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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1383858
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-02 
確定日 2022-04-26 
事件の表示 特願2018− 52398号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月26日出願公開、特開2019−162312号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成30年3月20日の特許出願であって、令和2年7月21日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月1日に意見書および手続補正書が提出されたところ、令和3年3月2日付け(送達日:同年同月9日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年6月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、同年12月8日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和4年2月1日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1−5
・引用文献等 1−2
請求項1−5に係る発明は、引用文献1又は引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2008−136497号公報
2.特開2014−184091号公報

第3 当審拒絶理由の概要
令和3年12月8日付けの当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(サポート要件)令和3年6月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−5の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願の請求項1−5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和4年2月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1−5に記載された、次のとおりのものである(A〜Jは、本願発明を分説するために当審で付した。)。

「【請求項1】
A 第1の面と第1の面の裏面側となる第2の面とに導体パターンを形成可能な基板と、
B 前記基板を収納する基板ボックスと、
C 前記基板ボックスを封止する封止シールと、を備え、
D 前記封止シールは、当該基板に関する基板情報のうち第1基板情報を前記基板ボックスの所定の一側に沿って第1側から第2側に文字、英数字または記号を列ねて表示し、
E 前記基板は、
E−1 電子部品が配設されるとともに、前記電子部品の部品番号が表示され、
E−2 当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報を第1の形態で表示する第1の情報表示部を導体パターンのベタ抜き部に設けるとともに、当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報を前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する第2の情報表示部を導体パターンのベタ部に設け、
E−3 前記第1の形態は、導体パターンによるものであり、
E−4 前記第2の形態は、印字表示によるものであり、
E−5 カラーコードで定格を表示する受動素子を前記電子部品に含み、
E−6 前記カラーコードの第1色帯が前記第1側となるように、前記所定の一側に沿って前記受動素子を実装する、
F 遊技機。
【請求項2】
A 第1の面と第1の面の裏面側となる第2の面とに導体パターンを形成可能な基板と、
B 前記基板を収納する基板ボックスと、
C 前記基板ボックスを封止する封止シールと、を備え、
D 前記封止シールは、当該基板に関する基板情報のうち第1基板情報を前記基板ボックスの所定の一側に沿って第1側から第2側に文字、英数字または記号を列ねて表示し、
E 前記基板は、
E−1 電子部品が配設されるとともに、前記電子部品の部品番号が表示され、
E−21 当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報を第1の形態で表示する第1の情報表示部と、当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報を前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する第2の情報表示部と、を導体パターンのベタ抜き部に設け、
E−22 前記第2の情報表示部の裏面側を導体パターンのベタ部とし、
E−3 前記第1の形態は、導体パターンによるものであり、
E−4 前記第2の形態は、印字表示によるものであり、
E−5 カラーコードで定格を表示する受動素子を前記電子部品に含み、
E−6 前記カラーコードの第1色帯が前記第1側となるように、前記所定の一側に沿って前記受動素子を実装する、
F 遊技機。
【請求項3】
G 前記電子部品の部品番号の表示と前記第2の形態は、シルク印刷である、請求項1または2に記載の遊技機。
【請求項4】
H 前記基板は、前記第1の情報表示部と前記第2の情報表示部で異なる基板情報を表示する、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の遊技機。
【請求項5】
I 前記基板は、前記基板ボックスと嵌合する嵌合部を備え、
J 前記第1基板情報には、2次元コードを含む、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の遊技機。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審判合議体にて付した。以下同じ。)。

ア 「【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(第1の実施の形態)
以下、遊技機の一種であるパチンコ遊技機(以下、「パチンコ機」という)の第1の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1はパチンコ機10の正面図、図2はパチンコ機10の主要な構成を展開又は分解して示す斜視図、図3はパチンコ機10を構成する本体枠12の前面構成を示す正面図である。なお、図2、図3では便宜上、パチンコ機10の遊技領域内の構成を空白としている。」

イ 「【0106】
主制御装置270の基板ボックス273は、略直方体形状のボックスベース280と当該ボックスベース280の開口部を覆うボックスカバー290とから構成されており、それらボックスベース280とボックスカバー290とから構成される内部空間に主制御基板271が収容されている。
・・・
【0113】
ボックスベース280及びボックスカバー290には、封印ユニット274が設けられた側部とは反対側の側部に貼付板部286,293が一体形成されており、これら貼付板部286,293が締結具(連結具)としての金属製のネジ295によって締結されている(連結されている)。また、両貼付板部286,293を跨ぐようにして封印シール276が貼り付けられている。当該封印シール276は、貼付状態から剥がす際にその痕跡が残る構成となっている。詳細には、貼付状態から剥がす際には、封印シール276の着色された粘着層が貼付対象に残る構成となっている。したがって、ネジ295による締結状態を解除すべく封印シール276を貼付板部286,293から剥がすと、その痕跡を残すことができ、主制御基板271に対して不正が行われたことの発見が可能となっている。
【0114】
上記のとおり封印ユニット274及び封印シール276が設けられていることにより、主制御基板271に対して不正が行われたことの発見が可能となっている。しかしながら、これら封印ユニット274及び封印シール276が設けられた構成であっても、それらの封印の解除を痕跡が残らないように巧妙に行う、又は主制御装置270をまるごと交換すること等により、主制御基板271を偽造基板に交換するといった不正行為が行われることが想定される。また、上記偽造基板を日本国内ではなく例えば製造コストの安い国で製造し、それを日本国内に輸入して上記不正行為を行うことが想定される。かかる行為が行われると、製造コストが安いことに起因して多量の偽造基板が製造され、上記不正行為が大規模に行われてしまうおそれがある。そうすると、その被害は甚大なものとなってしまう。これに対して、本パチンコ機10では、偽造基板を日本国外で製造し、それを日本国内に輸入しようとする行為を抑制可能な構成が設けられている。
・・・
【0116】
主制御基板271の部品搭載面271aは、銅等の金属からなる配線Wによって回路パターンが形成されており、その回路パターンがソルダレジストSRによって覆われて構成されている。ソルダレジストSRは、緑色に着色された合成樹脂により、電子部品の接続箇所を除いて部品搭載面271aの略全面を覆うようにして形成されている。当該ソルダレジストSRは、部品搭載面271aに電子部品を半田付けする際にその半田が配線Wに付着するのを防止する機能と、配線Wの腐食を抑制する機能とを少なくとも有する。
・・・
【0118】
部品搭載面271aには、上述したCPUチップ501やその他、抵抗などといった電子部品が搭載されている。これら電子部品は、そのリード線が主制御基板271を貫通するようにして取り付けられており、そのリード線が主制御基板271における部品搭載面271aとは反対側の板面271bに半田付けされている。当該構成から、主制御基板271における部品搭載面271aとは反対側の板面271bを、半田面271bと称することができる。
【0119】
半田面271bは、部品搭載面271aと同様に、銅等の金属からなる配線Wによって回路パターンが形成されており、その回路パターンがソルダレジストSRによって覆われて構成されている。但し、当該半田面271b上には、電子部品は搭載されていない。なお、主制御基板271の構成は上記のものに限定されることはなく、半田面271bにも電子部品が搭載される構成であってもよい。すなわち、主制御基板271の両板面に電子部品が搭載される構成であってもよい。
【0120】
上記構成において、部品搭載面271aにはその隅角側に、各種表示部277,278,279が形成されている。詳細には、当該主制御基板271の用途を表示する複数(具体的には、2個)の用途表示部277,278と、当該主制御基板271の製造地(又は製造国)を表示する製造地表示部(製造国表示部)とが形成されている。これら、各用途表示部277,278及び製造地表示部279は、主制御基板271における所定の一辺に沿って並設されている。すなわち、各用途表示部277,278及び製造地表示部279は、主制御基板271の部品搭載面271aにおいて表示部集約領域に集約させて設けられている。
・・・
【0122】
製造地表示部279は、英単語により製造地が表示されている。具体的には、「MADE IN JAPAN」と表示されている。正規の主制御基板271は、日本国内で製造されるからである。製造地表示部279が形成されていることにより当該主制御基板271の製造地を明確に把握することができる。特に、製造地は英単語で表示されており、この表示された英単語は英語圏の国でなくてもその意味が比較的容易に理解されるものと考えられる。なお、製造地表示部279に表示される文字は、少なくとも日本国内において容易に理解されるものであればよく、平仮名、カタカナ、漢字、又はローマ字であってもよい。
【0123】
用途表示部277,278及び製造地表示部279は、その文字パターン(製造地表示部279については、文字パターン279a)が、回路パターンの配線Wと同様に銅等の金属によって形成されており、当該文字がソルダレジストSRにより覆われて構成されている。すなわち、用途表示部277,278及び製造地表示部279の形成は、主制御基板271の回路パターン等の形成工程において合わせて行われている。」

ウ 「【0188】
(1)上記第1の実施の形態では、製造地表示部279の文字パターン279aを絶縁板IBに積層された銅箔CFをエッチングすることにより形成したが、文字パターン279aの表示内容の変更が抑制できるのであれば、かかる構成を変更してもよい。例えば、絶縁板IBに対して金属や樹脂などのペーストを印刷することで文字パターン279aを形成する構成としてもよい。また、絶縁板IBの板面に凹凸を設けて文字パターン279aを形成する構成としてもよい。さらには、ソルダレジストSR上に文字パターン279aを印刷する構成としてもよい。但し、かかる構成においては、文字パターン279aを形成する材料はソルダレジストSRと同じ溶解性を示す材料であることが好ましい。文字パターン279aの除去に際してソルダレジストSRの除去をも生じさせることにより、不正行為者に対して文字パターン279aの表示内容の変更に際してソルダレジストSRの再形成を強いることができるからである。」

エ 「【図15】



(2)認定事項
ア 上記(1)エの【図15】からみて、用途表示部277、278と製造地表示部279は、主制御基板271の部品搭載面271aにおいて、回路パターンの配線Wが設けられていない部位に設けられていることが見て取れる。
したがって、引用文献1において、「用途表示部277、278と製造地表示部279が、回路パターンの配線Wが設けられていない部位に設けられていること」が示されていると認定できる(認定事項ア)。

(3)引用発明1
上記(1)、(2)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている(分説a〜fは、本願発明1、2の分説A〜Fに概ね対応させて付与した。)。

「a 部品搭載面271aと、部品搭載面271aとは反対側の板面である半田面271bから構成され、部品搭載面271aと半田面271bに、銅等の金属からなる配線Wによって回路パターンが形成されており、その回路パターンがソルダレジストSRによって覆われて構成されている主制御基板271と(【0116】、【0118】、【0119】)、
b ボックスベース280とボックスカバー290とから構成される内部空間に主制御基板271を収容する基板ボックス273とを備え(【0106】)、
c ボックスベース280及びボックスカバー290の側部に貼付板部286、293が一体形成され、両貼付板部286、293を跨ぐようにして封印シール276が貼り付けられ(【0113】、【0114】)、
e 主制御基板271は(【0118】)、
e−1、e−5 部品搭載面271aに、CPUチップ501やその他、抵抗などといった電子部品が搭載されており(【0118】)、
e−21、e−22 部品搭載面271aにはその隅角側に、主制御基板271の用途を表示する複数の用途表示部277、278と、当該主制御基板271の製造地(又は製造国)を表示する製造地表示部(製造国表示部)279とが回路パターンの配線Wが設けられていない部位に設けられており(【0120】、認定事項ア)、
e−3 用途表示部277、278は、その文字パターンが、回路パターンの配線Wと同様に銅等の金属によって形成されており(【0123】)、
e−4 製造地表示部279は、その文字パターン279aが、ソルダレジストSR上に文字パターン279aを印刷する構成である(【0188】)、
f パチンコ遊技機(【0048】)。」

2 引用文献2について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審判合議体にて付した。以下同じ。)。

ア 「【0008】
・・・
【図21】(a)及び(b)は識別標識の構成例を示す図。」

イ 「【0022】
払出装置152の図中左側には、遊技全般の制御処理を行う主制御部300を構成する主基板156を収納する主基板ケース158、主制御部300が生成した処理情報に基づいて演出に関する制御処理を行う第1副制御部400を構成する第1副基板160を収納する第1副基板ケース162、第1副制御部400が生成した処理情報に基づいて演出に関する制御処理を行う第2副制御部500を構成する第2副基板164を収納する第2副基板ケース166、遊技球の払出に関する制御処理を行う払出制御部600を構成するとともに遊技店員の操作によってエラーを解除するエラー解除スイッチ168を備える払出基板170を収納する払出基板ケース172、遊技球の発射に関する制御処理を行う発射制御部630を構成する発射基板174を収納する発射基板ケース176、各種電気的遊技機器に電源を供給する電源制御部660を構成するとともに遊技店員の操作によって電源をオンオフする電源スイッチ178と電源投入時に操作されることによってRWMクリア信号を主制御部300に出力するRWMクリアスイッチ180とを備える電源基板182を収納する電源基板ケース184、および払出制御部600とカードユニットとの信号の送受信を行うCRインターフェース部186を配設している。」

ウ 「【0171】
<回路基板>
次に、パチンコ機100を構成する遊技台用回路基板について説明する。図10は本発明の一実施形態に係る回路基板1の表面を示し、実装される部品のレイアウトを示す。図10ではスルーホール等は図示を省略している。図11は回路基板1の裏面を示す図である。回路基板1は、例えば、制御部を構成する回路基板1であって、例えば、遊技を制御する電子部品が搭載されて、主基板156を構成する回路基板である。図10及び図11は電子部品が実装される前の状態を示している。
【0172】
回路基板1は、絶縁材からなるベース基板、ベース基板上に形成される配線パターン、および、ハンダ部位を除いて配線パターンを被覆する保護膜(例えばソルダレジスト膜)を含むプリント配線基板である。配線パターンは、銅などの金属箔で形成される導電体から構成される。
【0173】
図10に示すように回路基板1の表面には、各種の部品が実装される。実装される部品には回路基板1の外部のデバイスからの信号を入力する端子部1aに実装されるコネクタ(不図示)含む。」

エ 「【0196】
<識別標識>
次に、回路基板1に表示される識別標識について説明する。図11に示すように、本実施形態では、回路基板1の裏面に識別標識が表示される識別標識領域Bが形成されている。識別標識領域Bは、配線パターンを構成する導電体で区画されている。本実施形態の場合、接地パターン10の形成領域の一部の導電体を取り除いて方形に識別標識領域Bが形成されている。なお、識別標識領域Bの形状は方形以外でもよい。
【0197】
図18(a)は識別標識領域B周辺の拡大図であり、識別標識の説明図である。同図に示す識別標識SYは、4つの識別子C1と1つの識別子C2の合計5つの識別子から構成されている。なお、識別標識SYを構成する識別子数は5つに限られず、複数あればよい。識別子は、文字、数字、記号等、どのようなものであってもよい。
【0198】
本実施形態の場合、識別標識領域Bは、識別子C1が表示される共通識別子表示領域D1と、識別子C2が表示される追加識別子表示領域D2とを含む。これらが1つの識別標識領域B内に包含されることで識別標識SYが一つの情報として読み取り易い場合がある。
【0199】
共通識別子表示領域D1には、例えば、複数の回路基板1に共通の識別子を表示することができる。本実施形態で言えば、4つの識別子C1が複数の回路基板1に共通の識別子を構成している。これは、例えば、複数又は複数種類の遊技台において、共通の回路基板1を用いる場合に、その管理を容易にする場合がある。なお、共通の識別子が4つである必要はなく、1つ以上であればよい。
【0200】
追加識別子表示領域D2には、例えば、共通の識別子に追加される識別子を表示することができる。本実施形態で言えば、識別子C2が共通の識別子C1に追加される識別子を構成している。これは、例えば、複数種類の遊技台において共通の回路基板1を用いる際、遊技台の種類と回路基板1との対応関係の管理を容易にする場合がある。また、回路基板1に実装される電子部品として、従前採用していたICから、ピン配置等は同じであるが性能が改良された改良版のICを用いる場合や、汎用のICソケットを実装しておき、遊技台毎に求められる性能に合わせたICやROMなどがICソケットに装着される場合のように、実装される電子部品と回路基板1との対応関係の管理を容易にする場合がある。なお、追加の識別子が1つである必要はなく、2以上であってもよい。
・・・
【0202】
本実施形態では識別子C1と識別子C2とに高低差を生じさせている。図19(a)は一部の識別子C1と、識別子C2の斜視図である。同図にしめすように識別子C1は凸設されており、識別子C2は凹設されている。これにより、識別標識SY中の識別子C1、C2間の区別が視覚的にしやすい場合がある。また、識別子C1、C2が立体形状であることから不正が行いにくい場合がある。
・・・
【0207】
本実施形態では、共通識別子表示領域D1と追加識別子表示領域D2とを1つの識別標識領域B内に包含するようにしたが、例えば、図21(a)に示すように、共通識別子表示領域D1用の識別標識領域B1と、追加識別子表示領域D2用の識別標識領域B2とに区分けしてもよい。追加識別子表示領域D2の位置が分り易い場合がある。
【0208】
また、また、標識領域Bの少なくとも一部を、導電体3で区画しない構成も採用可能である。図21(b)はその一例を示す。同図の例では、接地パターン10に共通識別子表示領域D1が設定され、識別子C1が形成されている。この構成の場合、識別子C1は、例えば、凹設により形成することができる。追加識別子表示領域D2は、導電体3で区画されており、識別子C2は、例えば、識別子C1よりも深彫とした凹設により形成可能である。このように追加識別子の表示領域のみ区画することで、追加識別子表示領域D2の位置が分り易い場合がある。
【0209】
また一方の識別子をシルク印刷やシールなどで構成してもよい。」

オ 「【図21】



(2)認定事項
ア 上記(1)アの【0008】には、「【図21】(a)及び(b)は識別標識の構成例を示す図。」と記載されている。そして、上記(1)オの【図21】(a)に示された識別標識の構成例では、配線パターン10を示す斜線領域が、共通識別子表示領域D1と追加識別子表示領域D2に設けられていないことが見て取れる。
そうすると、引用文献2には、「共通識別子表示領域D1と追加識別子表示領域D2には、配線パターン10が形成されていない」ことが示されていると認定できる(認定事項ア)。

イ 上記(1)オの【図21】(b)に示された識別標識の構成例では、配線パターン10を示す斜線領域が、追加識別子表示領域D2に設けられていないことが見て取れる。
そうすると、引用文献2には、「追加識別子表示領域D2には、配線パターン10が形成されていない」ことが示されていると認定できる(認定事項イ)。

(3)引用発明2−1、引用発明2−2
上記(2)の認定事項ア、イを含め、上記(1)の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2−1」、「引用発明2−2」という。)が記載されている(分説a〜fは、本願発明1、2の分説A〜Fに概ね対応させて付与した。)。

<引用発明2−1>
「a 絶縁材からなるベース基板、ベース基板上に形成される配線パターン、および、ハンダ部位を除いて配線パターンを被覆する保護膜を含み、配線パターンが、銅などの金属箔で形成される導電体から構成される、主基板156を構成する回路基板1と(【0171】、【0172】)、
b 主基板156を構成する回路基板1を収納する主基板ケース158とを備え(【0022】、【0171】)、
e 回路基板1は(【0171】)、
e−1 回路基板1の表面に、各種の部品が実装され(【0173】)、
e−2 回路基板1の裏面に文字、数字、記号等の識別子から構成されている識別標識SYが表示される識別標識領域Bが形成されており(【0196】、【0197】)、識別標識領域Bは、複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1が表示される共通識別子表示領域D1と(【0198】、【0199】)、共通の識別子に追加される識別子である識別子C2が表示される追加識別子表示領域D2とを含み(【0198】、【0200】)、接地パターン10に共通識別子表示領域D1が設定され、識別子C1は、凹設により形成されており、追加識別子表示領域D2は、配線パターンを構成する導電体3で区画され、配線パターンが形成されておらず、識別子C2は、識別子C1よりも深彫とした凹設により形成されており(【0208】、認定事項イ)、
e−4 識別子C1、識別子C2の一方が識別子をシルク印刷で構成された(【0209】)、
f パチンコ機100(【0171】)。」

<引用発明2−2>
「a 絶縁材からなるベース基板、ベース基板上に形成される配線パターン、および、ハンダ部位を除いて配線パターンを被覆する保護膜を含み、配線パターンが、銅などの金属箔で形成される導電体から構成される、主基板156を構成する回路基板1と(【0171】、【0172】)、
b 主基板156を構成する回路基板1を収納する主基板ケース158とを備え(【0022】、【0171】)、
e 回路基板1は(【0171】)、
e−1 回路基板1の表面に、各種の部品が実装され(【0173】)、
e−21 回路基板1の裏面に文字、数字、記号等の識別子から構成されている識別標識SYが表示される識別標識領域Bが形成されており(【0196】、【0197】)、識別標識領域Bは、複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1が表示される共通識別子表示領域D1と(【0198】、【0199】)、共通の識別子に追加される識別子である識別子C2が表示される追加識別子表示領域D2とを含み(【0198】、【0200】)、共通識別子表示領域D1と追加識別子表示領域D2には、配線パターン10が形成されておらず(認定事項ア)、
e−4 識別子C1、識別子C2の一方が識別子をシルク印刷で構成された(【0209】)、
f パチンコ機100(【0171】)。」

第6 対比・判断
1 本願発明1と引用発明1について
(1)本願発明1と引用発明1との対比
ア 引用発明1の構成aの「部品搭載面271a」、「部品搭載面271aとは反対側の板面である半田面271b」、「銅等の金属からなる配線Wによって」「形成され」た「回路パターン」は、それぞれ本願発明1の構成Aの「第1の面」、「第1の面の裏面側となる第2の面」、「導体パターン」に相当する。
また、引用発明1の構成a、eの「主制御基板271」は、本願発明1の構成A、Eの「基板」に相当する。
よって、引用発明1の構成a、eは、本願発明1の構成A、Eに相当する構成を備える。

イ 引用発明1の構成bの「主制御基板271を収容する基板ボックス273」は、本願発明1の構成Bの「前記基板を収納する基板ボックス」に相当する。
よって、引用発明1の構成bは、本願発明1の構成Bに相当する構成を備える。

ウ 引用発明1の構成bには、「ボックスベース280とボックスカバー290とから構成される内部空間に主制御基板271を収容する基板ボックス273」と記載され、引用発明1の構成cには、「ボックスベース280及びボックスカバー290の側部に貼付板部286、293が一体形成され、両貼付板部286、293を跨ぐようにして封印シール276が貼り付けられ」ると記載されている。
当該記載より、「封印シール276」が「基板ボックス273」の「ボックスベース280及びボックスカバー290の側部に」「一体形成され」た「貼付板部286、293を跨ぐようにして」「貼り付けられ」ると、当該「封印シール276」によって、「基板ボックス273」が封止されることは明らかである。
よって、引用発明1の構成b、cの「基板ボックス273」の「ボックスベース280及びボックスカバー290の側部に」「一体形成され」た「貼付板部286、293を跨ぐようにして貼り付けられ」る「封印シール276」は、本願発明1の構成Cの「前記基板ボックスを封止する封止シール」に相当する。
よって、引用発明1の構成b、cは、本願発明1の構成Cに相当する構成を備える。

エ 引用発明1の構成e−1、e−5の「CPUチップ501やその他、抵抗などといった電子部品が搭載され」ることは、本願発明1の構成E−1の「電子部品が配設される」ことに相当する。
よって、引用発明1の構成e−1、e−5は、本願発明1の構成E−1と「電子部品が配設される」点で共通する。

オ 引用発明1の構成e−21、e−22の「主制御基板271の用途」、「用途表示部277、278」、「主制御基板271の製造地(又は製造国)」、「製造地表示部(製造国表示部)279」は、それぞれ本願発明1の構成E−2の「当該基板に関する基板情報のうち」の「第2基板情報」、「第1の情報表示部」、「当該基板に関する基板情報のうち」の「第3基板情報」、「第2の情報表示部」に相当する。
また、引用発明1の構成e−3の「回路パターンの配線Wと同様」の「銅等の金属」は、本願発明1の構成E−2の「第1の形態」に相当する。
さらに、引用発明1の構成e−4の「ソルダレジストSR上に文字パターン279aを印刷する構成」は、本願発明1の構成E−2の「前記第1の形態と異なる第2の形態」に相当する。
そうすると、引用発明1の構成e−21、e−22、e−3、e−4において、「その文字パターンが、回路パターンの配線Wと同様に銅等の金属によって形成されて」いる「用途表示部277、278」、「その文字パターン279aが、ソルダレジストSR上に文字パターン279aを印刷する構成である」「製造地表示部279」は、それぞれ本願発明1の構成E−2の「第1の形態で表示する第1の情報表示部」、「前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する第2の情報表示部」に相当する。
さらに、引用発明1の構成e−21、e−22の「回路パターンの配線Wが設けられていない部位」は、本願発明1の構成E−2の「導体パターンのベタ抜き部」に相当する。
したがって、引用発明1の構成e−21、e−22、e−3、e−4の「主制御基板271の用途を」「その文字パターンが、回路パターンの配線Wと同様に銅等の金属によって形成されて」いる「用途表示部277、278」を「回路パターンの配線Wが設けられていない部位に設け」、「主制御基板271の製造地(又は製造国)を」「その文字パターン279aが、ソルダレジストSR上に文字パターン279aを印刷する構成である」「製造地表示部279」を「回路パターンの配線Wが設けられていない部位に設け」ることは、本願発明1の構成E−2と、「当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報を第1の形態で表示する第1の情報表示部を導体パターンのベタ抜き部に設けるとともに、当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報を前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する第2の情報表示部を」「設け」る点で共通する。

カ 引用発明1の構成e−3の「その文字パターンが、回路パターンの配線Wと同様に銅等の金属によって形成されて」いることは、本願発明1の構成E−3の「前記第1の形態は、導体パターンによるものであ」ることに相当する。
よって、引用発明1の構成e−3は、本願発明1の構成E−3に相当する構成を備える。

キ 引用発明1の構成e−4の「その文字パターン279aが、ソルダレジストSR上に文字パターン279aを印刷する構成である」ことは、本願発明1の構成E−4の「前記第2の形態は、印字表示によるものであ」ることに相当する。
よって、引用発明1の構成e−4は、本願発明1の構成E−4に相当する構成を備える。

ク 引用発明1の構成e−1、e−5の「抵抗」は、本願発明1の構成E−5の「受動素子」に相当する。そして、引用発明1の構成e−1、e−5の「CPUチップ501やその他、抵抗などといった電子部品」との記載より、「電子部品」に「抵抗」が含まれることは明らかである。
よって、引用発明1の構成e−1、e−5は、本願発明1の構成E−5と「受動素子を前記電子部品に含」む点で共通する。

ケ 引用発明1の構成fの「パチンコ遊技機」は、本願発明1の構成Fの「遊技機」に相当する。
よって、引用発明1の構成fは、本願発明1の構成Fに相当する構成を備える。

コ 上記ア〜ケより、本願発明1と引用発明1とは、
「A 第1の面と第1の面の裏面側となる第2の面とに導体パターンを形成可能な基板と、
B 前記基板を収納する基板ボックスと、
C 前記基板ボックスを封止する封止シールと、を備え、
E 前記基板は、
E−1’ 電子部品が配設され、
E−2’ 当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報を第1の形態で表示する第1の情報表示部を導体パターンのベタ抜き部に設けるとともに、当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報を前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する第2の情報表示部を設け、
E−3 前記第1の形態は、導体パターンによるものであり、
E−4 前記第2の形態は、印字表示によるものであり、
E−5’ 受動素子を前記電子部品に含む、
F 遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1(構成D)
本願発明1は、「前記封止シールは、当該基板に関する基板情報のうち第1基板情報を前記基板ボックスの所定の一側に沿って第1側から第2側に文字、英数字または記号を列ねて表示し」ているのに対し、引用発明1は、「封印シール276」に「主制御基板271」(基板)に関する情報が表示されるか否かや、その表示内容及び表示される向き等が明らかでなく、上記のように構成されているか明らかでない点。

・相違点2(構成E−1)
本願発明1は、「前記基板は、」「前記電子部品の部品番号が表示され」るのに対し、引用発明1は、「主制御基板271」(基板)は、「電子部品」の部品番号が表示されるものであるか明らかでない点。

・相違点3(構成E−2)
本願発明1は、「第2の情報表示部を」、「導体パターンのベタ部に設け」ているのに対し、引用発明1は、「製造地表示部279」(第2の情報表示部)を「回路パターンの配線Wが設けられていない部位」(導体パターンのベタ抜き部)に「設け」ている点。

・相違点4(構成E−5)
本願発明1は、「受動素子」が、「カラーコードで定格を表示する」ものであるのに対し、引用発明1は、「抵抗」(受動素子)がそのように構成されているか明らかでない点。

・相違点5(構成E−6)
本願発明1は、「受動素子」の「実装」に関し、「前記カラーコードの第1色帯が前記第1側となるように、前記所定の一側に沿って前記受動素子を実装する」のに対し、引用発明1は、「抵抗」(受動素子)がそのように実装されているか明らかでない点。

(2)当審による判断
事案の内容に鑑み、相違点3について検討する。
引用文献1の【0122】には「製造地表示部279が形成されていることにより当該主制御基板271の製造地を明確に把握することができる。」と記載されているように、引用文献1には、「製造地表示部279」による「製造地」を「明確に把握すること」が課題として記載されていると認められる。
そして、引用文献1には、「製造地表示部279」(第2の情報表示部)を「回路パターンの配線Wが設けられてい」る「部位」(導体パターンのベタ部)「に設け」ることは、記載されていない。
一方、仮に、引用発明1において、「製造地表示部279」を「回路パターンの配線Wが設けられてい」る「部位に設け」ると、「回路パターンの配線W」と「製造地表示部279」の表示が重層することとなり、「製造地表示部279」による「製造地」を「明確に把握すること」が困難となる蓋然性が高いと認められる。
そうすると、引用発明1において、「製造地表示部279」(第2の情報表示部)を「回路パターンの配線Wが設けられてい」る「部位」(導体パターンのベタ部)「に設け」ることは、当業者であっても容易に想到し得るものではなく、また、そのように構成する動機は見いだせない。
よって、引用発明1において、上記相違点3に係る本願発明1の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
以上のことから、相違点3以外の他の相違点の容易想到性について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

2 本願発明2と引用発明1について
(1)本願発明2と引用発明1との対比
ア 引用発明1の構成aの「部品搭載面271a」、「部品搭載面271aとは反対側の板面である半田面271b」、「銅等の金属からなる配線Wによって」「形成され」た「回路パターン」は、それぞれ本願発明2の構成Aの「第1の面」、「第1の面の裏面側となる第2の面」、「導体パターン」に相当する。
また、引用発明1の構成a、eの「主制御基板271」は、本願発明2の構成A、Eの「基板」に相当する。
よって、引用発明1の構成a、eは、本願発明2の構成A、Eに相当する構成を備える。

イ 引用発明1の構成bの「主制御基板271を収容する基板ボックス273」は、本願発明2の構成Bの「前記基板を収納する基板ボックス」に相当する。
よって、引用発明1の構成bは、本願発明2の構成Bに相当する構成を備える。

ウ 引用発明1の構成bには、「ボックスベース280とボックスカバー290とから構成される内部空間に主制御基板271を収容する基板ボックス273」と記載され、引用発明1の構成cには、「ボックスベース280及びボックスカバー290の側部に貼付板部286、293が一体形成され、両貼付板部286、293を跨ぐようにして封印シール276が貼り付けられ」ると記載されている。
当該記載より、「封印シール276」が「基板ボックス273」の「ボックスベース280及びボックスカバー290の側部に」「一体形成され」た「貼付板部286、293を跨ぐようにして」「貼り付けられ」ると、当該「封印シール276」によって、「基板ボックス273」が封止されることは明らかである。
よって、引用発明1の構成b、cの「基板ボックス273」の「ボックスベース280及びボックスカバー290の側部に」「一体形成され」た「貼付板部286、293を跨ぐようにして貼り付けられ」る「封印シール276」は、本願発明2の構成Cの「前記基板ボックスを封止する封止シール」に相当する。
よって、引用発明1の構成b、cは、本願発明2の構成Cに相当する構成を備える。

エ 引用発明1の構成e−1、e−5の「CPUチップ501やその他、抵抗などといった電子部品が搭載され」ることは、本願発明2の構成E−1の「電子部品が配設される」ことに相当する。
よって、引用発明1の構成e−1、e−5は、本願発明2の構成E−1と「電子部品が配設される」点で共通する。

オ 引用発明1の構成e−21、e−22の「主制御基板271の用途」、「用途表示部277、278」、「主制御基板271の製造地(又は製造国)」、「製造地表示部(製造国表示部)279」は、それぞれ本願発明2の構成E−21の「当該基板に関する基板情報のうち」の「第2基板情報」、「第1の情報表示部」、「当該基板に関する基板情報のうち」の「第3基板情報」、「第2の情報表示部」に相当する。
また、引用発明1の構成e−3の「回路パターンの配線Wと同様」の「銅等の金属」は、本願発明2の構成E−21の「第1の形態」に相当する。
さらに、引用発明1の構成e−4の「ソルダレジストSR上に文字パターン279aを印刷する構成」は、本願発明2の構成E−21の「前記第1の形態と異なる第2の形態」に相当する。
そうすると、引用発明1の構成e−21、e−22、e−3、e−4において、「その文字パターンが、回路パターンの配線Wと同様に銅等の金属によって形成されて」いる「用途表示部277、278」、「その文字パターン279aが、ソルダレジストSR上に文字パターン279aを印刷する構成である」「製造地表示部279」は、それぞれ本願発明2の構成E−21の「第1の形態で表示する第1の情報表示部」、「前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する第2の情報表示部」に相当する。
さらに、引用発明1の構成e−21、e−22の「回路パターンの配線Wが設けられていない部位」は、本願発明2の構成E−21の「導体パターンのベタ抜き部」に相当する。
したがって、引用発明1の構成e−21、e−22、e−3、e−4の「主制御基板271の用途を」「その文字パターンが、回路パターンの配線Wと同様に銅等の金属によって形成されて」いる「用途表示部277、278」を「回路パターンの配線Wが設けられていない部位に設け」、「主制御基板271の製造地(又は製造国)を」「その文字パターン279aが、ソルダレジストSR上に文字パターン279aを印刷する構成である」「製造地表示部279」を「回路パターンの配線Wが設けられていない部位に設け」ることは、本願発明2の構成E−21の「当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報を第1の形態で表示する第1の情報表示部と、当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報を前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する第2の情報表示部と、を導体パターンのベタ抜き部に設け」ることに相当する。
よって、引用発明1の構成e−21、e−22、e−3、e−4は、本願発明2の構成E−21に相当する構成を備える。

カ 引用発明1の構成e−3の「その文字パターンが、回路パターンの配線Wと同様に銅等の金属によって形成されて」いることは、本願発明2の構成E−3の「前記第1の形態は、導体パターンによるものであ」ることに相当する。
よって、引用発明1の構成e−3は、本願発明2の構成E−3に相当する構成を備える。

キ 引用発明1の構成e−4の「その文字パターン279aが、ソルダレジストSR上に文字パターン279aを印刷する構成である」ことは、本願発明2の構成E−4の「前記第2の形態は、印字表示によるものであ」ることに相当する。
よって、引用発明1の構成e−4は、本願発明2の構成E−4に相当する構成を備える。

ク 引用発明1の構成e−1、e−5の「抵抗」は、本願発明2の構成E−5の「受動素子」に相当する。そして、引用発明1の構成e−1、e−5の「CPUチップ501やその他、抵抗などといった電子部品」との記載より、「電子部品」に「抵抗」が含まれることは明らかである。
よって、引用発明1の構成e−1、e−5は、本願発明2の構成E−5と「受動素子を前記電子部品に含」む点で共通する。

ケ 引用発明1の構成fの「パチンコ遊技機」は、本願発明2の構成Fの「遊技機」に相当する。
よって、引用発明1の構成fは、本願発明2の構成Fに相当する構成を備える。

コ 上記ア〜ケより、本願発明2と引用発明1とは、
「A 第1の面と第1の面の裏面側となる第2の面とに導体パターンを形成可能な基板と、
B 前記基板を収納する基板ボックスと、
C 前記基板ボックスを封止する封止シールと、を備え、
E 前記基板は、
E−1’ 電子部品が配設され、
E−21 当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報を第1の形態で表示する第1の情報表示部と、当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報を前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する第2の情報表示部と、を導体パターンのベタ抜き部に設け、
E−3 前記第1の形態は、導体パターンによるものであり、
E−4 前記第2の形態は、印字表示によるものであり、
E−5’ 受動素子を前記電子部品に含む、
F 遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1(構成D)
本願発明2は、「前記封止シールは、当該基板に関する基板情報のうち第1基板情報を前記基板ボックスの所定の一側に沿って第1側から第2側に文字、英数字または記号を列ねて表示し」ているのに対し、引用発明1は、「封印シール276」に「主制御基板271」(基板)に関する情報が表示されるか否かや、その表示内容及び表示される向き等が明らかでなく、上記のように構成されているか明らかでない点。

・相違点2(構成E−1)
本願発明2は、「前記基板は、」「前記電子部品の部品番号が表示され」るのに対し、引用発明1は、「主制御基板271」(基板)は、「電子部品」の部品番号が表示されるものであるか明らかでない点。

・相違点3(構成E−22)
本願発明2は、「前記第2の情報表示部の裏面側を導体パターンのベタ部とし」ているのに対し、引用発明1は、「製造地表示部279」(第2の情報表示部)の裏面側を「回路パターンの配線Wが設けられて」いる「部位」(導体パターンのベタ部)としていない点。

・相違点4(構成E−5)
本願発明2は、「受動素子」が、「カラーコードで定格を表示する」ものであるのに対し、引用発明1は、「抵抗」(受動素子)がそのように構成されているか明らかでない点。

・相違点5(構成E−6)
本願発明2は、「受動素子」の「実装」に関し、「前記カラーコードの第1色帯が前記第1側となるように、前記所定の一側に沿って前記受動素子を実装する」のに対し、引用発明1は、「抵抗」(受動素子)がそのように実装されているか明らかでない点。

(2)当審による判断
事案の内容に鑑み、相違点3について検討する。
引用文献1の【0122】には「製造地表示部279が形成されていることにより当該主制御基板271の製造地を明確に把握することができる。」と記載されているように、引用文献1には、「製造地表示部279」による「製造地」を「明確に把握すること」が課題として記載されていると認められる。
そして、引用文献1には、「製造地表示部279」(第2の情報表示部)の裏面側を「回路パターンの配線Wが設けられて」いる「部位」(導体パターンのベタ部)とする構成は記載ないし示唆されていない。
そして、引用文献1において、「製造地表示部279」(第2の情報表示部)の裏面側を「回路パターンの配線Wが設けられて」いる「部位」(導体パターンのベタ部)とすることが、「製造地表示部279」による「製造地」を「明確に把握すること」に寄与するものとは認められないところ、引用発明1において、「製造地表示部279」(第2の情報表示部)の裏面側を「回路パターンの配線Wが設けられて」いる「部位」(導体パターンのベタ部)とする必要性は存在しないといえる。
そうすると、引用発明1において、「製造地表示部279」(第2の情報表示部)の裏面側を「回路パターンの配線Wが設けられて」いる「部位」(導体パターンのベタ部)とすることは、当業者であっても容易に想到し得るものとはいえない。
よって、引用発明1において、上記相違点3に係る本願発明2の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
以上のことから、相違点3以外の他の相違点の容易想到性について検討するまでもなく、本願発明2は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

3 本願発明1と引用発明2−1について
(1)本願発明1と引用発明2−1との対比
ア 引用発明2−1の構成aの「配線パターン」は、本願発明1の構成Aの「導体パターン」に相当する。
また、引用発明2−1の構成aの「配線パターン」が「形成される」「回路基板1」の面は、本願発明1の構成Aの「第1の面」に相当する。
よって、引用発明2−1の構成aは、本願発明1の構成Aと「第1の面」「に導体パターンを形成可能な基板」を備える点で共通する。

イ 引用発明2−1の構成bの「主基板156を構成する回路基板1を収納する主基板ケース158」は、本願発明1の構成Bの「前記基板を収納する基板ボックス」に相当する。
よって、引用発明2−1の構成bは、本願発明1の構成Bに相当する構成を備える。

ウ 引用発明2−1の構成eの「回路基板1」は、本願発明1の構成Eの「前記基板」に相当するから、引用発明2−1の構成eは、本願発明1の構成Eに相当する構成を備える。

エ 引用発明2−1の構成e−1の「回路基板1の表面に、各種の部品が実装され」ることは、本願発明1の構成E−1の「電子部品が配設される」ことに相当する。
よって、引用発明2−1の構成e−1は、本願発明1の構成E−1と「電子部品が配設される」点で共通する。

オ 引用発明2−1の構成e−2の「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」、「追加識別子表示領域D2」、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」、「共通識別子表示領域D1」は、それぞれ本願発明1の構成E−2の「当該基板に関する基板情報のうち」の「第2基板情報」、「第1の情報表示部」、「当該基板に関する基板情報のうち」の「第3基板情報」、「第2の情報表示部」に相当する。
また、引用発明2−1の構成e−2の「深彫とした凹設」、「凹設」は、それぞれ本願発明1の構成E−2の「第1の形態」、「前記第1の形態と異なる第2の形態」に相当する。
さらに、引用発明2−1の構成e−2の「配線パターンを構成する導電体3で区画され、配線パターンが形成されて」いない「追加識別子表示領域D2」、「接地パターン10に」「設定され」る「共通識別子表示領域D1」は、それぞれ本願発明1の構成E−2の「導体パターンのベタ抜き部に設け」られる「第1の情報表示部」、「導体パターンのベタ部に設け」られる「第2の情報表示部」に相当する。
よって、引用発明2−1の構成e−2は、本願発明1の構成E−2に相当する構成を備える。

カ 引用発明2−1の構成e−4において、」「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」「が」「シルク印刷で構成され」ることは、本願発明1の構成E−4の「前記第2の形態は、印字表示によるものであ」ることに相当する。
よって、引用発明2−1の構成e−4は、本願発明1の構成E−4に相当する構成を備える。

キ 引用発明2−1の構成fの「パチンコ機100」は、本願発明1の構成Fの「遊技機」に相当する。
よって、引用発明2−1の構成fは、本願発明1の構成Fに相当する構成を備える。

ク 上記ア〜キより、本願発明1と引用発明2−1とは、
「A’ 第1の面に導体パターンを形成可能な基板と、
B 前記基板を収納する基板ボックスと、
E 前記基板は、
E−1’ 電子部品が配設され、
E−2 当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報を第1の形態で表示する第1の情報表示部を導体パターンのベタ抜き部に設けるとともに、当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報を前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する第2の情報表示部を導体パターンのベタ部に設け、
E−4 前記第2の形態は、印字表示によるものである、
F 遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1(構成A)
本願発明1は、「基板」が、「第1の面と第1の面の裏面側となる第2の面とに導体パターンを形成可能」であるのに対し、引用発明2−1は、「回路基板1」が、「配線パターン」(導体パターン)が「形成される」面を備えるものの、その面の裏面側となる面に「配線パターン」を形成可能であるか明らかでない点。

・相違点2(構成C、D)
本願発明1は、「前記基板ボックスを封止する封止シールと、を備え」、「前記封止シールは、当該基板に関する基板情報のうち第1基板情報を前記基板ボックスの所定の一側に沿って第1側から第2側に文字、英数字または記号を列ねて表示し」ているのに対し、引用発明2−1は、「基板ケース158」を封止する封止シールを備えているのか否かや、その封止シールの表示内容や表示される向き等が明らかでなく、上記のように構成されているか明らかでない点。

・相違点3(構成E−1)
本願発明1は、「前記基板は、」「前記電子部品の部品番号が表示され」るのに対し、引用発明2−1は、「回路基板1」は、「各種の部品」の部品番号が表示されるか明らかでない点。

・相違点4(構成E−3)
本願発明1は、「前記第1の形態は、導体パターンによるものであ」るのに対し、引用発明2−1は、「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」の形態(第1の形態)が「深彫とした凹設」であり、「接地パターン10」(導体パターン)によるものではない点。

・相違点5(構成E−5、E−6)
本願発明1は、「カラーコードで定格を表示する受動素子を前記電子部品に含み、前記カラーコードの第1色帯が前記第1側となるように、前記所定の一側に沿って前記受動素子を実装する」のに対し、引用発明2−1は、「カラーコードで定格を表示する受動素子」を「各種の部品」(電子部品)に含むのか否かが明らかでなく、「受動素子」の「実装」が、上記のように構成されているか明らかでない点。

(2)当審による判断
事案の内容に鑑み、相違点4について検討する。
引用文献2の【0202】には「本実施形態では識別子C1と識別子C2とに高低差を生じさせている。・・・また、識別子C1、C2が立体形状であることから不正が行いにくい場合がある。」と記載されている。また、引用文献2の【0208】には、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」と「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」とを「凹設」することが記載されている。
そうすると、引用文献2には、不正を行いにくくするために、「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」(当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報)と「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」(当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報)とを「凹設」することが記載されていると認められる。
一方、引用文献2の【0208】には、「また一方の識別子をシルク印刷やシールなどで構成してもよい。」と記載されていることから、「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」と「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」のうちの一方を、「凹設」に代えて、「シルク印刷」で構成することが記載されており、例えば「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」を「シルク印刷」で構成することが記載されていると認められる。
しかしながら、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」を「シルク印刷」で構成することに加え、「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」も「凹設」に代えて、別の手段により構成することは、当業者であっても容易に想到し得るものではなく、また、そのように構成する動機は見いだせない。
よって、引用発明2−1において、上記相違点4に係る本願発明1の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
以上のことから、相違点4以外の他の相違点の容易想到性について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明2−1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

4 本願発明2と引用発明2−2について
(1)本願発明2と引用発明2−2との対比
ア 引用発明2−2の構成aの「配線パターン」は、本願発明2の構成Aの「導体パターン」に相当する。
また、引用発明2−2の構成aの「配線パターン」が「形成される」「回路基板1」の面は、本願発明2の構成Aの「第1の面」に相当する。
よって、引用発明2−2の構成aは、本願発明2の構成Aと「第1の面」「に導体パターンを形成可能な基板」を備える点で共通する。

イ 引用発明2−2の構成bの「主基板156を構成する回路基板1を収納する主基板ケース158」は、本願発明2の構成Bの「前記基板を収納する基板ボックス」に相当する。
よって、引用発明2−2の構成bは、本願発明2の構成Bに相当する構成を備える。

ウ 引用発明2−2の構成eの「回路基板1」は、本願発明2の構成Eの「前記基板」に相当するから、引用発明2−2の構成eは、本願発明2の構成Eに相当する構成を備える。

エ 引用発明2−2の構成e−1の「回路基板1の表面に、各種の部品が実装され」ることは、本願発明2の構成E−1の「電子部品が配設される」ことに相当する。
よって、引用発明2−2の構成e−1は、本願発明2の構成E−1と「電子部品が配設される」点で共通する。

オ 引用発明2−2の構成e−21の「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」、「追加識別子表示領域D2」、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」、「共通識別子表示領域D1」は、それぞれ本願発明2の構成E−2の「当該基板に関する基板情報のうち」の「第2基板情報」、「第1の情報表示部」、「当該基板に関する基板情報のうち」の「第3基板情報」、「第2の情報表示部」に相当する。
また、引用発明2−2の構成e−21の「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」を表示する形態は、それぞれ本願発明2の構成E−21の「第1の形態」、「第2の形態」に相当する。
さらに、引用発明2−2の構成e−21の「共通識別子表示領域D1と追加識別子表示領域D2には、配線パターン10が形成されて」いないことは、本願発明2の構成E−21の「第1の情報表示部と、」「第2の情報表示部と、を導体パターンのベタ抜き部に設け」ることに相当する。
よって、引用発明2−2の構成e−21は、本願発明2の構成E−21と「当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報を第1の形態で表示する第1の情報表示部を導体パターンのベタ抜き部に設けるとともに、当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報を」「第2の形態で表示する第2の情報表示部と、を導体パターンのベタ抜き部に設け」る点で共通する。

カ 引用発明2−2の構成e−4において、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」「が」「シルク印刷で構成され」ることは、本願発明2の構成E−4の「前記第2の形態は、印字表示によるものであ」ることに相当する。
よって、引用発明2−2の構成e−4は、本願発明2の構成E−4に相当する構成を備える。

キ 引用発明2−2の構成fの「パチンコ機100」は、本願発明2の構成Fの「遊技機」に相当する。
よって、引用発明2−2の構成fは、本願発明2の構成Fに相当する構成を備える。

ク 上記ア〜キより、本願発明2と引用発明2−2とは、
「A’ 第1の面に導体パターンを形成可能な基板と、
B 前記基板を収納する基板ボックスと、
E 前記基板は、
E−1’ 電子部品が配設され、
E−21’ 当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報を第1の形態で表示する第1の情報表示部と、当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報を第2の形態で表示する第2の情報表示部と、を導体パターンのベタ抜き部に設け、
E−4 前記第2の形態は、印字表示によるものである、
F 遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1(構成A)
本願発明2は、「基板」が、「第1の面と第1の面の裏面側となる第2の面とに導体パターンを形成可能」であるのに対し、引用発明2−2は、「回路基板1」が、「配線パターン」(導体パターン)が「形成される」面を備えるものの、その面の裏面側となる面に「配線パターン」を形成可能であるか明らかでない点。

・相違点2(構成C、D)
本願発明2は、「前記基板ボックスを封止する封止シールと、を備え」、「前記封止シールは、当該基板に関する基板情報のうち第1基板情報を前記基板ボックスの所定の一側に沿って第1側から第2側に文字、英数字または記号を列ねて表示し」ているのに対し、引用発明2−2は、「基板ケース158」を封止する封止シールを備えているのか否かや、封止シールの表示内容や表示される向き等が明らかでなく、上記のように構成されているか明らかでない点。

・相違点3(構成E−1)
本願発明2は、「前記基板は、」「前記電子部品の部品番号が表示され」るのに対し、引用発明2−2は、「回路基板1」は、「各種の部品」の部品番号が表示されるか明らかでない点。

・相違点4(構成E−21)
本願発明2は、「当該基板に関する基板情報のうち」の「第3基板情報」が、「前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する」のに対し、引用発明2−2は、「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」(第2基板情報)を表示する形態(第1の形態)と「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」(第3基板情報)を表示する形態(第2の形態)が明らかでなく、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」(第3基板情報)を表示する形態(第2の形態)が、「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」(第2基板情報)を表示する形態(第1の形態)と異なるか明らかでない点。

・相違点5(構成E−22)
本願発明2は、「前記第2の情報表示部の裏面側を導体パターンのベタ部とし」ているのに対し、引用発明2−2は、「共通識別子表示領域D1」(第2の情報表示部)の裏面側を「配線パターン10が形成されて」いるように構成していない点。

・相違点6(構成E−3)
本願発明2は、「前記第1の形態は、導体パターンによるものであ」るのに対し、引用発明2−2は、「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」(第2基板情報)を表示する形態(第1の形態)が明らかでなく、「配線パターン10」によるものであるか明らかでない点。

・相違点7(構成E−5、E−6)
本願発明2は、「カラーコードで定格を表示する受動素子を前記電子部品に含み、前記カラーコードの第1色帯が前記第1側となるように、前記所定の一側に沿って前記受動素子を実装する」のに対し、引用発明2−2は、「カラーコードで定格を表示する受動素子」を「各種の部品」(電子部品)に含むのか否かが明らかでなく、「受動素子」の「実装」が、上記のように構成されているか明らかでない点。

(2)当審による判断
事案の内容に鑑み、相違点6について検討する。
引用文献2の【0202】には「本実施形態では識別子C1と識別子C2とに高低差を生じさせている。・・・また、識別子C1、C2が立体形状であることから不正が行いにくい場合がある。」と記載されている。また、引用文献2の【0208】には、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」と「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」とを「凹設」することが記載されている。
そうすると、引用文献2には、不正を行いにくくするために、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」と「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」とを「凹設」することが記載されていると認められる。
一方、引用発明2−2において、「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」(第2基板情報)を表示する形態(第1の形態)と「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」(第3基板情報)を表示する形態(第2の形態)が明らかでないものの、引用文献2の【0208】には、「また一方の識別子をシルク印刷やシールなどで構成してもよい。」と記載されていることから、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」と「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」のうちの一方を、「凹設」に代えて、「シルク印刷」で構成することが記載されており、例えば、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」を「シルク印刷」で構成することが記載されていると認められる。
しかしながら、「複数の回路基板1に共通の識別子である4つの識別子C1」を「シルク印刷」で構成することに加え、「共通の識別子に追加される識別子である識別子C2」も「凹設」に代えて、別の手段により構成することは、当業者であっても容易に想到し得るものではなく、また、そのように構成する動機は見いだせない。
よって、引用発明2−2において、上記相違点6に係る本願発明2の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
以上のことから、相違点6以外の他の相違点の容易想到性について検討するまでもなく、本願発明2は、引用発明2−2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

5 本願発明3ないし5について
本願発明3ないし5は、本願発明1あるいは本願発明2と同一の構成を備え、さらに構成を付加したものであるため、本願発明1及び本願発明2と同様の理由により、引用発明1、引用発明2−1、引用発明2−2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

第7 原査定(進歩性)についての判断
令和4年2月1日付けの補正により、補正後の請求項1に係る発明は、「当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報を第1の形態で表示する第1の情報表示部を導体パターンのベタ抜き部に設けるとともに、当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報を前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する第2の情報表示部を導体パターンのベタ部に設け、前記第1の形態は、導体パターンによるものであり、前記第2の形態は、印字表示によるものであ」るという技術的事項を備え、請求項2に係る発明は、「当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報を第1の形態で表示する第1の情報表示部と、当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報を前記第1の形態と異なる第2の形態で表示する第2の情報表示部と、を導体パターンのベタ抜き部に設け、」「前記第1の形態は、導体パターンによるものであり、前記第2の形態は、印字表示によるものであ」るとの技術的事項を備え、請求項1あるいは請求項2の記載を直接的に引用する請求項3ないし5に係る発明も上記技術的事項を有するものとなった。
上記技術的事項は、原査定における上記引用文献1及び引用文献2には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1−5は、当業者であっても、原査定における引用文献1あるいは引用文献2に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由についての判断
当審拒絶理由の理由に対して、本件補正により、特許請求の範囲は上記「第4 本願発明」において示したとおりに補正され、請求項1及び請求項2において、「基板情報」として、「当該基板に関する基板情報のうち第1基板情報」、「当該基板に関する基板情報のうち第2基板情報」及び「当該基板に関する基板情報のうち第3基板情報」を備えることが特定されることにより、本願発明1−5が、発明の詳細な説明に記載されるものとなった。
そうすると、当審拒絶理由は解消しており、本願については、当審拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-04-05 
出願番号 P2018-052398
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
P 1 8・ 537- WY (A63F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
▲高▼木 尚哉
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人扶桑国際特許事務所  

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