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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C12M
審判 一部申し立て 2項進歩性  C12M
管理番号 1383235
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-25 
確定日 2022-01-18 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6652673号発明「反応処理容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6652673号の特許請求の範囲を令和3年6月9日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔10ないし17及び23〕について訂正することを認める。 特許第6652673号の請求項10ないし15、17及び23に係る特許を維持する。 特許第6652673号の請求項16に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6652673号の請求項10ないし17及び23に係る特許についての出願は、令和1年 6月 7日の出願であって、令和 2年 1月27日にその特許権の設定登録がされ、同年 2月26日にその特許掲載公報が発行され、その後、令和 2年 8月25日に末吉 直子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。

令和 2年10月29日付け 取消理由通知書
令和 2年12月25日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
令和 3年 2月 4日付け 訂正拒絶理由通知書
令和 3年 3月 4日 手続補正書、意見書の提出(特許権者)
令和 3年 4月 7日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和 3年 6月 9日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
令和 3年 9月30日 意見書の提出(特許異議申立人)

第2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
1 訂正の内容
令和 3年 6月 9日になされた特許請求の範囲についての訂正(以下、「本件訂正」という。)は、一群の請求項を構成する当該訂正前の請求項10〜17、23を対象とするものであって、その内容は、次のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項10の「基板と、前記基板の主面に形成された溝状の流路と、を備える反応処理容器であって、
それぞれ所定の温度に維持される複数の反応領域が前記基板に設定され、反応を起こさせるために前記複数の反応領域間を試料が繰り返し往復移動し、
前記流路は、前記複数の反応領域のそれぞれに含まれる蛇行状流路と、前記複数の反応領域を接続する接続流路と、前記流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける、前記接続流路に含まれる検出流路と、を含み、
前記検出流路の断面積は、前記蛇行状流路の断面積よりも大きいことを特徴とする反応処理容器。」との記載を、「基板と、前記基板の主面に形成された溝状の流路と、を備える反応処理容器であって、
それぞれ所定の温度に維持される複数の反応領域が前記基板に設定され、反応を起こさせるために前記複数の反応領域間を試料が繰り返し往復移動し、
前記流路は、前記複数の反応領域のそれぞれに含まれる蛇行状流路と、前記複数の反応領域を接続する接続流路と、前記流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける、前記接続流路に含まれる検出流路と、を含み、
前記検出流路の断面積は、前記蛇行状流路の断面積よりも大きく、
前記検出流路は、開口部と、底面と、前記底面から前記開口部に向かって拡大するテーパ状の側面と、を備え、
前記検出流路における前記底面は、前記基板の主面と平行な平面に形成され、
前記検出流路における前記底面の幅が0.55mm〜1.2mmであり、
前記検出流路は、前記接続流路に沿った方向に前記底面の幅を越えた所定距離を有することを特徴とする反応処理容器。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項14の「前記蛇行状流路および前記検出流路は、開口部と、底面と、前記底面から前記開口部に向かって拡大するテーパ状の側面と、を備える」との記載を「前記蛇行状流路は、開口部と、底面と、前記底面から前記開口部に向かって拡大するテーパ状の側面と、を備える」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項15の「0.15mm〜1.2mmの底面幅」との記載を「0.55mm〜1.2mmの底面幅」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項16を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項17の「前記底面と前記側面の接続部は、角張った形状に形成されることを特徴とする請求項16に記載の反応処理容器」との記載を「前記検出流路における前記底面と前記側面の接続部は、角張った形状に形成されることを特徴とする請求項14又は15に記載の反応処理容器」と訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項23の「前記複数の反応領域は、比較的高温に維持される高温領域と、前記高温領域よりも低温に維持される中温領域とを含むことを特徴とする請求項1から22のいずれかに記載の反応処理容器」との記載を「前記複数の反応領域は、比較的高温に維持される高温領域と、前記高温領域よりも低温に維持される中温領域とを含むことを特徴とする請求項1から15及び17から22のいずれかに記載の反応処理容器。」と訂正する。

2 訂正請求の適否
(1)訂正事項1
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項10に記載されていた「検出流路」を、訂正前の請求項14において特定されていた「検出流路は、開口部と、底面と、前記底面から前記開口部に向かって拡大するテーパ状の側面と、を備える」との事項に基づいて特定し、また、訂正前の請求項16において特定されていた「検出流路における前記底面は、前記基板の主面と平行な平面に形成される」との事項に基づいて特定し、さらに、本件特許明細書の段落【0080】及び図面の図7に記載されていると認められる、検出流路の底面の幅について下限値が0.55mm、上限値が1.2mmである点、及び検出流路が接続流路に沿った方向に底面の幅を越えた所定距離を有する点に基づいて特定した訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項14に記載されていた「検出流路は、開口部と、底面と、前記底面から前記開口部に向かって拡大するテーパ状の側面と、を備える」との特定事項を削除した訂正である。
訂正事項2は、訂正事項1に係る請求項10についての訂正でなされた当該特定事項を訂正前の請求項14が含んでおり、訂正後の請求項10を引用する請求項14が当該特定事項を有することで発明が不明瞭となることを回避するための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、当該特定事項を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3
訂正事項3による訂正は、本件特許明細書の段落【0080】に記載されている、検出流路の底面幅の下限値が0.55mmである点に基づいて、底面幅の数値範囲をさらに限定した訂正である。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4
訂正事項4による訂正は、特許請求の範囲の請求項16を削除するものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5
訂正事項5による訂正は、請求項17の「前記底面と前記側面の接続部」を「前記検出流路における」「前記底面と前記側面の接続部」に限定するものと、訂正事項4による訂正で請求項16が削除されたことに伴い、従属先を「請求項16」を「請求項14又は15」とするものである。
前者の訂正は、請求項の構成を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、後者の訂正は、従属先の請求項が一部削除されたことによって発明が不明瞭となることを回避するためものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項6
訂正事項6による訂正は、特許請求の範囲の請求項23において、訂正事項4による訂正で請求項16が削除されたことに伴い、従属先の請求項から請求項16を削除するものである。
よって、訂正事項6は、従属先の請求項が一部削除されたことによって発明が不明瞭となることを回避するためものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和 3年 9月30日付け意見書p.2のア〜p.3第6行において、訂正事項1による訂正は、訂正後の請求項10において、訂正前の請求項14の一部を抜き出したものであり、訂正後の請求項10に係る発明は、蛇行状流路が底面から開口部に向かって拡大するテーパ状の側面を備えていない構成も含んでいると認められるが、本件明細書等には、検出流路が底面から開口部に向かって拡大するテーパ状の側面を備えており、かつ、蛇行状流路が底面から開口部に向かって拡大するテーパ状の側面を備えていない構成は一切記載されていないこと、さらに、明細書の【0031】、【0081】に、射出成型法により基板を工業的に有利に生産するために、基板の主面に対して一定の角度を側面が備える「抜きテーパ」が行われることが記載されているところ、検出流路だけがテーパ状の側面を有していたとしても、離型性を向上させることができないので、射出成型法による基板の生産性を向上させることができないことから、検出流路がテーパ状の側面を備えており、かつ、蛇行状流路がテーパ状の側面を備えていない構成は、本件明細書等の記載から自明ではなく、本件明細書等の全ての記載を総合しても当該構成を導くことはできない、と主張している。
確かに訂正後の請求項10に係る発明は、蛇行状流路が底面から開口部に向かって拡大するテーパ状の側面を備えていない構成も含んでいるとも認められる。この点、本件特許の発明の詳細な説明には、「蛇行状流路53のテーパ角Trは、0°〜45°であってよく、好ましくは10°〜30°であってよく、さらに好ましくは15°〜25°であってよい。・・・また、テーパ角Trが0°もしくはその近傍になるように小さくした場合は、蛇行状流路53の断面形状は、略長方形状に近いものになる点に注意する。」(【0079】)と記載されているように、「蛇行状流路」の断面形状が略長方形状となるテーパ角が0°といった場合も記載されているため、本件明細書等には、検出流路が底面から開口部に向かって拡大するテーパ状の側面を備えており、かつ、蛇行状流路が底面から開口部に向かって拡大するテーパ状の側面を備えていない構成は一切記載されていないとの主張は採用できない。
また、検出流路のみについてテーパ状の側面を有している構成であっても、検出流路と蛇行状流路ともにテーパ状の側面を有していない構成に比べると離型性は向上するものと認められるから、射出成型法による基板の生産性を向上させることができないという主張も採用できない。
よって、上記2(1)でも記載したように、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

4 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔10〜17、23〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記「第2」のとおり本件訂正は認められるため、訂正後の本件特許の請求項10ないし17及び23に係る発明(以下、まとめて「本件特許発明」、あるいは、それぞれ「本件特許発明10」等ということがある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項10ないし17及び23に記載された次の事項により特定されるものである。なお、下線部は訂正箇所を示す。

「【請求項10】
基板と、前記基板の主面に形成された溝状の流路と、を備える反応処理容器であって、
それぞれ所定の温度に維持される複数の反応領域が前記基板に設定され、反応を起こさせるために前記複数の反応領域間を試料が繰り返し往復移動し、
前記流路は、前記複数の反応領域のそれぞれに含まれる蛇行状流路と、前記複数の反応領域を接続する接続流路と、前記流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける、前記接続流路に含まれる検出流路と、を含み、
前記検出流路の断面積は、前記蛇行状流路の断面積よりも大きく、
前記検出流路は、開口部と、底面と、前記底面から前記開口部に向かって拡大するテーパ状の側面と、を備え、
前記検出流路における前記底面は、前記基板の主面と平行な平面に形成され、
前記検出流路における前記底面の幅が0.55mm〜1.2mmであり、
前記検出流路は、前記接続流路に沿った方向に前記底面の幅を越えた所定距離を有することを特徴とする反応処理容器。

【請求項11】
前記蛇行状流路の断面積をSrとし、前記検出流路の断面積をSdとしたとき、断面積比Sd/Srは、1<Sd/Sr≦1.8の範囲内であることを特徴とする請求項10に記載の反応処理容器。

【請求項12】
前記断面積比Sd/Srは、1.02≦Sd/Sr≦1.5の範囲内であることを特徴とする請求項11に記載の反応処理容器。

【請求項13】
前記断面積比Sd/Srは、1.02≦Sd/Sr≦1.2の範囲内であることを特徴とする請求項11に記載の反応処理容器。

【請求項14】
前記蛇行状流路は、開口部と、底面と、前記底面から前記開口部に向かって拡大するテーパ状の側面と、を備えることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の反応処理容器。

【請求項15】
前記蛇行状流路は、0.55mm〜0.95mmの開口幅、0mm〜0.95mmの底面幅、0.5mm〜0.9mmの深さ、および0°〜45°のテーパ角を有し、前記検出流路は、0.7mm〜1.2mmの開口幅、0.55mm〜1.2mmの底面幅、0.5mm〜1.2mmの深さ、および0°〜45°のテーパ角を有することを特徴とする請求項14に記載の反応処理容器。

【請求項16】
(削除)

【請求項17】
前記検出流路における前記底面と前記側面の接続部は、角張った形状に形成されることを特徴とする請求項14又は15に記載の反応処理容器。

【請求項23】
前記複数の反応領域は、比較的高温に維持される高温領域と、前記高温領域よりも低温に維持される中温領域とを含むことを特徴とする請求項1から15及び17から22のいずれかに記載の反応処理容器。」

第4 取消理由通知(決定の予告)の概要について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項10〜17、23に係る特許に対して、令和3年4月7日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。

(1)取消理由1
訂正前の本件特許の請求項10〜17、23に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

<証拠>
甲第1号証:国際公開第2016/006612号
甲第2号証:国際公開第2005/121750号
甲第5号証:国際公開第2018/235766号

(2)取消理由2
訂正前の本件特許の請求項10〜17、23に係る発明は、「光学ヘッドの組み付けの作業性が低下し、部品コストが高くなること」という本件特許発明の課題を解決できないものも含んでいるため、本件特許の特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

第5 当審の判断
訂正前の本件特許発明は、第2の1で記載したように訂正されたところ、当審は、訂正後の本件特許発明10〜15、17、23に係る特許は、第4で示した取消理由1、2によって取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 取消理由1について
(1)本件特許発明10について
ア 証拠
甲第1号証:国際公開第2016/006612号
甲第2号証:国際公開第2005/121750号
甲第5号証:国際公開第2018/235766号(以下、各甲号証を「甲1」等ともいう。)

イ 甲号証に記載された事項
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、以下の記載がある。(下線は当審による。以下同様。)

(1−1)
「[0019] 反応の効率化を達成しかつ小型な増幅装置を実現するため、本発明は、2個の温度帯を平面上に配置し、流路をそれぞれの温度帯に近接するように接触させ、当該流路の両端はブロアもしくはファン等の停止時には大気圧開放される送液用機構によりプラグ状の試料溶液が当該流路内で各温度帯上の正確な位置で往復運動させることによりサーマルサイクリングし、その際、PCR溶液の通過の確認とサーマルサイクル毎の蛍光強度の計測を同時に行えることを特徴とするレシプロカルフロー型の高速リアルタイム核酸増幅装置を提供する。さらに、他の例示的な実施形態においては、該核酸増幅方法には、RNAを逆転写によってcDNAに変換し、そのcDNAに対してPCR法を行うことを含む。
[0020] すなわち本発明は、以下の核酸増幅装置、核酸増幅方法及びチップを提供するものである。
(1) 変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯を形成できるヒーター、前記2つの温度帯間の試料溶液の移動を検出可能な蛍光検出器、前記2つの温度帯間の試料溶液の移動を可能にし、かつ、送液停止時には大気圧開放される1対の送液用機構、核酸増幅用チップを載置可能な基板、試料溶液の移動に関する蛍光検出器からの電気信号が送られて各送液用機構の駆動を制御する制御機構を備え、サーマルサイクル毎の蛍光強度の計測を行うことでリアルタイムPCRを行うことを特徴とするレシプロカルフロー型の核酸増幅装置。
(2) (1)の核酸増幅装置における変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯に各々対応する曲線流路、前記曲線流路をつなぐ直線状の中間流路、流路の両端部に(1)の核酸増幅装置における送液用機構に接続可能な接続部を備えた微小流路を少なくとも1つ有する核酸増幅用チップ。…」

(1−2)
「[0030] 高速リアルタイムPCRに使用する装置構成は、図1に示す通り、PCRチップを載置するための基板(図示せず)、PCRチップ用温調部、送液用機構としての送液用マイクロブロア、蛍光検出器、制御機構としての制御用コンピュータ、電源用小型バッテリーから成り立っている。
[0031] PCRチップ用温調部は、カートリッジヒーター2本を、上記PCRチップの蛇行流路部のシール面側と隙間なく接触する様に、10mmの間隔をおいて平行に配置させた構成としており、2本のヒーターの温度制御のため、各ヒーターにはK型熱電対を接合させている。
[0032] カートリッジヒーター1は、PCRに必要なDNA変性反応に必要な温度に制御用コンピュータにより制御されているが、当該温度(変性温度帯)は90〜100℃が望ましく特に95℃が好適である。カートリッジヒーター2はDNAのアニーリング反応及び伸長反応のために必要な温度(伸長・アニーリング温度帯)に制御用コンピュータに制御されているが、当該温度は40〜75℃が望ましく、特に55〜65℃が好適である。なおDNAの変性反応のための温度帯、アニーリング反応及び伸長反応のための温度帯は、一定の温度に制御することが好ましく、例えばPID(比例−積分−微分)制御により定温保持される。
[0033] 送液するPCR溶液は、5〜50 μL、好適には5〜25 μLの範囲内で必要量をマイクロピペッター等により計量し、当該PCR試料溶液を内包した状態のまま、マイクロピペットのディスポチップを微小流路の一端に装着する。マイクロピペット本体をはずし、代わりに送液用マイクロブロアに接続された空圧用チューブを接続し送風により加圧することで、PCRチップの微小流路中へ試料溶液を注入されることもできる。
[0034] 当該PCR試料溶液は、PCRに必要な成分と合わせて、リアルタイムPCRが可能なように、あらかじめTaqManプローブやCycleaveプローブ、Eプローブ(登録商標)と呼ばれる蛍光プローブや、SYBR GREEN等の蛍光色素を混合してある。これら蛍光プローブについては、リアルタイムPCR用試薬キットや外注合成品を使用することが出来る。
[0035] 蛍光検出器は、各微小流路の中心に位置する直線流路上の1点を検出点として蛍光強度を計測するように配置されており、加圧により一方の蛇行流路部から送液された当該PCR溶液が、検出点を通過し終えた時点で、送液用マイクロブロアを停止させ、当該PCR溶液を、他方の蛇行流路部内に一定時間保持されることができる。
[0036] 制御用コンピュータは同時に、各微小流路に接続された2個ずつのマイクロブロアのプログラム制御が可能であり、各微小流路中心の上記検出点の蛍光強度を連続モニタリングしながら、当該PCR試料溶液が各ヒーター上の蛇行流路部へ設定した時間ずつ交互に移動する様、当該マイクロブロアについて交互にスイッチングしサーマルサイクリングを行う。当該制御用コンピュータは、さらに、リアルタイムPCR法において、サーマルサイクリングにより標的DNAが増幅するにつれ増加するサイクル毎の蛍光強度変化も同時に記録し、蛍光強度がある閾値を超えるサイクル数(Ct値)を算出することで、初期の標的DNA量を定量することが可能である。」

(1−3)
「[0037] 高速リアルタイムPCRに使用するPCRチップ(核酸増幅用チップ)は、射出成形により4本の微小流路を並列に形成した、COP製樹脂基板と、ポリオレフィン製透明シールを接合した構造である。
[0038] 各微小流路は図2に示すような幅及び深さ700 μmで2箇所蛇行して折り返す構造を有しており、各蛇行流路部は微小流路の中心の直線流路部を挟むように、4回ずつ折り返し、各蛇行流路部のみで少なくとも25 μLの溶液量を収容可能としている。
[0039] 図2において点線で囲まれた領域(変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯)は、リアルタイムPCRにおけるサーマルサイクルのため、それぞれヒーターにより加熱される。
[0040] 当該流路の両端は、樹脂基板を貫通する小孔(送液用機構の接続部)と個々に連結しており、樹脂基板の微小流路側全面をポリオレフィン製透明シールにより接合した後も、当該小孔から微小流路毎に反応溶液および空気による導通が可能としている。
・・・
[0043] 流路は、熱伝導性が比較的高くPCRに必要な温度範囲において安定で、電解質溶液や有機溶媒に侵食されにくく、かつ核酸やタンパク質を吸着しない材質であることが好ましい。材質として、ガラス、石英、シリコン、各種プラスチックが例示される。複数の温度領域と接触する流路の形状については、直線流路以外にも、ループ形状を有する蛇行流路や渦巻き状など曲線流路でもよい。また、流路の幅もしくは深さは一定でなくても良く、部分的に幅もしくは深さが変化しても良い。」

(1−4)
「[0044] 異なる温度領域への流路内の試料溶液の通過の検出と、サーマルサイクル毎の蛍光強度の計測は、同一の蛍光検出器が兼ねることが望ましいが、異なる複数の蛍光検出器を含んでもいても良い。複数の温度領域の間において試料溶液の通過を検出する方法は、蛍光検出以外にも比色や光吸収などの光学的手法や、静電容量の変化や電気化学反応などを含む電気的手法であってもよい。流路と接触する2個以上の温度領域は、流路の外部から接触してもよく、もしくは流路の内部に内蔵されても良い。
[0045] 図2に示す微小流路では、変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯に対応する2つの蛇行流路を直線状の中間流路で連結され、中間流路において試料溶液の通過と蛍光を検出する。図2では、2つの小孔(送液用機構の接続部)をつなぐ直線上に中間流路が配置され、この中間流路で試料溶液の通過と蛍光を検出するので、PCRチップ(核酸増幅用チップ)の上下を反転させて(180度回転して)基板に配置しても蛍光検出器での検出が可能である。
[0046] PCRチップは使用前にこれら2本のヒーターのそれぞれに、例えば、図2に示すように点線で囲まれた各蛇行流路部のシール面が密着する様に固定され、使用後には取り外し使い捨て用途に合わせ交換することを可能にしてもよい。送液用マイクロブロアは、上記PCRチップ上の微小流路1本当たり2個を利用し、当該微小流路の両端に接続した使い捨てチップ毎に1個ずつ空圧用チューブを介して接続させ、相互に作動させることで、双方向の送液を実現している。また、微小流路の本数にあわせて、送液用マイクロブロアの個数を増加して、複数の異なる試料を同時にサーマサイクリングする、例えばマルチプレックスPCRを行うことも可能である。」

(1−5)「

」(図2)

(イ)甲2に記載された事項
甲2には以下の記載がある。

(2−1)
「[0002] 微量分子検出法の一つである蛍光相関分光測定法には、蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy:以降単にFCSと記す)や蛍光相互相関分光法(Fluorescence Cross Correlation Spectroscopy:以降単にFCCSと記す)があり、FCSを用いた装置として、測定対象となる溶液をキャピラリーフロー管に流し、このキャピラリーフロー管を流れるサンプル液に励起光を合焦して極微少(ピンポイント)観察領域を設定し、蛍光分子の蛍光発光を検出することで、極微少観察領域内をブラウン運動している分子情報を得るものが知られている(例えば、特許文献1参照)。

[0003] ここで、測定対象となる溶液が例えば貴重で量の少ない微量サンプル液の場合にあっては、微量サンプル液を無駄にしないように、上記キャピラリーフロー管を極細にする必要があるが、このように極細とすると、励起光の焦点が管内壁に接近することから管内壁の影響を受けてブラウン運動が束縛されたり、管内壁による散乱光や反射光の影響によって、検出精度が低下してしまう。特に、励起光の光路に管壁の縁部(角部)が入ってしまうと、励起光が散乱、予期せぬ屈折を生じ、検出精度が一層低下してしまう。」

(2−2)
「[0005] 本発明によるフローセルは、微量サンプル液に励起光を合焦し蛍光発光を検出する蛍光相関分光測定法に採用され、複数枚の平板を重ねて構成されるセル本体を具備し、セル本体内には、励起光の焦点が設定される検出領域と、導入口から導入される微量サンプル液を検出領域に導入する導入流路及び検出領域から微量サンプル液を排出口へ排出する排出流路と、が配設され、検出領域は、流路を拡大して成ると共に、励起光の光軸を囲繞する周壁が、励起光の光路に入らない構成とされていることを特徴としている。」

(2−3)
「[0006] このようなフローセルによれば、微量サンプル液に対する励起光の焦点が設定される検出領域が、微量サンプル液の流路に対して拡大されるため、換言すれば、検出領域を除く流路が当該検出領域に対して縮小されるため、微量サンプル液が無駄無く用いられる。また、このように検出領域が流路に対して拡大されるため、検出領域と流路とを略同一の極細とする場合に比して、検出領域の内壁によるブラウン運動への影響や管内壁による散乱光や反射光の影響が低減される。また、励起光の光路に入らないように、検出領域の周壁が構成されているため、励起光の散乱、予期せぬ屈折が防止される。また、同一では無い微量サンプル液の検出の度に、導入口及び排出口を通して流路及び検出領域を洗浄すれば、複数のサンプルを収容した例えばマルチシートを用いシート替えごとに光軸調整等を行い検出していく場合に比して、スループット(単位時間当りの処理数)が向上される」

(2−4)
「[0024] このようなFCS装置1によれば、分注器のピペット(不図示)から微量サンプル液の液滴が導入口35に滴下され、排出口36に接続される吸引ポンプ(不図示)が駆動されることで、微量サンプル液は、導入流路37を通して検出領域34に至る。そして、当該微量サンプル液がポンプ停止により検出領域34に停止している間、又は、検出領域34を移動している間に、検出領域34に励起光Rが合焦して蛍光が検出され、検出が終了すると、検出領域34の微量サンプル液は、排出流路38、排出口36を通してフローセル10の外部へ排出される。なお、微量サンプル液の検出ボリュームの大きさは0.2μm〜20μmが好ましい。
[0025] この検出にあっては、検出領域34が微量サンプル液の流路37,38に対して拡大されているため、言い換えれば、検出領域34を除く流路37,38が当該検出領域34に対して縮小されているため、微量サンプル液が無駄無く用いられる。このため、微量サンプル液が効率良く検出に供される。
[0026] また、このように検出領域34が流路37,38に対して拡大されているため、検出領域34と流路37,38とを略同一の極細とする場合に比して、検出領域34の内壁(底壁34d、周壁34e及び上壁34f)によるブラウン運動への影響及び同内壁による散乱光や反射光の影響が低減されると共に、励起光Rの光路に入らないように、検出領域34の周壁34eが構成されているため、励起光Rの散乱、予期せぬ屈折が防止されている。このため、FCSの検出精度が向上されている。」

(2−5)


」(図2)

(ウ)甲5に記載された事項
甲5には以下の記載がある。

(5−1)
「[0001] 本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)に使用される反応処理装置に関する。」

(5−2)
「[0015] 図3に反応処理容器10の説明のための概念的な断面図を示す。反応処理容器10は、下面14aに溝状の流路12が形成された樹脂性の基板14と、基板14の下面14a上に貼られた流路12を封止するための流路封止フィルム16と、同じく基板14の下面14aに貼られた第1空気連通口24および第2空気連通口26を封止するための第1封止フィルム18と、基板14の上面14b上に貼られた第1試料導入口45および第2試料導入口46を封止するための第2封止フィルム20とから成る。図3は、これらが基板14に対してどのように配置されているかを説明した図である。
[0016] 基板14は、温度変化に対して安定で、使用される試料溶液に対して侵されにくい材質から形成されることが好ましい。さらに、基板14は、成形性がよく、透明性やバリア性が良好で、且つ、低い自家蛍光性を有する材質から形成されることが好ましい。このような材質としては、ガラス、シリコン(Si)等の無機材料をはじめ、アクリル、ポリプロピレン、シリコーンなどの樹脂、中でもシクロオレフィンポリマー樹脂(COP)が好適である。基板14の寸法の一例は、長辺76mm、短辺26mm、厚み3mmである。
[0017] 基板14の下面14aには溝状の流路12が形成されている。反応処理容器10において、流路12の大部分は基板14の下面14aに露出した溝状に形成されている。金型等を用いた射出成形により容易に成形できるようにするためである。この溝を封止して流路として活用するために、基板14の下面14a上に流路封止フィルム16が貼られる。溝の断面形状は特に限定されるものではなく矩形状やU字形状(丸形状)でもよい。また、成形の際の離型性をよくするために下面14aから深さ方向にテーパー状に狭まる形状を備えていてもよく、例えば台形状であってもよい。流路12の寸法の一例は、最大で幅0.7mm、深さ0.7mmである。」

(5−3)「

」(図2)

(5−4)「

」(図3)

ウ 甲1に記載された発明
摘記(1−3)から、甲1には、幅及び深さ700μmで2箇所蛇行して折り返す構造を有する微小流路を並列に形成したCOP製樹脂基板を有するPCRチップが開示されている。
摘記(1−4)及び(1−5)から、甲1には、上記微小流路では、変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯に対応する2つの蛇行流路を直線状の中間流路で連結され、中間流路において試料溶液の通過と蛍光を検出することが開示されている。そして、摘記(1−2)には当該試料溶液には、蛍光プローブ又は蛍光色素が含まれていることが開示されている。
加えて、摘記(1−2)から、甲1には、PCR試料溶液が各ヒーター上の蛇行流路部へ設定した時間ずつ交互に移動すること、カートリッジヒーターが変性温度帯及び伸長・アニーリング温度帯に設置されていることが開示されている。
以上から、甲1には、以下の発明が記載されている(以下、「甲1発明」という。)。
「COP製樹脂基板と、COP製樹脂基板に形成された微小流路と、を備えるPCRチップであって、
変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯が前記基板に設定され、変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯間を試料溶液が交互に移動し、
前記微小流路は、変性温度帯及び伸長・アニーリング温度帯のそれぞれに含まれる蛇行流路部と、2つの蛇行流路部を連結する中間流路を含み、中間流路において前記流路内を流れる蛍光プローブ又は蛍光色素を含む試料溶液の蛍光を検出するもの、
であることを特徴とするPCRチップ。」

エ 対比
甲1発明における「COP製樹脂基板」は本件特許発明10における「基板」に相当する。
甲1発明における「COP製樹脂基板に形成された微小流路」は、当該微小流路が射出成形により形成されていることから、本件特許発明10における「基板の主面に形成された溝状の流路」に相当する。
甲1発明における「PCRチップ」は、本件特許明細書の段落【0001】の記載からみて本件特許発明10における「反応処理容器」に相当する。 甲1発明において、変性温度帯ではPCRに必要なDNA変性反応を起こし、伸長・アニーリング温度帯ではDNAのアニーリング反応及び伸長反応を起こしているから、甲1発明における「変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯」は、本件特許発明10における「それぞれ所定の温度に維持される複数の反応領域」に相当する。
甲1発明において、変性温度帯ではPCRに必要なDNA変性反応を起こし、伸長・アニーリング温度帯ではDNAのアニーリング反応及び伸長反応を起こしているから、甲1発明における「変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯間を試料溶液が交互に移動」は、本件特許発明10における「反応を起こさせるために前記複数の反応領域間を試料が繰り返し往復移動」に相当する。
甲1発明における「蛇行流路部」及び「中間流路」は、それぞれ、本件特許発明10における「蛇行状流路」及び「接続流路」に相当する。
甲1発明における「中間流路において前記流路内を流れる試料溶液の蛍光を検出する」部分は、試料溶液が蛍光プローブ又は蛍光色素を含み、蛍光を検出しており、励起光の照射を受けていることは明らかであるから、本件特許発明10における「前記流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける、前記接続流路に含まれる検出流路」に相当する。
以上から、本件特許発明10と甲1発明とは、
「基板と、前記基板の主面に形成された溝状の流路と、を備える反応処理容器であって、
それぞれ所定の温度に維持される複数の反応領域が前記基板に設定され、反応を起こさせるために前記複数の反応領域間を試料が繰り返し往復移動し、
前記流路は、前記複数の反応領域のそれぞれに含まれる蛇行状流路と、前記複数の反応領域を接続する接続流路と、前記流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける、前記接続流路に含まれる検出流路と、を含むこと
を特徴とする反応処理容器。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明10では、検出流路の断面積は、蛇行状流路の断面積よりも大きいのに対して、甲1発明では、検出流路の断面積と蛇行状流路の断面積との大小関係が明確でない点。

(相違点2)
本件特許発明10では、検出流路は、開口部と底面と底面から開口部に向かって拡大するテーパ状の側面を備えるが、甲1では、検出流路の形状が明確でない点

(相違点3)
本件特許発明10では、検出流路の底面は、基板の主面と平行な平面に形成されるのに対して、甲1では、検出流路の形状が明確でない点

(相違点4)
本件特許発明10では、検出流路における底面の幅が0.55〜1.2mmであるが、甲1では、検出流路の底面の幅が明確でない点

(相違点5)
本件特許発明10では、検出流路は、接続流路に沿った方向に、底面の幅を超えた所定距離を有するが、甲1では、検出流路の接続流路に沿った方向における長さが明確でない点

オ 判断
相違点1について検討する。
摘記(1−3)からみて、甲1には、流路の幅もしくは深さは一定でなくても良く、部分的に幅もしくは深さが変化しても良いことが記載されている。
一方、FCSに関する発明ではあるが、甲2には、測定対象となる溶液を管に流し、管を流れる微量のサンプル液に励起光を照射して蛍光分子の蛍光発光を検出する際に、サンプル液が微量である場合には、微量サンプル液を無駄にしないように管を極細にする結果、管内壁による散乱光や反射光の影響によって、検出精度が低下してしまうという課題が記載されるとともに、その課題を解決するために、「検出領域34が微量サンプル液の流路37,38に対して拡大されている」という構成を採用したことや、これによって、微量サンプル液が効率良く検出に供され、また、流路内壁による散乱光や反射光の影響が低減されることが記載されている。
甲1発明においても、微量サンプルを流路に流し、当該流路中において蛍光を検出している点で、甲2に記載された発明と機能が共通しており、甲2において指摘される課題と同様の課題を有しているとも認められる。
しかしながら、本件特許発明10の「蛇行状流路」、「検出流路」にそれぞれ相当する、「蛇行流路部」、「中間流路において前記流路内を流れる試料溶液の蛍光を検出する」部分について、甲1には、これらの関係において断面積をどのようにするかについて何らの記載も示唆もなされていない。
そうすると、甲1に接した当業者には、甲1発明において、「蛇行流路部」、「中間流路において前記流路内を流れる試料溶液の蛍光を検出する」部分の関係に着目し、「中間流路において前記流路内を流れる試料溶液の蛍光を検出する」部分の断面積を「蛇行流路部」の断面積よりも大きいものとする動機付けが存在しないものと認められる。
加えて、甲2はFCSに関するものであり、摘記(2−5)の図2からも把握されるように、セル本体30は上板31、中間板33、下板32の3枚から構成されるものであって、その形状はクランク形状のものとなっており、微量サンプル液は、導入口35から導入流路37を経て、検出領域34の下部から検出領域34に到達し、検出領域34の上部から排出経路38を経て排出口36から排出されるという、一方通行のものであるから、本件特許発明10の構成と大きく異なるものということができる。
してみると、仮に甲1発明に甲2に記載された事項を採用し得たとしても、甲1発明において、複数枚の板状のような構造により、検出流路の両側にある蛇行状流路の位置が異なる場所に構成され、検出流路の下部から検出流路に接続され、検出流路の上部からもう一方の蛇行状流路に一方通行的に接続されるという構成が構築され得るものであり、そのような構成は、本件特許発明のマイクロチップの基本構造を大きく変更するものであって、当業者といえども本件特許発明10と同等の構成を容易に想到し得たとは認められない。また、甲1発明に甲2に記載された事項を採用した場合の上記構造は、試料が横方向のみならず高さの異なる縦方向にも流れることになるため、本件特許発明の試料が繰り返し往復することによって反応が起きるという機能、効果が奏されないか、相当程度低減するものであるから、甲1発明に甲2に記載された事項を採用することに阻害要因があるというべきである。
なお、甲5は基板の流路に関してテーパ状のものとしてもよいことが記載されているのみであり、甲5の記載を考慮したとしても上記結論は左右されない。
したがって、相違点1に係る構成は、甲1発明、及び、甲2、5に記載された事項から当業者であったとしても容易に想到し得ないものであると認められる。
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲1発明、及び、甲2、5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

カ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和3年9月30日付け意見書p.4のb(a)において、相違点1について、決定の予告の「キ 判断」に記載された理由と同じ理由により、当業者であれば容易に想到し得たと主張しているが、上記のとおりであるから、当該主張は採用できない。

(2)本件特許発明11〜15、17、23について
本件特許発明11〜15、17、23はいずれも本件特許発明10を引用するものであるから、上記と同じ理由により、甲1発明、及び、甲2、5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明10〜15、17、23は、取消理由1により取り消されるべきものでない。

2 取消理由2について
(1)本件特許発明10〜15、17、23について
本件特許発明10〜15、17、23が解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0073】に「反応処理装置100は、PCRの間に反応処理容器の流路内を移動中の試料に励起光を照射し、試料から発せられる蛍光を計測するために、蛍光検出器140を備える。蛍光検出器140においては、光学ヘッド142が励起光の試料への指向性照射と試料から発せられる蛍光の集光の機能を担う。光学ヘッド142の集光スポット径は、通常0.15mm〜0.45mm程度であり、非常に小さい。そのため、光学ヘッド142を反応処理装置100に配置および固定する際に、非常に高い精度が求められる。その結果、組み付けの作業性が低下するとともに、部品コストが高くなるおそれがある。そこで、第2の実施形態では、このような課題を解決できる反応処理容器を提供する。」と記載されるように、「光学ヘッドの組み付けの作業性が低下し、部品コストが高くなること」である。
そして、本件特許明細書の段落【0077】によれば、「検出流路61の断面積Sdを蛇行状流路53の断面積Srよりも大きくすることによって、反応処理装置100に光学ヘッド142を組み付ける際のトレランスが緩和されるので、組み付け作業性が向上するとともに、部品の低コスト化を図ることができる。」と、検出流路の断面積Sdを蛇行状流路の断面積Srよりも大きくすることで解決されるとされている。
しかしながら、仮に検出流路の断面積Sdが蛇行状流路の断面積Srよりも大きくとも底面幅が一定程度存在しない場合、例えば本願図面の図8において深さDdを拡大することによって断面積を拡大し底面幅Wd2が狭いままの場合は、光学ヘッドの集光スポット径に対して検出流路の底面幅が十分に大きくならないこともあるから、組み付けの作業性が改善されない。
この点に関して、訂正前の本件特許発明10〜17、23では、「検出流路の断面積は、前記蛇行状流路の断面積よりも大きいこと」は特定されていたが、光学ヘッドの集光スポット径に対して検出流路の底面幅を規定していなかったため、訂正前の本件特許発明10〜17、23は上記課題が解決できないものを含んでいたところ、訂正後の本件特許発明10において、「前記検出流路における前記底面の幅が0.55mm〜1.2mm」と規定され、検出流路における底面の幅が光学ヘッドの通常の集光スポット径0.15mm〜0.45mmよりも大きいものであることが特定された。
そして、訂正後の本件特許発明10の検出流路の底面幅の下限である0.55mmは、本件明細書において想定されている通常の集光スポット径の上限として記載されている0.45mmよりも十分大きいものであり、訂正後の本件特許発明10の検出流路の底面幅は、0.55mm〜1.2mmの範囲において、実際に用いる集光スポット径よりも大きいものを訂正後の本件特許発明10の課題を解決できる範囲で当業者が選択し得るものであるから、訂正後の本件特許発明10は、その課題を解決できないものを含むものとは認められない。
したがって、本件特許発明10及び本件特許発明10を引用する本件特許発明11〜15、17、23は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(2)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和3年9月30日付け意見書のpp.7、8「イ 理由2(サポート要件)」において、訂正後の請求項10では光学ヘッドの集光スポット径が何ら規定されていないから、本件特許発明10〜15、17、23は依然として本件特許発明の課題を解決できないものを含んでおり、また、本件明細書の【0073】の記載によれば、集光スポット径は0.15mm〜0.45mmであることが通常であるものの、その範囲よりも大きい(例えば、0.55mm以上の)集光スポット径の光学ヘッドが用いられないわけではないため、本件明細書において通常とされている集光スポット径を有する光学ヘッド以外の光学ヘッドに対しては必ずしも上記課題を解決しているとはいえない旨主張している。
しかしながら、上述のとおり、本件特許発明10では、検出流路の底面幅は0.55mm〜1.2mmとして特定されており、本件特許発明10の検出流路の底面幅の下限である0.55mmは、実施例において想定されている通常の集光スポット径の上限として記載されている0.45mmよりも十分大きいものであり、検出流路の底面幅は、0.55mm〜1.2mmの範囲において、実際に用いる集光スポット径よりも大きいものを本件特許発明10の課題を解決できる範囲で当業者が選択し得るものであるから、本件特許発明10は、その課題を解決できないものを含むものとは認められない。
なお、特許異議申立人は、例えば、0.55mm以上の集光スポット径を有する光学ヘッドといった、本件明細書において通常とされている集光スポット径を有する光学ヘッド以外の光学ヘッドに対しては必ずしも上記課題を解決しているとはいえない旨も主張しているが、本件明細書で集光スポット径の上限は0.45mmであることが通常とされていることに加え、仮にそれ以上の集光スポット径を想定した場合であっても、本件特許発明10の検出流路の底面幅は1.2mmが上限とされているのであるから、その範囲において、実際に用いる集光スポット径よりも大きいものを本件特許発明10の課題を解決できる範囲で当業者が選択し得るものであって、本件特許発明10は、その課題を解決できないものを含むものとは認められない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明10〜15、17、23は、取消理由2により取り消されるべきものでない。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)異議申立理由2(進歩性
ア 特許異議申立人の主張の概要
訂正前の請求項10〜17、23に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の請求項1〜17、23に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものである。

<証拠>
甲第1号証:国際公開第2016/006612号
甲第4号証:国際公開第2006/054689号
甲第5号証:国際公開第2018/235766号

イ 甲号証の記載
甲1、5号証の記載については、第5の1(1)イ(ア)(ウ)に記載したとおりである。
一方、甲4には、以下の記載がある。

(4−1)
「 [0001] 本発明は、反応効率を大幅に上昇させることが可能で、且つ、安定性及び再現性の高い測定を実現する流路を設計したマイクロチップに関し、特に、高感度な診断用に適したマイクロチップに関する。」

(4−2)
「[0008] μTASにおいてはその反応の場の微小性から、反応により得られたシグナルを検出する際の検出技術において制限を受ける。例えば、高感度で安定した検出を目指したμTASにおいては、反応領域で得られたシグナルの増幅を行い、増幅されたシグナルを反応領域とは異なる検出領域に送り込んで検出する方法をとる場合がある。このような場合に単純に流路全体の体積を縮小することにより反応効率が増大されたマイクロチップを使用すると、当然に検出領域も縮小されるため、光路長が短くなり、 検出する際の再現性を確保することが困難となる。」

(4−3)
「[0010] また、発色基質を熱レンズ顕微鏡を用い励起光の焦点を流路内で絞り込んで検出する場合には、光路長が長いほうがシグナルの検出の高い再現性が得られる。しかし、光路長が一定以下になるとシグナルが小さくなり、シグナルの検出の再現性が得られない。即ち、熱レンズ顕微鏡では機械的な振動、測定位置合わせ精度の不備、マイクロチップの作製精度誤差等の諸要因に起因する誤差が存在し、それらにより流路内における焦点の相対的な位置が変化することは避けられない。誤差が光路長よりも大きい場合は、例えば、光路長が余りにも短いために誤差が光路長よりも大きくなる場合には、熱レンズ顕微鏡の励起光の焦点が流路の外に位置してしまうこともあり 、このような場合には、測定ができない状態になってしまうこともある。これに対して流路内の光路長が長ければ焦点距離が多少ずれても流路内での焦点の相対的な位置はほとんど変化しないために安定した再現性が得られる。なお、励起光が流路の上部(平板状マイクロチップの平板面)側から照射される場合は、照射される方向からの流路の深さが光路長にあたり、流路の側面(平板状マイクロチップの側面)側から照射される場合は流路の幅が光路長となる。」

(4−4)
「[0027] 流路内の界面における反応性について言えば、前記したように、流路の体積を小さくするに従い、比界面積が増大し、物質の界面への拡散効率が上昇することにより反応効率が増大する。例えば、長方形の断面を持つ流路で、流路上面から流路下面に向かって検出する場合を考えてみると、流路の下面又は上面、或いはその両方が 反応に寄与する界面となっている場合には流路の深さを浅くすることで反応面の比界面積が増大するので反応性は増大する。また、流路の側面の一方もしくは両方が反応面となっている場合には流路の幅を縮めることにより反応面の比界面積が増大するので反応性は増大する。また、流路界面の全面が反応面である場合は、流路の幅及び深さの一方又は両方を縮小することにより比界面積が増大するので反応性が増大する。従って、反応領域の体積は、安定に送液できる程度に小さくすることが好ましい。」

(4−5)
「[0035] 図2a、図2bは、本発明のマイクロチップにおける流路の1形態を示す。図2aは流路の上面図、図2bは流路の断面図である。流路12の途中において、測定すべき生体物質を捕捉するための抗生体物質が固定された反応領域14が形成されている。 流路12の一方の末端には試薬や検体試料を供給するための送液口 11、他方の末端には、流路12内の液体を排出するための排液口13が設けられている。前記反応領域14の下流の流路12において、検出領域15が設けられている。検出領域15は、蛍光法、化学発光法、熱レンズ分光法等の光学的な分析手段を利用して流路12におけるシグナルを測定するための領域である。」

(4−6)
「[0038] マイクロチップへの試料液或いは薬液の送液において、目的とする流速を反応領域の流速に合わせると、反応領域を通過した後の溶液の流速が遅くなり、検出領域 に到達するまでの時間が長くなり迅速な測定の障害となってしまうことがある。或いは逆の場合には、反応領域を溶液が瞬時に通過することになるために、増幅効率が低下し、シグナル増幅という目的の達成が困難となることがある。これらの不都合の解決策として、反応領域の流路の深さを縮小した場合には流路の幅を広げ、反応領域の流路の幅を縮小したときには流路の深さを増大させることにより、反応領域における反応面の比界面積を大きくしつつ流路全体の線流速を一定にコントロールする流路設計を行うことが好ましい。」

(4−7)
「[0039] さらに、意図的に反応領域の線流速を早くし、或いは遅くする流路の設計も当然に可能である。例えば、反応領域の流路の深さを2分の1にしたときに線流速を一定に保つためには、流路の幅を2倍にする必要があるが流路の幅を4倍にすれば、反応領域の線流速が2分の1となる。このような設計にすると測定時間は長くなるが、増幅効率を2倍に上げることができる。このように、目的に応じて反応領域での線流速をコントロールすることも可能である。」

(4−8)
「[0045] 本発明のマイクロチップによる検出対象物は、生物学的物質が好適である。生物学的物質としては、抗原、抗体、糖鎖、糖タンパク質、レクチン、受容体、リガンド、DNA、RNA、その他、生体中の物質と特異的に結合することができる物質、その物質の分子量に依存しないものが挙げられる。これらの分析対象物を分析するための試料には、血液、血漿、血清、尿、唾液、その他体液や、DNA、RNA、染色体や、DNA、RNAを増幅させたもの、抗原、抗体、糖鎖、受容体、リガンドを含む物体が試料となりうる。」

ウ 甲1発明及び対比
甲1発明及び本件特許発明10との一致点、相違点については第5の1(1)ウ、エに記載したとおりのものであり、以下のとおりである。

(甲1発明)
「COP製樹脂基板と、COP製樹脂基板に形成された微小流路と、を備えるPCRチップであって、
変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯が前記基板に設定され、変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯間を試料溶液が交互に移動し、
前記微小流路は、変性温度帯及び伸長・アニーリング温度帯のそれぞれに含まれる蛇行流路部と、2つの蛇行流路部を連結する中間流路を含み、中間流路において前記流路内を流れる蛍光プローブ又は蛍光色素を含む試料溶液の蛍光を検出するもの、
であることを特徴とするPCRチップ。」

(一致点)
「基板と、前記基板の主面に形成された溝状の流路と、を備える反応処理容器であって、
それぞれ所定の温度に維持される複数の反応領域が前記基板に設定され、反応を起こさせるために前記複数の反応領域間を試料が繰り返し往復移動し、
前記流路は、前記複数の反応領域のそれぞれに含まれる蛇行状流路と、前記複数の反応領域を接続する接続流路と、前記流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける、前記接続流路に含まれる検出流路と、を含むこと
を特徴とする反応処理容器。」

(相違点1)
本件特許発明10では、検出流路の断面積は、蛇行状流路の断面積よりも大きいのに対して、甲1発明では、検出流路の断面積と蛇行状流路の断面積との大小関係が明確でない点。

(相違点2)
本件特許発明10では、検出流路は、開口部と底面と底面から開口部に向かって拡大するテーパ状の側面を備えるが、甲1では、検出流路の形状が明確でない点

(相違点3)
本件特許発明10では、検出流路の底面は、基板の主面と平行な平面に形成されるのに対して、甲1では、検出流路の形状が明確でない点

(相違点4)
本件特許発明10では、検出流路における底面の幅が0.55〜1.2mmであるが、甲1では、検出流路の底面の幅が明確でない点

(相違点5)
本件特許発明10では、検出流路は、接続流路に沿った方向に、底面の幅を超えた所定距離を有するが、甲1では、検出流路の接続流路に沿った方向における長さが明確でない点

エ 判断
相違点1について検討する。
第5の1(1)オにおいて記載したとおり、甲1に接した当業者には、甲1発明において、「蛇行流路部」、「中間流路において前記流路内を流れる試料溶液の蛍光を検出する」部分の関係に着目し、「中間流路において前記流路内を流れる試料溶液の蛍光を検出する」部分の断面積を「蛇行流路部」の断面積よりも大きいものとする動機付けが存在しないものと認められる。
一方、仮に上記のような動機付けが存在しないといえない場合についても検討する。
甲4には、摘記(4−1)及び(4−5)の記載から、反応効率を大幅に上昇させることが可能で、且つ、安定性及び再現性の高い測定を実現する流路を設計したマイクロチップであって、反応領域及び検出領域が設けられており、検出領域は蛍光法等の光学的な分析手段を利用して流路のシグナルを測定することが開示されていると認められる。
また、摘記(4−2)の記載から、甲4には、流路全体の体積を縮小することにより反応効率が増大されたマイクロチップを使用すると検出領域も縮小されるため、光路長が短くなり、 検出する際の再現性を確保することが困難となる、という課題が記載されており、摘記(4−3)〜(4−5)の記載から、その課題を解決するために、光路長が流路の幅、深さのいずれの場合であっても、比界面積を増大させ、反応効率を増大させるために、反応領域における流路の下面又は上面、或いはその両方が反応面となっている場合には、反応領域における流路の深さをそれ以外の流路の深さよりも浅くすること、反応領域における流路の側面の一方又は両方が反応面となっている場合には、反応領域における流路の幅をそれ以外の流路の幅よりも縮めること、流路界面の全面が反応面である場合は、流路の幅及び深さの一方又は両方を縮小することが記載されているといえる。
加えて、摘記(4−8)の記載から、甲4のマイクロチップは、抗原、抗体の検出やDNA、RNAやそれらを増幅させたものの検出にも用いられることが記載されている。
しかしながら、摘記(4−6)及び(4−7)の記載から、甲4においては、反応領域の流路の深さを縮小した場合には流路の幅を広げ、反応領域の流路の幅を縮小したときには流路の深さを増大させることにより、反応領域における反応面の比界面積を大きくしつつ流路全体の線流速を一定にコントロールすることや、反応領域の線流速を早くしたり、遅くしたりすることも記載されている。例えば、線流速が一定の場合は、反応領域の流路とそれ以外の検出流路等の流路の断面積は変化していないと認められ、また、反応領域の線流速を遅くすることは、反応領域の断面積がそれ以外の検出流路等の流路の断面積より大きくなるものと認められる。
そうすると、甲4の記載からは、反応領域の流路とそれ以外の流路について、幅、深さのいずれか、あるいは、その両方について、小さくしたり、大きくしたりすることは記載されていると認められるものの、何らかの目的を達成するために反応領域の流路の断面積よりも検出領域の流路の断面積を大きくすることが望ましいことまでは記載も示唆もされていない。
してみると、甲1発明に甲4に記載された事項を考慮したとしても、甲1発明において、検出流路の断面積を蛇行状流路の断面積よりも大きいものとして構成することが当業者といえども容易であったとまでは認められない。
なお、甲5は基板の流路に関してテーパ状のものとしてもよいことが記載されているのみであり、甲5の記載を考慮したとしても上記結論は左右されない。
したがって、相違点1に係る構成は、甲1発明、及び、甲4、5に記載された事項から当業者であったとしても容易に想到し得ないものであると認められる。
よって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲1発明、及び、甲4、5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
また、本件特許発明11〜15、17、23についても同様である。

オ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、異議申立書p.31第1行〜p.32第14行において、甲1と甲4は、技術分野が同一であり、課題及び作用、機能が共通しており、甲1発明に甲4に記載の事項の適用についての阻害要因はないこと、甲1発明では、図1に記載されているように、反応処理容器の下面にヒーターが設置されているが、各反応領域が定温保持されているのであるから、各反応領域に形成された蛇行状流路の下面及び側面も当然に同じ温度に保持されているといえるため、甲1発明においては、反応領域のそれぞれに含まれる蛇行状流路の下面及び両側面の両方が反応面であることを考慮すると、甲1発明に甲4発明を適用した場合には、蛇行状流路の深さをそれ以外の流路の深さよりも浅くすることで比界面積を大きくするとともに、同蛇行状流路の幅をそれ以外の流路の幅よりも縮めることによっても比界面積を大きくしたものが構成されること、を主張している。
しかしながら、上記エで検討したとおり、甲1発明において、「蛇行流路部」、「中間流路において前記流路内を流れる試料溶液の蛍光を検出する」部分の関係に着目し、「中間流路において前記流路内を流れる試料溶液の蛍光を検出する」部分の断面積を「蛇行流路部」の断面積よりも大きいものとする動機付けが存在しないものと認められる。
また、仮に甲1発明に甲4に記載された事項を適用し得たとしても、甲4には、反応領域の流路とそれ以外の流路について、幅、深さのいずれか、あるいは、その両方について、小さくしたり、大きくしたりすることは記載されていると認められるものの、何らかの目的を達成するために反応領域の流路の断面積よりも検出領域の流路の断面積を大きくすることが望ましいことまでは記載も示唆もされていないため、上記主張における、蛇行状流路の深さをそれ以外の流路の深さよりも浅くすることで比界面積を大きくするとともに、同蛇行状流路の幅をそれ以外の流路の幅よりも縮めることによっても比界面積を大きくしたものが構成されるとまでは認められない。
なお、甲1では、特許異議申立人も主張するように、反応処理容器の下面にヒーターが設置されているが、各反応領域に形成された蛇行状流路の下面及び側面も当然に同じ温度に保持されているかどうかは不明であり、反応領域のそれぞれに含まれる蛇行状流路の下面及び両側面の両方が反応面であるとの主張は採用できない。

加えて、特許異議申立人は、異議申立書p.32第15行〜p.33第20行において、「甲第4号証の[0008]、[0010]、[0027]の記載は、「検出領域の流路の断面積を反応領域の流路の断面積よりも大きくする」ことを開示しているか、仮に開示とまでいえないとしても、十分に示唆しているといえる。なぜならば、[0027]には「反応領域の流路の体積を小さくする」ことにより比界面積を増大させることが記載されているところ、「反応領域の流路の体積を小さくする」ことは、「反応領域の流路の断面積を小さくする」ことに他ならず、そのことは、反応領域以外(検出領域)の流路の断面積を相対的に大きくすることにほかならないからである。」等とも主張している。
しかしながら、流路の体積は流路の深さ、幅、奥行きによって規定されるものである一方、断面積は深さ、幅によって規定されるものと認められることから、流路の深さ、幅を変えずに奥行きを変えることでその体積を小さくすることも可能であるから、「反応領域の流路の体積を小さくする」ことは、「反応領域の流路の断面積を小さくする」ことに他ならないとまではいえないし、仮にそうであったとしても、上記で検討したように、甲4には、何らかの目的を達成するために反応領域の流路の断面積よりも検出領域の流路の断面積を大きくすることが望ましいことまでは記載も示唆もされていない。

よって、特許異議申立人の上記いずれの主張を検討しても、本件特許発明10〜15、17、23は、甲1発明、及び、甲4、5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ 小括
以上のとおり、本件特許発明10〜15、17、23は、甲1発明、及び、甲4、5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでないため、異議申立理由2によって取り消すべきものではない。

(2)異議申立理由4(明確性
ア 本件特許発明10の「前記検出流路の断面積は、前記蛇行状流路の断面積よりも大きく」における「検出流路の断面積」と「蛇行状流路の断面積」について
特許異議申立人は、異議申立書p.37「カ 理由4(特許法第36条第6項第2号の記載不備)」の第2段落において、要するに、上記各流路の断面積とは、各流路全体の平均断面積を意味するのか、各流路における最大の断面積を意味するのか、あるいは各流路内の任意の地点における断面積を意味するのかが不明であり、どのようなものまでが本件特許発明10の技術的範囲に含まれるか理解できない旨、主張している。
この点に関して、 特許異議申立人が令和2年12月25日付け意見書p.22第8−29行で、「前記検出流路の断面積は、前記蛇行状流路の断面積よりも大きく」との記載は「検出流路」のどの地点の「断面積」であっても「検出流路の断面積」は「蛇行状流路の断面積」よりも大きいことを規定するものであり、特定の地点のみが規定されていない旨、主張しているように、「前記検出流路の断面積は、前記蛇行状流路の断面積よりも大きく」との記載は、「検出流路の断面積」はいずれ地点においても「蛇行状流路の断面積」よりも大きいことを規定していると認められるため、不明確とは認められない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

イ 本件特許発明10の「検出流路」について
特許異議申立人は、異議申立書pp.37、38「カ 理由4(特許法第36条第6項第2号の記載不備)」の第3、4段落において、検出流路は流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける領域(「蛍光検出領域」と呼ぶ)86に含まれる流路として規定され(【0039】)つつ、蛍光検出領域86としては点線で囲まれるかなり広い領域が設定されている(【図1】、【図6】、【図7】、【図9】)が、励起光は微小流路の狭い領域を狙って照射するものであるから、このような広い領域が【0039】でいう「励起光の照射を受ける領域」に該当するとは解されず、【0039】に規定される検出領域(蛍光検出領域)と各図面に示される検出領域とは相互に対応しておらず、結局、どの範囲が「検出領域」に該当するのか、また、それに含まれる流路である「検出流路」がどの範囲の流路を指すのかが不明である旨、主張している。
確かに、本件特許の発明の詳細な説明に記載されているとおり、検出流路は蛍光検出領域に含まれる流路であることが特定されており(【0039】)、蛍光検出領域は図1、図6、図7、図9等で示されているように点線で囲まれたある程度の広さの領域として設定されていると認められる。
しかしながら、励起光は狭い領域を狙って照射するものであるから、励起光の照射を受ける領域である蛍光検出領域はそのどこかにおいて励起光を当てさえすればよいものとして設定されているものと理解するのが相当であり、【0039】の蛍光検出領域と各図面に示される蛍光検出領域は相互に対応していると認められ、また、その範囲に含まれる流路として記載されている「検出流路」の指す範囲は明確であると認められる。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

ウ その他の明確性要件違反について
特許異議申立人は、令和 3年 9月30日付け意見書p.8ウ(ア)において、訂正後の請求項15には、「蛇行状流路」、「検出流路」に関して、「0°〜45°のテーパ角」と記載されているところ、テーパ角が0°である場合には、両側面は平行となるため、テーパ状の側面とはならない旨、主張している。
しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明の、「また、テーパ角Trが0°もしくはその近傍になるように小さくした場合は、蛇行状流路53の断面形状は、略長方形状に近いものになる点に注意する。」(【0079】)等との記載に鑑みると、本件特許発明において、テーパ角が0°〜45°であることは、略長方形状であることを含むことを意図した記載であると理解するのが相当と認められるため、本件特許発明15の上記記載は略長方形状に近い程度のものとして明確に理解できるものと認められる。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明10〜15、17、23は明確であるため、異議申立理由4によって取り消すべきものではない。

4 まとめ
第5の1〜3で検討したように、本件特許発明10〜15、17、23は、特許法第29条の規定に違反してなされたものでないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものでなく、また、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項10〜15、17、23に係る特許を取り消すことはできない。
他に本件請求項10〜15、17、23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項16に係る発明は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人末吉 直子による特許異議の申立てについて、請求項16に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項10〜15、17、23に係る特許について結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の主面に形成された溝状の流路と、を備える反応処理容器であって、
それぞれ所定の温度に維持される複数の反応領域が前記基板に設定され、反応を起こさせるために前記複数の反応領域間を試料が繰り返し往復移動し、
前記流路は、前記複数の反応領域のそれぞれに含まれる蛇行状流路と、前記蛇行状流路のそれぞれに隣接する制動流路と、を含み、
前記制動流路の断面積は、前記蛇行状流路の断面積よりも大きいことを特徴とする反応処理容器。
【請求項2】
前記蛇行状流路の断面積をSrとし、前記制動流路の断面積をSbとしたとき、断面積比Sb/Srは、l<Sb/Sr≦1.8の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の反応処理容器。
【請求項3】
前記断面積比Sb/Srは、1.02≦Sb/Sr≦1.5の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の反応処理容器。
【請求項4】
前記断面積比Sb/Srは、1.02≦Sb/Sr≦1.2の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の反応処理容器。
【請求項5】
前記蛇行状流路および前記制動流路は、開口部と、底面と、前記底面から前記開口部に向かって拡大するテーパ状の側面と、を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の反応処理容器。
【請求項6】
前記蛇行状流路は、0.55mm〜0.95mmの開口幅、0mm〜0.95mmの底面幅、0.5mm〜0.9mmの深さ、および0°〜45°のテーパ角を有し
前記制動流路は、0.65mm〜1.05mmの開口幅、0mm〜1.05mmの底面幅、0.5mm〜0.9mmの深さ、および0°〜45°のテーパ角を有することを特徴とする請求項5に記載の反応処理容器。
【請求項7】
前記底面と前記側面の接続部が曲面状であることを特徴とする請求項5または6に記載の反応処理容器。
【請求項8】
前記接続部の曲率半径は、0.2mm〜0.38mmであることを特徴とする請求項7に記載の反応処理容器。
【請求項9】
前記蛇行状流路は、屈曲部を含み、
前記屈曲部の曲率半径は、0.3mm〜10mmであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の反応処理容器。
【請求項10】
基板と、前記基板の主面に形成された溝状の流路と、を備える反応処理容器であって、
それぞれ所定の温度に維持される複数の反応領域が前記基板に設定され、反応を起こさせるために前記複数の反応領域間を試料が繰り返し往復移動し、
前記流路は、前記複数の反応領域のそれぞれに含まれる蛇行状流路と、前記複数の反応領域を接続する接続流路と、前記流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける、前記接続流路に含まれる検出流路と、を含み、
前記検出流路の断面積は、前記蛇行状流路の断面積よりも大きく、
前記検出流路は、開口部と、底面と、前記底面から前記開口部に向かって拡大するテーパ状の側面と、を備え、
前記検出流路における前記底面は、前記基板の主面と平行な平面に形成され、
前記検出流路における前記底面の幅が0.55mm〜1.2mmであり、
前記検出流路は、前記接続流路に沿った方向に、前記底面の幅を越えた所定距離を有する
ことを特徴とする反応処理容器。
【請求項11】
前記蛇行状流路の断面積をSrとし、前記検出流路の断面積をSdとしたとき、断面積比Sd/Srは、l<Sd/Sr≦1.8の範囲内であることを特徴とする請求項10に記載の反応処理容器。
【請求項12】
前記断面積比Sd/Srは、1.02≦Sd/Sr≦1.5の範囲内であることを特徴とする請求項11に記載の反応処理容器。
【請求項13】
前記断面積比Sd/Srは、1.02≦Sd/Sr≦1.2の範囲内であることを特徴とする請求項11に記載の反応処理容器。
【請求項14】
前記蛇行状流路は、開口部と、底面と、前記底面から前記開口部に向かって拡大するテーパ状の側面と、を備えることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の反応処理容器。
【請求項15】
前記蛇行状流路は、0.55mm〜0.95mmの開口幅、0mm〜0.95mmの底面幅、0.5mm〜0.9mmの深さ、および0°〜45°のテーパ角を有し、
前記検出流路は、0.7mm〜1.2mmの開口幅、0.55mm〜1.2mmの底面幅、0.5mm〜1.2mmの深さ、および0°〜45°のテーパ角を有することを特徴とする請求項14に記載の反応処理容器。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
前記検出流路における前記底面と前記側面の接続部は、角張った形状に形成されることを特徴とする請求項14又は15に記載の反応処理容器。
【請求項18】
基板と、前記基板の主面に形成された溝状の流路と、を備える反応処理容器であって、
それぞれ所定の温度に維持される複数の反応領域が前記基板に設定され、反応を起こさせるために前記複数の反応領域間を試料が繰り返し往復移動し、
前記流路は、前記複数の反応領域のそれぞれに含まれる蛇行状流路と、前記蛇行状流路のそれぞれに隣接する制動流路と、前記複数の反応領域を接続する接続流路と、前記流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける、前記接続流路に含まれる検出流路と、を含み、
前記制動流路の断面積は、前記蛇行状流路の断面積よりも大きく、
前記検出流路の断面積は、前記蛇行状流路の断面積よりも大きいことを特徴とする反応処理容器。
【請求項19】
前記流路から分岐する分岐流路と、前記分岐流路に設けられた試料導入口と、をさらに備え、
前記複数の反応領域のうち前記分岐流路および前記試料導入口に最も近い反応領域と、前記分岐流路および前記試料導入口との間の距離が5mm以上であることを特徴とする請求項1または18に記載の反応処理容器。
【請求項20】
前記流路の両端に設けられた一対のフィルタと、前記流路から分岐する分岐流路と、前記分岐流路に設けられた試料導入口と、をさらに備え、
前記試料導入口から前記試料導入口に最も近いフィルタに至るまでの流路の体積をVfとし、前記試料導入口から導入される試料の体積をVsとしたとき、k×Vs<Vf(kは0.1〜10の実数)を満たすことを特徴とする請求項1または18に記載の反応処理容器。
【請求項21】
前記流路の両端に設けられた一対のフィルタと、前記流路から分岐する分岐流路と、前記分岐流路に設けられた試料導入口と、をさらに備え、
前記試料導入口から導入される試料の体積が1μL〜50μLであるとき、前記試料導入口から前記試料導入口に最も近いフィルタに至るまでの流路の長さが、2mm〜200mmであることを特徴とする請求項1または18に記載の反応処理容器。
【請求項22】
前記複数の反応領域のうち一つの反応領域に含まれる蛇行状流路に隣接する制動流路は、それ以外の反応領域から遠い側に位置することを特徴とする請求項1または18に記載の反応処理容器。
【請求項23】
前記複数の反応領域は、比較的高温に維持される高温領域と、前記高温領域よりも低温に維持される中温領域とを含むことを特徴とする請求項1から15及び17から22のいずれかに記載の反応処理容器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-06 
出願番号 P2019-106911
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (C12M)
P 1 652・ 121- YAA (C12M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 上條 肇
松野 広一
登録日 2020-01-27 
登録番号 6652673
権利者 日本板硝子株式会社
発明の名称 反応処理容器  
代理人 井波 実  
代理人 紺野 昭男  
代理人 吉澤 敬夫  
代理人 紺野 昭男  
代理人 井波 実  
代理人 吉澤 敬夫  

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