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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1383931
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-10 
確定日 2022-04-26 
事件の表示 特願2019−231899「ICタグ発行方法及びICタグ発行装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月26日出願公開、特開2020− 47311、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)3月31日を出願日とする特願2014−71351号の一部を,平成29年4月18日に新たな特許出願とした特願2017−81838号の一部を,平成30年10月26日に新たな特許出願とした特願2018−202232号の一部を,令和1年12月23日に新たな特許出願としたものであって,令和2年1月22付けで上申書が提出されるとともに手続補正がされ,令和2年12月3日付けで拒絶理由が通知され,令和3年3月23日付けで意見書が提出されたが,令和3年6月15日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和3年8月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和3年10月12日付けで上申書が提出され,令和4年2月4日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,令和4年2月16日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1−21に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」−「本願発明21」という。)は,令和4年2月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−21に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
幅方向に複数列配置されてICタグ連続体として整列しているICタグを前処理搬送部に当接するように載置して吸引しながら搬送し、前記ICタグ連続体に含まれる前記ICタグのうち前記前処理搬送部に載置される位置にあって前記前処理搬送部に吸引されて密着しながら搬送されている前記ICタグに識別データを書き込む前処理工程と、
前記ICタグを後処理搬送部に当接するように載置して吸引しながら搬送し、前記ICタグ連続体に含まれる前記ICタグのうち前記後処理搬送部に載置される位置にあって前記後処理搬送部に吸引されて密着しながら搬送されている前記ICタグに書き込まれた前記識別データを読み取って検証する後処理工程と、
を含むICタグ発行方法。」

なお,本願発明2−10は,本願発明1を減縮した発明である。
また,本願発明11は,本願発明1の構成を実質的に含む「ICタグ発行装置」の発明である。
また,本願発明12−21は,本願発明11を減縮した発明である。

第3 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009−251897号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0010】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態について、図1〜図7を用いて説明する。本実施の形態の無線タグ発行装置1は、図1の概略図によってその構成が示される。図示するように、無線タグ発行装置1は、制御部2、操作パネル3、通信インターフェイス4、記憶部5、ヘッドドライバ6、RFIDリーダ/ライタ7、搬送モータ8及びセンサ信号入力部9を備えている。また、図示しないが、ロール状に巻回されたラベル用紙10を保持するためのホルダを備えている。そして、このホルダから引き出されたラベル用紙10の搬送経路に沿って、ホルダ側である上流より、搬送ローラ11、第1のアンテナ12、プラテンローラ13及び第2のアンテナ14が順に配置されている。さらに、搬送ローラ11に対してガイドローラ15が対向して配置されている。また、プラテンローラ13に対して印字ヘッド16が対向して配置されている。しかして、ホルダから引き出されたラベル用紙10は、搬送ローラ11とガイドローラ15との間を通り、第1のアンテナ12の近傍を通過し、プラテンローラ13と印字ヘッド16との間を通り、第2のアンテナ14の近傍を通過して、装置外部に排出されるようになっている。
【0011】
ラベル用紙10は、図2に示すように、帯状の台紙21と、この台紙21の表面に、台紙21の長手方向に一列に整列させて剥離自在に貼り付けられた多数の無線タグ22とから構成されている。無線タグ22は、ICチップ23とアンテナ24とからなるインレット25を有する。インレット25は、無線タグ22の表面を形成するシートと裏面を形成するシートとの間に挟み込まれている。裏面を形成するシートは接着面となっており、表面を形成するシートは印字面となっている。
【0012】
印字ヘッド16は、例えばサーマルプリンタであり、ヘッドドライバ6からの信号に応じて上記無線タグ22の表面である印字面に可視情報を印字する。印字ヘッド16とラベル用紙10との間に、インクリボンが介在してもよい。
【0013】
ここに、印字ヘッド16は、第1のアンテナ12と第2のアンテナ14との間に設けられ、無線タグ22の表面に可視情報を印字する印字手段を構成する。
【0014】
搬送ローラ11及びプラテンローラ13は、搬送モータ8の動力により回転駆動する。搬送ローラ11及びプラテンローラ13は、例えばギアの切替により正転及び逆転が自在である。搬送ローラ11及びプラテンローラ13が共に正転することによって、ラベル用紙10は、図1中矢印A方向に搬送される。これにより、ラベル用紙10上の各無線タグ22は、図2に示すように、先ず、第1のアンテナ12の上を通過し、次に、プラテンローラ13と印字ヘッド16との間を通過し、さらに第2のアンテナ14の上を通過する。一方、搬送ローラ11及びプラテンローラ13が共に逆転することによって、ラベル用紙10は、矢印A方向とは逆方向に搬送される。このとき、ホルダに巻回されているロール状のラベル用紙は回転しない。その結果、ラベル用紙10は、搬送ローラ11とホルダとの間で撓む。
【0015】
ここに、搬送モータ8と、プラテンローラ13及び搬送ローラ11とは、ICチップ23とアンテナ24とからなるインレット25を有する複数の無線タグ22を順次搬送する搬送手段を構成する。
【0016】
第1のアンテナ12及び第2のアンテナ14は、RFIDリーダ/ライタ7に接続されている。第1のアンテナ12は、該アンテナ12から放射される電波がその直上を通過する無線タグ22のアンテナ24で受信されるように、電波強度、指向性等の電波放射特性が設定されている。同様に、第2の第1のアンテナ14は、該アンテナ14から放射される電波がその直上を通過する無線タグ22のアンテナ24で受信されるように、電波放射特性が設定されている。第1のアンテナ12及び第2のアンテナ14としては、ダイポールアンテナやパッチアンテナ等を使用可能である。無線タグ発行装置1の形状や、使用される無線タグ22のインレット25の種類などにより任意に選択できる。
【0017】
RFIDリーダ/ライタ7は、無線タグ22に対する書込みデータで搬送波を変調し、この変調波を電波として第1のアンテナ12から放射させる。そうすることにより、第1のアンテナ12の直上を通過する無線タグ22のICチップ23に実装されたメモリにデータが非接触で書き込まれる。また、RFIDリーダ/ライタ7は、第2のアンテナ14で受信した無線タグ22からの信号を復調する。そうすることにより、第2のアンテナ14の直上を通過する無線タグ22のICチップ23に実装されたメモリに書き込まれているデータが非接触で読み取られる。ここに、第1のアンテナ12は、情報書込用のアンテナとして機能する。第2のアンテナ14は、情報読取用のアンテナとして機能する。
【0018】
第1のアンテナ12と第2のアンテナ14は、プラテンローラ13を挟んで、ラベル用紙10の搬送方向上流側と下流側にそれぞれ配置されている。ここで、第1のアンテナ12と第2のアンテナ14との間隔d1は、ラベル用紙10に等間隔で貼り付けられた無線タグ22のラベル用紙搬送方向に対して前後のインレット25間の距離d2よりも小さくなるように設計されている。
【0019】
図示しないが、ラベル用紙10の搬送経路には、複数のセンサが配置されており、ラベル用紙10と一体となって順次搬送される無線タグ22の先端又は後端を検知する。これらのセンサで検知された信号は、センサ信号入力部9を介して制御部2に入力される。
【0020】
制御部2は、CPU(Central Processing Unit)を主体に構成されている。操作パネル3には、キーボード、ディスプレイ等の入出力機器が設けられている。通信インターフェイス4には、ラベルデータを生成するためのホスト機器が接続されている。
【0021】
ラベルデータは、無線タグ22のメモリに書き込まれる個体識別情報と、無線タグ22の印字面に印字される可視情報とからなる。個体識別情報と可視情報は、1対1で対応している。ホスト機器で生成されたラベルデータ(個体識別情報、可視情報)は、通信インターフェイス4を介して制御部2に取り込まれ、記憶部5に順次記憶される。こうして、記憶部5に複数のラベルデータが記憶されている状態で、操作パネル3の操作入力、またはホスト機器からのコマンド入力により、RFIDラベルの発行指令が与えられると、制御部2は、図3の流れ図に示す手順で各部を制御する。この制御手順は、予め記憶部5に記憶されたプログラムにより実現される。
【0022】
先ず、制御部2は、ST(ステップ)1として搬送モータ8を含む搬送手段を制御して、ラベル用紙10を正転方向(図1中矢印A方向)に搬送させる。そして、ST2としていずれかの無線タグ22のインレット25が、第1のアンテナ12の直上である通信位置(第1アンテナ位置)に到来するのを待機する。センサ信号入力部9を介して入力されるセンサ信号により、上記インレット25が第1のアンテナ12の通信位置に到来したと判断すると、制御部2は、ST3として記憶部5に記憶されているタグデータの1つを、記憶した順番に読出す。そして、ST4としてそのタグデータのうちの個体識別情報をRFIDリーダ/ライタ7に送出する。これにより、RFIDリーダ/ライタ7の制御によって第1のアンテナ12から個体識別情報に基づく変調波が放射されて、第1のアンテナ12の通信位置に到来しているインレット25のメモリに個体識別情報が書き込まれる。
【0023】
次に、制御部2は、ST5として個体識別情報が書き込まれた無線タグ22の先端が、印字ヘッド16による印字位置(プリンタ位置)に到来するのを待機する。そして、センサ信号入力部9を介して入力されるセンサ信号により、上記無線タグ22の先端が印字位置に到来したと判断すると、制御部2は、ST6として当該個体識別情報に対応したタグデータの可視情報をヘッドドライバ6に送出する。これにより、印字ヘッド16が動作して、上記無線タグ22の表面である印刷面に、可視情報が印刷される。
【0024】
次に、制御部2は、ST7として可視情報が印刷された無線タグ22のインレット25が、第2のアンテナ14の直上である通信位置(第2アンテナ位置)に到来するのを待機する。センサ信号入力部9を介して入力されるセンサ信号により、上記インレット25が第2のアンテナ14の通信位置に到来したと判断すると、制御部2は、ST8としてタグメモリデータの問合せコマンドをRFIDリーダ/ライタ7に出力する。これにより、RFIDリーダ/ライタ7の制御によって第2のアンテナ14から問合せコマンドに基づく変調波が放射されて、第2のアンテナ14の通信位置に到来しているインレット25のメモリに記憶されているデータが非接触で読み取られる。このデータは、RFIDリーダ/ライタ7を介して制御部2に入力される。
【0025】
そこで制御部2は、ST9として当該無線タグ22に対してデータが正常に書き込まれたか否かを判断する。すなわち、無線タグ22から読み取ったタグメモリデータを、ST3の処理で記憶部5から読み出したタグデータの個体識別情報と照合して、一致するか否かを判断する。当該無線タグ22に対し、ST4の処理でデータが正常に書き込まれている場合には、両者は一致する。換言すれば、当該無線タグ22に対してデータが正常に書き込まれていない場合には、両者は一致しない。一致する場合には、書込み正常と判断する。一致しない場合には、書込みエラーと判断する。」

イ 「図1



ウ 「図2




エ 「図3




オ したがって,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「制御部2を備えている無線タグ発行装置1であって,(段落0010,図1)
ロール状に巻回されたラベル用紙10を保持するためのホルダを備え,(段落0010,図1)
このホルダから引き出されたラベル用紙10の搬送経路に沿って,ホルダ側である上流より,搬送ローラ11,第1のアンテナ12,プラテンローラ13及び第2のアンテナ14が順に配置され,(段落0010,図1)
搬送ローラ11に対してガイドローラ15が対向して配置され,プラテンローラ13に対して印字ヘッド16が対向して配置され,ホルダから引き出されたラベル用紙10は,搬送ローラ11とガイドローラ15との間を通り,第1のアンテナ12の近傍を通過し,プラテンローラ13と印字ヘッド16との間を通り,第2のアンテナ14の近傍を通過して,装置外部に排出され,(段落0010,図1)
ラベル用紙10は,帯状の台紙21と,この台紙21の表面に,台紙21の長手方向に一列に整列させて剥離自在に貼り付けられた多数の無線タグ22とから構成され,(段落0011,図2)
搬送ローラ11及びプラテンローラ13は,搬送モータ8の動力により回転駆動し,(段落0014),
搬送ローラ11及びプラテンローラ13が共に正転することによって,ラベル用紙10は搬送され,これにより,ラベル用紙10上の各無線タグ22は,先ず,第1のアンテナ12の上を通過し,次に,プラテンローラ13と印字ヘッド16との間を通過し,さらに第2のアンテナ14の上を通過し,(段落0014,図2)
搬送モータ8と,プラテンローラ13及び搬送ローラ11とは,ICチップ23とアンテナ24とからなるインレット25を有する複数の無線タグ22を順次搬送する搬送手段を構成し,(段落0015)
第1のアンテナ12と第2のアンテナ14は,プラテンローラ13を挟んで,ラベル用紙10の搬送方向上流側と下流側にそれぞれ配置されている(段落0018,図1)
無線タグ発行装置1において,(図1)
制御部2は,(段落0022)
搬送モータ8を含む搬送手段を制御して,ラベル用紙10を正転方向に搬送させ,(段落0022,図3のST1)
いずれかの無線タグ22のインレット25が,第1のアンテナ12の直上である通信位置(第1アンテナ位置)に到来するのを待機し,(段落0022,図3のST2)
上記インレット25が第1のアンテナ12の通信位置に到来したと判断すると,記憶部5に記憶されているタグデータの1つを,記憶した順番に読出し,(段落0022,図3のST3)
そのタグデータのうちの個体識別情報をRFIDリーダ/ライタ7に送出し,RFIDリーダ/ライタ7の制御によって第1のアンテナ12から個体識別情報に基づく変調波が放射されて,第1のアンテナ12の通信位置に到来しているインレット25のメモリに個体識別情報が書き込まれ,(段落0022,図3のST4)
次に,無線タグ22のインレット25が,第2のアンテナ14の直上である通信位置(第2アンテナ位置)に到来するのを待機し,(段落0024,図3のST7)
上記インレット25が第2のアンテナ14の通信位置に到来したと判断すると,タグメモリデータの問合せコマンドをRFIDリーダ/ライタ7に出力し,RFIDリーダ/ライタ7の制御によって第2のアンテナ14から問合せコマンドに基づく変調波が放射されて,第2のアンテナ14の通信位置に到来しているインレット25のメモリに記憶されているデータが非接触で読み取られ,このデータは,RFIDリーダ/ライタ7を介して制御部2に入力され,(段落0024,図3のST8)
無線タグ22から読み取ったタグメモリデータを,ST3の処理で記憶部5から読み出したタグデータの個体識別情報と照合して,一致するか否かを判断し,一致する場合には,書込み正常と判断し,一致しない場合には,書込みエラーと判断する(段落0025,図3のST9)
方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平8−091624号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0011】図2および図3は搬送装置20の詳細を示す。この搬送位置20は、複数のガイドローラ21、22、23によって案内されるエンドレスの搬送ベルト24と、その搬送ベルト24の内側に設けられたサクションボックス25とを有し、上記搬送ベルト24には全体にわたって多数の小孔26が形成されている。
【0012】複数のガイドローラ21、22、23のうち、1つのガイドローラ22はモータ27によって駆動される。その駆動によって搬送ベルト24が矢印の方向に移動される。
【0013】サクションボックス25は、搬送ベルト24のキャリア側ベルト24aを支持するベルト案内板28を有し、そのベルト案内板28に吸引孔29が設けられている。
【0014】また、サクションボックス25には吸引ファン30が接続され、その吸引ファン30の駆動によってサクションボックス25の内部のエアは吸引排気される。そのエアの吸引排気によって吸引孔29に吸引力が付与されると共に、キャリア側ベルト24aの小孔26に吸引力が付与される。
【0015】このため、搬送ベルト24のキャリア側ベルト24a上に送り込まれた印画紙片P1は小孔26に作用する吸引力によってベルト表面に吸着され、搬送ベルト24の移動によって吸着搬送される。」

イ 「図2



ウ 「図3



エ したがって,上記引用文献2には,「複数のガイドローラ21,22,23によって案内されるエンドレスの搬送ベルト24と,その搬送ベルト24の内側に設けられたサクションボックス25とを有し,上記搬送ベルト24には全体にわたって多数の小孔26が形成され,サクションボックス25は,搬送ベルト24のキャリア側ベルト24aを支持するベルト案内板28を有し,そのベルト案内板28に吸引孔29が設けられ,サクションボックス25には吸引ファン30が接続され,その吸引ファン30の駆動によってサクションボックス25の内部のエアは吸引排気され,そのエアの吸引排気によって吸引孔29に吸引力が付与されると共に,キャリア側ベルト24aの小孔26に吸引力が付与され,搬送ベルト24のキャリア側ベルト24a上に送り込まれた印画紙片P1は小孔26に作用する吸引力によってベルト表面に吸着され,搬送ベルト24の移動によって吸着搬送される搬送装置20。」という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2011−110777号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【背景技術】【0002】
プリンタの排出口近傍にスキャナを設け、被印字媒体に対して印字されたバーコードを読取る検出部を備えたプリンタが知られている。(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02−202465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スキャナの照明部から出射される光量は一定であるため印字媒体の搬送速度が変化する(搬送速度が速くなる)とバーコードに対する露光量が過不足となり、読取エラーが多発することがあった。このため読取り対象となるバーコードが印字された印字媒体をスキャナで読取り可能な露光量に合わせた遅い搬送速度(印字速度)で搬送するか、又はスキャナでの読取りのタイミングで搬送を一旦停止し、読取り後に搬送を再開する間欠搬送動作により対応していた。しかしながら、搬送速度を遅くしたり、間欠搬送にするとプリンタでの単位時間当たりの発行量が減少する問題があった。
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、プリンタの搬送速度を変更しても印字媒体に印字された識別コードを確実に読取ることが可能な検証装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、連続紙に識別コードを含む情報を印字するプリンタに接続され、プリンタから排出される連続紙上に印字された識別コードの判読判定を行う検証装置であって、プリンタから排出される連続紙を装置内に挿入する挿入口と、前記挿入口から挿入された連続紙を搬送する搬送手段と、連続紙の位置を検出する検出手段と、搬送される連続紙の搬送速度を検出する速度検出手段と、前記速度検出手段が検出した搬送速度に基づき識別コードに照射すべき照射量を決定する照射量決定手段と、前記照射量決定手段によって決定された照射量に基づき、光を照射する照射部と、前記照射部により照射した識別コードの情報を解析する解析手段と、前記解析手段によって識別コードが読取不可と判断されたときに連続紙にエラー印字を行うエラー印字手段と、
を有することを特徴とする。
前記照射量決定手段による照射量は連続紙の搬送速度に対して決められた照射量テーブルが記憶された記憶手段から読み出すことを特徴とする。
前記搬送手段はトルクリミッタを備えていることを特徴とする。
前記挿入口の高さをプリンタの排出口に合わせて調整可能な高さ調整部材を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の検証装置において、プリンタでの搬送速度が変化しても搬送速度を検出し、検出した搬送速度に対応する最適な照射量を照明部から出射するように制御することによって、プリンタの搬送速度を変更しても連続紙に印字された識別コードを確実に読取ることができる。」


第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明の「無線タグ22」は,本願発明1の「ICタグ」に相当する。
引用発明の「ラベル用紙10」は,「帯状の台紙21と,この台紙21の表面に,台紙21の長手方向に一列に整列させて剥離自在に貼り付けられた多数の無線タグ22とから構成され」たものであり,ICタグが連なった“連続体”といえるから,本願発明1の「ICタグ連続体」に相当する。
したがって,引用発明の「ラベル用紙10」における「台紙21の長手方向に一列に整列させて剥離自在に貼り付けられた多数の無線タグ22」は,本願発明1の「ICタグ連続体として整列しているICタグ」に相当する。

イ 引用発明の「インレット25のメモリ」に書き込まれる「個体識別情報」は,本願発明1の「識別データ」に相当し,引用発明において,「個体識別情報」を「インレット25のメモリ」に書き込むことは,「個体識別情報」を「無線タグ22」に書き込むことに他ならないから,引用発明の「インレット25が第1のアンテナ12の通信位置に到来したと判断すると,記憶部5に記憶されているタグデータの1つを,記憶した順番に読出し」,「第1のアンテナ12の通信位置に到来しているインレット25のメモリに個体識別情報が書き込まれ」る“工程”は,本願発明1の「前記ICタグに識別データを書き込む前処理工程」に相当する。
ここで,引用発明の「第1のアンテナ12の通信位置に到来しているインレット25」は,「ラベル用紙10」において「台紙21の長手方向に一列に整列させて剥離自在に貼り付けられた多数の無線タグ22」に“含まれる”ものであり,また,「搬送ローラ11」及び「プラテンローラ13」によって“搬送されている”ものであるから,本願発明1の「前記ICタグ連続体に含まれる」,「搬送されている前記ICタグ」に相当する。

ウ 引用発明の「搬送ローラ11」及び「プラテンローラ13」は,「ICチップ23とアンテナ24とからなるインレット25を有する複数の無線タグ22を順次搬送する搬送手段」を構成するものであり,「搬送ローラ11」及び「プラテンローラ13」が共に正転することによって,ラベル用紙10は搬送され,これにより,ラベル用紙10上の各無線タグ22を,上記「個体識別情報が書き込まれ」る“工程”(前処理工程)を実行するための「第1のアンテナ12」の上を通過するように搬送するものであるから,引用発明の「搬送ローラ11」及び「プラテンローラ13」は本願発明1の「前処理搬送部」に相当する。
そして,引用発明では,「ホルダから引き出されたラベル用紙10」は,「搬送ローラ11とガイドローラ15との間を通り,第1のアンテナ12の近傍を通過し,プラテンローラ13と印字ヘッド16との間を通り,第2のアンテナ14の近傍を通過して,装置外部に排出され」るから,本願発明1と引用発明とは,“ICタグを,前処理搬送部に当接しながら搬送”している点で共通するといえる。

エ 上記ア〜ウの検討から,引用発明の「インレット25が第1のアンテナ12の通信位置に到来したと判断すると,記憶部5に記憶されているタグデータの1つを,記憶した順番に読出し」,「第1のアンテナ12の通信位置に到来しているインレット25のメモリに個体識別情報が書き込まれ」る“工程”と本願発明1の「幅方向に複数列配置されてICタグ連続体として整列しているICタグを前処理搬送部に当接するように載置して吸引しながら搬送し,前記ICタグ連続体に含まれる前記ICタグのうち前記前処理搬送部に載置される位置にあって前記前処理搬送部に吸引されて密着しながら搬送されている前記ICタグに識別データを書き込む前処理工程」とは,後記する点で相違するものの,“ICタグ連続体として整列しているICタグを前処理搬送部に当接しながら搬送し,前記ICタグ連続体に含まれる,搬送されている前記ICタグに識別データを書き込む前処理工程”である点で共通する。

オ 引用発明の「第2のアンテナ14の通信位置に到来しているインレット25のメモリに記憶されているデータ」であって,第2のアンテナ14によって「無線タグ22から読み取」られる「タグメモリデータ」は,第1のアンテナ12によって書き込まれた「個体識別情報」に対応するものであるから,本願発明1の「前記ICタグに書き込まれた前記識別データ」に相当する。
そして,引用発明において,「タグメモリデータ」を「ST3の処理で記憶部5から読み出したタグデータの個体識別情報と照合して,一致するか否かを判断」することは,本願発明1の「前記ICタグに書き込まれた前記識別データを読み取って検証する」ことに相当する。
したがって,引用発明の「第2のアンテナ14の通信位置に到来しているインレット25のメモリに記憶されているデータが非接触で読み取られ」,「無線タグ22から読み取ったタグメモリデータを,ST3の処理で記憶部5から読み出したタグデータの個体識別情報と照合して,一致するか否かを判断」する“工程”は,本願発明1の「前記ICタグに書き込まれた前記識別データを読み取って検証する後処理工程」に相当する。
ここで,引用発明の「第2のアンテナ14の通信位置に到来しているインレット25」は,「ラベル用紙10」において「台紙21の長手方向に一列に整列させて剥離自在に貼り付けられた多数の無線タグ22」に“含まれる”ものであり,また,「搬送ローラ11」及び「プラテンローラ13」によって“搬送されている”ものであるから,本願発明1の「前記ICタグ連続体に含まれる」,「搬送されている前記ICタグ」に相当する。

カ 引用発明の「搬送ローラ11」及び「プラテンローラ13」は,「ICチップ23とアンテナ24とからなるインレット25を有する複数の無線タグ22を順次搬送する搬送手段」を構成するものであり,「搬送ローラ11」及び「プラテンローラ13」が共に正転することによって,ラベル用紙10は搬送され,これにより,ラベル用紙10上の各無線タグ22を,上記「インレット25のメモリに記憶されているデータが非接触で読み取られ」る“工程”(後処理工程)を実行するための「第2のアンテナ14」の上を通過するように搬送するものであるから,引用発明の「搬送ローラ11」及び「プラテンローラ13」は本願発明1の「後処理搬送部」に相当する。
そして,引用発明では,「ホルダから引き出されたラベル用紙10」は,「搬送ローラ11とガイドローラ15との間を通り,第1のアンテナ12の近傍を通過し,プラテンローラ13と印字ヘッド16との間を通り,第2のアンテナ14の近傍を通過して,装置外部に排出され」るから,本願発明1と引用発明とは,“ICタグを後処理搬送部に当接しながら搬送”している点で共通するといえる。

キ 上記オ,カの検討から,引用発明の「第2のアンテナ14の通信位置に到来しているインレット25のメモリに記憶されているデータが非接触で読み取られ」,「無線タグ22から読み取ったタグメモリデータを,ST3の処理で記憶部5から読み出したタグデータの個体識別情報と照合して,一致するか否かを判断」する“工程”と本願発明1の「前記ICタグを後処理搬送部に当接するように載置して吸引しながら搬送し,前記ICタグ連続体に含まれる前記ICタグのうち前記後処理搬送部に載置される位置にあって前記後処理搬送部に吸引されて密着しながら搬送されている前記ICタグに書き込まれた前記識別データを読み取って検証する後処理工程」とは,後記する点で相違するものの,“前記ICタグを後処理搬送部に当接しながら搬送し,前記ICタグ連続体に含まれる,搬送されている前記ICタグに書き込まれた前記識別データを読み取って検証する後処理工程”である点で共通する。

ク 引用発明の「方法」は,「無線タグ発行装置1」の制御部2によって実行される方法であるから,本願発明1の「ICタグ発行方法」に対応する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「ICタグ連続体として整列しているICタグを前処理搬送部に当接しながら搬送し,前記ICタグ連続体に含まれる,搬送されている前記ICタグに識別データを書き込む前処理工程と,
前記ICタグを後処理搬送部に当接しながら搬送し,前記ICタグ連続体に含まれる,搬送されている前記ICタグに書き込まれた前記識別データを読み取って検証する後処理工程と,
を含むICタグ発行方法。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1の「ICタグ連続体」は,ICタグが「幅方向に複数列配置されて」整列しているのに対して,引用発明の「ラベル用紙10」は,無線タグが長手方向に一列に整列している点。

(相違点2)本願発明1の前処理搬送部は,ICタグを「載置して吸引」しながら搬送し,前処理工程で識別データが書き込まれるICタグは,「前記前処理搬送部に載置される位置にあって前記前処理搬送部に吸引されて密着しながら搬送されている」のに対して,引用発明の搬送ローラ11及びプラテンローラ13は,無線タグ22を「載置して吸引」するものではなく,また,アンテナ12の通信位置で個体識別情報が書き込まれる無線タグ22は,搬送ローラ11及びプラテンローラ13に「載置される位置にあって」,搬送ローラ11及びプラテンローラ13に「吸引されて密着しながら搬送され」るものではない点。

(相違点3)本願発明1の後処理搬送部は,ICタグを「載置して吸引」しながら搬送し,後処理工程で識別データが読み取られるICタグは,「前記後処理搬送部に載置される位置にあって前記後処理搬送部に吸引されて密着しながら搬送されている」のに対して,引用発明の搬送ローラ11及びプラテンローラ13は,無線タグ22を「載置して吸引」するものではなく,また,アンテナ14の通信位置でタグメモリデータが読み取られる無線タグ22は,搬送ローラ11及びプラテンローラ13に「載置される位置にあって」,搬送ローラ11及びプラテンローラ13に「吸引されて密着しながら搬送され」るものではない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,上記相違点1−3についてまとめて検討する。
引用発明の「ラベル用紙10」は,無線タグが長手方向に一列に整列しているものであるところ,引用文献1には,無線タグを幅方向に複数列配置することについては記載も示唆もされていない。
そうすると,本願発明1には,「近年、ICタグの使用量が増加しており、ICタグを高速で大量に発行するニーズが高まっており,ICタグの発行速度を向上させるためには、ICタグが1列に整列しているICタグ連続体では限界があり、ICタグが複数列に整列しているICタグ連続体を用いて発行を行うことが望まれているところ,ICタグが複数列に整列しているICタグ連続体を用いた場合には、ICタグ連続体の幅が広くなり、ICタグ連続体の蛇行や斜行、浮き上がりによるデータの書き込み不良、印字不良、データの読み取り不良が生じやすい」(段落0005)という課題や,「ICタグは、用紙の垂直方向に外力が加わると破損しやすく,ICタグ発行装置は、一般的に、ICタグ連続体として整列している複数列のICタグに管理番号等の識別データを書き込む前処理装置と、識別データが書き込まれたICタグに印字データを印字する印字装置と、ICタグに書き込まれた前記識別データを読み取って検証する後処理装置とを備えた長い搬送路を有しているので,このような長い搬送路を有するICタグ発行装置において、幅の広く、用紙の垂直方向に外力が加わると破損しやすいICタグ連続体を用いた場合には、ICタグ連続体に適度なテンションを付与して搬送することが困難であり、ICタグ連続体の蛇行や斜行、浮き上がりによるデータの書き込み不良、印字不良、データの読み取り不良が生じやすい」(段落0006)という課題があるのに対し,引用発明には,「ICタグが複数列に整列しているICタグ連続体を用いた場合」に「ICタグ連続体の幅が広くなり,ICタグ連続体の蛇行や斜行,浮き上がりによるデータの書き込み不良,印字不良,データの読み取り不良が生じやすい」という課題や「長い搬送路を有するICタグ発行装置において,幅の広く,用紙の垂直方向に外力が加わると破損しやすいICタグ連続体を用いた場合には,ICタグ連続体に適度なテンションを付与して搬送することが困難である」という課題が存在しないから,仮に印画紙片のようなシート状部材を載置して吸着しながら搬送することが引用文献2に記載されるように周知技術であったとしても,引用発明には,当該周知技術を採用しようという動機付けが存在しない。
また,引用文献3には,上記「第3」の「3.」に摘記した技術的事項が記載されており,「印字後に搬送すること」は周知技術であると認められるものの,当該周知技術を参酌しても,上記相違点1−3に係る構成を当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2−3に記載の周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2−10について
本願発明2−10は,本願発明1を直接・間接に引用するものであって,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2−3に記載の周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明11−21について
本願発明11は,本願発明1の構成を実質的に含む「ICタグ発行装置」の発明であり,また,本願発明12−21は,本願発明11を直接・間接に引用するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2−3に記載の周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,請求項1−23について上記引用文献1に記載の発明及び引用文献2−3に記載の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,上記のとおり,本願発明1−21は,引用発明及び引用文献2−3に記載の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
<特許法第36条第6項第1号について>
当審では,請求項1の「ICタグ連続体」は,「ICタグが幅方向に複数列配置されていない構成」,すなわち,「ICタグが幅方向に1列だけ配置されている構成」も含んでいるものと解されるところ,そのような「ICタグ連続体」は,本願明細書の段落0005に記載されている本願発明の課題に対応したものとは認められないとの拒絶の理由を通知しているが,令和4年2月16日付けの補正において,「幅方向に複数列配置されてICタグ連続体として整列しているICタグ」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1−21は,当業者が引用発明及び引用文献2−3に記載の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-04-08 
出願番号 P2019-231899
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山崎 慎一
須田 勝巳
発明の名称 ICタグ発行方法及びICタグ発行装置  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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