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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01C
管理番号 1383882
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-24 
確定日 2022-04-19 
事件の表示 特願2017−109913「NTCサーミスタ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開、特開2018−206911、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月2日に特許出願したものであって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

令和 3年 1月 6日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 1月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 3月18日付け:拒絶査定
令和 3年 6月24日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年3月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし5に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1ないし5
・引用文献 1ないし3

<引用文献等一覧>
1.特開平11−297508号公報
2.特開2003−124007号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平6−61014号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
本件補正は、本件補正前の請求項1及び請求項5に記載された発明を特定するために必要な事項である「基端部の第三方向での幅」について「前記先端部及び前記幅狭部の前記第三方向での各幅と同じであ」るとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1及び請求項5に記載された発明と補正後の請求項1及び請求項5に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、当該補正は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし5に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和3年6月24日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
第一方向で互いに対向する一対の主面と、前記第一方向に直交する第二方向で互いに対向する一対の端面と、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向で互いに対向する一対の側面と、を有するサーミスタ素体と、
対応する前記端面に配置された第一及び第二端子電極と、
前記サーミスタ素体内に配置され、前記第一方向で互いに対向する第一及び第二内部電極と、を備え、
前記第一内部電極は、前記第一端子電極に電気的に接続されていると共に前記第三方向で互いに対向する一対の対向部と、前記一対の対向部の間を連結する連結部と、を有し、
前記第二内部電極は、前記第二端子電極に電気的に接続されている基端部と、前記第一端子電極側の先端に位置する先端部と、前記基端部と前記先端部との間に延在していると共に前記第三方向での幅が前記一対の対向部の前記第三方向での離間幅よりも狭い幅狭部と、を有し、
前記第一方向から見て、前記先端部の全体は、前記一対の対向部と前記連結部とに囲まれた領域に位置しており、且つ、前記第二内部電極は、前記幅狭部において前記連結部に重なっており、
前記基端部の前記第三方向での幅は、前記先端部及び前記幅狭部の前記第三方向での各幅と同じであり、かつ、前記離間幅よりも狭い、NTCサーミスタ。
【請求項2】
前記第一方向から見て、前記第二内部電極は、前記一対の対向部に重なっていない、請求項1に記載のNTCサーミスタ。
【請求項3】
前記サーミスタ素体は、前記第一方向に積層された複数のサーミスタ層を有し、
前記領域は、前記サーミスタ層で充填されている、請求項1又は2に記載のNTCサーミスタ。
【請求項4】
前記第一及び第二内部電極は、丸みを帯びた角部を有している、請求項1〜3の何れか一項に記載のNTCサーミスタ。
【請求項5】
第一方向で互いに対向する一対の主面と、前記第一方向に直交する第二方向で互いに対向する一対の端面と、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向で互いに対向する一対の側面と、を有するサーミスタ素体と、
対応する前記端面に配置された第一及び第二端子電極と、
前記サーミスタ素体内に配置され、対応する前記第一及び第二端子電極に電気的に接続されていると共に、前記第一方向で互いに対向する第一及び第二内部電極と、を備え、
前記第一内部電極は、導体部と、前記導体部の内側に形成された開口部と、を有し、
前記第二内部電極は、前記第三方向での幅が前記開口部の前記第三方向での幅よりも狭い幅狭部と、前記幅狭部に連結されていると共に前記第一端子電極側の先端に位置する先端部と、前記幅狭部に連結されていると共に前記第二端子電極側に位置する基端部と、を有し、
前記第一方向から見て、前記先端部の全体が前記開口部の中に位置しており、且つ、前記第二内部電極は、前記幅狭部において前記導体部に重なっており、
前記基端部の前記第三方向での幅は、前記先端部及び前記幅狭部の前記第三方向での各幅と同じであり、かつ、前記開口部の前記第三方向での前記幅よりも狭い、NTCサーミスタ。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば電気回路の過電圧の保護を目的とする積層型バリスタ等の積層型セラミック電子部品に関するものである。
・・・(中略)・・・
【0008】そこで本発明は、製造の際の積層ずれによる静電容量変化が小さい積層型セラミック電子部品を提供することを目的とするものである。」

「【0017】以下、本発明の一実施の形態について積層型バリスタを例に図面を参照して説明する。
【0018】(実施の形態1)図1は本実施の形態における積層型バリスタの縦断面図、図2、図3は本実施の形態における積層型バリスタの横断面図であり、1は積層体、2はセラミック層、3aは第1の内部電極層、3bは第2の内部電極層、4aは第1の外部電極、4bは第2の外部電極である。
【0019】まず、主成分のZnOに副成分としてBi2O3,Co2O3,Sb2O3,Al2O3等を加えて、酢酸ブチル、有機バインダ、可塑剤を加えて混合し、スラリーを得た。このスラリーをドクターブレード法にてシート化し、適当な大きさに切断し、セラミック層2となるセラミックグリーンシートを得た。
【0020】次に、図2、図3に示すようにこのグリーンシート上にAgペーストにより形成した第1及び第2の内部電極層3a,3bを第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとがセラミック層2を挟んで交互に積層した積層体1を900〜950℃で焼成し、バレル研磨後、積層体1の両端面に第1の外部電極4aを第1の内部電極層3aと第2の外部電極4bを第2の内部電極層3bと電気的に接続されるようにAg/Pdペーストを塗布し、700〜900℃で焼き付けて積層型バリスタを得た。
【0021】この積層型バリスタは、第1及び第2の内部電極層3a,3bの形状が非対称型であり、一層のセラミック層2を挟んで第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとが対向する部分を一ヵ所有している。」

「【0037】(7)本発明の積層型セラミック電子部品は、バリスタに向いたものであるが、特にバリスタだけに限定するものではなく、コンデンサ、センサ、サーミスタなど多岐にわたるものである。
【0038】(8)実施の形態1〜3に示したように、第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとが一層のセラミック層2を介して対向している部分の最大幅より、第1の外部電極4a及び第2の外部電極4bと接続される部分の幅の方を大きくした方が低容量でかつ第1及び第2の内部電極層3a,3bと第1及び第2の外部電極4a,4bとの電気的接続が確実なものとなる。さらに第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bが第1の外部電極4a及び第2の外部電極4bと接続される部分の幅を同じにすることにより一つの内部電極層パターンで第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bを同時に形成することができる。
【0039】
【発明の効果】以上本発明によると、製造の際の積層ずれによる静電容量のバラツキが小さい積層型セラミック電子部品を得ることができる。」

図1


図2


図3


(2)引用文献1の上記記載から以下のことがいえる。
ア 段落【0017】によれば、引用文献1には、積層型バリスタが記載されている。

イ 段落【0020】によれば、「積層体1」は「第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとがセラミック層2を挟んで交互に積層」したものである。
また、図1(積層型バリスタの縦断面図。以下同じ)ないし図3(積層型バリスタの横断面図。以下同じ。)によれば、「積層体1」が直方体状であり、「積層体1」が、厚み方向に対向する一対の面と、長さ方向に対向する一対の端の面と、幅方向に対向する一対の面とを有することが見て取れる。
よって、引用文献1の「積層型バリスタ」は、第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとがセラミック層2を挟んで交互に積層して形成され、厚み方向に対向する一対の面と、長さ方向に対向する一対の端の面と、幅方向に対向する一対の面とを有する積層体1を備えているといえる。

ウ 段落【0020】には「積層体1の両端面に第1の外部電極4aを第1の内部電極層3aと第2の外部電極4bを第2の内部電極層3bと電気的に接続されるようにAg/Pdペーストを塗布し、700〜900℃で焼き付けて積層型バリスタを得た。」と記載されている。
そして、図1によれば、積層体1の長さ方向に対向する一対の端の面にそれぞれ「第1の外部電極4a」及び「第2の外部電極4b」が配置されることが見て取れる。
よって、引用文献1に記載された「積層型バリスタ」は、積層体1の長さ方向に対向する一対の端の面にそれぞれ配置された第1の外部電極4a及び第2の外部電極4bを備えているといえる。

エ 段落【0021】によれば、「積層型バリスタ」は、第1及び第2の内部電極層3a,3bの形状が非対称型であり、一層のセラミック層2を挟んで第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとが対向する部分を一ヵ所有している。

オ 段落【0020】によれば、第2の外部電極4bは第2の内部電極層3bに電気的に接続される。
また、図1、図3によれば、第2の内部電極層3bは、第2の外部電極4bに電気的に接続されると共に積層体1の幅方向に対向する一対の対向部分と、一対の対向部分を結合する結合部分とを有することが見て取れる。
よって、「第2の内部電極3層b」は、第2の外部電極4bに電気的に接続されると共に積層体1の幅方向に対向する一対の対向部分と、一対の対向部分を結合する結合部分とを有するといえる。

カ 段落【0020】によれば、第1の外部電極4aは第1の内部電極層3aに電気的に接続される。
また、図1、図2(積層型バリスタの横断面図。以下同じ。)によれば、第1の内部電極層3aは、第1の外部電極4aに電気的に接続される接続部分と、第2の外部電極4b側に位置する先端部分と、接続部分と先端部分との間を延伸する延伸部分とを有することが見て取れる。
そして、図2、図3によれば、延伸部分の積層体1の幅方向での幅が、一対の対向部分の積層体1の幅方向での間隔より狭いことが見て取れる。
さらに、図2によれば、接続部分の積層体1の幅方向の幅は先端部分及び延伸部分の積層体1の幅方向の幅より大きいことが見て取れる。
よって、「第1の内部電極層3a」は、第1の外部電極4aに電気的に接続される接続部分と、第2の外部電極4b側に位置する先端部分と、接続部分と先端部分との間に延伸し、積層体1の幅方向での幅が一対の対向部分の積層体1の幅方向での間隔より狭い延伸部分とを有し、接続部分の積層体1の幅方向の幅は先端部分及び延伸部分の積層体1の幅方向の幅より大きいといえる。

キ 段落【0021】によれば、積層型バリスタは、第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとが対向する部分を一ヵ所有している。
そして、図1ないし図3によれば、積層体1の厚み方向から見て、先端部分の全体が、一対の対向部分と結合部分に囲まれた範囲内に位置し、かつ、第1の内部電極層3aは、延伸部分において結合部分に重なっていることが見て取れる。
よって、引用文献1に記載された「積層型バリスタ」では、積層体1の厚み方向から見て、先端部分の全体が、一対の対向部分と結合部分に囲まれた範囲内に位置し、かつ、第1の内部電極層3aは、延伸部分において結合部分に重なっているといえる。

(3)上記アないしキによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとがセラミック層2を挟んで交互に積層して形成され、厚み方向に対向する一対の面と、長さ方向に対向する一対の端の面と、幅方向に対向する一対の面とを有する積層体1と、
前記長さ方向に対向する一対の端の面にそれぞれ配置された第1の外部電極4a及び第2の外部電極4bと、を備え、
第1及び第2の内部電極層3a,3bの形状が非対称型であり、一層のセラミック層2を挟んで第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとが対向する部分を一ヵ所有し、
第2の内部電極層3bは、第2の外部電極4bに電気的に接続されると共に前記幅方向に対向する一対の対向部分と、一対の対向部分を結合する結合部分とを有し、
第1の内部電極3層aは、第1の外部電極4aに電気的に接続される接続部分と、第2の外部電極4b側に位置する先端部分と、接続部分と先端部分との間に延伸し、前記幅方向での幅が一対の対向部分の前記幅方向での間隔より狭い延伸部分とを有し、接続部分の前記幅方向の幅は先端部分及び延伸部分の前記幅方向の幅より大きく、
前記厚み方向から見て、先端部分の全体が、一対の対向部分と結合部分に囲まれた範囲内に位置し、かつ、第1の内部電極層3aは、延伸部分において結合部分に重なっている、積層型バリスタ。」

(4)また、引用文献1の上記記載から以下のこともいえる。
ク 段落【0020】には「積層体1の両端面に第1の外部電極4aを第1の内部電極層3aと第2の外部電極4bを第2の内部電極層3bと電気的に接続されるようにAg/Pdペーストを塗布し、700〜900℃で焼き付けて積層型バリスタを得た。」と記載されている。
そして、図1によれば、積層体1の長さ方向に対向する一対の端の面にそれぞれ「第1の外部電極4a」及び「第2の外部電極4b」が配置されることが見て取れる。
よって、引用文献1に記載された「積層型バリスタ」は、積層体1の長さ方向に対向する一対の端の面にそれぞれ配置され、第1の内部電極層3a及び第2の内部電極層3bと電気的に接続される第1の外部電極4a及び第2の外部電極4bを備えているといえる。

ケ 図1、図3によれば、第2の内部電極層3bは、導体部分と、導体部分内に形成された開口部分からなることが見て取れる。
よって、「第2の内部電極3層b」は、導体部分と、導体部分内に形成された開口部分とを有するといえる。

コ 段落【0020】によれば、第1の外部電極4aは第1の内部電極層3aに電気的に接続される。
また、図1、図2によれば、第1の内部電極層3aは、第1の外部電極4aに電気的に接続される接続部分と、第2の外部電極4b側に位置する先端部分と、接続部分と先端部分との間を延伸する延伸部分とを有することが見て取れる。
そして、図2、図3によれば、延伸部分の積層体1の幅方向での幅が、開口部分の積層体1の幅方向での幅より狭いことが見て取れる。
さらに、図2によれば、接続部分の積層体1の幅方向の幅は先端部分及び延伸部分の積層体1の幅方向の幅より大きいことが見て取れる。
よって、「第1の内部電極層3a」は、第1の外部電極4aに電気的に接続される接続部分と、第2の外部電極4b側に位置する先端部分と、接続部分と先端部分との間に延伸し、前記幅方向での幅が開口部分の前記幅方向での幅より狭い延伸部分とを有し、接続部分の積層体1の幅方向の幅は先端部分及び延伸部分の積層体1の幅方向の幅より大きいといえる。

サ 段落【0021】によれば、積層型バリスタは、第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとが対向する部分を一ヵ所有している。
そして、図1ないし図3によれば、積層体1の厚み方向から見て、先端部分の全体が、開口部分内に位置し、かつ、第1の内部電極層3aは、延伸部分において導体部分に重なっていることが見て取れる。
よって、引用文献1に記載された「積層型バリスタ」では、積層体1の厚み方向から見て、先端部分の全体が、開口部分内に位置し、かつ、第1の内部電極層3aは、延伸部分において導体部分に重なっているといえる。

(5)よって、上記「(2)ア、イ、エ」、及び上記「(4)クないしサ」によれば、次の発明(以下、「引用発明2」という。)も記載されている。

「第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとがセラミック層2を挟んで交互に積層して形成され、厚み方向に対向する一対の面と、長さ方向に対向する一対の端の面と、幅方向に対向する一対の面とを有する積層体1と、
前記長さ方向に対向する一対の端の面にそれぞれ配置され、第1の内部電極層3a及び第2の内部電極層3bと電気的に接続される第1の外部電極4a及び第2の外部電極4bと、を備え、
第1及び第2の内部電極層3a,3bの形状が非対称型であり、一層のセラミック層2を挟んで第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとが対向する部分を一ヵ所有し、
第2の内部電極3層bは、導体部分と、導体部分内に形成された開口部分とを有し、
第1の内部電極層3aは、第1の外部電極4aに電気的に接続される接続部分と、第2の外部電極4b側に位置する先端部分と、接続部分と先端部分との間に延伸し、前記幅方向での幅が開口部分の前記幅方向での幅より狭い延伸部分とを有し、接続部分の積層体1の幅方向の幅は先端部分及び延伸部分の積層体1の幅方向の幅より大きく、
前記厚み方向から見て、先端部分の全体が、開口部分内に位置し、かつ、第1の内部電極層3aは、延伸部分において導体部分に重なっている、積層型バリスタ。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、負の抵抗温度係数を有するNTCサーミスタ素子に関し、より詳細には、サーミスタ素体内に複数の内部電極を配置してなるNTCサーミスタ素子の改良に関する。」

「【0021】サーミスタ素体2内には、第1,第2の対向電極を同一平面上において所定のギャップを隔てて対向配置してなる複数の内部電極が形成されている。すなわち、ある高さ位置に、第1の対向電極3aと、第2の対向電極3bとからなる内部電極が形成されており、その下方に、それぞれ、第1の対向電極4a,第2の対向電極4b、第1の対向電極5a,第2の対向電極5b及び第1の対向電極6a,第2の対向電極6bからなる各内部電極が形成されている。
・・・(中略)・・・
【0023】他方、第1の対向電極3aは、セラミック層2aを隔てて厚み方向に隣接する内部電極の第1の対向電極4aと重なり合っている。同様に、第1の対向電極4aは、下方の第1の対向電極5aにも重なり合っている。また、第1の対向電極5aは、その下方の第1の対向電極6aにも重なり合っている。
【0024】上記のように、第1の対向電極3a〜6aが部分的にセラミック層2a,2b,2cを隔てて重なり合わされているため、図1の記号Bで示す部分においては、この対向電極3a〜6aにおいて積層型サーミスタ素子と同様にして抵抗が取り出される。
・・・(中略)・・・
【0033】これに対して、より好ましくは、サーミスタ層を介して重なり合う第1の対向電極の幅を異ならせることにより、得られる抵抗値のばらつきをより一層低減することができる。すなわち、図4(a)及び(b)に示すように、第1の対向電極5aの幅を、第1の対向電極5aとサーミスタ層を介して重なり合う第1の対向電極6aの幅よりも広くした場合、幅方向における積層ずれに起因する抵抗値のばらつきを低減することができる。すなわち、積層や対向電極5a,6aの印刷に際し、幅方向に印刷ずれや積層ずれが生じた場合であっても、第1の対向電極6aが第1の対向電極5aを下方に投影した領域内に位置する限り、第1の対向電極5a,6a間の重なり面積が変動しないため、上記印刷ずれや積層ずれに起因する抵抗値のばらつきを防止することができる。」

図1


図4


(2)引用文献2の上記記載から以下のことがいえる。
ア 段落【0001】によれば、引用文献2には、サーミスタ素体内に複数の内部電極を配置してなるNTCサーミスタ素子が記載されている。

イ 図1、図4によれば、「第1の対向電極5a」、「第2の対向電極6a」の各内部電極は、一方の外部電極と接続される接続部分から他方の外部電極側の先端部分まで同じ幅で形成されることが見て取れる。

(3)上記ア、イによれば、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されている。

「サーミスタ素体内に複数の内部電極を配置してなるNTCサーミスタ素子において、各内部電極を、一方の外部電極と接続される接続部分から他方の外部電極側の先端部分まで同じ幅で形成すること。」

3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、サーミスタを積層型に構成すると、積層時における電極パターンずれによる抵抗値のバラツキが生じる。図10は従来の積層型サーミスタの第1及び第2の内部電極11、12のずれを示すものである。第1及び第2の内部電極11、12はサーミスタ抵抗体13内に埋設され、互いに対向即ち交差するように配置される。第1の内部電極11が図10においてX軸方向(横方向)とY軸方向(縦方向)とのいずれにもずれない場合には第1及び第2の内部電極11、12の対向面積が所望値になり、所望の特性を得ることができる。しかし、図10に示す第1の内部電極11がX軸方向にaだけずれた場合、又はY軸方向にbだけずれた場合には対向面積(交差面積)が変化し、特性も変化する。」

図10


(2)引用文献3の上記記載から以下のことがいえる。
ア 段落【0004】によれば、引用文献3には、サーミスタ抵抗体内に埋設され互いに対向するように配置される第1及び第2の内部電極を備える積層型サーミスタが記載されている。

イ 図10によれば、第1及び第2の内部電極は、抵抗体に露出する部分から先端部分まで同じ幅で形成されることが見て取れる。

(3)上記ア、イによれば、引用文献3には、次の技術事項(以下、「引用文献3に記載された技術」という。)が記載されている。

「サーミスタ抵抗体内に埋設され互いに対向するように配置される第1及び第2の内部電極を備える積層型サーミスタにおいて、第1及び第2の内部電極を、抵抗体に露出する部分から先端部分まで同じ幅で形成すること。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1の「厚み方向に対向する一対の面と、長さ方向に対向する一対の端の面と、幅方向に対抗する一対の面」は、本願発明1の「第一方向で互いに対向する一対の主面と、前記第一方向に直交する第二方向で互いに対向する一対の端面と、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向で互いに対向する一対の側面」に相当する。
そして、引用発明1の「積層体1」は「積層型バリスタ」の素となる構成といえるから、引用発明1の「積層体1」と本願発明1の「サーミスタ素体」とは、「第一方向で互いに対向する一対の主面と、前記第一方向に直交する第二方向で互いに対向する一対の端面と、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向で互いに対向する一対の側面と、を有する素体」である点で共通する。
ただし、素体に関し、本願発明1は「サーミスタ素体」であるのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。

イ 引用発明1の「前記長さ方向に対向する一対の端の面にそれぞれ配置」された「第2の外部電極4b」及び「第1の外部電極4a」は、本願発明1の「対応する前記端面に配置された第一及び第二端子電極」に相当する。

ウ 引用発明1の「積層体1」では「第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとがセラミック層2を挟んで交互に積層して形成」されるのであるから、「第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3b」は、「積層体1」内に配置されているといえる。
また、引用発明1の「第1の内部電極層3a」と「第2の内部電極層3b」は「セラミック層2を挟んで交互に積層」され、「対向する部分を一ヵ所有している」から、「第1の内部電極層3a」と「第2の内部電極層3b」は積層体1の「厚み方向」で対向することは明らかである。
そして、上記「ア」を踏まえれば、引用発明1の「積層体1」内に配置され、積層体1の「厚み方向」で対向する「第2の内部電極層3b」と「第1の内部電極層3a」と、本願発明1の「第一及び第二内部電極」とは、「前記素体内に配置され、前記第一方向で互いに対向する第一及び第二内部電極」である点で共通する。
ただし、第一及び第二内部電極に関し、本願発明1は「サーミスタ素体内」に配置されるのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。

エ 引用発明1の「第2の外部電極4bに電気的に接続されると共に前記幅方向に対向する一対の対向部分」及び「一対の対向部分を結合する結合部分」は、本願発明1の「前記第一端子電極に電気的に接続されていると共に前記第三方向で互いに対向する一対の対向部」及び「前記一対の対向部の間を連結する連結部」にそれぞれ相当する。
よって、引用発明1の「一対の対向部分」及び「結合部分」とを有する「第2の内部電極層3b」は、本願発明1の「一対の対向部」及び「連結部」とを有する「第一内部電極」に相当する。

オ 引用発明1の「第1の外部電極4aに電気的に接続される接続部分」、「第2の外部電極4b側に位置する先端部分」及び「接続部分と先端部分との間に延伸し、前記幅方向での幅が一対の対向部分の前記幅方向での離間幅より狭い延伸部分」は、本願発明1の「前記第二端子電極に電気的に接続されている基端部」、「前記第一端子電極側の先端に位置する先端部」及び「前記基端部と前記先端部との間に延在していると共に前記第三方向での幅が前記一対の対向部の前記第三方向での離間幅よりも狭い幅狭部」にそれぞれ相当する。
よって、引用発明1の「接続部分」、「先端部分」及び「延伸部分」を有する「第1の内部電極3a」は、本願発明1の「基端部」、「先端部」及び「幅狭部」を有する「第二内部電極」に相当する。

カ 引用発明1の「前記厚み方向から見て、先端部分の全体が、一対の対向部分と結合部分に囲まれた範囲内に位置」することは、本願発明1の「前記第一方向から見て、前記先端部の全体は、前記一対の対向部と前記連結部とに囲まれた領域に位置」することに相当する。
また、引用発明1の「第1の内部電極層3aは、延伸部分において結合部分に重なっている」ことは、本願発明1の「前記第二内部電極は、前記幅狭部において前記連結部に重なって」いることに相当する。

キ 本願発明1は、「前記基端部の前記第三方向での幅は、前記先端部及び前記幅狭部の前記第三方向での各幅と同じであ」るのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。

ク 引用発明1の「積層型バリスタ」と本願発明1の「NTCサーミスタ」とは、電子部品である点で共通する。
ただし、電子部品に関し、本願発明1は「NTCサーミスタ」であるのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。

上記アないしクによれば、本願発明1と引用発明1との一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「第一方向で互いに対向する一対の主面と、前記第一方向に直交する第二方向で互いに対向する一対の端面と、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向で互いに対向する一対の側面と、を有する素体と、
対応する前記端面に配置された第一及び第二端子電極と、
前記素体内に配置され、前記第一方向で互いに対向する第一及び第二内部電極と、を備え、
前記第一内部電極は、前記第一端子電極に電気的に接続されていると共に前記第三方向で互いに対向する一対の対向部と、前記一対の対向部の間を連結する連結部と、を有し、
前記第二内部電極は、前記第二端子電極に電気的に接続されている基端部と、前記第一端子電極側の先端に位置する先端部と、前記基端部と前記先端部との間に延在していると共に前記第三方向での幅が前記一対の対向部の前記第三方向での離間幅よりも狭い幅狭部と、を有し、
前記第一方向から見て、前記先端部の全体は、前記一対の対向部と前記連結部とに囲まれた領域に位置しており、且つ、前記第二内部電極は、前記幅狭部において前記連結部に重なっている、電子部品。」

(相違点1)
素体に関し、本願発明1は「サーミスタ素体」であるのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。
(相違点2)
第一及び第二内部電極に関し、本願発明1は「サーミスタ素体内」に配置されるのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。
(相違点3)
本願発明1は、「前記基端部の前記第三方向での幅は、前記先端部及び前記幅狭部の前記第三方向での各幅と同じであ」るのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。
(相違点4)
電子部品に関し、本願発明1は「NTCサーミスタ」であるのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
ア 上記「第5」「2」「3」に示したように、引用文献2には、「サーミスタ素体内に複数の内部電極を配置してなるNTCサーミスタ素子において、各内部電極を、一方の外部電極と接続される接続部分から他方の外部電極側の先端部分まで同じ幅で形成すること」の技術が、引用文献3には、「サーミスタ抵抗体内に埋設され互いに対向するように配置される第1及び第2の内部電極を備える積層型サーミスタにおいて、第1及び第2の内部電極を、抵抗体に露出する部分から先端部分まで同じ幅で形成すること」の技術がそれぞれ記載されており、各技術からすれば、サーミスタにおいて、内部電極の一端の部分から他端の部分まで同じ幅で形成することは周知の技術であるといえる。

イ ここで、引用発明1は「接続部分の前記幅方向の幅は先端部分及び延伸部分の前記幅方向の幅より大き」いところ、引用文献1の段落【0038】には、「(8)実施の形態1〜3に示したように、第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとが一層のセラミック層2を介して対向している部分の最大幅より、第1の外部電極4a及び第2の外部電極4bと接続される部分の幅の方を大きくした方が低容量でかつ第1及び第2の内部電極層3a,3bと第1及び第2の外部電極4a,4bとの電気的接続が確実なものとなる。」と記載されており、引用発明1の「接続部分の前記幅方向の幅」を「先端部分及び延伸部分の前記幅方向の幅」と同じ幅とした場合、「低容量」かつ「外部電極」との「電気的接続が確実となること」が困難となることは明らかである。

ウ したがって、引用発明1において、「接続部分の前記幅方向の幅」を「先端部分及び延伸部分の前記幅方向の幅」と同じ幅とすることには阻害要因があり、サーミスタにおいて、内部電極の一端の部分から他端の部分まで同じ幅で形成することが周知の技術であり、また、引用文献1の段落【0037】に電子部品としてサーミスタが例示されているとしても、引用発明1においてそのような構成を採用することは、当業者に動機付けられないことである。

エ よって、相違点3に係る構成は、引用発明1、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。

(3)まとめ
以上のとおり、相違点1、2、4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4に係る請求項2ないし4は、いずれも請求項1を引用している。
よって、本願発明2ないし4も上記相違点3に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明5について
(1)対比
本願発明5と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明2の「厚み方向に対向する一対の面と、長さ方向に対向する一対の端の面と、幅方向に対抗する一対の面」は、本願発明5の「第一方向で互いに対向する一対の主面と、前記第一方向に直交する第二方向で互いに対向する一対の端面と、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向で互いに対向する一対の側面」に相当する。
そして、引用発明2の「積層体1」は「積層型バリスタ」の素となる構成といえるから、引用発明2の「積層体1」と本願発明5の「サーミスタ素体」とは、「第一方向で互いに対向する一対の主面と、前記第一方向に直交する第二方向で互いに対向する一対の端面と、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向で互いに対向する一対の側面と、を有する素体」である点で共通する。
ただし、素体に関し、本願発明5は「サーミスタ素体」であるのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。

イ 引用発明2の「前記長さ方向に対向する一対の端の面にそれぞれ配置され」る「第2の外部電極4b」及び「第1の外部電極4a」は、本願発明5の「対応する前記端面に配置された第一及び第二端子電極」に相当する。

ウ 引用発明2の「積層体1」では「第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3bとがセラミック層2を挟んで交互に積層して形成」されるのであるから、「第1の内部電極層3aと第2の内部電極層3b」は、「積層体1」内に配置されているといえる。
そして、引用発明2において、「第1の内部電極層3a及び第2の内部電極層3b」は「第1の外部電極4a及び第2の外部電極4b」と電気的に接続される。
さらに、引用発明2の「第1の内部電極層3a」と「第2の内部電極層3b」は「セラミック層2を挟んで交互に積層」され、「対向する部分を一ヵ所有している」から、「第1の内部電極層3a」と「第2の内部電極層3b」は積層体1の「厚み方向」で対向することは明らかである。
してみると、上記「ア」も踏まえれば、引用発明2の「積層体1」内に配置され、「第2の外部電極4b」及び「第1の外部電極4a」と電気的に接続され、積層体1の「厚み方向」で対向する「第2の内部電極層3b」及び「第1の内部電極層3a」と、本願発明5の「第一及び第二内部電極」とは、「前記素体内に配置され、対応する前記第一及び第二端子電極に電気的に接続されていると共に、前記第一方向で互いに対向する第一及び第二内部電極」である点で共通する。
ただし、第一及び第二内部電極に関し、本願発明5は「サーミスタ素体内」に配置されるのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。

エ 引用発明2の「導体部分」及び「導体部分内に形成された開口部分」は、本願発明5の「導体部」と「導体部の内側に形成された開口部」にそれぞれ相当する。
よって、引用発明2の「導体部分」及び「導体部分内に形成された開口部分」とを有する「第2の内部電極層3b」は、本願発明5の「導体部」及び「開口部」とを有する「第一内部電極」に相当する。

オ 引用発明2の「前記幅方向での幅が開口部分の前記幅方向での幅より狭い延伸部分」は、本願発明5の「前記第三方向での幅が前記開口部の前記第三方向での幅よりも狭い幅狭部」に相当する。
引用発明2の「延伸部分」は「接続部分と先端部分との間に延伸」するのであるから、「第2の外部電極4b側に位置する先端部分」及び「第1の外部電極4aに電気的に接続される接続部分」は、「延伸部分」に連結されているといえ、本願発明5の「前記幅狭部に連結されていると共に前記第一端子電極側の先端に位置する先端部」及び「前記幅狭部に連結されていると共に前記第二端子電極側に位置する基端部」に相当する。
よって、引用発明2の「延伸部分」、「先端部分」及び「接続部分」を有する「第1の内部電極層3a」は、本願発明5の「幅狭部」、「先端部」及び「基端部」を有する「第二内部電極」に相当する。

カ 引用発明2の「前記厚み方向から見て、先端部分の全体が、開口部分内に位置」することは、本願発明5の「前記第一方向から見て、前記先端部の全体が前記開口部の中に位置」することに相当する。
また、引用発明2の「第1の内部電極層3aは、延伸部分において導体部分に重なっている」ことは、本願発明5の「前記第二内部電極は、前記幅狭部において前記導体部に重なって」いることに相当する。

キ 本願発明5は、「前記基端部の前記第三方向での幅は、前記先端部及び前記幅狭部の前記第三方向での各幅と同じであり、かつ、前記開口部の前記第三方向での前記幅よりも狭い」のに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。

ク 引用発明2の「積層型バリスタ」と本願発明5の「NTCサーミスタ」とは、電子部品である点で共通する。
ただし、電子部品に関し、本願発明5は「NTCサーミスタ」であるのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。

上記アないしクによれば、本願発明5と引用発明2との一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「第一方向で互いに対向する一対の主面と、前記第一方向に直交する第二方向で互いに対向する一対の端面と、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向で互いに対向する一対の側面と、を有する素体と、
対応する前記端面に配置された第一及び第二端子電極と、
前記素体内に配置され、対応する前記第一及び第二端子電極に電気的に接続されていると共に、前記第一方向で互いに対向する第一及び第二内部電極と、を備え、
前記第一内部電極は、導体部と、前記導体部の内側に形成された開口部と、を有し、
前記第二内部電極は、前記第三方向での幅が前記開口部の前記第三方向での幅よりも狭い幅狭部と、前記幅狭部に連結されていると共に前記第一端子電極側の先端に位置する先端部と、前記幅狭部に連結されていると共に前記第二端子電極側に位置する基端部と、を有し、
前記第一方向から見て、前記先端部の全体が前記開口部の中に位置しており、且つ、前記第二内部電極は、前記幅狭部において前記導体部に重なっている、電子部品。」

(相違点5)
素体に関し、本願発明5は「サーミスタ素体」であるのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。
(相違点6)
第一及び第二内部電極に関し、本願発明5は「サーミスタ素体内」に配置されるのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。
(相違点7)
本願発明5は「前記基端部の前記第三方向での幅は、前記先端部及び前記幅狭部の前記第三方向での各幅と同じであり、かつ、前記開口部の前記第三方向での前記幅よりも狭い」のに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。
(相違点8)
電子部品に関し、本願発明5は「NTCサーミスタ」であるのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点7について検討する。
相違点7は、「前記基端部の前記第三方向での幅は、前記先端部及び前記幅狭部の前記第三方向での各幅と同じであ」るとの相違点3を含むものである。
してみれば、相違点7に係る構成は、上記「1(2)」で述べた理由と同じ理由により、引用発明2、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、相違点5、6、8について判断するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても引用発明2、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-03-29 
出願番号 P2017-109913
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01C)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 畑中 博幸
棚田 一也
発明の名称 NTCサーミスタ  
代理人 三上 敬史  
代理人 黒木 義樹  
代理人 長谷川 芳樹  

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