明とは少なくとも次の点で相違する。

(相違点a)
本件特許発明5が、「閉扉指示が入力され」た後に「操作盤入力情報が入力される」のに対して、甲8先願発明は、「照合データ」(操作盤入力情報)を入力した後に「運転盤の扉閉ボタンを押す」(閉扉指示が入力される)点。

イ.判断
上記相違点aについて判断する。
上記相違点aについて、申立人は「「入出庫扉を閉じる」ときの順序として、「閉扉指示の入力」が先に行われ、その後に、「認証情報の入力」が行われるように構成することは、甲第2号証(【0077】)、甲第3号証(【0038】〜【0039】)、甲第9号証(【0024】)に記載されている通り、周知の技術である。」(令和3年3月19日提出の意見書第15ページ第9〜12行)と主張している。
しかしながら、本件特許発明5の「操作盤」が「操作」の対象となる装置であることは自明であるから、本件特許発明5においては「操作盤へ操作盤入力情報が入力される」際には「操作盤」に対して「操作」が行われるものと認められる。一方、甲2発明においては、「閉扉ボタンにタッチすると、携帯認証媒体から発信される認証情報がアンテナに取得され、認証情報がユーザー登録情報と照合され」るところ、「アンテナ」は「操作盤の近傍である庇の下部に」設けられるものであって、「操作盤」の一部を成すものではないし、「認証情報」は何ら操作を要することなく「取得」されるものである。そうすると、甲2発明は「操作盤へ操作盤入力情報が入力される」ものであるとはいえない。
甲3発明においては、「操作盤のロック解除ボタンの操作を行うと、操作ロック状態が解除され」、「操作ロック状態の解除の後、利用者が、再びICカードをカード読み取り部へ接触させると、(中略)ゲートを閉じるべくゲート駆動モータが駆動される」から、甲3発明における「ロック解除ボタン」は「操作ロック状態」を「解除」するボタンであって、閉扉指示を行うボタンではない。
甲9技術的事項は、「リモコンによって「扉閉」入力部のボタン操作により、利用者IDが付加された扉閉信号を受信器に向けて発信する」から、「「扉閉」入力部のボタン操作」(本件特許発明5の「閉扉指示」に相当)により、「利用者ID」と「扉閉信号」とを同時に「発信する」ものであって、「「扉閉」入力部のボタン操作」の後に「利用者ID」を入力するものではない。
そうすると、甲第2号証、甲第3号証及び甲第9号証によっては、「閉扉指示が入力され」た後に「操作盤入力情報が入力される」ことが、本件特許の原出願前に周知の技術事項であるとすることはできない。また、この点は、特許異議申立人が提出した他の証拠を検討しても変わらない。
してみると、本件特許発明5と甲8先願発明とは、上記相違点aにおいて相違しており、また、当該相違点aが本件特許の原出願前に周知の技術事項であるとはいえないから、甲8先願発明において当該相違点aに係る発明特定事項を備えるものとすることが、周知技術の付加であって、課題解決のための具体化手段における微差であるとすることもできない。

ウ.小括
以上のとおりであるから、本件特許発明5が甲8先願発明と同一であるということはできない。

3.特許法第29条第2項進歩性)について(上記「第4 1.(3)参照)
(1)甲2発明を主引用発明とする場合
ア.対比
本件特許発明3及び4は本件特許発明2を引用するものであるから、まず、本件特許発明2の「前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記確認情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる」との発明特定事項に着目して、本件特許発明2と甲2発明とを対比する。
甲2発明においては「契約利用者が閉扉ボタンにタッチすると、携帯認証媒体から発信される認証情報がアンテナに取得され、認証情報がユーザー登録情報と照合され」るところ、「アンテナ」は「操作盤の近傍である庇の下部に」設けられるものであって、「操作盤」の一部を成すものではない。
そうすると、本件特許発明2と甲2発明とは、少なくとも、前者が「操作盤へ操作盤入力情報が入力され」るのに対して、後者はそのようなものでない点で相違する。

イ.判断
当該相違点について検討すると、甲第2号証には、「操作盤に暗証番号を入力する作業が煩わしかった」(段落【0006】)ことを課題として、「前記機械式駐車設備の操作者が携帯し、該操作者固有の認証情報を発信する携帯認証媒体」、「前記認証情報を取得する認証情報取得部」(アンテナ)及び「前記認証情報取得部が取得した前記認証情報によって前記操作者の初回認証を自動的に行い、この初回認証が成功した時にのみ前記操作盤の操作画面を操作可能にする制御部」(以上、段落【0011】)を具備することにより当該課題を解決することが記載されているところ、仮に、甲2発明の「携帯認証媒体から発信される認証情報がアンテナに取得され」る構成に代えて「操作盤へ操作盤入力情報が入力され」る構成を採用すると、操作盤への入力が必要となって当該課題を解決することができなくなるから、甲2発明において上記相違点に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることには阻害要因がある。
そうすると、甲2発明において上記相違点に係る本件特許発明2とすることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。

ウ.小括
上記「ア.及びイ.」の点は、本件特許発明2を引用する本件特許発明3及び4においても同様である。
そうすると、本件特許発明3は、甲2発明並びに甲第5号証及び甲第6号証に記載されている事項から当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件特許発明4は、甲2発明並びに甲第5号証及び甲第7号証に記載されている事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲3発明を主引用発明とする場合
ア.本件特許発明3
(ア)対比
本件特許発明3と甲3発明とを対比すると、両者は、少なくとも、前者が「ユーザが表示制御手段に対して所定の操作をすることによって、表示部に確認情報を表示する」のに対して、後者はそのようなものでない点で相違する。

(イ)判断
当該相違点について検討する。
甲5発明の「表示装置に、各ケージが出入口に到着する度に乱数を表示」する点は、本件特許発明3の「表示部に確認情報を表示する」点に相当するが、甲5発明は「ユーザが表示制御手段に対して所定の操作をすることによって」、表示部に確認情報を表示するものではない。
甲6技術的事項は「表示指示釦が押下されることによってデータを表示する」ものであるが、「取引カウンタ等で使用される取引窓口装置に附属する表示装置」に係るものであって、「駐車装置の制御方法」に係る甲3発明や「機械式駐車装置の安全確認方法」に係る甲5発明とは技術分野が相違しているから、甲3発明や甲5発明に甲6技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
また、仮に甲3発明に甲5発明及び甲6技術的事項を適用する場合には、まず甲3発明に甲5発明を適用して「表示部に確認情報を表示する」ものとした上で、さらに甲6技術的事項を適用して当該確認情報を「ユーザが表示制御手段に対して所定の操作をすることによって」表示部に表示することとなるところ、このように甲3発明に甲5発明を適用し、重ねて甲6技術的事項を適用することは、いわゆる「容易の容易」に相当し、当業者が容易になし得たことではない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明3は、甲3発明並びに甲5発明及び甲6技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.本件特許発明4
(ア)対比
本件特許発明4と甲3発明とを対比すると、両者は、少なくとも、前者が「表示部に確認情報を表示した後、入出庫扉を閉じる前に、パレットの間に障害物があることを検知した場合に、確認情報を更新して表示する」のに対して、後者はそのようなものでない点で相違する。

(イ)判断
当該相違点について検討すると、甲5発明の「表示装置に、各ケージが出入口に到着する度に乱数を表示」する点は、本件特許発明4の「表示部に確認情報を表示」する点に相当するが、甲5発明は「入出庫扉を閉じる前に、パレットの間に障害物があることを検知した場合に、確認情報を更新して表示する」ものではない。
また、甲7技術的事項は「入力はすべて無効としなければならない」ことを開示するに止まり、「確認情報を更新して表示する」ことを開示するものではない。
そうすると、仮に甲3発明に甲5発明及び甲7技術的事項を適用しても、「確認情報を更新して表示する」ものとはならないから、上記相違点に係る本件特許発明4の発明特定事項に至ることはない。
また、甲3発明に甲5発明及び甲7技術的事項を適用する場合には、まず甲3発明に甲5発明を適用して「表示部に確認情報を表示」するものとした上で、さらに甲7技術的事項を適用することとなるところ、このように、甲3発明に甲5発明を適用し、重ねて甲7技術的事項を適用することは、いわゆる「容易の容易」に相当し、当業者が容易になし得たことではない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明4は、甲3発明並びに甲5発明及び甲7技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 むすび

以上のとおり、本件特許発明1及び7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、本件特許発明1、2及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許発明1、2及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許発明3ないし5に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件特許発明3ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部を含む駐車装置の制御方法であって、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤にユーザによって認証情報の入力がされ、
車体搬送手段を呼び出し、
前記制御部が前記開閉機構に開扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記駐車装置の入出庫扉を開き、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤に前記ユーザによって閉扉指示が入力されると、前記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し、
前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じ、前記認証情報と前記操作盤入力情報とが一致しない場合にエラー表示をする
ことを含む駐車装置の制御方法。
【請求項2】
操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部を含む駐車装置の制御方法であって、
前記駐車装置の入出庫扉が開いた状態で、前記駐車装置の内部に設けられた表示部に確認情報を表示し、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤にユーザによって閉扉指示が入力されると、前記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し、
前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記確認情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる
ことを含む駐車装置の制御方法。
【請求項3】
前記ユーザが表示制御手段に対して所定の操作をすることによって、前記表示部に確認情報を表示することを特徴とする請求項2に記載の駐車装置の制御方法。
【請求項4】
前記表示部に確認情報を表示した後、前記入出庫扉を閉じる前に、パレットの間に障害物があることを検知した場合に、前記確認情報を更新して表示することをさらに含む請求項2又は3に記載の駐車装置の制御方法。
【請求項5】
操作盤への指示の入力に応じて入出庫扉の開閉機構を制御する制御部を含む駐車装置の制御方法であって、
前記駐車装置の入出庫扉が開いた状態で、前記駐車装置の内部に設けられた内部情報入力部でユーザの入力による内部情報を受信し、
前記駐車装置の外部に設けられた操作盤に前記ユーザによって閉扉指示が入力されると、前記操作盤から閉扉を指示する信号が前記制御部に送信される一方、前記制御部が前記開閉機構への閉扉信号の送信をしないことによって、さらに前記操作盤へ操作盤入力情報が入力されることを待機し、
前記操作盤へ前記操作盤入力情報が入力された後、前記内部情報と前記操作盤入力情報とが一致する場合に、前記制御部が前記開閉機構への前記閉扉信号を送信することによって、前記開閉機構が前記入出庫扉を閉じる
ことを含む駐車装置の制御方法。
【請求項6】
前記内部情報入力部に内部情報を入力した後、前記入出庫扉を閉じる前に、パレットの間に障害物があることを検知した場合に、前記内部情報入力部に入力した内部情報とは異なる内部情報を入力することをさらに含む請求項5に記載の駐車装置の制御方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の駐車装置の制御方法によって制御する前記制御部を有することを特徴とする駐車装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-12-03 
出願番号 P2018-054232
審決分類 P 1 652・ 161- ZDA (E04H)
P 1 652・ 113- ZDA (E04H)
P 1 652・ 121- ZDA (E04H)
最終処分 08   一部取消
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 森次 顕
有家 秀郎
登録日 2020-01-07 
登録番号 6640900
権利者 株式会社ニッパツパーキングシステムズ 日本発條株式会社
発明の名称 駐車装置及び駐車装置の制御方法  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

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