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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L
管理番号 1383731
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-12 
確定日 2022-04-14 
事件の表示 特願2016−167049「食器洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年3月8日出願公開、特開2018−33517〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、平成28年8月29日に出願したものであって、令和2年5月14日付け(発送日:同年5月19日)で拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和2年6月26日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年11月12日付け(発送日:同年11月17日)で拒絶査定がされ、これに対し、令和3年2月12日に拒絶査定不服審判が請求され、その請求と同時に特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正書が提出され、当審において令和3年9月7日付け(発送日:同年9月14日)で拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和3年10月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、令和3年10月15日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

〔本願発明〕
「筐体と、
前記筐体の内部に入った位置と、前記筐体から引き出された位置との間を移動可能に設置され、上面開口を有する洗浄槽と、
前記筐体の内部に設置され、洗浄時に前記洗浄槽の前記上面開口を塞ぐ蓋体と、
前記洗浄槽が前記筐体から引き出されるときに前記蓋体の下面に向けて気流を吹き出す気流吹出部を有し、前記蓋体の前記下面に付着している水滴を除去する水滴除去手段と、
送風ファンと、
前記洗浄槽内の食器を乾燥させる乾燥工程として前記送風ファンから前記洗浄槽内へ送風する状態と、前記送風ファンから前記気流吹出部へ送風する状態とを切り替える風路切替手段と、
を備え、
前記乾燥工程の途中で前記洗浄槽が前記筐体から引き出されるときに、前記風路切替手段の風路の切り替えにより、前記送風ファンで生成された気流を前記気流吹出部のみに供給する食器洗浄装置。」

第3 当審において通知した拒絶の理由について
当審において令和3年9月7日付けで通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

進歩性)本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<引用文献等一覧>
1.特開2002−65570号公報

第4 引用文献
1 引用文献1
当審において令和3年9月7日付けで通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2002−65570号公報)には、「引き出し式食器洗浄機」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。

ア 「【0002】
【従来の技術】 従来の技術の引き出し式食器洗浄機(以下、食器洗浄機と略す)の一例を、図1〜図5を参照して説明する。図1は、洗浄槽が洗浄機本体から引き出された状態を示す斜視図である。図2は、洗浄槽が洗浄機本体から引き出された状態を示す概略縦断面図である。図3は、洗浄槽が洗浄機本体に収容された状態を示す概略縦断面図である。図4は、洗浄槽が洗浄機本体から引き出された状態にあるときのワイパーブレード部の詳細を示す縦断面図である。図5は、ワイパーブレードの洗浄槽上部への取り付け状態を示す斜視図である。図1〜図3に示されているように、洗浄機本体120は略箱状であって、前面(図2、図3の図示の左側。これに対し、図示の右側を後側とする)が開放されている。洗浄槽122は上部が開放された引き出し状であり、洗浄機本体120から引き出された図2に示す位置と、収容された図3に示す位置との間でスライド可能となっている。食器洗浄機110の使用者は、図2の引き出し位置で洗浄槽122内の食器カゴ132に未洗浄の食器133を収め、洗浄槽122を図3の収容位置に収め、食器洗浄機110を運転して食器133を洗浄する。食器洗浄機110の運転終了後、洗浄槽122を引き出し位置に引き出し、洗浄槽122から洗浄済みの食器133を取り出す。
【0003】洗浄中に洗浄槽122から洗浄水130が漏れないように、シールプレート144が設けられている。シールプレート144は洗浄機本体120の上方に配設されており、洗浄槽122が収容位置に収容されると、洗浄槽122の上部開放部に蓋をし、洗浄槽122の外に洗浄水130が漏れないようにする。食器洗浄機110の運転中、洗浄槽122の底部に溜まっている洗浄水130は洗浄ポンプ124によって吸い込まれ、洗浄ポンプ124で加圧された洗浄水130が洗浄ノズル128の複数のノズル穴128aから勢いよく噴出する。この勢いよく噴出する洗浄水130によって、食器カゴ132に収められた食器133が洗浄される。噴出して食器133を洗浄した洗浄水130は、洗浄槽122の底部に戻る。
【0004】洗浄水130は、複数のノズル穴128aから勢いよく噴出するために、洗浄水130はシールプレート144の下面に水滴として付着する。食器洗浄機110が乾燥工程を含む通常の運転動作を行っている場合には、シールプレート144の下面に付着した洗浄水130は乾燥工程で蒸発するため、運転停止後に水滴がシールプレート144の下面に残ることはない。しかし、乾燥工程を行う前に一時停止をした場合や、乾燥工程を省略する運転モードで運転を行った場合には、運転を停止した後にもシールプレート144の下面に水滴が残ったままとなる。
【0005】シールプレート144の下面に水滴が付着した状態で洗浄槽122を引き出すと、箱状の洗浄機本体120の底部に洗浄水130が落下する。洗浄水130が洗浄機本体120の底部に溜まったまま長時間が経過すると、洗浄機本体120の腐食を引き起こす。洗浄機本体120を耐食性の高いステンレス等で製作することによって腐食を抑制することもできるが、製品コストの増大を招く。また、洗浄機本体120の底部に洗浄水130が溜まった状態で洗浄槽122を収容すると、洗浄機本体120の内部の湿度が高くなる。洗浄機本体120内部の湿度が高くなると、洗浄機本体120の内部の構成部品(例えば、洗浄ポンプ124)の腐食を生じさせてしまう。
【0006】シールプレート144の下面に水滴が付着した状態で洗浄槽122が引き出されても、洗浄機本体120の底部に洗浄水130が落下するのを防止するために、従来の食器洗浄機110では、洗浄槽122の後上縁に沿ってワイパーブレード145を取り付けている(例えば、特開2000−166850号公報)。この詳細が図4と図5に示されている。ワイパーブレード145が設けられていると、洗浄槽122が引き出し位置に引き出されるときにワイパーブレード145がシールプレート144の下面に付着した水滴を拭き取り、拭き取られた洗浄水130を洗浄槽122の中に戻す。即ち、従来の食器洗浄機110では、洗浄槽後部上縁に沿ってワイパーブレード145を取り付けることで、シールプレート144の下面に付着した水滴が洗浄機本体120の底部に落下するのを防止していた。また、上記公報には、このワイパーブレード145の代わりに送風手段を設け、洗浄槽122が引き出し位置に引き出されるときに、空気をシールプレート144の下面に吹き付け水滴を吹き飛ばすことにより、水滴が洗浄機本体120の底部に落下するのを防止する技術が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、ワイパーブレード145は、洗浄槽122のスライドの繰り返しにともなって摩耗・変形する。このために、従来の食器洗浄機110を使用し続けると、ワイパーブレード145が磨耗・変形して、シールプレート144の下面に付着した水滴をうまく拭えないことになる。特に、通常シールプレート144の下面には凹凸が存在することから、この問題が無視できない。また、ワイパーブレード145は、図5によく示されているように、洗浄槽122の後上縁に沿って取り付けられているので、洗浄槽122を引き出し位置に引き出しても、図2に示すように、シールプレート144の前縁の下に隠れている。このため、ワイパーブレード145の磨耗・変形の状況を視認、あるいは、手を入れて触感で確認することが難しい。ワイパーブレード145の磨耗・変形の状況の確認が難しいと、使用者はワイパーブレード145の不調に気がつかないままに食器洗浄機110を使用し続け、洗浄機本体120の腐食が進行してしまう。さらに、シールプレート144が邪魔となって、ワイパーブレード145の交換作業が難しいという問題もある。また、洗浄槽122を引き出し位置に引き出すときに、空気を吹き付けてシールプレート144の下面に付着した水滴を吹き飛ばす方式では、シールプレート144の下面が外部に開放された状態で空気を吹き付けることになるので、水滴が洗浄槽122の外に飛び散りやすい。水滴が洗浄槽122の外に飛び散ると、食器洗浄機110が設置されている床に水滴が落下してしまう。」

イ 「【0023】以上、本発明の実施例に係る食器洗浄機について説明したが、本発明は上記の実施例になんら限定されるものではなく、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。例えば、図8に示されている空気を吹き出す空気吹き出し口54aは横長形状をしているが、複数の穴が横に連なる形状でもよい。また、シールプレートの下面の形状は必ずしも平坦ではなく、水滴が付着しやすい部分が存在する。この水滴が付着しやすい部分に集中して空気を吹き付けられるように、空気吹き出し口の形状を形成してもよい。水滴が付着しやすい部分が複数存在する場合には、空気吹き出し口を分岐させ、複数の空気吹き出し口を設けてもよい。また、空気吹き出し口は、必ずしも洗浄槽の後方から前方に向けて吹き出さなくてもよい。洗浄槽の側方から反対側の側方に向けて吹き出してもよい。シールプレートの下方から、シールプレートの下面へ向けて吹き出してもよい。シールプレートに空気吹き出し口を取り付けてもよい。また、食器洗浄機は、食器乾燥のための空気を洗浄槽の中に供給する送風ファンを通常有しているので、この食器乾燥用の送風ファンと、シールプレートの下面に付着した水滴を吹き飛ばす本発明に係る送風ファンを共用することもできる。」

2 引用文献1に記載された発明
引用文献1の上記記載事項及び図1ないし5の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「略箱状の洗浄機本体120と、
洗浄機本体120から引き出された位置と、収容された位置との間でスライド可能となっていて、上部が開放された引き出し状である洗浄槽122と、
洗浄機本体120の上方に配設されており、洗浄槽122が収容位置に収容されると、洗浄槽122の上部開放部に蓋をし、洗浄槽122の外に洗浄水130が漏れないようにするシールプレート144と、
洗浄槽122が引き出し位置に引き出されるときに、空気をシールプレート144の下面に吹き付け水滴を吹き飛ばすことにより、水滴が洗浄機本体120の底部に落下するのを防止する送風手段と、
食器乾燥のための空気を洗浄槽122の中に供給する送風ファンと、
を備えた食器洗浄機。」

3 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、段落【0023】の記載から、次の事項(以下「引用文献1記載事項」という。)も記載されている。

〔引用文献1記載事項〕
「食器洗浄機において、食器乾燥のための空気を洗浄槽の中に供給する送風ファンと、シールプレートの下面に付着した水滴を吹き飛ばす送風ファンを共用すること。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「略箱状の洗浄機本体120」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明の「筐体」に相当し、以下同様に、「洗浄機本体120から引き出された位置と、収容された位置との間でスライド可能となっていて、上部が開放された引き出し状である洗浄槽122」は「前記筐体の内部に入った位置と、前記筐体から引き出された位置との間を移動可能に設置され、上面開口を有する洗浄槽」に、「洗浄機本体120の上方に配設されており、洗浄槽122が収容位置に収容されると、洗浄槽122の上部開放部に蓋をし、洗浄槽122の外に洗浄水130が漏れないようにするシールプレート144」は「前記筐体の内部に設置され、洗浄時に前記洗浄槽の前記上面開口を塞ぐ蓋体」に、「送風ファン」は「送風ファン」に、「食器洗浄機」は「食器洗浄装置」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「空気をシールプレート144の下面に吹き付け水滴を吹き飛ばすことにより、水滴が洗浄機本体120の底部に落下するのを防止する送風手段」は、空気を「シールプレート144の下面に吹き付け水滴を吹き飛ばす」吹出部を有していることが明らかであるから、本願発明の「前記蓋体の下面に向けて気流を吹き出す気流吹出部を有し、前記蓋体の前記下面に付着している水滴を除去する水滴除去手段」に相当する。

よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

〔一致点〕
「筐体と、
前記筐体の内部に入った位置と、前記筐体から引き出された位置との間を移動可能に設置され、上面開口を有する洗浄槽と、
前記筐体の内部に設置され、洗浄時に前記洗浄槽の前記上面開口を塞ぐ蓋体と、
前記洗浄槽が前記筐体から引き出されるときに前記蓋体の下面に向けて気流を吹き出す気流吹出部を有し、前記蓋体の前記下面に付着している水滴を除去する水滴除去手段と、
送風ファンと、
を備えた食器洗浄装置。」

〔相違点〕
本願発明は、「前記洗浄槽内の食器を乾燥させる乾燥工程として前記送風ファンから前記洗浄槽内へ送風する状態と、前記送風ファンから前記気流吹出部へ送風する状態とを切り替える風路切替手段と、を備え、前記乾燥工程の途中で前記洗浄槽が前記筐体から引き出されるときに、前記風路切替手段の風路の切り替えにより、前記送風ファンで生成された気流を前記気流吹出部のみに供給する」のに対して、引用発明はそのような構成を備えているか不明である点。

第6 当審の判断
(1)判断
上記相違点について検討する。
引用発明において、引用文献1記載事項を適用すると、食器乾燥のための空気を洗浄槽122の中に供給する送風ファンと、シールプレート144の下面に付着した水滴を吹き飛ばす送風ファンを共用するもの、すなわち、洗浄槽内の食器を乾燥させる乾燥工程として送風ファンから洗浄槽内へ送風する状態と、送風ファンから気流吹出部へ送風する状態とを備えるものとなる。
一方、乾燥工程を有する食器洗浄装置において、使用者が乾燥工程の途中で乾燥を一時停止又は停止して洗浄槽を筐体から引き出すことは、一般的に行われていることである。
そして、引用発明に引用文献1記載事項を適用した際、引用文献1の段落【0006】の記載からみても、空気を「シールプレート144」の下面に吹き付け水滴を吹き飛ばす機能はそもそも乾燥を行うためのものではなく、「洗浄槽122」が引き出し位置に引き出されるときに使用するものであるから、乾燥工程の途中で乾燥を一時停止又は停止して「洗浄槽122」を引き出し位置に引き出す場合、空気を「シールプレート144」の下面に吹き付け水滴を吹き飛ばす機能のみを使用し、食器乾燥のための空気を「洗浄槽122」の中に供給する機能を使用しないことは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内のものであって、そのために洗浄槽内の食器を乾燥させる乾燥工程として送風ファンから洗浄槽内へ送風する状態と、送風ファンから気流吹出部へ送風する状態とを切り替える風路切替手段により行うことは、当業者が設計上、適宜になし得たことである。
したがって、引用発明において、引用文献1記載事項を適用し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

〔効果について〕
そして、全体としてみても、本願発明の奏する効果は、引用発明1及び引用文献1記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。

〔小括〕
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献1記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)請求人の主張について
請求人は令和3年10月15日付けの意見書において、
「引用文献1(特開2002−65570号公報)の段落[0009]に『・・・引き出し式食器洗浄機において、前記シールプレートの下面に空気を吹き出す空気吹き出し口と、この空気吹き出し口に空気を送り込む送風手段と、乾燥工程実行前に前記洗浄槽が引き出される際にはまず前記送風手段を作動させ次いで前記洗浄槽の引き出しを許容する状態に切り換える制御手段・・・』と記載されています。このように、引用文献1には、乾燥工程実行前に洗浄槽が引き出されるときに、シールプレートの下面に空気を吹き出す空気吹き出し口に空気を送り込む送風手段を作動させることが開示されています。
しかしながら、乾燥工程の途中で、洗浄槽が引き出されるときに、送風手段を作動させることは、引用文献1に一切開示されていません。すなわち、発明特定事項Gは、引用文献1に一切開示されていません。
引用文献1には、段落[0004]に『食器洗浄機110が乾燥工程を含む通常の運転動作を行っている場合には、シールプレート144の下面に付着した洗浄水130は乾燥工程で蒸発するため、運転停止後に水滴がシールプレート144の下面に残ることはない。しかし、乾燥工程を行う前に一時停止をした場合や、乾燥工程を省略する運転モードで運転を行った場合には、運転を停止した後にもシールプレート144の下面に水滴が残ったままとなる。』と記載され、段落[0021]に『シールプレート44の下面に付着した洗浄水30の水滴は、食器洗浄機10が乾燥工程を含む通常の運転動作では、乾燥工程において蒸発するため、運転停止後にシールプレート44の下面に水滴として残らない。しかし、乾燥工程を行う前に運転を一時停止した場合(食器を収容し忘れて、食器を追加して収めることが、しばしば行われる)や、乾燥工程を省略する運転モード(運転時間節約モード)で運転を行った場合には、運転を停止した後に、シールプレート44の下面に水滴が付着したままになっている。』と記載されています。
このように、引用文献1の技術思想は、乾燥工程を行った場合には、「シールプレート144」(本願発明の蓋体に相当)の下面に、水滴がまったく残っていない状態を期待するものです。
拒絶理由通知書には、『引用発明において、引用文献1記載事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、そのような構成を採用する場合、空気を「シールプレート144」の下面に吹き付け水滴を吹き飛ばす機能と、食器乾燥のための空気を「洗浄槽122」中に供給する機能とは通常、同時に使用しないから、風力を択一的に供給する風路切換手段を備えて、「洗浄槽122」が引き出し位置に引き出されるときに、「送風手段」で生成された気流を気流吹出部のみに供給することは、当業者が設計上、適宜になし得ることである。』と記載されています。
しかしながら、引用文献1の技術思想は、乾燥工程を行った場合には、「シールプレート144」の下面に、水滴がまったく残っていない状態となることを期待するものです。したがいまして、引用発明において引用文献1記載事項を適用する際には、食器乾燥のための空気を「送風ファン」から「洗浄槽122」中に供給する乾燥工程の最中に、「シールプレート144」の下面にも「送風ファン」からの空気を吹き付けて、「シールプレート144」の下面の水滴を確実に除去しようとする動機付けが存在します。
引用発明において引用文献1記載事項を適用した際に、仮に、「送風ファン」の風力を択一的に供給する風路切換手段を設け、食器乾燥のための空気を「送風ファン」から「洗浄槽122」中に供給する乾燥工程の最中に、「シールプレート144」の下面に空気をまったく吹き付けないようにした場合には、乾燥工程の最中に「シールプレート144」の下面に水滴が付着したままになっている可能性が高くなります。このため、引用文献1の段落[0004]の『・・・乾燥工程で蒸発するため、運転停止後に水滴がシールプレート144の下面に残ることはない。』あるいは段落[0021]の『シールプレート44の下面に付着した洗浄水30の水滴は、食器洗浄機10が乾燥工程を含む通常の運転動作では、乾燥工程において蒸発するため、運転停止後にシールプレート44の下面に水滴として残らない。』ということを確実に期待することはできません。
したがいまして、引用発明において引用文献1記載事項を適用するに際して、「送風ファン」の風力を択一的に供給する風路切換手段をわざわざ追加して設けて、乾燥工程の最中に「シールプレート144」の下面に水滴が残りうるという不利益を発生させるようなことは、設計上、不合理です。
以上のことから、発明特定事項F,Gは、引用文献1に開示も示唆も一切されておらず、引用発明において引用文献1記載事項を適用したとしましても、発明特定事項F,Gにより特定される本願発明に想到することは当業者といえども容易ではなく、本願発明は進歩性を有するものであると審判請求人は思料致します。」
と主張する。

上記主張について検討する。
引用文献1の段落【0006】には「このワイパーブレード145の代わりに送風手段を設け、洗浄槽122が引き出し位置に引き出されるときに、空気をシールプレート144の下面に吹き付け水滴を吹き飛ばすことにより、水滴が洗浄機本体120の底部に落下するのを防止する」と記載されている。また、引用文献1の段落【0004】には「シールプレート144の下面に付着した洗浄水130は乾燥工程で蒸発する」と記載されており、乾燥工程で水滴を吹き飛ばすことの記載は、引用文献1にない。
また、「ワイパーブレード145」は、「洗浄槽122」が引き出し位置に引き出されるときにのみ機能するものであるから、その代わりに用いる「送風手段」は、「洗浄槽122」が引き出し位置に引き出されるときに、空気を「シールプレート144」の下面に吹き付け水滴を吹き飛ばすものと解されるものであって、「洗浄槽122」が引き出し位置に引き出されるとき以外に使用されることの記載は、引用文献1にない。
したがって、引用発明に引用文献1記載事項を適用すると、食器乾燥のための空気を「送風ファン」から「洗浄槽122」中に供給する乾燥工程の最中に、「シールプレート144」の下面にも「送風ファン」からの空気を吹き付けて、「シールプレート144」の下面の水滴を確実に除去するものとなるとはいえない。
よって、請求人の上記主張は採用することができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-01 
結審通知日 2022-02-08 
審決日 2022-02-24 
出願番号 P2016-167049
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 佐々木 正章
星名 真幸
発明の名称 食器洗浄装置  
代理人 特許業務法人高田・高橋国際特許事務所  

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