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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1383736
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-19 
確定日 2022-04-25 
事件の表示 特願2019− 87764「ワイヤレスネットワークページ送信および応答」拒絶査定不服審判事件〔令和元年8月29日出願公開、特開2019−146259〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2015年(平成27年)8月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年8月22日 米国、2015年1月15日 米国)を国際出願日とする特願2017−509671号の一部を、令和元年5月7日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 4月24日付け 拒絶理由通知書
令和2年 8月11日 意見書、手続補正書の提出
令和2年10月12日付け 拒絶査定
令和3年 2月19日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和3年 5月13日 上申書の提出

第2 令和3年2月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和3年2月19日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の概要
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年8月11日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 ワイヤレス通信のための方法であって、
モバイルデバイスにおいて、第1無線アクセス技術(RAT)を介して、サービス情報を含んでいるページを受信するステップと、
前記ページに含まれる前記サービス情報に少なくとも部分的に基づいて、前記第1RATを介して受信した前記ページに応答するための第2RATを選択するステップと、
前記選択に少なくとも部分的に基づいて、前記第2RATを介して前記ページへの応答を送信するステップと
を具備することを特徴とするワイヤレス通信のための方法。」

(2)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 ワイヤレス通信のための方法であって、
モバイルデバイスにおいて、第1無線アクセス技術(RAT)を介して、サービス情報を含んでいるページを受信するステップと、
前記ページに含まれる前記サービス情報に少なくとも部分的に基づいて、前記第1RATを介して受信した前記ページに応答するための、ページ送信に使われたのとは異なるRATである第2RATを選択するステップと、
前記選択に少なくとも部分的に基づいて、前記第2RATを介して前記ページへの応答を送信するステップと
を具備することを特徴とするワイヤレス通信のための方法。」

2.補正の適否
本件補正は、令和3年2月19日に提出された審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】1.補正の根拠の明示」において、審判請求人自ら「これらの補正は、補正前の請求項の発明特定事項を限定するものであって、産業上の利用分野または解決課題を変更するものではありません。」と述べているとおり、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第1RATを介して受信した前記ページに応答するための第2RAT」について、上記下線部のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記本件補正は特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に係る発明が特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明(以下、「本件補正発明」という。)である。(再掲)
「 ワイヤレス通信のための方法であって、
モバイルデバイスにおいて、第1無線アクセス技術(RAT)を介して、サービス情報を含んでいるページを受信するステップと、
前記ページに含まれる前記サービス情報に少なくとも部分的に基づいて、前記第1RATを介して受信した前記ページに応答するための、ページ送信に使われたのとは異なるRATである第2RATを選択するステップと、
前記選択に少なくとも部分的に基づいて、前記第2RATを介して前記ページへの応答を送信するステップと
を具備することを特徴とするワイヤレス通信のための方法。」

(2)引用文献の記載事項及び引用発明
令和2年10月12日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2011−526470号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。

ア 「特定の実施形態は、マルチモード移動局による無線通信のための方法を提供する。」(段落【0005】)

イ 「従って、MSは複数のRATと通信するように構成され得る(そのようなMSはここではマルチモードMSと呼ばれる)。マルチモードMSは、通常、一度に単一のRATとのアクティブ接続を維持するため、MSはMSによってサポートされる他のRATに関してアイドルとなり得る。」(段落【0042】)

ウ 「MS 810が第2のRATへのアクティブ接続をもっていないが、それでもネットワークはメッセージ832をMS 810に通知できる。例えば、図8Dで図示されるように、ページングリクエスト824は、MS 810によってサポートされるRATのそれぞれでブロードキャストされ得る。従って、図の例において、MS 810は、他のRATのページングチャネルをリッスンするために切り替えることなしに、そのWiMAX接続によってページングリクエスト824を受信し得る。」(段落【0058】)

エ 「第1のRAT接続によって受信されるページングリクエスト824は、マルチモードページングリクエストを引き起こしたページングリクエストに対応する第2のRATの指示を含み得る。従って、図8Eで図示されるように、第1のRATで受信されるページングリクエスト824に応答して、MS 810は、(例えば、CDMA呼を受信する)第2のRATネットワークとの接続を確立するための動作(例えば、登録リクエスト816を送信すること)を開始し得る。」(段落【0059】)

オ 「

」(図8D)

カ 「

」(図8E)

引用文献1の上記記載、及びこの技術分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

(ア) 上記「ア」には、「無線通信のための方法を提供する。」と記載されているから、引用文献1には、「無線通信のための方法」が記載されている。

(イ) 上記「イ」には、「マルチモードMSは、通常、一度に単一のRATとのアクティブ接続を維持するため、MSはMSによってサポートされる他のRATに関してアイドルとなり得る。」と記載されおり、上記「MS」が「マルチモードMS」を意味することは明らかであるから、引用文献1には、マルチモードMSは、一度に単一のRATとのアクティブ接続を維持するため、マルチモードMSによってサポートされる他のRATに関してアイドルとなること、が記載されている。

(ウ) 上記「ウ」には、「MS 810は、・・・そのWiMAX接続によってページングリクエスト824を受信し得る。」と記載されており、上記「エ」には、「第1のRAT接続によって受信されるページングリクエスト824」及び「第1のRATで受信されるページングリクエスト824」と記載されている。また、上記「オ」に記載された図8Dからは、「4GマルチモードMS 810」が、「長距離RAT#1 BS(例えばWiMAX) 8201」から「PAG_REQ 824」を受信することを読み取ることができる。
これらのことから、上記「ウ」の「MS 810」は上記「オ」の「4GマルチモードMS 810」であり、上記「ウ」及び「エ」の「ページングリクエスト824」は上記「オ」の「PAG_REQ 824」であるといえる。また、上記「ウ」の「WiMAX接続」、並びに上記「エ」の「第1のRAT接続」及び「第1のRAT」はいずれも、上記「オ」の「長距離RAT#1 BS(例えばWiMAX) 8201」と「4GマルチモードMS 810」の間の接続もしくはその無線アクセス技術を表しているから、「第1のRAT」と「WiMAX」は同じものであるといえる。
一方、上記「エ」には「・・・MS 810は、(例えば、CDMA呼を受信する)第2のRATネットワークとの接続を確立するための動作(例えば、登録リクエスト816を送信すること)を開始し得る。」と記載されている。また、上記「カ」に記載された図8Eからは、「4GマルチモードMS 810」が、「長距離RAT#2 BS(例えばUMB) 8202」に向けて「REG_REQ 816」を送信することを読み取ることができる。
これらのことから、上記「エ」の「MS 810」は上記「カ」の「4GマルチモードMS 810」であり、上記「エ」の「登録リクエスト816」は上記「カ」の「REG REQ 816」であるといえる。また、「第1のRAT」と「WiMAX」の関係と同様に、上記「エ」の「第2RATネットワーク」における「第2RAT」は、上記「カ」の「長距離RAT#2 BS(例えばUMB) 8202」と「4GマルチモードMS 810」の間の接続の無線アクセス技術を表す「UMB」と同じものであるといえる。
よって、引用文献1には、第1のRATはWiMAXであり、第2のRATはUMBであること、が記載されている。

(エ) 上記「ウ」には、「MS 810は、・・・そのWiMAX接続によってページングリクエスト824を受信し得る。」と記載されており、上記「(ウ)」で検討したとおり、「MS 810」は「4GマルチモードMS 810」であり、「WiMAX」は「第1のRAT」であるから、引用文献1には、マルチモードMSは、第1のRAT接続によってページングリクエスト824を受信すること、が記載されている。

(オ) 上記「エ」には「第1のRAT接続によって受信されるページングリクエスト824は、マルチモードページングリクエストを引き起こしたページングリクエストに対応する第2のRATの指示を含み得る。」と記載されているから、引用文献1には、第1のRAT接続によって受信されるページングリクエスト824は、マルチモードページングリクエストを引き起こしたページングリクエストに対応する第2のRATの指示を含むこと、が記載されている。

(カ) 上記「エ」には、「第1のRATで受信されるページングリクエスト824に応答して、MS 810は、(例えば、CDMA呼を受信する)第2のRATネットワークとの接続を確立するための動作(例えば、登録リクエスト816を送信すること)を開始し得る。」と記載されている。
ここで、上記「(ウ)」で検討したとおり、「MS 810」は「4GマルチモードMS 810」であり、また、「登録リクエスト816」は「長距離RAT#2 BS(例えばUMB) 8202」に向けて送信されるから、引用文献1には、第1のRATで受信されるページングリクエスト824に応答して、マルチモードMSは、第2のRATネットワークとの接続を確立するための動作、すなわち第2のRATのBS8202に向けた登録リクエスト816の送信、を開始すること、が記載されているといえる。


以上を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 無線通信のための方法であって、
マルチモードMSは、一度に単一のRATとのアクティブ接続を維持するため、マルチモードMSによってサポートされる他のRATに関してアイドルとなり、
第1のRATはWiMAXであり、第2のRATはUMBであり、
マルチモードMSは、第1のRAT接続によってページングリクエスト824を受信し、
第1のRAT接続によって受信されるページングリクエスト824は、マルチモードページングリクエストを引き起こしたページングリクエストに対応する第2のRATの指示を含み、
第1のRATで受信されるページングリクエスト824に応答して、マルチモードMSは、第2のRATネットワークとの接続を確立するための動作、すなわち第2のRATのBS8202に向けた登録リクエスト816の送信、を開始する、
無線通信のための方法。」

(3)対比及び判断
以下、本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「無線通信のための方法」は、本件補正発明の「ワイヤレス通信のための方法」に相当する。

イ 引用発明の「マルチモードMS」における「MS」がMobile Station、すなわち移動局、を意味する略語であることは技術常識であるから、引用発明の「マルチモードMS」は、本件補正発明の「モバイルデバイス」に含まれる。

次に、本件補正発明の「サービス情報」という用語について、本願明細書の段落【0076】には、「そのようなサービス情報は、ページ送信に応答して、ネットワークアクセスに使われるべきRATに関連した情報を含み得る。」と例示されている。
一方、「ページング」及び「ページ」は呼出し信号を意味し、これを受信した装置は応答を求められることが技術常識であり、引用発明の「ページングリクエスト824」は、呼出しに対する応答要求を意味すると解されるから、本件補正発明の「ページ」に含まれる。
そして、引用発明の「マルチモードページングリクエストを引き起こしたページングリクエストに対応する第2のRATの指示」は、ページングリクエスト(ページ)への応答に使われるべきRATの指示を意味し、当該指示はネットワークアクセスに使われるべきRATに関連した情報に含まれるといえるから、引用発明の「マルチモードページングリクエストを引き起こしたページングリクエストに対応する第2のRATの指示」は、本件補正発明の「サービス情報」に含まれる。
そうすると、引用発明の「マルチモードページングリクエストを引き起こしたページングリクエストに対応する第2のRATの指示」を含む「ページングリクエスト824」は、本件補正発明の「サービス情報を含んでいるページ」に含まれる。

以上をまとめると、引用発明の「マルチモードMSは、第1のRAT接続によってページングリクエスト824を受信」することは、本件補正発明の「モバイルデバイスにおいて、第1無線アクセス技術(RAT)を介して、サービス情報を含んでいるページを受信する」ことに含まれる。

以上のとおり、本件補正発明と引用発明は、「モバイルデバイスにおいて、第1無線アクセス技術(RAT)を介して、サービス情報を含んでいるページを受信するステップ」を具備する点で、一致する。

ウ 引用発明の「マルチモードMS」は、一度に単一のRATとのアクティブ接続を維持するため、マルチモードMSによってサポートされる他のRATに関してアイドルとなるものであり、第1のRATで受信されるページングリクエスト824に応答して、第2のRATネットワークとの接続を確立するための動作、すなわち第2のRATのBS8202に向けた登録リクエスト816の送信、を開始するものである。
ここで、引用発明の「第2のRAT」は、ページングリクエスト824が送信されてマルチモードMSにより受信される第1のRATとは異なるRATであるから、本件補正発明の「ページ送信に使われたのとは異なるRATである第2RAT」に含まれる。

次に、引用発明の「マルチモードMS」は、一度に単一のRATとのアクティブ接続を維持するため、マルチモードMSによってサポートされる他のRATに関してアイドルとなるものであるから、第1のRAT接続によってページングリクエスト824を受信する際には第1のRATのみがアクティブ接続となり、第2のRATのBS8202に向けた登録リクエスト816の送信を行う際には第2のRATのみがアクティブ接続となる。
そして、第1のRATから第2のRATへアクティブ接続を変更することが、第2のRATを選択することを含むことは明らかである。また、第2のRATを選択する当該動作が、「ページングリクエスト824」に含まれる「マルチモードページングリクエストを引き起こしたページングリクエストに対応する第2のRATの指示」に少なくとも部分的に基づいて行われることは自明である。
これらのことを考慮すると、引用発明の「マルチモードMS」は、「ページングリクエスト824」に含まれる「第2のRATの指示」に少なくとも部分的に基づいて「第1のRATで受信されるページングリクエスト824に応答して」、「ページリクエスト824」が送信されて受信される「第1RAT」とは異なる「第2のRAT」を選択するものといえる。

以上のとおり、本件補正発明と引用発明は、モバイルデバイスにおいて、「前記ページに含まれる前記サービス情報に少なくとも部分的に基づいて、前記第1RATを介して受信した前記ページに応答するための、ページ送信に使われたのとは異なるRATである第2RATを選択するステップ」を具備する点で一致する。

エ 引用発明の「登録リクエスト816」は、第1のRATで受信されるページングリクエスト824に応答して送信されるから、本件補正発明の「前記ページへの応答」に含まれる。
また、引用発明の「マルチモードMS」は、マルチモードページングリクエストを引き起こしたページングリクエストに対応する第2のRATの指示を含むページングリクエスト824に応答して、第2のRATのBS8202に向けた登録リクエスト816の送信を開始するから、当該送信が、上記「ウ」で検討した「選択」に少なくとも部分的に基づいていることは明らかである。
さらに、引用発明において、マルチモードMSから第2のRATのBS8202に向けて送信する際に、第2のRATを介して送信することは明らかであるから、引用発明の「第2のRATのBS8202に向けた登録リクエスト816の送信」を行うことは、本件補正発明の「前記第2RATを介して前記ページへの応答を送信する」ことに含まれる。
以上のとおり、本件補正発明と引用発明は、モバイルデバイスにおいて、「前記選択に少なくとも部分的に基づいて、前記第2RATを介して前記ページへの応答を送信するステップ」を具備する点で一致する。

以上を総合すると、本件補正発明と引用発明は、
「 ワイヤレス通信のための方法であって、
モバイルデバイスにおいて、第1無線アクセス技術(RAT)を介して、サービス情報を含んでいるページを受信するステップと、
前記ページに含まれる前記サービス情報に少なくとも部分的に基づいて、前記第1RATを介して受信した前記ページに応答するための、ページ送信に使われたのとは異なるRATである第2RATを選択するステップと、
前記選択に少なくとも部分的に基づいて、前記第2RATを介して前記ページへの応答を送信するステップと
を具備することを特徴とするワイヤレス通信のための方法。」
である点で一致し、相違点はない。

したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】」の「3.新規性及び進歩性について(理由1,2)」の項において、以下のように主張している(下線は請求人が付加した。)。
「・・・本願請求項1においては「前記第2RATを介して前記ページへの応答を送信する」ことが明示されており、これは、審査官殿の認定される引用文献1における「マルチモードMSは、ページングリクエストに応答して、第2のRATと接続するための登録リクエストを送信する点」とは対応しておりません。
したがって、審査官殿の認定は妥当ではありません。」
しかしながら、審判請求人は、本件補正発明の上記「前記第2RATを介して前記ページへの応答を送信する」ことと、引用発明の「マルチモードMSは、ページングリクエストに応答して、第2のRATと接続するための登録リクエストを送信する」こととが対応しないと主張する具体的な理由と根拠を挙げていない。

イ そこで、本件補正発明の上記「前記第2RATを介して前記ページへの応答を送信する」(下線は請求人が付加した。)ことについて検討するため、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、以下の記載がある。
(ア) 「様々な例によると、RATとは、1つまたは複数の無線通信技術の規格化された実装に従って行われるワイヤレス通信を指す。」(段落【0029】)

(イ) 「たとえば、モバイルデバイス115は、たとえば、LTE基地局105とWLAN AP135の両方との通信を同時に送信および受信するなど、並行無線リンクを確立し、維持することが可能であり得る。」(段落【0043】)
(ウ) 「モバイルデバイス215-aは、リンク225-aを介した基地局205-a、およびリンク225-bを介したWLAN AP235との並行通信が可能なマルチモードモバイルデバイスであってよい。いくつかの例では、モバイルデバイス215-aは、リンク225-aを介して信号を受信し、リンク225-bを介して送信を開始することができる。」(段落【0047】)

上記(ア)ないし(ウ)の記載を総合すると、発明の詳細な説明には、異なるRATの基地局両方との通信を同時に送信及び受信するなど、並行無線リンクを確立、維持し、当該並行無線リンクの1つを介して信号を受信し、他のリンクを介して送信を開始するモバイルデバイスの実施形態を読み取ることができる。
しかしながら、請求項1の記載全体から、本件補正発明の「前記第2RATを介して・・・送信する」という発明特定事項を、当該実施形態に限定解釈すべき根拠は見いだせない。

一方、引用発明のマルチモードMSから第2のRATのBS8202に向けた登録リクエスト816を送信する際に、第2のRATであるUMBを介して送信することは明らかである。
また、上記「登録リクエスト816」が、本件補正発明の「前記ページへの応答」に含まれることは、上記「(3)対比及び判断」の「エ」で説示したとおりである。

ウ 審判請求人は、審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】」の「3.新規性及び進歩性について(理由1,2)」の項において、以下のようにも主張している(下線は請求人が付加した。)。
「 ここで、本願明細書段落[0103]、[0104]には以下のように記載されています:
[0103]
モバイルデバイス1115は、ページ送信を受信し、ページ送信がサービス情報を含むと判断することができる。モバイルデバイス1115は、ページングポリシーがページメッセージに該当すると判断し、上述したようなやり方で、ページングポリシーに従ってRATを使ってワイヤレス通信を開始するためのページ応答を送信することができる。モバイルデバイス1115は、ブロック1155において、ページ送信に使われたのとは異なるRATが、ページ応答に使われるべきかどうか判断することができる。異なるRATがページ応答に使われるべきでない場合、モバイルデバイス1115は、プロセス1160を開始し、第1のRAT基地局1105にページ応答1165を送信する。第1のRAT基地局1105は次いで、MME1120にページ応答確認応答1170を 与えればよい。
[0104]
モバイルデバイス1115が、異なるRATがページ応答に使われるべきであると判断した場合、モバイルデバイス1115は、プロセス1175を開始し、第2のRAT基地局/AP1110にページ応答1180を送信する。第2のRAT基地局/AP1110は次いで、MME1120にトンネリングされたページ応答確認応答1185を与えればよい。ページ応答確認応答は、たとえば、図2のPDN250などのパケットデータネットワークを通して、MMEまでトンネリングされ得る。」
これらの記載に基づき、本審判請求書と同日付けで提出しました手続補正書により、請求項1に対し「前記ページに含まれる前記サービス情報に少なくとも部分的に基づいて、前記第1RATを介して受信した前記ページに応答するための、ページ送信に使われたのとは異なるRATである第2RATを選択するステップ」とする補正をいたしました。
請求項10,19,26に対しても上記請求項1と同様の補正をいたしました。
この補正により、本願の構成、第1RAT、第2RATの動作の違いがより明確になっています。」
当該主張は、主に、本件補正により請求項1に追加された「ページ送信に使われたのとは異なるRATである」という発明特定事項の補正根拠を説明するものと解され、上記「ア」で摘記した審判請求人の主張との関連は明らかではないが、念のため当該主張について検討する。

上記段落[0103]及び[0104]の下線部には、上記発明特定事項と同様、受信したページに応答するためのRATが「ページ送信に使われたのとは異なるRATである」旨が記載されている。
一方、引用発明は、「第1のRATで受信されるページングリクエスト824に応答して、マルチモードMSは、・・・第2のRATのBS8202に向けた登録リクエスト816の送信、を開始する」ものであるから、受信したページに応答するためのRATが「ページ送信に使われたのとは異なるRATである」点で、本件補正発明と一致することは、上記「(3)対比及び判断」の「ウ」で説示したとおりであって、上記段落[0103]及び[0104]の記載は当該判断には影響しない。

エ 上記「イ」及び「ウ」を総合すると、上記「(3)対比及び判断」の「エ」で説示したとおり、本件補正発明と引用発明は、モバイルデバイスにおいて、「前記選択に少なくとも部分的に基づいて、前記第2RATを介して前記ページへの応答を送信するステップ」を具備する点で一致するものであるから、上記「ア」で摘記した審判請求人の主張を採用することはできない。

3.まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年8月11日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし30に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 令和3年2月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]の「1.補正の概要」の「(1)本件補正前の特許請求の範囲」の項目で示した特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりの発明である。(再掲)

「 ワイヤレス通信のための方法であって、
モバイルデバイスにおいて、第1無線アクセス技術(RAT)を介して、サービス情報を含んでいるページを受信するステップと、
前記ページに含まれる前記サービス情報に少なくとも部分的に基づいて、前記第1RATを介して受信した前記ページに応答するための第2RATを選択するステップと、
前記選択に少なくとも部分的に基づいて、前記第2RATを介して前記ページへの応答を送信するステップと
を具備することを特徴とするワイヤレス通信のための方法。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものであり、本件補正前の請求項1に対して引用文献1が引用されている。

3.引用文献の記載及び引用発明
引用発明は、上記「第2 令和3年2月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]の「2.補正の適否」の「(2)引用文献の記載事項及び引用発明」の項で認定したとおりである。

4.対比及び判断
本願発明は上記「第2 令和3年2月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]の「2.補正の適否」の「(1)本件補正発明」で検討した上記本件補正発明から、「ページ送信に使われたのとは異なるRATである」という限定事項を削除したものである。
そうすると、上記「第2 令和3年2月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]の「2.補正の適否」の項で検討したとおり、本願発明の発明特定事項を全て含みさらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が引用発明であるから、本願発明もまた、同様の理由により、引用発明である。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 廣川 浩
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-11-16 
結審通知日 2021-11-22 
審決日 2021-12-08 
出願番号 P2019-087764
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H04W)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 森田 充功
圓道 浩史
発明の名称 ワイヤレスネットワークページ送信および応答  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

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