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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G09F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G09F
管理番号 1383243
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-23 
確定日 2022-01-11 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6670967号発明「光学フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6670967号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし10〕について訂正することを認める。 特許第6670967号の請求項1、2及び4ないし10に係る特許を維持する。 特許第6670967号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6670967号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、令和1年5月16日(優先権主張 平成30年9月28日)の出願であって、令和2年3月4日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月23日に特許異議申立人 瀧瀬 洋輔(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし10)がされ、同年12月4日付けで取消理由が通知され、令和3年2月5日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年3月12日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年4月15日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年6月28日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年8月27日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年9月10日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年10月14日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
なお、令和3年2月5日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和3年8月27日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「0≦Ts≦0.35 (1)」とあるのを、
「0≦Ts≦0.27 (1)」
に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれJIS K 7136に準拠して測定された拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表す」とあるのを、
「式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される」
に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「を満たし、」とあるのを、
「を満たし、
JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり、」
に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に
「該ポリアミドイミド樹脂は、」とあるのを、
「厚さは30μm超であり、
該ポリアミドイミド樹脂は、」
に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に
「該ポリアミドイミド樹脂は、式(10):
【化1】

[式中、Gは4価の有機基であり、Aは2価の有機基である]
で表される繰り返し構造単位と、式(13):
【化2】

[式中、G3及びA3は、それぞれ2価の有機基である]
で表される繰り返し構造単位を少なくとも有し、」とあるのを、
「該ポリアミドイミド樹脂は、式(10):
【化1】

[式中、Gは4価の有機基であり、Aは2価の有機基である]
で表される繰り返し構造単位と、式(13):
【化2】

[式中、G3及びA3は、それぞれ2価の有機基である]
で表される繰り返し構造単位を少なくとも有し、かつ重量平均分子量が200,000以上であり、」
に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1に
「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、0.1〜6.0モルである、」とあるのを、
「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である、」
に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に
「厚さは10〜150μmである」とあるのを、
「厚さは30μm超150μm以下である」
に訂正する。
併せて、請求項4を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項4の引用先を、「請求項1又は2に」と訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項5の引用先を、「請求項1、2及び4のいずれか」と訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項6の引用先を、「請求項1、2、4及び5のいずれか」と訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項8の引用先を、「請求項1、2及び4〜7のいずれか」と訂正する。

(13)訂正事項13
明細書の【0128】に
「[実施例4:光学フィルム(4)の製造]」とあるのを、
「[実施例4(参考例):光学フィルム(4)の製造]」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「Ts」の範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項1についての訂正は、「Td及びTt」の測定方法を明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項3による請求項1についての訂正は、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」の限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項1についての訂正は、「光学フィルム」の「厚さ」の限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5による請求項1についての訂正は、「ポリアミドイミド樹脂」の「重量平均分子量」の限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6による請求項1についての訂正は、「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量」の「式(10)で表される繰り返し構造単位1モル」に対する「比」の範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし6による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項2についての訂正について
訂正事項1ないし6による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)請求項3についての訂正について
訂正事項8による請求項3についての訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)請求項4についての訂正について
訂正事項1ないし6による請求項4についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項7による請求項4についての訂正は、「厚さ」の範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項9による請求項4についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし7及び9による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)請求項5についての訂正について
訂正事項1ないし6による請求項5についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項7による請求項5についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項10による請求項5についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし7及び10による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)請求項6についての訂正について
訂正事項1ないし6による請求項6についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項7による請求項6についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項11による請求項6についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし7及び11による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)請求項7についての訂正について
訂正事項1ないし6による請求項7についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項7による請求項7についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし7による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)請求項8についての訂正について
訂正事項1ないし6による請求項8についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項7による請求項8についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項12による請求項8についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし7及び12による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)請求項9及び10についての訂正について
訂正事項1ないし6による請求項9及び10についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項7による請求項9及び10についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし7による請求項9及び10についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(10)明細書についての訂正について
訂正事項13による明細書についての訂正は、訂正事項1ないし12により特許請求の範囲を訂正したことに伴い、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項13による明細書についての訂正に係る一群の請求項の全てについて訂正請求は行われている。

3 むすび
以上のとおり、請求項1ないし10についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
また、明細書についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第4ないし6項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項1ないし10は一群の請求項に該当するものである。そして、請求項1ないし10についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし10に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし10〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ポリアミドイミド樹脂を含み、式(1):
0≦Ts≦0.27 (1)
[式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される]
を満たし、
JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり、
厚さは30μm超であり、
該ポリアミドイミド樹脂は、式(10):
【化1】

[式中、Gは4価の有機基であり、Aは2価の有機基である]
で表される繰り返し構造単位と、式(13):
【化2】

[式中、G3及びA3は、それぞれ2価の有機基である]
で表される繰り返し構造単位を少なくとも有し、かつ重量平均分子量が200,000以上であり、
式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である、光学フィルム。
【請求項2】
80℃における引張弾性率は、4,000〜9,000MPaである、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
厚さは30μm超150μm以下である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項5】
フィラーの含有量は、光学フィルムの質量に対して5質量%以下である、請求項1、2及び4のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項6】
少なくとも一方の面にハードコート層を有する、請求項1、2、4及び5のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層の厚さは3〜30μmである、請求項6に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項1、2及び4〜7のいずれかに記載の光学フィルムを備えるフレキシブル表示装置。
【請求項9】
さらに、タッチセンサを備える、請求項8に記載のフレキシブル表示装置。
【請求項10】
さらに、偏光板を備える、請求項8又は9に記載のフレキシブル表示装置。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由(決定の予告)の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和2年9月23日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性
本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由2(甲第7号証に基づく新規性
本件特許の請求項1ないし5及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)申立理由3(甲第9号証に基づく新規性
本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(4)申立理由4(甲第1号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(5)申立理由5(甲第7号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(6)申立理由6(甲第9号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(7)証拠方法
甲第1号証:特開2017−203984号公報
甲第2号証:Elastomers and Composites. Vol.50,No.1,pp.49-54(March 2015)
甲第3号証:JIS K 7136:2000 プラスチック−透明材料のヘーズの求め方
甲第4号証:JIS K 7105:1981 プラスチックの光学的試験方法
甲第5号証:JISハンドブック JIS総目録 p.634−635
甲第6号証:特開2017−25204号公報
甲第7号証:国際公開第2018/147618号
甲第8号証:日本電色工業社のヘイズメーターNDH−5000W カタログ
甲第9号証:特開2018−119132号公報
甲第10号証:特開2018−119144号公報
参考資料1:JIS Z 8782:1999
参考資料2:JIS Z 8781:1999
参考資料3:JIS Z 8781−2:2012
参考資料4:「色彩工学入門」、森北出版株式会社、2007年5月1日、p.100〜101、p.154〜155、及び奥付
なお、参考資料1ないし4は、令和3年4月15日に特許異議申立人が提出した意見書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

2 取消理由(決定の予告)の概要
令和3年6月28日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。

(1)取消理由1(甲1を主引用文献とする新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、上記甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由1は申立理由1及び4と同旨である。

(2)取消理由2(甲7を主引用文献とする新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし5及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、上記甲7に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由2は申立理由2及び5と同旨である。

(3)取消理由3(甲9を主引用文献とする新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲9に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、上記甲9に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由3は申立理由3及び6と同旨である。

第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「光学フィルム、及びこれを用いたフレキシブルデバイス」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。

・「【請求項10】
フレキシブルデバイス部材の前面板に用いられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学フィルムを備えるフレキシブルデバイス。」

・「【0005】
しかし、ポリイミド系高分子又はポリアミド等を含有する光学フィルムに関しては、吸湿特性等の更なる改善が必要であり、また、高い透明性(Haze<1)、少ない着色(YI<5)、及び十分な紫外線吸収能の全ての点で満足できる性能を達成することが、従来困難であった。
【0006】
そこで、本発明の一側面の目的は、ポリイミド系高分子等を含む光学フィルムに関して、吸湿特性、高い透明性(Haze<1)、少ない着色(YI<5)、及び十分な紫外線吸収能の点で改善を図ることにある。」

・「【0069】
本実施形態に係る光学フィルムに、ハードコート層、粘着層、色相調整層などの機能層を付加した積層フィルムを形成することもできる。
【0070】
本実施形態に係る光学フィルムはフレキシブルデバイス部材の前面板などに好適に用いることができる。適用可能なフレキシブルデバイスは、表示装置に限られない。例えば、光電変換素子が形成された基板と、基板表面に設けられた前面板とを有する太陽電池にも本実施形態に係るフィルムを前面板として採用できる。この場合、太陽電池が全体として優れた耐屈曲性を有することができる。
本実施形態に係る光学フィルムを備えるフレキシブルデバイスは、透明で着色が少なく、紫外線を効率的に吸収するとともに、吸湿特性が向上した光学フィルムによって偏光板等の内部の構成部材を適切に保護できるため、視認性が優れるとともに、高い耐光性を有することができる。」

・「【0080】
2.ポリイミドおよびポリアミドイミド(ポリイミド系高分子)
樹脂A:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(以下、6FDAと略すことがある)および2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(以下、TFMBと略すことがある)の共重合体であるポリイミド
樹脂B:可溶性ポリイミド(河村産業(株)製「KPI−MX300F」)
樹脂C:テレフタロイルクロリド(以下、TPCと略すことがある)、6FDA、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)(以下、OBBCと略すことがある)およびTFMBの共重合体であるポリアミドイミド」

・「【0082】
(製造例2)樹脂Cの製造
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB52g(162.38mmol)およびDMAc849.23gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、フラスコに6FDA14.45g(32.52mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。その後、OBBC4.80g(16.26mmol)、次いでTPC23.11g(113.84mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌した。次いで、フラスコにピリジン9.98g(126.20mmol)と無水酢酸13.28g(130.10mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。
得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入した。析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂(樹脂C)を得た。
【0083】
3.ポリイミドフィルム又はポリアミドイミドフィルム(光学フィルム)
(実施例1)
製造例1で準備したポリイミドワニスをγ−ブチロラクトンで希釈して濃度16質量%のポリイミドワニスを調整した。そこにSumisorb 340(紫外線吸収剤)のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を混合した後、30分間攪拌した。紫外線吸収剤の量は、ポリイミドの100質量部に対して3質量部とした。
【0084】
得られたポリイミドワニスをガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分の順で加熱することにより塗膜から溶媒を除去して、フィルムを形成した。ガラス基板から剥離したフィルムを金枠に取り付け、これを210℃で1時間加熱することで、Haze0.1%、YI2.2、厚み80μmのポリイミドフィルムを得た。」

・「【0091】
(実施例5)
製造例2で準備したポリアミドイミドワニスをγ−ブチロラクトンで希釈して濃度16質量%のポリアミドイミドワニスを調整した。そこにSumisorb 340(紫外線吸収剤)のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を混合した後、30分間攪拌して、ポリアミドイミドワニスを得た。紫外線吸収剤の量は、ポリアミドイミドの100質量部に対して5質量部とした。
【0092】
得られたポリアミドイミドワニスを実施例1と同様に製膜して、Haze0.3%、YI2.0、厚み50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。」

・「【0096】
(比較例4)
Sumisorb340(紫外線吸収剤)のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を混合しないことの他は実施例5と同様にして、Haze0.2%、YI1.7、厚み50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。」

・「【0097】
(評価)
ヘイズ
光学フィルム(ポリイミドフィルム又はポリアミドイミドフィルム)を、全自動直読ヘーズコンピューター(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)のサンプルホルダーにセットして、光学フィルムのヘイズを測定した。Haze<1を良好、Haze≧1を不良として表2中に結果を示した。」

・「【0101】
【表2】



イ 甲1発明
甲1に記載された事項を、実施例5及び比較例4に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1実施例5発明」及び「甲1比較例4発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1実施例5発明>
「窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB52g(162.38mmol)およびDMAc849.23gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させ、次に、フラスコに6FDA14.45g(32.52mmol)を添加し、室温で3時間撹拌し、その後、OBBC4.80g(16.26mmol)、次いでTPC23.11g(113.84mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌し、次いで、フラスコにピリジン9.98g(126.20mmol)と無水酢酸13.28g(130.10mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得、得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄し、次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行って、ポリアミドイミド樹脂を得、得たポリアミドイミド樹脂をγ−ブチロラクトンで希釈し、そこにSumisorb 340(紫外線吸収剤)のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を混合した後、30分間攪拌して、ポリアミドイミドワニスを得、得られたポリアミドイミドワニスをガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分の順で加熱することにより塗膜から溶媒を除去して、フィルムを形成し、ガラス基板から剥離したフィルムを金枠に取り付け、これを210℃で1時間加熱することで得たHaze0.3%、厚み50μmの光学フィルム(ポリアミドイミドフィルム)。」

<甲1比較例4発明>
「窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB52g(162.38mmol)およびDMAc849.23gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させ、次に、フラスコに6FDA14.45g(32.52mmol)を添加し、室温で3時間撹拌し、その後、OBBC4.80g(16.26mmol)、次いでTPC23.11g(113.84mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌し、次いで、フラスコにピリジン9.98g(126.20mmol)と無水酢酸13.28g(130.10mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得、得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄し、次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行って、ポリアミドイミド樹脂を得、得たポリアミドイミド樹脂をγ−ブチロラクトンで希釈した後、30分間攪拌して、ポリアミドイミドワニスを得、得られたポリアミドイミドワニスをガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分の順で加熱することにより塗膜から溶媒を除去して、フィルムを形成し、ガラス基板から剥離したフィルムを金枠に取り付け、これを210℃で1時間加熱することで得たHaze0.2%、厚み50μmの光学フィルム(ポリアミドイミドフィルム)。」

(2)甲7に記載された事項及び甲7発明
ア 甲7に記載された事項
甲7には、「ポリアミドイミドフィルムの製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、原文の摘記は省略し、訳文を摘記する。

・「発明が解決しようとする課題
[8] 本発明は、向上された光学的特性および機械的特性を有するポリアミドイミドフィルムの製造方法を提供する。」

・「[64] 実施形態において、前記イミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位の含有量を適切に調節することにより、複雑な過程がなくても光学的特性、機械的物性、および柔軟性がバランスよく改善されたポリアミドイミドフィルムが得られる。」

・「[101]前述のような方法により製造された一実施形態によるポリアミドイミドフィルムは、厚さ20μm〜70μm、より詳しく、約25μm〜約60μmを基準に、表面硬度が約HB以上であり得る。さらにより詳しく、本実施形態によるポリアミドイミドフィルムは、前記厚さを基準に約H以上であり得る。」

・「[107] 実施例により製造されたポリアミドイミドフィルムは、無色透明でありながらも機械的物性に優れ、柔軟性に優れ、フレキシブル(flexible)ディスプレイ分野で有用に使用することができる。」

・「[108]
発明を実施するための形態
[109] 以下、本発明の一実施例をより詳細に説明する。しかしこれは、本発明の一実施例を例示するものであるのみ、本発明の内容が以下の内容に限定されるものではない。
[110]
[111] (実施例1)
[112] 温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下において、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)710.8gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4、4'−ジアミノビフェニル(TFDB)64g(0.2モル)を徐々に投入しながら溶解させた。
[113] 次いで、芳香族ジアンヒドリドである2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6−FDA)26.6g(0.06モル)を徐々に投入しながら1時間撹拌した。
[114] そして、芳香族ジカルボニル化合物として、1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(BPDC)23.4g(0.084モル)を投入してから1時間撹拌させ、テレフタロイルクロリド(TPC)11.4g(0.056モル)投入してから1時間撹拌して、重合体溶液を調製した。
[115]前記重合体溶液をそのままガラス板に塗布した後、80℃の熱風により30分乾燥した。乾燥したポリアミドイミド重合物をガラス板から剥離した後、ピンフレームに固定して、窒素(N2)78体積%および酸素(O2)を21体積%含む雰囲気下で熱処理した。具体的に、前記熱処理は80℃〜300℃の温度範囲で2℃/minの速度で昇温させながら行い、その結果、厚さ30μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
[116]
[117] (実施例2〜実施例4および比較例1〜比較例5)
[118] 各成分の含有料を下記表1のように異なるようにしたことを除いては、前記実施例1と同様の方法によりポリアミドイミドフィルムを製造した。」

・「[127][表1]



・「[137](2)透過度(TT)およびヘイズ(HZ)
[138] 日本電色工業社のヘイズメーターNDH−5000Wを使用して、550nmにおける透過度を測定し、ヘイズを測定した。」

・「[145]
[表3]




イ 甲7発明
甲7に記載された事項を、実施例3及び4に関して整理すると、甲7には次の発明(以下、順に「甲7実施例3発明」及び「甲7実施例4発明」という。)が記載されていると認める。

<甲7実施例3発明>
「温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下において、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)710.8gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFDB)0.2モルを徐々に投入しながら溶解させ、次いで、芳香族ジアンヒドリドである2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6−FDA)0.08モルを徐々に投入しながら1時間撹拌し、そして、芳香族ジカルボニル化合物として、1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(BPDC)0.072モルを投入してから1時間撹拌させ、テレフタロイルクロリド(TPC)0.048モル投入してから1時間撹拌して、重合体溶液を調製し、前記重合体溶液をそのままガラス板に塗布した後、80℃の熱風により30分乾燥し、乾燥したポリアミドイミド重合物をガラス板から剥離した後、ピンフレームに固定して、窒素(N2)78体積%および酸素(O2)を21体積%含む雰囲気下で熱処理して得た、ヘイズ0.3%、厚さ30μmのポリアミドイミドフィルム。」

<甲7実施例4発明>
「温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下において、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)710.8gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFDB)0.2モルを徐々に投入しながら溶解させ、次いで、芳香族ジアンヒドリドである2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6−FDA)0.1モルを徐々に投入しながら1時間撹拌し、そして、芳香族ジカルボニル化合物として、1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(BPDC)0.06モルを投入してから1時間撹拌させ、テレフタロイルクロリド(TPC)0.04モル投入してから1時間撹拌して、重合体溶液を調製し、前記重合体溶液をそのままガラス板に塗布した後、80℃の熱風により30分乾燥し、乾燥したポリアミドイミド重合物をガラス板から剥離した後、ピンフレームに固定して、窒素(N2)78体積%および酸素(O2)を21体積%含む雰囲気下で熱処理して得た、ヘイズ0.3%、厚さ30μmのポリアミドイミドフィルム。」

(3)甲9に記載された事項及び甲9発明
ア 甲9に記載された事項
甲9には、「ポリアミドイミド樹脂および該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0001】
本発明は、ポリアミドイミド樹脂、および該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材に関する。」

・「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フレキシブルディスプレイが屈曲する際には、全ての構成部材が屈曲する。各構成部材の柔軟性が不十分であると、他の構成部材の損傷させることがある。そのため、構成部材の1つである前面板にも高い柔軟性が求められる。同時に、前面板が屈曲した後、その表面に織り皺が残ると、ディスプレイの視認性に問題が生じるため、前面板は高い屈曲耐性を有する必要がある。
【0008】
そこで本発明は、高い柔軟性および屈曲耐性を両立する光学部材のためのポリアミドイミド樹脂、特に画像表示装置の前面板のためのポリアミドイミド樹脂、および該ポリアミドイミド樹脂を含む前面板等の光学部材を提供することを目的とする。」

・「【0066】
(光学部材)
本発明の別の実施態様においては、上記ポリアミドイミド樹脂を含んでなるポリアミドイミドフィルムである光学部材も提供される。光学部材としては、例えば光学フィルムが挙げられる。該光学部材は、柔軟性、屈曲耐性および表面硬度に優れるため、画像表示装置の前面板、特にフレキシブルディスプレイの前面板(ウィンドウフィルム)として適当である。光学部材は単層であってもよく、複層であってもよい。光学部材が複層である場合、各層は同一の組成であってよく、異なる組成であってもよい。」

・「【0109】
実施例1
[ポリアミドイミド樹脂(1)の調製]
窒素雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)52g(162.38mmol)およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)734.10gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAc中に溶解させた。次に、フラスコに4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)28.90g(65.05mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。その後、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)(OBBC)28.80g(97.57mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌した。次いで、フラスコにピリジン7.49g(94.65mmol)と無水酢酸26.56g(260.20mmol)とを加え、室温で30分間撹拌した後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。
得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノール中に6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂(1)を得た。
【0110】
[ポリアミドイミドフィルム(1)の製膜]
得られたポリアミドイミド樹脂(1)に、濃度が15質量%となるようにDMAcを加え、ポリアミドイミドワニス(1)を作製した。得られたポリアミドイミドワニス(1)をポリエステル基材(東洋紡(株)製、商品名「A4100」)の平滑面上に自立膜の膜厚が55μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工し、50℃30分間、次いで140℃15分間で乾燥し、自立膜を得た。自立膜を金枠に固定し、さらに窒素雰囲気下で300℃30分間乾燥し、膜厚50μmのポリアミドイミドフィルム(1)を得た。上記測定方法に従ってポリアミドイミドフィルム(1)の重量平均分子量(Mw)、全光線透過率Tt、黄色度YIおよびガラス転移温度Tgを測定したところ、Mwは120,000、Ttは91%、YIは2.2、Tgは345℃であった。なお、各成分のモル比は表1の通りである。」

・「【0113】
実施例3
[ポリアミドイミド樹脂(3)の調製]
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB52g(162.38mmol)およびDMAc697.82gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、フラスコに6FDA21.67g(48.79mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。その後、OBBC24.00g(81.31mmol)、次いでテレフタロイルクロリド(TPC)6.60g(32.52mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌した。次いで、フラスコにピリジン8.73g(110.42mmol)と無水酢酸19.92g(195.15mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。
得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂(3)を得た。なお、各成分のモル比は表1の通りである。」

・「【0117】
実施例5
[ポリアミドイミド樹脂(5)の調製]
DMAcの使用量を884.53g、6FDAの使用量を21.67g(38.79mmol)、OBBCの使用量を4.80g(16.26mmol)、TPCの使用量を19.81g(97.57mmol)、ピリジンの使用量を8.73g(110.42mmol)、無水酢酸の使用量を19.92g(195.15mmol)に変更した以外は、実施例3の[ポリアミドイミド樹脂(3)の調製]と同様にして、ポリアミドイミド樹脂(5)を得た。なお、各成分のモル比は表1の通りである。
【0118】
[ポリアミドイミドフィルム(5)の製膜]
ポリアミドイミド樹脂(1)に代えて、ポリアミドイミド樹脂(5)を用いた以外は、実施例1の[ポリアミドイミドフィルム(1)の製膜]と同様にして、膜厚50μmのポリアミドイミドフィルム(5)を得た。上記測定方法に従ってポリアミドイミドフィルム(5)の重量平均分子量(Mw)、全光線透過率Tt、黄色度YIおよびガラス転移温度Tgを測定したところ、Mwは345,000、Ttは91%、YIは2.2、Tgは377℃であった。」

・「【0136】
【表1】

【0137】
得られたポリアミドフィルム(1)〜(9)について、上記測定方法に従って、弾性率、表面硬度、および屈曲耐性を測定した。その結果を表2に示す。
【0138】
【表2】



イ 甲9発明
甲9に記載された事項を、実施例5に関して整理すると、甲9には次の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されていると認める。

「窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB52g(162.38mmol)およびDMAc884.53gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させ、次に、フラスコに6FDA21.67g(38.79mmol)を添加し、室温で3時間撹拌し、その後、OBBC4.80g(16.26mmol)、次いでテレフタロイルクロリド(TPC)19.81g(97.57mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌し、次いで、フラスコにピリジン8.73g(110.42mmol)と無水酢酸19.92g(195.15mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得、得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄し、次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂(5)を得、得られたポリアミドイミド樹脂(5)に、濃度が15質量%となるようにDMAcを加え、ポリアミドイミドワニスを作製し、得られたポリアミドイミドワニスをポリエステル基材(東洋紡(株)製、商品名「A4100」)の平滑面上に自立膜の膜厚が55μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工し、50℃30分間、次いで140℃15分間で乾燥し、自立膜を得、自立膜を金枠に固定し、さらに窒素雰囲気下で300℃30分間乾燥して得た膜厚50μmm、重量平均分子量(Mw)345,000のポリアミドイミドフィルム。」

(4)甲2ないし5に記載された事項
ア 甲2に記載された事項
甲2には、おおむね次の事項が記載されている。なお、原文の摘記は省略し、訳文を摘記する。

・「1. 1 全光線透過率とヘイズの測定
全光線透過率 (total transmittance, TT) とヘイズは、haze meter (Nippon Denshoku, NDH 5000)を用いて測定した。全光線透過率は、光が試片を通過する時に物体により拡散した拡散透過光と入射された方向に直進する平行透過光を合わせた値をいい、次の通り算定した。
全光線透過率(%)= (試片透過光/試片照射光)×100
ヘイズ(haze)は、透明材料の曇りの程度を示す指標として、次の通り算出した。
ヘイズ(%)=(拡散光/全光線透過率)×100」(第50ページ左欄第12ないし21行)

イ 甲3に記載された事項
甲3には、おおむね次の事項が記載されている。なお、半角の英数字は全角の英数字で摘記した。

・「5.装置
・・・(略)・・・
5.2 使用する光源及び測光器は、フィルターを通ってその組合せの特性が、ISO/CIE 10527による等色関数y(λ)(当審注:「y」には、上に「−」が引かれている。以下、「y」の上に「−」が引かれている文字を単に「y」と表記する。)と等しい明所視標準視感効率V(λ)(IEC 60050−845で定義)と、ISO/CIE 10526に規定するCIE標準の光D65の組合せに相当する出力を与えるものでなければならない。」(第2ページ第4ないし9行)

・「ヘーズは全光線透過率τtに対する拡散透過率τdの比として定義される。」(第4ページ第3行)

・「補償開口がある装置とない装置で測定値の差を比較するために,最初に予備的な共同試験を行った。8試験機関が参加して,0.2%〜35.3%までのヘーズ値を持つ12種類の試験片を用いた。
結果は,補償開口のない装置で測定したヘーズ値は,補償開口のある装置による測定値よりも,平均値で8.9%低かった。」(第4ページ下から9ないし6行)

ウ 甲4に記載された事項
甲4には、おおむね次の事項が記載されている。

・「6.4.5 計算方法 次の式によってヘーズ(曇価)を算出する。
H=Td/Tt×100
ここにH:ヘーズ(曇価)(%)
Td:拡散透過率(%)
Tt:全光線透過率(%)」(第15ページ末行ないし第16ページ第4行)

エ 甲5に記載された事項
甲5には、おおむね次の事項が記載されている。

・「K 7105:81 プラスチックの光学的特性試験方法(→K 7142,Z 8741,Z 8722,Z 8730,K 7361−1,K 7355,K 7373,K 7136,Z 8714,K 7374,Z 8717)(廃 H24.3.21)」(第635ページ第28ないし30行)

2 取消理由1(甲1を主引用文献とする新規性進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 甲1実施例5発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲1実施例5発明を対比する。
甲1実施例5発明における「光学フィルム(ポリアミドイミドフィルム)」は本件特許発明1における「光学フィルム」に相当する。
甲1実施例5発明における「光学フィルム(ポリアミドイミドフィルム)」は、「厚み50μm」であるから、本件特許発明1における「厚さは30μm超」を満たす。
甲1実施例5発明における「光学フィルム(ポリアミドイミドフィルム)」は、TFMB、6FDA、OBBC及びTPCを原料として製造したものであるから、本件特許発明1における「式(10)で表される繰り返し構造単位」と、「式(13)で表される繰り返し構造単位」を少なくとも有するものであり(当審注:式(10)及び式(13)の摘記は省略。以下、同様。)、6FDA、OBBC及びTPCのモル比から、「式(10)で表される繰り返し構造単位」に対して「式(13)で表される繰り返し構造単位」の比は「4」と計算され、本件特許発明1における「1.5モル超6.0モル以下」の範囲内である。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリアミドイミド樹脂を含み、
厚さは30μm超であり、
該ポリアミドイミド樹脂は、式(10)で表される繰り返し構造単位と、式(13)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有し、
式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である、光学フィルム。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1−1−1>
本件特許発明1においては、「式(1):
0≦Ts≦0.27 (1)
[式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される]
を満たし」と特定されているのに対し、甲1実施例5発明においては、「Haze0.3%」と特定されている点。

<相違点1−1−2>
本件特許発明1においては、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり」と特定されているのに対し、甲1実施例5発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1−1−3>
本件特許発明1においては、「重量平均分子量が200,000以上であり」と特定されているのに対し、甲1実施例5発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、まず、相違点1−1−1について検討する。
甲2ないし4によると、「ヘーズ(%)=(拡散光透過率/全光線透過率)×100」であることは、光学フィルムの技術分野における技術常識である。
また、甲1には、「JIS K 7136」に準拠して「Haze」、すなわち「ヘーズ」を測定したことは記載されていないが、甲5によると、「JIS K 7105」は甲1の出願時には廃止されているから、甲1においては、「JIS K 7136」に準拠して「ヘーズ」を測定したと考えるのが自然である。
さらに、「JIS K 7136」に準拠している以上、測定装置による差はほとんどないと考えられる。
したがって、甲1実施例5発明における「Haze」、すなわち「ヘーズ」は、本件特許発明1における「Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される」「散乱光割合(%)を表す」「Ts」に相当する。
そうすると、甲1実施例5発明における「Haze0.3%」、すなわち「ヘーズ0.3%」は、本件特許発明1において規定された「Ts」で表すと「0.3」となるが、この値は、「式(1):0≦Ts≦0.27」の範囲外である。
よって、相違点1−1−1は、実質的な相違点である。
他方、甲1には、甲1実施例5発明における「Haze0.3%」を「0.27%」以下とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲1実施例5発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1−1−1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、「広角方向の視認性に優れる」(本件特許の明細書の【0008】及び【0132】参照。)という甲1実施例5発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(ウ)まとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1実施例5発明であるとはいえないし、また、甲1実施例5発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 甲1比較例4発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲1比較例4発明を対比する。
両者の間には、上記ア(ア)と同様の相当関係が成り立つから、両者の一致点は上記ア(ア)と同様である。
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1−2−1>
本件特許発明1においては、「式(1):
0≦Ts≦0.27 (1)
[式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される]を満たし」と特定されているのに対し、甲1比較例4発明においては、「Haze0.2%」と特定されている点。

<相違点1−2−2>
本件特許発明1においては、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり」と特定されているのに対し、甲1比較例4発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1−2−3>
本件特許発明1においては、「重量平均分子量が200,000以上であり」と特定されているのに対し、甲1比較例4発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、事案に鑑み、相違点1−2−2から検討する。
甲1比較例4発明は、本件特許発明1における「Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される」「散乱光割合(%)を表す」「Ts」に相当する「Haze」を有するものの、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」に相当するパラメータは有していないし、当然その値も不明である。
したがって、相違点1−2−2は実質的な相違点である。
他方、甲1には、甲1比較例4発明において、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」を「0.05%以下」とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲1比較例4発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1−2−2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、「広角方向の視認性に優れる」という甲1比較例4発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、令和3年10月14日に提出した意見書において、「甲第1号証の比較例4の光学フィルムは、Tsに相当するヘーズが0.2%と初期値が小さい。且つ、甲第1号証の比較例4の光学フィルムに用いられたポリアミドイミド樹脂(樹脂C)は、TFMB:6FDA:OBBC:TPC=10:2:1:7のモル比を有する。
このように、甲第1号証の比較例4の光学フィルムは、本願の実施例3の光学フィルムのポリアミドイミド樹脂と、同一のモノマーで、同様の組成比率からなるものであって、視認性、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすく、着色性を低減しやすい組成物を使用したポリアミドイミドフィルムである。初期値のTs(ヘーズ)が小さければ、差の絶対値ΔTsも小さくなると技術常識で考えられるが、当該傾向は、本件特許明細書の表2及び乙第6号証の実験結果からもみられる。視認性、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすく、着色性を低減しやすい組成物を使用したポリアミドイミドフィルムであって、初期値のTs(ヘーズ)が2.0%の甲第1号証の比較例4の光学フィルムは、本件特許明細書の表2に記載されている実施例1(参考例1)と同様に、ΔTsも小さくなる蓋然性が高く、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下である」を満足している蓋然性が高い。」旨主張する(上記意見書第6ページ第10ないし25行)。
そこで、該主張について検討する。
「初期値のTs(ヘーズ)が小さければ、差の絶対値ΔTsも小さくなる」ことが技術常識であることを示す証拠は示されていないから、「初期値のTs(ヘーズ)が小さければ、差の絶対値ΔTsも小さくなると技術常識で考えられる」とはいえない。
また、本件特許の明細書の【0131】の【表2】に記載されたものは、2種類のポリアミド又は2種類のポリアミドイミドを混合して製造したフィルムであり、甲1の比較例4のような1種類のポリアミドイミドから製造したフィルムではないし、特許権者が令和3年8月27日に提出した意見書に添付された乙第6号証の実験結果は、甲1の比較例4を追試したものではないから、本件特許の明細書の表2及び乙第6号証の実験結果が甲1の比較例4に当てはまるとは直ちにはいえない。
したがって、甲1の比較例4の光学フィルムが、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下である」を満足している蓋然性が高いとはいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1比較例4発明であるとはいえないし、また、甲1比較例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2、4、5、6及び8について
本件特許発明2、4、5、6及び8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例5発明又は甲1比較例4発明であるとはいえないし、甲1実施例5発明又は甲1比較例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明7、9及び10について
本件特許発明7、9及び10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例5発明又は甲1比較例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)まとめ
したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし10に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。

3 取消理由2(甲7を主引用文献とする新規性進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 甲7実施例3発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲7実施例3発明を対比する。
甲7実施例3発明における「ポリアミドイミドフィルム」は向上された光学的特性を有し、フレキシブルディスプレイ分野で使用することができるものであるから、本件特許発明1における「光学フィルム」に相当する。
甲7実施例3発明における「ポリアミドイミドフィルム」は、TFDB(当審注:「TFMB」の別名である。)、6−FDA、BPDC及びTPCを原料として製造したものであるから、本件特許発明1における「式(10)で表される繰り返し構造単位」と、「式(13)で表される繰り返し構造単位」を少なくとも有するものであり、6FDA、BPDC及びTPCのモル比から、「式(10)で表される繰り返し構造単位」に対して「式(13)で表される繰り返し構造単位」の比は「1.5」と計算され、本件特許発明1における「1.5モル超6.0モル以下」の範囲外である。
甲7実施例3発明における「ポリアミドイミドフィルム」は、「厚み30μm」であるから、本件特許発明1における「厚さは30μm超」を満たさない。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリアミドイミド樹脂を含み、
該ポリアミドイミド樹脂は、式(10)で表される繰り返し構造単位と、式(13)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有する、光学フィルム。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点7−1−1>
本件特許発明1においては、「式(1):
0≦Ts≦0.27 (1)
[式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される]
を満たし」と特定されているのに対し、甲7実施例3発明においては、「ヘイズ0.3%」と特定されている点。

<相違点7−1−2>
本件特許発明1においては、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり」と特定されているのに対し、甲7実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点7−1−3>
本件特許発明1においては、「厚さは30μm超」と特定されているのに対し、甲7実施例3発明においては、「厚さ30μm」と特定されている点。

<相違点7−1−4>
本件特許発明1においては、「重量平均分子量が200,000以上であり」と特定されているのに対し、甲7実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点7−1−5>
本件特許発明1においては、「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である」と特定されているのに対し、甲7実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、事案に鑑み、相違点7−1−2から検討する。
甲7実施例3発明の「ヘイズ」、すなわち「ヘーズ」は、甲7の[138]によると、「日本電色工業社のヘイズメーターNDH−5000Wを使用して、550nmにおける透過度」を測定したものであるが、「日本電色工業社のヘイズメーターNDH−5000W」により測定した「ヘーズ」である以上、本件特許発明1で特定されるような測定方法によるものと値に大きな差はないといえる。
したがって、甲7実施例3発明は、本件特許発明1における「Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される」「散乱光割合(%)を表す」「Ts」に相当する「ヘイズ」をパラメータとして有するとはいえる。
しかし、甲7実施例3発明は、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」に相当するパラメータは有していないし、当然その値も不明である。
したがって、相違点7−1−2は実質的な相違点である。
そして、甲7には、甲7実施例3発明において、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」を「0.05%以下」とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲7実施例3発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点7−1−2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、「広角方向の視認性に優れる」という甲7実施例3発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、令和3年10月14日に提出した意見書において、「甲第7号証に記載の実施例3には、式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して1.5モルであるポリアミドイミド樹脂を含み、厚さ30μmのポリアミドイミドフィルムにおいて「ヘーズ0.3%」であることが記載されている。甲第7号証の段落0046には、「前記芳香族ジアンヒドリドおよび芳香族ジカルボニル化合物の総モルに対して、前記芳香族ジアンヒドリドを20モル%〜50モル%%、前記芳香族ジカルボニル化合物を50モル%〜80モル%投入して、重合体溶液を調製し得る。」と記載されているから、実施例3の「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して1.5モル」から少しでも1.5モルを超える範囲を容易に想到することができる。また、実施例3のポリアミドイミドフィルムにおいてポリアミドイミド樹脂のMwは明記されていないが、引張強度が5.3GPaであるから、Mwが200,000以上であるポリアミドイミド樹脂を含む蓋然性が高い。また、甲第7号証の段落0078には、「一実施形態により製造されたポリアミドイミドフィルムは、厚さ20μm〜70μm、より詳しく、約25μm〜約60μmを基準に・・・」と記載されているので、実施例3の厚さ30μmから、少しでも厚さ30μmを超える範囲を容易に想到することができる。
実施例3のポリアミドイミドフィルムにおいてTsに相当するヘーズは0.3%である。当該ヘーズ0.3%は、訂正発明1の「式(1):0≦Ts≦0.27」と比較すると、有効数字の桁数が異なるが、その範囲を満たしているか、かなり近いほぼ同様の値である。甲第7号証の発明は、向上された光学的特性および機械的特性を有するポリアミドイミドフィルムを得ることを目的としている。このような甲第7号証から、ポリアミドイミドフィルムにおいて、ヘーズをより小さくすることは容易に想到できることであり、ヘーズをより小さくすることにより視認性を高める効果を得ることは容易に予測できるものである。」旨主張するが(上記意見書第7ページ第20行ないし第8ページ第18行)、甲7の実施例3において、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」を「0.05%以下」とすることが容易に想到できるかどうかについては何ら主張していない。
そして、上記のとおり、甲7実施例3発明は、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」を「0.05%以下」とする点を満足しているとはいえず、また、当業者が容易に想到し得たものであるともいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7実施例3発明であるとはいえないし、また、甲7実施例3発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 甲7実施例4発明との対比・判断
本件特許発明1と甲7実施例4発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲7実施例3発明の間と同様の相当関係が成り立つから、両者の一致点は上記ア(ア)と同様である。
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点7−2−1>
本件特許発明1においては、「式(1):
0≦Ts≦0.27 (1)
[式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される]
を満たし」と特定されているのに対し、甲7実施例4発明においては、「ヘイズ0.3%」と特定されている点。

<相違点7−2−2>
本件特許発明1においては、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり」と特定されているのに対し、甲7実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点7−2−3>
本件特許発明1においては、「厚さは30μm超」と特定されているのに対し、甲7実施例4発明においては、「厚さ30μm」と特定されている点。

<相違点7−2−4>
本件特許発明1においては、「重量平均分子量が200,000以上であり」と特定されているのに対し、甲7実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点7−2−5>
本件特許発明1においては、「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である」と特定されているのに対し、甲7実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、事案に鑑み、相違点7−2−2から検討する。
相違点7−2−2は相違点7−1−2と同じであるから、その判断も同じである。

(ウ)まとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7実施例4発明であるとはいえないし、また、甲7実施例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2、4、5及び8について
本件特許発明2、4、5及び8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲7実施例3発明又は甲7実施例4発明であるとはいえないし、甲7実施例3発明又は甲7実施例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明6、7、9及び10について
本件特許発明6、7、9及び10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲7実施例3発明又は甲7実施例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)まとめ
したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし10に係る特許は、取消理由2によっては取り消すことはできない。

4 取消理由3(甲9を主引用文献とする新規性進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲9発明を対比する。
甲9発明における「ポリアミドイミドフィルム」は光学部材のためのものであるから、本件特許発明1における「光学フィルム」に相当する。
甲9発明における「ポリアミドイミドフィルム」は、「膜厚50μm」であるから、本件特許発明1における「厚さは30μm超」を満たす。
甲9発明における「重量平均分子量(Mw)345,000」は本件特許発明1における「重量平均分子量が200,000以上」を満たす。
甲9発明における「ポリアミドイミドフィルム」は、TFMB、6FDA、OBBC及びTPCを原料として製造したものであるから、本件特許発明1における「式(10)で表される繰り返し構造単位」と、「式(13)で表される繰り返し構造単位」を少なくとも有するものであり、6FDA、OBBC及びTPCのモル比から、「式(10)で表される繰り返し構造単位」に対して「式(13)で表される繰り返し構造単位」の比は「2.3」と計算され、本件特許発明1における「1.5モル超6.0モル以下」の範囲内である。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリアミドイミド樹脂を含み、
厚さは30μm超であり、
該ポリアミドイミド樹脂は、式(10)で表される繰り返し構造単位と、式(13)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有し、かつ重量平均分子量が200,000以上であり、
式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である、光学フィルム。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点9−1>
本件特許発明1においては、「式(1):
0≦Ts≦0.27 (1)
[式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される]
を満たし」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点9−2>
本件特許発明1においては、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。

イ 判断
そこで、事案に鑑み、相違点9−2から検討する。
甲9発明は、本件特許発明1における「Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される」「散乱光割合(%)を表す」「Ts」の「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」に相当するパラメータは有していないし、当然その値も不明である。
したがって、相違点9−2は実質的な相違点である。
そして、甲9には、甲9発明において、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」を「0.05%以下」とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲9発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点9−2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、「広角方向の視認性に優れる」という甲9発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、令和3年10月14日に提出した意見書において、「甲第9号証の実施例5のポリアミドイミドフィルムは、本件特許の実施例3の光学フィルムのポリアミドイミド樹脂と、同ーモノマーで、同一の組成比率からなり、ほぼ同じ重量平均分子量のポリアミドイミド樹脂からなるものであって、視認性、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすく、着色性を低減しやすい組成物を使用しており、全光線透過率が91%と高い透明性と屈曲耐性が230,000回と優れた屈曲耐性を有するポリアミドイミドフィルムであるから、Tsが0.27以下である蓋然性が高く、ΔTsも小さくなる蓋然性が高く、「JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下である」を満足している蓋然性が高い」旨主張する(上記意見書第11ページ第17ないし24行)。
そこで、該主張について検討する。
本件特許の明細書の【0121】ないし【0128】及び【0131】によると、甲9の実施例5よりも本件特許の実施例3に近い本件特許の実施例4の「Ts」及び「ΔTs」が、それぞれ、「0.34」及び「0.06」であり、本件特許発明1の「0≦Ts≦0.27」及び「ΔTsは0.05%以下」の条件を満たさない。
そうすると、甲9の実施例5の「Ts」が「0.27」以下となり、「ΔTs」が「0.05%以下である」を満足している蓋然性が高いとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

ウ まとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲9発明であるとはいえないし、また、甲9発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2、4、5、6及び8について
本件特許発明2、4、5、6及び8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲9発明であるとはいえないし、甲9発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明7、9及び10について
本件特許発明7、9及び10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲9発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)まとめ
したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし10に係る特許は、取消理由3によっては取り消すことはできない。

第6 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由はない。

第7 結語
上記第5及び6のとおり、本件特許の請求項1、2及び4ないし10に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2及び4ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。



 
発明の名称 (54)【発明の名称】光学フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル表示装置の前面板等として使用される光学フィルム、及び該光学フィルムを備えるフレキシブル表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池や画像表示装置等の表示部材の材料としてガラスが用いられてきた。しかしながら、近年の小型化、薄型化、軽量化及びフレキシブル化の要求に対して、十分な材質を有していなかった。そのため、ガラスの代替材料として各種フィルムが検討されている。このようなフィルムとしては、例えば、ポリイミド系樹脂を含む光学フィルムがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−215412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学フィルムがフレキシブル表示装置の前面板等の透明部材に適用される場合には、画像表示面が屈曲した状態で映像を表示する場合があるため、非屈曲性の画像表示面に比べ広角方向の優れた視認性が要求される。しかしながら、本発明者の検討によれば、従来のポリイミド系樹脂を含む光学フィルムでは、この広角方向の視認性を十分に満足できない場合があることがわかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、広角方向の視認性に優れた光学フィルム、及び該光学フィルムを備えるフレキシブル表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む光学フィルムにおいて、散乱光割合が所定の範囲であると、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の態様が含まれる。
【0007】
[1]ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み、式(1):
0≦Ts≦0.35 (1)
[式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれJISK7136に準拠して測定された拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表す]
を満たす、光学フィルム。
[2]80℃における引張弾性率は、4,000〜9,00OMPaである、[1]に記載の光学フィルム。
[3]JISK5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.15%以下である、[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
[4]厚さは10〜150μmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の光学フィルム。
[5]フィラーの含有量は、光学フィルムの質量に対して5質量%以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の光学フィルム。
[6]少なくとも一方の面にハードコート層を有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の光学フィルム。
[7]前記ハードコート層の厚さは3〜30μmである、[6]に記載の光学フィルム。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載の光学フィルムを備えるフレキシブル表示装置。
[9]さらに、タッチセンサを備える、[8]に記載のフレキシブル表示装置。
[10]さらに、偏光板を備える、[8]又は[9]に記載のフレキシブル表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学フィルムは、広角方向の視認性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、透明ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み、式(1):
0≦Ts≦0.35 (1)
[式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれJISK7136に準拠して測定された拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表す]
を満たす。なお、散乱光割合は、後述する光学フィルムの厚さの範囲における散乱光割合であってよい。
【0010】
式(1)に示されるように、散乱光割合(Ts)は、全光線透過率(Tt)に対する拡散光透過率(Td)の割合を示し、Tsが小さいほど、拡散光の割合が小さく、光学フィルム表面および内部で光が散乱されにくい。
【0011】
本発明の光学フィルムは、散乱光割合が0〜0.35%と小さいため、広角方向の視認性に優れている。そのため、本発明の光学フィルムを画像表示装置に適用した場合に、光学フィルムを斜め方向から見ても、表示部に映し出される映像に歪みが生じたり、該映像がぼやけたりする現象を有効に抑制できる。本発明の光学フィルムはこのような特性を有することから、例えばフレキシブルディスプレイに適用した場合に画像表示面が屈曲した状態で映像が表示されたとしても、高い鮮明度で視認することができる。本明細書において、視認性とは、光学フィルムを適用した画像表示装置の表示部を目視で見たときの見えやすさを意味し、例えば表示部に映し出される映像に歪みが生じたり、該映像がぼやけたりする現象を抑制できる特性を示す。また、本明細書において、広角方向とは、光学フィルム平面に対するあらゆる角度方向を示し、特に光学フィルム平面に対する斜め方向を示す。
【0012】
式(1)において、拡散光透過率(Td)は、JIS K 7136に準拠して、分光測色計を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。また、全光線透過率(Tt)は、JIS K 7136に準拠して、ヘーズメーターを用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0013】
本発明の光学フィルムにおいて、散乱光割合は、好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.25%以下、さらに好ましくは0.20%以下、特に好ましくは0.15%以下、最も好ましくは0.10%以下である。散乱光割合が上記の上限以下であると、広角方向の視認性を向上しやすい。散乱光割合の下限は0以上である。なお、光学フィルムの組成、例えば光学フィルムに含まれる樹脂を構成する繰り返し構造の種類や構成比、及び光学フィルムに含まれる紫外線吸収剤等の添加剤の種類や含有量等;光学フィルムの厚さ;又は光学フィルムの製造条件、例えばワニス溶媒の種類、乾燥温度、乾燥時間等を適宜調整することで、式(1)を満たすように調整できる。特に、光学フィルム形成工程において、後述の乾燥条件で行うと式(1)を満たすように調整しやすい。
【0014】
本発明の光学フィルムにおいて、全光線透過率(Tt)は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率が上記の下限以上であると光学フィルムの透明性が良好となり、画像表示装置に適用した場合に優れた視認性を発現しやすい。また、全光線透過率の上限は通常100%以下である。なお、全光線透過率は、後述する光学フィルムの厚さの範囲における全光線透過率(Tt)であってよい。全光線透過率が前記の範囲にあると、例えば、表示装置に組みこんだときに、バックライトの光量を減らしても明るい表示を得られる傾向があり、エネルギーの節約に貢献できる。
【0015】
本発明の光学フィルムにおいて、拡散光透過率(Td)は、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.30以下、さらに好ましくは0.25以下、特に好ましくは0.20以下である。拡散光透過率(Td)が上記の上限以下であると、拡散光の割合が小さく、広角方向の視認性を向上しやすい。また、拡散光透過率(Td)の下限は、通常、0.01以上である。なお、拡散光透過率は、後述する光学フィルムの厚さの範囲における拡散光透過率(Td)であってよい。
【0016】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の光学フィルムは、広角方向の優れた視認性に加え、優れた引張弾性率を有することもできる。光学フィルムの80℃における引張弾性率は、好ましくは4,000MPa以上、より好ましくは4,500MPa以上、特に好ましくは5,000MPa以上であり、好ましくは9,000MPa以下、より好ましくは8,500MPa以下である。引張弾性率が上記範囲内であると、光学フィルムに凹み欠陥が生じにくくなるとともに、耐屈曲性を発現しやすくなる傾向にある。なお、光学フィルムの引張弾性率は、JIS K 7127に準拠して、引張試験機を用いて測定でき、例えば実施例の記載の方法により測定できる。
【0017】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の光学フィルムは耐折性に優れる。本発明の光学フィルムにおいて、ASTM規格D2176−16に準拠したMIT耐折疲労試験における耐折回数は、好ましくは200,000回以上、より好ましくは300,000回以上、さらに好ましくは500,000回以上、特に好ましくは700,000回以上である。耐折回数が上記の下限以上であると、折り曲げてもクラックや割れ等が生じにくい。なお、MIT耐折疲労試験は、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の光学フィルムは、耐屈曲性に優れる。そのため、繰り返し屈曲させても、光学特性を維持できる。本発明の光学フィルムにおいて、JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の散乱光割合の差の絶対値ΔTs(%)は好ましくは1.4%以下、より好ましくは1.2%以下、さらに好ましくは1.0%以下、よりさらに好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.1%以下、より特に好ましくは0.05%以下、最も好ましくは0.02%以下である。ΔTsが上記範囲であると、フレキシブルディスプレイ等の画像表示装置に適用した場合に、繰り返し屈曲させても広角方向の優れた視認性を維持しやすい。なお、耐屈曲性試験は、JIS K 5600−5−1に準拠して、屈曲試験機により測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。本明細書において、光学特性とは、例えば、散乱光割合、拡散光透過率、全光線透過率、黄色度(YI)及びヘーズを含む光学的に評価し得る特性を示し、「光学特性が向上する」とは、例えば、散乱光割合が低くなること、拡散光透過率が低くなること、全光線透過率が高くなること、黄色度が低くなること、又はヘーズが低くなること等を意味する。
【0019】
本発明の一実施態様において、本発明の光学フィルムのヘーズは、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下、特に好ましくは0.3%以下、最も好ましくは0.2%以下である。光学フィルムのヘーズが上記の上限以下であると透明性が良好となり、例えば画像表示装置に適用した場合に、優れた視認性を発現しやすい。またヘーズの下限は通常0.01%以上である。なお、ヘーズは、JISK7136:2000に準拠してヘーズコンピュータを用いて測定できる。
【0020】
本発明の光学フィルムの黄色度(YI)は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。光学フィルムの黄色度が上記の上限以下であると透明性が良好となり、例えば画像表示装置に適用した場合に、優れた視認性を発現しやすい。また黄色度は通常−5以上であり、好ましくは−2以上である。なお、黄色度(YI)は、JIS K 7373:2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計を用いて300〜800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、YI=100×(1.2769X―1.0592Z)/Yの式に基づいて算出できる。
【0021】
本発明の光学フィルムの厚さは、用途に応じて適宜調整されるが、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上、とりわけ好ましくは30μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは85μm以下である。光学フィルムの厚さが上記範囲であると、耐屈曲性及び視認性の観点から有利である。光学フィルムの厚さは、膜厚計などで測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0022】
<樹脂>
本発明の光学フィルムは、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む。ポリイミド系樹脂とは、イミド基を含む繰返し構造単位を含有する樹脂(以下、ポリイミド樹脂ということがある)、並びにイミド基及びアミド基の両方を含む繰返し構造単位を含有する樹脂(以下、ポリアミドイミド樹脂ということがある)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を示す。また、ポリアミド系樹脂とは、アミド基を含む繰り返し構造単位を含有する樹脂を示す。
【0023】
ポリイミド系樹脂は、式(10)で表される繰り返し構造単位を有することが好ましい。ここで、Gは4価の有機基であり、Aは2価の有機基である。ポリイミド系樹脂は、G及び/又はAが異なる、2種類以上の式(10)で表される繰り返し構造単位を含んでいてもよい。

【0024】
ポリイミド系樹脂は、光学フィルムの各種物性を損なわない範囲で、式(11)、式(12)及び式(13)で表される繰り返し構造単位からなる群から選択される1以上の繰り返し構造単位を含んでいてもよい。
【0025】

【0026】
式(10)及び式(11)中、G及びG1は、それぞれ独立して、4価の有機基であり、好ましくは炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。G及びG1としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)又は式(29)で表される基並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。光学フィルムの黄色度(YI値)を抑制しやすいことから、なかでも、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)又は式(27)で表される基が好ましい。
【0027】

【0028】
式(20)〜式(29)中、
*は結合手を表し、
Zは、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−Ar−、−SO2−、−CO−、−O−Ar−O−、−Ar−O−Ar−、−Ar−CH2−Ar−、−Ar−C(CH3)2−Ar−又は−Ar−SO2−Ar−を表す。Arはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。
【0029】
式(12)中、G2は3価の有機基であり、好ましくは炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。G2としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)又は式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基並びに3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0030】
式(13)中、G3は2価の有機基であり、好ましくは炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。G3としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)又は式(29)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基及び炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0031】
式(10)〜式(13)中、A、A1、A2及びA3は、それぞれ独立して、2価の有機基であり、好ましくは炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。A、A1、A2及びA3としては、式(30)、式(31)、式(32)、式(33)、式(34)、式(35)、式(36)、式(37)もしくは式(38)で表される基;それらがメチル基、フルオロ基、クロロ基もしくはトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0032】

【0033】
式(30)〜式(38)中、
*は結合手を表し、
Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−又は−CO−を表す。
1つの例は、Z1及びZ3が−O−であり、かつ、Z2が−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−又は−SO2−である。Z1とZ2との各環に対する結合位置、及び、Z2とZ3との各環に対する結合位置は、それぞれ、各環に対してメタ位又はパラ位であることが好ましい。
【0034】
ポリイミド系樹脂は、視認性を向上させやすい観点から、式(10)で表される繰り返し構造単位と式(13)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有するポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。また、ポリアミド系樹脂は、式(13)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有することが好ましい。
【0035】
本発明の一実施態様において、ポリイミド系樹脂は、ジアミン及びテトラカルボン酸化合物(酸クロリド化合物、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸化合物類縁体)、並びに、必要に応じて、ジカルボン酸化合物(酸クロリド化合物等のジカルボン酸化合物類縁体)、トリカルボン酸化合物(酸クロリド化合物、トリカルボン酸無水物等のトリカルボン酸化合物類縁体)等を反応(重縮合)させて得られる縮合型高分子である。式(10)又は式(11)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン及びテトラカルボン酸化合物から誘導される。式(12)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン及びトリカルボン酸化合物から誘導される。式(13)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン及びジカルボン酸化合物から誘導される。
【0036】
本発明の一実施態様において、ポリアミド系樹脂は、ジアミンとジカルボン酸化合物とを反応(重縮合)させて得られる縮合型高分子である。すなわち、式(13)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン及びジカルボン酸化合物から誘導される。
【0037】
テトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。
【0038】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物及び4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物及び4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0039】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては,環式又は非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは,脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり,その具体例としては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6―テトラカルボン酸二無水物,ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物及びこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ,これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。また,環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
【0040】
上記テトラカルボン酸二無水物の中でも,視認性,弾性率及び耐屈曲性を向上しやすく,着色性を低減しやすい観点から,1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物,ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフクル酸二無水物,並びにこれらの混合物が好ましい。また,テトラカルボン酸として,上記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体を用いてもよい。
【0041】
トリカルボン酸化合物としては,芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物,酸無水物等が挙げられ,2種以上を併用してもよい。
具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6−ナフタレントリカルボン酸−2,3−無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合,−CH2−,−C(CH3)2−,−C(CF3)2−,−SO2−もしくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
【0042】
ジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、それらを2種以上併用してもよい。それらの具体例としては、テレフタル酸ジクロリド(テレフタロイルクロリド(TPC));イソフタル酸ジクロリド;ナフタレンジカルボン酸ジクロリド;4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロリド;3,3’−ビフェニルジカルボン酸ジクロリド;4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)(OBBC);炭素数8以下である鎖式炭化水素のジカルボン酸化合物及び2つの安息香酸が単結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−もしくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。これらのジカルボン酸化合物を使用すると、視認性、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすく、着色性を低減しやすい観点から好ましい。
【0043】
ジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン又はこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、芳香環がベンゼン環であることが好ましい。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。
【0044】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン及び1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0045】
芳香族ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン;4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’一ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’一ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB))、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0046】
上記ジアミンの中でも、視認性、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすく、着色性を低減しやすい観点からは、ビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることがさらに好ましく、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを用いることがよりさらに好ましい。
【0047】
ポリイミド系樹脂は、上記ジアミン、テトラカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物等の各原料を慣用の方法、例えば、攪拌等の方法により混合した後、得られた中間体をイミド化触媒及び必要に応じて脱水剤の存在下で、イミド化することにより得られる。ポリアミド系樹脂は、上記ジアミン、ジカルボン酸化合物等の各原料を慣用の方法、例えば、攪拌等の方法により混合することで得られる。
【0048】
イミド化工程で使用されるイミド化触媒としては、特に限定されないが、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−ブチルピロリジン、N−ブチルピペリジン、及びN−プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);並びに2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3,4−シクロペンテノピリジン、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン、及びイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。
【0049】
イミド化工程で使用される脱水剤としては、特に限定されないが、例えば無水酢酸、プロピオン酸無水物、イソ酪酸無水物、ピバル酸無水物、酪酸無水物、イソ吉草酸無水物などが挙げられる。
【0050】
各原料の混合及びイミド化工程において、反応温度は、特に限定されないが、例えば15〜350℃、好ましくは20〜100℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば10分〜10時間程度である。必要に応じて、不活性雰囲気又は減圧の条件下において反応を行ってよい。また、反応は溶媒中で行ってよく、溶媒としては、例えばワニスの調製に使用される溶媒として例示のものが挙げられる。反応後、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂を精製する。精製方法としては、例えば反応液に貧溶媒を加えて再沈殿法により樹脂を析出させ、乾燥し沈殿物を取りだし、必要に応じて沈殿物をメタノール等の溶媒で洗浄して乾燥させる方法等が挙げられる。なお、ポリイミド系樹脂の製造は、例えば特開2006−199945号公報又は特開2008−163107号公報に記載の製造方法を参照してもよい。また、ポリイミド系樹脂は、市販品を使用することもでき、その具体例としては、三菱瓦斯化学(株)製ネオプリム(登録商標)、河村産業(株)製KPI−MX300F等が挙げられる。
【0051】
本発明の一実施態様において、ポリアミドイミド樹脂において、式(13)で表される構成単位の含有量は、式(10)で表される構成単位1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.5モル以上、さらに好ましくは1.0モル以上、特に好ましくは1.5モル以上であり、好ましくは6.0モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは4.5モル以下である。式(13)で表される構成単位の含有量が上記範囲であると、広角方向の視認性、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすい。
【0052】
ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは200,000以上、より好ましくは250,000以上、さらに好ましくは300,000以上であり、好ましくは600,000以下、より好ましくは550,000以下、さらに好ましくは500,000である。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の重量平均分子量が上記の下限以上であると、光学フィルムの弾性率及び耐屈曲性を向上しやすい。また該重量平均分子量が上記の上限以下であると、ワニスの粘度を低減しやすいとともに、光学フィルムの延伸性及び加工性を向上しやすい。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算により求めることができ、例えば実施例に記載の方法により算出できる。
【0053】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、例えば上記の含フッ素置換基等によって導入することができる、フツ素原子等のハロゲン原子を含んでよい。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂がハロゲン原子を含む場合、光学フィルムの弾性率を向上させ、かつ黄色度(YI値)を低減させやすい。光学フィルムの弾性率が高いと、該フィルムにおけるキズ及びシワ等の発生を抑制しやすく、また、光学フィルムの黄色度が低いと、該フィルムの透明性及び視認性を向上させやすくなる。ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂にフッ素原子を含有させるために好ましい含フツ素置換基としては、例えばフルオロ基及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0054】
ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂におけるハロゲン原子の含有量は、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の質量を基準として、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。ハロゲン原子の含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの弾性率をより向上させ、吸水率を下げ、黄色度(YI値)をより低減し、透明性及び視認性をより向上させやすい。ハロゲン原子の含有量が上記の上限以下であると、合成がしやすくなる。
【0055】
光学フィルム中のポリイミド系樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。光学フィルムの平坦性及び広角方向の視認性を向上しやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。また、イミド化率の上限は100%以下である。なお、イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができ、例えば実施例に記載の方法により求めることができる。
【0056】
本発明の一実施形態において、光学フィルム中におけるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量は、光学フィルムの質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量が上記の下限以上であることが、広角方向の視認性、弾性率及び耐屈曲性の観点から有利である。なお、光学フィルム中におけるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の合有量は、光学フィルムの質量に対して、通常100質量%以下である。
【0057】
光学フィルムに含まれる樹脂として、2種類以上のポリイミド系樹脂又は2種類以上のポリアミド系樹脂を使用してもよく、ポリイミド系樹脂とポリアミド系樹脂とを組み合わせて使用してもよい。
散乱光割合が低い光学フィルムを得るためには、後述の塗布工程において、特定の固形分濃度及び粘度を有するワニスを基材に塗布し、均一な塗膜を形成することが好ましい。本発明の一実施態様では、2つ以上のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂、例えば2つ以上のポリイミド系樹脂、2つ以上のポリアミド系樹脂、又は、1つ以上のポリイミド系樹脂と1つ以上のポリアミド系樹脂との組合せ等を使用することが好ましく、特に、互いに異なる重量平均分子量を有する2つ以上のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂を使用することがより好ましい。後述の塗布工程において、このような樹脂をワニスに含むと、ワニスの固形分濃度及び粘度を特定範囲に容易に調整し得るため、均一な塗膜を形成でき、得られる光学フィルムを、式(1)を満たすように調整しやすい。
【0058】
本発明の好ましい実施態様では、互いに異なる重量平均分子量を有する2つ以上のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂であって、少なくとも1つのポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の重量平均分子量が250,000〜500,000であり、少なくとも1つのポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の重量平均分子量が200,000〜450,000である。また、本発明のより好ましい実施態様では、互いに異なる重量平均分子量を有する2つのポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂であって、一方のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の重量平均分子量が250,000〜500,000であり、他方のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の重量平均分子量が200,000〜450,000である。後述の塗布工程において、このような樹脂をワニスに含むと、ワニスの固形分濃度及び粘度を特定範囲に容易に調整し得るため、均一な塗膜を形成でき、得られる光学フィルムを、式(1)を満たすように調整しやすい。
また、一方のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂と、他方のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂との質量割合(前者/後者)は、樹脂の種類や所望とするワニスの固形分濃度及び粘度等に応じて適宜選択でき、例えば5/95〜95/5であってよい。
【0059】
<添加剤>
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤をさらに含んでいてもよい。例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好適な市販の紫外線吸収剤としては、例えば、住化ケムテックス(株)製のSumisorb(登録商標) 340、(株)ADEKA製のアデカスタブ(登録商標) LA−31、及びBASFジャパン(株)製のチヌビン(登録商標) 1577等が挙げられる。紫外線吸収剤を含有すると、光学フィルム中の樹脂の劣化が抑制されるため、光学フィルムの光学特性を高めやすい。紫外線吸収剤の含有量は、本発明の光学フィルムの質量に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜6質量%である。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲であると、光学フィルムの光学特性をより向上しやすい。
【0060】
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤以外の他の添加剤をさらに含んでいてもよい。このような他の添加剤としては、例えば、フィラー、増白剤、酸化防止剤、pH調整剤及びレベリング剤などが挙げられる。ただし、本発明の光学フィルムは、フィラー(例えば、シリカ粒子)を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、フィラーの含有量は、光学フィルムの質量に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以下である。
【0061】
本発明の光学フィルムの用途は特に限定されず、種々の用途に使用してよい。本発明の光学フィルムは、上記に述べたように単層であっても、積層体であってもよく、本発明の光学フィルムをそのまま使用してもよいし、さらに他のフィルムとの積層体として使用してもよい。なお、光学フィルムが積層体である場合、光学フィルムの片面又は両面に積層された全ての層を含めて光学フィルムと称する。
【0062】
本発明の光学フィルムが積層体である場合、光学フィルムの少なくとも一方の面に1以上の機能層を有することが好ましい。機能層としては、例えば紫外線吸収層、ハードコート層、プライマー層、ガスバリア層、粘着層、色相調整層、屈折率調整層などが挙げられる。機能層は単独又は二種以上組合せて使用できる。
【0063】
紫外線吸収層は、紫外線吸収の機能を有する層であり、例えば、紫外線硬化型の透明樹脂、電子線硬化型の透明樹脂、及び熱硬化型の透明樹脂から選ばれる主材と、この主材に分散した紫外線吸収剤とから構成される。
【0064】
粘着層は、粘着性の機能を有する層であり、光学フィルムを他の部材に接着させる機能を有する。粘着層の形成材料としては、通常知られたものを用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を用いることができる。この場合、事後的にエネルギーを供給することで熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を高分子化し硬化させることができる。
【0065】
粘着層は、感圧型接着剤(Pressure Sensitive Adhesive、PSA)と呼ばれる、押圧により対象物に貼着される層であってもよい。感圧型接着剤は、「常温で粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する物質」(JIS K 6800)である粘着剤であってもよく、「特定成分を保護被膜(マイクロカプセル)に内容し、適当な手段(圧力、熱等)によって被膜を破壊するまでは安定性を保持できる接着剤」(JIS K 6800)であるカプセル型接着剤であってもよい。
【0066】
色相調整層は、色相調整の機能を有する層であり、光学積層体を目的の色相に調整することができる層である。色相調整層は、例えば、樹脂及び着色剤を含有する層である。この着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、チタニウムオキサイド系焼成顔料、群青、アルミン酸コバルト、及びカーボンブラック等の無機顔料;アソ系化合物、キナクリドン系化合物、アンスラキノン系化合物、ペリレン系化合物、イソインドリノン系化合物、フタロシアニン系化合物、キノフクロン系化合物、スレン系化合物、及びジケトピロロピロール系化合物等の有機顔料;硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等の体質顔料;並びに塩基性染料、酸性染料、及び媒染染料等の染料を挙げることができる。
【0067】
屈折率調整層は、屈折率調整の機能を有する層であり、例えば単層の光学フィルムとは異なる屈折率を有し、光学フィルムに所定の屈折率を付与することができる層である。屈折率調整層は、例えば、適宜選択された樹脂、及び場合によりさらに顔料を含有する樹脂層であってもよいし、金属の薄膜であってもよい。屈折率を調整する顔料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化タンタルが挙げられる。該顔料の平均一次粒子径は、0.1μm以下であってもよい。顔料の平均一次粒子径を0.1μm以下とすることにより、屈折率調整層を透過する光の乱反射を防止し、透明度の低下を防止することができる。屈折率調整層に用いられる金属としては、例えば、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸窒化チタン、窒化チタン、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等の金属酸化物又は金属窒化物が挙げられる。
【0068】
本発明の好ましい実施態様において、光学フィルムは、少なくとも一方の面(片面又は両面)にハードコート層を有する。両面にハードコート層を有する場合、2つのハードコート層は、含まれる成分が互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0069】
ハードコート層としては、例えばアクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ベンジルクロリド系、ビニル系等の公知のハードコート層が挙げられる。これらの中でも光学フィルムの広角方向の視認性の低下を抑制し、かつ耐屈曲性を向上させる観点から、アクリル系、ウレタン系、及びそれらの組み合わせのハードコート層を好ましく用いることができる。ハードコート層は、硬化性化合物を含む硬化性組成物の硬化物であることが好ましく、活性エネルギー線の照射により、該硬化性化合物を重合して形成される。硬化性化合物としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート系化合物が挙げられる。多官能(メタ)アクリレート系化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0070】
多官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、;ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイル基が導入されたホスファゼン系(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のカルボン酸ハロゲン化物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物;ならびに、上記各化合物の2量体、3量体などのようなオリゴマーなどである。これらの化合物はそれぞれ単独又は2種以上を混合して用いられる。
【0071】
硬化性化合物には、上記の多官能(メタ)アクリレート系化合物の他に、単官能(メタ)アクリレート系化合物を含んでよい。単官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの化合物は単独又は2種類以上を混合して用いられる。単官能(メタ)アクリレート系化合物の含有量は、硬化性組成物に含まれる化合物の固形分を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以下である。なお、本明細書において、固形分とは、硬化性組成物に含まれる溶媒を除く、全ての成分を意味する。
【0072】
また、硬化性化合物は、重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、ハードコート層の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーとしては、末端(メタ)アクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリ(メタ)アクリレート、末端(メタ)アクリレートポリスチレン、末端(メタ)アクリレートポリエチレングリコール、末端(メタ)アクリレートアクリロニトリルースチレン共重合体、末端(メタ)アクリレートスチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体などのマクロモノマーを挙げることができる。重合性オリゴマーの含有量は、硬化性組成物に含まれる化合物の固形分を100質量%としたとき、好ましくは5〜50質量%である。
【0073】
ハードコート層を形成する硬化性組成物は、多官能(メタ)アクリレート系化合物及び重合性オリゴマーの他に、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、重合開始剤、シリカ、レベリング剤、溶媒等が挙げられる。溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0074】
ハードコート層の厚さは、光学フィルムの硬度、耐屈曲性及び視認性を向上させる観点から、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜25μm、さらに好ましくは5〜20μmである。
【0075】
本発明の一実施態様において、光学フィルムは、少なくとも一方の面(片面又は両面)に保護フィルムを有していてもよい。例えば光学フィルムの片面に機能層を有する場合には、保護フィルムは、光学フィルム側の表面又は機能層側の表面に積層されていてもよく、光学フィルム側と機能層側の両方に積層されていてもよい。光学フィルムの両面に機能層を有する場合には、保護フィルムは、片方の機能層側の表面に積層されていてもよく、両方の機能層側の表面に積層されていてもよい。保護フィルムは、光学フィルム又は機能層の表面を一時的に保護するためのフィルムであり、光学フィルム又は機能層の表面を保護できる剥離可能なフィルムである限り特に限定されない。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム等が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム及びアクリル系樹脂フィルムからなる群から選択されることが好ましい。光学フィルムが保護フィルムを2つ有する場合、各保護フィルムは同一又は異なっていてもよい。
【0076】
保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、通常、10〜120μm、好ましくは15〜110μm、より好ましくは20〜100μmである。光学フィルムが保護フィルムを2つ有する場合、各保護フィルムの厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0077】
〔光学フィルムの製造方法〕
本発明の光学フィルムは、特に限定されないが、例えば以下の工程:
(a)前記樹脂を含む液(以下、ワニスと記載することがある)を調製する工程(ワニス調製工程)、
(b)ワニスを基材に塗布して塗膜を形成する工程(塗布工程)、及び
(c)塗布された液(塗膜)を乾燥させて、光学フィルムを形成する工程(光学フィルム形成工程)
を含む方法によって製造することができる。
【0078】
ワニス調製工程において、前記樹脂を溶媒に溶解し、必要に応じて、前記紫外線吸収剤及び前記他の添加剤を添加して撹拌混合することによりワニスを調製する。
【0079】
ワニスの調製に用いられる溶媒は、前記樹脂を溶解可能であれば特に限定されない。かかる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組み合わせ(混合溶媒)が挙げられる。これらの中でも、アミド系溶媒又はラクトン系溶媒が好ましい。これらの溶媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。また、ワニスには水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、非環状エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが含まれてもよい。ワニスの固形分濃度は、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
【0080】
塗布工程において、公知の塗布方法により、基材上にワニスを塗布して塗膜を形成する。公知の塗布方法としては、例えばワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、流涎成形法等が挙げられる。
【0081】
基材の例としては、金属系であれば、SUS板、樹脂系であればPETフィルム、PENフィルム、他のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂フィルム、シクロオレフィン系ポリマー(COP)フィルム、アクリル系フィルム等が挙げられる。中でも、平滑性、耐熱性に優れる観点から、PETフィルム、COPフィルム等が好ましく、さらに光学フィルムとの密着性及びコストの観点から、PETフィルムがより好ましい。
【0082】
光学フィルム形成工程において、塗膜を乾燥(第1乾燥と称する)し、基材から剥離後、乾燥塗膜をさらに乾燥(第2乾燥又はポストベーク処理と称する)することにより光学フィルムを形成する。第1乾燥は、必要に応じて、不活性雰囲気又は減圧の条件下において実施されてもよい。第1乾燥は比較的低温で時間をかけて行うことが好ましい。比較的低温で時間をかけて第1乾燥を行うと、得られる光学フィルムの散乱光割合が式(1)を満たすようにしやすい。
【0083】
ここで、本発明の光学フィルムを工業的に製造する場合、実験室レベルでの製造環境と比較して実際の製造環境は低い散乱光割合Tsを得るのに不利である場合が多く、その結果、光学フィルムの広角視認性を高めることが困難な場合がある。第1乾燥を比較的低温で時間をかけて行うことが好ましいことは上記に述べたとおりであるが、実験室レベルでは、第1乾燥を行う際に、乾燥を密閉した乾燥器内で行うことができるため、外的要因による光学フィルムの表面の荒れは比較的生じにくい。これに対し、光学フィルムを工業的に製造する場合には、例えば第1乾燥において広い面積を加熱する必要があるため、加熱の際に送風装置を使用することもある。その結果、光学フィルムの表面状態が荒れやすくなり、光学フィルムの散乱光割合Tsを低くすることが困難である。
【0084】
加熱により乾燥を行う場合、特に光学フィルムを工業的に製造する際の上記のような外的要因を考慮すると、第1乾燥の温度は、好ましくは60〜150℃、より好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは70〜140℃である。第1乾燥の時間は好ましくは1〜60分、より好ましくは5〜40分である。特に光学フィルムを工業的に製造する際の上記のような外的要因を考慮すると、3段階以上の乾燥温度条件下で実施することが好ましい。多段階の条件は、それぞれの段階において、同一又は異なる温度条件及び/又は乾燥時間で実施することができ、例えば3〜10段階、好ましくは3〜8段階で乾燥を行ってもよい。第1乾燥を3段階以上の多段階条件下で実施すると、得られる光学フィルムが式(1)を満たしやすい。3段階以上の多段階条件下での態様では、第1乾燥の温度プロファイルが昇温及び降温を含むことが好ましい。すなわち、光学フィルム形成工程における第1乾燥条件は、温度プロファイルが昇温及び降温を含む3段階以上の加熱温度条件であることがより好ましい。このような温度プロファイルとして4段階の場合を例に挙げると、第1乾燥の温度は、順に70〜90℃(第1の温度)、90〜120℃(第2の温度)、80〜120℃(第3の温度)及び80〜100℃(第4の温度)である。この例では、第1乾燥の温度は、第1の温度から第2の温度へ昇温し、次いで第2の温度から第3の温度へ降温し、更に第3の温度から第4の温度に降温する。ここで第1乾燥の時間は各段階において、例えば、5〜15分である。乾燥塗膜の溶媒残存量が、乾燥塗膜の質量に対して、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは6〜12質量%となるように、第1乾燥は実施されることが好ましい。溶媒残存量が上記範囲であると、乾燥塗膜の基材からの剥離性が良好となり、得られる光学フィルムが式(1)を満たしやすい。
【0085】
第2乾燥の温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは180〜250℃、さらに好ましくは180〜230℃である。第2乾燥の時間は、好ましくは10〜60分、より好ましくは30〜50分である。
【0086】
第2乾燥は、枚葉式で行ってもよいが、工業的に製造する場合には、製造効率の観点から、ロール・ツー・ロール方式で行うことが好ましい。枚葉式では、面内方向に均一に伸長させた状態で乾燥させることが好ましい。
ロール・ツー・ロール方式では、光学フィルムが式(1)を満たしやすい観点から、乾燥塗膜を搬送方向に伸長させた状態で乾燥させることが好ましく、搬送速度は、好ましくは0.1〜5m/分、より好ましくは0.5〜3m/分、さらに好ましくは0.7〜1.5m/分である。第2乾燥は1段階又は多段階の条件で実施されてもよく、光学フィルムが式(1)を満たしやすい観点から、多段階の条件で実施することが好ましい。多段階の条件は、好ましくは、それぞれの段階において、同一又は異なる温度条件、乾燥時間及び熱風の風速から選択される少なくとも1種で実施することができ、例えば、2〜10段階、好ましくは3〜8段階で乾燥を行ってもよい。また、各段階では、熱風の風速は、得られる光学フィルムが式(1)を満たしやすい観点から、好ましくは5〜20m/分、より好ましくは10〜15m/分、さらに好ましくは11〜14m/分である。
【0087】
本発明の光学フィルムがハードコート層を備える場合、ハードコート層は、例えば、光学フィルムの少なくとも一方の面に硬化性組成物を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に高エネルギー線を照射し、塗膜を硬化させて形成することができる。
【0088】
塗布方法は、上記に例示の公知の塗布方法が挙げられる。硬化時の高エネルギー線(例えば活性エネルギー線)における照射強度は、硬化性組成物の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射が好ましい。照射強度は、好ましくは0.1〜6,000mW/cm2、より好ましくは10〜1,000mW/cm2、さらに好ましくは20〜500mW/cm2である。照射強度が前記範囲内であると、適当な反応時間を確保でき、光源から輻射される熱及び硬化反応時の発熱による樹脂の黄変や劣化を抑えることができる。照射時間は、硬化性組成物の組成によって適宜選択すればよく、特に制限されるものではないが、前記照射強度と照射時間との積として表される積算光量が好ましくは10〜10,000mJ/cm2、より好ましくは50〜000mJ/cm2、さらに好ましくは80〜500mJ/cm2となるように設定される。積算光量が前記範囲内であると、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて、硬化反応をより確実に進行させることができ、また、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。また、この範囲での照射工程を経ることでハードコート層の硬度をさらに高め得るため有用である。ハードコート層の平滑性を向上させ、光学フィルムの広角方向の視認性を更に向上させる観点から、溶剤の種類、成分比、固形分濃度の最適化及びレベリング剤の添加などが挙げられる。
【0089】
[フレキシブル画像表示装置]
本発明は、前記光学フィルムを備える、フレキシブル表示装置を包含する。本発明の光学フィルムは、好ましくはフレキシブル画像表示装置において前面板として用いられ、該前面板はウインドウフィルムと称されることがある。該フレキシブル画像表示装置は、フレキシブル画像表示装置用積層体と、有機EL表示パネルとからなり、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル画像表示装置用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。フレキシブル画像表示装置用積層体としては、さらに偏光板、好ましくは円偏光板、タッチセンサを含有していてもよく、それらの積層順任意であるが、視認側からウインドウフィルム、偏光板、タッチセンサまたはウインドウフィルム、タッチセンサ、偏光板の順に積層されていることが好ましい。タッチセンサよりも視認側に偏光板が存在すると、タッチセンサのパターンが視認されにくくなり表示画像の視認性が良くなるので好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、前記ウインドウフィルム、偏光板、タッチセンサのいずれかの層の少なくとも一面に形成された遮光パターンを具備することができる。
【0090】
[偏光板]
本発明のフレキシブル表示装置は、上記の通り、偏光板、中でも円偏光板を備えることが好ましい。円偏光板は、直線偏光板にλ/4位相差板を積層することにより右若しくは左円偏光成分のみを透過させる機能を有する機能層である。たとえば外光を右円偏光に変換して有機ELパネルで反射されて左円偏光となった外光を遮断し、有機ELの発光成分のみを透過させることで反射光の影響を抑制して画像を見やすくするために用いられる。円偏光機能を達成するためには、直線偏光板の吸収軸とλ/4位相差板の遅相軸は理論上45°である必要があるが、実用的には45±10°である。直線偏光板とλ/4位相差板は必ずしも隣接して積層される必要はなく、吸収軸と遅相軸の関係が前述の範囲を満足していればよい。全波長において完全な円偏光を達成することが好ましいが実用上は必ずしもその必要はないので本発明における円偏光板は楕円偏光板をも包含する。直線偏光板の視認側にさらにλ/4位相差フィルムを積層して、出射光を円偏光とすることで偏光サングラスをかけた状態での視認性を向上させることも好ましい。
【0091】
直線偏光板は、透過軸方向に振動している光は通すが、それとは垂直な振動成分の偏光を遮断する機能を有する機能層である。前記直線偏光板は、直線偏光子単独または直線偏光子及びその少なくとも一面に貼り付けられた保護フィルムを備えた構成であってもよい。前記直線偏光板の厚さは、200μm以下であってもよく、好ましくは、0.5〜100μmである。直線偏光板の厚さが前記の範囲にあると直線偏光板の柔軟性が低下し難い傾向にある。
【0092】
前記直線偏光子は、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略すことがある)系フィルムを染色、延伸することで製造されるフィルム型偏光子であってもよい。延伸によって配向したPVA系フィルムに、ヨウ素等の二色性色素が吸着、またはPVAに吸着した状態で延伸されることで二色性色素が配向し、偏光性能を発揮する。前記フィルム型偏光子の製造においては、他に膨潤、ホウ酸による架橋、水溶液による洗浄、乾燥等の工程を有していてもよい。延伸や染色工程はPVA系フィルム単独で行ってもよいし、ポリエチレンテレフタレートのような他のフィルムと積層された状態で行うこともできる。用いられるPVA系フィルムの厚さは好ましくは10〜100μmであり、前記延伸倍率は好ましくは2〜10倍である。
さらに前記偏光子の他の一例としては、液晶偏光組成物を塗布して形成する液晶塗布型偏光子が挙げられる。前記液晶偏光組成物は、液晶性化合物及び二色性色素化合物を含むことができる。前記液晶性化合物は、液晶状態を示す性質を有していればよく、特にスメクチック相等の高次の配向状態を有していると高い偏光性能を発揮することができるため好ましい。また、液晶性化合物は、重合性官能基を有することが好ましい。
前記二色性色素化合物は、前記液晶化合物とともに配向して二色性を示す色素であって、重合性官能基を有していてもよく、また、二色性色素自身が液晶性を有していてもよい。
液晶偏光組成物に含まれる化合物のいずれかは重合性官能基を有する。前記液晶偏光組成物はさらに開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤などを含むことができる。
前記液晶偏光層は、配向膜上に液晶偏光組成物を塗布して液晶偏光層を形成することにより製造される。液晶偏光層は、フィルム型偏光子に比べて厚さを薄く形成することができ、その厚さは好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmである。
【0093】
前記配向膜は、例えば基材上に配向膜形成組成物を塗布し、ラビング、偏光照射等により配向性を付与することにより製造される。前記配向膜形成組成物は、配向剤を含み、さらに溶剤、架橋剤、開始剤、分散剤、レベリング剤、シランカップリング剤等を含んでいてもよい。前記配向剤としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリアクリレート類、ポリアミック酸類、ポリイミド類が挙げられる。偏光照射により配向性を付与する配向剤を用いる場合、シンナメート基を含む配向剤を使用することが好ましい。前記配向剤として使用される高分子の重量平均分子量は、例えば、10,000〜1,000,000程度である。前記配向膜の厚さは、好ましくは5〜10,000nmであり、配向規制力が十分に発現される点で、より好ましくは10〜500nmである。
前記液晶偏光層は基材から剥離して転写して積層することもできるし、前記基材をそのまま積層することもできる。前記基材が、保護フィルムや位相差板、ウィンドウフィルムの透明基材としての役割を担うことも好ましい。
【0094】
前記保護フィルムとしては、透明な高分子フィルムであればよく前記ウィンドウフィルムの透明基材に使用される材料や添加剤と同じものが使用できる。また、エポキシ樹脂等のカチオン硬化組成物やアクリレート等のラジカル硬化組成物を塗布して硬化して得られるコーティング型の保護フィルムであってもよい。該保護フィルムは、必要により可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。該保護フィルムの厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは1〜100μmである。保護フィルムの厚さが前記の範囲にあると、該フィルムの柔軟性が低下し難い傾向にある。
【0095】
前記λ/4位相差板は、入射光の進行方向に直交する方向(フィルムの面内方向)にλ/4の位相差を与えるフィルムである。前記λ/4位相差板は、セルロース系フィルム、オレフィン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等の高分子フィルムを延伸することで製造される延伸型位相差板であってもよい。前記λ/4位相差板は、必要により位相差調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。
前記延伸型位相差板の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは1〜100μmである。延伸型位相差板の厚さが前記の範囲にあると、該延伸型位相差板の柔軟性が低下し難い傾向にある。
さらに前記λ/4位相差板の他の一例としては、液晶組成物を塗布して形成する液晶塗布型位相差板が挙げられる。
前記液晶組成物は、ネマチック、コレステリック、スメクチック等の液晶状態を示す液晶性化合物を含む。前記液晶性化合物は、重合性官能基を有する。
前記液晶組成物は、さらに開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤などを含むことができる。
前記液晶塗布型位相差板は、前記液晶偏光層と同様に、液晶組成物を下地上に塗布、硬化して液晶位相差層を形成することで製造することができる。液晶塗布型位相差板は、延伸型位相差板に比べて厚さを薄く形成することができる。前記液晶偏光層の厚さは、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmである。
前記液晶塗布型位相差板は基材から剥離して転写して積層することもできるし、前記基材をそのまま積層することもできる。前記基材が、保護フィルムや位相差板、ウインドウフィルムの透明基材としての役割を担うことも好ましい。
【0096】
一般的には、短波長ほど複屈折が大きく長波長になるほど小さな複屈折を示す材料が多い。この場合には全可視光領域でλ/4の位相差を達成することはできないので、視感度の高い560nm付近に対してλ/4となるように、面内位相差は、好ましくは100〜180nm、より好ましくは130〜150nmとなるように設計される。通常とは逆の複屈折率波長分散特性を有する材料を用いた逆分散λ/4位相差板は、視認性が良好となる点で好ましい。このような材料としては、例えば延伸型位相差板は特開2007−232873号公報等に、液晶塗布型位相差板は特開2010−30979号公報等に記載されているものを用いることができる。
また、他の方法としてはλ/2位相差板と組合せることで広帯域λ/4位相差板を得る技術も知られている(例えば、特開平10−90521号公報など)。λ/2位相差板もλ/4位相差板と同様の材料方法で製造される。延伸型位相差板と液晶塗布型位相差板の組合せは任意であるが、どちらも液晶塗布型位相差板を用いることにより厚さを薄くすることができる。
前記円偏光板には斜め方向の視認性を高めるために、正のCプレートを積層する方法が知られている(例えば、特開2014−224837号公報など)。正のCプレートは、液晶塗布型位相差板であっても延伸型位相差板であってもよい。該位相差板の厚さ方向の位相差は、好ましくは−200〜−20nm、より好ましくは−140〜−40nmである。
【0097】
[タッチセンサ]
本発明のフレキシブル表示装置は、上記の通り、タッチセンサを備えることが好ましい。タッチセンサは入力手段として用いられる。タッチセンサとしては、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式等様々な様式が挙げられ、好ましくは静電容量方式が挙げられる。
静電容量方式タッチセンサは活性領域及び前記活性領域の外郭部に位置する非活性領域に区分される。活性領域は表示パネルで画面が表示される領域(表示部)に対応する領域であって、使用者のタッチが感知される領域であり、非活性領域は表示装置で画面が表示されない領域(非表示部)に対応する領域である。タッチセンサはフレキシブルな特性を有する基板と、前記基板の活性領域に形成された感知パターンと、前記基板の非活性領域に形成され、前記感知パターンとパッド部を介して外部の駆動回路と接続するための各センシングラインを含むことができる。フレキシブルな特性を有する基板としては、前記ウインドウフィルムの透明基板と同様の材料が使用できる。
【0098】
前記感知パターンは、第1方向に形成された第1パターン及び第2方向に形成された第2パターンを備えることができる。第1パターンと第2パターンとは互いに異なる方向に配置される。第1パターン及び第2パターンは、同一層に形成され、タッチされる地点を感知するためには、それぞれのパターンが電気的に接続されなければならない。第1パターンは複数の単位パターンが継ぎ手を介して互いに接続された形態であるが、第2パターンは複数の単位パターンがアイランド形態に互いに分離された構造になっているので、第2パターンを電気的に接続するためには別途のブリッジ電極が必要である。第2パターンの接続のための電極には、周知の透明電極を適用することができる。該透明電極の素材としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウム亜鉛スズ酸化物(IZTO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、カドミウムスズ酸化物(CTO)、PEDOT(poly(3,4―ethylenedioxythiophene))、炭素ナノチュープ(CNT)、グラフェン、金属ワイヤなどが挙げられ、好ましくはITOが挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用できる。金属ワイヤに使用される金属は特に限定されず、例えば、銀、金、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタン、テレニウム、クロムなどが挙げられ、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
ブリッジ電極は感知パターン上部に絶縁層を介して前記絶縁層上部に形成されることができ、基板上にブリッジ電極が形成されており、その上に絶縁層及び感知パターンを形成することができる。前記ブリッジ電極は感知パターンと同じ素材で形成することもでき、モリブデン、銀、アルミニウム、銅、パラジウム、金、白金、亜鉛、スズ、チタンまたはこれらのうちの2種以上の合金で形成することもできる。
第1パターンと第2パターンは電気的に絶縁されなければならないので、感知パターンとブリッジ電極の間には絶縁層が形成される。該絶縁層は、第1パターンの継ぎ手とブリッジ電極との間にのみ形成することや、感知パターン全体を覆う層として形成することもできる。感知パターン全体を覆う層の場合、ブリッジ電極は絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して第2パターンを接続することができる。
【0099】
前記タッチセンサは、感知パターンが形成されたパターン領域と、感知パターンが形成されていない非パターン領域との間の透過率の差、具体的には、これらの領域における屈折率の差によって誘発される光透過率の差を適切に補償するための手段として基板と電極の間に光学調節層をさらに含むことができる。該光学調節層は、無機絶縁物質または有機絶縁物質を含むことができる。光学調節層は光硬化性有機バインダー及び溶剤を合む光硬化組成物を基板上にコーティングして形成することができる。前記光硬化組成物は無機粒子をさらに含むことができる。前記無機粒子によって光学調節層の屈折率を高くすることができる。
前記光硬化性有機バインダーは、本発明の効果を損ねない範囲で、例えば、アクリレート系単量体、スチレン系単量体、カルボン酸系単量体などの各単量体の共重合体を含むことができる。前記光硬化性有機バインダーは、例えば、エポキシ基含有繰り返し単位、アクリレート繰り返し単位、カルボン酸繰り返し単位などの互いに異なる各繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
前記無機粒子としては、例えば、ジルコニア粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などが挙げられる。
前記光硬化組成物は、光重合開始剤、重合性モノマー、硬化補助剤などの各添加剤をさらに含むこともできる。
【0100】
[接着層]
前記フレキシブル画像表示装置用積層体を形成する各層(ウインドウフィルム、円偏光板、タッチセンサ)並びに各層を構成するフィルム部材(直線偏光板、λ/4位相差板等)は接着剤によって接合することができる。該接着剤としては、水系接着剤、水系溶剤揮散型接着剤、有機溶剤系、無溶剤系接着剤、固体接着剤、溶剤揮散型接着剤、湿気硬化型接着剤、加熱硬化型接着剤、嫌気硬化型、活性エネルギー線硬化型接着剤、硬化剤混合型接着剤、熱溶融型接着剤、感圧型接着剤(粘着剤)、再湿型接着剤等、通常使用されている接着剤等が使用でき、好ましくは水系溶剤揮散型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、粘着剤を使用できる。接着剤層の厚さは、求められる接着力等に応じて適宜調節することができ、好ましくは0.01〜500μm、より好ましくは0.1〜300μmである。前記フレキシブル画像表示装置用積層体には、複数の接着層が存在するが、それぞれの厚さや種類は、同じであっても異なっていてもよい。
【0101】
前記水系溶剤揮散型接着剤としては、ポリビニルアルコール系ポリマー、でんぷん等の水溶性ポリマー、エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン−ブタジエン系エマルジョン等水分散状態のポリマーを主剤ポリマーとして使用することができる。前記主剤ポリマーと水とに加えて、架橋剤、シラン系化合物、イオン性化合物、架橋触媒、酸化防止剤、染料、顔料、無機フィラー、有機溶剤等を配合してもよい。前記水系溶剤揮散型接着剤によって接着する場合、前記水系溶剤揮散型接着剤を被接着層間に注入して被着層を貼合した後、乾燥させることで接着性を付与することができる。前記水系溶剤揮散型接着剤を用いる場合、その接着層の厚さは、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜1μmである。前記水系溶剤揮散型接着剤を複数層に用いる場合、それぞれの層の厚さや種類は同じであっても異なっていてもよい。
【0102】
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線を照射して接着剤層を形成する反応性材料を含む活性エネルギー線硬化組成物の硬化により形成することができる。前記活性エネルギー線硬化組成物は、ハードコート組成物に含まれるものと同様のラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有することができる。前記ラジカル重合性化合物は、ハードコート組成物におけるラジカル重合性化合物と同じ化合物を用いることができる。
前記カチオン重合性化合物は、ハードコート組成物におけるカチオン重合性化合物と同じ化合物を用いることができる。
活性エネルギー線硬化組成物に用いられるカチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物が特に好ましい。接着剤組成物としての粘度を下げるために単官能の化合物を反応性希釈剤として含むことも好ましい。
【0103】
活性エネルギー線組成物は、粘度を低下させるために、単官能の化合物を含むことができる。該単官能の化合物としては、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系単量体や、1分子中に1個のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
活性エネルギー線組成物は、さらに重合開始剤を含むことができる。該重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等が挙げられ、これらは適宜選択して用いられる。これらの重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。ハードコート組成物の記載の中で活性エネルギー線照射によりラジカル重合またはカチオン重合の内の少なくともいずれか開始することができる開始剤を使用することができる。
前記活性エネルギー線硬化組成物はさらに、イオン捕捉剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、密着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動粘度調整剤、可塑剤、消泡剤溶剤、添加剤、溶剤を含むことができる。前記活性エネルギー線硬化型接着剤によって2つの被接着層を接着する場合、前記活性エネルギー線硬化組成物を被接着層のいずれか一方または両方に塗布後、貼合し、いずれかの被着層または両方の被接着層に活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、で接着することができる。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合、その接着層の厚さは、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.1〜10μmである。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を複数の接着層形成に用いる場合、それぞれの層の厚さや種類は同じであっても異なっていてもよい。
【0104】
前記粘着剤としては、主剤ポリマーに応じて、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等に分類され何れを使用することもできる。粘着剤には主剤ポリマーに加えて、架橋剤、シラン系化合物、イオン性化合物、架橋触媒、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、染料、顔料、無機フィラー等を配合してもよい。前記粘着剤を構成する各成分を溶剤に溶解・分散させて粘着剤組成物を得て、該粘着剤組成物を基材上に塗布した後に乾燥させることで、粘着剤層接着層が形成される。粘着層は直接形成されてもよいし、別途基材に形成したものを転写することもできる。接着前の粘着面をカバーするためには離型フィルムを使用することも好ましい。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合、その接着層の厚さは、好ましくは0.1〜500μm、より好ましくは1〜300μmである。前記粘着剤を複数層用いる場合には、それぞれの層の厚さや種類は同じであっても異なっていてもよい。
【0105】
[遮光パターン]
前記遮光パターンは、前記フレキシブル画像表示装置のベゼルまたはハウジングの少なくとも一部として適用することができる。遮光パターンによって前記フレキシブル画像表示装置の辺縁部に配置される配線が隠されて視認されにくくすることで、画像の視認性が向上する。前記遮光パターンは単層または複層の形態であってもよい。遮光パターンのカラーは特に制限されることはなく、黒色、白色、金属色などの多様なカラーであってもよい。遮光パターンはカラーを具現するための顔料と、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーンなどの高分子で形成することができる。これらの単独または2種類以上の混合物で使用することもできる。前記遮光パターンは、印刷、リソグラフィ、インクジェットなど各種の方法にて形成することができる。遮光パターンの厚さは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜50μmである。また、遮光パターンの厚さ方向に傾斜等の形状を付与することも好ましい。
【実施例】
【0106】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部を意味する。まず評価方法について説明する。
【0107】
<重量平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定は、(株)島津製作所製の液体クロマトグラフLC−10ATvpを用いて行った。
(1)前処理方法
製造例1〜4で得られたポリイミド系樹脂をγ−ブチロラクトン(GBL)に溶解させて20質量%溶液とした後、DMF溶離液にて100倍に希釈し、0.45μmメンブランフィルターろ過したものを測定溶液とした。
(2)測定条件
カラム:TSKgel SuperAWM−H×2+SuperAW2500×1(6.0mm I.D.×150mm×3本)
溶離液:DMF(10mmolの臭化リチウム添加)
流量:0.6mL/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:20μL
分子量標準:標準ポリスチレン
【0108】
<イミド化率>
イミド化率は、1H−NMR測定により以下のようにして求めた。
(1)前処理方法
製造例1〜4で得られたポリイミド系樹脂を重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)に溶解させて2質量%溶液としたものを測定試料とした。
(2)測定条件
測定装置:JEOL製 400MHz NMR装置 JNM−ECZ400S/L1
標準物質:DMSO−d6(2.5ppm)
試料温度:室温
積算回数:256回
緩和時間:5秒
(3)イミド化率解析方法
(ポリイミド樹脂のイミド化率)
ポリイミド樹脂を含む測定試料から得られた1H−NMRスペクトルにおいて、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来するベンゼンプロトンAの積分値をIntAとした。また、観測されたポリイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来するアミドプロトンの積分値をIntBとした。これらの積分値から以下の式に基づいてポリイミド樹脂のイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=100×(1−IntB/IntA)
【0109】
(ポリアミドイミド樹脂のイミド化率)
ポリアミドイミド樹脂を含む測定試料から得られた1H−NMRスペクトルにおいて、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来し、ポリアミドイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来する構造に影響を受けないベンゼンプロトンCの積分値をIntcとした。また、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来し、ポリアミドイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来する構造に影響を受けるベンゼンプロトンDの積分値をIntDとした。得られたIntc及びIntDから以下の式によりβ値を求めた。
β=IntD/Intc
次に、複数のポリアミドイミド樹脂について上記式のβ値及び上記式のポリイミド樹脂のイミド化率を求め、これらの結果から以下の相関式を得た。
イミド化率(%)=k×β+100
上記相関式中、kは定数である。
βを相関式に代入してポリアミドイミド樹脂のイミド化率(%)を得た。
【0110】
<散乱光割合(Ts)>
実施例及び比較例で得られた光学フィルムについて、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより、拡散光透過率(Td)(%)を求めた。また、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により、全光線透過率(Tt)(%)を求めた。得られたTd及びTtを、散乱光割合(Ts)=Td/Tt×100の式に代入して、光学フィルムの散乱光割合(Ts)(%)を算出した。
【0111】
<引張弾性率>
実施例及び比較例で得られた光学フィルムの引張弾性率は、JIS K 7127に準拠して、電気機械式万能試験機(インストロン社製)を用いて、温度80℃、試験速度5m/分及びロードセル5kNで引っ張り試験を行い測定した。光学フィルムは80℃の環境に5分静置してから測定を開始している。
【0112】
<耐屈曲性試験>
JIS K 5600−5−1に準拠して、ユアサシステム機器(株)製小型卓上 屈曲試験機により、耐屈曲性試験(屈曲半径R=1mm、屈曲回数100回)を実施 した。耐屈曲性試験後の光学フィルムについて上述の<散乱光割合(Ts)>の測定 方法と同様にして、耐屈曲性試験後の散乱光割合を測定し、耐屈曲性試験前後の散乱 光割合の差の絶対値ΔTsを算出した。
【0113】
<耐折性>
ASTM規格D2176−16に準拠して、実施例及び比較例における光学フィルムの折り曲げ回数を以下のように求めた。該光学フィルムを、ダンベルカッターを用いて15mm×100mmの短冊状にカットした。カットした光学フィルムをMIT耐折疲労試験機(「型式0530」、(株)東洋精機製作所製)本体にセットして、試験速度175cpm、折り曲げ角度135°、荷重0.75kgf、折り曲げクランプの半径R=1mmの条件で、光学フィルムが破断するまでの裏表方向への往復折曲げ回数を測定し、これを折り曲げ回数とした。
【0114】
<黄色度(YI値)>
実施例及び比較例で得られた光学フィルムの黄色度(Yellow Index:YI値)を、日本分光(株)製の紫外可視近赤外分光光度計「V−670」を用いて測定した。サンプルがない状態でバックグランド測定を行った後、光学フィルムをサンプルホルダーにセットして、300〜800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、下記式に基づいてYI値を算出した。
YI=100×(1.2769X−1.0592Z)/Y
【0115】
<厚さ>
実施例及び比較例で得られた光学フィルムについて、マイクロメーター((株)ミツトヨ製「ID−C112XBS」)を用いて、10点以上の光学フィルムの厚さを測定し、その平均値を算出した。平均値を光学フィルムの厚さとした。
【0116】
<視認性評価>
実施例及び比較例で得られた光学フィルムを10cm角にカットした。同サイズ(10cm角)の粘着層付き偏光板のMD方向とカットした光学フィルムのMD方向とを揃えて、カットした光学フィルムに粘着層付き偏光板を貼合し、評価用試料を作製した。1つの実施例及び比較例の光学フィルムに対してそれぞれ2つの評価用試料を作製した。
2つの評価用試料のうち一方の評価用試料を、評価用試料平面の垂直方向に蛍光灯が位置し、かつ評価用試料のMD方向に対して前記蛍光灯の長手方向が水平となるように台の上に固定した。
評価用試料平面の垂直方向に対して30°傾けた角度から、観察者が目視にて評価用試料表面に映る蛍光灯像を観察した。
蛍光灯の長手方向を水平から垂直に変更した以外は同様にして、もう一方の評価用試料を台に固定し、蛍光灯像を観察した。
観察結果から下記の評価基準に基づいて視認性を評価した。
【0117】
(視認性の評価基準)
◎:蛍光灯像の歪みがほとんど視認されない。
○:蛍光灯像の歪みが若干視認できる。
△:蛍光灯像の歪みが視認される。
×:蛍光灯像の歪みが明確に視認される
【0118】
実施例及び比較例で得られた光学フィルムは、片面に保護フィルムを有しているが、上記測定及び評価は、保護フィルムを剥離した状態の光学フィルムを用いて実施した。
【0119】
[製造例1:ポリイミド樹脂(1)の製造]
シリカゲル管、攪拌装置及び温度計を取り付けたセパラブルフラスコと、オイルバスとを準備した。このフラスコ内に、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA) 75.6gと、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB) 54.5gとを投人した。これを400rpmで攪拌しながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc) 530gを加え、フラスコの内容物が均一な溶液になるまで攪拌を続けた。続いて、オイルバスを用いて容器内温度が20〜30℃の範囲になるように調整しながらさらに20時間攪拌を続け、反応させてポリアミック酸を生成させた。30分後、撹拌速度を100rpmに変更した。20時間攪拌後、反応系温度を室温に戻し、DMAc 650gを加えてポリマー濃度が10質量%となるように調整した。さらに、ピリジン 32.3g、無水酢酸 41.7gを加え、室温で10時間攪拌してイミド化を行った。反応容器からポリイミドワニスを取り出した。得られたポリイミドワニスをメタノール中に滴下して再沈殿を行い、得られた粉体を加熱乾燥して溶媒を除去し、固形分としてポリイミド樹脂(1)を得た。得られたポリイミド樹脂(1)について、GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は350,000であった。また、ポリイミド樹脂(1)のイミド化率は98.8%であった。
【0120】
[製造例2:ポリイミド樹脂(2)の製造]
反応時間を1d時間に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、ポリイミド樹脂(2)を製造した。得られたポリイミド樹脂(2)の重量平均分子量は280,000であり、イミド化率は98.3%であった。
【0121】
[製造例3:ポリアミドイミド樹脂(3)の製造]
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB 45g(140.52mmol)及びDMAc 768.55gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、フラスコに6FDA 18.92g(42.58mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。その後、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)(OBBC) 4.19g(14.19mmol)、次いでテレフタロイルクロリド(TPC) 17.29g(85.16mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌した。次いで、フラスコに4−メチルピリジン 4.63g(49.68mmol)と無水酢酸 13.04g(127.75mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。
得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂(1)を得た。ポリアミドイミド樹脂(1)の重量平均分子量は、400,000であり、イミド化率は98.1%であった。
【0122】
[製造例4:ポリアミドイミド樹脂(4)の製造]
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB 45g(140.52mmol)及びDMAc 768.55gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、フラスコに6FDA 19.01g(42.79mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。その後、OBBC 4.21g(14.26mmol)、次いでTPC 17.30g(85.59mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌した。次いで、フラスコに4−メチルピリジン 4.63g(49.68mmol)と無水酢酸 13.04g(127.75mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。
得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂(2)を得た。得られたポリアミドイミド樹脂(2)の重量平均分子量は、365,000であり、イミド化率は98.3%であった。
【0123】
[製造例5:ワニス(1)〜ワニス(3)の製造]
表1に示す組成にて、溶媒にポリイミド系樹脂を溶解させ、さらに紫外線吸収剤として、住化ケムテックス(株)製のSumisorb 340(UVA)[2−(2−ヒドロキシー5―tert―オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール]を樹脂の質量に対して5.7質量%となるように添加し、均一になるまで攪拌し、ワニス(1)〜ワニス(3)を得た。
なお、表1中、「溶媒」欄の値は、全ての溶媒の総質量に対する特定の溶媒の質量の割合(質量%)を示す。「ポリイミド系樹脂」欄の値は、全てのポリイミド系樹脂の総質量に対する特定のポリイミド系樹脂の質量の割合(質量%)を示す。「ポリイミド系樹脂」欄のPI−1、PI−2、PAI−1及びPAI−2は、それぞれポリイミド樹脂(1)、ポリイミド樹脂(2)、ポリアミドイミド樹脂(1)及びポリアミドイミド樹脂(2)を示す。「添加剤」欄の値は、樹脂の質量に対する添加剤の質量の割合(質量%)を示す。「固形分濃度」欄の値は、ワニスの質量に対する溶媒以外の全成分の割合(質量%)を示す。
【0124】

【0125】
[実施例1(参考例):光学フィルム(1)の製造]
ワニス(1)を、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム(東洋紡(株)製「A4100」、厚さ188μm、厚さ分布±2μm)上において流涎成形により塗膜を成形した。線速は0.4m/分であった。順に70℃で8分間、100℃で10分間、90℃で8分間及び80℃で8分間加熱することによって塗膜を乾燥させ、PETフィルムから塗膜を剥離した。得た原料フィルム1(幅700mm)を把持具としてクリップを用いたテンター式乾燥機(1〜6室構成)を用い、溶媒を除去し、その後、乾燥したフィルムの片面にPET系保護フィルムを貼合し、厚さ79μmの光学フィルム1を得た。原料フィルム1の乾燥はより詳細には、以下の通り行った。乾燥機内の温度を200℃に設定し、クリップ把持幅25mm、フィルムの搬送速度1.0m/分、乾燥機入口のフィルム幅(クリップ間距離)及び乾燥炉出口のフィルム幅の比が1.0となるように調整し、テンダー式乾燥機の各室における風速を、1室では13.5m/秒、2室では13m/秒、3〜6室では11m/秒となるように調整した。フィルムがクリップから離された後、クリップ部をスリットし、そのフィルムの片面にPET系保護フィルムを貼合し、ABS製6インチコアに巻きとり、光学フィルム1を得た。
【0126】
[実施例2(参考例):光学フィルム(2)の製造]
ワニス(1)をワニス(2)に変更し、線速を0.4m/分から0.3m/分に変更し、塗膜の加熱条件を順に70℃で8分間、100℃で10分間、90℃で8分間及び80℃で8分間から80℃で10分間、100℃で10分間、90℃で10分間及び80℃で10分間に変更したこと以外は、光学フィルム1の製造方法と同様にして厚さ49μmの光学フィルム2を製造した。
【0127】
[実施例3:光学フィルム(3)の製造]
ワニス(1)をワニス(3)に変更し、線速を0.4m/分から0.2m/分に変更したこと以外は、光学フィルム1の製造方法と同様にして厚さ79μmの光学フィルム3を得た。
【0128】
[実施例4(参考例):光学フィルム(4)の製造]
ワニス(1)をワニス(4)に変更し、線速を0.4m/分から0.2m/分に変更し、塗膜の加熱条件を順に90℃で8分間、100℃で10分間、90℃で8分間及び80℃で8分間に変更したこと以外は、光学フィルム1の製造方法と同様にして厚さ79μmの光学フィルム4を得た。
【0129】
[比較例1]
光学フィルム5としてポリイミドフィルム(宇部興産(株)製「UPILEX」、厚さ50μm)を準備した。
【0130】
実施例1〜4及び比較例1で得られた光学フィルムの全光線透過率Tt(%)、拡散光透過率Td(%)、散乱光割合Ts(%)、引張弾性率(MPa)、耐屈曲性試験前後の散乱光割合の差の絶対値ΔTs(%)、YI、耐折性(回)及び視認性評価の結果を表2に示した。
【0131】

【0132】
表2に示されるように、散乱光割合(Ts)が0〜0.35%の範囲である実施例1〜4の光学フィルムは、散乱光割合が0.35%を超える比較例1の光学フィルムと比べ、視認性評価の結果が良好であることが確認された。また、実施例1〜4の光学フィルムは優れた引張弾性率及び耐折性並びに低黄色度を有することも確認された。従って、実施例1〜4の光学フィルムは、広角方向の視認性に優れるとともに、優れた引張弾性率等も有する。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドイミド樹脂を含み、式(1):
0≦Ts≦0.27 (1)
[式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される]
を満たし、
JIS K 5600−5−1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり、
厚さは30μm超であり、
該ポリアミドイミド樹脂は、式(10):

[式中、Gは4価の有機基であり、Aは2価の有機基である]
で表される繰り返し構造単位と、式(13):

[式中、G3及びA3は、それぞれ2価の有機基である]
で表される繰り返し構造単位を少なくとも有し、かつ重量平均分子量が200,000以上であり、
式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である、光学フィルム。
【請求項2】
80℃における引張弾性率は、4,000〜9,00OMPaである、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
厚さは30μm超150μm以下である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項5】
フィラーの含有量は、光学フィルムの質量に対して5質量%以下である、請求項1、2及び4のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項6】
少なくとも一方の面にハードコート層を有する、請求項1、2、4及び5のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層の厚さは3〜30μmである、請求項6に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項1、2及び4〜7のいずれかに記載の光学フィルムを備えるフレキシブル表示装置。
【請求項9】
さらに、タッチセンサを備える、請求項8に記載のフレキシブル表示装置。
【請求項10】
さらに、偏光板を備える、請求項8又は9に記載のフレキシブル表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
異議決定日 2021-12-23 
出願番号 P2019-093099
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G09F)
P 1 651・ 113- YAA (G09F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 加藤 友也
細井 龍史
登録日 2020-03-04 
登録番号 6670967
権利者 住友化学株式会社
発明の名称 光学フィルム  
代理人 岩木 郁子  
代理人 岩木 郁子  
代理人 森住 憲一  
代理人 森住 憲一  
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