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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D06M
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  D06M
管理番号 1383249
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-30 
確定日 2022-01-21 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6737394号発明「難燃性エアーバッグ、難燃性エアーバッグの製造方法、及び難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6737394号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書および訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕、〔6−9〕、〔10−12〕について訂正することを認める。 特許第6737394号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6737394号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成30年2月16日(優先権主張 平成29年3月15日)を国際出願日とする出願であって、令和2年7月20日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月5日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年 9月30日 : 特許異議申立人 大澤 豊(以下、「特許異議申立人」という。)による特許異議の申立て
令和3年 3月16日付け: 取消理由通知書
令和3年 5月19日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同 年 7月 9日付け: 訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)。特許異議申立人からは、意見書の提出はなかった。
同 年11月 1日付け: 訂正拒絶理由通知書
同 年12月 1日 : 特許権者による手続補正書及び意見書の提出

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
令和3年12月1日提出の手続補正書により補正された本件訂正請求書による訂正の内容は、以下の訂正事項1〜6のとおりである。
ア 訂正事項1
1−1 請求項1に「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)」と記載されているのを、
「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2〜5も同様に訂正する。)
1−2 請求項1に「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65〜1.40で、」と記載されているのを、
「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2〜5も同様に訂正する。)
1−3 請求項1に「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1〜50質量部、」と記載されているのを、
「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2〜5も同様に訂正する。)
1−4 請求項1に「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1〜10個となる量、」と記載されているのを、
「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2〜5も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】の
「〔1〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1〜50質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部を含む、コーティング量5〜150g/m2の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜がエアーバッグ用基布の少なくとも片面に形成されてなることを特徴とする難燃性エアーバッグ。」という記載を
「〔1〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部を含む、コーティング量5〜150g/m2の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜がエアーバッグ用基布の少なくとも片面に形成されてなることを特徴とする難燃性エアーバッグ。」に訂正する。
ウ 訂正事項3
3−1 請求項6に「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)」と記載されているのを、
「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7〜9も同様に訂正する。)
3−2 請求項6に「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65〜1.40で、」と記載されているのを、
「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7〜9も同様に訂正する。)
3−3 請求項6に「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1〜50質量部、」と記載されているのを、
「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7〜9も同様に訂正する。)
3−4 請求項6に「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1〜10個となる量、」と記載されているのを、
「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7〜9も同様に訂正する。)
エ 訂正事項4
明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】の
「〔6〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1〜50質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部を含む付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程、前記組成物をエアーバッグ用基布の少なくとも片面に5〜150g/m2のコーティング量で塗布する工程、及び前記組成物が塗布された基布を加熱硬化する工程を有することを特徴とする難燃性エアーバッグの製造方法。」という記載を
「〔6〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部を含む付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程、前記組成物をエアーバッグ用基布の少なくとも片面に5〜150g/m2のコーティング量で塗布する工程、及び前記組成物が塗布された基布を加熱硬化する工程を有することを特徴とする難燃性エアーバッグの製造方法。」に訂正する。
オ 訂正事項5
5−1 請求項10に「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)」と記載されているのを、
「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11〜12も同様に訂正する。)
5−2 請求項10に「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65〜1.40で、」と記載されているのを、
「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位・・・又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11〜12も同様に訂正する。)
5−3 請求項10に「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1〜50質量部、」と記載されているのを、
「(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11〜12も同様に訂正する。)
5−4 請求項10に「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1〜10個となる量、」と記載されているのを、
「(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11〜12も同様に訂正する。)
カ 訂正事項6
明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】の
「〔10〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65〜1.40で、
水酸基の量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:0.1〜50質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部を含むことを特徴とする難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。」という記載を
「〔10〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基の量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部を含むことを特徴とする難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。」に訂正する。

本件訂正請求の訂正事項1、2は、一群の請求項〔1−5〕に対して請求されたものである。また、訂正事項3、4に係る訂正は、一群の請求項〔6−9〕について請求されたものである。さらに訂正事項5、6は、一群の請求項〔10−12〕について請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1に係る訂正について
訂正事項1のうち、訂正事項1−1に係る訂正は、請求項1に係る「(B)」中の「3官能性のR3SiO3/2単位」とされる「R3」が採り得る対象範囲を、「メチル基」のみに限定する訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1−2に係る訂正は、請求項1に係る「(B)」中の「比」の分母の候補として、訂正前は「3官能性」の「T単位」及び/又は「4官能性」の「Q単位」とされていたものを、「又は」のみとすると共に、これに伴って訂正前の「(M単位/T及び/又はQ単位)」を「(M単位/T単位またはM単位/Q単位)」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項1−3に係る訂正は、請求項1に係る「(C)」成分の配合量を、訂正前に「0.1〜50質量部」とされていたものを、「10〜30質量部」へと、その数値範囲を狭める訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1−4に係る訂正は、請求項1に係る「(D)」中の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数について、訂正前は「ケイ素原子結合アルケニル基の合計1個あたり、」とされていたものを、「ケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
次に、明細書の発明の詳細な説明には、訂正事項1−1に関し、【0023】に好ましい例として記載がなされ、訂正事項1−2に関し、【0024】に意図する比の正確な記載がなされ、訂正事項1−3に関し、【0037】に好ましい範囲の記載がなされ、訂正事項1−4に関し、【0043】に意図する正確な記載がなされている。よって、上記訂正事項1−1〜1−4は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
イ 訂正事項2に係る訂正について
上記訂正事項2に係る訂正は、上記アの特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、当該訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、上記アで示したとおり新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項3に係る訂正について
上記訂正事項3のうち、訂正事項3−1に係る訂正は、請求項6に係る「(B)」中の「3官能性のR3SiO3/2単位」とされる「R3」が採り得る対象範囲を、「メチル基」のみに限定する訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3−2に係る訂正は、請求項6に係る「(B)」中の「比」の分母の候補として、訂正前は「3官能性」の「T単位」及び/又は「4官能性」の「Q単位」とされていたものを、「又は」のみとすると共に、これに伴って訂正前の「(M単位/T及び/又はQ単位)」を「(M単位/T単位またはM単位/Q単位)」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項3−3に係る訂正は、請求項6に係る「(C)」成分の配合量を、訂正前に「0.1〜50質量部」とされていたものを、「10〜30質量部」へと、その数値範囲を狭める訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3−4に係る訂正は、請求項6に係る「(D)」中の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数について、訂正前は「ケイ素原子結合アルケニル基の合計1個あたり、」とされていたものを、「ケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
次に、明細書の発明の詳細な説明には、訂正事項3−1に関し、【0023】に好ましい例として記載がなされ、訂正事項3−2に関し、【0024】に意図する比の正確な記載がなされ、訂正事項3−3に関し、【0037】に好ましい範囲の記載がなされ、訂正事項3−4に関し、【0043】に意図する正確な記載がなされている。よって、上記訂正事項3−1〜3−4は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
エ 訂正事項4に係る訂正について
上記訂正事項4に係る訂正は、上記ウの特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、当該訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、上記ウで示したとおり新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
オ 訂正事項5に係る訂正について
上記訂正事項5のうち、訂正事項5−1に係る訂正は、請求項10に係る「(B)」中の「3官能性のR3SiO3/2単位」とされる「R3」が採り得る対象範囲を、「メチル基」のみに限定する訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5−2に係る訂正は、請求項10に係る「(B)」中の「比」の分母の候補として、訂正前は「3官能性」の「T単位」及び/又は「4官能性」の「Q単位」とされていたものを、「又は」のみとすると共に、これに伴って訂正前の「(M単位/T及び/又はQ単位)」を「(M単位/T単位またはM単位/Q単位)」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5−3に係る訂正は、請求項10に係る「(C)」成分の配合量を、訂正前に「0.1〜50質量部」とされていたものを、「10〜30質量部」へと、その数値範囲を狭める訂正であるから、係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5−4に係る訂正は、請求項10に係る「(D)」中の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数について、訂正前は「ケイ素原子結合アルケニル基の合計1個あたり、」とされていたものを、「ケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、」に修正する訂正である。この訂正は訂正前の記載が明瞭でなかったものを訂正により明瞭とするものであるから、係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
次に、明細書の発明の詳細な説明には、訂正事項5−1に関し、【0023】に好ましい例として記載がなされ、訂正事項5−2に関し、【0024】に意図する比の正確な記載がなされ、訂正事項5−3に関し、【0037】に好ましい範囲の記載がなされ、訂正事項5−4に関し、【0043】に意図する正確な記載がなされている。よって、上記訂正事項5−1〜5−4は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
カ 訂正事項6に係る訂正について
上記訂正事項6に係る訂正は、上記オの特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、当該訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、上記オで示したとおり新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕、〔6−9〕、〔10−12〕について訂正することを認める。

3 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし12に係る発明(以下「本件発明1ないし12」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下
である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部
を含む、コーティング量5〜150g/m2の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜がエアーバッグ用基布の少なくとも片面に形成されてなることを特徴とする難燃性エアーバッグ。
【請求項2】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部含有することを特徴とする請求項1記載の難燃性エアーバッグ。
【請求項3】(C)成分が、表面疎水化シリカ微粉末であることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性エアーバッグ。
【請求項4】(F)成分が、接着性付与官能基として1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の難燃性エアーバッグ。
【請求項5】エアーバッグのFMVSS No.302燃焼試験における燃焼速度が40mm/min.以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の難燃性エアーバッグ。
【請求項6】(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下
である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部
を含む付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程、前記組成物をエアーバッグ用基布の少なくとも片面に5〜150g/m2のコーティング量で塗布する工程、及び前記組成物が塗布された基布を加熱硬化する工程を有することを特徴とする難燃性エアーバッグの製造方法。
【請求項7】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部含有することを特徴とする請求項6記載の難燃性エアーバッグの製造方法。
【請求項8】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程において、(C)成分に、予め表面処理された表面疎水化シリカ微粉末を用いるか、又は上記調製工程において表面処理されてなる表面疎水化シリカ微粉末を用いるかの、いずれかの工程を含むことを特徴とする請求項6又は7記載の難燃性エアーバッグの製造方法。
【請求項9】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のJIS K 7117−1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載の難燃性エアーバッグの製造方法。
【請求項10】(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基の量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部
を含むことを特徴とする難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項11】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部含有することを特徴とする請求項10記載の難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項12】付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のJIS K 7117−1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sであることを特徴とする請求項10又は11記載の難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。

4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし12に係る特許に対して、当審が令和3年3月16日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
イ 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
ウ 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)各取消理由の詳細
ア 特許法第36条第4項第1号に係る理由
本件特許明細書には、実施例3として、「実施例1において三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B1)を(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)(CH2=CH)SiO2/2単位とSiO3/2単位からなり、」(【0069】)と記載されている。しかし、「SiO3/2単位」について具体的に記載されていない。
そうすると、実施例3は、具体的に実施できる程度に記載されているとはいえない。
イ 特許法第36条第6項第1号に係る理由
本件発明が解決しようとする課題は、「FMVSS NO.302に規定される低燃焼速度性に優れ、且つ機械的強度にも優れる難燃性エアーバッグ、難燃性エアーバッグの製造方法、及び難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を提供すること」(【0006】)である。
そして、本件特許明細書には、実施例1〜3のみ(【0064】〜【0076】)が、上記課題を解決することが記載されている。
また、【0026】、【0028】、【0032】、【0037】、【0043】等には、アルケニル基量、水酸基量、シリカ微粉末の比表面積と配合量、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量等が上記課題に影響することが記載されているが、具体的には、各成分により燃焼速度や機械強度が異なることが技術常識であるから、上記記載を参酌しても、実施例1〜3の記載から、本願特許発明の全範囲のものが、上記課題を解決するとは理解できない。
したがって、本件特許発明は、本件特許明細書に記載されたものでない。
ウ 特許法第36条第6項第2号に係る理由
a.請求項1中の「3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)」は、文言上、T単位及びQ単位を含む場合に、M単位/(T又はQ単位)、又はM単位/(T及びQ単位)と読むこと等もでき、当該「比」は、一義的に決定せず、明確でない。
b.請求項1中の「(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1〜10個となる量」とは、「合計1個当たり」の意味が不明確である。
本件特許明細書の【0043】には、「1個に対して」と記載されており、整合するのかも明確でない。
c.請求項6の対応する記載も同様である。
また、請求項1を引用する請求項2〜5、及び請求項6を引用する請求項7〜12も同様である。

(3)当審の判断
ア 特許法第36条第4項第1号について
本件特許明細書の【0069】には、本件発明1、6、及び10における発明特定事項(B)の「三次元網状オルガノポリシロキサンレジン」が「3官能性のR3SiO3/2単位」を有する態様として、実施例3の組成物が記載されている。
当該「3官能性のR3SiO3/2単位」を有する態様に関する発明の詳細な説明の他の記載としては、【0023】に「R3」の採り得る候補が列記されている。この【0023】の記載を援用することにより、実施例3の「SiO3/2単位」と結合する「R3」の有機基を選択でき、発明の実施は当業者にとり十分に行えると認められる。よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1ないし12に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
イ 特許法第36条第6項第1号について
本件発明1ないし12が解決しようとする課題(本件特許明細書の【0006】)に対して、本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、【0028】には(B)成分中のケイ素原子に結合した水酸基の含有量に関し、その数値範囲を定めるに当たっての理由が付され、【0032】には(C)成分のシリカ微粉末の比表面積の数値範囲を定めるに当たっての理由が付され、【0037】には(C)成分の配合量の数値範囲を定めるに当たっての理由が付され、【0043】には(D)成分の配合に係るケイ素原子結合水素原子数の適値を定めるに当たっての理由が付されていることが確認できる。
そうすると、本件発明1ないし12は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
ウ 特許法第36条第6項第2号について
上記(2)ウに挙げた、a.請求項1の比に関する記載箇所が多義的である点、b.請求項1の「合計1個あたり」の表現及び明細書との不整合の点、c.請求項6に記載の同様の箇所で生じている不備の点、については、いずれも本件訂正の上記訂正事項1、3、5に係る訂正により解消された。
よって、本件発明1〜12は明確である。

5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、
理由1:特許異議申立書の第19−25頁において、訂正前の請求項1ないし12にかかる特許発明は、以下の(ア)〜(エ)の点で発明の詳細な説明に記載されているとはいえないから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべき
理由2:特許異議申立書の第25−59頁において、訂正前の請求項1ないし12にかかる特許発明は、甲第1号証ないし甲第6号証に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
旨を主張する。
甲第1号証:特開昭60−51754号公報
甲第2号証:特開2001−164187号公報
甲第3号証:特表2012−514143号公報
甲第4号証:特表2002−504612号公報
甲第5号証:米国特許第5658674号明細書
甲第6号証:特開平6−329917号公報

<理由1>について
(ア)本件発明1の「(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部」について、課題が解決されたとする場合は発明の詳細な説明では実施例1〜3で示された特定のアルケニル基量、配合量及び比のみであるところ、前記本件発明1で特定した範囲すべてを、課題を解決できるとはいえない。
(イ)本件発明1の上記「(B)」成分について、所定の効果を奏することが示された発明の詳細な説明での記載は、実施例1、2だけであり、実施例3では示されておらず、加えて実施例3で用いられる(B2)成分自体が明確でもないから、本件明細書において本件発明1の三次元網状オルガノポリシロキサンレジン(B)が、2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位)と、4官能性のSiO4/2単位(Q単位)と、単官能性のR33SiO1/2単位(M単位)とで構成されている場合以外について、所定の三次元網状オルガノポリシロキサンレジン(B)を用いることで本件発明の課題を解決できることを、当業者が認識できるように記載されているとは言えない。
(ウ)本件発明1の「(C)・・・シリカ微粉末:0.1〜50質量部」について、本件発明の課題が解決できる例として明細書に示されたのは実施例1、3だけであり、上記本件発明1の0.1〜50質量部となる全ての場合について本件発明の課題が解決できることを記載していない。
(エ)本件発明1の「(D)・・・オルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、1〜10個となる量」について、本件発明の課題が解決できる例として明細書に示されたのは実施例1〜3だけであり、上記本件発明1の1〜10個となる量の全ての場合について本件発明の課題が解決できることを記載していない。
しかしながら、上記(ア)の主張について発明の詳細な説明を見るに、本件発明1の(B)で特定される対象物は、アルケニル基の量の特定に際しての留意事項(【0026】)や、アルケニル基と結合する相手方の好適な範囲(【0021】、【0022】)や、採用したオルガノポリシロキサンレジンを三次元網状とする化学構造における特定事項(【0023】−【0024】)について詳述されており、当該特定の範囲の中で実施例として3例を開示しており、これらの開示された内容と本件発明1における特定との間で特段の齟齬は生じていない。また、上記(イ)〜(エ)の主張も、いずれも関係する発明特定事項について、本件特許明細書の発明の詳細な説明で事足りる特定に至る事情の記載があるから、本件特許の訂正前の特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載されていないとは扱うに足る主張とはいえない。
<理由2>について
特許異議申立人は、甲第1号証に
「Aa (a)25℃で液状のジメチルビニル終端ジメチルポリシロキサンである液体ビニル終端ポリシロキサン:100部、
Ab (b)0.099mol/100gのビニル基が2官能性のメチルビニルシロキサン単位のみに結合し、
4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のトリメチルシロキサン単位の比(M単位/Q単位)が0.8で
水酸基量が0mol/100gである樹脂状オルガノポリシロキサン共重合体:200部、
Ac 石英粉:200重量部以下、
Ad (d)SiO2単位1個当りジメチル水素シロキサン単位を平均2個含有するジメチル水素シロキサン単位とSiO2単位からなる液体オルガノ水素ポリシロキサン:珪素結合ビニル基1個当り約0.5〜約1.0個の珪素結合水素原子を与えるのに十分な量、
Ae (c)白金触媒:組成物中の珪素結合ビニル基1モル当り約10-3〜約10-6グラム原子の白金を与えるのに十分な量、
Ag を含む、硬化性シリコーン被覆組成物の硬化膜が基礎材料織物の表面に形成されてなる構造体。」
の「甲1発明」が記載されており、本件発明1〜12は甲1発明及び甲2〜6の記載事項に基づき、当業者が容易に発明ができたものである旨主張する。
しかしながら、甲第1号証に記載されている発明は、そもそも防塵性シリコーン被覆組成物であり、主には屋根を用途と想定したものであって、従来の被覆組成物に比して非吸塵性のものを提供することを課題としたものである(7頁上段右欄〜9頁上段右欄参照)。そうすると、本件発明1〜12とはわずかに被覆・コーティング素材という点でのみ両者は共通するにとどまり、素材に求める作用や性質の点で最初から大きな隔たりがあると認められる。その結果、甲1発明と本件発明1との間には、少なくとも特許異議申立人がいう(相違点1−1)〜(相違点1−6)の多くの相違点が存在する。
そして、係る相違点を本件特許の技術思想に近づけるための動機付けになる記載が甲第1号証の中には見いだせない。
他に参照できる公知技術が記載された書証として、甲第2号証〜6号証が添えられており、その中には本件特許の用途と同じ、エアーバッグのコーティング用組成物を対象としたものが甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証として存在するが、これらは甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証では(B)成分で相違し、甲第5号証では主成分の選択でいずれも相違し、本件特許の発明特定事項への変更を可とする示唆がない。
そうすると、特許異議申立人が主張する論旨に沿い、本件発明1〜12を当業者が容易に発明できたとは認められない。

したがって、特許異議申立人のいずれの主張も、採用することができない。

6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】難燃性エアーバッグ、難燃性エアーバッグの製造方法、及び難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、FMVSS NO.302に規定される低燃焼速度性に優れ、且つ機械的強度にも優れる難燃性エアーバッグ、難燃性エアーバッグの製造方法、及び難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維表面にゴム被膜を形成させることを目的としたエアーバッグ用シリコーンゴム組成物が提案されている。シリコーンゴム被膜を有するエアーバッグは、難燃性に優れるため、自動車等のエアーバッグとして好適に用いられている。
【0003】
このようなエアーバッグとしては、例えば、特定構造のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを架橋剤とし、接着性付与成分として、1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物、並びにチタニウム化合物及びジルコニウム化合物のいずれか一方又は両方を含有する液状シリコーンゴム組成物を繊維表面に被覆したエアーバッグ(特開2011−080037号公報:特許文献1)や、レジン状ポリシロキサンを含有し、シロキサン成分をシリカ、表面処理剤、水とともに事前混合することで製造した液状シリコーン組成物を繊維表面に被覆したエアーバッグ(特開2013−209517号公報:特許文献2)などが開示されている。また、付加硬化型組成物に補強性シリカ微粉末と水酸化アルミニウムを添加してなる液状シリコーンゴム組成物を繊維表面に被覆することで、FMVSS NO.302に規定される燃焼速度に優れ、また表面粘着性の少ないエアーバッグ(特開2010−053493号公報:特許文献3)などが開示されている。
【0004】
しかし、これらのエアーバッグは、いずれも近年の低燃焼速度性に対する高い要求に応えることが難しいという問題があり、特に、近年の基布に対する液状シリコーンゴム組成物の低塗工量の市場要求に対して上記低燃焼速度性の要求特性を満足させ得るものではなく、またこれらの液状シリコーンゴム組成物の硬化物は、機械的特性が低いため、これらを繊維表面に被覆して得られるエアーバッグも機械的強度が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−080037号公報
【特許文献2】特開2013−209517号公報
【特許文献3】特開2010−053493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、FMVSS NO.302に規定される低燃焼速度性に優れ、且つ機械的強度にも優れる難燃性エアーバッグ、難燃性エアーバッグの製造方法、及び難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、後述する(A)〜(F)成分を必須成分とした液状シリコーンゴム組成物において、特に(B)成分の0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基がD単位のみに結合し、T及び/又はQ単位に対するM単位の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65〜1.40で、水酸基量が0.040mo1/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジンを所定量配合したものを用いることにより、この液状シリコーンゴム組成物をエアーバッグ用基布表面に所定量塗布し、これを加熱硬化させて得られるエアーバッグが、FMVSSNO.302に規定される低燃焼速度性に優れ、且つ機械的強度にも優れることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記難燃性エアーバッグ、難燃性エアーバッグの製造方法、及び難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を提供するものである。
〔1〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下
である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部
を含む、コーティング量5〜150g/m2の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜がエアーバッグ用基布の少なくとも片面に形成されてなることを特徴とする難燃性エアーバッグ。
〔2〕
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部含有することを特徴とする〔1〕記載の難燃性エアーバッグ。
〔3〕
(C)成分が、表面疎水化シリカ微粉末であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の難燃性エアーバッグ。
〔4〕
(F)成分が、接着性付与官能基として1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の難燃性エアーバッグ。
〔5〕
エアーバッグのFMVSS No.302燃焼試験における燃焼速度が40mm/min.以下であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の難燃性エアーバッグ。
〔6〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下
である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部
を含む付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程、前記組成物をエアーバッグ用基布の少なくとも片面に5〜150g/m2のコーティング量で塗布する工程、及び前記組成物が塗布された基布を加熱硬化する工程を有することを特徴とする難燃性エアーバッグの製造方法。
〔7〕
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部含有することを特徴とする〔6〕記載の難燃性エアーバッグの製造方法。
〔8〕
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程において、(C)成分に、予め表面処理された表面疎水化シリカ微粉末を用いるか、又は上記調製工程において表面処理されてなる表面疎水化シリカ微粉末を用いるかの、いずれかの工程を含むことを特徴とする〔6〕又は〔7〕記載の難燃性エアーバッグの製造方法。
〔9〕
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のJIS K 7117−1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sであることを特徴とする〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の難燃性エアーバッグの製造方法。
〔10〕
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下
である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部
を含むことを特徴とする難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
〔11〕
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部含有することを特徴とする〔10〕記載の難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
〔12〕
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のJIS K 7117−1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sであることを特徴とする〔10〕又は〔11〕記載の難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コーティング布が、FMVSS NO.302に規定される低燃焼速度性に優れ、且つ機械的強度にも優れる難燃性エアーバッグが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。なお、粘度は、25℃においてJIS K 7117−1:1999に記載の方法で回転粘度計により測定した値である。
【0011】
<付加硬化型液状シリコーンゴム組成物>
本発明の難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、以下の(A)〜(F)成分を含有してなるものであって、室温(25℃)で液状のものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0012】
[(A)成分]
(A)成分は、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサンであり、本発明にかかる組成物のベースポリマー(主剤)である。
【0013】
(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状等が挙げられるが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましい。なお、三次元網状(樹脂状)構造は含まない。また、(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子構造が直鎖状又は分岐鎖状である場合、該オルガノポリシロキサンの分子中においてアルケニル基が結合するケイ素原子の位置は、分子鎖末端(即ち、トリオルガノシロキシ基)及び分子鎖途中(即ち、分子鎖非末端に位置する2官能性のジオルガノシロキサン単位又は3官能性のモノオルガノシルセスキオキサン単位)のどちらか一方でも両方でもよい。(A)成分として、特に好ましくは、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
【0014】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、通常、炭素数2〜8、好ましくは炭素数2〜4のものが挙げられる。その具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。
【0015】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合した1価の有機基(即ち、非置換もしくは置換の1価炭化水素基)全体に対して0.001〜10モル%であることが好ましく、特に0.01〜5モル%程度であることが好ましい。
【0016】
(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する1価の有機基としては、例えば、互いに同一又は異種の炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜10の1価炭化水素基が挙げられる。1価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられ、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などを用いてもよい。これらの中でも、特に、メチル基であることが好ましい。なお、(A)成分はエポキシ基を含有しない。
【0017】
(A)成分の25℃における粘度は、100〜500,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に600〜200,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。粘度がこの範囲内にあると、得られる組成物の取り扱い作業性が良好であり、また、得られるシリコーンゴム硬化物の機械的特性が良好である。
【0018】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0019】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、(A)成分のオルガノポリシロキサンとして、後述するエポキシ基を有する有機ケイ素化合物[(F)成分]を除く。
【0020】
[(B)成分]
(B)成分は、0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3は独立して、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)及び/又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T及び/又はQ単位)が0.65〜1.40で、水酸基量が0.040mol/100g以下である三次元網状オルガノポリシロキサンレジンである。
【0021】
R1は炭素数2〜8のアルケニル基であり、具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等などが挙げられ、特に、ビニル基であることが好ましい。
【0022】
R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基であり、具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等のアルケニル基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、特に、メチル基、ビニル基であることが好ましい。
【0023】
R3は独立して、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、特に、メチル基であることが好ましい。
【0024】
(M単位/T及び/又はQ単位)の比の測定方法
三次元網状(樹脂状)構造のオルガノポリシロキサンレジンの3官能性のR3SiO3/2単位(T単位)と4官能性のSiO4/2単位(Q単位)から選ばれる少なくとも1種の分岐鎖状シロキサン単位と単官能性のR33SiO1/2単位(M単位)との比(M単位/T及び/又はQ単位)は、例えば、29Si−NMRから求めることができる。
29Si−NMRのサンプルの調製方法は特に制限されないが、例えば、オルガノポリシロキサンレジン1質量部を重クロロホルム3質量部に溶解させることで測定することができる。
ここで、(M単位/T及び/又はQ単位)の比は、0.65〜1.40であり、より好ましくは0.7〜1.0である。(M単位/T及び/又はQ単位)の比が0.65よりも小さいと液状シリコーンゴム組成物の粘度が高くなり、コーティング作業が困難になることがあり、1.40よりも大きいと十分な難燃性向上の効果が得られないことがある。
【0025】
アルケニル基量の測定方法
三次元網状(樹脂状)構造のオルガノポリシロキサンレジン中のケイ素原子に結合したアルケニル基量は、例えば、以下のように求めることができる。
即ち、三次元網状(樹脂状)構造のオルガノポリシロキサンレジン50質量部をキシレン50質量部に溶解させた溶液を三角フラスコなどの容器に量り取り、四塩化炭素を30mL加える。その後、25mLのハヌス液(臭化ヨウ素1質量部と酢酸60質量部の混合液)を加え、60分間攪拌する。その後、10%のヨウ化カリウム水溶液を20mL加え、5分間以上攪拌する。その後、0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液で、褐色が無色になるまで滴定を行う。また、オルガノポリシロキサンレジンを加えないこと以外は同一の工程でブランクの滴定を行い、下記の式よりアルケニル基量を測定することができる。

【0026】
(B)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基は、上記D単位のみに含有され、そのアルケニル基量は、0.05〜0.15mol/100gであり、より好ましくは0.08〜0.12mol/100gである。アルケニル基量がこの範囲から外れると液状シリコーンゴム組成物の硬化物の機械的特性が悪化することがある。
【0027】
水酸基量の測定方法
三次元網状(樹脂状)構造のオルガノポリシロキサンレジン中の水酸基量は、例えば、以下のように求めることができる。
即ち、三次元網状(樹脂状)構造のオルガノポリシロキサンレジン50質量部をキシレン50質量部に溶解させた溶液を調製し、それを約4.0g量り取り二股試験管の片側の試験管に入れ、もう一方の試験管に約0.5Mのメチルマグネシウムヨージド(ジ−nブチルエーテル溶液)を約8mL量り入れる。その後、二股試験管の口をチューブ付のゴム栓で密閉した後に、サンプルとメチルマグネシウムヨージド溶液を混ぜ合わせ、発生するメタンガスの量[mL]を測定し、下記の式より水酸基量を測定することができる。

メタンガスの発生量の測定方法は特に制限されないが、例えばビュレット等を用いた水上置換法などで測定することができる。なお、本発明においては、前記水上置換法を採用した。
【0028】
(B)成分中のケイ素原子に結合した水酸基量は、0.040mol/100g以下であり、より好ましくは0.030mоl/100g以下である。(B)成分中のケイ素原子に結合した水酸基の含有量が0.040mol/100gよりも大きいとコーティング布の燃焼中に低分子シロキサンの発生量が多くなり、難燃性が悪化することがある。
【0029】
(B)成分の三次元網状(樹脂状)構造のオルガノポリシロキサンレジンの重量平均分子量としては、2,000〜12,000が好ましく、4,000〜8,000がより好ましい。重量平均分子量の測定方法としては、例えば、下記に示すような条件で測定したTHFを展開溶媒としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH−L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料作製条件:オルガノポリシロキサンレジンの50%キシレン溶液1質量部をTHF1,000質量部に溶解し、メンブレンフィルターでろ過
試料注入量:10μL
【0030】
(B)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜100質量部であり、より好ましくは10〜50質量部である。配合量が少なすぎると十分な難燃性向上効果が得られないことがあり、配合量が多すぎると、組成物の粘度が高くなり、コーティング作業性が悪化することがある。
【0031】
(B)成分の三次元網状オルガノポリシロキサンレジンは、上記の条件を満たしたものであれば、1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0032】
[(C)成分]
(C)成分のシリカ微粉末は、補強性充填剤として作用する。即ち、本発明にかかる組成物から得られるシリコーンゴム硬化物に強度を付与するもので、シリカ微粉末を補強性充填剤として使用することにより、本発明に必要な強度を満足するコーティング膜を形成することが可能となる。かかるシリカ微粉末は、比表面積(BET法)が50m2/g以上であり、好ましくは50〜400m2/g、より好ましくは100〜300m2/gであり、比表面積が50m2/g未満では、満足するような強度特性を付与することができない。
【0033】
このようなシリカ微粉末としては、比表面積が上記範囲内であることを条件として、従来からシリコーンゴムの補強性充填剤として使用されている公知のものでよく、例えば、煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ)、沈降シリカ(湿式シリカ)などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0034】
上記補強性シリカ微粉末は、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、オルガノシラザン等の(通常、加水分解性の)表面処理剤で、表面が疎水化処理されたシリカ微粉末を用いることができる。その場合、これらのシリカ微粉末は、予め粉体の状態で、表面処理剤により、直接表面疎水化処理されたものを用いてもよいし、シリコーンオイル(例えば、上記(A)成分のアルケエル基含有オルガノポリシロキサン)との混練時に表面処理剤を添加して、表面疎水化処理したものを用いてもよい。
【0035】
(C)成分の通常の処理法として、公知の技術により表面処理することができ、例えば、常圧で密閉された機械混練装置又は流動層に上記未処理のシリカ微粉末と処理剤を入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において、室温(25℃)あるいは熱処理(加熱下)にて混合処理することができる。場合により、水又は触媒(加水分解促進剤等)を使用して処理を促進してもよい。混練後、乾燥することにより処理シリカ微粉末を製造することができる。処理剤の配合量は、その処理剤の被覆面積から計算される量以上であればよい。
【0036】
表面処理剤として、具体的には、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン類、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン及びクロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられ、これらで表面処理し、疎水性シリカ微粉末として用いることができる。表面処理剤としては、特にシランカップリング剤又はシラザン類が好ましい。
【0037】
(C)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1〜50質量部であり、好ましくは10〜30質量部である。配合量が少なすぎると、必要な強度が得られず、配合量が多すぎると、組成物のチキソ性が大きくなり、流動性が低下してコーティング作業が悪くなる。
【0038】
[(D)成分]
(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)及び(B)成分中のアルケニル基とヒドロシリル化付加反応し、架橋剤(硬化剤)として作用するものであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている、例えば直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状(樹脂状)構造等各種のものが使用可能であるが、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(SiHで表されるヒドロシリル基)を有する必要があり、また実質的に分子中にケイ素原子に結合した水酸基(即ち、シラノール基)を含有しないものである。
(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、後述するエポキシ基を有する有機ケイ素化合物[(F)成分]を除く。
【0039】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)で示されるものを用いることができる。
R4aHbSiO(4−a−b)/2 (1)
【0040】
上記式(1)中、R4は互いに同一又は異種の、アルケニル基等の脂肪族不飽和結合を除く、好ましくは炭素数1〜10の、ケイ素原子に結合した1価炭化水素基であり、このR4における1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられ、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等を用いてもよい。R4の1価炭化水素基として、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基である。また、aは0.7〜2.1、bは0.001〜1.0で、かつa+bが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくはaは1.0〜2.0、bは0.01〜1.0、a+bが1.5〜2.5を満足する正数である。
【0041】
1分子中に少なくとも2個含有するSiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、通常2〜300個、好ましくは3〜150個、より好ましくは4〜100個程度のものが望ましく、25℃における粘度が、通常0.1〜1,000mPa・s、好ましくは0.5〜500mPa・s程度の、25℃で液状のものが使用される。なお、重合度は、例えば、トルエンを展開溶媒としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(数平均分子量)又は重量平均重合度(重量平均分子量)等として求めることができる。
【0042】
このような(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサンや、これらの各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換されたもの、式:R53SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R52HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R52HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R5HSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:R5SiO3/2で示されるシロキサン単位もしくは式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。なお、前記R5は炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基であり、特にメチル基であることが好ましい。
【0043】
(D)成分の配合量は、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個(又はモル)に対して(D)成分中のケイ素原子結合水素原子が1〜10個(又はモル)、好ましくは1〜5個(又はモル)の範囲内となる量である。(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して(D)成分中のケイ素原子結合水素原子が1個未満であると、組成物は十分に硬化せず、またこれが10個を超えると、得られるシリコーンゴム硬化物の耐熱性が極端に悪化することがある。
【0044】
[(E)成分]
(E)成分としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、塩化白金酸とビニル基含有(ポリ)シロキサンとの錯体等の白金族金属系触媒が挙げられる。
【0045】
(E)成分の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属(質量換算)として、シリコーンゴム組成物の合計質量に対し、0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度である。添加量が少なすぎると硬化性の低下を起こし、添加量が多すぎるとコストが高くなり、不経済となる。
【0046】
[(F)成分]
(F)成分は、接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物であり、接着性付与官能基として1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物であることが好ましく、シリコーンゴム組成物のエアーバッグ用基布に対する接着性を発現・向上させるために添加するものである。
有機ケイ素化合物としては、このような接着性付与官能基を有するものであれば、いかなる有機ケイ素化合物でも使用できるが、1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とをそれぞれ1個以上有する有機ケイ素化合物であることが好ましく、接着発現性の観点からは、少なくとも1個のエポキシ基と少なくとも2個のケイ素原子結合アルコキシ基(例えば、トリアルコキシシリル基、オルガノジアルコキシシリル基等)とを有する有機ケイ素化合物、例えば、オルガノシラン、又はケイ素原子数が2〜100個、好ましくは4〜50個程度の環状もしくは直鎖状のオルガノシロキサンであって、少なくとも1個のエポキシ基と少なくとも2個のケイ素原子結合アルコキシ基とを有するものであることがより好ましい。(F)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
エポキシ基は、例えば、グリシドキシプロピル基等のグリシドキシアルキル基;2,3−エポキシシクロヘキシルエチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基等のエポキシ含有シクロヘキシルアルキル基等の形で、ケイ素原子に結合していることが好ましい。ケイ素原子結合アルコキシ基は、ケイ素原子と結合して、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基等のアルキルジアルコキシシリル基等を形成していることが好ましい。
【0048】
また、(F)成分は、1分子中にエポキシ基及びケイ素原子結合アルコキシ基以外の官能性基として、例えば、ビニル基等のアルケニル基、アクリル基、(メタ)アクリロキシ基、及びヒドロシリル基(SiH基)からなる群より選択される少なくとも1種の官能性基を有してもよい。
【0049】
(F)成分の有機ケイ素化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジエトキシシラン、(2,3−エポキシシクロヘキシルエチル)トリエトキシシラン、(2,3−エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジメトキシシラン、(2,3−エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジエトキシシラン等のエポキシ官能性基含有シランカップリング剤(即ち、エポキシ官能性基含有オルガノアルコキシシラン)の他、下記の化学式で示されるオルガノシラン、オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、これらの2種以上の混合物、あるいはこれらの1種もしくは2種以上の部分加水分解縮合物等が挙げられる。
【0050】
【化1】

(式中、hは1〜10の整数、kは0〜40の整数、好ましくは0〜20の整数、pは1〜40の整数、好ましくは1〜20の整数、qは1〜10の整数である。)
【0051】
(F)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部であり、好ましくは0.25〜5質量部である。配合量が0.1質量部未満であると、得られる組成物が十分な接着力を有しない。配合量が10質量部を超えると、配合量を増加させても、得られる組成物は接着力が向上しにくくなり、コスト的に高いものとなり、不経済となる。
【0052】
また、(F)成分がアルケニル基及び/又はSiH基を含む場合、(A)、(B)及び(F)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個(又はモル)に対して、(D)及び(F)成分中のケイ素原子結合水素原子が、1〜10個(又はモル)、好ましくは1〜8個(又はモル)、より好ましくは1〜6個(又はモル)の範囲内となる量が配合される。組成物中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、組成物中のケイ素原子結合水素原子が1個未満であると、組成物は十分に硬化せず、十分な接着力を有しないことがある。一方、これが10個を超えると、得られるシリコーンゴム硬化物の耐熱性が極端に劣り、接着力が向上しにくくなり、コスト的にも高いものとなり、不経済となりやすい。
【0053】
[(G)成分]
(G)成分は、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種であり、接着促進のための縮合助触媒として作用するものである。
(G)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(G)成分の具体例としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド等の有機チタン酸エステル、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラアセチルアセトネート等の有機チタンキレート化合物等のチタン系縮合助触媒(チタニウム化合物)、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド等の有機ジルコニウムエステル、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機ジルコニウムキレート化合物等のジルコニウム系縮合助触媒(ジルコニウム化合物)が挙げられる。
【0054】
(G)成分の有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物は、必要に応じて配合される任意成分であり、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、通常、5質量部以下(0〜5質量部)程度でよいが、(G)成分を配合する場合には、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜2質量部の範囲である。
配合量が0.1質量部未満であると、得られる硬化物は高温高湿下での接着耐久性が低下しやすくなることがあり、配合量が5質量部を超えると、得られる硬化物は耐熱性が低下しやすくなることがある。
【0055】
・充填剤
(C)成分のシリカ微粉末以外の充填剤として、例えば、結晶性シリカ(例えば、BET法比表面積が50.m2/g未満の石英粉)、ケイ酸塩鉱物微粉末、有機樹脂製中空フィラー、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子(いわゆるシリコーンレジンパウダー)、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の充填剤;これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面疎水化処理した充填剤;シリコーンゴムパウダーなどが挙げられる。
【0056】
・その他の成分
その他にも、例えば、1分子中に1個のケイ素原子結合水素原子を含有し、他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサン、1分子中に1個のケイ素原子結合アルケニル基を含有し、他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合水素原子もケイ素原子結合アルケニル基も他の官能性基も含有しない無官能性のオルガノポリシロキサン(いわゆるジメチルシリコーンオイル)、有機溶剤、クリープハードニング防止剤、可塑剤、チキソ性付与剤、顔料、染料、防かび剤などを配合することができる。これらのその他の成分は、各々、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0057】
<付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の調製>
こうして得られる(A)〜(F)成分、好ましくは(A)〜(G)成分、更に必要に応じてその他の任意成分を添加して均一に混合することにより、付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調整することができる。
このような付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、25℃で液状の組成物であり、JIS K 7117−1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sであることが好ましく、10,000〜300,000mPa・sであることがより好ましい。この粘度範囲内であれば、エアーバッグ用基布に塗工する際に、塗工むらや硬化後の密着不足などが生じにくいため、好適に用いることができる。
【0058】
<エアーバッグの製造方法>
エアーバックの製造方法は、前述の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程、前記組成物をエアーバッグ用基布の少なくとも片面に5〜150g/m2のコーティング量で塗布する工程、及び前記組成物が塗布された基布を加熱硬化する工程を有する。
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程においては、(C)成分に、予め表面処理された表面疎水化シリカ微粉末を用いるか、又は上記調製工程において表面処理されてなる表面疎水化シリカ微粉末を用いるかの、いずれかの工程を含む。特に後者の場合、シリコーンオイル(例えば、上記(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン)との混練時に前述の表面処理剤を添加して、表面疎水化処理することができる。なお、表面処理方法や表面処理剤は、前述の通りである。
【0059】
一般に、シリコーンゴム層が形成されるエアーバッグ用基布(繊維布からなる基材)としては、公知のものが用いられ、その具体例としては、66−ナイロン、6−ナイロン、アラミド繊維などの各種ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの各種ポリエステル繊維などの各種合成繊維の織生地が挙げられる。
そして、このようなエアーバッグ用基布(繊維布からなる基材)の少なくとも一方の表面に、上記付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を塗布した後、乾燥炉などで加熱硬化することにより、その基布上にシリコーンゴム層(硬化物層)を形成させることができる。更に、このようにして得られたエアーバッグ用シリコーンゴムコーティング基布を用いて、エアーバッグを製造することができる。
【0060】
ここで、液状シリコーンゴム組成物をエアーバッグ用基布にコーティングする方法としては、常法を採用することができるが、ナイフコーターによるコーティングが好ましい。
【0061】
コーティング量(又は表面塗布量)は、好ましくは5〜150g/m2、より好ましくは10〜80g/m2、更に好ましくは15〜60g/m2である。コーティング量が、5g/m2未満であるとエアーバッグに十分な気密性・難燃性を付与できず、150g/m2を超えるとエアーバッグを折り畳んだ際の体積が大きくなり、車内に収納する際に不利になることがある。
【0062】
液状シリコーンゴム組成物は、公知の硬化条件下で公知の硬化方法により硬化させることができる。具体的には、例えば、100〜200℃の乾燥炉で0.5〜60分間、常圧加熱乾燥することにより、組成物を硬化させることができる。
【0063】
エアーバッグ用シリコーンゴムコーティング基布(エアーバッグ布)をエアーバッグに加工する際は、例えば、少なくとも内面側がシリコーンゴムでコーティングされている2枚の平織布の外周部同士を接着剤で貼り合わせ、かつその接着剤層を縫い合わせて作製する方法が挙げられる。また、予め袋織りして作製されたエアーバッグ用基布の少なくとも内面側に、上記のように、液状シリコーンゴム組成物を、所定のコーティング量でコーティングし、所定の硬化条件下で硬化させる方法を採ってもよい。なお、ここで用いる接着剤は公知のものを用いることができるが、シームシーラントと呼ばれるシリコーン系接着剤を用いることが接着力、接着耐久性などの面から好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、調製例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例において、粘度はJIS K 7117−1:1999に記載の回転粘度計により測定した25℃における値である。また、(B)成分の3官能性のR3SiO3/2単位(T単位)及び4官能性のSiO4/2単位(Q単位)から選ばれる少なくとも1種の分岐鎖状シロキサン単位と、単官能性のR33SiO1/2単位(M単位)との比(M単位/T及び/又はQ単位)はオルガノポリシロキサンレジン1質量部を重クロロホルム3質量部に溶かすことで調製したサンプルをテフロン(登録商標)製のNMR用サンプル管に入れ、ECX−500II(日本電子株式会社製)で3,000回積算することで29Si−NMRスペクトルを測定し、算出した。また、(B)成分のアルケニル基量及び水酸基量は前記の方法でそれぞれ測定した。
【0065】
[調製例1]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン(A1)65質量部、ヘキサメチルジシラザン8質量部、水2質量部、比表面積がBET法で300m2/gであるシリカ微粉末(C1)(Aerosi1 300、日本アエロジル社製)40質量部をニーダー中に投入し、室温にて1時間混合した。その後温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混合した。この後、室温まで降温して分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン(A1)19質量部、主鎖を構成する2官能性ジオルガノシロキサン単位のうちビニルメチルシロキサン単位を5モル%、ジメチルシロキサン単位を95モル%含有し、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された25℃での粘度が700mPa・sのジメチル−ビニルメチルポリシロキサン(A2)5質量部を添加して均一になるまで混合し、ベースコンパウンド(1)を得た。
【0066】
[実施例1]
上記で得られたベースコンパウンド(1)105質量部に、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が5,000mPa・sのジメチルポリシロキサン(A3)32.5質量部、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン(A4)56質量部、(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)(CH2=CH)SiO2/2単位とSiO4/2単位からなり、M単位/Q単位の比が0.80であり、アルケニル基量が0.10mol/100gであり、水酸基量が0.010mol/100gである三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B1)32.5質量部、25℃における粘度が45mPa・sであり、分子鎖側鎖にケイ素原子結合水素原子を有する分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(D)(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.0108mol/g)17質量部、1−エチニルシクロヘキサノール0.09質量部、塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するジメチルポリシロキサン溶液(E)0.45質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(F)0.56質量部、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(G)0.3質量部を室温にて1時間混合して、組成物A((A)成分及び(B)成分中のケイ素原子結合ビニル基に対する(C)成分中のSiH基のモル比:SiH/SiVi=4.5)を調製した。
次に、調製した組成物Aを150℃で5分プレスキュアーすることで、JIS K 6249:2003に準拠したシートを作製し、このシートについてJIS K 6249:2003に従って硬さ、切断時伸び、引張強さ、引裂強さ(クレセント型)を測定した結果を表1に示す。また、組成物Aをエアーバッグ用66ナイロン基布(210デニール)にコーティング量が25〜30g/m2になるようにコーティングした後に、乾燥機で200℃/1分間で硬化させたコーティング基布を用いてFMVSS NO.302に規定の方法で燃焼速度を測定した。10回の燃焼試験を行った結果の平均燃焼速度を表1に示す。
【0067】
[調製例2]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン(A1)65質量部、比表面積がBET法で300m2/gであるシリカ微粉末をトリメチルシラザンで処理したシリカ微粉末(C2)(Musil−130A、信越化学工業製)40質量部をニーダー中に投入し、室温にて1時間混合した。その後温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混合した。この後、室温まで降温して分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン(A1)19質量部、主鎖を構成する2官能性ジオルガノシロキサン単位のうちビニルメチルシロキサン単位を5モル%、ジメチルシロキサン単位を95モル%含有し、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された25℃での粘度が700mPa・sのジメチル−ビニルメチルポリシロキサン(A2)5質量部を添加して均一になるまで混合し、ベースコンパウンド(2)を得た。
【0068】
[実施例2]
実施例1においてベースコンパウンド(1)をベースコンパウンド(2)に同質量部で置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Bを調製し、実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0069】
[実施例3]
実施例1において三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B1)を(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)(CH2=CH)SiO2/2単位とSiO3/2単位からなり、M単位/T単位の比が0.80であり、アルケニル基量が0.10mol/100gであり、水酸基量が0.010mol/100gである三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B2)に同質量部で置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Cを調製し、実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0070】
[比較例1]
実施例1において三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B1)を(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、M単位/Q単位の比が0.80であり、アルケニル基量が0.10mol/100gであり、水酸基量が0.010mol/100gである三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B3)に同質量部で置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Dを調製し、実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0071】
[比較例2]
実施例1において三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B1)を(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)(CH2=CH)SiO2/2単位とSiO4/2単位からなり、M単位/Q単位の比が0.80であり、アルケニル基量が0.10mol/100gであり、水酸基量が0.045mol/100gである三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B4)に同質量部で置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Eを調製し、実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0072】
[比較例3]
実施例1において三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B1)を(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)(CH2=CH)SiO2/2単位とSiO4/2単位からなり、M単位/Q単位の比が1.80であり、アルケニル基量が0.10mol/100gであり、水酸基量が0.010mol/100gである三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B5)に同質量部で置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Fを調製し、実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0073】
[比較例4]
実施例1において三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B1)を(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)(CH2=CH)SiO2/2単位とSiO4/2単位からなり、M単位/Q単位の比が0.40であり、アルケニル基量が0.10mol/100gであり、水酸基量が0.010mol/100gである三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B6)に同質量部で置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Gを調製し、実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0074】
[比較例5]
実施例1において三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B1)を(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)(CH2=CH)SiO2/2単位とSiO4/2単位からなり、M単位/Q単位の比が0.85であり、アルケニル基量が0.20mol/100gであり、水酸基量が0.010mol/100gである三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B7)に同質量部で置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Hを調製し、実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0075】
[比較例6]
実施例1において三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B1)を(CH3)3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、M単位/Q単位の比が0.85であり、アルケニル基を含有しておらず、水酸基量が0.10mol/100gである三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(B8)に同質量部で置き換えたこと以外は全て同一の処方で組成物Iを調製し、実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0076】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下
である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部
を含む、コーティング量5〜150g/m2の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜がエアーバッグ用基布の少なくとも片面に形成されてなることを特徴とする難燃性エアーバッグ。
【請求項2】
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部含有することを特徴とする請求項1記載の難燃性エアーバッグ。
【請求項3】
(C)成分が、表面疎水化シリカ微粉末であることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性エアーバッグ。
【請求項4】
(F)成分が、接着性付与官能基として1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の難燃性エアーバッグ。
【請求項5】
エアーバッグのFMVSS No.302燃焼試験における燃焼速度が40mm/min.以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の難燃性エアーバッグ。
【請求項6】
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下
である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部
を含む付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程、前記組成物をエアーバッグ用基布の少なくとも片面に5〜150g/m2のコーティング量で塗布する工程、及び前記組成物が塗布された基布を加熱硬化する工程を有することを特徴とする難燃性エアーバッグの製造方法。
【請求項7】
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部含有することを特徴とする請求項6記載の難燃性エアーバッグの製造方法。
【請求項8】
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製する工程において、(C)成分に、予め表面処理された表面疎水化シリカ微粉末を用いるか、又は上記調製工程において表面処理されてなる表面疎水化シリカ微粉末を用いるかの、いずれかの工程を含むことを特徴とする請求項6又は7記載の難燃性エアーバッグの製造方法。
【請求項9】
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のJIS K 7117−1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載の難燃性エアーバッグの製造方法。
【請求項10】
(A)ケイ素原子に結合した炭素数2〜8のアルケニル基を1分子中に2個以上含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)0.05〜0.15mol/100gのアルケニル基が2官能性のR1R2SiO2/2単位(D単位、式中、R1は炭素数2〜8のアルケニル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基である。)のみに結合し、
3官能性のR3SiO3/2単位(T単位、式中、R3はメチル基である。)又は4官能性のSiO4/2単位(Q単位)の分岐鎖状シロキサン単位に対する単官能性のR33SiO1/2単位(M単位、式中、R3は上記と同じである。)の比(M単位/T単位またはM単位/Q単位)が0.65〜1.40で、
水酸基量が0.040mol/100g以下
である三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:5〜100質量部、
(C)BET法における比表面積が50m2/g以上のシリカ微粉末:10〜30質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分の1分子中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数が、(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、1〜10個となる量、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒としての白金族金属系触媒:有効量、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10質量部
を含むことを特徴とする難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項11】
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合助触媒を(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部含有することを特徴とする請求項10記載の難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項12】
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のJIS K 7117−1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sであることを特徴とする請求項10又は11記載の難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-11 
出願番号 P2019-505792
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (D06M)
P 1 651・ 537- YAA (D06M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 西村 泰英
藤井 眞吾
登録日 2020-07-20 
登録番号 6737394
権利者 信越化学工業株式会社
発明の名称 難燃性エアーバッグ、難燃性エアーバッグの製造方法、及び難燃性エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物  
代理人 特許業務法人英明国際特許事務所  
代理人 特許業務法人英明国際特許事務所  

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