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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録(定型) C25B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録(定型) C25B
管理番号 1383861
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-07 
確定日 2022-05-10 
事件の表示 特願2017−545590「カーボンナノファイバー製造のための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 1日国際公開、WO2016/138469、平成30年 5月31日国内公表、特表2018−513911、請求項の数(23)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年) 2月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年 2月26日、アメリカ合衆国、2015年10月13日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月 3日付けで手続補正書が提出され、令和 1年12月11日付けで拒絶理由通知がなされ、令和 2年 6月17日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和 2年 7月10日付けで拒絶理由通知がなされ、令和 3年 1月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和 3年 1月29日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和 3年 6月 7日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年 9月21日付けで審査官による前置報告がなされ、令和 4年 2月17日付けで上申書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
1.補正の却下の決定の結論
令和 3年 6月 7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

2.補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、以下のとおり、本件補正前の請求項1〜23を、本件補正後の請求項1〜24に補正するものである。

ア 本件補正前の請求項1〜23
「【請求項1】
カーボンナノ材料を製造するためのシステムであって、
炭酸塩を受け入れる炉室であって、これを加熱することにより溶融炭酸塩を生成させる前記炉室;
前記溶融炭酸塩に電気分解を行うためのアノード及びカソードを有する電気分解装置;並びに
添加される遷移金属から、遷移金属核形成剤を形成させる分散機
を含み、
前記電気分解装置は、電解質の析出条件を変化させて、核形成部位として作用する前記カソード上に前記遷移金属核形成剤の析出物を形成し、前記核形成部位上にカーボンナノ材料を成長させる、ように構成される、
前記システム。
【請求項2】
アノード及びカソードを用いた電気分解によりカーボンナノ材料を製造する方法であって、
炭酸塩を加熱することにより溶融炭酸塩を生成させ;
前記溶融炭酸塩に前記アノード及びカソードを挿入し;
添加される遷移金属から、遷移金属核形成剤が形成され;
前記溶融炭酸塩中に前記遷移金属核形成剤を提供し;そして
前記電気分解は、電解質の析出条件を変化させて、核形成部位として作用する前記カソード上に前記遷移金属核形成剤の析出物を形成させ、前記核形成部位上にカーボンナノ材料を成長させる、ように起こされる、
ことを含む方法。
【請求項3】
前記カソードが、鋼、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、イリジウム、金属合金、炭素、又はそれらの何れかの組み合わせ、を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記アノードが、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、炭素、イリジウム、金属、炭素、又はそれらの何れかの組み合わせ、を含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記電気分解が、最初の所定時間は5〜10mA・cm−2の電流密度で、そして次に20〜1000mA・cm−2の電流密度で行われる、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノファイバーである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノチューブである、請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属核形成剤が、ニッケル、鉄、コバルト、銅、チタン、クロム、マンガン、ジルコニウム、モリブデン、銀、カドミウム、ルテニウム、及びそれらの何れかの組み合わせ、からなるグループから選択される、請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属核形成剤が、溶解した遷移金属塩として前記溶融炭酸塩に添加されて、前記カソード上に移動する、請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記遷移金属核形成剤が、直接に前記カソード上に添加される、請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記遷移金属核形成剤が、前記アノードからの遷移金属の溶解により添加されて、前記溶融炭酸塩を通って、前記カソード上に移動する、請求項2記載の方法。
【請求項12】
前記カソードが、亜鉛でコーティングされる、請求項2記載の方法。
【請求項13】
前記炭酸塩が、アルカリ炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩、及びそれらの何れかの組み合わせ、を含む、請求項2記載の方法。
【請求項14】
前記溶融炭酸塩に、CO2源からCO2を注入する、ことを更に含む、請求項2記載の方法。
【請求項15】
前記CO2源が、空気、加圧CO2、又は濃縮CO2、発電産業プロセス、鉄生成産業プロセス、鋼生成産業プロセス、セメント形成プロセス、アンモニア形成産業プロセス、アルミニウム形成産業プロセス、製造プロセス、炉、煙突、又は内燃機関、の1つである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記溶融炭酸塩が、カーボンナノ材料の充填剤又はコーティング剤として作用することができるか、あるいは電解質の粘度に影響を及ぼす、酸化物又は遷移金属塩以外の添加剤を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記蓄積されたカーボンナノ材料を処理することであって、前記処理が、洗浄、コーティング、及び化学的又は電気化学的な酸化又は還元、の少なくとも1つ、を更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記溶融炭酸塩が、酸化物を更に含む、請求項2記載の方法。
【請求項19】
前記酸化物が、絡み合ったカーボンナノ材料の前記形成を促進するための酸化リチウムである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記酸化物が、酸化バリウムである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記分散機が、アノードである、請求項1記載のシステム。
【請求項22】
クーロン効率が、80%以上である、請求項2記載の方法。
【請求項23】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノファイバーを80%以上含む、請求項2記載の方法。」

イ 本件補正後の請求項1〜24
「【請求項1】
カーボンナノ材料を製造するためのシステムであって、
炭酸塩を受け入れる炉室であって、これを加熱することにより溶融炭酸塩を生成させる前記炉室;
前記溶融炭酸塩に電気分解を行うためのアノード及びカソードを有する電気分解装置;並びに
添加される遷移金属から、前記カソード上に十分な量の遷移金属核形成剤を形成させる分散機
を含み、
前記システムは、(i)核形成部位として作用する前記カソード上に前記遷移金属核形成剤の析出物を形成し、(ii)その後、カーボンナノ材料としての前記核形成部位から主に成長されたカーボン生成物を提供する、ように構成される、
前記システム。
【請求項2】
アノード及びカソードを用いた電気分解によりカーボンナノ材料を製造する方法であって、
炭酸塩を加熱することにより溶融炭酸塩を生成させ;
前記溶融炭酸塩に前記アノード及びカソードを挿入し;
添加される遷移金属から、遷移金属核形成剤が形成され;
前記溶融炭酸塩中に前記遷移金属核形成剤を提供し;そして
前記電気分解は、電解質の析出条件を変化させて、核形成部位として作用する前記カソード上に前記遷移金属核形成剤の析出物を形成させ、前記核形成部位からカーボンナノ材料を成長させる、ように起こされる、
ことを含む方法。
【請求項3】
前記カソードが、鋼、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、イリジウム、金属合金、炭素、又はそれらの何れかの組み合わせ、を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記アノードが、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、炭素、イリジウム、金属、炭素、又はそれらの何れかの組み合わせ、を含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記電気分解が、最初の所定時間は5〜10mA・cm−2の電流密度で、そして次に20〜1000mA・cm−2の電流密度で行われる、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノファイバーである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノチューブである、請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属核形成剤が、ニッケル、鉄、コバルト、銅、チタン、クロム、マンガン、ジルコニウム、モリブデン、銀、カドミウム、ルテニウム、及びそれらの何れかの組み合わせ、からなるグループから選択される、請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属核形成剤が、溶解した遷移金属塩として前記溶融炭酸塩に添加されて、前記カソード上に移動する、請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記遷移金属核形成剤が、直接に前記カソード上に添加される、請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記遷移金属核形成剤が、前記アノードからの遷移金属の溶解により添加されて、前記溶融炭酸塩を通って、前記カソード上に移動する、請求項2記載の方法。
【請求項12】
前記カソードが、亜鉛でコーティングされる、請求項2記載の方法。
【請求項13】
前記炭酸塩が、アルカリ炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩、及びそれらの何れかの組み合わせ、を含む、請求項2記載の方法。
【請求項14】
前記溶融炭酸塩に、CO2源からCO2を注入する、ことを更に含む、請求項2記載の方法。
【請求項15】
前記CO2源が、空気、加圧CO2、濃縮CO2、発電産業プロセス、鉄生成産業プロセス、鋼生成産業プロセス、セメント形成プロセス、アンモニア形成産業プロセス、アルミニウム形成産業プロセス、製造プロセス、炉、煙突、又は内燃機関、の1つである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記溶融炭酸塩が、カーボンナノ材料の充填剤又はコーティング剤として作用することができるか、あるいは電解質の粘度に影響を及ぼす、酸化物又は遷移金属塩以外の添加剤を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記蓄積されたカーボンナノ材料を処理することであって、前記処理が、洗浄、コーティング、及び化学的又は電気化学的な酸化又は還元、の少なくとも1つ、を更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記溶融炭酸塩が、酸化物を更に含む、請求項2記載の方法。
【請求項19】
前記酸化物が、絡み合ったカーボンナノ材料の前記形成を促進するための酸化リチウムである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記酸化物が、酸化バリウムである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記分散機が、アノードである、請求項1記載のシステム。
【請求項22】
クーロン効率が、80%以上である、請求項2記載の方法。
【請求項23】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノファイバーを80%以上含む、請求項2記載の方法。
【請求項24】
前記カーボンナノ材料の特性が、前記アノード及び前記カソードへの電流密度、電気分解の温度、粘度、電気分解の注入気体、遷移金属容量、又は電解炉の電解容量、の少なくとも一つにより制御される、請求項1記載のシステム。」

(2)本件補正の適否の検討
本件補正は、特許請求の範囲の請求項の数を、本件補正前の23から、本件補正後の24に増加する補正事項(以下、「本件補正事項」という。)を含むものであるところ、当該補正事項は、特許請求の範囲の減縮に該当しない。

すなわち、特許法第17条の2第5項第2号の規定は、補正が認められる特許請求の範囲の減縮といえるためには、補正後の請求項が補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定する関係にあること、及び、補正前の請求項と補正後の請求項との間において、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることを必要とするとしたものである。そして、ここで、上記の「限定する」ものであるかどうか、「同一である」かどうかは、いずれも特許請求の範囲に記載された当該請求項について、その補正の前後を比較して判断すべきものであり、補正前の請求項と補正後の請求項とが、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならないと解される(必要ならば、知的財産高等裁判所判決 平成15年(行ケ)第230号、平成17年(行ケ)第10156号、及び平成17年(行ケ)第10192号参照。)。

また、一般に、特許請求の範囲の補正の態様としては、その量的な面(請求項の数)と内容的な面(技術的内容)とが考えられるが、同条同項第1号は、そのうち量的な面(請求項の数)に着目して「請求項の削除」の場合のみを規定したものであり、同条同項第2号の特許請求の範囲の減縮は、特許請求の範囲の内容的な面に着目して、その拡張等以外の「減縮」について定めたものということができる。このような同条同項第1号と2号の関係や、同条同項第2号かっこ書きにおいて、その補正前の「当該請求項」に記載された発明とその補正後の「当該請求項」に記載される発明とが対応する関係に立つことが前提とされていることからすると、同条同項第2号の規定は、請求項の発明特定事項を限定して、これを減縮補正することによって、当該請求項がそのままその補正後の請求項として維持されるという態様による補正を定めたものとみるのが相当であるから、当該一つの請求項を削除して新たな請求項をたてるとか、当該一つの請求項に係る発明を複数の請求項に分割して新たな請求項を追加するというような態様による補正を予定しているものではないというべきである。

そして、本件補正事項のうち増項に係る部分は、請求項の数を、補正前の23から補正後の24に補正するというものであり、請求項1を引用する請求項24を新たに追加することによって、請求項の数を増加させるものである。そして、この増加は、多数項引用形式で記載された1つの請求項を、引用請求項を減少させて独立形式の請求項とする場合や、構成要件が択一的なものとして記載された1つの請求項を、その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする等の、増項補正が許される例外的な場合に該当するということもできない。

それ故、請求項の数を増加する本件補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当しない。(なお、請求項数を増加する補正が、特許法第17条の2第5項第2号にいう限定的減縮を目的とするものにあたらないことについて、必要であれば、審査基準第IV部第4章2.1.1(1)(iii)の説明を参照されたい。)

また、本件補正事項は特許法第17条の2第5項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明りょうでない記載の釈明)のいずれにも該当しない。

したがって、本件補正事項は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願の請求項1〜23に係る発明は、令和3年1月13日付けで提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1〜23に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-04-18 
出願番号 P2017-545590
審決分類 P 1 8・ 537- WYF (C25B)
P 1 8・ 57- WYF (C25B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 粟野 正明
特許庁審判官 祢屋 健太郎
池渕 立
発明の名称 カーボンナノファイバー製造のための方法及びシステム  
代理人 特許業務法人 津国  

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