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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1383674
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-05 
確定日 2022-04-14 
事件の表示 特願2016−171604「光学部材」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 8日出願公開、特開2018− 36586〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特願2016−171604号(以下「本件出願」という。)は、平成28年9月2日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 2年 5月15日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 9月15日提出:意見書
令和 2年 9月15日提出:手続補正書
令和 2年10月30日付け:拒絶査定
令和 3年 1月 5日提出:審判請求書
令和 3年 8月 6日付け:拒絶理由通知書
令和 3年10月 6日提出:意見書
令和 3年10月 6日提出:手続補正書
令和 3年11月 8日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 3年12月22日提出:意見書


第2 本願発明
本件出願の請求項1〜6に係る発明は、令和3年10月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 偏光板と反射型偏光子とプリズム層とがそれぞれ粘着剤層を介してこの順に一体化されており、
前記プリズム層は、前記反射型偏光子側から順に、基材部として機能する偏光変換層とプリズム部とが一体化されており、
前記プリズム部は、前記反射型偏光子と反対側に凸となる複数の単位プリズムが並列されて構成されており、
前記偏光変換層は、偏光度が99.99%である第1および第2の偏光子を透過する自然光の輝度について、互いの吸収軸が平行となるように配置された前記第1および第2の偏光子の間に前記偏光変換層を配置したときの前記輝度を平行輝度L0とし、互いの吸収軸が直交するように配置された前記第1および第2の偏光子の間に前記偏光変換層を配置したときの前記輝度を直交輝度L90としたとき、
L90/L0≧0.2
を満足する、光学部材。」


第3 拒絶の理由
令和3年11月8日付けの当合議体が通知した拒絶理由は、概略、本件出願の請求項1に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1:特表2012−524303号公報
引用文献2:特開2014−186142号公報
引用文献4:特開2015−173066号公報
引用文献5:特開2015−200866号公報
(当合議体注:引用文献1、2及び4は、主引用例である。また、引用文献1及び5は、引用文献2及び4を主引用例とした場合の周知例であり、引用文献2は、引用文献1及び4を主引用例とした場合の周知例でもある。)


第4 引用文献1及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
当審の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特表2012−524303号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等で活用した箇所である。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学構造物であって、
約30%以上の光学ヘイズを有する光学拡散体層と、
前記光学拡散体層上に配設された光学フィルムであって、約1.3以下の屈折率及び約5%以下の光学ヘイズを有する、光学フィルムと、
前記光学フィルム上に配設された反射偏光子層であって、前記光学構造物内の隣接する2つの主表面それぞれの相当な部分が、互いに物理的に接触する、反射偏光子層と、を備える、光学構造物。」

(2)「【0002】
(発明の分野)
本発明は、広義には、反射偏光子層と、低屈折率を有する光学フィルム又はある低反射率に似た特性を呈する光学フィルムとを備える含む光学構造物に関する。本発明は、そのような光学構造物を組み込んだ、液晶ディスプレイシステムなどのディスプレイシステムに更に応用可能である。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイ(LCD)などの光学ディスプレイは、ますます一般的なものとなっており、例えば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)から電子ゲームに、そしてラップトップコンピュータなどのより大型の装置に至るハンドヘルドコンピュータ装置、LCDモニター及びテレビスクリーンなどの多くの用途が見出されている。LCDは通常、出力輝度、照度の均一性、視角、及び全体的なシステム効率などのディスプレイ性能を改善するために1枚以上の光管理フィルムを含んでいる。例示的な光管理フィルムは、プリズム状の構造をなしたフィルムと、反射偏光子と、吸収偏光子と、拡散子フィルムとを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光管理フィルムは通常、バックライト組立体と液晶パネルとの間に配列される。製造の面から、複数の個別のフィルム片の取扱い及び組み立てにより、いくつかの問題が生じ得る。これらの問題には、とりわけ、個々の光学フィルムから保護ライナーを取り外すのに余分な時間が必要となることに加えて、ライナーを取り外すときにフィルムに損傷を与える可能性が増すことが挙げられる。加えて、多数の個々のシートをディスプレイフレームに挿入することは、時間を要するものであり、また、個々のフィルムを積み重ねることで、フィルムが損傷を受ける機会が更に生じる。これらの問題の全ては、全体的なスループットの低下に、あるいは歩留まりの減少に寄与することがあり、それらはシステムコストの増大につながる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
広義には、本発明は光学構造物に関する。一実施形態において、ある光学構造物が、約30%以上の光学ヘイズを有する光学拡散体層と、光学拡散体層上に配設された光学フィルムであって、約1.3以下の屈折率及び約5%以下の光学ヘイズを有する光学フィルムと、光学フィルム上に配設された反射偏光子層とを備える。光学構造物内の隣接する2つの主表面それぞれの相当な部分が、互いに物理的に接触する。ある場合には、光学フィルムは、結合剤と、複数の連結ボイドと、複数の粒子とを備え、結合剤と複数の粒子との重量比は約1:2以上である。ある場合には、反射偏光子層は、交互に並ぶ層を備える多層光学フィルムであってもよく、交互に並ぶ層の少なくとも1つは、複屈折材料を備える。ある場合には、反射偏光子層は、ワイヤグリッド反射偏光子又はコレステリック反射偏光子を備える。ある場合には、光学構造物内の隣接する2つの主表面それぞれの少なくとも50%、又は少なくとも70%、又は少なくとも90%が、互いに物理的に接触する。ある場合には、光学構造物は、約1.2以上、又は約1.3以上、又は約1.4以上の軸方向輝度ゲインを有する。」

(3)「【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、広義には、反射偏光子と、複数の連結ボイドなどの複数のボイドを備える光学フィルムとを備える光学構造物に関する。ある場合には、光学フィルムは、約5%未満の光学ヘイズ及び約1.3未満の有効屈折率など、低い光学ヘイズと低い有効屈折率を有する。ある場合には、光学フィルムは、例えば内部全反射を支援するかあるいは内部反射を強化する能力など、ある低屈折率に似た光学特性を呈する一方で、高い光学ヘイズ及び/又は高い拡散反射率を有する。
【0012】
開示する光学構造物は、例えばシステムによって表示される画像の軸上の明るさ及びコントラストなど、システムの光学特性のうち少なくとも一部を改善する、維持する、又は実質的に維持する一方で、システムの耐久性を改善し、製造及び組み立てコストを削減し、システムの全厚を低減するために、例えば液晶ディスプレイシステムなど、様々な光学システム又はディスプレイシステムに組み込まれ得る。
【0013】
本明細書にて開示する光学フィルムは、結合剤中に分散された、複数の連結ボイド又は網状のボイドなどの複数のボイドを備えている。複数の連結ボイドをなすボイドは、中空トンネル又は中空トンネルに似た通路を介して互いに連結している。ボイドは、物質及び/又は微粒子を必ずしも持たないわけではない。例えば、ある場合には、あるボイドが、例えば結合剤及び/又はナノ粒子などを含む、1つ以上の小さな繊維又はストリングに似た物体を含んでもよい。開示する一部の光学フィルムは、集合的な複数の連結ボイド又は集合的な網状のボイドを備え、各ボイドは、それぞれ複数であるいは網状に連結されている。ある場合には、集合的な複数の連結ボイドに加えて、開示する光学フィルムは、複数の独立したあるいは連結しないボイドを備え、つまり、それらのボイドは、トンネルを介して互いに連結されていない。
・・・省略・・・
【0023】
図1は、光学フィルム120上に配設された反射偏光子層110を備える光学構造物100の概略的側面図であり、光学フィルム120は、屈折率nvを有する複数のボイド130を備え、ボイド130は、屈折率nbを有する結合剤170中に分散されている。反射偏光子層110は、頂部主表面112と底部主表面114とを含んでいる。光学フィルム120は、頂部主表面122と底部主表面124とを含んでいる。
【0024】
ある場合には、ボイド130の主たる光学効果は、有効屈折率に影響を及ぼし、かつ、例えば光を散乱させないことである。そのような場合、光学フィルム120の光学ヘイズは、約5%以下、又は約4%以下、又は約3.5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2.5%以下、又は約2%以下、又は約1.5%以下、又は約1%以下である。そのような場合、光学フィルムの有効屈折率は、約1.35以下、又は約1.3以下、又は約1.25以下、又は約1.2以下、又は約1.15以下、又は約1.1以下、又は約1.05以下である。そのような例において、光学フィルム120の厚さは、約100nm以上、又は約200nm以上、又は約500nm以上、又は約700nm以上、又は約1,000nm以上、又は約1500nm以上、又は約2000nm以上である。
・・・省略・・・
【0027】
ある場合には、光学フィルム120は、高度な光学ヘイズを有する。そのような場合、光学フィルムの光学ヘイズは、約40%以上、又は約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約80%以上、又は約90%以上、又は約95%以上である。
・・・省略・・・
【0054】
例示的な光学構造物100において、光学フィルム120は、反射偏光子層110に物理的に接触する。例えば、光学フィルム120は、直接、反射偏光子層11の底部表面144の上にコーティングされてもよい。いくつかの例において、1つ以上の層が、これら2つの層の間に配設されてもよい。例えば、図2は、光学構造物200の概略的側面図であり、この光学構造物200は、光学フィルムを偏光子層に接合するために光学フィルム120と反射偏光子層110との間に配設された光学接着剤層140を備えている。
【0055】
ある場合には、光学接着剤層140は高度な正透過率を有する。例えば、そのような場合、接着剤層の正透過率は、約60%以上、又は約70%以上、又は約80%以上、又は約90%以上である。
【0056】
ある場合には、光学接着剤層140は、相当に光拡散性があり、白色の外観を有し得る。例えば、そのような場合、光学拡散性接着剤層140の光学ヘイズは、約30%以上、又は約30%以上、又は約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約80%以上、又は約90%以上、又は約95%以上である。ある場合には、拡散性接着剤層の拡散反射率は、約20%以上、又は約30%以上、又は約40%以上、又は約50%以上、又は約60%以上である。そのような場合、接着剤層は、光学接着剤中に分散された複数の粒子を含めることによって光学的に拡散性となり得るが、ここで、粒子と光学接着剤は、異なる屈折率を有するものである。2つの屈折率が整合しないことにより、結果として、光が散乱し得ることになる。
【0057】
光学接着剤140には、ある用途で望ましくかつ/又は利用可能となり得る任意の光学接着剤を挙げることができる。例示的な光学接着剤には、感圧性接着剤(PSA)、感熱性接着剤、溶剤揮発性接着剤(solvent-volatile adhesives)、及びノーランドプロダクツ社(Norland Products,Inc.)から入手可能な紫外線硬化性光学接着剤などの紫外線硬化性接着剤が挙げられる。例示的なPSAには、天然ゴム、合成ゴム、スチレンブロック共重合体、アクリル(メタクリル)ブロック共重合体、ポリビニルエーテル、ポリオレフィン、及びポリアクリレート(ポリメタクリレート)に基づいたものが挙げられる。本明細書で用いるとき、アクリル(メタクリル)(又はアクリレート(メタクリレート))は、アクリル類とメタクリル類の両方を指す。他の例示的なPSAには、アクリレート(メタクリレート)、ゴム、熱可塑性エラストマー、シリコーン、ウレタン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの例において、PSAは、アクリル(メタクリル)PSA又は少なくとも1つのポリアクリレート(ポリメタクリレート)に基づくものである。例示的なシリコーンPSAには、ポリマー又はゴム、及び任意選択による粘着性樹脂が挙げられる。他の例示的なシリコーンPSAには、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミド及び任意選択による粘着剤が挙げられる。
・・・省略・・・
【0074】
光学構造物405内の隣接する2つの主表面それぞれの相当な部分が、互いに物理的に接触する。例えば、光学構造物内の隣接する2つの主表面それぞれの少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%が、互いに物理的に接触する。例えば、ある場合には、光学構造物405内のある層は、隣接する層へ積層されるか、あるいは隣接する層上にコーティングされる。
・・・省略・・・
【0080】
光学フィルム445は複数のボイドを備え、高屈折率媒質中においては、高度な光学ヘイズと狭い散乱分布とを有する。例えば、光学フィルム445は、約20%以上、又は約30%以上、又は約40%以上、又は約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約80%以上、又は約90%以上、又は約95%以上の光学ヘイズを有する。光学フィルム445は、本明細書にて開示する任意の光学フィルムであってよい。例えば、光学フィルム445は、光学フィルム120と類似したものであってもよい。
・・・省略・・・
【0087】
光学フィルム540は、任意の光学フィルム又は本明細書にて開示する光学フィルであっても、その光学フィルムを含むものであってもよい。例えば、光学フィルム540は、光学フィルム120と類似したものであってもよい。光学フィルム540は、反射偏光子層530の主表面532における内部全反射を促進する。例えば、ある場合には、光学フィルムは、大きな入射角θ1を有する入射光線534を反射光線536とする内部全反射を促進するが、ここで、光学フィルムの非存在下においては、入射光線534の少なくとも相当な部分が、漏出光線535として、反射偏光子層530を通じて漏出するか、あるいは反射偏光子層530を透過する。
・・・省略・・・
【0094】
光学フィルム555は、本明細書にて開示する任意の光学フィルムであってよい。例えば、光学フィルム555は、光学フィルム445と類似したものであってもよい。光学フィルムは高度な光学ヘイズを有し、高屈折率媒質中において狭い散乱分布を有することにより、ディスプレイシステム501の光学ゲインを保持又は維持することが可能である。例えば、光学構造物506の光学ゲインは、少なくとも約1.1、又は少なくとも約1.2、又は少なくとも1.2、又は少なくとも約1.25、又は少なくとも約1.3、又は少なくとも約1.35、又は少なくとも約1.4、又は少なくとも約1.45、又は少なくとも約1.5である。
・・・省略・・・
【0096】
図17は、ディスプレイシステム1700の概略的側面図であり、このディスプレイシステム1700は、後方反射体570と、その後方反射体から空隙1710を隔てて分離した光導体510と、その光導体上に配設されかつその光導体から空隙1720を隔てて分離した転換フィルムと、その転換フィルム上に配設された光学接着剤層1740と、その光学接着剤層上に配設された光学フィルム1750と、その光学フィルム上に配設された反射偏光子層1760と、その反射偏光子層上に配設された光学接着剤層1770と、その光学接着剤層上に配設された液晶パネル517とを備える。
【0097】
転換フィルム1730は、光導体510から受容した光を方向転換させる。ディスプレイシステム1700が斜めに照明するバックライトを備える場合など、ある場合には、転換フィルム1730は、ディスプレイシステムの明るい軸外ローブを方向転換させてディスプレイの観測軸に向けるという光学的効果を有する。転換フィルム1730は複数の構造1732を含み、これらの構造1732は、光導体1732(当合議体注:「1732」は、「510」の誤記である。)に面し、基板1734上に配設されている。ある場合には、構造1732はプリズム状であってもよい。例えば、ある場合には、転換フィルム1730は、反転したプリズム状の明るさ向上フィルムであってもよい。
【0098】
光学フィルム1750は、本明細書にて開示する任意の光学フィルムであってよい。例えば、光学フィルム1750は、光学フィルム555又は540と類似したものであってもよい。一般に、光学フィルム1750は、ある用途に望ましいものとなり得る任意の光学ヘイズを有することができる。例えば、ある場合には、光学フィルム1750は、約5%〜約70%、又は約10%〜約60%、又は約10%〜約50%、又は約10%〜約40%、又は約15%〜約35%、又は約20%〜約30%の範囲内の光学ヘイズを有することができる。ある場合には、光学フィルムのヘイズは約20%以下である。ある場合には、光学フィルムのヘイズは約20%以上である。
【0099】
一般に、光導体510は、任意の材料で作製されてよく、また、ある用途で望ましいものとなり得る任意の形状を有することができる。例えば、光導体510は、ポリカーボネート又はアクリルで作製されてよく、横断面において矩形又は楔形の形状をなしてよい。光導体510は、図17には明示的に示されていない抽出形体を含むことができる。その抽出形体及び光導体は、ある場合には、射出成形プロセスの間に成形され得る。
【0100】
光学接着剤層1770及び1740は、光学接着剤層420と類似したものであってもよい。ある場合には、光学接着剤層1770及び/又は1740は、光学拡散性であってもよい。反射偏光子層は、反射偏光子層430と類似したものであってもよい。
【0101】
図18は、ディスプレイシステム1800の概略的側面図であり、このディスプレイシステム1800は、光導体510に面する光学スタック1810を備える。光学スタック1810は、光学拡散体層510と、反射偏光子層530と、光学フィルム540と、光学接着剤層520と、液晶パネル517とを含む。
【0102】
図18には明確に示されていないが、液晶パネル517は、2枚のパネルプレートの間に配設された液晶の層と、液晶層の上方に配設された上部光吸収偏光子層と、液晶層の下方に配設された下部光吸収偏光子とを含む。上部及び下部光吸収偏光子と液晶層とが相まって、反射偏光子層530から液晶パネル410を通じてディスプレイシステムに面する観測者へと向かう光の透過を制御する。
【0103】
光学スタック1810は少なくとも1つの光吸収偏光子層を含み、この光吸収偏光子層は、液晶パネル517の一部であり、反射偏光子層530の通過軸と同じ方向をなす通過軸を有する。」

(4)図1


(5)図2


(6)図17


(7)図18


2 引用発明
引用文献1の【0096】〜【0100】、図17の記載に記載された「液晶パネル517」は、【0101】〜【0103】、図18に記載された「液晶パネル517」と同じ符号が用いられていることと、技術常識から、引用文献1の【0096】〜【0100】、図17の記載に記載された「液晶パネル517」が、「2枚のパネルプレートの間に配設された液晶の層と、液晶層の上方に配設された上部光吸収偏光子層と、液晶層の下方に配設された下部光吸収偏光子とを含む」ものであることは、明らかである。また、同図17から、構造1732は、反射偏光子層1760と反対側に凸となる複数のプリズム状であることが、看取できる。
そうしてみると、引用文献1には、ディスプレイシステムの発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 後方反射体と、その後方反射体から空隙を隔てて分離した光導体と、その光導体上に配設されかつその光導体から空隙を隔てて分離した転換フィルムと、その転換フィルム上に配設された光学接着剤層と、その光学接着剤層上に配設された光学フィルムと、その光学フィルム上に配設された反射偏光子層と、その反射偏光子層上に配設された光学接着剤層と、その光学接着剤層上に配設された液晶パネルとを備えるディスプレイシステムであって、
転換フィルムは、光導体から受容した光を方向転換させ、複数の構造を含み、これらの構造は、光導体に面し、基板上に配設され、反射偏光子層と反対側に凸となる複数のプリズム状であり、
液晶パネルは、2枚のパネルプレートの間に配設された液晶の層と、液晶層の上方に配設された上部光吸収偏光子層と、液晶層の下方に配設された下部光吸収偏光子とを含む、
ディスプレイシステム。」


第5 対比
1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)偏光板について
引用発明の「ディスプレイシステム」は、「転換フィルムと、その転換フィルム上に配設された光学接着剤層と、その光学接着剤層上に配設された光学フィルムと、その光学フィルム上に配設された反射偏光子層と、その反射偏光子層上に配設された光学接着剤層と、その光学接着剤層上に配設された液晶パネルとを備え」、「液晶パネルは、2枚のパネルプレートの間に配設された液晶の層と、液晶層の上方に配設された上部光吸収偏光子層と、液晶層の下方に配設された下部光吸収偏光子とを含む」。
上記構成からみて、引用発明の「下部光吸収偏光子」は、本願発明の「偏光板」に相当する。

(2)反射型偏光子について
上記(1)の構成からみて、引用発明の「反射偏光子」は、本願発明の「反射型偏光子」に相当する。

(3)プリズム層について
引用発明の「転換フィルム」は、「光導体から受容した光を方向転換させ、複数の構造を含み、これらの構造は、光導体に面し、基板上に配設され、反射偏光子層と反対側に凸となる複数のプリズム状であ」る。
ここで、引用発明の「転換フィルム」が、層をなすことは明らかである。
そうしてみると、引用発明の「転換フィルム」は、本願発明の「プリズム層」に相当する。

(4)光学部材について
上記(1)及び(3)の構成からみて、引用発明の「ディスプレイシステム」は、「下部光吸収偏光子」と「反射偏光子層」と「光学フィルム」と「転換フィルム」とがこの順に積層されている。また、これらの部材は空隙を隔てていないので一体化されているといえる。
そうしてみると、引用発明の「ディスプレイシステム」は、本願発明の「光学部材」に相当する。また、引用発明の「ディスプレイシステム」は、本願発明の「偏光板と反射型偏光子とプリズム層とがそれぞれ粘着剤層を介してこの順に一体化されて」いる「光学部材」と、「偏光板と反射型偏光子とプリズム層とがこの順に一体化されて」いる点で共通する。

(5)プリズム層、プリズム部について
上記(1)及び(3)の構成からみて、引用発明の「転換フィルム」は、反射偏光子層側から順に、「基板」と「プリズム状」の構造が配設され、基板とプリズム状の構造とが一体化されており、プリズム状の構造は、反射偏光子と反対側に凸となる複数の単位プリズムが並列されて構成されているといえる。
そうしてみると、引用発明の「基板」及び「構造」は、それぞれ、本願発明の「基材部」及び「プリズム部」に相当する。また、引用発明の「転換フィルム」は、本願発明の「プリズム層」と、「前記反射型偏光子側から順に、基材部と」「プリズム部とが一体化されており」との点で共通する。さらに、引用発明の「構造」は、本願発明の「プリズム部」の「前記反射型偏光子と反対側に凸となる複数の単位プリズムが並列されて構成されており」との要件を満たす。

2 一致点及び相違点
(1)一致点
以上の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。

「 偏光板と反射型偏光子とプリズム層とがこの順に一体化されており、
前記プリズム層は、前記反射型偏光子側から順に、基材部とプリズム部とが一体化されており、
前記プリズム部は、前記反射型偏光子と反対側に凸となる複数の単位プリズムが並列されて構成されている、
光学部材。」

(2)相違点
本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、「偏光板と反射型偏光子とプリズム層とがそれぞれ粘着剤層を介してこの順に一体化されて」いるのに対して、引用発明は、このような構成ではない点。

(相違点2)
「プリズム層」が、本願発明は、「前記反射偏光子側から順に、基材部として機能する偏光変換層とプリズム部とが一体化されて」いるのに対して、引用発明の「転換フィルム」は、「反射偏光子層」側から順に、「基板」、「構造」が配設されていて、偏光変換層が配設されているのかが明らかでない点。

(相違点3)
本願発明は、「偏光変換層は、偏光度が99.99%である第1および第2の偏光子を透過する自然光の輝度について、互いの吸収軸が平行となるように配置された前記第1および第2の偏光子の間に前記偏光変換層を配置したときの前記輝度を平行輝度L0とし、互いの吸収軸が直交するように配置された前記第1および第2の偏光子の間に前記偏光変換層を配置したときの前記輝度を直交輝度L90としたとき、L90/L0≧0.2を満足する」のに対して、引用発明は、偏光変換層が配設されているのかが明らかでない点。


第6 判断
1 相違点についての判断
上記相違点について検討する。

(1)事案に鑑み、まず、相違点2及び3について検討する。
プリズム層の基材部を光学部材として機能するようにすることは、特開2014−186142号公報(以下「引用文献2」という。)の【0064】、【0067】及び【0069】、特開2006−208588号公報(以下「周知例」という。)の【0050】に記載されているように周知技術である。
上記周知技術を心得た当業者であれば、部材の簡素化や製法の簡略化のために、引用発明において、「光学フィルム」と「転換フィルム」とを光学接着剤や基板を介さずに一体化して、「光学フィルム」を「転換フィルム」の基板とすることは、当然想起するものである。
ここで、引用文献1において、【0098】、【0094】、【0080】及び【0027】には、それぞれ、「光学フィルム1750は、光学フィルム555又は540と類似したものであってもよい。」、「光学フィルム555は、光学フィルム445と類似したものであってもよい。」、「光学フィルム445は、光学フィルム120と類似したものであってもよい。」及び「光学フィルム120は、高度な光学ヘイズを有する。そのような場合、光学フィルムの光学ヘイズは、約40%以上、又は約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約80%以上、又は約90%以上、又は約95%以上である。」と記載されている。
上記記載から、引用発明の光学フィルムとして80%以上の高度な光学ヘイズを有するものも含まれているといえる。そして、このような高度な光学ヘイズを有する光学フィルムが偏光変換層として機能するものであることは、当業者にとって自明のことである(当合議体注:このことは、本件明細書の【0037】及び【0042】の記載からも確認できる)。また、高度な光学ヘイズを有する光学フィルムであれば、上記相違点3に係る平行輝度と直交輝度の式L90/L0≧0.2を満たすものである。仮に、満たさないとしても、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。
そうしてみると、引用発明において、「光学フィルム」と「プリズム状の構造」とが一体化されるようにし、この「光学フィルム」を偏光変換層として機能するようにして「転換フィルム」の基板とすることは、当業者にとって何ら格別の困難性はない。
したがって、引用発明に周知技術を適用して上記相違点2及び3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)次に相違点1について検討する。
引用文献1において、【請求項1】、【0054】及び【0057】には、それぞれ、「前記光学フィルム上に配設された反射偏光子層であって、前記光学構造物内の隣接する2つの主表面それぞれの相当な部分が、互いに物理的に接触する」、「光学フィルム120は、反射偏光子層120に物理的に接触する。・・・光学フィルムを偏光子層に接合するために光学フィルム120と反射偏光子層110との間に配設された光学接着剤層140を備えている。」及び「例示的な光学接着剤には、感圧性接着剤(PSA)・・・が挙げられる。・・・例示的なシリコーンPSAには・・・粘着性樹脂が挙げられる。他の例示的なシリコーンPSAには・・・粘着剤が挙げられる。」と記載されている。
上記記載に接した当業者であれば、引用発明の各部材を粘着剤層を介して一体化することは、当然想起するものである。そして、引用発明は、「下部光吸収偏光子」と「反射偏光子層」と「光学フィルム」と「転換フィルム」とがこの順に積層されている。また、引用発明において、「光学フィルム」と「プリズム状の構造」とが一体化されるようにし、この「光学フィルム」を偏光変換層として機能するようにして「転換フィルム」の基板とすることは、当業者にとって何ら格別の困難性はないことは、上記(1)で述べたとおりである。
そうしてみると、引用発明において、「下部光吸収偏光子」と「反射偏光子層」と「転換フィルム」とがそれぞれ粘着剤層を介してこの順に一体化されるように構成することは、当業者にとって格別の困難性はない。
したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和3年12月22日提出の意見書において、「・・・引用文献2には、下側のみがレンズ加工されること(すなわち、逆プリズム)は開示も示唆もされていません。仮に逆プリズム自体が周知であるとしても、引用文献2に逆プリズムが開示も示唆もされていない以上、導光メカニズムを考慮すると引用文献2の上プリズムまたは両面プリズムを逆プリズムに改変する動機付けはありません。そのような強引な改変は、本願発明から逆戻りしないと不可能です。」、「588号公報(当合議体注:特開2006−208588号公報。以下同様。)に記載のプリズムシートは、プロジェクターのスクリーンに用いられます。すなわち、当該プリズムシートは、光源(画像表示装置)22の出射側に配置されることが必須であり、液晶表示装置の背面側偏光板として用いられる本願発明の光学部材のプリズム層ならびに引用文献1および4に記載のプリズムとは全く異なります。588号公報に記載のプロジェクターと引用文献1または4に記載の画像表示装置とは、具体的な用途(したがって、全体の構造、プリズムの配置位置、要求される特性等)が互いに全く異なりますから、588号公報の記載事項を引用文献1または4に適用する動機付けはありません。」と主張している。
しかしながら、上記1で述べたとおりであるから、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

3 小括
本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 引用文献2又は引用文献4を主引例とした場合
1 引用文献2を主引例とした場合
令和3年11月8日付け拒絶理由通知書で述べたとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用文献4を主引例とした場合
令和3年11月8日付け拒絶理由通知書で述べたとおり、本願発明は、引用文献4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件出願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-04 
結審通知日 2022-02-08 
審決日 2022-02-25 
出願番号 P2016-171604
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 井口 猶二
関根 洋之
発明の名称 光学部材  
代理人 籾井 孝文  
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